(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性組成物及びそれを用いたフィルム
(51)【国際特許分類】
C08F 2/44 20060101AFI20220802BHJP
C08F 265/06 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
C08F2/44 C
C08F265/06
(21)【出願番号】P 2017200263
(22)【出願日】2017-10-16
【審査請求日】2020-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】西澤 茂年
(72)【発明者】
【氏名】男庭 一輝
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/198959(WO,A1)
【文献】特開2006-342213(JP,A)
【文献】特開2012-177050(JP,A)
【文献】特開2004-143303(JP,A)
【文献】特開2017-039891(JP,A)
【文献】特開2001-323206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 - 2/60
C08F 265/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性エネルギー線硬化性化合物(A)と、脂環構造及び4級アンモニウム塩を有する樹脂(B)と、
4級アンモニウム塩を有し、かつ脂環構造を有しない化合物(C)と、
有機溶剤(D)とを含有し、
前記樹脂(B)は、脂環構造を有する重合性単量体(b1)と、4級アンモニウム塩を有する重合性単量体(b2)と、前記(b1)及び(b2)と共重合可能なその他の重合性単量体(b3)を共重合したものであり、
且つ、前記樹脂(B)は、原料として前記重合性単量体(b1)を5~55質量%用いた共重合体であり、
前記重合性単量体(b1)は、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートからなる群より選択される1種以上の単量体であり、
前記重合性単量体(b2)は、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムクロライド、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムブロマイド、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムブロマイド、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムメチルフェニルスルホネート、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムメチルスルホネート、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムメチルフェニルスルホネート、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムメチルスルホネート、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド塩化メチル4級塩、及びジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド塩化メチル4級塩からなる群より選択される1種以上の単量体であり、
前記化合物(C)は2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムクロライド、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド塩化メチル4級塩、及び、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド塩化メチル4級塩からなる群より選択される1種以上の化合物であり、
前記樹脂(B)と化合物(C)との質量比[(B)/(C)]が、5/95~40/60の範囲であることを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項2】
前記樹脂(B)の重量平均分子量が、1,000~100,000の範囲である請求項
1記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項3】
前記化合物(C)の重量平均分子量が、100~1,000の範囲である請求項1
又は2記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項4】
前記樹脂(B)と化合物(C)との合計配合量が、前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)100質量部に対して、1~10質量部の範囲である請求項1~
3のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項5】
前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)の水酸基価が40mgKOH/g以下である請求項1~
4のいずれか1項記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1
項記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化物。
【請求項7】
請求項1~
6いずれか1
項記載の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を有することを特徴とするフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化性組成物及びそれを用いたフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種樹脂フィルムは、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)、プラズマディスプレイ(PDP)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)表面の傷付き防止用フィルム、自動車の内外装用加飾フィルム(シート)、窓向けの低反射フィルムや熱線カットフィルムなど各種用途に用いられている。しかしながら、樹脂フィルム表面は柔らかく耐擦傷性が低いため、これを補う目的で、UV硬化性組成物等からなるハードコート剤をフィルム表面に塗工、硬化させハードコート層をフィルム表面に設けることが一般的に行われている。ハードコート層を設ける工程を概略すると、ロール状に巻いてあるフィルム原反から塗工機へ送り出され、ハードコート剤が塗工され、紫外線照射により硬化してハードコート層を形成した後、再度ロール状に巻き取られる。
