IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コルゲート・パーモリブ・カンパニーの特許一覧 ▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】うがい薬製品及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/64 20060101AFI20220801BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20220801BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220801BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20220801BHJP
   A61K 8/21 20060101ALI20220801BHJP
   A61K 8/46 20060101ALI20220801BHJP
【FI】
A61K8/64
A61Q11/00
A61K8/34
A61K8/49
A61K8/21
A61K8/46
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2018541101
(86)(22)【出願日】2016-10-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-10-25
(86)【国際出願番号】 US2016058721
(87)【国際公開番号】W WO2017074964
(87)【国際公開日】2017-05-04
【審査請求日】2019-10-24
(31)【優先権主張番号】62/246,165
(32)【優先日】2015-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/246,163
(32)【優先日】2015-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/246,161
(32)【優先日】2015-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/248,992
(32)【優先日】2015-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590002611
【氏名又は名称】コルゲート・パーモリブ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】COLGATE-PALMOLIVE COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(72)【発明者】
【氏名】ラトーニャ キルパトリック-リバーマン
(72)【発明者】
【氏名】ジェンホン チュウ
(72)【発明者】
【氏名】リネット ザイデル
(72)【発明者】
【氏名】トーマス スブコヴスキー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン イエネヴァイン
(72)【発明者】
【氏名】マルヴィン カロス
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ボルシュヴァイラー
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー ヴェンデル
(72)【発明者】
【氏名】ニーナ シュナイダー
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ペーター サンタルピア
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0196287(US,A1)
【文献】特開2008-074773(JP,A)
【文献】国際公開第2015/125822(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/180019(WO,A1)
【文献】特表2007-504186(JP,A)
【文献】特表2003-503434(JP,A)
【文献】国際公開第2001/001930(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
うがい薬の形態の口腔ケア組成物であって:
a)部分的に加水分解した植物タンパク質であって、少なくとも95%のオリゴペプチド分子及びポリペプチド分子が500~10000Dである;
b)水、を含み、
前記部分的に加水分解した植物タンパク質が、前記組成物中に、前記組成物の総重量の0.01重量%~3重量%の量で存在し、
前記組成物は、亜鉛塩を含有しておらず、および、前記組成物は、可溶性リン酸塩を含有していない、口腔ケア組成物。
【請求項2】
前記少なくとも95%のオリゴペプチド分子及びポリペプチド分子が1000~5000Dである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記オリゴペプチド分子及びポリペプチド分子が以下の分子量分布を有するもの:65%<3500D、84~92%<6000D、0.9~3.6%>9000D、及び0.1~0.6%>13000Dである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記部分的に加水分解した植物タンパク質が、部分的に加水分解したコムギタンパク質または加水分解したコメタンパク質である、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
有効量のフッ化物をさらに含む、請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
湿潤剤を含む、請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
アニオン性界面活性剤を含む、請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
非イオン性界面活性剤を含む、請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
呼気清涼剤、芳香剤または香味料を含む、請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
0.05~1重量%の量の部分的に加水分解したコムギタンパク質、及び200~1000ppmのフッ化物を提供するフッ化物イオン源を含む、請求項1~のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
エタノールを含まない、請求項1~10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
塩化セチルピリジニウムをさらに含む、請求項1~11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
a)0.05~1重量%の量の部分的に加水分解したコムギグルテン、
b)200~1000ppmのフッ化物を提供するフッ化物イオン源、
c)0.01重量%~0.1重量%の量の塩化セチルピリジニウム、
d)0.1~1重量%の量の非イオン性界面活性剤、
e)ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール、及び/またはそれらの2つ以上の混合物を10~25重量%の量で含む湿潤剤、
f)甘味料及び香味料、
g)75~85重量%の量の水
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
酸蝕の軽減及び抑制、歯の清浄化、細菌生成バイオフィルム及びプラークの低減、歯肉炎の軽減、歯の腐敗及び虫歯の形成の抑制、ならびに象牙質知覚過敏症の軽減、または歯のエナメル質の酸蝕の軽減、抑制もしくは修復、または歯のエナメル質の再石灰化の促進、またはフッ化物の虫歯予防効果の増強に使用するための、請求項1~13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
うがい薬の形態の口腔ケア組成物であって:
a)部分的に加水分解した植物タンパク質であって、少なくとも95%のオリゴペプチド分子及びポリペプチド分子が500~10000Dである;
b)水、を含み、
前記部分的に加水分解した植物タンパク質が、前記組成物中に、前記組成物の総重量の0.05重量%~1重量%の量で存在し、
前記組成物は、亜鉛塩を含有していない、口腔ケア組成物。
【請求項16】
前記少なくとも95%のオリゴペプチド分子及びポリペプチド分子が1000~5000Dである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記オリゴペプチド分子及びポリペプチド分子が以下の分子量分布を有するもの:65%<3500D、84~92%<6000D、0.9~3.6%>9000D、及び0.1~0.6%>13000Dである、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
前記部分的に加水分解した植物タンパク質が、部分的に加水分解したコムギタンパク質または加水分解したコメタンパク質である、請求項15~17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
有効量のフッ化物をさらに含む、請求項15~18のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
うがい薬の形態の口腔ケア組成物であって:
a)部分的に加水分解した植物タンパク質であって、少なくとも95%のオリゴペプチド分子及びポリペプチド分子が500~10000Dである;
b)水、を含み、
前記部分的に加水分解した植物タンパク質が、前記組成物中に、前記組成物の総重量の0.1重量%~0.5重量%の量で存在する、口腔ケア組成物。
