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特許7114708レーザ加工装置、レーザ加工システム、及びレーザ加工方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-29
(45)【発行日】2022-08-08
(54)【発明の名称】レーザ加工装置、レーザ加工システム、及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/142 20140101AFI20220801BHJP
【FI】
B23K26/142
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020526791
(86)(22)【出願日】2018-06-27
(86)【国際出願番号】 JP2018024435
(87)【国際公開番号】W WO2020003421
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2021-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 輝
(72)【発明者】
【氏名】若林 理
(72)【発明者】
【氏名】新堀 真史
(72)【発明者】
【氏名】小林 正和
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-080754(JP,A)
【文献】特開2003-031953(JP,A)
【文献】特開平06-190582(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/142
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を載置する載置台と、
前記載置台に載置された前記被加工物にレーザ光を導く光学系と、
前記被加工物上における前記レーザ光の照射領域の周辺に気体を供給する気体供給口と、
前記気体供給口から供給された前記気体を回収する気体回収口と、
前記被加工物上の前記レーザ光の前記照射領域を移動させる移動装置と、
前記照射領域の移動方向に応じて、前記気体供給口から前記気体回収口に流す前記気体の気体流の方向を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記移動装置による前記照射領域の移動方向の変更に伴い、前記照射領域の移動方向と逆方向に前記気体を流すように、前記気体流の方向を変更するレーザ加工装置であって、
複数の前記気体供給口と、
複数の前記気体回収口と、
を備え、
前記制御装置は、前記照射領域の移動方向に応じて、前記複数の前記気体供給口及び前記複数の前記気体回収口のうちから、前記気体を吹き出させる前記気体供給口と前記気体を回収させる前記気体回収口の組み合わせを変更することにより、前記気体流の方向を変更するレーザ加工装置
【請求項2】
請求項に記載のレーザ加工装置であって、さらに、
前記複数の前記気体供給口の中で、前記気体を吹き出させる前記気体供給口と、前記気体の吹き出しを停止させる前記気体供給口と、を切り替える第1の切替バルブと、
前記複数の前記気体回収口の中で、前記気体を回収させる前記気体回収口と、前記気体の回収を停止させる前記気体回収口と、を切り替える第2の切替バルブと、
を備え、
前記制御装置は、前記照射領域の移動方向に応じて、前記第1の切替バルブ及び前記第2の切替バルブを制御するレーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1に記載のレーザ加工装置であって、さらに、
前記気体供給口と前記気体回収口の配置位置を入れ替える回転装置を備え、
前記制御装置は、前記照射領域の移動方向に応じて、前記回転装置を回転させることにより、前記気体流の方向を変更するレーザ加工装置。
【請求項4】
請求項1に記載のレーザ加工装置であって、さらに、
前記気体回収口と接続される排気装置を備えるレーザ加工装置。
【請求項5】
請求項1に記載のレーザ加工装置であって、
前記光学系は、
長方形のビーム形状を有するラインビームを生成するラインビーム整形光学系と、
前記ラインビームが照射されるマスクと、
前記マスクの像を前記被加工物の表面に投影する投影光学系と、
を含むレーザ加工装置。
【請求項6】
請求項に記載のレーザ加工装置であって、
前記移動装置は、前記ラインビーム整形光学系を第1軸の方向に往復移動させる1軸ステージを含むレーザ加工装置。
【請求項7】
請求項に記載のレーザ加工装置であって、
前記移動装置として、前記ラインビームの短軸方向である第1軸の方向に前記レーザ光を移動させる第1の移動装置が用いられ、
さらに、
前記第1軸の方向及び前記ラインビームの長軸方向である第2軸の方向の各方向に前記被加工物を移動させる第2の移動装置を備え、
前記制御装置は、前記第1の移動装置及び前記第2の移動装置を制御するレーザ加工装置。
【請求項8】
請求項に記載のレーザ加工装置であって、
前記制御装置は、前記第2の移動装置を動作させて前記被加工物の加工対象領域を変更する制御と、前記第1の移動装置を動作させて前記被加工物上の前記レーザ光の前記照射領域を移動させながら前記加工対象領域の加工を行う制御と、を交互に実施するレーザ加工装置。
【請求項9】
請求項1に記載のレーザ加工装置であって、さらに、
前記気体供給口から吹き出す前記気体の流量を調節する流量調節部を備え、
前記制御装置は、加工条件と、前記被加工物への前記レーザ光の照射によって発生するデブリ量を予測する情報とに基づいて、前記流量調節部を制御するレーザ加工装置。
【請求項10】
請求項に記載のレーザ加工装置であって、
前記デブリ量を予測する情報は、前記加工条件から前記デブリ量を算出する計算式のデータを含むレーザ加工装置。
【請求項11】
請求項に記載のレーザ加工装置であって、
前記デブリ量を予測する情報は、前記加工条件と前記デブリ量を関連付けたテーブルデータを含むレーザ加工装置。
【請求項12】
被加工物を載置する載置台と、
前記載置台に載置された前記被加工物にレーザ光を導く光学系と、
前記被加工物上における前記レーザ光の照射領域の周辺に気体を供給する気体供給口と、
前記気体供給口から供給された前記気体を回収する気体回収口と、
前記被加工物上の前記レーザ光の前記照射領域を移動させる移動装置と、
前記照射領域の移動方向に応じて、前記気体供給口から前記気体回収口に流す前記気体の気体流の方向を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記移動装置による前記照射領域の移動方向の変更に伴い、前記照射領域の移動方向と逆方向に前記気体を流すように、前記気体流の方向を変更するレーザ加工装置であって、
前記気体供給口から吹き出す前記気体の流量を調節する流量調節部を備え、
前記制御装置は、マスクの開口率む加工条件と、前記被加工物への前記レーザ光の照射によって発生するデブリ量を予測する情報とに基づいて、前記流量調節部を制御するレーザ加工装置。
【請求項13】
請求項1に記載のレーザ加工装置であって、
前記移動装置は、前記光学系の少なくとも一部を移動させるレーザ加工装置。
【請求項14】
請求項1に記載のレーザ加工装置であって、さらに、
前記気体供給口から前記気体が供給される空間を囲うカバーを備えるレーザ加工装置。
【請求項15】
請求項14に記載のレーザ加工装置であって、
前記カバーに、前記気体供給口及び前記気体回収口が配置されているレーザ加工装置。
【請求項16】
請求項15に記載のレーザ加工装置であって、さらに、
前記照射領域の移動方向に応じて、前記カバーを回転移動させる回転装置を備えるレーザ加工装置。
【請求項17】
請求項14に記載のレーザ加工装置であって、さらに、
前記移動装置による前記レーザ光の前記照射領域の移動に追従して前記カバーを移動させる第3の移動装置を備えるレーザ加工装置。
【請求項18】
レーザ光を出力するレーザ装置と、
前記レーザ装置から出力された前記レーザ光を伝送する伝送系と、
被加工物を載置する載置台と、
前記伝送系を介して伝送された前記レーザ光を整形し、前記載置台に載置された前記被加工物に導く光学系と、
前記被加工物上における前記レーザ光の照射領域の周辺に気体を供給する気体供給口と、
前記気体供給口から供給された前記気体を回収する気体回収口と、
前記被加工物上の前記レーザ光の前記照射領域を移動させる移動装置と、
前記照射領域の移動方向に応じて、前記気体供給口から前記気体回収口に流す前記気体の気体流の方向を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記移動装置による前記照射領域の移動方向の変更に伴い、前記照射領域の移動方向と逆方向に前記気体を流すように、前記気体流の方向を変更するレーザ加工システムであって、
複数の前記気体供給口と、
複数の前記気体回収口と、
を備え、
前記制御装置は、前記照射領域の移動方向に応じて、前記複数の前記気体供給口及び前記複数の前記気体回収口のうちから、前記気体を吹き出させる前記気体供給口と前記気体を回収させる前記気体回収口の組み合わせを変更することにより、前記気体流の方向を変更するレーザ加工システム。
【請求項19】
請求項18に記載のレーザ加工システムであって、さらに、
前記複数の前記気体供給口の中で、前記気体を吹き出させる前記気体供給口と、前記気体の吹き出しを停止させる前記気体供給口と、を切り替える第1の切替バルブと、
前記複数の前記気体回収口の中で、前記気体を回収させる前記気体回収口と、前記気体の回収を停止させる前記気体回収口と、を切り替える第2の切替バルブと、
を備え、
前記制御装置は、前記照射領域の移動方向に応じて、前記第1の切替バルブ及び前記第2の切替バルブを制御するレーザ加工システム。
【請求項20】
加工物を載置台に載置するステップと、
レーザ装置からレーザ光を出力するステップと、
前記載置台に載置された前記被加工物に、光学系を介して前記レーザ光を導き、前記レーザ光を前記被加工物に照射するステップと、
前記被加工物上における前記レーザ光の照射領域の周辺に気体供給口から気体を供給し、前記気体供給口から供給された前記気体を気体回収口から回収するステップと、
前記被加工物上の前記レーザ光の前記照射領域を移動させるステップと、
前記照射領域の移動方向に応じて、前記気体供給口から前記気体回収口に流す前記気体の気体流の方向を制御するステップと、を含み、
前記気体流の方向を制御するステップは、前記照射領域の移動方向の変更に伴い、前記照射領域の移動方向と逆方向に前記気体を流すように、前記気体流の方向を変更するレーザ加工方法であって、
複数の前記気体供給口と、
複数の前記気体回収口と、
を用い、
前記気体流の方向を制御するステップは、前記照射領域の移動方向に応じて、前記複数の前記気体供給口及び前記複数の前記気体回収口のうちから、前記気体を吹き出させる前記気体供給口と前記気体を回収させる前記気体回収口の組み合わせを変更することにより、前記気体流の方向を変更するレーザ加工方法。
