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特許7114434画像表示装置、駆動方法及び駆動プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】画像表示装置、駆動方法及び駆動プログラム
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/3233 20160101AFI20220801BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20220801BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20220801BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
G09G3/3233
G09G3/20 611H
G09G3/20 642A
G09G3/20 641P
G09G3/20 621A
G09G3/20 641D
G09G3/20 641E
H01L27/32
H05B33/14 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018193361
(22)【出願日】2018-10-12
(65)【公開番号】P2020060733
(43)【公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】薄井 武順
(72)【発明者】
【氏名】岡田 拓也
【審査官】塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-031904(JP,A)
【文献】特開2012-128030(JP,A)
【文献】特開2005-148306(JP,A)
【文献】特開2015-102723(JP,A)
【文献】国際公開第2016/088467(WO,A1)
【文献】特開2007-241225(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0160880(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0070407(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/3233
G09G 3/20
H01L 27/32
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を、複数の画素を含む小領域に分割する分割部と、
前記小領域に含まれる前記複数の画素それぞれの輝度倍率を、入力信号レベルに応じて調整して発光させる調整部と、を備え、
前記調整部は、
前記入力信号レベルが0から第1閾値までの場合、前記複数の画素のうち一部の画素のみを発光させ、
前記入力信号レベルが前記第1閾値よりも高い第2閾値以上の場合、前記複数の画素の全ての輝度倍率を100%にし、
前記入力信号レベルの全範囲にわたって、各画素の輝度倍率を連続的に決定し、前記複数の画素の輝度倍率の平均が100%となるように調整する画像表示装置。
【請求項2】
前記調整部は、映像フレーム毎に、前記小領域に含まれる前記複数の画素のうち、発光させる対象である前記一部の画素を順番に入れ替える請求項1に記載の画像表示装置。
【請求項3】
前記調整部は、前記複数の画素の入力信号レベルの平均値に応じて、各画素の輝度倍率を調整する請求項1又は請求項2に記載の画像表示装置。
【請求項4】
前記分割部は、前記入力信号レベルが低いほど、前記小領域の画素数を増加させる請求項1から請求項3のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項5】
前記画像から、前記入力信号レベルが所定未満の領域を、前記調整部による調整対象として抽出する抽出部を備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の画像表示装置。
【請求項6】
画像表示装置において、
画像を、複数の画素を含む小領域に分割する分割ステップと、
前記小領域に含まれる前記複数の画素それぞれの輝度倍率を、入力信号レベルに応じて調整して発光させる調整ステップと、をコンピュータが実行し、
前記調整ステップにおいて、
前記入力信号レベルが0から第1閾値までの場合、前記複数の画素のうち一部の画素のみを発光させ、
前記入力信号レベルが前記第1閾値よりも高い第2閾値以上の場合、前記複数の画素の全ての輝度倍率を100%にし、
前記入力信号レベルの全範囲にわたって、各画素の輝度倍率を連続的に決定し、前記複数の画素の輝度倍率の平均が100%となるように調整する表示パネルの駆動方法。
