IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧

<>
  • 特許-エトキシキンの精製方法 図1
  • 特許-エトキシキンの精製方法 図2
  • 特許-エトキシキンの精製方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】エトキシキンの精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 215/20 20060101AFI20220801BHJP
   A23K 20/132 20160101ALI20220801BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20220801BHJP
【FI】
C07D215/20
A23K20/132
A23L33/10
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018568327
(86)(22)【出願日】2017-06-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-15
(86)【国際出願番号】 EP2017065414
(87)【国際公開番号】W WO2018001862
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-17
(31)【優先権主張番号】16176852.8
(32)【優先日】2016-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】16191008.8
(32)【優先日】2016-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロイ,スマナ
(72)【発明者】
【氏名】ケラー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ジーゲル,ヴォルフガング
(72)【発明者】
【氏名】イェデッケ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ハウブナー,マルティン
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105085393(CN,A)
【文献】特開昭49-035387(JP,A)
【文献】国際公開第2010/031790(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/184498(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A23L
A23K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの隔壁カラム又は少なくとも2つの熱結合カラムを使用する連続蒸留の少なくとも1つのステップを含む、p-フェネチジンを含む原料からエトキシキンを精製する方法であって、当該少なくとも2つの結合したカラムのうち少なくとも1つは隔壁カラムであり、100ppm未満のp-フェネチジンを含むエトキシキン生成物が得られ、
A)当該少なくとも1つのカラムが10~100の数の分離段階を有し、
B)当該少なくとも1つのカラムが1~100mbarで作動し、
C)当該少なくとも1つのカラムの底部温度が80~200℃の値に設定され、
D)底部液体の量(体積)が、当該少なくとも1つのカラム内の分離される物質の量の合計体積の1~30%であり、
E)底部取出体積の供給量に対する比が0.01~0.3であり、
F)100~1000m2/m3の比表面積の充填物を有する充填カラムを使用し、かつ
G)還流の量と供給量との比が0.5:1~5:1の係数を有する、
方法。
【請求項2】
隔壁カラムがカラムの長手方向に隔壁(T)を有し、上部(C)及び下部(D)共通カラム領域、流入部(A)並びに取出部(B)を形成しており、分離される混合物が流入領域の中央部分に供給され、かつ、エトキシキン生成物が取出部の中央領域から取り出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
隔壁カラムの形態のカラムを1つのみ使用する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
隔壁カラム(TK)がカラムの長手方向に隔壁(T)を有し、上部共通カラム領域(1)、下部共通カラム領域(6)、整流部(2)及びストリッピング部(4)をもつ流入部(2、4)、並びに整流部(5)及びストリッピング部(3)をもつ取出部(3、5)を形成しており、分離される混合物(供給材料)が流入部(2、4)の中央領域に供給され、高沸点留分が底部(底部取出口C)を介して取り出され、低沸点留分がオーバーヘッド(頂部取出口A)を介して取り出され、かつ、中間沸点留分が取出部(3、5)の中央領域(側方取出口B)から取り出される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの隔壁カラムが30~100の理論段を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
カラムの理論段の総数(n)のうち、少なくとも1つの隔壁カラム(TK)の上部共通カラム領域(1)が5~50%を有し、カラムの流入部(2、4)の整流部(2)が5~50%を有し、カラムの流入部のストリッピング部(4)が5~50%を有し、カラムの取出部(3、5)の整流部(3)が5~50%を有し、カラムの取出部のストリッピング部(5)が5~50%を有し、かつ、カラムの共通下部領域(6)が5~50%を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの隔壁カラム(TK)において、各々の場合に流入部のサブ領域(2)及び(4)の理論段の数の総和が取出部の小区分(3)及び(5)の段の数の合計の80~110%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
隔壁カラムの理論段の総数のうち、隔壁部が40~80%を有し、上部共通カラム部が5~50%を有し、かつ、下部共通カラム部が5~50%を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
カラムの理論段の総数(n)のうち、少なくとも1つの隔壁カラム(TK)の上部共通カラム領域(1)が5~50%を有し、カラムの流入部(2、4)の整流部(2)が5~50%を有し、カラムの流入部のストリッピング部(4)が5~50%を有し、カラムの取出部(3、5)の整流部(3)が5~50%を有し、カラムの取出部のストリッピング部(5)が5~50%を有し、カラムの共通下部領域(6)が5~50%を有し、小区分2、3、4及び5又はその部分からなる隔壁(T)により分割された隔壁カラム(TK)の小区分が規則充填又はランダム充填で装填され、かつ、カラムが少なくとも部分的にランダム充填又は規則充填で充填されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