【請求項21】
請求項20に記載のレーザ加工方法であって、さらに、
前記複数の前記気体供給口の中で、前記気体を吹き出させる前記気体供給口と、前記気体の吹き出しを停止させる前記気体供給口と、を切り替える第1の切替バルブと、
前記複数の前記気体回収口の中で、前記気体を回収させる前記気体回収口と、前記気体の回収を停止させる前記気体回収口と、を切り替える第2の切替バルブと、
を用い、
前記気体流の方向を制御するステップは、前記照射領域の移動方向に応じて、前記第1の切替バルブ及び前記第2の切替バルブを制御するレーザ加工方法。
【請求項22】
レーザ光を出力するレーザ装置と、
前記レーザ装置から出力された前記レーザ光を伝送する伝送系と、
被加工物を載置する載置台と、
前記伝送系を介して伝送された前記レーザ光を整形し、前記載置台に載置された前記被加工物に導く光学系と、
前記被加工物上における前記レーザ光の照射領域の周辺に気体を供給する気体供給口と、
前記気体供給口から供給された前記気体を回収する気体回収口と、
前記被加工物上の前記レーザ光の前記照射領域を移動させる移動装置と、
前記照射領域の移動方向に応じて、前記気体供給口から前記気体回収口に流す前記気体の気体流の方向を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記移動装置による前記照射領域の移動方向の変更に伴い、前記照射領域の移動方向と逆方向に前記気体を流すように、前記気体流の方向を変更するレーザ加工システムであって、
前記気体供給口から吹き出す前記気体の流量を調節する流量調節部を備え、
前記制御装置は、マスクの開口率を含む加工条件と、前記被加工物への前記レーザ光の照射によって発生するデブリ量を予測する情報とに基づいて、前記流量調節部を制御するレーザ加工システム。
【請求項23】
被加工物を載置台に載置するステップと、
レーザ装置からレーザ光を出力するステップと、
前記載置台に載置された前記被加工物に、光学系を介して前記レーザ光を導き、前記レーザ光を前記被加工物に照射するステップと、
前記被加工物上における前記レーザ光の照射領域の周辺に気体供給口から気体を供給し、前記気体供給口から供給された前記気体を気体回収口から回収するステップと、
前記被加工物上の前記レーザ光の前記照射領域を移動させるステップと、
前記照射領域の移動方向に応じて、前記気体供給口から前記気体回収口に流す前記気体の気体流の方向を制御するステップと、を含み、
前記気体流の方向を制御するステップは、前記照射領域の移動方向の変更に伴い、前記照射領域の移動方向と逆方向に前記気体を流すように、前記気体流の方向を変更するレーザ加工方法であって、
前記気体供給口から吹き出す前記気体の流量を調節する流量調節部を用い、
前記前記気体流の方向を制御するステップは、マスクの開口率を含む加工条件と、前記被加工物への前記レーザ光の照射によって発生するデブリ量を予測する情報とに基づいて、前記流量調節部を制御するレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ加工装置、レーザ加工システム、及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の微細化、高集積化につれて、半導体露光装置においては解像力の向上が要請されている。半導体露光装置を以下、単に「露光装置」という。このため露光用光源から出力される光の短波長化が進められている。露光用光源には、従来の水銀ランプに代わってガスレーザ装置が用いられている。現在、露光用のガスレーザ装置としては、波長248nmの紫外線を出力するKrFエキシマレーザ装置ならびに、波長193nmの紫外線を出力するArFエキシマレーザ装置が用いられている。
【0003】
現在の露光技術としては、露光装置側の投影レンズとウエハ間の間隙を液体で満たして、当該間隙の屈折率を変えることによって、露光用光源の見かけの波長を短波長化する液浸露光が実用化されている。ArFエキシマレーザ装置を露光用光源として用いて液浸露光が行われた場合は、ウエハには等価における波長134nmの紫外光が照射される。この技術をArF液浸露光という。ArF液浸露光はArF液浸リソグラフィーとも呼ばれる。
【0004】
KrF、ArFエキシマレーザ装置の自然発振におけるスペクトル線幅は約350~400pmと広いため、露光装置側の投影レンズによってウエハ上に縮小投影されるレーザ光(紫外線光)の色収差が発生して解像力が低下する。そこで色収差が無視できる程度となるまでガスレーザ装置から出力されるレーザ光のスペクトル線幅を狭帯域化する必要がある。スペクトル線幅はスペクトル幅とも呼ばれる。このためガスレーザ装置のレーザ共振器内には狭帯域化素子を有する狭帯域化部(Line Narrow Module)が設けられ、この狭帯域化部によりスペクトル幅の狭帯域化が実現されている。なお、狭帯域化素子はエタロンやグレーティング等であってもよい。このようにスペクトル幅が狭帯域化されたレーザ装置を狭帯域化レーザ装置という。
【0005】
また、エキシマレーザ光はパルス幅が約数10nsであって、波長はそれぞれ、248.4nmと193.4nmと短いことから、高分子材料やガラス材料等の直接加工に用いられることがある。高分子材料は、結合エネルギよりも高いフォトンエネルギをもつエキシマレーザ光によって、高分子材料の結合を切断できる。そのため、非加熱加工が可能となり、加工形状が綺麗になることが知られている。
【0006】
また、ガラスやセラミックス等はエキシマレーザ光に対する吸収率が高いので、可視レーザ光及び赤外線レーザ光では加工することが難しい材料の加工もできることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2017/0106471号明細書
【文献】特開平9-168885号公報
【文献】米国特許出願公開第2008/0145567号明細書
【文献】米国特許出願公開第2008/0041832号明細書
【概要】
【0008】
本開示の1つの観点に係るレーザ加工装置は、被加工物を載置する載置台と、載置台に載置された被加工物にレーザ光を導く光学系と、被加工物上におけるレーザ光の照射領域の周辺に気体を供給する気体供給口と、気体供給口から供給された気体を回収する気体回収口と、被加工物上のレーザ光の照射領域を移動させる移動装置と、照射領域の移動方向に応じて、気体供給口から気体回収口に流す気体の気体流の方向を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、移動装置による照射領域の移動方向の変更に伴い、照射領域の移動方向と逆方向に気体を流すように、気体流の方向を変更する。
【0009】
本開示の他の1つの観点に係るレーザ加工システムは、レーザ光を出力するレーザ装置と、レーザ装置から出力されたレーザ光を伝送する伝送系と、被加工物を載置する載置台と、伝送系を介して伝送されたレーザ光を整形し、載置台に載置された被加工物に導く光学系と、被加工物上におけるレーザ光の照射領域の周辺に気体を供給する気体供給口と、気体供給口から供給された気体を回収する気体回収口と、被加工物上のレーザ光の照射領域を移動させる移動装置と、照射領域の移動方向に応じて、気体供給口から気体回収口に流す気体の気体流の方向を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、移動装置による照射領域の移動方向の変更に伴い、照射領域の移動方向と逆方向に気体を流すように、気体流の方向を変更する。
【0010】
本開示の他の1つの観点に係るレーザ加工方法は、被加工物を載置台に載置するステップと、レーザ装置からレーザ光を出力するステップと、載置台に載置された被加工物に、光学系を介してレーザ光を導き、レーザ光を被加工物に照射するステップと、被加工物上におけるレーザ光の照射領域の周辺に気体供給口から気体を供給し、気体供給口から供給された気体を気体回収口から回収するステップと、被加工物上のレーザ光の照射領域を移動させるステップと、照射領域の移動方向に応じて、気体供給口から気体回収口に流す気体の気体流の方向を制御するステップと、を含み、気体流の方向を制御するステップは、照射領域の移動方向の変更に伴い、照射領域の移動方向と逆方向に気体を流すように、気体流の方向を変更する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、例示的なレーザ加工システムの構成を概略的に示す図である。
図2図2は、ラインビームのビーム形状の例を示す図である。
図3図3は、ラインビームスキャン方式による被加工物のレーザ加工方法の例を示す平面図である。
図4図4は、レーザ加工システムの制御例を示すフローチャートである。
図5図5は、レーザ加工条件パラメータの読込(1)の処理内容の例を示すフローチャートである。
図6図6は、レーザ装置の調整発振を行う際の処理内容の例を示すフローチャートである。
図7図7は、レーザ加工装置の制御パラメータの計算と設定(1)の処理内容の例を示すフローチャートである。
図8図8は、ビームスキャン方向の決定を行う処理内容の例を示すフローチャートである。
図9図9は、ビームスキャン加工の処理内容の例を示すフローチャートである。
図10図10は、ラインビームスキャン動作の様子を模式的に示す平面図である。
図11図11は、図10に示す構成の側面図である。
図12図12は、図10に示す例と逆方向のラインビームスキャン動作の様子を模式的に示す平面図である。
図13図13は、図12に示す構成の側面図である。
図14図14は、実施形態1に係るレーザ加工装置を含むレーザ加工システムの構成を概略的に示す図である。
図15図15は、ビームスキャン方向がX軸の負の方向である場合におけるラインビームスキャン動作の様子を模式的に示す平面図である。
図16図16は、図15に示す構成の側面図である。
図17図17は、ビームスキャン方向がX軸の正の方向である場合におけるラインビームスキャン動作の様子を模式的に示す平面図である。
図18図18は、図17に示す構成の側面図である。
図19図19は、実施形態1に係るレーザ加工装置を含むレーザ加工システムの制御例を示すフローチャートである。
図20図20は、レーザ加工装置の制御パラメータの計算と設定(2)の処理内容の例を示すフローチャートである。
図21図21は、パージガスの方向を制御する処理の例を示すフローチャートである。
図22図22は、実施形態2に係るレーザ加工装置を含むレーザ加工システムの制御例を示すフローチャートである。
図23図23は、レーザ加工条件パラメータの読込(2)の処理内容の例を示すフローチャートである。
図24図24は、レーザ加工装置の制御パラメータの計算と設定(3)の処理内容の例を示すフローチャートである。
図25図25は、デブリを除去する集塵システムの変形例1の構成を概略的に示す要部断面図である。
図26図26は、図25に示す構成の平面図である。