【請求項7】
画像表示装置において、
画像を、複数の画素を含む小領域に分割する分割ステップと、
前記小領域に含まれる前記複数の画素それぞれの輝度倍率を、入力信号レベルに応じて調整して発光させる調整ステップと、をコンピュータに実行させ、
前記調整ステップにおいて、
前記入力信号レベルが0から第1閾値までの場合、前記複数の画素のうち一部の画素のみを発光させ、
前記入力信号レベルが前記第1閾値よりも高い第2閾値以上の場合、前記複数の画素の全ての輝度倍率を100%にし、
前記入力信号レベルの全範囲にわたって、各画素の輝度倍率を連続的に決定し、前記複数の画素の輝度倍率の平均が100%となるように調整するための表示パネルの駆動プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流駆動型の発光素子を用いた画像表示装置、駆動方法及び駆動プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機ELなどのアクティブマトリックス型の画像表示装置は、薄膜トランジスタ(TFT)を用いて発光素子へ供給する電流を制御することで、輝度変調を行っている。しかし、駆動に用いるTFTには特性のばらつきがあるため、同じ電圧を与えても各画素の発光素子に流れる電流量が異なることにより、輝度ムラが発生し、表示品位が低下してしまう問題がある。このような特性のばらつきを低減させるために、画像表示装置は、表示パネル内部において、ばらつき補償を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-133282号公報
【文献】特開2018-31904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、表示パネルの高精細化及びハイダイナミックレンジ化などにより、各発光素子に供給する電流が小さくなることで、特性のばらつきの補償が不十分となってしまう。例えば、特許文献1の技術では、駆動信号に補正期間を設けて、TFTの閾値補正及び移動度の補正を行っているが、低階調部分では、画素に流れる電流が小さいため、十分な輝度補正ができなかった。また、酸化物半導体など移動度が高くない材料が用いられた場合にも、十分な効果が得られなかった。
【0005】
そこで、特許文献2では、平均輝度を維持しながら電流値を確保するために、空間変調を用いる手法が提案されている。しかしながら、空間変調を行った領域とそれ以外の領域との境目に、偽輪郭が発生してしまう問題があった。
【0006】
本発明は、低階調部分の輝度ムラを低減しつつ、空間変調による画質劣化を抑制できる画像表示装置、駆動方法及び駆動プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像表示装置は、画像を、複数の画素を含む小領域に分割する分割部と、前記小領域に含まれる前記複数の画素それぞれの輝度倍率を、入力信号レベルに応じて調整して発光させる調整部と、を備え、前記調整部は、前記入力信号レベルが0から第1閾値までの場合、前記複数の画素のうち一部の画素のみを発光させ、前記入力信号レベルが前記第1閾値よりも高い第2閾値以上の場合、前記複数の画素の全ての輝度倍率を100%にし、前記入力信号レベルの全範囲にわたって、各画素の輝度倍率を連続的に決定し、前記複数の画素の輝度倍率の平均が100%となるように調整する。
【0008】
前記調整部は、映像フレーム毎に、前記小領域に含まれる前記複数の画素のうち、発光させる対象である前記一部の画素を順番に入れ替えてもよい。
【0009】
前記調整部は、前記複数の画素の入力信号レベルの平均値に応じて、各画素の輝度倍率を調整してもよい。
【0010】
前記分割部は、前記入力信号レベルが低いほど、前記小領域の画素数を増加させてもよい。
【0011】
前記画像表示装置は、前記画像から、前記入力信号レベルが所定未満の領域を、前記調整部による調整対象として抽出する抽出部を備えてもよい。
【0012】
本発明に係る表示パネルの駆動方法は、画像表示装置において、画像を、複数の画素を含む小領域に分割する分割ステップと、前記小領域に含まれる前記複数の画素それぞれの輝度倍率を、入力信号レベルに応じて調整して発光させる調整ステップと、をコンピュータが実行し、前記調整ステップにおいて、前記入力信号レベルが0から第1閾値までの場合、前記複数の画素のうち一部の画素のみを発光させ、前記入力信号レベルが前記第1閾値よりも高い第2閾値以上の場合、前記複数の画素の全ての輝度倍率を100%にし、前記入力信号レベルの全範囲にわたって、各画素の輝度倍率を連続的に決定し、前記複数の画素の輝度倍率の平均が100%となるように調整する。