【請求項21】
前記少なくとも95%のオリゴペプチド分子及びポリペプチド分子が1000~5000Dである、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記オリゴペプチド分子及びポリペプチド分子が以下の分子量分布を有するもの:65%<3500D、84~92%<6000D、0.9~3.6%>9000D、及び0.1~0.6%>13000Dである、請求項20または21に記載の組成物。
【請求項23】
前記部分的に加水分解した植物タンパク質が、部分的に加水分解したコムギタンパク質または加水分解したコメタンパク質である、請求項20~22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
有効量のフッ化物をさらに含む、請求項20~23のいずれかに記載の組成物。
【請求項25】
酸蝕の修復もしくは抑制、歯の再石灰化の促進、及び/またはフッ化物の虫歯予防効果の増強を行う方法であって、請求項1~24のいずれかの組成物を歯に適用することを含む、前記方法。
【請求項26】
酸蝕を修復または抑制し、歯の再石灰化を促進し、及び/またはフッ化物の虫歯予防効果を増強するための、請求項1~24のいずれかの組成物の製造における部分的に加水分解した植物タンパク質の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、以下の出願の優先権の主張を伴う:2015年10月30日に出願された米国仮出願第62/248992号;2015年10月26日に出願された米国仮出願第62/246161号;2015年10月26日に出願された米国仮出願第62/246163号;及び2015年10月26日に提出された米国仮特許出願第62/246165号。これらは、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
歯のエナメル質は歯冠を覆う石灰化された物質の薄い硬い層である。歯のエナメル質の主要な鉱物成分は、リン酸カルシウムの結晶形であるヒドロキシアパタイトである。酸性食品及び飲料への歯の曝露、または胃の逆流に起因する胃酸によって、歯のエナメル質の化学的な酸蝕が生じ得る。歯のエナメル質の酸蝕は、象牙細管の曝露を増加させることで、歯の知覚過敏を高める可能性があり、象牙質の視認性を増大させることで、より黄色の歯が現れるようにする可能性がある。唾液ペリクル(歯に沈着した唾液糖タンパク質の薄い層)は、酸蝕の攻撃から歯を保護する上で不可欠である。その結果、口腔乾燥症を経験する人々は、酸蝕損傷の影響を受けやすくなる。
【0003】
エナメル質の酸蝕防止を支援するために開発された既存の方法は、口腔ケア組成物に遊離フッ化物源を配合することを含む。ヒドロキシアパタイトよりも低いpHで溶解し、したがって酸の損傷に対してより耐性があるフルオロアパタイトを形成することによって、及び、歯の脱ミネラル化を最小限にする、歯を包み込むプラーク(歯垢)液内の過飽和な環境を維持することによって、フッ化物はエナメル質の損傷を減少させる。また、歯磨剤配合物には、第一スズ塩も配合されており、より耐酸性のミネラル層を形成することによって、エナメル質の表面を同様に保護する。エナメル質の表面を被覆して保護するポリマーについても記載されている。
【0004】
齲蝕原性細菌を含有するプラークが炭水化物を代謝する際、酸も口腔内で生成する。プラークは、エナメル質を通るプロトン及びミネラルの拡散の速度を抑制する障壁を形成するため、プラークの酸は齲蝕病変を引き起こす。歯磨剤配合物へのフッ化物イオンの配合は、プラークの酸の影響を緩和する最も一般的な方法である。フッ化物は脱ミネラル化速度を低下させ、再石灰化を促進する。リン酸カルシウム塩を安定化させるか、またはプラークのpHを調節して再石灰化を促進するためのいくつかのアプローチも開発されている。
【0005】
歯の上の非細菌及び細菌が生成する酸の影響を緩和する方法が開発されているが、エナメル質を酸蝕及び細菌酸の影響から効果的に修復する改善された口腔ケア組成物を提供する必要性が依然として存在する。
【0006】
概要
本発明者らは、コムギ、コメ、アーモンド、ジャガイモ、ダイズ、エンドウまたはその組合せからの部分的に加水分解したタンパク質、例えば部分的に加水分解した穀類タンパク質(イネ科植物(Poaceae)の穀物由来の加水分解タンパク質、例えば部分的に加水分解したコムギタンパク質または部分的に加水分解したコメタンパク質)が、歯の酸蝕の影響を修復または軽減し、歯の再石灰化を促進し、フッ化物の虫歯予防効果を高めるのに有効であることを予想外に見出した。
【0007】
例えば、一実施形態では、経口的に許容可能な適切な担体成分を含む製剤のために、約500D~約10000D、例えば、1000D~5000Dの分子量分布を有するオリゴペプチド分子及びポリペプチド分子を含む、部分的に加水分解した植物タンパク質を、NaHPO緩衝液(1.5mM)及びCaCl(2.5mM)といったリン酸緩衝液などの緩衝液中で希釈し、所望のpH、例えばpH6~8、例えばpH7~8、例えば約pH7.5に調整し、溶液を濾過及び遠心分離して、部分的に加水分解した植物タンパク質を含む濾液を得ることによって調製する。濾液に殺生物剤(例えば、0.1%の塩化セチルピリジニウム)及びフッ化物を添加してもよい。次いで、部分的に加水分解した植物タンパク質を、経口的に許容可能な担体成分、例えば練り歯磨きまたはうがい薬と組み合わせて、歯の酸蝕の影響を修復または緩和し、歯の再石灰化を促進し、フッ化物の虫歯予防効果を高めるための口腔ケア組成物を提供してもよい。
【0008】
したがって、本開示は、以下のものを含有する口腔ケア組成物(組成物1)、例えば、歯磨剤に関する:
a)部分的に加水分解した植物タンパク質であって、オリゴペプチド分子及びポリペプチド分子の少なくとも95%が約500~約10000D、例えば、約1000~約5000Dの分子量を有するオリゴペプチド分子及びポリペプチド分子を含むもの;例えば、約65%<3500D、約84~92%<6000D、約0.9~3.6%>9000D、及び約0.1~0.6%>13000D;である分子量分布を有するオリゴペプチド分子及びポリペプチド分子を含むもの、及び、
b)経口的に許容可能な担体。
ここで、部分的に加水分解した植物タンパク質は、組成物の総重量の0.01重量%~3重量%の量で組成物中に存在する。例えば、本開示は、以下を提供する。
1.1.部分的に加水分解した植物タンパク質が、イネ科植物(Poaceae)の穀物から得られるもの、例えば、トウモロコシ(コーン)、コムギ、コメ、オオムギ、オートムギ、またはアワのタンパク質である組成物1。
1.2.部分的に加水分解した植物タンパク質が、部分的に加水分解したコムギタンパク質または加水分解したコメタンパク質である組成物1.1。
1.3.部分的に加水分解した植物タンパク質が、コムギ、コメ、アーモンド、ジャガイモ、エンドウ、ダイズまたはその組合せから得られる組成物1。
1.4.部分的に加水分解した植物タンパク質が、実質的にグルテンを含まない部分的に加水分解したコムギタンパク質である任意の上記の項の組成物。
1.5.部分的に加水分解した植物タンパク質が、実質的にグルテンを含まない部分的に加水分解したコムギタンパク質である任意の上記の項の組成物。
1.6.部分的に加水分解した植物タンパク質が、フッ化物を含む任意の上記の項の組成物。
1.7.部分的に加水分解した植物タンパク質を、所望のpH、例えばpH6~8、例えばpH7~8に、例えばリン酸緩衝液を用いて調整する任意の上記の項の組成物。
1.8.部分的に加水分解した植物タンパク質が、殺生物剤、例えばセチルピリジニウム塩化物(CPC)を有効濃度、例えば濾液の0.1重量%で含む任意の上記の項の組成物。
1.9.部分的に加水分解した植物タンパク質が、組成物の総重量の0.1重量%~3重量%、例えば0.2重量%~2重量%、例えば約0.2重量%、約1重量%、約1.5重量%または約2重量%の量で組成物中に存在する任意の上記の項の組成物。
1.10.組成物が有効量のフッ化物を含む任意の上記の項の組成物。
1.11.100ppm~2500ppm、例えば250ppm~750ppmの量のフッ化物、例えば約500ppmのフッ化物を含む任意の上記の項の組成物。
1.12.2500ppm~5000ppmの量のフッ化物を含む、任意の上記の項の組成物。
1.13.例えば、酸化亜鉛、クエン酸亜鉛、乳酸亜鉛、リン酸亜鉛、酢酸亜鉛、塩化亜鉛、アミノ酸との亜鉛錯体、及び上記のいずれかの混合物から選択される、経口的に許容可能な亜鉛塩または酸化物を含み、亜鉛の量が、亜鉛イオンの重量で計算して、0.1重量%~3重量%、例えば約1~約2重量%である、任意の上記の項の組成物。
1.14.経口的に許容可能な第一スズ塩、例えばSnFまたはSnClを含む任意の上記の項の組成物。
1.15.組成物が、口内洗浄剤、練り歯磨き、歯磨きゲル、歯磨き粉、非研磨性ゲル、ムース、フォーム、口腔スプレー、チューインガム、及び錠剤から選択される形態、例えば、歯磨剤、例えば、練り歯磨きまたは口内洗浄剤である、任意の上記の項の組成物。
1.16.研磨剤、pH調整剤、界面活性剤、発泡調節剤、増粘剤、粘度調整剤、湿潤剤、抗結石剤または歯石抑制剤、甘味料、香味料及び着色剤から選択される1種以上の薬剤をさらに含む、任意の上記の項の組成物。
1.17.組成物が練り歯磨きである、任意の上記の項の組成物。
1.18.例えば、「可溶性リン酸塩」が、25℃で少なくとも1g/100mlの水への溶解度を有する経口的に許容可能なリン酸塩を意味し;例えば、1つ以上の可溶性リン酸塩が、ピロリン酸及び/またはポリリン酸のナトリウム塩及び/またはカリウム塩、例えばトリポリリン酸であり;例えば、1つ以上の可溶性リン酸塩が、ピロリン酸四ナトリウム(TSPP)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)またはTSPPとSTPPの組合せを含み;例えば1つ以上の可溶性リン酸塩が、組成物の1~20重量%、例えば2~8重量%、例えばおよそ5重量%の量で存在する、1つ以上の可溶性リン酸塩を含む任意の上記の項の組成物。