【0003】
この巻き取り工程でフィルム同士の摩擦によりフィルム表面に静電気が発生するため、再加工時にフィルムをロールから繰り出した際にフィルム同士が張り付いてしまう問題や静電気によりフィルム表面に埃等が付着しやすくなる問題があった。また、このフィルムを液晶ディスプレイ等に用いた場合、発生した静電気によりディスプレイが誤動作する問題もあった。
【0004】
このフィルム表面での静電気の発生を抑制するため、ハードコート剤に帯電防止剤を配合する手法が一般的に行われている。例えば、ポリオキシエチレン鎖と4級アンモニウム塩とを有する化合物を帯電防止剤としてハードコート剤に配合する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、4級アンモニウム塩を有する重合性単量体を原料とした2種の共重合体を帯電防止剤としてハードコート剤に配合する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
しかしながら、これらの帯電防止剤を配合したハードコート剤は、帯電防止性能が十分ではなかった。さらに、帯電防止剤を多量に配合した場合には、帯電防止性能が向上するが、湿熱条件下での使用後に帯電防止剤のブリードが発生してしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-143303号公報
【文献】特開2004-123924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、優れた帯電防止性、及び、耐ブリード性を両立したハードコート層を形成できる活性エネルギー線硬化性組成物及びそれを用いたフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、活性エネルギー線硬化性化合物(A)と、脂環構造及び4級アンモニウム塩を有する樹脂(B)と、4級アンモニウム塩を有し、かつ脂環構造を有しない化合物(C)と、有機溶剤(D)とを含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化性組成物、及び、それを用いたフィルムを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、フィルム表面に塗工、硬化することで、優れた帯電防止性、及び、鉛筆硬度を有するハードコート層を形成することができる。したがって、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜は、フィルム表面に静電気を発生することを抑制できる。よって、各種フィルムに、張り付き防止、静電気による埃等の付着防止等の機能を付与できる。したがって、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を有するフィルムは、ロール状に巻き取る際、ロールから繰り出す際にも、張り付き、埃等の付着などのトラブルも回避できるため、その後のハンドリングに優れたフィルムを提供することができる。更に、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜は、優れた耐ブリード性を有するものであり、湿熱条件下での使用後においても、帯電防止剤のブリードが発生せず、帯電防止性の変化も少ないものである。
【0011】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜からなるハードコート層を有するフィルムは、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)、プラズマディスプレイ(PDP)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)に用いる光学フィルムとして好適に用いることができる。さらに、これらの用途に用いる際にも優れた帯電防止性があることから、埃等の付着を抑制できる。さらに、このフィルムを液晶ディスプレイ等に用いた場合、発生した静電気によるディスプレイの誤動作も防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、活性エネルギー線硬化性化合物(A)と、脂環構造及び4級アンモニウム塩を有する樹脂(B)と、4級アンモニウム塩を有し、かつ脂環構造を有しない化合物(C)と、有機溶剤(D)とを含有するものである。
【0013】
前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)としては、例えば、多官能(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0014】
前記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、ポリペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0015】
前記ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応物を用いることができる。
【0016】
前記ポリイソシアネートとしては、脂肪族ポリイソシアネートと芳香族ポリイソシアネートとが挙げられるが、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の着色を低減できることから、脂肪族ポリイソシアネートが好ましい。
【0017】
前記脂肪族ポリイソシアネートは、イソシアネート基を除く部位が脂肪族炭化水素から構成される化合物である。この脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2-メチル-1,3-ジイソシアナトシクロヘキサン、2-メチル-1,5-ジイソシアナトシクロヘキサン等の脂環式ポリイソシアネートなどが挙げられる。また、前記脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートを3量化した3量化物も前記脂肪族ポリイソシアネートとして用いることができる。また、これらの脂肪族ポリイソシアネートは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0018】