【0013】
本発明に係る表示パネルの駆動プログラムは、画像表示装置において、画像を、複数の画素を含む小領域に分割する分割ステップと、前記小領域に含まれる前記複数の画素それぞれの輝度倍率を、入力信号レベルに応じて調整して発光させる調整ステップと、をコンピュータに実行させ、前記調整ステップにおいて、前記入力信号レベルが0から第1閾値までの場合、前記複数の画素のうち一部の画素のみを発光させ、前記入力信号レベルが前記第1閾値よりも高い第2閾値以上の場合、前記複数の画素の全ての輝度倍率を100%にし、前記入力信号レベルの全範囲にわたって、各画素の輝度倍率を連続的に決定し、前記複数の画素の輝度倍率の平均が100%となるように調整するためのものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、画像表示装置において、低階調部分の輝度ムラを低減しつつ、空間変調による画質劣化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る画像表示装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る小領域を例示する図である。
図3A】従来の調整手法による入力信号レベルと輝度倍率との関係を例示する図である。
図3B】従来の調整手法により輝度倍率が調整されたときの、入力信号レベルと表示輝度との関係を例示する図である。
図4A】実施形態に係る第1の調整手法による入力信号レベルと輝度倍率との関係を例示する図である。
図4B】実施形態に係る第1の調整手法による入力信号レベルと表示輝度との関係を例示する図である。
図5A】実施形態に係る第2の調整手法による入力信号レベルと輝度倍率との関係を例示する図である。
図5B】実施形態に係る第2の調整手法による入力信号レベルと表示輝度との関係を例示する図である。
図6A】実施形態に係る第3の調整手法による入力信号レベルと輝度倍率との関係を例示する図である。
図6B】実施形態に係る第3の調整手法による入力信号レベルと表示輝度との関係を例示する図である。
図7A】実施形態に係る第4の調整手法による入力信号レベルと輝度倍率との関係を例示する図である。
図7B】実施形態に係る第4の調整手法による入力信号レベルと表示輝度との関係を例示する図である。
図8】実施形態に係る表示パネルの各画素を構成する回路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
本実施形態に係る画像表示装置1は、有機EL発光素子を用いた表示装置であり、映像フレーム毎の信号処理において、画素単位で発光強度を調整する空間変調を用いることにより、低階調領域における電流の減少を抑制して輝度ムラを低減しつつ、境界付近の画質劣化を抑制する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る画像表示装置1の構成を示すブロック図である。
画像表示装置1は、信号処理部10と、行駆動ドライバ部20と、列駆動ドライバ部30と、表示パネル40とを備える。
【0018】
信号処理部10は、映像信号に含まれる画像データを入力として、各画素の階調値を決定し、行駆動ドライバ部20及び列駆動ドライバ部30を制御することにより、表示パネル40の発光素子を階調値に応じた駆動電流で発光させる。
【0019】
行駆動ドライバ部20は、信号処理部10から各水平ラインを走査するための制御信号を受信する。
また、行駆動ドライバ部20から表示パネル40の各画素へは、垂直方向に複数の選択信号線と、各発光素子への電源ラインとが接続されている。行駆動ドライバ部20は、複数の選択信号線のそれぞれに選択信号を供給すると共に、電源ラインから駆動電圧を印加する。
【0020】
列駆動ドライバ部30は、信号処理部10で決定された階調値のデータを受信する。
また、列駆動ドライバ部30から表示パネル40の各画素へは、水平方向に複数のデータ信号線が接続されている。列駆動ドライバ部30は、複数のデータ信号線のそれぞれに、各画素の階調値に基づくデータ信号を供給する。
【0021】
表示パネル40は、有機EL発光素子が各画素に対応して設けられた表示デバイスであり、行駆動ドライバ部20からの制御信号、及び列駆動ドライバ部30からのデータ信号に応じて、各発光素子を発光させることにより、画像を表示する。
【0022】
次に、信号処理部10の機能を詳述する。
図1に示すように、信号処理部10は、抽出部11と、分割部12と、調整部13とを備える。
【0023】
抽出部11は、入力された映像フレーム毎の画像データについて、入力信号レベル(階調値)の低い領域を抽出して調整部13による調整対象である分割発光領域とし、入力信号レベルの高い領域を通常発光領域とする。