1.19.フッ化物を、フッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フルオロケイ酸ナトリウム、フルオロケイ酸アンモニウム、フッ化アミン(例えば、N′-オクタデシルトリメチレンジアミン-N,N,N′-トリス(2-エタノール)-ジヒドロフルオリド)、フッ化アンモニウム、フッ化チタン、ヘキサフルオロ硫酸塩、及びその組合せからなる群から選択される塩によって供給する、任意の上記の項の組成物。
1.20.グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、キシリトール、及びその混合物から選択される湿潤剤を含む歯磨剤であり、上記組成物の少なくとも30重量%、例えば40~50重量%のグリセリンを含む、上記の項の組成物。
1.21.例えば、歯磨剤基剤がアニオン性界面活性剤、例えばナトリウムラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウムエーテル、及びその混合物を、例えば約0.3重量%~約4.5重量%の量で含む、例えば、1~2%のラウリル硫酸ナトリウム(SLS)を含む、例えば、アニオン性、カチオン性、両性イオン性、及び非イオン性界面活性剤、及びその混合物から選択される1つ以上の界面活性剤を含む歯磨剤である、任意の上記の項の組成物。
1.22.双性イオン性界面活性剤、例えばベタイン界面活性剤、例えばコカミドプロピルベタインを、例えば、組成物の約0.1重量%~約4.5重量%の量で含む、例えば、0.5~2重量%のコカミドプロピルベタインを含む歯磨剤である任意の上記の項の組成物。
1.23.粘度改質量の1つ以上の多糖ガム、例えばキサンタンガムまたはカラギーナン、シリカ増粘剤、及びその組合せを含む歯磨剤である、任意の上記の項の組成物。
1.24.ガムストリップまたはガム片を含む歯磨剤である、任意の上記の項の組成物。
1.25.チューインガムである、任意の上記の項の組成物。
1.26.香味料、芳香剤及び/または着色剤を含む、任意の上記の項の組成物。
1.27.ハロゲン化ジフェニルエーテル(例えば、トリクロサン)、ハーブエキス及び精油(例えば、ローズマリーエキス、茶エキス、マグノリアエキス、チモール、メントール、ユーカリプトール、ゲラニオール、カルバクロール、シトラール、ヒノキトール、カテコール、サリチル酸メチル、エピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、没食子酸、ミスワク抽出物、シーバックソーン抽出物)、ビスグアニド消毒剤(例えば、クロルヘキシジン、アレキシジンまたはオクテニジン)、第四級アンモニウム化合物(例えば、塩化セチルピリジニウム(CPC)、塩化ベンザルコニウム、塩化テトラデシルピリジニウム(TPC)、塩化N-テトラデシル-4-エチルピリジニウム(TDEPC))、フェノール系消毒剤、ヘキセチジン、オクテニジン、サンギナリン、ポビドンヨード、デルモピノール、サリフルオル、金属イオン(例えば、亜鉛塩、例えば、クエン酸亜鉛、第一スズ塩、銅塩、鉄塩)、サンギナリン、プロポリス及び酸素化剤(例えば、過酸化水素、緩衝ペルオキシホウ酸ナトリウムまたはペルオキシカーボネート)、フタル酸及びその塩、モノパーサル酸及びその塩及びエステル、ステアリン酸アスコルビル、オレオイルサルコシン、アルキル硫酸、スルホコハク酸ジオクチル、サリチルアニリド、臭化ドミフェン、デルモピノール、オクタピノール及び他のピペリジノ誘導体、ナイシン製剤、亜塩素酸塩;上記のいずれかの混合物から選択される有効量の1つ以上の抗菌剤;例えば、トリクロサンまたは塩化セチルピリジニウム、を含む歯磨剤である、任意の上記の項の組成物。
1.28.例えば、過酸化物、金属亜塩素酸塩、過ホウ酸塩、過炭酸塩、ペルオキシ酸、次亜塩素酸塩、及びその組合せ;例えば、過酸化水素または過酸化水素源;例えば、過酸化尿素または過酸化物塩または錯体(例えば、ペルオキシリン酸、ペルオキシカーボネート、過ホウ酸塩、ペルオキシケイ酸塩、または過硫酸塩;例えばカルシウムペルオキシリン酸、過ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム過酸化物、ペルオキシリン酸ナトリウム、過硫酸カリウム)からなる群から選択される美白剤を含む歯磨剤である、任意の上記組成物。
1.29.細菌の付着を阻害または防止する薬剤、例えば、ソルブロールまたはキトサンを含む歯磨剤である、任意の上記の項の組成物。
1.30.例えば、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム、及びそれらの組合せから選択される可溶性カルシウム塩を含む歯磨剤である、任意の上記の項の組成物。
1.31.象牙質の感受性を低下させるのに有効な量の、生理学的または経口的に許容可能なカリウム塩、例えば、硝酸カリウムまたは塩化カリウムを含む歯磨剤である、任意の上記の項の組成物。
1.32.アニオンポリマー、例えば合成アニオンポリマー型ポリカルボキシレートを含む歯磨剤である、任意の上記組成物であって、例えばアニオンポリマーが無水マレイン酸または酸と他の重合可能なエチレン性不飽和モノマーとの1:4~4:1の共重合体から選択され;例えば、アニオンポリマーが、約30,000~約1,000,000、例えば約300,000~約800,000の平均分子量(M.W.)を有するメチルビニルエーテル/無水マレイン酸(PVM/MA)共重合体であり、アニオンポリマーが組成物の重量の約1~5%、例えば約2%である、任意の上記の項の組成物。
1.33.呼気清涼剤、芳香剤または香味料を含む歯磨剤である、任意の上記の項の組成物。
1.34.組成物のpHがおよそ中性、例えばpH6~8、例えば約pH7である、任意の上記の項の組成物。
1.35.酸蝕を低減及び抑制し、歯をきれいにし、細菌生成バイオフィルム及びプラークを減少させ、歯肉炎を軽減し、歯の腐敗及び虫歯の形成を抑制し、象牙質知覚過敏症を軽減するために使用するための任意の上記の項の組成物。
1.36.歯のエナメル質の酸蝕の低減、抑制または修復に使用するための任意の上記の項の組成物。
1.37.歯のエナメル質の再石灰化の促進に使用するための任意の上記の項の組成物。
1.38.フッ化物の虫歯予防効果を高めるのに使用するための任意の上記の項の組成物。
【0009】
組成物1の特定の新規な実施形態は、以下を含む歯磨剤である。
a)部分的に加水分解した植物タンパク質であって、植物タンパク質の少なくとも95%が、約500~約10000D、例えば約1000~約5000Dの分子量を有するオリゴペプチド分子及びポリペプチド分子を含むもの;例えば、約65%<3500D、約84~92%<6000D、約0.9~3.6%>9000D及び約0.1~0.6%>13000Dの分子量分布を有するオリゴペプチド分子及びポリペプチド分子を含むもの;(例えば加水分解したコムギタンパク質の量が0.1重量%~2重量%であり、例えば約0.2%の加水分解したコムギタンパク質である);
b)場合により含まれる有効量のフッ化物;(例えばフッ化物が100ppm~1500ppm、例えば約500ppmの量で存在する)、及び
c)経口的に許容可能な担体。
【0010】
別の特定の実施形態では、組成物はうがい薬(組成物1A)であり:
a)オリゴマー分子及びポリペプチド分子の少なくとも95%が約500~約10000D;例えば約1000~約5000Dの分子量を有し;例えば、約65%<3500D、約84~92%<6000D、約0.9~3.6%>9000D、及び約0.1~0.6%>13000Dの分子量分布を有するオリゴペプチド分子及びポリペプチド分子を含む、部分的に加水分解した植物タンパク質;及び
b)経口的に許容可能な担体、
を含み、部分的に加水分解した植物タンパク質は、組成物中に、組成物の総重量の0.01重量%~3重量%の量で存在する。
例えば、以下の項目のいずれかの組成物1によるうがい薬である。
1A.1.部分的に加水分解した植物タンパク質が、イネ科植物(Poaceae)の穀物から得られるもの、例えばトウモロコシ(コーン)、コムギ、コメ、オオムギ、オートムギ、またはアワタンパク質である組成物1A。
1A.2.部分的に加水分解した植物タンパク質が、部分的に加水分解したコムギタンパク質または加水分解したコメタンパク質である組成物1A.1。
1A.3.部分的に加水分解した植物タンパク質が、コムギ、コメ、アーモンド、ジャガイモ、エンドウ、ダイズまたはその組合せから得られる、任意の上記の項の組成物1A。
1A.4.部分的に加水分解した植物タンパク質が、実質的にグルテンを含まない部分的に加水分解したコムギタンパク質である、任意の上記の項の組成物1A。
1A.5.部分的に加水分解した植物タンパク質が、フッ化物を含む、任意の上記の項の組成物1A。
1A.6.部分的に加水分解した植物タンパク質が、所望のpH、例えばpH6~8、例えばpH7~8に、例えばリン酸緩衝液を用いて、調節されている、任意の上記の項の組成物1A。
1A.7.部分的に加水分解した植物タンパク質が、有効濃度、例えば濾液の0.01~0.1重量%で、殺生物剤、例えば塩化セチルピリジニウム(CPC)を含む、任意の上記の項の組成物1A。
1A.8.部分的に加水分解した植物タンパク質が、組成物の総重量の0.1重量%~3重量%、例えば組成物の総重量の0.2重量%~2重量%、例えば約0.2重量%の量で組成物中に存在する、任意の上記の項の組成物1A。
1A.9.組成物が有効量のフッ化物、例えば相乗的有効量のフッ化物、例えば部分的に加水分解した植物タンパク質との併用量のフッ化物を含み、脱ミネラル化の低減または阻害及び/または歯のエナメル質の再石灰化を促進するのに有効である、任意の上記の項の組成物1A。
1A.10.フッ化第一スズ、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フルオロケイ酸ナトリウム、フルオロケイ酸アンモニウム、フッ化アミン(例えば、N′-オクタデシルトリメチレンジアミン-N,N,N′-トリス(2-エタノール)-ジヒドロフルオリド)、フッ化アンモニウム、フッ化チタン、ヘキサフルオロ硫酸塩、及びその混合物から選択されるフッ化物イオン源からのフッ化物の有効量を含む、任意の上記の項の組成物1A。