図27図27は、デブリを除去する集塵システムの変形例2の構成を概略的に示す要部断面図である。
図28図28は、図27に示す構成の平面図である。
図29図29は、デブリを除去する集塵システムの変形例3の構成を概略的に示す要部断面図である。
図30図30は、図29に示す構成の平面図である。
図31図31は、図29のビームスキャン方向を逆方向にした場合の様子を示す断面図である。
図32図32は、図31に示す構成の平面図である。
図33図33は、デブリを除去する集塵システムの変形例4の構成を概略的に示す要部断面図である。
図34図34は、図33に示す構成の平面図である。
図35図35は、図33のビームスキャン方向を逆方向にした場合の様子を示す断面図である。
図36図36は、図35に示す構成の平面図である。
図37図37は、フライアイレンズの構成例を示す正面図である。
図38図38は、図37に示すフライアイレンズの側面図である。
図39図39は、図37に示すフライアイレンズの上面図である。
図40図40は、レーザ加工条件の具体例を示す図表である。
【実施形態】
【0012】
-目次-
1.レーザ加工システムの全体説明
1.1 構成
1.2 動作
1.3 レーザ加工システムの制御例
2.用語の説明
3.課題
4.実施形態1
4.1 構成
4.2 動作
4.3 作用・効果
5.実施形態2
5.1 構成
5.2 動作
5.3 作用・効果
6.パージガスを流す集塵システムの変形例
6.1 変形例1
6.1.1 構成
6.1.2 動作
6.1.3 作用・効果
6.2 変形例2
6.2.1 構成
6.2.2 動作
6.2.3 作用・効果
6.3 変形例3
6.3.1 構成
6.3.2 動作
6.3.3 作用・効果
6.4 変形例4
6.4.1 構成
6.4.2 動作
6.4.3 作用・効果
7.フライアイレンズの例
7.1 構成
7.2 動作
7.3 その他
8.レーザ加工条件の具体例
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0013】
1.レーザ加工システムの全体説明
1.1 構成
図1に、例示的なレーザ加工システムの構成を概略的に示す。レーザ加工システム10は、レーザ装置12と、光路管13と、レーザ加工装置14と、を含む。レーザ装置12は、紫外線のパルスレーザ光を出力するレーザ装置である。例えば、レーザ装置12は、F、ArF、KrF、XeCl、又はXeFをレーザ媒質とする放電励起式レーザ装置であってよい。レーザ装置12は、発振器20と、モニタモジュール24と、シャッタ26と、レーザ制御部28と、を含む。
【0014】
発振器20は、チャンバ30と、光共振器32と、充電器36と、パルスパワーモジュール(PPM)38と、を含む。チャンバ30には、エキシマレーザガスが封入される。チャンバ30は、1対の電極43、44と、絶縁部材45と、ウインドウ47、48と、を含む。
【0015】
光共振器32は、リアミラー33と出力結合ミラー(OC:Output Coupler)34とを含む。リアミラー33と出力結合ミラー342の各々は、平面基板に、高反射膜と部分反射膜とがコートされる。チャンバ30は、光共振器32の光路上に配置される。
【0016】
モニタモジュール24は、ビームスプリッタ50と、光センサ52と、を含む。
【0017】
シャッタ26は、モニタモジュール24から出力されるパルスレーザ光の光路上に配置される。パルスレーザ光の光路は、図示せぬ筐体及び光路管によってシールされ、Nガスでパージされていてもよい。
【0018】
レーザ加工装置14は、照射光学システム70と、フレーム72と、XYZステージ74と、テーブル76と、パージガスノズル80と、排気ダクト90と、レーザ加工制御部100と、を含む。
【0019】
照射光学システム70は、高反射ミラー111及び高反射ミラー112と、アッテネータ120と、ラインビーム整形光学系130と、1軸ステージ138と、マスク140と、投影光学系142と、ウインドウ146と、筐体150と、を含む。
【0020】
高反射ミラー111は、光路管13を通過したパルスレーザ光がアッテネータ120に通過して高反射ミラー112に入射するように配置される。
【0021】
アッテネータ120は、高反射ミラー111と高反射ミラー112の間の光路上に配置される。アッテネータ120は、2枚の部分反射ミラー121、122とそれぞれのミラーの入射角を可変する回転ステージ123、124と、を含む。
【0022】
高反射ミラー112は、アッテネータ120を通過したレーザ光がラインビーム整形光学系130に入射するように配置される。
【0023】
ラインビーム整形光学系130は、高反射ミラー133と、フライアイレンズ134と、コンデンサレンズ136と、を含む。ラインビーム整形光学系130は、マスク140をライン状のビームでケーラー照明するように配置される。ライン状のビームとは、長方形(矩形)のビーム形状を有する矩形型のビームをいう。ライン状のビームを「ラインビーム」という。ここでは、ラインビームの短軸方向をX軸方向とし、ラインビームの長軸方向をY軸方向とする。
【0024】
ラインビーム整形光学系130の高反射ミラー133は、入射したパルスレーザ光をフライアイレンズ134に入射するように配置される。
【0025】
フライアイレンズ134は、フライアイレンズ134の焦点面とコンデンサレンズ136の前側焦点面が一致するように配置される。コンデンサレンズ136は、コンデンサレンズ136の後側焦点面とマスク140の位置が一致するように配置される。
【0026】
ラインビーム整形光学系130は、マスク140上をラインビームがX軸方向に移動可能なように1軸ステージ138に固定される。
【0027】
マスク140は、例えば、紫外光を透過する合成石英基板に、金属又は誘電体多層膜のパターンが形成されたマスクである。例えば、プリント基板等のビアホール加工の場合は、マスク140に、直径5μm~30μmの穴のパターンが形成されている。
【0028】
投影光学系142は、ウインドウ146を介して、マスク140の像が被加工物160の表面で結像するように配置される。投影光学系142は、複数のレンズ143、144の組合せレンズであって、縮小投影光学系であってもよい。
【0029】
ウインドウ146は、投影光学系142と、被加工物160の間のレーザ光路上に配置される。ウインドウ146は、筐体150に設けられた穴に、図示せぬOリング等を介して配置される。ウインドウ146は、エキシマレーザ光を透過するCaF結晶や、合成石英基板であって、両面に反射抑制膜がコートされていてもよい。
【0030】
筐体150には、窒素ガスの入口152と出口154とが配置されている。筐体150は、筐体150内に外気が混入するのを抑制するようにOリング等を介してシールされていてもよい。
【0031】
フレーム72に、照射光学システム70とXYZステージ74とが固定される。XYZステージ74の上にテーブル76が固定される。被加工物160は、テーブル76上に固定される。テーブル76は被加工物160を載置する載置台の一例である。
【0032】
被加工物160は、例えば、LSI(large‐scale integrated circuit)チップとメインのプリント基板の間で中継するインターポーザ基板やフレキシブルなプリント基板であってもよい。例えば、この基板の電気絶縁材料としては、高分子材料、ガラスエポキシ材料、ガラス材料などがある。
【0033】
パージガスノズル80は、被加工物160におけるパルスレーザ光が照射される領域にパージガスが流れるように配置される。パージガスノズル80は、配管86を介してパージガス供給源88と接続される。パージガス供給源88から供給されるパージガスは、アブレーションにより生成した物質を除去できるガスであればよい。例えば、パージガスは、Nガス又はクリーンドライエアであってよい。
【0034】
排気ダクト90は、パルスレーザ光によって、アブレーションしたデブリがパージガスと一緒に流れて排気されるように配置される。排気ダクト90は、配管96を介して排気装置98と接続される。
【0035】
レーザ加工制御部100は、レーザ装置12、アッテネータ120、1軸ステージ138及びXYZステージ74の動作を制御する。
【0036】
1.2 動作
レーザ加工制御部100は、レーザ加工時の照射条件パラメータであるレーザ加工条件パラメータを読込む。具体的には、レーザ加工制御部100は、レーザ加工を行う際の被加工物160上でのフルーエンスFiと、照射パルス数Niと、繰り返し周波数fiとを読込む。レーザ加工制御部100は、レーザ加工条件パラメータに従い、レーザ装置12に調整発振をさせる。
【0037】
レーザ制御部28は、目標パルスエネルギEtをレーザ加工制御部100から受信する。レーザ制御部28は、目標パルスエネルギEtを受信すると、シャッタ26を閉じ、目標パルスエネルギとなるように充電器36を制御する。
【0038】
レーザ加工制御部100は、レーザ制御部28に、発振開始トリガ信号を送信する。レーザ加工制御部100から発せられた発振開始トリガ信号は、レーザ制御部28を介してPPM38のスイッチ39に入力される。その結果、発振器20は自然発振する。
【0039】
発振器20から出力されたパルスレーザ光は、モニタモジュール24のビームスプリッタ50によってサンプルされ、光センサ52によってパルスエネルギEが計測される。
【0040】
光センサ52を用いて計測されたパルスエネルギEの情報はレーザ制御部28に送られる。
【0041】
レーザ制御部28は、目標パルスエネルギEtとパルスエネルギEの計測結果の差ΔEが0に近づくように、充電器36の充電電圧を制御する。レーザ制御部28は、ΔEが許容範囲となったら、レーザ加工制御部100に、パルスエネルギOK信号を送信し、シャッタ26を開ける。
【0042】
レーザ加工制御部100は、レーザ制御部28からパルスエネルギOK信号を受信する。
【0043】
次に、レーザ加工制御部100は、被加工物160上において最初にレーザ照射を行う加工位置にパルスレーザ光が照射されるように、XYZステージ74をX軸方向及びY軸方向に制御する。また、レーザ加工制御部100は、マスク140の像が被加工物160の表面の位置に結像するように、XYZステージ74をZ軸方向に制御する。
【0044】
レーザ加工制御部100は、被加工物160の表面位置、すなわち、マスク140の像の位置のフルーエンスが目標のフルーエンスFiとなるように、アッテネータ120の透過率Tを計算する。
【0045】
続いて、レーザ加工制御部100は、アッテネータ120の透過率がTとなるように、2つの部分反射ミラー121、122の入射角度をそれぞれの回転ステージ123、124によって制御する。
【0046】
続いて、レーザ加工制御部100は、ラインビームの短軸方向のビーム幅がBxの場合に、繰り返し周波数fiで照射パルス数がNiとなるように1軸ステージ138の移動速度Vmxを計算する。
【0047】
レーザ加工制御部100は、X軸方向にVmxで、ラインビーム整形光学系130が等速直線運動で移動するように制御する。その結果、マスク140上をラインビームがVmxで等速直線運動する。