小区分2、3、4及び5又はその部分からなる隔壁(T)により分割された隔壁カラム(TK)の小区分が規則充填又はランダム充填で装填され、かつ、カラムが少なくとも部分的に規則充填で充填されている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
カラムが少なくとも部分的にシートメタルからなるもので充填されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
底部における高沸点物の滞留時間が10時間未満である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
エトキシキンを含有する食料品又は家畜飼料を製造する方法であって、
1)粗エトキシキン生成物を、少なくとも1つの隔壁カラム又は少なくとも2つの熱結合カラムを使用する連続蒸留の少なくとも1つのステップに供するステップであって、当該少なくとも2つの結合したカラムの少なくとも1つは隔壁カラムであり、
A)当該少なくとも1つのカラムが10~100の数の分離段階を有し、
B)当該少なくとも1つのカラムが1~100mbarで作動し、
C)当該少なくとも1つのカラムの底部温度が80~200℃の値に設定され、
D)底部液体の量(体積)が当該少なくとも1つのカラム内の分離される物質の量の合計体積の1~30%であり、
E)底部取出体積の供給量に対する比が0.01~0.3であり、
F)100~1000m2/m3の比表面積の規則充填物を有する充填カラムを使用し、
G)還流の量と供給量との比が0.5:1~5:1の係数を有し、かつ、
H)底部における高沸点物の滞留時間が5時間未満である
ステップ、
2)ステップ1のプロセスから、50ppm未満のp-フェネチジン含有量を有するエトキシキン生成物を得るステップ、及び
3)ステップ2で得られるエトキシキン生成物を食料品又は家畜飼料に導入するステップ
を含む、方法。
【請求項14】
ステップ1において、粗エトキシキン生成物を、少なくとも1つの隔壁カラム又は少なくとも2つの熱結合カラムを使用する連続蒸留の1つだけのステップに供する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ1のプロセスは、その後のエトキシキン精製ステップを含まない、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
その後のエトキシキン精製ステップが、吸着、洗浄、又は結晶化である、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸留によりエトキシキンを精製する方法、蒸留精製によって得ることができる高純度エトキシキン並びにその使用、特に食料品及び家畜飼料における添加剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エトキシキン自体は、各種の基本的な技術的操作によるその精製と同様に公知である。しかし、これまでのところ、高純度のエトキシキン、特に100ppm未満、好ましくは50ppm未満、特に好ましくは10ppm未満、殊に好ましくは5ppm未満、例えば1ppm未満又はさらには0.5ppm未満、そして間の全ての値、例えば90、80、70、60、45、40、35、30、25、20、15、9、8、7、6、4、3、2、0.9、0.8、0.7、0.6、0.4、0.3、0.2未満又は0.1未満のp-フェネチジンを含む類のエトキシキンを得ることはできていない。
【0003】
しかし、p-フェネチジンは毒物学的問題のある物質として知られているので、エトキシキンからできるだけ減らすことは急務である。今までのところ、0.1パーセント(1000ppmに相当する)未満のp-フェネチジン含有率を有するエトキシキンを提供する精製方法は達成されていない。
【0004】
エトキシキン(図1)は1,2-ジヒドロ-6-エトキシ-2,2,4-トリメチルキノリンの慣用名であり、CAS番号91-53-2及びE番号324を有する。その公知の抗酸化作用のため、エトキシキンは、とりわけ、脂肪及びビタミンの酸化を阻止するか又は少なくとも遅らせるので、主に家畜飼料の貯蔵のために何十年も使用されている。
【0005】
エトキシキンは、例えば、p-クロロニトロベンゼンとナトリウムメトキシドから出発し、得られた反応生成物の水素化でp-フェネチジンを得、その後アセトンとの反応により得ることができる(例えばThomas A. Unger: Pesticide Synthesis Handbook. William Andrew, 1996, p. 586参照)。
【0006】
p-フェネチジンは、p-フェネチジンを介する合成経路によりエトキシキンを製造すると存在する公知の不純物である。したがって、エトキシキン生成物中のこの二次成分を枯渇させることが目標であった。
【0007】
p-フェネチジンは3℃の融点及び254℃の沸点を有する。エトキシキンは2.67hPaでゼロ℃より低い融点及び約123~125℃の沸点を有する。
【0008】
2つの有機物質を分離する慣用方法は、例えば、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 2012中の"Separation Processes, Introduction", C.Judson Kingに記載されている。それから明らかなように、エトキシキンを精製する目的を提示される当業者は工業規模の方法として蒸留を使用することはないであろう。それどころか、当業者は、そこから、有機生成物から少量の不純物を分離する問題(すなわち洗練された精製)の場合、特に吸着プロセス、酸による沈殿/洗浄、クロマトグラフ法、ストリッピング又は結晶化が最も期待できる基本的な操作であると知らされる。対照的に、Ullmannによると、蒸留は粗い精製に使用される。すなわち、1つの成分の枯渇後、生成物流が上記のような洗練された精製に供される。
【0009】
対照的に、Ullmannによると、エトキシキンの洗練された精製におけるそのような問題の場合、蒸留は妥当な最良の工程段階ではない。
【0010】
Ping He and Robert G. Ackmann, Journal of Agricultural and Food Chemistry, Volume 48, Number 8, August 2000, pages 3069 to 3071, "Purification of Ethoxyquin and its two Oxidation Products"は、エトキシキン及びエトキシキンダイマー並びにさらなる物質の様々な精製方法を記載している。この場合、エトキシキンは減圧下での蒸留により約90パーセント(面積パーセント)の純度に富化された後、カラムクロマトグラフィーによって99パーセントを超える純度に濃縮された。蒸留によってもその他の方法によっても、500ppm未満のp-フェネチジンを有するエトキシキンの精製は開示されていない。
【0011】
1000ppm未満のp-フェネチジンの純度を有するエトキシキンの提供を開示する特許文献は知られていない。
【0012】
