(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】硬化型組成物、硬化型インク、硬化物、収容容器、液体吐出装置、及び液体吐出方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220802BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20220802BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20220802BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20220802BHJP
【FI】
B41J2/01 501
B41J2/18
B41J2/01 121
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/175 501
C09D11/322
(21)【出願番号】P 2018048880
(22)【出願日】2018-03-16
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】加門 祐樹
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2017/047615(JP,A1)
【文献】特開2014-240177(JP,A)
【文献】特開2017-002187(JP,A)
【文献】特開2017-131865(JP,A)
【文献】特表2017-528348(JP,A)
【文献】特開2016-117807(JP,A)
【文献】特開2015-174424(JP,A)
【文献】特開2017-202685(JP,A)
【文献】特開2012-193275(JP,A)
【文献】特開2008-138057(JP,A)
【文献】特開2018-024810(JP,A)
【文献】特開2016-222820(JP,A)
【文献】特開2012-162646(JP,A)
【文献】米国特許第06357867(US,B1)
【文献】製品検索結果詳細 製品名 IPA-ST-L,日本,日産化学株式会社,db.nissanchem.co.jp/db/detail.cgi?id=220
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
C09D 11/00-13/00
B41M 5/00
B41M 5/50- 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,9-ノナンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、及び2官能ウレタンアクリレート(分子量:3000)から選択される少なくともいずれかの2官能以上の多官能化合物を重合性化合物全量に対して
30質量%以上40質量%以下、アクリロイルモルフォリン、ベンジルアクリレート、及びイソボルニルアクリレートから選択される少なくともいずれかの単官能モノマー、及び平均一次粒子径が20nm以上100nm以下であるシリカ粒子を
10質量%以上20質量%以下含有する硬化型組成物と、
前記硬化型組成物が循環する循環流路を有する個別液室と、前記個別液室と連通し液滴を吐出するノズルとを有する液体吐出ヘッド
とを、
備えたことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
1,9-ノナンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、及び2官能ウレタンアクリレート(分子量:3000)から選択される少なくともいずれかの2官能以上の多官能化合物を重合性化合物全量に対して30質量%以上40質量%以下、アクリロイルモルフォリン、ベンジルアクリレート、及びイソボルニルアクリレートから選択される少なくともいずれかの単官能モノマー、及び平均一次粒子径が20nm以上100nm以下であるシリカ粒子を10質量%以上20質量%以下含有する硬化型組成物を、個別液室で循環させながら液体吐出ヘッドのノズルから吐出する吐出工程を、
含むことを特徴とする液体吐出方法。
【請求項3】
1,9-ノナンジオールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、及び2官能ウレタンアクリレート(分子量:3000)から選択される少なくともいずれかの2官能以上の多官能化合物を重合性化合物全量に対して30質量%以上40質量%以下、アクリロイルモルフォリン、ベンジルアクリレート、及びイソボルニルアクリレートから選択される少なくともいずれかの単官能モノマー、及び平均一次粒子径が20nm以上100nm以下であるシリカ粒子を10質量%以上20質量%以下含有する硬化型組成物を収容した収容容器と、
前記硬化型組成物が循環する循環流路を有する個別液室と、前記個別液室と連通し液滴を吐出するノズルとを有する液体吐出ヘッドとを、