【0048】
この間、レーザ制御部28は、繰り返し周波数fiの発光トリガ信号Trを送信する。発光トリガ信号Trに同期して、モニタモジュール24のビームスプリッタ50を透過したパルスレーザ光は、光路管13を介してレーザ加工装置14に入射する。
【0049】
このパルスレーザ光は、高反射ミラー111によって反射され、アッテネータ120を通過して、減光された後、高反射ミラー112によって反射される。
【0050】
高反射ミラー112で反射したパルスレーザ光は、ラインビーム整形光学系130によって、光強度が空間的に均一化されて、ラインビームに整形される。ラインビーム整形光学系130から出力されたラインビームは、マスク140に入射する。このラインビームは、1軸ステージ138の動きによって、マスク140上をVmxでX軸方向に移動する。
【0051】
マスク140を透過したパルスレーザ光は、投影光学系142によって、被加工物160の表面に縮小投影される。
【0052】
パルスレーザ光は、投影光学系142を通過して、転写結像した領域の被加工物160に照射される。被加工物160の表面でパルスレーザ光が照射された部分がアブレーションし、レーザ加工される。
【0053】
マスク140上に照射されたラインビームは、被加工物160上では、縮小投影されて、被加工物160上を反対方向に「-M・Vmx」の速度で移動する。Mは投影光学系142の倍率である。投影光学系142は、縮小転写光学系であるため、Mは1より小さい正の値である。
【0054】
図2は、被加工物160に照射されるラインビームの例を示す。ラインビームLBは、短軸方向であるX軸方向のビーム幅がBxであり、長軸方向であるY軸方向のビーム幅がByである矩形型のビーム形状を有する。
【0055】
図3は、ラインビームスキャン方式による被加工物のレーザ加工方法の例を示す平面図である。図3に、ラインビームスキャン方式による被加工物上の加工対象領域ごとの加工順番とラインビームの移動方向の例を示す。図3において、被加工物160の加工面は、「S#1」~「S#12」の12個の加工対象領域に区画されている。「S#1」→「S#2」→「S#3」→・・・→「S#12」の順番に、加工対象領域を変更しながら、加工対象領域ごとにラインビームスキャンを実施してレーザ加工が行われる。
【0056】
各加工対象領域内に示した矢印は、ラインビームLBのスキャン方向を表している。最初の加工対象領域である第1加工対象領域S#1の右端がラインビームLBの初期位置である。この初期位置からラインビームLBの移動(レーザ加工)をスタートさせる。図3において、各加工対象領域の加工開始位置におけるラインビームLBの位置を矩形の塗りつぶしパターンで表示してある。
【0057】
第1加工対象領域S#1を加工する際には、ラインビームLBを初期位置から図3の左方向に移動させ、第1加工対象領域S#1の左端まで移動させる。この1回のラインビームスキャン動作によって第1加工対象領域S#1の加工が完了する。
【0058】
1つの加工対象領域について、X軸方向のラインビームスキャンが終わると、ビーム照射を停止させ、被加工物160における次の加工対象領域の加工開始位置にラインビームの照射領域を移動させるように、XYZステージ74がX軸方向及び/又はY軸方向に制御される。XYZステージ74は、ラインビームの照射を停止している期間に駆動される。
【0059】
例えば、第1加工対象領域S#1の加工を終えた後、XYZステージ74をX軸方向に制御して、ラインビームLBの位置を第2加工対象領域S#2の左端に移動させる。第2加工対象領域S#2を加工する際には、1軸ステージ138を移動させながらビーム照射を行い、ラインビームLBの照射領域を第2加工対象領域S#2の左端から右端に移動させる。ラインビームLBは、1軸ステージ138によってX軸方向に往復移動される。
【0060】
このように、各加工対象領域内についてのレーザ加工中のラインビームのX軸方向への移動は、1軸ステージ138を制御することによって実現され、加工対象領域を変更する際の被加工物160の移動は、XYZステージ74を制御することによって実現される。ラインビームLBは、1軸ステージ138によってX軸方向に往復移動される。
【0061】
被加工物160に、未加工の加工対象領域が無くなるまで、上述のラインビームスキャン動作と、被加工物160の移動動作とを交互に繰り返して行う。
【0062】
このとき、ラインビームのスキャン方向は、XYZステージ74で被加工物160を移動させるごとに、逆方向となるように制御される(図3参照)。
【0063】
以上のように、レーザ加工システム10は、加工対象領域ごとにラインビームをX軸方向に移動させてパルスレーザ光の照射を行うことにより、レーザ加工を行う。そして、加工対象領域を順次変更し、ラインビームのスキャン方向を逆方向に切り替えて、ラインビームスキャン方式によるレーザ加工を行う。
【0064】
1.3 レーザ加工システムの制御例
図4は、レーザ加工システムの制御例を示すフローチャートである。ステップS11において、被加工物160がXYZステージ74のテーブル76上にセットされる。被加工物160は、図示せぬワーク搬送ロボットその他の自動搬送装置によってテーブル76にセットされてよい。被加工物160がテーブル76上にセットされた後は、図示せぬアライメント光学系によりテーブル76上で被加工物160の位置が決定され、加工位置との整合を図ることが可能とする。
【0065】
ステップS12において、レーザ加工制御部100は、レーザ加工条件パラメータの読込みを行う。レーザ加工条件パラメータは、レーザ加工時のレーザ照射条件パラメータである。
【0066】
図5は、レーザ加工条件パラメータの読込(1)の処理内容の例を示すフローチャートである。図5に示すフローチャートは、図4のステップS12の処理に適用される。
【0067】
ステップS31において、レーザ加工制御部100は、レーザ加工を行う際の被加工物160上でのフルーエンスFiと、照射パルス数Niと、繰り返し周波数fiと、を読込む。ここで照射パルス数Niは、2以上の整数とする。レーザ加工制御部100は、ステップS31の後、図4のメインフローに復帰する。
【0068】
ステップS13において、レーザ加工制御部100は、レーザ装置12に調整発振を実施させる。レーザ加工制御部100は、繰り返し周波数fiで、レーザ装置12が目標パルスエネルギEtとなるように調整発振させる。
【0069】
図6は、レーザ装置の調整発振を行う際の処理内容の例を示すフローチャートである。図6に示すフローチャートは、図4のステップS13に適用される。図6のステップS41において、レーザ加工制御部100は、目標パルスエネルギEtと繰り返し周波数fiのデータをレーザ制御部28に送信する。この場合の目標パルスエネルギEtと繰り返し周波数fiは、レーザ装置12が安定して動作し得る定格のデータであることが好ましい。例えば、目標パルスエネルギEtは30ミリジュール[mJ]から100ミリジュール[mJ]の範囲内の値であってよい。また、繰り返し周波数fiは、100ヘルツ[Hz]から6000ヘルツ[Hz]の範囲内の値であってよい。レーザ加工制御部100は、レーザ装置12の定格のパルスエネルギを目標パルスエネルギEtとして予め記憶している。
【0070】
ステップS42において、レーザ加工制御部100は、レーザ制御部28からパルスエネルギOK信号を受信したか否かを判定する。ステップS42の判定処理は、レーザ装置12から出力されるパルスレーザ光のパルスエネルギEと目標パルスエネルギEtとの差が許容範囲に収まっているか否かの判定に相当する。
【0071】
レーザ加工制御部100は、ステップS42にてYes判定となるまで、ステップS42を繰り返す。ステップS42にてYes判定となった場合は、図6のフローチャートを抜けて、図4のメインフローに復帰する。
【0072】
ステップS14において、レーザ加工制御部100は、レーザ加工エリアが最初のエリア位置となるように、XYZステージ74をX軸方向及びY軸方向に制御する。
【0073】
ステップS15において、レーザ加工制御部100は、マスク140の像が被加工物160の表面に結像するように、XYZステージ74をZ軸方向に制御する。
【0074】
ステップS16において、レーザ加工制御部100は、レーザ加工装置14の制御パラメータの計算と設定の処理を行う。レーザ加工装置14の制御パラメータには、レーザ加工時の制御パラメータが含まれる。具体的には、レーザ加工制御部100は、ラインビームの短軸方向のビーム幅がBxの場合に、フルーエンスFiと照射パルス数Niとなるように、アッテネータ120の透過率Tを計算し、求めた透過率Tを設定する。
【0075】
また、レーザ加工制御部100は、被加工物160上におけるラインビームの移動速度Vxを計算し、その値からラインビーム整形光学系130の1軸ステージ138の移動速度の絶対値Vxmを計算する。
【0076】
図7は、レーザ加工装置の制御パラメータの計算と設定(1)の処理内容の例を示すフローチャートである。図7に示すフローチャートは、図4のステップS16に適用される。図7のステップS51において、レーザ加工制御部100は、レーザ加工条件時のフルーエンスFiとなるアッテネータ120の透過率Tiを計算する。
【0077】
被加工物表面のフルーエンスは以下の式(1)で表される。
【0078】
F=M-2(T・Tp・Et)/(Bx・By) (1)
式中のMは、投影光学系142の倍率を表す。Mは、例えばM=1/2から1/4の範囲の値であってよい。
【0079】
式中のTpは、アッテネータ120が最大透過率時のレーザ装置12から出力されたパルスレーザ光が、被加工物160に到達するまでの光学系の透過率を表す。
【0080】
式(1)からアッテネータ120の透過率Tiは、次の式(2)から求められる。
【0081】
Ti=(M/Tp)(Fi/Et)(Bx・By) (2)
ステップS52において、レーザ加工制御部100は、アッテネータ120の透過率TをTiに設定する。すなわち、レーザ加工制御部100は、アッテネータ120の透過率TがTiとなるように、部分反射ミラー121、122の角度を制御する。
【0082】
次に、ステップS53において、レーザ加工制御部100は、被加工物160の表面をラインビームが移動する速度の絶対値Vxiを計算する。
【0083】
ラインビームの移動速度の絶対値Vxiとすると、レーザ加工時の照射パルス数Niは、次の式(3)で表される。
【0084】
Ni=fi・Bx/Vxi (3)
式(3)からラインビームの移動速度の絶対値Vxiは、次の式(4)から求められる。
【0085】
Vxi=fi・Bx/Ni (4)
式中のNiは、同じ加工対象領域の位置でパルスレーザ光が照射されるパルス数(Ni≧2)となる。
【0086】