したがって、100ppm未満のp-フェネチジンを有するエトキシキンを極めて高い純度で提供する方法、殊に工業規模の方法は今までのところ知られていない。特に、これらの要件を満たす商業的工業製品は知られていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【文献】Thomas A. Unger: Pesticide Synthesis Handbook. William Andrew, 1996, p. 586
【文献】Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 2012, "Separation Processes, Introduction", C.Judson King
【文献】Ping He and Robert G. Ackmann, Journal of Agricultural and Food Chemistry, Volume 48, Number 8, August 2000, pages 3069 to 3071, "Purification of Ethoxyquin and its two Oxidation Products"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、エトキシキンの使用の際のそのp-フェネチジン不純物に関するあらゆる毒物学的懸念を考慮に入れて、そのp-フェネチジン含有率が100ppm未満、特に可能な限り低いエトキシキンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
少なくとも1の蒸留ステップを含み、好ましくは吸着、洗浄、結晶化のようなさらなる精製ステップを含まず、特に好ましくは1以上の蒸留ステップのみを含み、殊に好ましくは1又は2の蒸留ステップのみを含む、p-フェネチジンを含むエトキシキンを精製する方法であって、100ppm未満、好ましくは50ppm未満、特に好ましくは10ppm未満、殊に好ましくは5ppm未満、例えば、1ppm未満又はさらには0.5ppm未満、またこれらの間のあらゆる値、例えば90、80、70、60、45、40、35、30、25、20、15、9、8、7、6、4、3、2、0.9、0.8、0.7、0.6、0.4、0.3、0.2未満若しくは0.1未満のp-フェネチジンを含むエトキシキンを得ることができる、方法が見出された。
【0016】
さらに、100ppm未満、好ましくは50ppm未満、特に好ましくは10ppm未満、殊に好ましくは5ppm未満、例えば1ppm未満又はさらには0.5ppm未満、及びこれらの間のあらゆる値、例えば90、80、70、60、45、40、35、30、25、20、15、9、8、7、6、4、3、2、0.9、0.8、0.7、0.6、0.4、0.3、0.2未満若しくは0.1未満のp-フェネチジンを含むエトキシキンが、本発明に係る方法によって得ることができるということが見出された。
【0017】
さらに、100ppm未満、好ましくは50ppm未満、特に好ましくは10ppm未満、殊に好ましくは5ppm未満、例えば1ppm未満又はさらには0.5ppm未満及びこれらの間のあらゆる値、例えば、90、80、70、60、45、40、35、30、25、20、15、9、8、7、6、4、3、2、0.9、0.8、0.7、0.6、0.4、0.3、0.2未満若しくは0.1未満のp-フェネチジンを含むエトキシキンが見出された。
【0018】
その上、例えば本発明に係る方法によって得ることができる、100ppm未満、好ましくは50ppm未満、特に好ましくは10ppm未満、殊に好ましくは5ppm未満、例えば、1ppm未満又はさらには0.5ppm未満、及びこれらの間のあらゆる値、例えば90、80、70、60、45、40、35、30、25、20、15、9、8、7、6、4、3、2、0.9、0.8、0.7、0.6、0.4、0.3、0.2未満若しくは0.1未満のp-フェネチジンを含むエトキシキンの、食料品及び家畜飼料、好ましくは家畜飼料の添加剤としての使用が見出された。ここで、エトキシキンは酸化防止剤として、特に好ましくは家畜飼料及び飼料添加物の酸化防止剤として使用される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、エトキシキンの構造を示す図である。
図2図2は、本発明に従って使用される隔壁カラムを示す図である。
図3図3は、本発明に従って使用される隔壁カラム-略図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本方法は以下に説明するようにエトキシキンの所望の量に応じて様々な規模で実施することができる。ここで基本的な原理及び装置の基本的な設定はどちらの場合も同等であり、殊に適合はプラントの大きさの結果である。装置の実際の大きさ及び構成に対して必要とされる可能な調節は、以下に説明する要件に照らして当業者に容易に可能である。
【0021】
本発明に従う蒸留はバッチ式又は連続的に実施することができる。連続モードが好ましい。特に、比較的大量の本発明のエトキシキンを連続蒸留によって提供することができる。
【0022】
本発明に従って生成物を提供する方法を実施することとの関連で、いわゆる隔壁カラムを用いる蒸留の熟練した実施の場合、一段階の蒸留ステップでさえ100ppm未満のフェネチジンを含むエトキシキンを得るのに充分であることが認められている。パラメーターの適切な調節及び場合によってさらなる蒸留ステップにより、事実上ゼロのp-フェネチジンに至るまで極めて低い割合のp-フェネチジンを含むエトキシキン生成物さえ得ることができる。
【0023】
この種の適切な隔壁カラムは、例えば米国特許第2,471,134号、米国特許第4,230,533号、欧州特許出願公開第122367号、欧州特許出願公開第126288号、欧州特許出願公開第133510号、国際公開第2010/031790号から、またChem.Eng. Technol. 10, 1987, pages 92 to 98、Chem.Ing. Tech. 61, 1989, No.1, pages 16-25、Gas Separation and Purification 4, 1990, pages 109 to 114、Process Engineering 2, 1993, pages 33 and 34、Trans IChemE 72, 1994, Part A, pages 639 to 644、Chemical Engineering 7, 1997, pages 72 to 76から当業者に公知である。
【0024】
この構築型で、隔壁は供給点及び側方排出口の上下の中央領域に据え付けられ、これは取出部(offtake section)3、5を流入部2、4に対して密封し、このカラム部内で液体及び蒸気流の横方向の混合を防ぐ。これは、多成分混合物の分別において必要とされる蒸留カラムの総数を減らす。慣用の側方取出カラムと同様に、中間の蒸発器及び中間の凝縮器も隔壁カラムに使用することができる。中間の凝縮器は隔壁の上端部又は隔壁の上方の共通カラム領域1に据え付けるのが好ましい。中間の蒸発器は隔壁の下端部又は隔壁の下方の共通カラム領域6に据え付けるのが好ましい。