1A.11.グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、キシリトール、及びその混合物から選択される湿潤剤を、例えば10~25重量%、例えば、18~20%の量で含む、任意の上記の項の組成物1A。
1A.12.アニオン性界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムもしくはラウリルエーテル硫酸ナトリウムまたはその混合物を、例えば0.01~0.5%、例えば約0.05重量%の量で含む、任意の上記の項の組成物1A。
1A.13.非イオン界面活性剤、例えば、(i)プロピレングリコールとエチレングリコールとの共重合体、例えばポリエチレングリコールの2つの親水性ブロックに隣接するポリプロピレングリコールの中央疎水性ブロックからなるトリブロック共重合体、例えばポロキサマー、例えばポロキサマー188、ポロキサマー338、ポロキサマー407、またはその混合物を、例えば0.1~2重量%、例えば約0.5%の量で、及び/または(ii)ポリソルベート、例えばポリソルベート20を、例えば0.1~1重量%、例えば約0.5%の量で、及び/または(iii)ポリエトキシル化植物油、例えばポリオキシル40硬化ヒマシ油を、例えば0.05~0.5重量%、例えば約0.1%の量で含む、任意の上記の項の組成物1A。
1A.14.呼気清涼剤、芳香剤または香味料を含む、任意の上記の項の組成物1A。
1A.15.組成物のpHが、およそ中性、例えばpH6~8、例えば約pH7である任意の上記の項の組成物1A。
1A.16.部分的に加水分解したコムギタンパク質を、例えば0.05~1重量%、例えば約0.2%の量で、及び200~1000ppmのフッ化物、例えば約225ppmまたは約500ppmのフッ化物を提供するフッ化物イオン源を含む、任意の上記の項の組成物1A。
1A.17.エタノールを実質的に含まない、例えば、重量で0.5%未満のエタノールを有する、任意の上記の項の組成物1A。
1A.18.うがい薬としての使用に適しており、安全である、任意の上記の項の組成物1A。
1A.19.以下を含む、任意の上記の項の組成物1A
a)例えば、0.05~1重量%、例えば約0.2%の量の部分的に加水分解したコムギタンパク質、
b)200~1000ppmのフッ化物、例えば約225ppmまたは約500ppmのフッ化物を提供するフッ化物イオン源、及び
c)0.01~0.1重量%、例えば約0.04%の量の塩化セチルピリジニウム。
1A.20.以下を含むうがい薬である、任意の上記の項の組成物1A
a)例えば0.05~1重量%、例えば約0.2%の量の部分的に加水分解したコムギタンパク質、
b)約200ppm~約1000ppmのフッ化物、例えば、約225ppmまたは約500ppmのフッ化物を提供する、フッ化物イオン源、
c)0.01重量%~0.1重量%、例えば約0.04%の量の塩化セチルピリジニウム、
d)例えば0.1~1重量%、例えば約0.5%の量の非イオン性界面活性剤、例えばポロキサマー、
e)10~25重量%、例えば18~20%の量の湿潤剤、例えば、ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール、及び/またはそれらの任意の2つ以上の混合物、
f)甘味料及び香味料、
g)場合により含まれる、例えば、0.01~0.1重量%、例えば約0.05%の量の防腐剤、例えば、ソルビン酸カリウム、ならびに
h)例えば、75~85重量%の量の水。
1A.21.酸蝕の低減及び抑制、歯の清掃、細菌生成バイオフィルム及びプラークの減少、歯肉炎の軽減、歯の腐敗及び虫歯の形成を抑制し、象牙質知覚過敏症を軽減するために使用するための、任意の上記の項の組成物1A。
1A.22.歯のエナメル質酸蝕の低減、阻害または修復に使用するための、任意の上記の項の組成物1A。
1A.23.歯のエナメル質の再石灰化を促進するために使用するための任意の上記の項の組成物1A。
1A.24.フッ化物の虫歯予防及び修復効果を高めるために使用するための任意の上記の項の組成物1A。
【0011】
一態様では、本開示は、酸蝕の修復または阻害、再石灰化の促進、及び/またはフッ化物の虫歯予防効果の増強に使用するための、例えば、以下の方法1及びこれに続く項のうちの任意のものによる方法のいずれかで使用するための、以下のいずれかの組成物1及びこれに続く項のうちの任意のものを提供する。
【0012】
別の態様では、本開示は、酸蝕を修復または抑制し、歯の再石灰化を促進し、及び/またはフッ化物の虫歯予防効果を増強する方法(方法1)を提供し、例えば、組成物1及びこれに続く項のうちの任意のもの、例えば、組成物1A及びこれに続く項のうちの任意のもの、例えば以下を含む任意の口腔ケア組成物を歯に適用することを含む:
a)部分的に加水分解した植物タンパク質であって、植物タンパク質の少なくとも95%が約500~約10000D、例えば約1000~約5000Dの分子量を有するオリゴペプチド分子及びポリペプチド分子を含むもの;例えば、約65%<3500D、約84~92%<6000D、約0.9~3.6%>9000D、及び約0.1~0.6%>13000Dの分子量分布を有するオリゴペプチド分子及びポリペプチド分子を含むもの;及び
b)経口的に許容可能な担体。
例えば、部分的に加水分解した植物タンパク質は、組成物の総重量の0.01重量%~3重量%の量で組成物中に存在する。例えば、本開示は以下を提供する:
1.1.部分的に加水分解した植物タンパク質が、コムギ、コメ、アーモンド、ジャガイモ、エンドウ、ダイズまたはその組合せから得られ;例えば、イネ科植物(Poaceae)の穀物由来のもの、例えば、部分的に加水分解したトウモロコシ(コーン)、コムギ、コメ、オオムギ、オートムギ、またはアワのタンパク質である、方法1。
1.2.部分的に加水分解した植物タンパク質が、部分的に加水分解したコムギタンパク質または加水分解したコメタンパク質である、方法1.1。
1.3.部分的に加水分解した植物タンパク質が、アーモンド、ジャガイモまたはダイズから得られる、方法1。
1.4.部分的に加水分解した植物タンパク質が、フッ化物を含む、任意の上記の項の方法。
1.5.部分的に加水分解した植物タンパク質を、所望のpH、例えばpH6~8、例えばpH7~8に、例えばリン酸緩衝液を用いて調節する、任意の上記の項の方法。
1.6.部分的に加水分解した植物タンパク質が、殺生物剤、例えば塩化セチルピリジニウム(CPC)を有効濃度、例えば濾液の0.1重量%で含む、任意の上記の項の方法。
1.7.部分的に加水分解した植物タンパク質が、組成物中に、組成物の総重量の0.1重量%~3重量%、例えば0.2重量%~2重量%、例えば約0.2重量%、約1重量%、約1.5重量%または約2重量%の量で存在する、任意の上記の項の方法。
1.8.組成物が有効量のフッ化物を含む、任意の上記の項の組成物。
1.9.フッ化物の量が100ppm~1000ppm、例えば約500ppmのフッ化物である、任意の上記の項の方法。
1.10.組成物が、口内洗浄剤、練り歯磨き、歯磨きゲル、歯磨き粉、非研磨性ゲル、ムース、フォーム、口腔スプレー、及び錠剤から選択される形態である、任意の上記方法。
1.11.研磨剤、pH調節剤、界面活性剤、発泡調節剤、増粘剤、粘度調整剤、湿潤剤、結石防止剤または歯石抑制剤、甘味料、香味料及び着色剤から選択される1つ以上の薬剤をさらに含む、任意の上記の項の方法。
1.12.組成物が歯磨剤、例えば練り歯磨きである、任意の上記の項の方法。
1.13.組成物が、上記の組成物1の下記のいずれかから選択される任意の上記の項の方法。
1.14.酸蝕、例えばエナメル質の酸蝕を、低減、抑制または修復するための方法であって、例えば、酸蝕を有するか、酸蝕を有する高いリスクを有すると同定された患者の歯に組成物を適用する、任意の上記の項の方法。
1.15.歯の再石灰化を促進するための方法、例えばエナメル質を再石灰化するための方法であって、例えば、脱ミネラル化を有すると同定された患者の歯に組成物を適用する、任意の上記の項の方法。
1.16.フッ化物の虫歯予防効果を増強するための方法であって、例えば、初期の齲蝕、例えば初期のエナメル質の齲蝕の徴候を有するか、または活性の齲蝕を有するか、もしくは齲蝕のリスクが高いと同定された患者の歯に組成物を適用する、任意の上記の項の方法。
1.17.組成物が有効量のフッ化物を含み、及び/または方法が有効量のフッ化物を含む有効量のフッ化物うがい薬または練り歯磨きを含む口腔ケア製品の投与をさらに含む、方法1.16。
1.18.組成物が、組成物1及びこれに続く項のうちの任意のものから選択される、任意の上記の項の方法。
1.19.組成物が、組成物1A及びこれに続く項のうちの任意のものから選択される、任意の上記の項の方法。
【0013】
別の実施形態では、本開示は、例えば、以下の任意の方法1及びこれに続く項のうちの任意のものの酸蝕の修復または阻害、再石灰化の促進、及び/またはフッ化物の虫歯予防効果の増強のための、例えば、組成物1及びこれに続く項のうちの任意のもの、例えば、組成物1A及びこれに続く項のうちの任意のものによる口腔ケア組成物の製造における、部分的に加水分解した植物タンパク質、例えば部分的に加水分解したコムギタンパク質、または部分的に加水分解したコメタンパク質の使用を提供する。
【0014】
別の態様では、本開示は、口腔ケア製品、例えば、酸蝕の修復または抑制、歯の再石灰化の促進、及び/またはフッ化物の虫歯予防効果の増強に有用な口腔ケア製品、例えば以下の任意の組成物1による製品、例えば以下を含む、組成物1A及びこれに続く項のうちの任意のものの製造方法(方法2)を提供する
a)約500~約10000D、約1000~約5000Dの分子量分布を有するオリゴペプチド分子及びポリペプチド分子を含む、部分的に加水分解した植物タンパク質を、リン酸緩衝液などの水性緩衝液で希釈してpHを調整して、例えば所望のpH、例えばpH6~8、例えばpH7~8を有する溶液を取得し;