前記脂肪族ポリイソシアネートの中でも塗膜の耐擦傷性を向上させるには、脂肪族ポリイソシアネートの中でも、直鎖脂肪族炭化水素のジイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートであるノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0019】
前記(メタ)アクリレートは、水酸基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物である。この(メタ)アクリレートの具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのモノ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の3価のアルコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート、あるいは、これらのアルコール性水酸基の一部をε-カプロラクトンで変性した水酸基を有するモノ及びジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の1官能の水酸基と3官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、あるいは、該化合物をさらにε-カプロラクトンで変性した水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート;ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシブチレン-ポリオキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等のブロック構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート;ポリ(エチレングリコール-テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール-テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等のランダム構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリレートは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0020】
前記ポリイソシアネートと前記(メタ)アクリレートとの反応は、常法のウレタン化反応により行うことができる。また、ウレタン化反応の進行を促進するために、ウレタン化触媒の存在下でウレタン化反応を行うことが好ましい。前記ウレタン化触媒としては、例えば、ピリジン、ピロール、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン等のアミン化合物;トリフェニルホスフィン、トリエチルホスフィン等のリン化合物;ジブチル錫ジラウレート、オクチル錫トリラウレート、オクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫等の有機錫化合物、オクチル酸亜鉛等の有機亜鉛化合物などが挙げられる。
【0021】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルとメタクリロイルの一方又は両方をいう。
【0022】
前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)としては、前記した中でも、より一層優れた帯電防止性、及び、高硬度性が得られることから、水酸基価が40mgKOH/g以下のものを用いることが好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及び/又は、ペンタエリスリトールテトラアクリレートを用いることがより好ましい。
【0023】
前記樹脂(B)は、優れた帯電防止性を得るうえで、4級アンモニウム塩を有するものであることが必須である。
【0024】
前記樹脂(B)は、優れた帯電防止性を得るうえで、脂環構造及び4級アンモニウム塩を有することが必須である。
【0025】
前記樹脂(B)としては、具体的には、例えば、脂環構造を有する重合性単量体(b1)と、4級アンモニウム塩を有する重合性単量体(b2)と、及び、前記(b1)及び(b2)と共重合可能なその他の重合性単量体(b3)との共重合体が挙げられる。
【0026】
前記重合性単量体(b1)は、脂環構造を有するものである。前記脂環構造としては、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロノナン環、シクロデカン環等の単環脂環構造;ビシクロウンデカン環、デカヒドロナフタレン(デカリン)環、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、ビシクロ[4.3.0]ノナン環、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカン環、トリシクロ[5.3.1.1]ドデカン環、スピロ[3.4]オクタン環等の多環脂環構造などが挙げられる。また、前記重合性単量体(b1)の具体例としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの重合性単量体(b1)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0027】
前記4級アンモニウム塩を有する重合性単量体(b2)としては、例えば、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムクロライド、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムクロライド等のカウンターアニオンがクロライドのもの;2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムブロマイド、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムブロマイド等のカウンターアニオンがブロマイドのもの;2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムメチルフェニルスルホネート、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムメチルスルホネート、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムメチルフェニルスルホネート、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムメチルスルホネート、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート等のカウンターアニオンが非ハロゲン系のもの;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド塩化メチル4級塩、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド塩化メチル4級塩などが挙げられる。これらの重合性単量体(b2)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0028】