【0025】
隔壁カラムは、同じエネルギー消費をもつ熱結合蒸留カラムの配置により置き換えることもできる。様々な装置構成で構築することができる熱結合蒸留カラムの記載も、技術文献の上記のところに見られる。また、蒸発器及び凝縮器と完全に別個のサブカラム(subcolumn)を備えることも可能である。これは中間の蒸発器及び中間の凝縮器を有する隔壁カラムに対応する。この特有の構成の特定の利点は、個々のカラムを異なる圧力で作動させることもできるということである。これにより、大き過ぎる温度差を避けることが可能になり、また作動温度を所定の加熱及び冷却媒体に合わせて調節することが可能になる。エネルギーネットワーク手段の可能性が向上する。
【0026】
本発明に従って使用することができるさらなる設計の隔壁カラムが提供され、そこでは隔壁が蒸留カラムの上端部又は下端部のいずれかまで連続して伸延され得る(図2)。この設計は関連側部カラムを伴う主カラムの配置に対応する。この実施形態の場合、慣用のカラム配置と比較してエネルギーコストの利点はないが、投資コストの利点が期待される。
【0027】
隔壁カラム及び熱結合蒸留カラムは慣用の蒸留カラムの配置と比較してエネルギー需要及び投資コストの両方の点で利点を提供する。隔壁カラム及び熱結合カラムを制御するために、様々な制御戦略が記載されている。記載は、米国特許第4,230,533号、独国特許第3522234C2号、欧州特許出願公開第780147号、Process Engineering 2 (1993), 33 - 34、及びInd. Eng. Chem. Res. 34 (1995), 2094 - 2103に見られる。
【0028】
本発明に係る方法で使用される典型的な隔壁カラム(TK)(国際公開第2010/031790号の図2参照)は各々の場合にカラムの長手方向(longitudinal direction)に隔壁(T)を有し、上部共通カラム領域(1)、下部共通カラム領域(6)、整流部(rectifying section)(2)及びストリッピング部(4)をもつ流入部(2、4)、並びに整流部(5)及びストリッピング部(3)をもつ取出部(3、5)を形成しており、分離される混合物(供給材料)は流入部(2、4)の中央領域に供給され、高沸点留分は底部(底部取出口C)を介して取り出され、低沸点留分はオーバーヘッド(頂部取出口A)を介して取り出され、中間沸点留分は取出部(3、5)の中央領域(側方取出口B)から取り出される。
【0029】
本発明に係る方法の隔壁カラムは各々は、好ましくは30~100、殊に50~90の理論段を有する。
【0030】
本発明との関連で典型的な隔壁カラムは各々好ましくはカラムの長手方向に隔壁(T)を有し、上部(C)及び下部(D)共通カラム領域、流入部(A)並びに取出部(B)を形成している。分離される混合物は流入領域の中央部分に供給され、生成物EQは取出部の中央領域から取り出される。
【0031】
特に、本発明に係る方法において、カラムの理論段の総数(n)のうち、隔壁カラム(TK)の上部共通カラム領域(1)は5~50%、好ましくは20~35%を有し、カラムの流入部(2、4)の整流部(2)は5~50%、好ましくは10~20%を有し、カラムの流入部のストリッピング部(4)は5~50%、好ましくは20~35%を有し、カラムの取出部(3、5)の整流部(3)は5~50%、好ましくは7~20%を有し、カラムの取出部のストリッピング部(5)は5~50%、好ましくは20~35%を有し、カラムの共通下部領域(6)は5~50%、好ましくは20~35%を有する。ここで総計は100(百)パーセントになる。
【0032】
特に、隔壁カラム(TK)において、各々の場合に流入部のサブ領域(2)及び(4)の理論段の数の総和は取出部の小区分(3)及び(5)の段の数の合計の80~110%、好ましくは90~100%である。ここで総計は100(百)パーセントになる。
【0033】
カラムの理論段の総数のうち、隔壁部は、好ましくは、40~80%、好ましくは50~70%を有し、上部共通カラム部は5~50%、好ましくは約15~20%を有し、下部共通カラム部は5~50%、好ましくは約15~20%を有する。ここで総計は100(百)パーセントになる。
【0034】
隔壁カラムは蒸発器として熱交換器を、また凝縮器として熱交換器をもつカラム(上記のような)からなる(図3参照)。
【0035】
カラム流は(図3参照)、1)カラムへの供給流、3)凝縮蒸気流の部分として定義される流出液、5)側方取出流、及び4)底部流の規定の部分として定義される底部取出流である。凝縮蒸気流の部分として定義されるカラムの還流2)はカラムの上部共通部分(C)に再循環される。底部流は蒸発器により190~220℃で気化させられ、カラムの下部共通部分(D)に供給される。蒸発器自体、異なる蒸発器型の利点及び不利点並びにその用途は、例えばLexicon Roempp (Thieme-Verlag), keyword "Duennschichtverdampfer" [thin-film evaporator](例えば2004年8月更新)から当業者に周知である。そこに手短に挙げられているのは、例えば、流下膜式蒸発器/流下流蒸発器、回転薄膜蒸発器、遠心薄膜蒸発器である。さらなる関連のある基礎的な技術文献は、Vauck and Mueller "Grund operationen chemischer Verfahrenstechnik [Basic operations of chemical process technology], 11th edition, 2000, Deutscher Verlag fuer Grundstoffindustrie; Sattler "Thermische Trennverfahren" [Thermal Separation Processes], 2nd edition, 2001, Wiley-VCH; Gnielinski, Mersmann, Thurner, "Verdampfung, Kristallisation, Trocknung" [Evaporation, Crystallization, Drying], View eg-Verlag 1993である。
【0036】
エトキシキン生成物の特に高い純度要件が課される場合、隔壁に断熱効果をもたせることが有利であり、本発明との関連では殊に好ましい。隔壁の断熱の様々な可能性の記載は、例えば、欧州特許出願公開第640367号に見られる。間に狭い気層(gas space)を有する二重壁設計は特に有利であり、したがって特に好ましい。
【0037】
隔壁(T)により分割される隔壁カラム(TK)の小区分は規則充填又はランダム充填された小区分2、3、4及び5又はその部分からなるのが好ましく、隔壁はこれらの小区分で断熱に構成されるのが好ましい。
【0038】
さらに、隔壁カラム(TK)は隔壁(T)の上部及び下端部にサンプリングの可能性を有し、液体又は気体のサンプルをカラムから連続的に又はある時間間隔で取り出し、それらの組成に関して検査するのが好ましい。
【0039】