例えば、抽出部11は、入力信号レベルが所定未満の画素、あるいは、周囲の画素との入力信号レベルの平均が所定未満の画素など、所定の条件を満たす画素群を、分割発光領域として抽出する。
【0024】
分割部12は、分割発光領域を、複数の画素を含む小領域に分割する。
このとき、小領域に含まれる画素数は一定でなくてもよい。分割部12は、入力信号レベル(例えば、平均値)が低いほど、小領域の画素数を増加させるように分割してもよい。
なお、分割部12は、画像データ全体を小領域に分割した後、分割結果を抽出部11に提供して分割発光領域を決定してもよい。
【0025】
調整部13は、小領域に含まれる複数の画素それぞれの輝度倍率を、入力信号レベルに応じて調整し、対応する発光強度で発光素子を発光させる。
小領域内で、複数の画素の入力信号レベルは、一致するとは限らない。このとき、調整部13は、小領域内の複数の画素の入力信号レベルの平均値に応じて、各画素の輝度倍率を調整してよい。
具体的には、調整部13は、次の条件で各画素の輝度倍率を調整する。
【0026】
(1)調整部13は、入力信号レベルが0から第1閾値までの場合、小領域内の複数の画素のうち一部の画素のみを発光させる。
すなわち、調整部13は、小領域内の複数の画素を代表する特定位置の画素の輝度倍率を高く調整し、この特定位置の画素のみを発光させることにより、駆動電流の低下を抑制する。
【0027】
(2)調整部13は、入力信号レベルが第1閾値よりも更に高い第2閾値以上の場合、小領域内の複数の画素の全ての輝度倍率を等倍(100%)にする。
すなわち、調整部13は、十分に高い入力信号レベルである画素については、輝度ムラが表れないため、輝度倍率の調整を行わない。
【0028】
(3)調整部13は、入力信号レベルの全範囲(0~最大値)にわたって、各画素の輝度倍率を連続的に決定する。
すなわち、入力信号レベルに対する輝度倍率の関数は、グラフに切れ目がなく連続である。
【0029】
(4)調整部13は、小領域内の複数の画素の輝度倍率の平均が100%となるように調整する。
すなわち、調整部13は、輝度倍率を調整した場合にも、小領域内の平均輝度の変化を抑制する。
【0030】
調整部13は、映像フレーム毎に、小領域に含まれる複数の画素のうち、入力信号レベルが第1閾値未満の場合に発光させる対象である一部の画素を順番に入れ替え、画素数の周期で一巡させてもよい。
また、調整部13は、小領域内の複数の画素のうち最大の入力信号レベルが例えば第2閾値以上の場合、各画素の輝度倍率を調整しないように制御するなど、周辺の画素との関係で輝度ムラが認識されにくい画素に対して、輝度倍率の調整を省略してもよい。
【0031】
図2は、本実施形態に係る小領域を例示する図である。
例えば、分割発光領域50において、4画素毎の小領域51が設けられる。
分割発光領域50では、映像フレーム毎に小領域51内での画素の位置それぞれの調整パターン、すなわち入力信号レベルと輝度倍率との対応関係が決まっており、映像フレームが進むに従ってこれらの調整パターンが順に入れ替わる。例えば、小領域51内の各画素をA、B、C、Dとすると、入力信号レベルが第1閾値以下の場合に、奇数フレームでは、A及びD、偶数フレームでは、B及びCの画素が発光する。
【0032】
図3Aは、従来の調整手法による入力信号レベルと輝度倍率との関係を例示する図である。
この例では、図2のように、4画素を1単位(小領域)として、小領域内の各画素をA、B、C、Dとする。
例えば、入力信号レベルが40%(0.4)以下を分割発光領域とした場合、奇数フレームでは、分割発光領域の画素A及びDが2倍(200%)の輝度倍率で発光する信号レベルに変換され、画素B及びCは発光しない。
一方、偶数フレームでは、画素B及びCが2倍(200%)の輝度倍率で発光する信号レベルに変換され、画素A及びDは発光しない。
また、入力信号レベルが40%を超える通常発光領域では、いずれの映像フレームにおいても、画素A、B、C、Dは等倍(100%)の輝度倍率で発光する。
【0033】
図3Bは、従来の調整手法により輝度倍率が調整されたときの、入力信号レベルと表示輝度との関係を例示する図である。
通常の表示輝度は、例えば入力信号レベルの2.2乗で設計され、入力信号レベルが低くなった場合の表示輝度の低下が顕著であり、輝度ムラが生じやすい。
図3Aに示した従来の調整手法により、奇数フレームにおいて、入力信号レベルが40%以下の分割発光領域では、画素A及びDが通常の表示輝度に対して2倍の輝度で表示され、画素B及びCは発光しない。
【0034】
このように従来の調整手法により輝度倍率を調整した場合、映像中の40%付近の入力信号レベルの箇所において、偽輪郭が発生してしまうことがある。