前記その他の重合性単量体(b3)としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレート;2-パーフルオロヘキシルエチル(メタ)アクリレート等のフッ素化アルキル基を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの重合性単量体(b3)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0029】
前記重合性単量体(b3)としては、より一層優れた帯電防止性が得られる点から、フッ素化アルキル基を有する(メタ)アクリレート、及び/又は、ポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、また前記ポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレートとしてはメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0030】
前記ポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレートの中でも、より一層優れた帯電防止性が得られる点から、前記ポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレートの原料となるポリアルキレングリコールの数平均分子量が200~8,000の範囲のものが好ましく、300~6,000の範囲のものがより好ましく、400~4,000の範囲のものがさらに好ましく、400~2,000の範囲のものが特に好ましい。
【0031】
前記樹脂(B)の原料全量中の前記重合性単量体(b1)の比率は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の帯電防止性をより向上できることから、5~55質量%の範囲が好ましく、10~50質量%の範囲がより好ましく、12~45質量%の範囲がさらに好ましい。
【0032】
また、前記樹脂(B)の原料全量中の前記重合性単量体(b2)の比率は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の帯電防止性をより向上できることから、30~90質量%の範囲が好ましく、40~80質量%の範囲がより好ましく、45~70質量%の範囲がより好ましい。
【0033】
前記重合性単量体(b3)として前記ポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレートを用いる場合は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の帯電防止性をより向上できることから、前記樹脂(B)の原料全量中のポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリレートの比率は、5~60質量%の範囲が好ましく、10~50質量%の範囲がより好ましく、20~40質量%の範囲がさらに好ましい。
【0034】
また、前記重合性単量体(b3)として前記フッ素化アルキル基を有する(メタ)アクリレートを用いる場合は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の帯電防止性をより向上できることから、前記樹脂(B)の原料全量中のフッ素化アルキル基を有する(メタ)アクリレートの比率は、0.1~20質量%の範囲が好ましく、0.5~10質量%の範囲がより好ましく、1~5質量%の範囲がさらに好ましい。
【0035】
前記樹脂(B)の重量平均分子量は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の帯電防止性をより向上できることから、1,000~100,000の範囲が好ましく、2,000~50,000の範囲がより好ましく、3,000~30,000の範囲がさらに好ましい。なお、本発明における重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算での値である。
【0036】
前記樹脂(B)の配合量は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の帯電防止性及び耐ブリード性をより向上できることから、前記活性エネルギー線硬化性組成物(A)100質量部に対して、0.1~10質量部の範囲が好ましく、1.3~5質量部の範囲がより好ましく、1.5~2質量部の範囲が更に好ましい。
【0037】
前記化合物(C)は、4級アンモニウム塩を有し、かつ脂環構造を有しないものである。前記化合物(C)と前記樹脂(B)とを併用することにより、帯電防止剤(前記樹脂(B)及び化合物(C))の使用量を低減した場合であっても、硬化塗膜の優れた帯電防止性を発現することができ、ブリードも抑制することができる。
【0038】
前記化合物(C)としては、例えば、前記樹脂(B)の原料として用いることができる前記4級アンモニウム塩を有する重合性単量体(b2)、前記4級アンモニウム塩を有する重合性単量体(b2)と前記その他の重合性単量体(b3)との共重合体を用いることができる。
【0039】
前記化合物(C)の重量平均分子量としては、より一層優れた帯電防止性及び耐ブリード性が得られる点から、100~1,000の範囲であることが好ましく、130~500の範囲がより好ましく、150~300の範囲が更に好ましい。
【0040】
前記化合物(C)には、耐ブリード性を高める点から、活性エネルギー線硬化性官能基を有することが更に好ましい。
【0041】