中間沸点留分内の高沸点物に対する仕様との適合性は、例えば、隔壁の上端部における液体の分割比によって調整することができる。この場合、隔壁(T)の上端部における液体の分割比は、隔壁の上端部における液体中の高沸点留分の主要成分の濃度が、側方取出生成物で達するべき値の、例えば5~75%、典型的には10~40%割合を占めるように調節され、液体分割は、高沸点留分の主要成分のより高い含有率の場合より多くの液体が、高沸点留分の主要成分のより低い含有率の場合より少ない液体が、流入部へ分配されるように調節される。
【0040】
対応して、中間沸点留分内の低沸点物に対する仕様は、好ましくは熱出力によって制御することができる。これに関連して、それぞれの隔壁カラムの蒸発器への熱出力は、隔壁(T)の下端部における液体中の低沸点留分の主要成分の濃度が側方取出生成物で達するべきである値の、例えば10~99%、例えば約25~97.5%を占めるように調節され、熱出力は、低沸点留分の主要成分のより高い含有率の場合熱出力が増大し、低沸点留分の主要成分のより低い含有率の場合熱出力が低下するように調節することができる。そのような方法は原則として当業者に公知である。したがって、エトキシキンの精製において各々の場合に使用されるカラムの適合は本開示において提供されている指示に基づいて当業者が独立して行うことができる。
【0041】
エトキシキンの蒸留ワークアップの方法の本発明によるさらなるバリエーションは、投資コストに関して新しい構築の場合、好ましい特定の隔壁カラムの1つの代わりに、熱結合の形態の2つの(慣用の)蒸留カラムの相互接続が使用される(エネルギー需要に関して隔壁カラムに対応する熱結合カラム)ことにある。これは、そのカラムが既に入手可能であるか、及び/又はそのカラムがいろいろな圧力で作動することが意図されている場合、殊に有利である。
【0042】
存在するカラムの分離段階の数に応じて、相互接続の最も適切な形態を選択することができる。
【0043】
各々がそれ自身の蒸発器及び凝縮器を備えた2つの熱結合蒸留カラムが好ましい。
【0044】
さらに好ましくは、2つの熱結合カラムは異なる圧力で作動し、液体のみが2つのカラム間の接続流内で運ばれることができる。また、個々の蒸留カラム間に液体接続流が生ずるのを可能にするのみの接続の形態を選択することも可能である。
【0045】
これらの特定の相互接続は、両方の蒸留カラムが異なる圧力で作動することができ、利用可能な加熱及び冷却エネルギーを温度レベルに対してより良好に調節することができるという利点があるという利点を提供する。
【0046】
2つの熱結合カラムの第1のカラムの底部流は、好ましくは追加の蒸発器で部分的又は完全に気化され、次いで二相混合物として、又は気体及び液体流の形態で第2のカラムに供給される。本発明に係る方法において、カラムへの供給流は好ましくは部分的又は完全に予め気化させられ、二相混合物として、又は気体及び液体流の形態でカラムに供給される。
【0047】
隔壁カラム及び熱結合カラムはランダム充填若しくは規則充填の充填カラムとして、又はトレイカラムとして設計することができる。
【0048】
本発明に係る方法において、隔壁カラムの使用が特に好ましい。
【0049】
隔壁カラムを構成するための以下のパラメーターを本発明に従って好ましく使用した。ここで、これらのパラメーターは各々の場合に個別に選択することができ、それぞれの選択は原則として互いに組み合わせてもよく、任意の従属形態が本開示において提示されているか、又は内在的に生じる。
- 好ましくは10~100、特に好ましくは20~100、殊に好ましくは30~70の数の分離段階を有する分離段階カラム。
- 蒸留カラムを1~100mbar、好ましくは1~50、特に好ましくは1~20、殊に好ましくは1~10、殊に1~5で作動させること。
- カラムの底部温度は80~200℃、好ましくは約100~200、特に好ましくは150~200、殊に好ましくは190~195℃の値に設定する。
- 底部液体の量(体積)は分離されるカラム内の物質の量の合計体積の1~30%、好ましくは1~20%、特に好ましくは1~15、例えば1~10である。
- 底部取出体積の供給量に対する比は0.01~0.3、好ましくは0.05~0.1である。
- 充填カラム、殊に規則充填の使用。好ましくは減圧下で作動する、本発明によるエトキシキンの精製蒸留においては、充填カラムを使用することが推奨される。この場合、100~1000m2/m3、好ましくは約250~900m2/m3、特に好ましくは約400~800m2/m3、殊に好ましくは約500~750m2/m3の比表面積を有する規則充填物が適している。シートメタルからなる充填物が好ましい。
- 還流(図3、番号2)の量と供給量(図3、番号1)との比は、0.5:1~5:1、好ましくは1:1~2:1、特に好ましくは1.3:1の係数を有する。
【0050】
本発明に係る方法を実施する際、側方取出流は好ましくは90超~99%以上、特に好ましくは95超~99%以上、例えば99.5、99.9、99.99、事実上100パーセントまでの純度のエトキシキンを含む。
【0051】
側方取出し流中のフェネチジン含有量は好ましくは100ppm未満、好ましくは50ppm未満、特に好ましくは10ppm未満、殊に好ましくは5ppm未満、例えば1ppm未満、又はさらに0.5ppm未満、そしてこれらの間のあらゆる値、例えば90、80、70、60、45、40、35、30、25、20、15、9、8、7、6、4、3、2、0.9、0.8、0.7、0.6、0.4、0.3、0.2未満又は0.1未満のp-フェネチジンである。
【0052】
本発明に係る方法により得られる本発明のエトキシキンはp-フェネチジン以外にさらなる二次成分を含み得る。これらは通例、エトキシキン及びその前駆体の合成、及び/又はこれらの物質の分解過程に由来する。しかし、本方法は上記特定したエトキシキンの純度に従ってこれらの二次成分を実質的に低減することもできる。
【0053】
エトキシキンを精製する方法は、好ましくは、本発明に従って、底部における高沸点物の滞留時間が10時間未満、特に好ましくは8時間未満、殊に好ましくは5時間未満、及びこれらの間のあらゆる値で1時間まで、例えば9.5、9、8.5、8、7.5、7、6.5、6、5.5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5又は1時間となるようにして実施される。
【0054】
滞留時間が増加した場合、底部及び側方取出流において増加したフェネチジン含有量が見られ、本発明の100ppmのp-フェネチジンの最大量を著しく超えるエトキシキンが得られた。
【0055】
本発明に係る方法を制御し、本発明に従ってエトキシキンを得るために特に好ましいパラメーターは次の通りである。
1)底部液体レベル、
2)底部取出体積、
3)真空の使用、
4)使用される段階の数。
【0056】
これら4つの最も重要なパラメーターはこれらのパラメーター及びそのそれぞれの優先度について上に開示された本発明に従う範囲に関して個々に、又は2つ以上、又は全て同時に調節することができる。これら4つのパラメーターのそれぞれ好ましい範囲を組み合わせるのが好ましく、それぞれ特に好ましい範囲を組み合わせるのが特に好ましく、それぞれ極めて特に好ましい範囲を組み合わせるのが極めて特に好ましく、それぞれ殊に好ましい範囲を組み合わせるのが殊に好ましい。