b)a)の溶液生成物を濾過及び遠心分離し、部分的に加水分解した植物タンパク質を含む濾液を取得し;
c)フッ化物(例えばフッ化ナトリウムまたはモノフルオロリン酸ナトリウムなどのフッ化物を含有する経口的に許容可能な塩の形態)を、及び場合により殺生物剤(例えば塩化セチルピリジニウムを有効量、例えば、濾液に対する重量比で0.01~1%、例えば約0.1%)をb)の濾液生成物に添加し;
d)c)の生成物を経口的に許容可能な担体の成分に混合して、組成物の総重量の0.01重量%~3重量%の量で部分的に加水分解した植物タンパク質を含む口腔ケア組成物を取得する。
例えば、本開示は、以下を提供する:
2.1.部分的に加水分解した植物タンパク質が、コムギ、コメ、アーモンド、ジャガイモ、エンドウ、ダイズまたはその組合せから得られ、例えばイネ科植物(Poaceae)の穀物由来であり、例えば、部分的に加水分解したトウモロコシ(コーン)、コムギ、コメ、オオムギ、オートムギ、またはアワのタンパク質である、方法2。
2.2.部分的に加水分解した植物タンパク質が、部分的に加水分解したコムギタンパク質または加水分解したコメタンパク質である、方法2.1。
2.3.部分的に加水分解した植物タンパク質が、アーモンド、ジャガイモまたはダイズから得られる、方法2。
2.4.組成物が、組成物1及びこれに続く項のうちの任意のものによる組成物である、任意の上記の項の方法。
2.5.組成物が、組成物1A及びこれに続く項のうちの任意のものによる組成物である、任意の上記の項の方法。
【0015】
例えば、本開示は、部分的に加水分解した植物タンパク質を含む口腔ケア組成物、例えば、組成物1及びこれに続く項のうちの任意のものによる組成物、例えば、組成物1A及びこれに続く項のうちの任意のものによる組成物を提供し、口腔ケア組成物は、方法2及びこれに続く項のうちの任意のもののプロセスにより得られるか、または取得可能である。
【0016】
本発明の適用可能性のさらなる分野は、以下に提供する詳細な説明から明らかになるであろう。詳細な説明及び特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すものであって、単に例示を目的としており、本発明の範囲を限定するものではないことを理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
好ましい実施形態(複数可)の以下の説明は、本質的に単なる例示に過ぎず、決して本発明、その用途、または使用を限定するものではない。
【0018】
全体を通して使用するように、範囲は、その範囲内にある各値をすべて記述するための略語として使用する。範囲内の任意の値を範囲の終点として選択することができる。さらに、本明細書に引用するすべての参考文献は、その全体を参照として本明細書に援用する。本開示及び引用文献の定義における矛盾が生じる場合には、本開示が優先する。
【0019】
他に特段の断りのない限り、本明細書及び本明細書の他の箇所で表現するすべての割合及び量は、重量%を意味すると理解するべきである。所与の量は、物質の有効重量に基づく。
【0020】
[加水分解した植物タンパク質]
加水分解した植物タンパク質は、植物由来、例えば、食用植物部分由来、例えば、コムギ、コメ、アーモンド、ジャガイモ、エンドウ、ダイズまたはその組合せ由来、例えばトウモロコシ、コムギ、コメ、オオムギ、オートムギ、及びアワなどの穀物粒由来のタンパク質である。特定の実施形態では、加水分解した植物タンパク質はコムギまたはコメ由来である。
【0021】
加水分解したコムギタンパク質は、通常、エンドプロテアーゼ及びエキソプロテアーゼを用いてコムギタンパク質を酵素的に加水分解することによって得られる。加水分解したコムギタンパク質は、酸またはアルカリ加水分解によって取得してもよい。加水分解したコムギタンパク質を調製する方法は、タンパク質化学の当業者には公知であろう。しかしながら、加水分解したコムギタンパク質は、BASFのGluadin(登録商標)W20、Gluadin W40、及びIKEDAのWheatpro(登録商標)として市販されている。Gluadin W20は、コムギグルテンの酵素的加水分解によって得られる部分加水分解物である。それは少なくとも20.0%の乾燥物質を含有する。Gluadin W40は、コムギグルテンの酵素的加水分解によって得られる部分加水分解物である。それは少なくとも40.0%の乾燥物質を含有する。
【0022】
別の実施形態では、加水分解した植物タンパク質を、グルテンを含まない加工コムギタンパク質から作製する。
【0023】
加水分解したコメタンパク質は、通常、エンドプロテアーゼ及びエキソプロテアーゼを用いてコメタンパク質を酵素的に加水分解することによって得られる。加水分解したコメタンパク質は、酸またはアルカリ加水分解によって取得してもよい。加水分解したコメタンパク質を調製する方法は、タンパク質化学の当業者には公知であろう。しかしながら、加水分解したコメタンパク質はBASFのGluadin(登録商標)R、及びTRI-K IndustriesのRice Pro-Tein BK-S(登録商標)として市販されている。
【0024】
本明細書の組成物及び方法で使用する加水分解した植物タンパク質は、完全に加水分解されていないため、この点を強調するために、「部分的に加水分解した」と呼ぶこともある。「部分的に加水分解した」とは、ペプチド結合の少なくともいくつか、しかしすべてではないものが加水分解されることを意味する。したがって、加水分解した植物タンパク質は、一般的には、様々なサイズのアミノ酸及びペプチドの混合物を含む。関連する有効成分のMWは、約500~約10,000D、例えば約1000~約5000Dの範囲である。
【0025】
いくつかの実施形態では、加水分解した植物タンパク質は、組成物中に、組成物の総重量の0.01重量%~3重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、加水分解した植物タンパク質は、組成物中に、組成物の総重量の0.1重量%~3重量%、または0.1重量%~2重量%、または0.1重量%~1重量%の量で存在する。他の実施形態では、加水分解した植物タンパク質は、組成物中に、組成物の全重量に対して0.05重量%~1重量%、または0.1重量%~0.5重量%の量で存在する。さらなる実施形態では、加水分解した植物タンパク質は、組成物中に、組成物の総重量の0.5重量%~3重量%、または0.5重量%~2重量%、または0.5重量%~1重量%の量で存在する。なおさらなる実施形態では、加水分解した植物タンパク質は、組成物中に、組成物の総重量の1重量%~3重量%、または1重量%~2重量%の量で存在する。
【0026】
一構成では、本発明の組成物は、加水分解したコムギタンパク質及び加水分解したコメタンパク質の両方を含む。この構成では、加水分解したコムギタンパク質及び加水分解したコメタンパク質は、上記の量で組成物中に存在し得る。場合により、組成物中の加水分解したコムギタンパク質及び加水分解したコメタンパク質の総量は、組成物の総重量の0.1重量%~3重量%、または0.1重量%~2重量%、または0.1重量%~1重量%、または0.1重量%~0.5重量%である。いくつかの実施形態では、組成物中の加水分解したコムギタンパク質及び加水分解したコメタンパク質の総量は、組成物の総重量の1重量%~3重量%、または1重量%~2重量%である。
【0027】
[経口的に許容可能な担体及び任意成分]
本明細書中で使用する表現「経口的に許容可能な担体」とは、経口使用に対して安全かつ許容可能な量及び濃度の物質、例えば従来の練り歯磨き及びうがい薬に認められる物質から製造した担体を意味する。そのような物質として、水、または、グリセリン、ソルビトール、キシリトールなどの湿潤剤を含有し得る他の溶媒が挙げられる。いくつかの態様では、用語「経口的に許容可能な担体」は、加水分解した植物タンパク質及びフッ化物以外の口腔ケア組成物の成分のすべてを包含する。他の態様では、この用語は、加水分解した植物タンパク質及び/または他の機能的成分を口腔に送達するのに役立つ不活性(inert)または無害(inactive)な成分を指す。
【0028】
本発明で使用するための経口的に許容可能な担体として、口内洗浄剤またはうがい薬、練り歯磨き、歯磨きゲル、歯磨き粉、トローチ剤、ゴム、ビーズ、食用ストリップ、錠剤などの製造に使用する従来の及び公知の担体が挙げられる。担体は、互いと、及び組成物の他の成分との相溶性のために選択するべきである。
【0029】
以下の非限定的な実施例を提供する。練り歯磨き組成物において、担体は、一般的には組成物の主要な画分を提供する水/湿潤剤系である。あるいは、練り歯磨き組成物の担体成分は、水、1つ以上の湿潤剤、及び加水分解したコムギタンパク質または加水分解したコメタンパク質以外の他の機能的成分を含み得る。口内洗浄剤またはうがい薬配合物において、担体は、一般的には、加水分解したコムギタンパク質または加水分解したコメタンパク質が溶解または分散した水/アルコール液体混合物である。溶解性トローチ剤において、担体は、一般的には、口腔内でゆっくりと溶解する固体マトリックス材料を含む。チューインガムでは、担体は、通常、ガムベースを含み、一方、食用ストリップでは、担体は、通常、1つ以上のフィルム形成ポリマーを含む。
【0030】
本明細書において提供する口腔ケア組成物は、研磨剤、pH調節剤、界面活性剤、発泡調節剤、増粘剤、粘度調整剤、湿潤剤、抗結石剤または歯石抑制剤、甘味料、香味料、着色剤及び防腐剤から選択される1つ以上の追加の成分をさらに含む。これらの成分は、担体材料と見なすこともできる。非限定的な例を以下に示す。
【0031】