前記化合物(C)としては、前記した中でも、より一層優れた帯電防止性及び耐ブリード性が得られる点から、2-[(メタ)アクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムクロライド、3-[(メタ)アクリロイルオキシ]プロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド塩化メチル4級塩、及び、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド塩化メチル4級塩からなる群より選ばれる1種以上の化合物を用いることが好ましい。
【0042】
前記化合物(C)の配合量は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の帯電防止性及び耐ブリード性をより向上できることから、前記活性エネルギー線硬化性組成物(A)100質量部に対して、0.1~15質量部の範囲が好ましく、1~10質量部の範囲がより好ましく、3~8質量部の範囲が更に好ましい。
【0043】
前記樹脂(B)と前記化合物(C)との合計配合量としては、帯電防止性と耐ブリード性のバランスをより一層向上でき、湿熱条件下での使用後においても帯電防止性の変化も少ない点から、前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)100質量部に対して、1~10質量部の範囲であることが好ましく、3~8質量部の範囲がより好ましい。
【0044】
前記樹脂(B)と前記化合物(C)との質量比[(B)/(C)]としては、帯電防止性と耐ブリード性のバランスをより一層向上でき、かつ湿熱条件下での使用後においても帯電防止性の変化も少ない点から、5/95~40/60の範囲であることが好ましく、10/90~30/70の範囲がより好ましく、13/87~20/80の範囲が更に好ましい。
【0045】
前記有機溶剤(D)は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中の他の成分を溶解できるものであれば特に制限なく用いることができる。前記有機溶剤(D)としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、t-ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類などが挙げられる。これらの有機溶剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0046】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中の前記有機溶剤(D)の配合量は、後述する塗工方法に適した粘度になる量とすることが好ましい。
【0047】
また、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、基材に塗工後、活性エネルギー線を照射することで硬化塗膜とすることができる。この活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線をいう。活性エネルギー線として紫外線を照射して硬化塗膜とする場合には、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中に光重合開始剤(E)を添加し、硬化性を向上することが好ましい。また、必要であればさらに光増感剤を添加して、硬化性を向上することもできる。一方、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線を用いる場合には、光重合開始剤(E)や光増感剤を用いなくても速やかに硬化するので、特に光重合開始剤(E)や光増感剤を添加する必要はない。
【0048】
前記光重合開始剤(E)としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン系化合物;2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンジル(ジベンゾイル)、メチルフェニルグリオキシエステル、オキシフェニル酢酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステル、オキシフェニル酢酸2-(2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ)エチルエステル等のベンジル系化合物;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;ミヒラ-ケトン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、1-[4-(4-ベンゾイルフェニルサルファニル)フェニル]-2-メチル-2-(4-メチルフェニルサルフォニル)プロパン-1-オン等が挙げられる。これらの光重合開始剤(E)は、1種で用いることも、2種以上併用することもできる。
【0049】
また、前記光増感剤としては、例えば、ジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリブチルアミン等の3級アミン化合物、o-トリルチオ尿素等の尿素化合物、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s-ベンジルイソチウロニウム-p-トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。
【0050】
上記の光重合開始剤(E)及び光増感剤の使用量は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中の前記活性エネルギー線硬化性(A)100質量部に対し、各々0.05~20質量部が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。
【0051】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、上記の成分(A)~(E)以外のその他の配合物として、用途、要求特性に応じて、重合禁止剤、表面調整剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、有機顔料、無機顔料、顔料分散剤、シリカビーズ、有機ビーズ等の添加剤;酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、五酸化アンチモン等の無機充填剤などを配合することができる。これらその他の配合物は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0052】
本発明のフィルムは、フィルム基材の少なくとも1面に、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を塗工し、その後活性エネルギー線を照射して硬化塗膜とすることで得られたものである。