【0057】
全てのさらなるパラメーターも対応して選択することができ、ここで好ましくは各々の場合に好ましい範囲、特に好ましくはそれぞれ特に好ましい範囲、極めて特に好ましくはそれぞれ極めて特に好ましい範囲、殊に好ましくはそれぞれ殊に好ましい範囲のこれらのさらなるパラメーターは、特に好ましい(底部液体レベル、底部取出流体積、真空の使用、使用される段階の数)及びそのそれぞれの好ましい、特に好ましい、極めて特に好ましい、殊に好ましい組合せとして既に特定された4つのパラメーターと組み合わせられる。
【0058】
しかし、自明なことに、各々のパラメーターは、各々の場合に、それらが他のパラメーターとは独立した限りにおいて、設定されるパラメーターについて調節された値が一般的な、好ましい、特に好ましい又は殊に好ましい範囲に入るように調節することができ、ここで既に概要を述べたパラメーターの得られる従属形態又は各々の場合に考えられる個々のパラメーターの明らかに得られる自由な選択は制限することができる。しかし、これらの制限は場合により不可避的に生じ、したがって本発明の固有の特徴であり、したがってさらなる特定の説明は必要とされない。
【0059】
さらに、カラム(又は蒸留のための対応する装置)の少なくとも始動時、特に好ましくは作動中加えて、殊に好ましくはカラムの始動時のみ、供給材料を加熱することが可能であり、本発明との関連では好ましい。この加熱は少なくとも50℃の温度、200℃までの温度で、好ましくは80~190、特に好ましくは100~180、殊に好ましくは120~170、特に140~160℃で行う。
【0060】
代わりの実施形態では、供給材料を加熱する代わりに、カラム自身を適切な液体により加熱することもできる。このためには、この液体、例えば加熱された溶媒をカラムに流し込み、したがってカラム内部と共に供給材料並びに排出物(draw)及び取出物(take-off)を所望の温度に加熱した後、精製されるエトキシキンをカラム(又は対応する蒸留のための装置)に流し込む。
【0061】
熱絶縁されたカラムに加えて、例えば二重壁又は多壁に構築されたカラム壁又はその部分により、そして場合によりさらに供給物(feed)及び排出物(draw)及び取出物(take-off)の完全又は部分的に絶縁された管により、いわゆるトレース加熱を使用することも考えられる。
【0062】
トレース加熱とは、カラムの全て又は少なくとも中央の部分を加熱し、また供給物(feed)及び排出物(draw)及び取出物(take-off)の管も加熱することを意味する。加熱は外部から(あらゆる種類の加熱ジャケットにより、又は裸火による直接加熱により)又はさらには金属部分の、例えば組み込んだ若しくは貼付した加熱コイル若しくは導電体による又は誘導加熱による電気(例えば誘導)加熱により行うことができる。
【0063】
上記のものに加えて、さらなる好ましい実施形態は以下の実施形態1~21並びに各々の場合に特定される組合せの可能性及び後方参照である。
【0064】
実施形態1:
少なくとも1つの隔壁カラム又は少なくとも2つの熱結合カラムを使用する連続又はバッチ式蒸留の少なくとも1のステップを含む、p-フェネチジンを含むエトキシキンを精製する方法であって、100ppm未満、好ましくは50ppm未満、特に好ましくは10ppm未満、殊に好ましくは5ppm未満、例えば1ppm未満又はさらには0.5ppm未満、及びまたこれらの間のあらゆる値、例えば90、80、70、60、45、40、35、30、25、20、15、9、8、7、6、4、3、2、0.9、0.8、0.7、0.6、0.4、0.3、0.2未満若しくは0.1未満のp-フェネチジンを含むエトキシキンを得る、方法。
【0065】
実施形態2
吸着、洗浄、結晶化のようなさらなる精製ステップを含まない、実施形態1に記載の方法。
【0066】
実施形態3
少なくとも1つのカラムが隔壁カラムであるか、又は少なくとも2つの結合したカラムの少なくとも1つが隔壁カラムである、実施形態1又は2に記載の方法。
【0067】
実施形態4
隔壁カラムがカラムの長手方向に隔壁(T)を有し、上部(C)及び下部(D)共通カラム領域、流入部(A)並びに取出部(B)を形成しており、分離される混合物が流入領域の中央部分に供給され、生成物エトキシキンが取出部の中央領域から取り出される、実施形態3に記載の方法。
【0068】
実施形態5
隔壁カラムの隔壁が連続的に蒸留カラムの上端部まで若しくは下端部に至るまで、又は上端部まで若しくは下端部に至るまで伸延する、実施形態3又は4に記載の方法。
【0069】
実施形態6
隔壁カラムの形態のカラム1つのみ使用する、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0070】
実施形態7
隔壁カラム(TK)がカラムの長手方向に隔壁(T)を有し、上部共通カラム領域(1)、下部共通カラム領域(6)、整流部(2)及びストリッピング部(4)をもつ流入部(2、4)、並びに整流部(5)及びストリッピング部(3)をもつ取出部(3、5)を形成しており、分離される混合物(供給材料)が流入部(2、4)の中央領域に供給され、高沸点留分が底部(底部取出口C)を介して取り出され、低沸点留分がオーバーヘッド(頂部取出口A)を介して取り出され、中間沸点留分が取出部(3、5)の中央領域(側方取出口B)から取り出される、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0071】
実施形態8
隔壁カラムが30~100、特に50~90の理論段を有する、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0072】
実施形態9
カラムの理論段の総数(n)のうち、隔壁カラム(TK)の上部共通カラム領域(1)が5~50%、好ましくは20~35%を有し、カラムの流入部(2、4)の整流部(2)が5~50%、好ましくは10~20%を有し、カラムの流入部のストリッピング部(4)が5~50%、好ましくは20~35%を有し、カラムの取出部(3、5)の整流部(3)が5~50%、好ましくは7~20%を有し、カラムの取出部の5~50%、好ましくは20~35%を有し、カラムの共通下部領域(6)が5~50%、好ましくは20~35%を有する、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0073】
実施形態10
隔壁カラム(TK)において、各々の場合に流入部のサブ領域(2)及び(4)の理論段の数の総和が取出部の小区分(3)及び(5)の段の数の合計の80~110%、好ましくは90~100%である、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0074】
実施形態11
隔壁カラムの理論段のうち、隔壁部が40~80%、好ましくは50~70%を有し、上部共通カラム部が5~50%、好ましくは約15~20%を有し、下部共通カラム部が5~50%、好ましくは約15~20%を有する、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0075】