そこで、本実施形態では、前述の調整部13により、例えば以下に例示する調整手法1~4のように輝度倍率の調整を行う。
【0035】
[調整手法1]
図4Aは、本実施形態に係る第1の調整手法による入力信号レベルと輝度倍率との関係を例示する図である。
例えば、奇数フレームにおいて、調整部13は、A及びDの画素について、入力信号レベルが0から40%(第1閾値)までは、2倍(200%)の輝度倍率で発光する信号レベルに変換する。続いて、調整部13は、入力信号レベルが40%から60%(第2閾値)にかけて徐々に、例えば線型に輝度倍率を等倍(100%)まで、すなわち入力信号レベルに相当する輝度のレベルまで変化させる。
一方、B及びCの画素は、入力信号レベルが40%までは、発光しないように信号レベルが0に変換される。続いて、調整部13は、入力信号レベルが40%から60%にかけて徐々に、例えば線型に輝度倍率等倍(100%)まで、すなわち入力信号レベルに相当する輝度のレベルまで変化させる。
【0036】
偶数フレームでは、調整部13は、A及びDの調整パターンとB及びCの調整パターンとを入れ替えて輝度倍率の調整、すなわち信号レベルの制御を行う。
ここで、A、B、C、Dの各画素の輝度は入力信号レベルに対応する輝度から変化しているが、4つの画素の平均輝度は元の入力信号に対応する平均輝度と同様になるように制御される。このため、A、B、C、Cの各画素の輝度は、人の視覚特性により平滑化され、元の入力信号レベルの場合と同様の明るさで認識される。
【0037】
図4Bは、本実施形態に係る第1の調整手法による入力信号レベルと表示輝度との関係を例示する図である。
従来の調整手法(図3B)と比べて、A、B、C、Dの全画素において入力信号レベルが40%から60%の間の表示輝度が連続するため、偽輪郭の発生が抑制される。
【0038】
[調整手法2]
図5Aは、本実施形態に係る第2の調整手法による入力信号レベルと輝度倍率との関係を例示する図である。
調整手法1では、調整部13は、奇数フレームと偶数フレームとで異なる2パターンの制御をしていたが、さらに、輝度ムラを抑制するために、画素をA、B、C、Dの4画素に分けた場合、4フレームで調整パターンが一巡するように制御してもよい。
【0039】
例えば、4nフレームでは、調整部13は、Aの画素について、入力信号レベルが0%から10%(第1閾値)まで4倍(400%)の輝度倍率で発光させ、入力信号レベルが10%から50%にかけて徐々に、例えば線型に輝度倍率を4倍(400%)から2倍(200%)まで下げていくように信号レベルを変換する。
これに対して、Dの画素については、調整部13は、入力信号レベルが0%から10%までは発光させず、10%から50%にかけて徐々に、例えば線型に輝度倍率を0(0%)から2倍(200%)まで上げるように信号レベルを変換する。また、B及びCの画素については、調整部13は、入力信号レベルが0%から50%までは、輝度倍率を0(0%)のままとする。
【0040】
入力信号レベルが50%から70%(第2閾値)の間は、調整部13は、A及びDの画素について、輝度倍率を2倍(200%)から徐々に、例えば線型に等倍(100%)まで下げていくように信号レベルを変換する。一方、B及びCの画素については、調整部13は、輝度倍率を0(0%)から徐々に、例えば線型に上げて、入力信号レベルが70%で等倍(100%)となるように信号レベルを変換する。
【0041】
入力信号レベルが70%より大きい領域では、A、B、C、Dの画素は全て等倍(100%)の輝度で発光する。
調整部13は、このような調整を、4n+1、4n+2、4n+3フレームでA、B、C、Dの画素を順番に入れ替えて行うことで、4フレームで一巡するように制御する。これにより、少なくとも1つの画素の輝度倍率を調整手法1より高く設定できるので、輝度ムラが更に抑制される。
【0042】
図5Bは、本実施形態に係る第2の調整手法による入力信号レベルと表示輝度との関係を例示する図である。
調整手法1(図4B)と同様に、A、B、C、Dの全画素において、入力信号レベルに対する表示輝度が全範囲で連続するため、偽輪郭の発生が抑制される。さらに、分割発光領域において、少なくとも1つの画素の表示輝度が調整手法1よりも高くなるため、輝度ムラが更に抑制される。
【0043】
[調整手法3]
図6Aは、本実施形態に係る第3の調整手法による入力信号レベルと輝度倍率との関係を例示する図である。
4画素を別々に調整し4フレームで一巡させる場合には、調整部13は、次のように制御してもよい。
【0044】
例えば、4nフレームでは、調整部13は、Aの画素を、入力信号レベルが0%から20%まで4倍(400%)の輝度倍率で発光させ、入力信号レベルが20%から70%にかけて徐々に、例えば線型に輝度倍率を4倍(400%)から等倍(100%)まで下げていくように信号レベルを変換する。