【0053】
本発明のフィルムで用いる前記フィルム基材の材質としては、透明性の高い樹脂が好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン-1等のポリオレフィン系樹脂;セルロースアセテート(ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等)、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート、セルロースアセテートフタレート、硝酸セルロース等のセルロース系樹脂;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂;ポリビニルアルコール;エチレン-酢酸ビニル共重合体;ポリスチレン;ポリアミド;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリイミド、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂;ノルボルネン系樹脂(例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア」)、変性ノルボルネン系樹脂(例えば、JSR株式会社製「アートン」)、環状オレフィン共重合体(例えば、三井化学株式会社製「アペル」)などが挙げられる。さらに、これらの樹脂からなる基材を2種以上貼り合わせたものを用いても構わない。
【0054】
また、前記フィルム基材は、フィルム状でもシート状でもよく、その厚さは、20~500μmの範囲が好ましい。また、フィルム状の基材フィルムを用いる場合には、その厚さは、20~200μmの範囲が好ましく、30~150μmの範囲がより好ましく、40~130μmの範囲がさらに好ましい。フィルム基材の厚さを当該範囲とすることで、フィルムの片面に、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物によりハードコート層を設けた場合にもカールを抑制しやすくなる。
【0055】
前記フィルム基材に本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を塗工する方法としては、例えば、ダイコート、マイクログラビアコート、グラビアコート、ロールコート、コンマコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、ディップコート、スピンナーコート、刷毛塗り、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート等が挙げられる。
【0056】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中に含む有機溶媒は、活性エネルギー線硬化性組成物を基材フィルムへの塗工した後、活性エネルギー線を照射する前に揮発させ、また、前記樹脂(B)及び化合物(C)を塗膜表面に偏析させるために、加熱又は室温乾燥することが好ましい。加熱乾燥の条件としては、有機溶剤が揮発する条件であれば、特に限定しないが、通常は、温度50~100℃の範囲で、時間は0.5~10分の範囲で加熱乾燥することが好ましい。
【0057】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物を硬化させる活性エネルギー線としては、上記の通り、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線である。ここで、活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、その紫外線を照射する装置としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ(フュージョンランプ)、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀-キセノンランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、太陽光、LEDランプ等が挙げられる。
【0058】
前記フィルム基材上に本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を形成する際の硬化塗膜の膜厚は、硬化塗膜の硬さを充分なものとし、かつ塗膜の硬化収縮によるフィルムのカールを抑制できることから、1~30μmの範囲が好ましいが、3~15μmの範囲がより好ましく、4~10μmの範囲がさらに好ましい。
【0059】
以上、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、優れた帯電防止性、及び、耐ブリード性を有するハードコート層を形成できるものである。前記活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の表面抵抗値としては、1×107~9.99×109Ω/□の範囲であることが好ましく、1×108~9.99×108Ω/□の範囲がより好ましい。なお、前記硬化塗膜の表面抵抗値の測定方法は、実施例にて記載する。
【実施例】
【0060】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
【0061】
(製造例1:脂環構造及び4級アンモニウム塩を有する樹脂(B-1)の製造)
攪拌装置、還流冷却管及び窒素導入管を備えたフラスコ中に、窒素ガスを導入して、フラスコ内の空気を窒素ガスで置換した。その後、フラスコに2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド54.7質量部、シクロヘキシルメタクリレート19.9質量部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマー PME-1000」;繰り返し単位数n≒23、分子量1,000)24.9質量部、メタクリル酸0.5質量部、メタノール50質量部及びPGME10質量部を加えた。次いで、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル)0.1質量部をPGME2.4質量部で溶解した溶液を30分かけて滴下した後、65℃で3時間反応させた。次いで、メタノールを加えて希釈し、脂環構造及び4級アンモニウム塩を有する樹脂(B-2)の45質量%溶液を得た。得られた樹脂(B-1)の重量平均分子量は1万であった。
【0062】
(製造例2:脂環構造及び4級アンモニウム塩を有する樹脂(B-2)の製造)