ステップS54において、レーザ加工制御部100は、1軸ステージ移動速度の絶対値Vxmiを計算する。レーザ加工制御部100は、縮小転写光学系である投影光学系142の倍率Mを考慮して、ラインビームスキャンによるレーザ加工時のラインビーム整形光学系130の1軸ステージ移動速度の絶対値Vxmiを計算する。
【0087】
1軸ステージ移動速度の絶対値Vxmiは、次の式(5)から求められる。
【0088】
Vxmi=(1/M)・Vxi (5)
ステップS54の後、レーザ加工制御部100は、図7のフローチャートを抜けて、図4のメインフローに復帰する。
【0089】
図4のステップS17において、レーザ加工制御部100は、被加工物160上のビームスキャン方向を表すパラメータXaの値を初期値の「1」に設定する。
【0090】
次に、ステップS18において、レーザ加工制御部100は、ビームスキャン方向の決定を行う。例えば、レーザ加工制御部100は、パラメータXaの正負の符号を逆にして置き換える処理を行う。すなわち、レーザ加工制御部100は、前回設定されたビームスキャン方向と逆方向にビームスキャン方向を設定する。
【0091】
図8は、ビームスキャン方向の決定を行う処理内容の例を示すフローチャートである。図8に示すフローチャートは、図4のステップS18に適用される。図8のステップS61において、レーザ加工制御部100は、パラメータXaがXa=1であるか否かを判定する。
【0092】
ステップS61にてYes判定である場合、すなわち、Xa=1である場合には、レーザ加工制御部100は、ステップS62に進み、Xa=-1に設定する。
【0093】
その一方、ステップS61において、No判定である場合、すなわち、Xa=-1である場合には、レーザ加工制御部100は、ステップS63に進み、Xa=1に設定する。
【0094】
Xa=1は、被加工物160の表面をラインビームが移動する方向がX軸の正の方向であることを表す。Xa=-1は、被加工物160の表面をラインビームが移動する方向がX軸の負の方向であることを表す。
【0095】
ステップS62又はステップS63の後、レーザ加工制御部100は、図8のフローチャートを抜けて、図4のメインフローに復帰する。
【0096】
図4のステップS20において、レーザ加工制御部100は、ビームスキャン加工を実施させる制御を行う。ビームスキャン加工時には、ステップS12にて設定された繰り返し周波数fi、フルーエンスFi、及び照射パルス数Niで被加工物160にパルスレーザ光が照射される。
【0097】
図9は、ビームスキャン加工の処理内容の例を示すフローチャートである。図9に示すフローチャートは、図4のステップS20に適用される。図9のステップS71において、レーザ加工制御部100は、1軸ステージ138の移動速度と移動方向を規定するパラメータVxmをセットする。Vxmは、次の式(6)に従って決定される。
【0098】
Vxm=-Xa・Vxmi (6)
なお、実際には、ビームスキャンの移動距離に対応して、加速、等速直線運動、及び減速のそれぞれが所定の時間で行われるように各パラメータをセットする。ここでは、説明を簡単にするために、等速直線運動時の速度がVxmである場合を例示する。
【0099】
式(6)から定まるVxmが負の場合は、1軸ステージ138をX軸の正の方向に移動させる。その結果、被加工物160の表面においてラインビームは、X軸の負の方向に移動する。
【0100】
式(6)から定まるVxmが正の場合は、1軸ステージ138をX軸の負の方向に移動させる。その結果、被加工物160の表面のラインビームはX軸の正の方向に移動する。
【0101】
ステップS72において、レーザ加工制御部100は、1軸ステージ移動開始信号を送信する。1軸ステージ移動開始信号は、1軸ステージ138の移動を開始させる制御信号である。
【0102】
ステップS73において、レーザ加工制御部100は、繰り返し周波数fiで発光トリガ信号を出力する。
【0103】
ステップS74において、レーザ加工制御部100は、1軸ステージ138のスキャン照射方向の移動が終了したか否かの判定を行う。1軸ステージ138のスキャン照射方向とは、マスク140上に照射するラインビームの移動方向を意味する。1軸ステージ138のスキャン照射方向の移動が終了するまで、すなわち、ステップS74にてNo判定の場合、ステップS73~S74を繰り返す。ラインビームスキャンが開始されてから停止するまでの間は、繰り返し周波数fiでレーザ加工制御部100からレーザ制御部28に対し、1軸ステージ138の等速直線運動中に発光トリガ信号を出力する。これにより、パルスレーザ光は、繰り返し周波数fiで被加工物160の加工対象領域に照射される。
【0104】
ステップS74にてYes判定の場合、すなわち、1つの加工対象領域に対するラインビームスキャンが完了して、1軸ステージ138の移動が終了すると、レーザ加工制御部100は、ステップS75に進み、発光トリガ信号の出力を停止する。これにより、レーザ装置12からのパルスレーザ光の出力が停止される。
【0105】
ステップS75の後、レーザ加工制御部100は、図9のフローチャートを抜けて、図4のメインフローに復帰する。
【0106】
ステップS22において、レーザ加工制御部100は、レーザ加工のための全てのビームスキャン加工を終了したか否かを判定する。ステップS22にてNo判定である場合、レーザ加工制御部100は、ステップS24に進む。ステップS24において、レーザ加工制御部100は、次のビームスキャン加工の初期位置となるようにXYZステージ74をX軸方向及びY軸方向に制御し、ステップS18に戻る。レーザ加工制御部100は、加工対象領域の全てのビームスキャン加工を終了するまで、ステップS18~ステップS22を繰り返す。全てのビームスキャン加工が終了し、ステップS22にてYes判定になると、図4のフローチャートを終了する。
【0107】
なお、図4図9で説明した例では、簡単のために、1回のラインビームスキャン照射を実施するために、1軸ステージ138の移動を開始してから停止するまでの期間、一定の繰り返し周波数fiでパルスレーザ光を出力したが、この例に限定されない。例えば1軸ステージ138の加速時や減速時は、ラインビームが被加工物160に照射されないので、これらの期間中は、パルスレーザ光を照射しなくてもよい。この場合は、レーザ装置12が出力するパルスレーザ光のパルス数を節約できる。
【0108】
2.用語の説明
「デブリ」とは、被加工物にレーザ光を照射するレーザ加工において、アブレーションにより被加工物の表面から飛散した物質をいう。デブリは、微粒子、若しくはガス、又はこれらの組み合わせであってよい。
【0109】
「ラインビームスキャン方式」とは、マスクの像を投影光学系によって、被加工物の表面に結像させてレーザ光を照射するレーザ光照射において、マスク上にライン状に整形されたレーザ光のビームを照射し、このビームを等速移動させながら照射することによって、被加工物の表面をラインビームが等速移動しながらレーザ光を照射するレーザ光照射方式をいう。アブレーション加工の際に、被加工物の表面をビームが移動する方向を「ビームスキャン方向」という。
【0110】
3.課題
図1に示す構成において、ラインビームスキャン方式によるレーザ加工を実施すると、被加工物160の加工面内で加工レートが異なり、中央部分での加工レートが小さいという課題があった。その原因の1つは、レーザ加工により発生したデブリがレーザ光を遮ることにより、加工レートが低下するためであると考えられる。また、他の原因の1つは、発生したデブリが加工面に再付着することにより、加工レートが低下するためであると考えられる。
【0111】
図10は、ラインビームスキャン動作の様子を模式的に示す平面図である。図10では、簡単のために、被加工物160における単一の加工対象領域をビームスキャン領域161とする例を示す。図10中の矢印Aは、ラインビームスキャン方向を示す。被加工物160にラインビームLBが照射されることにより、デブリ174が発生する。図10においてデブリ174の飛散領域をドットパターンによって模式的に表示している。
【0112】
図11は、図10に示す構成の側面図である。図10及び図11において、ラインビームスキャン方向は、X軸の負の方向である。すなわち、図10において、ラインビームは、被加工物160の表面上をX軸の負の方向へ移動しながら、被加工物160に照射される。
【0113】
ビームスキャン動作中、パージガスノズル80からパージガスが噴射される。排気ダクト90は、レーザ加工にて発生したデブリ174を集塵する。図10及び図11に示す例では、ラインビームスキャン方向の前方(ラインビームLBの進行方向)に配置されたパージガスノズル80からパージガスが噴射され、ラインビームスキャン方向の後方に配置された排気ダクト90によって、デブリ174が集塵される。
【0114】
したがって、デブリ174は、ラインビームLBを既に照射済みである加工済み領域の方向に、つまり、ラインビームスキャン方向の後方に向かって流れる。このため、ラインビームの未照射領域へのデブリの拡散が抑制されている。
【0115】
図12及び図13は、図10及び図11と比較して、ラインビームスキャン方向が逆方向である場合を示している。図12は平面図、図13図12に示す構成の側面図である。図12中の矢印Bは、ラインビームスキャン方向を示す。
【0116】
図12及び図13において、ラインビームスキャン方向は、X軸の正の方向である。すなわち、図12において、ラインビームLBは、被加工物160の表面上をX軸の正の方向へ移動しながら、被加工物160に照射される。ラインビームスキャン動作中、パージガスノズル80からパージガスが噴射される。排気ダクト90は、レーザ加工にて発生したデブリ174を集塵する。図12及び図13に示す例では、ラインビームスキャン方向の後方に配置されたパージガスノズル80からパージガスが噴射され、ラインビームスキャン方向の前方に配置された排気ダクト90によって、デブリ174が集塵される。
【0117】
したがって、デブリ174は、ラインビームLBを未だ照射していない未加工領域の方向、つまり、ラインビームスキャン方向の前方に向かって流れる。このため、ラインビームの未照射領域へのデブリが拡散していくことになる。
【0118】
図12及び図13に示すように、デブリ174がラインビームLBのレーザ光を遮ることにより加工レートが低下する。また、発生したデブリ174が未加工の加工面に再付着することにより加工レートが低下し得る。
【0119】
4.実施形態1
4.1 構成
図14は、実施形態1に係るレーザ加工装置を含むレーザ加工システムの構成を概略的に示す図である。図1との相違点を説明する。
【0120】
図14に示す実施形態1に係るレーザ加工装置14は、第1パージガスノズル81、第2パージガスノズル82、パージガス切替バルブ84及びガス流量制御弁85を備える。レーザ加工装置14は、さらに、第1排気ダクト91、第2排気ダクト92、及び排気ガス切替バルブ94を備える。
【0121】
第1パージガスノズル81と第2パージガスノズル82は、被加工物160のビームスキャン領域161を挟んでX軸方向に互いに対向して配置される。第1排気ダクト91と第2排気ダクト92も、被加工物160のビームスキャン領域161を挟んでX軸方向に互いに対向して配置される。