一実施形態では、本発明の組成物は、例えば艶出し剤として有用な少なくとも1つの研磨剤を含む。口腔内で許容可能な任意の研磨剤を使用することができるが、組成物の通常の使用中に歯のエナメル質が過剰に摩耗しないように、研磨剤の種類、粒度(粒径)及び量を選択すべきである。適切な研磨剤として、例えば、シリカゲル、水和シリカまたは沈降シリカなどの形態のシリカ、アルミナ、不溶性リン酸塩、炭酸カルシウム、尿素-ホルムアルデヒド縮合生成物などの樹脂研磨剤が挙げられるが、必ずしもこれらに限定するものではない。研磨剤として有用な不溶性リン酸塩の中には、オルトリン酸塩、ポリメタリン酸塩及びピロリン酸塩がある。例示的な例は、オルトリン酸二カルシウム二水和物、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸βカルシウム、リン酸三カルシウム、ポリメタリン酸カルシウム、及び不溶性ポリメタリン酸ナトリウムである。場合により、1つ以上の研磨剤は、本発明の口腔ケア組成物中に組成物の総重量の1重量%~5重量%の量で存在する。研磨剤の平均粒子サイズは、存在する場合、一般的に、0.1~30μm、好ましくは5~15μmである。
【0032】
さらなる実施形態では、本発明の口腔ケア組成物は、例えば、二酸化炭素の発泡及び放出によって、歯及び歯茎に「クリーンな感触」を付与するのに有用な、少なくとも1つの炭酸水素塩を含む。限定されるものではないが、炭酸水素ナトリウム及び炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩などの、経口的に許容可能な任意の炭酸水素塩を使用することができる。1つ以上の炭酸水素塩は、場合により、組成物の重量の1重量%~10重量%の総量で存在する。
【0033】
さらなる実施形態では、本発明の口腔ケア組成物は、少なくとも1つのpH調節剤を含む。そのような薬剤として、pHを下げるための酸性化剤、pHを上げるための塩基性化剤及び所望の範囲内のpHを調節する緩衝剤が挙げられる。例えば、酸性化剤、塩基性化剤及び緩衝剤から選択される1つ以上の化合物を含有させて、pH2~10、または様々な例示的実施形態において、pH2~8、3~9、4~8、5~7、6~10、もしくは7~9を提供する。限定されるものではないが、カルボン酸、リン酸及びスルホン酸、酸塩(例えば、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、リンゴ酸一ナトリウムなど)、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩、炭酸水素塩、ホウ酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩(例えば、リン酸一ナトリウム、リン酸三ナトリウム、ピロリン酸塩)イミダゾールなどの任意の経口的に許容可能なpH調節剤を使用することができる。場合により、1つ以上のpH調節剤を、組成物を経口的に許容可能なpH範囲に維持するのに有効な総量で存在させる。
【0034】
さらなる実施形態では、本発明の組成物は、例えば、組成物及びその中に含有される成分の安定性を高め、洗剤の作用により歯の表面を洗浄するのを補助し、及び攪拌する際に発泡を提供する(例えば、本発明の歯磨剤組成物によるブラッシング中に)のに有用な少なくとも1つの界面活性剤を含む。アニオン性、非イオン性または両性であるものを含め、任意の経口的に許容可能な界面活性剤を使用することができる。好適なアニオン性界面活性剤として、限定するものではないが、C8-20アルキル硫酸塩の水溶性塩、C8-20脂肪酸のスルホン化モノグリセリド、サルコシン酸塩、タウレートなどが挙げられる。適切な非イオン性界面活性剤として、限定されるものではないが、ポロキサマー、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、脂肪アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、第3級アミンオキシド、第3級ホスフィンオキシド、ジアルキルスルホキシドなどが挙げられる。好適な両性界面活性剤として、限定するものではないが、カルボン酸塩、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩またはホスホン酸塩などのアニオン性基を有するC8-20脂肪族第2級及び第3級アミンの誘導体が挙げられる。適切な例は、ココアミドプロピルベタインである。場合により、1つ以上の界面活性剤を、組成物の総重量の0.01重量%~10重量%、例えば0.05重量%~5重量%または0.1重量%~2重量%の総量で存在させる。
【0035】
さらに別の実施形態では、本発明の口腔ケア組成物は、例えば、攪拌する際に組成物が生成する発泡の量、厚さまたは安定性を増加させるのに有用な少なくとも1つの発泡調節剤を含む。ポリエチレングリコール(PEG)を含むが、必ずしもこれに限定されない任意の経口的に許容可能な発泡調節剤を使用することができる。場合により、1つ以上のPEGを、組成物の全重量に対して0.1重量%~10重量%の総量で存在させる。
【0036】
さらに別の実施形態では、本発明の口腔ケア組成物は、例えば組成物に所望の粘り及び/または口当たりを与えるのに有用な少なくとも1つの増粘剤を含む。限定するものではないが、カルボマー(カルボキシビニルポリマー)、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びその塩などのセルロース系ポリマー、カラヤ、キサンタン、アラビアゴム及びトラガントなどの天然ゴム、コロイド状マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、コロイド状シリカなどの任意の経口的に許容可能な増粘剤を使用することができる。場合により、1つ以上の増粘剤を、組成物の全重量に対して0.01重量%~15重量%の総量で存在させる。
【0037】
さらに別の実施形態では、本発明の組成物は、例えば成分の沈降または分離を阻害するか、または液体組成物の攪拌時の成分の再分散を促進するのに有用な少なくとも1つの粘度調整剤を含む。限定するものではないが、鉱油、ワセリン、粘土、シリカなどを含む経口的に許容可能な粘度調整剤を使用することができる。場合により、1つ以上の粘度調整剤を、組成物の全重量に対して0.01重量%~10重量%の総量で存在させる。
【0038】
さらに別の実施形態では、本発明の口腔ケア組成物は、空気に曝露する際の練り歯磨きの硬化を防止するために、またはうがい薬の場合には、保湿及び口当たりを向上させ、難溶性成分の混和性を高めるために使用し得る香味油のような少なくとも1つの湿潤剤を含む。限定するものではないが、グリセリン、ソルビトール、キシリトールまたは低分子量PEGなどの多価アルコールを含む任意の経口的に許容可能な湿潤剤を使用することができる。ほとんどの湿潤剤は甘味料としても機能する。場合により、1つ以上の湿潤剤を、組成物の総重量の1重量%~50重量%の総量で存在させる。
【0039】
さらなる実施形態では、本発明の口腔ケア組成物は、組成物の味を高める少なくとも1つの甘味料を含む。限定するものではないが、デキストロース、スクロース、マルトース、デキストリン、マンノース、キシロース、リボース、フルクトース、レブロース、ガラクトース、コーンシロップ、部分的に加水分解したデンプン、水素化デンプン加水分解物、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、マルチトール、イソマルト、アスパルテーム、ネオテーム、サッカリン及びその塩、ジペプチドに基づく強烈な甘味料、シクラメートなどを含む、任意の経口的に許容可能な天然または人工甘味料を使用することができる。場合により、1つ以上の甘味料を、組成物の総重量の0.005重量%~5重量%の総量で存在させる。
【0040】
さらなる実施形態では、本発明の口腔ケア組成物は、組成物の味を高める少なくとも1つの香味料を含む。限定するものではないが、バニリン、セイジ、マジョラム、パセリ油、スピアミント油、シナモン油、ウィンターグリーン油(メチルサリチル酸)、ペパーミント油、クローブ油、ベイ油、アニス油、ユーカリ油、シトラス油、果実油及びエッセンスなどを含む、任意の経口的に許容可能な天然または人工香味料を使用することができる。香味料には、冷却効果または加温効果を含む口内での芳香及び/または他の知覚効果をもたらす成分も包含される。そのような成分として、例えば、メントール、酢酸メンチル、乳酸メンチル、カンフル、ユーカリ油、ユーカリプトール、オイゲノール、カシア、オキサノン、α-イリソン、チモール、リナロール、ベンズアルデヒド、シンナムアルデヒド、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミン、N,2,3-トリメチル-2-イソプロピルブタンアミド、3-(1-メントキシ)-プロパン-1,2-ジオール、シンナムアルデヒドグリセロールアセタール(CGA)、メントングリセロールアセタール(MGA)などが挙げられる。場合により、1つ以上の香味料を、組成物の全重量に対して、0.01重量%~5重量%の総量で存在させる。
【0041】
さらなる実施形態では、本発明の口腔ケア組成物は、少なくとも1つの着色剤を含む。着色剤は、多くの機能を果たすことができる。これらは、組成物が効果的に接触した歯科表面上の位置を示す、及び/または消費者への魅力を高めるために組成物の外観を変更する、歯表面上に白色または淡色のコーティングを提供することを含む。限定されるものではないが、タルク、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、シリカ、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、フェロシアン化第二鉄、マンガンバイオレット、チタン化雲母、オキシ塩化ビスマスなどの任意の経口的に許容可能な着色剤を使用することができる。場合により、1つ以上の着色剤を、組成物の総重量の0.001重量%~20重量%の総量で存在させる。
【0042】
なおさらなる実施形態では、本発明の口腔ケア組成物は、防腐剤を含む。防腐剤は、パラベン、ソルビン酸カリウム、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、ポリアミノプロピルビグアナイド、カプリル酸、安息香酸ナトリウム及び塩化セチルピリジニウムから選択してもよい。いくつかの実施形態では、防腐剤は、組成物の全重量に基づいて約0.001~約1重量%の量で存在する。