これに対して、B、C、Dの画素について、調整部13は、入力信号レベルが0%から20%まで発光させず、20%から70%にかけて徐々に、例えば線型に輝度倍率を0(0%)から等倍(100%)まで上げるように信号レベルを変換する。
【0045】
入力信号レベルが70%より大きい領域では、A、B、C、Dの画素は全て等倍(100%)の輝度で発光する。
調整部13は、このような調整を、4n+1、4n+2、4n+3フレームでA、B、C、Dの画素を順番に入れ替えて行うことで、4フレームで一巡するように制御する。これにより、少なくとも1つの画素の輝度倍率を調整手法1より高く設定できるので、輝度ムラが抑制される。
【0046】
図6Bは、本実施形態に係る第3の調整手法による入力信号レベルと表示輝度との関係を例示する図である。
調整手法1(図4B)及び調整手法2(図5B)と同様に、A、B、C、Dの全画素において、入力信号レベルに対する表示輝度が全範囲で連続するため、偽輪郭の発生が抑制される。さらに、分割発光領域において、少なくとも1つの画素の表示輝度が調整手法1よりも高くなるため、輝度ムラが更に抑制される。
【0047】
[調整手法4]
図7Aは、本実施形態に係る第4の調整手法による入力信号レベルと輝度倍率との関係を例示する図である。
4画素を別々に調整し4フレームで一巡させる場合には、調整部13は、次のように制御してもよい。
【0048】
例えば、4nフレームでは、調整部13は、Aの画素を、入力信号レベルが0%から10%まで4倍(400%)の輝度倍率で発光させ、入力信号レベルが10%から70%にかけて徐々に、例えば線型に輝度倍率を4倍(400%)から等倍(100%)まで下げていくように信号レベルを変換する。また、調整部13は、画素Aの入力信号レベルが70%以上の場合、等倍(100%)で発光させる。
【0049】
これに対して、Bの画素について、調整部13は、入力信号レベルが0%から50%までは発光させず、入力信号レベルが50%から70%にかけて徐々に、輝度倍率を0(0%)から等倍(100%)まで上げるように信号レベルを変換する。また、調整部13は、画素Bの入力信号レベルが70%以上の場合、等倍(100%)で発光させる。
Cの画素については、調整部13は、入力信号レベルが0%から30%までは発光させず、入力信号レベルが30%から50%にかけて徐々に、輝度倍率を0(0%)から等倍(100%)まで上げるように信号レベルを変換する。また、調整部13は、画素Cの入力信号レベルが50%以上の場合、等倍(100%)で発光させる。
Dの画素については、調整部13は、入力信号レベルが0%から10%までは発光させず、入力信号レベルが10%から30%にかけて徐々に、輝度倍率を0(0%)から等倍(100%)まで上げるように信号レベルを変換する。また、調整部13は、画素Dの入力信号レベルが30%以上の場合、等倍(100%)で発光させる。
【0050】
調整部13は、このような調整を4n+1、4n+2、4n+3フレームでA、B、C、Dの画素を順番に入れ替えて行うことで、4フレームで一巡するように制御する。これにより、少なくとも1つの画素の輝度倍率を調整手法1より高く設定できるので、輝度ムラが抑制される。
【0051】
図7Bは、本実施形態に係る第4の調整手法による入力信号レベルと表示輝度との関係を例示する図である。
調整手法1(図4B)、調整手法2(図5B)及び調整手法3(図6B)と同様に、A、B、C、Dの全画素において、入力信号レベルに対する表示輝度が全範囲で連続するため、偽輪郭の発生が抑制される。さらに、分割発光領域において、少なくとも1つの画素の表示輝度が調整手法1よりも高くなるため、輝度ムラが更に抑制される。
【0052】
図8は、本実施形態に係る表示パネル40の各画素を構成する回路の一例を示す図である。
選択信号線から電圧Vgaが印加されたタイミングにおいて、データ信号線から画素の信号レベルに応じた電圧Vdaが印加されると、トランジスタTr1を介してコンデンサC1にデータ電圧が書き込まれる。
【0053】
このとき、同時に駆動電圧Vddが印加されることで、Tr1の移動度のばらつきによる輝度ムラが補正される。ところが、Vdaの電圧が低い場合、十分な電流が流れずに、ばらつきの補正が不十分となってしまう。信号処理部10で低階調領域の信号レベルを高く変換することで、ばらつきの補正効果が高められる。
【0054】
その後、駆動電圧VddによりトランジスタTr2を介して有機EL素子Delに電流が流れ、発光する。補正効果を高めるために、信号レベルを高くしているため、輝度が高くなってしまう画素が存在するが、フレーム毎に発光しない画素が指定されているため、全体的な輝度レベルの変化が抑えられて画像が表示される。