【0122】
第1パージガスノズル81は、配管を介してパージガス切替バルブ84に接続される。第2パージガスノズル82は、配管を介してパージガス切替バルブ84に接続される。パージガス切替バルブ84は、レーザ加工制御部100から出力される切替指令信号に従い、パージガスの供給口を第1パージガスノズル81又は第2パージガスノズル82に切り替えることができる。
【0123】
ガス流量制御弁85は、パージガス供給源88からパージガス切替バルブ84までの間の管路の途中に配置される。ガス流量制御弁85は、レーザ加工制御部100から出力される流量制御信号に従い、パージガスの流量を調整する。
【0124】
第1排気ダクト91は、配管を介して排気ガス切替バルブ94に接続される。第2排気ダクト92は、配管を介して排気ガス切替バルブ94に接続される。排気ガス切替バルブ94は、レーザ加工制御部100から出力される切替指令信号に従い、デブリを含むガスの回収口を第1排気ダクト91又は第2パージガスノズル82に切り替えることができる。
【0125】
4.2 動作
図14のように構成された実施形態1に係るレーザ加工装置14の動作を説明する。レーザ加工制御部100は、被加工物160を加工するラインビームのスキャン方向に応じて、パージガスを吹き出すパージガスノズルと、ガスを回収する排気ダクトとの組み合わせを切り替える制御を行う。
【0126】
ビームスキャン方向がX軸の負の方向である場合には、パージガスの供給口として第1パージガスノズル81が選択され、かつ、デブリを含むガスの回収口として第1排気ダクト91が選択される。すなわち、第1パージガスノズル81からパージガスを吹き出し、第1排気ダクト91から吸い込む。このとき、第2パージガスノズル82からのパージガスの吹き出しは停止され、第2排気ダクト92からの吸い込みも停止される。
【0127】
これにより、第1パージガスノズル81から第1排気ダクト91に向かうパージガスの流れが形成される。第1パージガスノズル81から第1排気ダクト91へと流れるパージガスの気体流の方向は、被加工物160上におけるラインビームの照射領域の移動方向と逆方向である。
【0128】
図15は、ビームスキャン方向がX軸の負の方向である場合におけるラインビームスキャン動作の様子を模式的に示す平面図である。図16は、図15に示す構成の側面図である。図15及び図16において、図10及び図11で説明した構成と同一の要素には、同一の参照符号を付す。図15中の矢印Cは、パージガスの気体流の方向を示す。被加工物160にラインビームLBが照射されることにより、デブリ174が発生する。
【0129】
ビームスキャン動作中、第1パージガスノズル81からパージガスが噴射される。第1排気ダクト91は、レーザ加工にて発生したデブリ174を集塵する。図10及び図11で説明した例と同様に、ラインビームスキャン方向の前方に配置された第1パージガスノズル81からパージガスが噴射され、ラインビームスキャン方向の後方に配置された第1排気ダクト91によって、デブリ174が集塵される。
【0130】
したがって、デブリ174は、ラインビームLBを既に照射済みである加工済み領域の方向に、つまり、ラインビームスキャン方向の後方に向かって流れる。このため、ラインビームの未照射領域へのデブリの拡散が抑制されている。
【0131】
次に、ビームスキャン方向がX軸の正の方向である場合を説明する。ビームスキャン方向がX軸の正の方向である場合には、パージガスの供給口として第2パージガスノズル82が選択され、かつ、デブリを含むガスの回収口として第2排気ダクト92が選択される。すなわち、第2パージガスノズル82からパージガスを吹き出し、第2排気ダクト92から吸い込む。このとき第1パージガスノズル81からのパージガスの吹き出しは停止され、第1排気ダクト91からの吸い込みも停止される。これにより、第2パージガスノズル82から第2排気ダクト92に向かうパージガスの流れが形成される。第2パージガスノズル82から第2排気ダクト92へと流れるパージガスの気体流の方向は、被加工物160上におけるラインビームLBの照射領域の移動方向と逆方向である。
【0132】
図17は、ビームスキャン方向がX軸の正の方向である場合におけるラインビームスキャン動作の様子を模式的に示す平面図である。図18は、図17に示す構成の側面図である。図17中の矢印Dは、パージガスの気体流の方向を示す。被加工物160にラインビームLBが照射されることにより、デブリ174が発生する。
【0133】
ビームスキャン動作中、第2パージガスノズル82からパージガスが噴射される。第2排気ダクト92は、レーザ加工にて発生したデブリ174を集塵する。ラインビームスキャン方向の前方に配置された第2パージガスノズル82からパージガスが噴射され、ラインビームスキャン方向の後方に配置された第2排気ダクト92によって、デブリ174が集塵される。
【0134】
したがって、デブリ174は、ラインビームLBを既に照射済みである加工済み領域の方向に、つまり、ラインビームスキャン方向の後方に向かって流れる。このため、ラインビームの未照射領域へのデブリの拡散が抑制されている。
【0135】
このように、第1パージガスノズル81及び第2パージガスノズル82のうち、ビームスキャン方向の前方に配置されている一方のパージガスノズルからパージガスの供給を行う。そして、その反対側、つまりビームスキャン方向とは逆方向に配置されている一方の排気ダクト(第1排気ダクト91又は第2排気ダクト92)からデブリを含むガスの回収を行う。
【0136】
ビームスキャン方向が変更され、前回のビームスキャン方向と逆方向となった場合は、パージガスを吹き出すパージガスノズルとデブリを集塵する排気ダクトとの組み合わせを変更して、気体流の方向を前回の気体流の方向とは逆向きの方向に変更する。つまり、ビームスキャン方向の変更に伴い、パージガスの流れの方向を変更する。
【0137】
レーザ加工制御部100は、ビームスキャン方向に応じて、パージガス切替バルブ84及び排気ガス切替バルブ94の切り替えを制御して、上述の動作を実現する。
【0138】
図19は、実施形態1に係るレーザ加工装置を含むレーザ加工システムの制御例を示すフローチャートである。図19において、図4で説明したフローチャートとの相違点を説明する。図19に示すフローチャートは、図4のステップS16に代えて、ステップS16Aを含む。
【0139】
また、図19に示すフローチャートは、ステップS18とステップS20の間に、パージガスの方向を制御するステップ(ステップS19)を含む。
【0140】
ステップS16Aは、図4のステップS16で説明した制御パラメータの計算と設定に加え、繰り返し周波数fiと、ラインビームの短軸方向のビーム幅Bxと、を基に、パージガスの流速Vpgiを計算する処理を含む。また、ステップS16Aは、Vpgiからパージガスの流量Qpgを計算し、パージガスの流量を制御する処理を含む。
【0141】
図20は、レーザ加工装置の制御パラメータの計算と設定(2)の処理内容の例を示すフローチャートである。図20に示すフローチャートは、図19のステップS16Aに適用される。図20において、図7のフローチャートで説明したステップと同一のステップには、同一のステップ番号を付し、重複する説明を省略する。図20では、ステップS54の後に、ステップS55~ステップS57の各ステップを含む。
【0142】
ステップS55において、レーザ加工制御部100は、被加工物160の表面におけるパージガスの平均流速Vpgiを計算する。被加工物160の表面に流すパージガスの平均流速Vpgiは、式(7)から求めることができる。
【0143】
Vpgi=α・fi・Bx (7)
式中のαは、比例係数である。例えば、αの値は1であってよい。
【0144】
式(7)は、パルスレーザ光の繰り返し周期(1/fi)の間にラインビームの短軸幅Bxだけデブリが移動すればデブリの影響を抑制できる、という観点から計算される被加工物160の表面におけるパージガスの平均流速Vpgiである。
【0145】
ステップS56において、レーザ加工制御部100は、平均流速がVpgiとなるようなガス流量制御弁の流量Qpgiを計算する。流量Qpgiは、式(8)から求めることができる。
【0146】
Qpgi=β・Vpgi (8)
式中のβは比例係数である。例えば、被加工物160の表面に流れるパージガスの流路断面積をSとすると、β=Sであってよい。
【0147】
次にステップS57において、レーザ加工制御部100は、ガス流量制御弁の流量Qpgをセットする。すなわち、レーザ加工制御部100は、ステップS56で求めたQpgiを流量Qpgに設定する。そして、レーザ加工制御部100は、パージガスの流量を制御するガス流量制御弁に流量がQpgとなるようにデータを送信する。
【0148】
ステップS57の後、レーザ加工制御部100は、図20のフローチャートを抜けて、図19のメインフローに復帰する。
【0149】
図21は、パージガスの方向を制御する処理の例を示すフローチャートである。図21に示すフローチャートは、図19のステップS19に適用される。図19のステップS81において、レーザ加工制御部100は、パラメータXaの値を確認し、Xaの値に応じて、ステップS82又はステップS83のいずれかの処理を選択する。
【0150】
ステップS81にてXa=-1である場合、ラインビームの移動方向はX軸の負の方向なので、パージガスはX軸の正の方向に流す(ステップS82)。すなわち、Xa=-1である場合、レーザ加工制御部100は、ステップS82に進み、X軸の正の方向にパージガスを流す制御を行う。具体的には、ステップS82にて、レーザ加工制御部100は、パージガス切替バルブ84と排気ガス切替バルブ94の各々に制御信号を送り、第1パージガスノズル81から第1排気ダクト91にパージガスが流れるように制御する。
【0151】
その一方、ステップS81にてXa=1である場合、ラインビームの移動方向はX軸の正の方向なので、パージガスはX軸の負の方向に流す(ステップS83)。すなわち、Xa=1である場合、レーザ加工制御部100は、ステップS83に進み、X軸の負の方向にパージガスを流す制御を行う。具体的には、ステップS83にて、レーザ加工制御部100は、パージガス切替バルブ84と排気ガス切替バルブ94の各々に制御信号を送り、第2パージガスノズル82から第2排気ダクト92にパージガスが流れるように制御する。
【0152】
ステップS82又はステップS83の後、図21のフローチャートを抜けて、図19のメインフローに復帰する。
【0153】