【0043】
以下の実施例は、本発明の組成物及びその使用を説明する。例示する組成物は例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0044】
実施例1-表面粗さ
ウシの歯を切断し、擦り砕いて研磨し、およそ3mm×3mm×2mmの寸法を有するエナメル質のブロックを得る。エナメル質の厚さはおよそ1~2mmであり、象牙質の厚さはおよそ1mmである。すべての測定をエナメル質表面上で行う。
【0045】
エナメル質のブロックの表面粗さを、酸エッチングの前後で測定する。酸エッチングは、表面粗さ(Sq)が100~200に達するまでエナメル質のブロックを1%クエン酸溶液(pH3.8)中に静置することによって実現する。このSq値を、エッチングしたエナメル質の表面粗さとして記録する。(Sqは、基本的に、測定する表面の相加平均高さに対する二乗平均高さとしてISO25178で定義されている標準尺度であるため、測定領域内の中心平面からの凹凸のすべての絶対距離の平均に相当し、したがって、その測定値がより高い場合には、表面上に顕著なピーク及び谷が存在する、すなわち表面がより粗いことを意味し、測定値がより低い場合には、表面がより滑らかであることを意味する。)加水分解したコムギタンパク質調製物は、BASFのGLUADIN W20を用いて作製した。NaHPO緩衝液(1.5mM)及びCaCl(2.5mM)を用いて加水分解物を最終濃度に希釈する。pH7.5に中和した後、溶液を濾過し、遠心分離する。酸エッチングしたエナメル質のブロックについて、その後、処理後の加水分解したコムギタンパク質を0.5重量%の濃度で含む溶液(1ブロック当たり2mlの溶液)でもって、60分間インキュベートした。
【0046】
60分間のインキュベーション期間の後、エナメル質のブロックを人工唾液(AS)溶液(0.4gのNaCl、0.4gのKCl、0.8gのCaCl、0.69gのNaHPO、1gの尿素、1Lの蒸留水;pH7(1M NaOHを用いて調整))中で22時間インキュベートする。次いで、エナメル質のブロックを、加水分解したタンパク質溶液で2回処理し、人工唾液で22時間再度インキュベートする。次いで、ブロックを脱イオン(DI)水ですすぎ、それらの表面粗さを測定する前に風乾させる。0.5%PBSで処理したエナメル質のブロックを実験の陰性対照として使用する。結果を表1に示す。再石灰化率(%)は、エッチングしたエナメル質の表面粗さ(処理及び人工唾液インキュベーションの前)に対する、最終面粗度(Sq)の減少率(%)を表す。
【数1】
表1-表面粗さアッセイの結果
【表1】
【0047】
表1に示すように、加水分解したコムギタンパク質は、酸エッチングしたエナメル質のブロックの表面粗さを減少させるのに、0.5重量%の濃度で有効である。
【0048】
実施例2-ナノインデンテーション
エナメル質のブロックを実施例1に記載したように調製する。エナメル質のブロックを1%クエン酸溶液(pH3.8)中に15分間静置することによって酸エッチングを実現する。500nmの深さにおけるナノ硬度及びヤング率を、エッチングの前後で測定する。エッチングしたエナメル質のブロックについて、0.5重量%の濃度での、加水分解したコムギタンパク質(GLUADIN W20)の溶液でもって30分間インキュベートし(2mlの溶液/ブロック)、続いて、実施例1に記載したように工唾液(AS)溶液でもって22~24時間インキュベートする。加水分解したコムギタンパク質及び人工唾液(AS)インキュベーションの工程をさらに2回繰り返し、その後、エナメル質のブロックを、脱イオン水ですすぎ、空気乾燥させる。処理したエナメル質のブロックについての、500nmの深さにおけるナノ硬度及びヤング率を測定し、加水分解したコムギタンパク質のエナメル質修復効果を評価する。500ppmのフッ化物の溶液を実験の陽性対照として使用する。結果を表2及び表3に示す。
【数2】
表2-加水分解したコムギタンパク質の修復効力-ナノ硬度
【表2】

表3-加水分解したコムギタンパク質の修復効力-ヤング率
【表3】
【0049】
表2及び3に認められるように、加水分解したコムギタンパク質は、酸蝕されたエナメル質の修復に有効である。
【0050】
実施例3-微小硬度
エナメルブロックは、実施例1に記載したように調製する。微小硬度は、Knoop Diamond Indenter及び50g荷重(Buehler、Lake Bluff、IL、USA)を備えたMicromet 6020微小硬度試験機を用いて測定する。少なくとも300のヌープ硬度(KH)を有するブロックを選択する。ブロックを、30%リン酸中に15秒間浸漬することによってエッチングする。ブロックの左右のKHを測定する。続いて、ブロックの右側をテープで覆ってから、ブロックを、加水分解したコムギタンパク質(BASFのGluadin W20)または加水分解したコメタンパク質(BASFのGLUADIN R)の、いずれも実施例1に記載したように中和した20mg/ml溶液で30分の2つの期間だけ処理する。(ブロックの右側にあるテープは、この側がタンパク質溶液に曝されることを防止し、内部対照として機能する。)ブロックをDI水で2回、2つの処理の間及び2回目の処理の後に、5分間500PRMで洗浄する。続いて、テープを除去し、ブロックを人工唾液(AS)溶液(0.2mM MgCl、1mM CaCl・HO、20mM HEPES緩衝液、4mM KHPO、16mM KCl、4.5mM NHCl、300ppm NaF、0.05重量%NaN、pH7(1M NaOHでもって調整))中で、7日間インキュベートした。DI水でエナメル質のブロックをすすぎ洗いし、すすいだブロックを風乾した後、微小硬度を再び測定する。百分率での表面微小硬度の回復率(SMHL、Remin%)は、次のように計算される。
【数3】
【0051】
微小硬度アッセイの結果を表4に示す。
表4-微小硬度アッセイの結果
【表4】
【0052】
表4から、加水分解したコムギタンパク質及び加水分解したコメタンパク質は、酸エッチングしたエナメル質のブロックのエナメル表面を再石灰化するのに有効であることが分かる。すべての微小硬度試験において、人工唾液に浸漬し、人工唾液からある程度の修復を受けた右側/内部対照側に由来する再石灰化率を結果から差し引いており、これにより、データが、加水分解したタンパク質による効果の差分を示す点に留意されたい。
【0053】
次に、本実験を拡張し、加水分解したコムギ及びコメタンパク質の効果を、フッ化物と比較して、及びフッ化物との組み合わせで測定する。
【0054】
フッ化物(NaFの形態で提供される)と混合した2種類の濃度の加水分解物(2重量%及び0.2重量%)を試験すると、結果は、2重量%及び0.2重量%のコムギ加水分解物(Gluadin W20、BASF)及びコメ加水分解物(Gluadin R、BASF)は、いずれもフッ化物修復を高めることができることを示す。NaHPO緩衝液(1.5mM)及びCaCl(2.5mM)を用いて加水分解物を希釈する。pH7.5に中和した後、溶液を濾過し、遠心分離する。濾液に殺生物剤(CPC 0.1%)及びフッ化物(表5に記載のように様々な量)を添加し、微小硬度アッセイを上記のように実施する。
【0055】
加水分解物+フッ化物で処理するエッチングしたエナメル質は、フッ化物単独で処理する試料に比べて、より高い再石灰化率を有する。試験はまた、植物タンパク質加水分解物との比較のためにα-フェトプロテイン(AFP)を用いて実施する。
【0056】
異なる用量のフッ化物を含む0.2%加水分解物の再石灰化%も試験する。低濃度(0.2%)の加水分解物試験のうち、0.2重量%のコムギ加水分解物+500ppmのフッ化物が最良の結果を示す。フッ化物レベルを900ppmに上昇させてもほとんど向上することはない。
表5-加水分解物は、微小硬度アッセイにおけるエナメル修復に対するフッ化物の効果を高める;
【表5】
別々の一連の実験で試験を実施し;比較目的のためにデータをプールした。
【0057】
実施例4-虫歯モデルにおけるフッ化物の虫歯予防効果の増強
実施例1に従って調製したウシのエナメル質のブロックをプレスクリーニングし、実施例3に記載したように、(i)傷のないエナメル表面及び(ii)KH>300の微小硬度を有する試料を選択する。次いで、選択したエナメル質のブロックについて、前記実施例に記載したように調製した、DI水(陰性対照)、500ppm F(陽性対照)及び0.2%コムギ加水分解物(Gluadin W20)+500ppm F(試験物質)を用いて、以下に記載するように、前処理し、4日間のサイクルに供する。エナメル質のブロックの微小硬度を最終値(MHfinal)として再び測定する。
【0058】
前処理:エナメル質のブロックを実施例1と同様に調製する。各エナメルブロックをエタノール中で2回浄化し、次いで滅菌DI水で3回洗浄する。次に、各エナメル質のブロックを4℃で一晩、唾液上清中でプレインキュベートし、エナメル質表面上にペリクルを形成する。
【0059】
2日目~5日目-歯磨剤の処理、脱ミネラル化及び再石灰化:朝の食生活及び口腔衛生を控えているドナーから、非刺激の全唾液を集める。唾液をプールし、8000rpmで10分間遠心分離する。得られた唾液上清を新しい滅菌チューブにデカントし、1.5%Tryptic Soy Broth(TSB)と2:1の比で混合する(唾液上清2部及びTSB1部)。沈降物を滅菌DI水で1回洗浄し、8000rpmで10分間遠心分離する。水の上清を除去する。次いで、洗浄した沈殿物を唾液上清TSB混合物中でOD(610nm)=0.5に希釈する。滅菌ショ糖溶液を、第1の実験では0.2%、第2の実験では0.4%の最終濃度になるように添加する(第2の実験ではスクロースのレベルを増加させ、脱ミネラル化レベルを高める)。この混合物は、反応混合物である。唾液沈殿物中の細菌がスクロースをゆっくりと代謝して酸を生成するため、この反応混合物は脱ミネラル化及び再石灰化の溶液として機能する。
【0060】