備えたことを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化型組成物、硬化型インク、硬化物、収容容器、液体吐出装置、及び液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式に使用されるインクの一つとして、活性エネルギー線硬化型インクが挙げられる。この活性エネルギー線硬化型インクは、オフセット、シルクスクリーン、トップコート剤などに供給、使用されてきたが、乾燥工程の簡略化によるコストダウンや、環境対応として溶剤の揮発量低減などのメリットから近年使用量が増加している。
【0003】
最近では、産業用途として、加工を施す基材に対しても、活性エネルギー線硬化型インクを用いて加飾印刷を施す用途が増加している。基材密着性と高硬度を保ちつつ、加飾性を確保できることが求められているが、これらを全て両立することは難しい。
【0004】
基材密着性と高硬度を両立する方法の一つとして、例えば、カチオン重合性の材料を使用することで重合時の硬化収縮を低減し、基材密着性と硬度の両立を図るものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、第一層のインク層に対し、第二層のモノマー成分を下層へ浸透させ、表層での粒子密度を増大させることで、延伸性と硬度の両立を図ることが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた基材密着性を有し、かつ高硬度な硬化物が得られる硬化型組成物を安定に吐出できる液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため手段としての本発明の液体吐出装置は、2官能以上の多官能化合物を重合性化合物全量に対して25質量%以上45質量%以下、及び平均一次粒子径が20nm以上100nm以下である粒子を含有する硬化型組成物と、前記硬化型組成物が循環する循環流路を有する個別液室と、前記個別液室と連通し液滴を吐出するノズルと、を有する液体吐出ヘッドを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、優れた基材密着性を有し、かつ高硬度な硬化物が得られる硬化型組成物を安定に吐出できる液体吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明における像形成装置の一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明における別の像形成装置の一例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明における更に別の像形成装置の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、本発明の液体吐出装置におけるインク吐出ヘッドの一例を示す外観斜視説明図である。
【
図5】
図5は、本発明の液体吐出装置におけるインク吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の断面説明図である。
【
図6】
図6は、本発明の液体吐出装置におけるインク吐出ヘッドのノズル配列方向と平行な方向の一部断面説明図である。
【
図7】
図7は、本発明の液体吐出装置におけるインク吐出ヘッドのノズル板の平面説明図である。
【
図8A】
図8Aは、本発明の液体吐出装置におけるインク吐出ヘッドの流路部材を構成する各部材の平面説明図である。
【
図8B】
図8Bは、本発明の液体吐出装置におけるインク吐出ヘッドの流路部材を構成する各部材の平面説明図である。
【
図8C】
図8Cは、本発明の液体吐出装置におけるインク吐出ヘッドの流路部材を構成する各部材の平面説明図である。
【
図8D】
図8Dは、本発明の液体吐出装置におけるインク吐出ヘッドの流路部材を構成する各部材の平面説明図である。
【
図8E】
図8Eは、本発明の液体吐出装置におけるインク吐出ヘッドの流路部材を構成する各部材の平面説明図である。
【
図8F】
図8Fは、本発明の液体吐出装置におけるインク吐出ヘッドの流路部材を構成する各部材の平面説明図である。
【
図9A】
図9Aは、本発明の液体吐出装置におけるインク吐出ヘッドの共通液室部材を構成する各部材の平面説明図である。
【
図9B】
図9Bは、本発明の液体吐出装置におけるインク吐出ヘッドの共通液室部材を構成する各部材の平面説明図である。
【
図10】
図10は、本発明の液体循環システムの一例を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、本発明の液体吐出装置の一例を示す要部平面説明図である。
【
図14】
図14は、本発明の液体吐出装置の要部側面説明図である。
【
図15】
図15は、本発明の液体吐出装置におけるインク吐出ユニットの他の例の要部平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(液体吐出装置及び液体吐出方法)
本発明の液体吐出装置は、2官能以上の多官能化合物を重合性化合物全量に対して25質量%以上45質量%以下、及び平均一次粒子径が20nm以上100nm以下である粒子を含有する硬化型組成物と、硬化型組成物が循環する循環流路を有する個別液室と、個別液室と連通し液滴を吐出するノズルと、を有する液体吐出ヘッドを備え、更に必要に応じてその他の部材を備える。