なお、実施形態1におけるテーブル76は本開示における「載置台」の一例である。ラインビーム整形光学系130、マスク140及び投影光学系142は、レーザ装置12から出力されたパルスレーザ光を被加工物160に導く光学系を構成しており、本開示における「光学系」の一例である。1軸ステージ138は本開示における「移動装置」及び「第1の移動装置」の一例である。パージガスは本開示における「気体」の一例である。第1パージガスノズル81と第2パージガスノズル82の各々は本開示における「気体供給口」の一例である。第1排気ダクト91と第2排気ダクト92の各々は本開示における「気体回収口」の一例である。パージガス切替バルブ84は本開示における「第1の切替バルブ」の一例である。排気ガス切替バルブ94は本開示における「第2の切替バルブ」の一例である。高反射ミラー111、112及びアッテネータ120は本開示における「伝送系」の一例である。レーザ装置12とレーザ加工装置14との間にレーザ光を伝送する伝送系として機能する他の光学系を含んでもよい。ガス流量制御弁85は本開示における「流量調節部」の一例である。レーザ加工制御部100は本開示における「制御装置」の一例である。X軸の方向は本開示における「第1軸の方向」の一例である。Y軸の方向は本開示における「第2軸の方向」の一例である。XYZステージ74は本開示における「第2の移動装置」の一例である。
【0154】
4.3 作用・効果
第1実施形態によれば、被加工物160の表面のデブリを効果的に除去することができ、加工レートと加工面内における加工レートの均質性が改善される。
【0155】
5.実施形態2
5.1 構成
実施形態2に係るレーザ加工装置を含むレーザ加工システムの構成は、図14に示す実施形態1と同様である。
【0156】
5.2 動作
実施形態2では、レーザ加工制御部100がレーザ加工条件からデブリ発生量を予測し、その予測結果に基づいてパージガスの流量を制御する。
【0157】
図22は、実施形態2に係るレーザ加工装置を含むレーザ加工システムの制御例を示すフローチャートである。
【0158】
図22において、図4及び図19で説明したフローチャートとの相違点を説明する。図22に示すフローチャートは、図19におけるステップS12に代えて、ステップS12Bを含む。また、図22に示すフローチャートは、図19におけるステップS16Aに代えて、ステップS16Bを含む。
【0159】
図22のステップS12Bにおいて、レーザ加工制御部100は、レーザ加工条件パラメータの読込みを行う。
【0160】
図23は、レーザ加工条件パラメータの読込(2)の処理内容の例を示すフローチャートである。図23に示すフローチャートは、図22のステップS12Bに適用される。
【0161】
図23のステップS31Bにおいて、図4のステップS12で説明したフルーエンスFi、照射パルス数Ni、及び繰り返し周波数fiに加え、さらに、マスク140の開口率Oiと、1パルス当たりに発生するデブリ量係数γと、を読み込む。
【0162】
マスク140の開口率Oiに比例してデブリの発生量が増加する。また、被加工物160の吸収率やフルーエンスFiによって、1パルス当たりに発生するデブリ量が変化する。デブリ量係数γは、基準のデブリ発生量に対する係数である。例えば、基準材料をポリイミド材料として、基準フルーエンスでの1パルス当たりの加工深さPI[μm/パルス]とすると、
フルーエンスFiでの1パルス当たりの加工深さD[μm/パルス]をプレ試験で求めることによって、デブリ量係数γを、次の式(9)、
γ=D/PI (9)
から求めることができる。
【0163】
ステップS31の後、レーザ加工制御部100は、図22のメインフローに復帰する。
【0164】
なお、図23のステップS31Bにて読み込まれるレーザ加工条件は本開示における「加工条件」の一例である。
【0165】
図24は、レーザ加工装置の制御パラメータの計算と設定(3)の処理内容の例を示すフローチャートである。図24に示すフローチャートは、図22のステップS16Bに適用される。
【0166】
図24において、図7及び図20のフローチャートで説明したステップと同一のステップには、同一のステップ番号を付し、重複する説明を省略する。図24に示すフローチャートは、図20のフローチャートにおけるステップS55に代えて、ステップS55Bを含む。
【0167】
ステップS55Bにおいて、レーザ加工制御部100は、被加工物160の表面におけるパージガスの平均流速Vpgiを、次の式(10)から計算する。
【0168】
Vpgi=Oi・γ・α・fi・Bx (10)
1パルス当たりのデブリの発生量は、マスク140の開口率Oiと1パルス当たりのアブレーション発生量を表すデブリ量係数γとにそれぞれ比例する。
【0169】
したがって、被加工物160の表面におけるパージガスの平均流速Vpgiは、これらのパラメータを用いて式(10)のように表される。
【0170】
マスク140の開口率Oiと1パルス当たりに発生するデブリ量係数γは、加工によって発生するデブリ量を予測する情報の一例である。レーザ加工制御部100は、式(10)の計算式のデータを保持していてもよいし、式(10)に相当する演算結果が得られるテーブルデータを保持していてもよい。また。レーザ加工制御部100は、レーザ加工条件から発生するデブリ量を算出する計算式のデータを保持していてもよい。また、レーザ加工制御部100は、レーザ加工条件と発生するデブリ量を関連付けたテーブルデータを用いて、デブリ発生量を予測してもよい。
【0171】
ステップS55Bの後に、レーザ加工制御部100はステップS56に進む。ステップS56以降のステップは、図20のフローチャートと同様である。
【0172】
5.3 作用・効果
実施形態2によれば、実施形態1で得られる効果に加え、パージガス流量を適切化することができるため、パージガスの消費量を低減することができる。
【0173】
6.パージガスを流す集塵システムの変形例
6.1 変形例1
6.1.1 構成
図25は、デブリを除去する集塵システムの変形例1の構成を概略的に示す要部断面図である。図26は、図25に示す構成の平面図である。
【0174】
図14で説明した第1パージガスノズル81、第2パージガスノズル82、第1排気ダクト91及び第2排気ダクト92を配置する形態に代えて、図25に示す集塵ユニット201を採用してもよい。図25において、図14に示した構成と対応する要素には、同一の参照符号を付す。図14に示した構成との相違点を説明する。
【0175】
図25に示す集塵ユニット201は、被加工物160上のレーザ照射が行われる領域の周辺を囲うカバー212と、保護ウインドウ246と、第1パージガスノズル81と、第2パージガスノズル82と、第1排気ダクト91と、第2排気ダクト92と、を含む。カバー212によって囲われる空間は、パージガスが供給される空間である。
【0176】
第1パージガスノズル81、第2パージガスノズル82、第1排気ダクト91及び第2排気ダクト92は、カバー212の壁面に取り付けられている。すなわち、第1パージガスノズル81及び第2パージガスノズル82は、カバー212の壁面の互いに対向する位置に取り付けられている。第1排気ダクト91及び第2排気ダクト92も、カバー212の壁面の互いに対向する位置に取り付けられている。
【0177】
白抜きの両向き矢印BSは、ビームスキャンによるラインビームの照射領域の移動方向を表している。図3で説明したとおり、ラインビームスキャン方式によって被加工物160を加工する際のビームスキャン方向は、X軸の正の方向である場合と、負の方向である場合とがある。
【0178】
保護ウインドウ246は、カバー212の上部開口を封止するよう配置される。保護ウインドウ246は、照射光学システム70の筐体150に取り付けられたウインドウ146と兼用してもよい。
【0179】
ラインビームLBのスキャン方向に応じて、パージガスの供給口と排気用の吸込口との組み合わせを切り替えることができる。すなわち、ラインビームLBのスキャン方向に応じて、第1パージガスノズル81及び第1排気ダクト91を使用してパージガスを流す第1の形態と、第2パージガスノズル82及び第2排気ダクト92を使用してパージガスを流す第2の形態とを切り替えることができる。
【0180】
なお、図26において、破線の矩形で示した範囲は、被加工物160上においてラインビームLBが移動してレーザ照射が行われる領域166を表している。レーザ照射が行われる領域166は、加工対象領域の一部又は全部であってよい。
【0181】
6.1.2 動作
保護ウインドウ246を透過したレーザ光210は、被加工物160に照射される。被加工物160に対してレーザ光210を移動させながら加工を行う際に、ビームスキャン方向の前方のパージガスノズルからパージガスを吹き出し、反対側の排気ダクトからデブリを除去する。
【0182】
ビームスキャン方向が上記の方向と逆の方向となった場合は、パージガスの供給と排気の向きを逆向きに切り替えて、同様の動作を行う。
【0183】
ビームスキャン方向に応じて、パージガスの気体流の方向を切り替える制御については、実施形態1又は実施形態2と同様である。
【0184】
6.1.3 作用・効果
変形例1に示す構成によれば、実施形態1や実施形態2と同様の作用効果が得られる。さらに、変形例1に示す構成によれば、パージガスが供給される周囲空間をカバー212で囲うことによって、デブリの拡散範囲を抑制することができ、デブリを効率よく除去できる。
【0185】
6.2 変形例2
6.2.1 構成
図27は、デブリを除去する集塵システムの変形例2の構成を概略的に示す要部断面図である。図28は、図27に示す構成の平面図である。図27及び図28に示す構成において、図25及び図26に示した構成と同一の要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0186】
図27に示す集塵ユニット202は、レーザ光210のスキャン移動と共にカバー212を移動させる1軸ステージ220を含む。1軸ステージ220は、例えば、図14に示した照射光学システム70の筐体150に固定されてよい。カバー212は、1軸ステージ220に固定される。1軸ステージ220は、レーザ加工制御部100によって制御される。なお、図28において、1軸ステージ220の図示は省略されている。
【0187】
6.2.2 動作
図27及び図28に示す変形例2において、ビームスキャン方向に応じて、パージガスの気体流の方向を切り替える制御を行う点は、変形例1と同様である。
【0188】
さらに、変形例2では、レーザ光210のビームとパージガスの供給口の距離が一定になるように、ビームスキャンの動きに追従して、1軸ステージ220を制御し、ビームスキャンと一緒に、同じ方向にカバー212を動かす。
【0189】
ビームスキャン方向がX軸の負の方向である場合には、ビームスキャンのスキャン速度と同じ速度で、カバー212を第1パージガスノズル81及び第1排気ダクト91と共に、X軸の負の方向に移動させる。
【0190】
ビームスキャン方向がX軸の正の方向になった場合には、ビームスキャンのスキャン速度と同じ速度で、カバー212を第2パージガスノズル82及び第2排気ダクト92と共に、X軸の正の方向に移動させる。
【0191】
なお、図27中に示す実線の両向き矢印は、ビームスキャンに追従してカバー212を含む集塵ユニット202を図27の左右方向に移動させることを表している。