エナメル質のブロックを、特定のウェル中の2mlの処理溶液(500ppm Fもしくは0.2%の加水分解したコムギタンパク質(Gluadin W20)+500ppm F)または陰性対照(DI水)を用いて24ウェルプレートに移す。プレートを室温で100rpm、10分間振とうする。処理後、エナメル質のブロックを滅菌DI水で2回洗浄する。洗浄後、エナメル質のブロックを1ウェルあたり1mlの上記反応混合物を含む新しい24ウェルプレートに移し、少なくとも1時間、37℃でインキュベートする。この処理及びインキュベーションプロセスは、その日の中に合計4回繰り返す。4回目の処理の後、エナメル質のブロックを反応混合物中に放置し、37℃で一晩インキュベートする。
【0061】
上記の手順を合計4日間(2日目~5日目)繰り返す。5日目の終わりに、エナメル質のブロックを反応混合物から取り出し、洗浄し、ベンチトップ上で乾燥させる。
【0062】
評価:Knoop Diamond Indenter及び25g荷重(Buehler、Lake Bluff、IL、USA)を備えたMicromet6020微小硬度試験機を用いて、機械的特性の変化を評価する。表面微小硬度の測定は、ベースライン(確認された健全なエナメル質)及び処理後に行う。割合としての表面微小硬度損失(SMHL、Demin%)は、(1-(Microhardnessfinal/Microhardnesssound))*100として計算した。
【0063】
実施例1~3は、加水分解したコムギタンパク質が、フッ化物のエナメル質修復特性を増強することができることを示す。この実験の結果は、加水分解したコムギタンパク質とフッ化物は、フッ化物単独よりも高い虫歯予防効果を提供することを示している。
【0064】
上記in vitro虫歯予防モデルを使用して、0.2%コムギ加水分解物(Gluadin W20)+500ppmのフッ化物(NaFとして提供)での2つの試験(0.2%及び0.4%スクロースを用いる)を完了する。
【0065】
下記の表は、2つの試験からの結果を示す。最初の試験は、唾液沈殿物中の細菌に対して0.2%スクロースを用いて実施し、これを代謝させ、酸を生成させる。第2の試験は、同じ手順で行うが、0.4%スクロースを使用する。第2の実験におけるスクロースのレベルは、より多くの酸を産生させるように増加させ、脱ミネラル化のレベルを高める。両方の試験結果は、500ppm FがDI水に比べてより良い虫歯予防特性を有するが、その虫歯予防特性は0.2%のコムギ加水分解物と混合した場合にさらに向上することを示している。
表5-加水分解したコムギタンパク質のフッ化物による虫歯予防/脱ミネラル化保護
【表6】

両試験からの結果は、コムギ加水分解物+500ppm Fが、500ppm FまたはDI水よりも虫歯予防特性が優れている(すなわち、脱ミネラル化が少ない)ことを示している。
【0066】
実施例5-フッ化物の再石灰化及び虫歯予防効果の増強-臨床試験
処理段階はex vivoで完了させる。最初の微小硬度(MH)の測定は、健全なウシのエナメル質のブロック(MHBaseline)で行う。その後、ベースラインからの微小硬度の変化が40%になるまで、ブロックを30%リン酸でエッチングする。微小硬度をエッチングとして記録する(式1、MHEtched)。次いで、エッチングした各エナメル質のブロックを、前処理した0.2%コムギ加水分解物(Gluadin W20)+500ppm Fの2ml溶液または500ppm Fの2ml溶液に30分間浸漬する。30分後、ブロックをDI水で500RPM、5分間2回洗浄し、次いでペーパータオルで乾燥する。この処理サイクルを繰り返す。次いで、ブロックを、被験者の口腔内に配置するためにリテーナ上の指定された位置内に固定する。6つのエナメル質のブロックを各リテーナに配置する。リテーナ上にあらかじめ打ち抜かれた穴があることにより、エッチングしたエナメル質に唾液が接触し、再石灰化のためのミネラルを提供することが可能になる。したがって、各被験者は、試験中に口腔内のリテーナ内に6つのエナメル質のブロックを有する(3つは0.2%コムギ加水分解物+500ppm Fで処理し、3つは対照として500ppm Fで処理する)。処理したエナメルブロック及び対照エナメルブロックを、リテーナの左側または右側でランダム化する。リテーナを、試験の1日目まで冷蔵庫内で保存する。
【0067】
この無作為化盲検試験には、26人の被験者が含まれる。パネリストが虫歯予防用練り歯磨き(1100ppmのフッ化物)でブラッシングした1週間の洗い出し期間の後、被験者に、前処理したエナメル質のブロックを含むリテーナを与える。被験者は、7日間(24時間/日)にわたってリテーナを着用し、朝と夕方に虫歯予防用練り歯磨きを使用し、各食事の後に無アルコールの口内洗浄液(フッ化物100ppm)を使用する必要があった(合計で最大3回/日)。また、毎晩、水でリテーナをすすいでプラークの蓄積を避ける必要がある。7日後、エナメル質のブロックを器具から取り出し、最終微小硬度測定値(MHRinineralized)を測定する。脱ミネラル化及び再石灰化は次のように計算する:
【数4】
【0068】
体重調整あり及びなしの2-way ANOVAを使用してデータを分析する。0.05未満のp値を使用して、統計的有意性を示す。両方の統計的分析は、群間での有意差を示した。以下の結果は、7日後、0.2%コムギ加水分解物+500ppm F処理群にて、500ppm F対照群に比べて有意により大きな再石灰化が測定されることを示している。
表6-In situ臨床試験結果
【表7】
同じ文字を共有しない手段は有意に異なる。
【0069】
再石灰化効力臨床試験の分析結果は、2サイクルの処理(ex vivo)及び7日間の再石灰化(in situ)の後、0.2%のコムギ加水分解物+500ppm Fで処理したエナメル質のブロックは、500ppm F対照に比べて、有意に良好な再石灰化を示した。
【0070】
実施例6-うがい薬配合物
本実施例は、0.2%コムギ加水分解物及び225ppm Fを含有する完全なうがい薬配合物において、再ミネラル化を促進する際のコムギ加水分解物の驚くべき有効性が認められるかどうかを探る。2つの異なる処理方法について、すなわち単回処理(7日間で1回)または反復処理(1日に1回、7日間)について試験する。結果は、コムギ加水分解物が、単回処理及び反復処理の両方においてその再石灰化の利点を保持することを示しており;コムギ加水分解物は反復処理において、より良好な修復効力を有する。
【0071】
以下の成分を含む試験うがい薬及び対照うがい薬を調製する:
【表8】
【0072】
ウシの歯を切断し、研削・研磨し、エナメル質のブロックを得る(約3×3×2mm)。エナメル質の厚さは1~2mmであり、象牙質の厚さは約1mmである。エナメル質のブロックを、鉛筆を使用して左側(処理に使用する)及び右側(内部対照として使用する)としてマークする。すべての最終微小硬度(MH)の測定は、エナメル質ブロックの表面の左右両側で遂行する。
【0073】
状態の良いエナメル質ブロックの微小硬度(ヌープ硬度-KH、50g荷重)を測定し、ヌープ硬度(KH)>300のブロックを選択する。ブロックを30%リン酸で15秒間エッチングする。エッチングされた際のKHを測定する。
【0074】
各処理の前に、各ブロックの右側をUPVCテープで覆う。ブロックの右側は内部対照として使用するため、ブロックの左側のみを処理に曝す。個々のブロックを1mlの指定された処理溶液(試験または対照うがい薬)で1分間処理する。1分間の処理が終わった後、ブロックから被覆を解いてUPVCテープを取り除く前に、ブロックを500RPM、5分間脱イオン水で2回すすぐ。このブロックを、リントフリーのティッシュ(Kimwipe)上で風乾し、次いで、15mlの人工生理食塩水(MgCl 0.2mM、CaCl・HO 1mM、HEPES緩衝液20mM、KHPO 4mM、KCl 16mM、NHCl 4.5mM、NaF 300ppm、0.05wt%NaN、pH=7.0、(1M NaOHで調整))中、37℃でインキュベートする。したがって、左側は処理に曝し、一方、右側は人工生理食塩水のみでインキュベートする。ブロックの右側は、次の処理が開始する前に再度被覆する。
【0075】
4つの異なる処理を評価する:
A-試験うがい薬:人工唾液で処理した後、一晩インキュベートする。これを7日間繰り返す。
B-対照うがい薬:人工唾液で処理した後、一晩インキュベートする。これを7日間繰り返す。
C-試験うがい薬:(一度)処理した後、人工唾液中で7日間インキュベートする。
D-対照うがい薬:(一度)処理した後、人工唾液中で7日間インキュベートする。
【0076】
処理A及びBで使用したブロックを、一晩のインキュベーション後に人工生理食塩水から取り出し、DI水で洗浄し、風乾し、さらに6日間、処理を繰り返す。群C及び群Dのブロックについては、最初に処理した後、それ以上の処理は行わないが、毎日、新鮮な唾液を補充する。プロトコールの終了時に、すべてのブロックを取り出し、DI水で洗浄し(500rpmで5分間、2回)、風乾し、処理/インキュベーション期間が終了した後に最終測定のために保存する。
【0077】
微小硬度を測定し、上記式1を用いて再ミネラル化の割合を計算する。対照うがい薬に対する、試験うがい薬による処理によってもたらされる再石灰化率は、左側で観察される再石灰化率から右側の内部対照で観察される再石灰化率を差し引くことによって計算する(すなわち、処理の再石灰化%=左側の再石灰化%-右側の再石灰化%)。
【0078】
1日1回の処理を7日間反復したブロックは、コムギのうがい薬については約15%の再石灰化を有し、プラセボのうがい薬については8.5%の再石灰化を有する。1回のみ処理したブロックは、コムギのうがい薬については5.7%の再石灰化を有し、プラセボのうがい薬については4.4%の再石灰化を有する。これは、コムギ加水分解物がうがい薬配合物においてエナメル修復の利点を維持していることを示しており;コムギ加水分解物は反復処理において、より良好な有効性を示した。
【0079】
本発明の特定の実施形態を例示し、説明したが、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行い得ることは当業者には明らかであろう。