実施形態12
カラムが、使用する各々のカラムに対して少なくとも1つの熱交換器を蒸発器として、少なくとも1つの熱交換器を凝縮器として有する、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0076】
実施形態13
少なくとも1つのカラムが、各々の場合に少なくとも2つの壁の間に少なくとも1つの気層を有する二重壁又は多壁、好ましくは二重壁として構成されている、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0077】
実施形態14
カラムの理論段の総数(n)のうち、隔壁カラム(TK)の上部共通カラム領域(1)が5~50%、好ましくは20~35%を有し、カラムの流入部(2、4)の整流部(2)が5~50%、好ましくは10~20%を有し、カラムの流入部のストリッピング部(4)が5~50%、好ましくは20~35%を有し、カラムの取出部(3、5)の整流部(3)が5~50%、好ましくは7~20%を有し、カラムの取出部のストリッピング部(5)が5~50%、好ましくは20~35%を有し、カラムの共通下部領域(6)が5~50%、好ましくは20~35%を有し、隔壁(T)により分割された隔壁カラム(TK)の小区分2、3、4及び5又はその部分からなる小区分が規則充填又はランダム充填で装填され、カラムが少なくとも部分的にランダム充填又は規則充填、好ましくは規則充填、特に好ましくはシートメタルからなるもので充填されている、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0078】
実施形態15
A)分離段階カラムが好ましくは10~100、特に好ましくは20~100、殊に好ましくは30~70の数の分離段階を有し、
B)蒸留カラムが1~100、好ましくは1~50、特に好ましくは1~20、殊に好ましくは1~10、殊に1~5mbarで作動し、
C)カラムの底部温度が80~200℃、好ましくは約100~200、特に好ましくは150~200、殊に好ましくは190~195℃の値に設定され、
D)底部液体の量(体積)はカラム内の分離される物質の量の合計体積の1~30%、好ましくは1~20%、特に好ましくは1~15、例えば、1~10%であり、
E)底部取出し体積の供給材料の量に対する比は0.01~0.3、好ましくは0.05~0.1であり、
F)100~1000m2/m3、好ましくは約250~900m2/m3、特に好ましくは約400~800m2/m3、殊に好ましくは約500~750m2/m3の比表面積を有する、特に規則充填、殊にシートメタル充填物の充填カラムを使用し、
G)還流の量と供給材料の量との比が0.5:1~5:1、好ましくは1:1~2:1、特に好ましくは1.3:1の係数を有する、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0079】
実施形態16
底部における高沸点物の滞留時間が10時間未満、特に好ましくは8時間未満、殊に好ましくは5時間未満、及びこれらの間で1時間までのあらゆる値、例えば9.5、9、8.5、8、7.5、7、6.5、6、5.5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5又は1時間である、実施形態15に記載の方法。
【0080】
実施形態17
カラムをトレース加熱する、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0081】
実施形態18
少なくとも始動時、供給材料を少なくとも50℃から200℃まで、好ましくは80~190、特に好ましくは100~180、殊に好ましくは120~170、特に140~160℃の温度に予熱する、前記実施形態のいずれかに記載の方法。
【0082】
実施形態19
実施形態1~18のいずれかに記載の方法によって得ることができる、100ppm未満、好ましくは50ppm未満、特に好ましくは10ppm未満、殊に好ましくは5ppm未満、例えば1ppm未満又はさらには0.5ppm未満、及びそれらの間のあらゆる値、例えば90、80、70、60、45、40、35、30、25、20、15、9、8、7、6、4、3、2、0.9、0.8、0.7、0.6、0.4、0.3、0.2ppm未満又は0.1ppm未満のp-フェネチジンを含むエトキシキン。
【0083】
実施形態20
100ppm未満、好ましくは50ppm未満、特に好ましくは10ppm未満、殊に好ましくは5ppm未満、例えば1ppm未満又はさらには0.5ppm未満及びそれらの間のあらゆる値、例えば90、80、70、60、45、40、35、30、25、20、15、9、8、7、6、4、3、2、0.9、0.8、0.7、0.6、0.4、0.3、0.2ppm未満又は0.1ppm未満のp-フェネチジンを含むエトキシキン。
【0084】
実施形態21
食料品及び家畜飼料、好ましくは家畜飼料の添加剤としての、特に好ましくは家畜飼料及び飼料添加物の酸化防止剤としての実施形態19又は20に記載のエトキシキンの使用。
【0085】
p-フェネチジン及びEQの実験室分析はガスクロマトグラフィーによる。対応する滞留時間及び方法は当業者に公知であり、場合により極めて簡単に決定し確認することができる。このための検証を含めた主要な方法は当業者に公知である。したがって、エトキシキン中のp-フェネチジンに対する適当な精度が得られるのであればガスクロマトグラフィーのいかなる方法も適切であり、これはエトキシキンを含む較正されたサンプル及び標準化された量のp-フェネチジンを使用する検証により容易に決定することができる。
【実施例
【0086】
本発明に従う実験-表1 隔壁カラムによる実験室蒸留の蒸留パラメーターの変動;エトキシキン(「粗」流出液)は0.18g(=1800ppm)のp-フェネチジンを含む。
【0087】
【表1】
【0088】
実験1~10から、主に底部における高沸点物の分解反応を回避するために、蒸留において低い熱負荷(すなわち低温)を確立するのが望ましいことを導き出すことができる。さらに、底部における成分の低い滞留時間を維持することが好ましい。
【0089】
本発明に従わない実施例
酸性抽出によるエトキシキンからのp-フェネチジンの枯渇
【0090】
主要な手順:「粗製」蒸留エトキシキン(0.18g-1800ppmに対応-のp-フェネチジンを含む)を含む有機相を酸性水溶液で繰返し洗浄した。相分離が起こった。これらの相からエトキシキン及びp-フェネチジン含有量のためのサンプルを採取した。
【0091】
実施した実験の具体的な手順:
500mLのエトキシキン、250mLの水、23gの水性リン酸(含有率85%)を一晩撹拌した。23gの水性リン酸(含有率85%)を加えた。得られた相を分離した(上部の有機相、下部の水性相)。
- 下部相:約200mlの水酸化ナトリウム水溶液(含有率25%)でpH12に設定
- 上部相(有機):250mlの水及び23gの水性リン酸(含有率85%)を加え、一晩撹拌し、相分離した。下部相(水性)を再び分離した。新たな下部相に約200mLの水酸化ナトリウム水溶液(含有率25%)を加えてpH12にした。
【0092】