【0192】
1軸ステージ220は本開示における「第3の移動装置」の一例である。
【0193】
6.2.3 作用・効果
変形例2に示す構成によれば、変形例1と同様の作用効果が得られることに加え、ビームとパージガスの供給口との距離が一定のため、流速が安定し、デブリをさらに効率よく除去できる。
【0194】
さらに、変形例2によれば、変形例1に比べて、カバー212を含むユニットを小型化できる。
【0195】
6.3 変形例3
6.3.1 構成
図29は、デブリを除去する集塵システムの変形例3の構成を概略的に示す要部断面図である。図30は、図29に示す構成の平面図である。図29及び図30に示す構成において、図25及び図26に示した構成と同一の要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。図25及び図26に示した変形例1との相違点を説明する。
【0196】
図29に示す集塵ユニット203は、パージガスの供給口と回収口を1組のみ有しており、回転ステージ230によって、供給口と回収口の配置位置を入れ替えることができる。
【0197】
すなわち、集塵ユニット203は、パージガスの供給口としてパージガスノズル80のみを有し、排気用の回収口として排気ダクト90のみを有する。パージガスノズル80及び排気ダクト90は、カバー212の壁面の互いに対向する位置に取り付けられている。また、集塵ユニット203は、パージガスノズル80及び排気ダクト90を備えたカバー212を回転移動させる回転ステージ230を含む。
【0198】
回転ステージ230は、例えば、図14に示した照射光学システム70の筐体150に固定されてよい。カバー212は、回転ステージ230に固定される。回転ステージ230は、レーザ加工制御部100によって制御される。なお、図30において、回転ステージ230の図示は省略されている。
【0199】
ラインビームLBを移動させるビームスキャン方向に応じて、回転ステージ230を回転させることにより、パージガスノズル80と排気ダクト90の配置位置を入れ替えて、パージガスの気体流の方向を切り替える。
【0200】
変形例3の構成の場合、図14で説明したパージガス切替バルブ84及び排気ガス切替バルブ94を省略することができる。すなわち、変形例3を採用する場合、パージガスの供給及び排気の配管構造については、図1に示す構成を採用し得る。
【0201】
6.3.2 動作
図29に示す白抜きの矢印BS1は、ビームスキャンによるラインビームの照射領域の移動方向を表している。図29に示すように、レーザ光210がX軸の負の方向に移動しながら被加工物160を加工する場合には、ラインビームLBのスキャン方向の前方に配置されたパージガスノズル80からパージガスを吹き出し、反対側の排気ダクト90からデブリを除去する。
【0202】
ビームスキャン方向が逆方向になった場合には、回転ステージ230を回転させてパージガスノズル80と排気ダクト90の配置位置を入れ替える。
【0203】
図31及び図32には、ビームスキャン方向がX軸の正の方向である場合の例が示されている。図31は断面図、図32は平面図である。図31に示す白抜きの矢印BS2は、ビームスキャンによるラインビームの照射領域の移動方向を表している。図31において、パージガスノズル80は、ラインビームLBの照射領域の右側に配置され、排気ダクト90は左側に配置される。
【0204】
図31及び図32に示すように、レーザ光210がX軸の正の方向に移動しながら被加工物160を加工する場合には、ラインビームLBのスキャン方向の前方に配置されたパージガスノズル80からパージガスを吹き出し、反対側の排気ダクト90からデブリを除去する。
【0205】
回転ステージ230は本開示における「回転装置」の一例である。パージガスノズル80は本開示における「気体供給口」の一例である。排気ダクト90は本開示における「気体回収口」の一例である。
【0206】
6.3.3 作用・効果
変形例3に示す構成によれば、変形例1と同様の効果が得られる。また、変形例3に示す構成によれば、変形例1と比較して、パージガスの供給及び排気の配管構造を簡易化できる。
【0207】
6.4 変形例4
6.4.1 構成
図33は、デブリを除去する集塵システムの変形例4の構成を概略的に示す要部断面図である。図34は、図33に示す構成の平面図である。図33及び図34に示す構成において、図25図32に示した構成と同一の要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。図31及び図32に示した変形例3との相違点を説明する。
【0208】
図33に示す集塵ユニット204は、変形例2の1軸ステージ220と変形例3とを組み合わせた形態となっている。図33に示す集塵ユニット204は、レーザ光210のスキャン移動と共に回転ステージ230及びカバー212を一体的に移動させる1軸ステージ220を含む。パージガスの供給口として、パージガスノズル80のみを有し、排気用の回収口として、排気ダクト90のみを有する点は変形例3と同様である。
【0209】
なお、図34において、1軸ステージ220及び回転ステージ230の図示は省略されている。
【0210】
6.4.2 動作
図33に示すように、レーザ光210がX軸の負の方向に移動しながら被加工物160を加工する場合には、ラインビームLBのスキャン方向の前方に配置されたパージガスノズル80からパージガスを吹き出し、反対側の排気ダクト90からデブリを除去する。
【0211】
また、変形例4では、レーザ光210のビームとパージガスの供給口の距離が一定になるように、ビームスキャンの動きに追従して1軸ステージ220を制御し、ビームスキャンと一緒に同じ方向にカバー212を動かす。
【0212】
なお、図33中に示す実線の矢印は、ビームスキャンに追従してカバー212を含む集塵ユニット204を図33の右方向に移動させることを表している。
【0213】
ビームスキャン方向が逆方向になった場合には、回転ステージ230を回転させてパージガスノズル80と排気ダクト90の配置位置を入れ替える。
【0214】
図35及び図36には、ビームスキャン方向がX軸の正の方向である場合の例が示されている。図35は断面図、図36は平面図である。図35において、パージガスノズル80は、ラインビームLBの照射領域の右側に配置され、排気ダクト90は左側に配置される。
【0215】
図35及び図36に示すように、レーザ光210がX軸の正の方向に移動しながら被加工物160を加工する場合には、ラインビームLBのスキャン方向の前方に配置されたパージガスノズル80からパージガスを吹き出し、反対側の排気ダクト90からデブリを除去する。また、ビームとパージガスの供給口の距離が一定になるように、ビームスキャンの動きに追従して、カバー212を移動させる。なお、図35中に示す実線の矢印は、ビームスキャンに追従してカバー212を含む集塵ユニット204を図35の右方向に移動させることを表している。
【0216】
6.4.3 作用・効果
変形例4に示す構成によれば、変形例3と同様の効果が得られることに加え、ビームとパージガスの供給口との距離が一定のため、流速が安定し、デブリをさらに効率よく除去できる。
【0217】
7.フライアイレンズの例
7.1 構成
図37図39は、ラインビーム整形光学系に適用されるフライアイレンズの構成例を概略的に示している。図37は正面図、図38は側面図、図39は上面図である。
【0218】
フライアイレンズ134は、レーザ装置12から出力されるパルスレーザ光を高い透過率で透過させる材料を用いて構成される。フライアイレンズ134に好適な材料として、例えば、合成石英やCaF2結晶を用いることができる。
【0219】
以下の説明において、I方向、H方向及びV方向の各方向を次のように定める。I方向はレーザビームの進行方向である。V方向はレーザビームの垂直方向である。H方向はレーザビームの水平方向である。
【0220】
フライアイレンズ134の第1面には、H方向に沿った凹面のシリンドリカル面310がV方向にピッチLhで一列に並んで配置されている。
【0221】
フライアイレンズ134の第2面には、V方向に沿った凹面のシリンドリカル面312がH方向にピッチLvで一列に並んで配置される。
【0222】
シリンドリカル面310、312のそれぞれの曲率半径は、互いの焦点の位置が略一致するように構成してもよい。
【0223】
ここで、H方向を軸とするシリンドリカル面310のピッチLhは、V方向を軸とするシリンドリカル面312のピッチLvよりも小さい。
【0224】
7.2 動作
フライアイレンズ134にパルスレーザ光を透過させると、シリンドリカル面310、312の焦点の位置に2次光源が生成される。そして、コンデンサレンズ136によって、コンデンサレンズ136の焦点面の位置に、長方形の形状でケーラー照明される。ここでケーラー照明される領域の形状は、フライアイレンズ134におけるLv×Lhの寸法を有する1個のレンズ形状の相似形となる。
【0225】
7.3 その他
図37図39に示す例では、パルスレーザ光を透過する基板に凹面のシリンドリカル面を加工してフライアイレンズ134を得ることを説明したが、この例に限定されることなく、シリンドリカル凸レンズを基板に加工してもよい。
【0226】
図37図39に例示したフライアイレンズ134と同じ機能を果たすフレネルレンズを基板に加工してもよい。
【0227】
また、上述の各実施形態及び変形例では、ラインビームを用いて被加工物160を加工する構成を説明したが、被加工物160に照射されるレーザ光のビーム形状については、ラインビーム以外の形態であってもよい。例えば、正方形のビーム形状であってもよい。正方形の照射ビームを形成するには、シリンドリカル面310、312のピッチをLv=Lhの正方形の形状とすればよい。
【0228】
8.レーザ加工条件の具体例
図40に、レーザ加工条件の具体例を示す。図40に示した各パラメータの数値は、あくまで一例であり、被加工物160の材料や加工目的に応じて、適宜変更される。
【0229】
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。したがって、添付の特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【0230】
本明細書及び添付の特許請求の範囲全体で使用される用語は、「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、本明細書、及び添付の特許請求の範囲に記載される不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきである。さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。
図1
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