攪拌装置、還流冷却管及び窒素導入管を備えたフラスコ中に、窒素ガスを導入して、フラスコ内の空気を窒素ガスで置換した。その後、フラスコに2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムクロライド53.7質量部、シクロヘキシルメタクリレート29.3質量部、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(日油株式会社製「ブレンマー PME-1000」;繰り返し単位数n≒23、分子量1,000)14.6質量部、2-パーフルオロヘキシルエチルアクリレート1.9質量部、メタクリル酸0.5質量部、メタノール50質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル10質量部を加えた。次いで、重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル)0.1質量部をプロピレングリコールモノメチルエーテル2.4質量部で溶解した溶液を30分かけて滴下した後、65℃で3時間反応させた。次いで、メタノールを加えて希釈し、脂環構造及び4級アンモニウム塩を有する樹脂(B-2)の45質量%溶液を得た。得られた樹脂(B-1)の重量平均分子量は1万であった。
【0063】
上記で得られた樹脂(B-1)、及び、(B-2)の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した。
【0064】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0065】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0066】
[水酸基価の測定方法]
活性エネルギー線硬化性化合物の水酸基価はJIS-K0070に記載の水酸基価測定方法を用いて、以下のように測定した。
無水酢酸25gを全量フラスコ100mlに取り、ピリジンを加えて全量を100mlにして混合均一にした混合液を5ml秤量し、これに活性エネルギー線硬化性化合物を溶解させた後、100℃で1時間、無水酢酸と活性エネルギー線硬化性化合物中の水酸基とを反応させる。放冷後、水1mlを加えて攪拌混合し、更に100℃で10分間撹拌して、過剰の無水酢酸を分解し、放冷後エタノール5mlでフラスコ等の壁を洗う。フェノールフタレイン溶液数滴を指示薬として加え、0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液で滴定する(滴定量βml)。活性エネルギー線硬化性化合物を用いないブランク測定を同様に行い滴定する(滴定量β0ml)。水酸基価は下記式(1)から求められる。
水酸基価(mgKOH/g)=(β0-β)×f×28.05/S+D (1)
但し f:0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:活性エネルギー線硬化性化合物の実採取重量(単位:g)
D:酸価(mgKOH/g)
【0067】
(実施例1)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下、「DPHA」と略記する。)100質量部、製造例1で得られた樹脂(B-1)溶液2.22質量部(樹脂(B-1)として1質量部)、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩(以下、(C-1)と略記する。)5質量部、光重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)5質量部、溶剤(エタノール/n-プロピルアルコール/メタノール=85.5/9.6/4.9(質量比))100質量部を均一に混合して活性エネルギー線硬化性組成物(1)を得た。
【0068】
(実施例2、比較例1~3)
表1に示した組成に変更した以外は実施例1と同様に行い、活性エネルギー線硬化性組成物(2)、(R1)~(R3)を得た。
【0069】
[評価用サンプルの作製]
活性エネルギー線硬化性組成物を、厚さ60μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フイルム株式会社製)に、バーコーターで膜厚5μmとなるように塗工し、60℃で1.5分間乾燥した後、空気雰囲気下で紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製、高圧水銀ランプ)を用いて照射光量3kJ/m2で照射し、硬化塗膜を有するTACフィルムを評価用サンプルとして得た。
また、この評価用サンプルを、温度:65℃、湿度:95%の条件下で300時間放置し、これを耐湿熱試験後の評価用サンプルとした。
【0070】
[表面抵抗値の測定(帯電防止性の評価)]
上記で得られた評価用サンプル、及び、耐久性試験後の評価用サンプルの硬化塗膜の表面について、JIS試験方法K6911-1995に準拠して、高抵抗率計(株式会社三菱化学アナリテック製「ハイレスタ-UP MCP-HT450」)を用いて、印加電圧500V、測定時間10秒で表面抵抗値を測定した。
【0071】
[耐ブリード性の評価方法]
上記で得られた評価用サンプル、及び、耐久性試験後の評価用サンプルの硬化塗膜の表面について、目視観察により以下のように評価した。
「○」:ブリード物が確認されない。
「×」:ブリード物が確認される。
【0072】
[鉛筆硬さの評価方法]
上記で得られた評価用サンプル、及び、耐久性試験後の評価用サンプルの硬化塗膜の表面について、JIS試験方法K5600-5-4:1999に準拠して、鉛筆硬さを測定した。
【0073】
【0074】
表1に示す略語は下記の化合物を示す。
「PETA」:ペンタエリスリトールテトラアクリレート
「(C-2)」:2-[メタアクリロイルオキシ]エチルトリメチルアンモニウムクロライド
【0075】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜は、優れた鉛筆硬度を有し、表面抵抗値が10の8乗~9乗オーダーで帯電防止性も高いことが確認できた。また、耐湿熱試験後においても、表面抵抗値の変化が少なく、ブリード物も確認されなかった。
【0076】
一方、比較例1は、樹脂(B)を配合しない態様であるが、表面抵抗値が10の13乗オーダーであり、帯電防止性が不良であった。
【0077】
比較例2は、化合物(C)を配合しない態様であるが、表面抵抗値が10の11乗オーダーであり、帯電防止性が不良であった。
【0078】
比較例3も化合物(C)を配合しない態様であり、表面抵抗値は良好なものの、耐湿熱試験後のブリード物が顕著に確認された。