抽出後、両方のエトキシキンを酸性抽出に使用した。抽出物のエトキシキン及びフェネチジン含有量を検査した。顕著な枯渇も富化も見られなかった。すなわち、p-フェネチジンの値は処理の前と同じ範囲であった。
【0093】
図2の説明:(A)=頂部取出口、(B)=側方取出口、(C)=底部取出し口、(F)=供給材料、(T)=隔壁、(WZ)=熱供給、(WA)=熱除去、(TK)=隔壁カラム、上部共通カラム領域(1)、下部共通カラム領域(6)、整流部(2)及びストリッピング部(4)を有する流入部(2、4)、整流部(5)及びストリッピング部(3)を有する取出部(3、5)、流入部(2、4)の中央領域への分離される混合物の供給(供給材料)(F)。
【0094】
隔壁カラムの概要(図3)、説明:
供給材料1)、還流(蒸気流の一部)2)、頂部取出流3)、カラムの下部共通部分への一部再循環流を含む底部取出流4)、側方取出流5)、流入部(A)、取出部(B)、カラム(C)の上部共通部分、カラム(D)の下部共通部分、隔壁(T)。
本発明の実施形態として例えば以下を挙げることができる。
[実施形態1]
少なくとも1つの隔壁カラム又は少なくとも2つの熱結合カラムを使用する連続蒸留の少なくとも1つのステップを含む、p-フェネチジンを含むエトキシキンを精製する方法であって、当該少なくとも2つの結合したカラムのうち少なくとも1つは隔壁カラムであり、100ppm未満のp-フェネチジンを含むエトキシキンが得られ、
A)当該少なくとも1つのカラムが10~100の数の分離段階を有し、
B)当該少なくとも1つのカラムが1~100mbarで作動し、
C)当該少なくとも1つのカラムの底部温度が80~200℃の値に設定され、
D)底部液体の量(体積)が、当該少なくとも1つのカラム内の分離される物質の量の合計体積の1~30%であり、
E)底部取出体積の供給量に対する比が0.01~0.3であり、
F)100~1000m 2 /m 3 の比表面積の充填物を有する充填カラムを使用し、かつ
G)還流の量と供給量との比が0.5:1~5:1の係数を有する、
方法。
[実施形態2]
隔壁カラムがカラムの長手方向に隔壁(T)を有し、上部(C)及び下部(D)共通カラム領域、流入部(A)並びに取出部(B)を形成しており、分離される混合物が流入領域の中央部分に供給され、かつ、生成物エトキシキンが取出部の中央領域から取り出される、実施形態1に記載の方法。
[実施形態3]
隔壁カラムの形態のカラムを1つのみ使用する、実施形態1又は2に記載の方法。
[実施形態4]
隔壁カラム(TK)がカラムの長手方向に隔壁(T)を有し、上部共通カラム領域(1)、下部共通カラム領域(6)、整流部(2)及びストリッピング部(4)をもつ流入部(2、4)、並びに整流部(5)及びストリッピング部(3)をもつ取出部(3、5)を形成しており、分離される混合物(供給材料)が流入部(2、4)の中央領域に供給され、高沸点留分が底部(底部取出口C)を介して取り出され、低沸点留分がオーバーヘッド(頂部取出口A)を介して取り出され、かつ、中間沸点留分が取出部(3、5)の中央領域(側方取出口B)から取り出される、実施形態2~4のいずれかに記載の方法。
[実施形態5]
少なくとも1つの隔壁カラムが30~100の理論段を有する、実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
[実施形態6]
カラムの理論段の総数(n)のうち、少なくとも1つの隔壁カラム(TK)の上部共通カラム領域(1)が、5~50%を有し、カラムの流入部(2、4)の整流部(2)が5~50%を有し、カラムの流入部のストリッピング部(4)が5~50%を有し、カラムの取出部(3、5)の整流部(3)が5~50%を有し、カラムの取出部のストリッピング部(5)が5~50%を有し、かつ、カラムの共通下部領域(6)が5~50%を有する、実施形態1~5のいずれかに記載の方法。
[実施形態7]
少なくとも1つの隔壁カラム(TK)において、各々の場合に流入部のサブ領域(2)及び(4)の理論段の数の総和が取出部の小区分(3)及び(5)の段の数の合計の80~110%である、実施形態1~6のいずれかに記載の方法。
[実施形態8]
隔壁カラムの理論段の総数のうち、隔壁部が40~80%を有し、上部共通カラム部が5~50%を有し、かつ、下部共通カラム部が5~50%を有する、実施形態1~7のいずれかに記載の方法。
[実施形態9]
カラムの理論段の総数(n)のうち、少なくとも1つの隔壁カラム(TK)の上部共通カラム領域(1)が5~50%を有し、カラムの流入部(2、4)の整流部(2)が5~50%を有し、カラムの流入部のストリッピング部(4)が5~50%を有し、カラムの取出部(3、5)の整流部(3)が5~50%を有し、カラムの取出部のストリッピング部(5)が5~50%を有し、カラムの共通下部領域(6)が5~50%を有し、小区分2、3、4及び5又はその部分からなる隔壁(T)により分割された隔壁カラム(TK)の小区分が規則充填又はランダム充填で装填され、かつ、カラムが少なくとも部分的にランダム充填又は規則充填、好ましくは規則充填、特に好ましくはシートメタルからなるもので充填されている、実施形態1~8のいずれかに記載の方法。
[実施形態10]
底部における高沸点物の滞留時間が10時間未満である、実施形態1~9のいずれかに記載の方法。
[実施形態11]
実施形態1~10のいずれかに記載の方法により得ることができる、100ppm未満のp-フェネチジンを含むエトキシキン。
[実施形態12]
100ppm未満のp-フェネチジンを含むエトキシキン。
[実施形態13]
食料品及び家畜飼料、好ましくは家畜飼料の添加剤として、特に好ましくは家畜飼料及び飼料添加物の酸化防止剤としての実施形態11又は12に記載のエトキシキンの使用。
[実施形態14]
エトキシキンを含有する食料品又は家畜飼料を製造する方法であって、
1)粗エトキシキン生成物を、少なくとも1つの隔壁カラム又は少なくとも2つの熱結合カラムを使用する連続蒸留の少なくとも1つ、好ましくは1つだけのステップに供するステップであって、当該少なくとも2つの結合したカラムの少なくとも1つは隔壁カラムであり、
A)当該少なくとも1つのカラムが10~100の数の分離段階を有し、
B)当該少なくとも1つのカラムが1~100mbarで作動し、
C)当該少なくとも1つのカラムの底部温度が80~200℃の値に設定され、
D)底部液体の量(体積)が少なくとも1つのカラム内の分離される物質の量の合計体積の1~30%であり、
E)底部取出体積の供給量に対する比が0.01~0.3であり、
F)100~1000m 2 /m 3 の比表面積の規則充填物を有する充填カラムを使用し、
G)還流の量と供給量との比が0.5:1~5:1の係数を有し、かつ、
H)底部における高沸点物の滞留時間が5時間未満である
ステップ、
ステップ1のプロセスは好ましくは、その後のエトキシキン精製ステップ、例えば吸着、洗浄、又は結晶化を含まず、
2)ステップ1のプロセスから、50ppm未満のp-フェネチジン含有量を有するエトキシキンを得るステップ、及び
3)ステップ2で得られるエトキシキンを食料品又は家畜飼料に導入するステップ
を含む、方法。
[実施形態15]
実施形態14に記載の方法から得られる食料品又は家畜飼料。
図1
図2
図3