また、高フレームレート(例えば、120Hz以上)の場合には、発光する画素の切り替わりに伴って生じるフリッカーの影響も回避できる。
【0055】
本実施形態によれば、画像表示装置1は、信号処理部10において、画像を、複数の画素を含む小領域に分割し、小領域に含まれる複数の画素それぞれの輝度倍率を、入力信号レベルに応じて調整して発光させる。このとき、調整部13は、入力信号レベルが0から第1閾値までの場合、一部の画素のみを発光させ、第2閾値以上の場合、複数の画素の全ての輝度倍率を100%にする。そして、調整部13は、入力信号レベルの全範囲にわたって、各画素の輝度倍率を連続的に決定し、複数の画素の輝度倍率の平均が100%となるように調整する。
したがって、画像表示装置1は、入力信号レベルが第1閾値以下の低階調部分において画素当たりの電流を大きくできるため、輝度ムラを低減できる。さらに、画像表示装置1は、入力信号レベルに対する輝度倍率の連続性により、偽輪郭の発生を防ぎ、空間変調による画質劣化を抑制できる。
【0056】
画像表示装置1は、映像フレーム毎に、小領域に含まれる複数の画素のうち、発光させる対象である一部の画素を順番に入れ替える。したがって、画像表示装置1は、動画再生時に、フレーム毎に発光させる画素を均等に選択し、画質の劣化を抑制できる。
【0057】
画像表示装置1は、小領域内で、複数の画素の入力信号レベルの平均値に応じて、各画素の輝度倍率を調整する。したがって、画像表示装置1は、小領域内の画素毎に入力信号レベルが異なる場合にも、容易に適切な輝度倍率を決定できる。
【0058】
画像表示装置1は、入力信号レベルが低いほど、小領域の画素数を増加させてもよい。これにより、画像表示装置1は、入力信号レベルが低い領域の輝度倍率を適切に高めて低輝度ムラを低減できる。
なお、1フレーム内では小領域の大きさは一定でもよいし、1フレーム内で複数の大きさの小領域が混在するように分割されてもよい。
【0059】
画像表示装置1は、前記画像から、入力信号レベルが所定未満の領域を、調整部13による調整対象として抽出してもよい。これにより、画像表示装置1は、処理対象の画素を限定して処理負荷を低減できる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0061】
画像表示装置1が処理対象とする画像は、複数のフレームが連続する動画像に限られず、静止画像であってもよい。
【0062】
前述の実施形態で例示した第1閾値及び第2閾値は、これらには限られず、例えば表示パネル40の仕様の相違によって適宜、値は変更されてよい。
【0063】
前述の実施形態では、調整部13は、輝度倍率によって各画素の輝度を調整したが、これには限られない。調整部13は、例えば、小領域内の複数の画素の発光強度の合計が等しくなるように、各画素の輝度を調整してもよい。これにより、画像表示装置1は、輝度ムラを低減しつつ、元の画像データの輝度をより忠実に再現できる。
【0064】
本実施形態では、主に画像表示装置1の構成と動作について説明したが、本発明はこれに限られず、各構成要素を備え、画像を表示するための方法、又はプログラムとして構成されてもよい。
【0065】
さらに、画像表示装置1の機能を実現するためのプログラムをコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。
【0066】
ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器などのハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータで読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROMなどの可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスクなどの記憶装置のことをいう。
【0067】
さらに、「コンピュータで読み取り可能な記録媒体」とは、インターネットなどのネットワークや電話回線などの通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時刻の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時刻プログラムを保持しているものも含んでもよい。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 画像表示装置
10 信号処理部
11 抽出部
12 分割部
13 調整部
20 行駆動ドライバ部
30 列駆動ドライバ部
40 表示パネル
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8