【0010】
本発明の液体吐出方法は、2官能以上の多官能化合物を重合性化合物全量に対して25質量%以上45質量%以下、及び平均一次粒子径が20nm以上100nm以下である粒子を含有する硬化型組成物を、個別液室で循環させながら液体吐出ヘッドのノズルから吐出する吐出工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0011】
本発明の液体吐出装置及び液体吐出方法は、従来の特許文献1では、吐出可能なインク粘度に制限があるため、粒子の高密度化は難しいという知見に基づくものである。
また、本発明の液体吐出装置及び液体吐出方法は、従来の特許文献2では、平均一次粒径70nm未満の無機粒子を10質量%以上30質量%以下添加しているが、より粒径が大きく、高濃度に無機粒子を含ませることができず、インクの加飾性に制限が加わることになり、特にマット調の風合いを出すことが難しい。また、粒経の大きい無機粒子を含むので、時間経過によってインク内の無機粒子の沈降が発生したり、インクの増粘の立ち上がりが早く、吐出不良になりやすいという問題もある。その結果、吐出が可能であっても、インク内の無機粒子の濃度が不均一となるため、硬化物の光沢度にムラができてしまうという知見に基づくものである。
更に、本発明の液体吐出装置及び液体吐出方法は、従来の特許文献2では、添加する無機粒子の粒経によって、硬化後のインク硬化物の風合いを変化させることができるが、添加する無機粒子の粒経が大きすぎると不透明感が強く出てしまい、逆に小さすぎると、マット調の風合いが出せないという知見に基づくものである。
【0012】
本発明者らは、上記課題に鑑みて鋭意検討を行った結果、添加する粒子の平均一次粒経と含有量を一定の範囲内に調整することで、基材密着性と塗膜硬度を両立させることができることを知見した。また、液体吐出ヘッド内で液体を循環させることにより、液体内の粒子の沈降を防ぐと共に、乾燥による粘度上昇を防ぐことができ、液体吐出及び硬化物の光沢ムラについての課題を解決できることを知見した。
したがって、本発明の液体吐出装置は、2官能以上の多官能化合物を重合性化合物全量に対して25質量%以上45質量%以下、及び平均一次粒子径が20nm以上100nm以下である粒子を含有する硬化型組成物と、硬化型組成物が循環する循環流路を有する個別液室と、個別液室と連通し液滴を吐出するノズルと、を有する液体吐出ヘッドを、備えることにより、優れた基材密着性を有し、かつ高硬度な硬化物が得られる硬化型組成物を安定に吐出できる。
【0013】
(硬化型組成物)
本発明の硬化型組成物は、2官能以上の多官能化合物を重合性化合物全量に対して25質量%以上45質量%以下、及び平均一次粒子径が20nm以上100nm以下である粒子を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0014】
<重合性化合物>
重合性化合物は、加熱、活性エネルギー線(紫外線、電子線等)により重合反応を生起し、硬化する化合物である。
重合性化合物は、2官能以上の官能基を持つ多官能化合物を重合性化合物全量に対して25質量%以上45質量%以下の範囲で含み、更に、単官能モノマー、単官能オリゴマー、その他のモノマーを含んでいてもよい。多官能化合物には、多官能モノマー、多官能オリゴマーを含む。
【0015】
多官能化合物の含有量は、重合性化合物全量に対して、25質量%以上45質量%以下であり、30質量%以上40質量%以下が好ましい。単官能モノマーのみが含まれる場合、硬化物の硬度低下が著しいため、2官能以上の官能基を持つ多官能化合物を含むことによって、硬度を持たせることができる。塗膜硬度を確保するためには多官能化合物を重合性化合物全量に対して25質量%以上含有することが必要である。また、重合時の硬化収縮により基材密着性の低下を考慮すると多官能化合物を重合性化合物全量に対して45質量%以下含有することが必要である。
【0016】
<単官能モノマー>
単官能モノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(メタ)アクリレート、t-ブチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、硬化物のガラス転移温度の高いモノマーを含むことが好ましい。前記ガラス転移温度の高いモノマーを硬化型組成物中に配合すると低温での硬度が高くなり、高温では延伸性が得られるため、延伸性と硬度の両立性が高くなる。単官能モノマーのガラス転移温度が50℃以上のモノマーを含むことが好ましく、更には80℃以上のモノマーを含むことが好ましい。
【0017】
<多官能化合物>
多官能化合物とは、2つ以上の官能基を有する重合性化合物であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、多官能モノマー、多官能オリゴマーなどが挙げられる。官能基数としては、2~6官能が好ましく、2官能化合物が延伸性を阻害しにくいという点からより好ましい。
【0018】
多官能モノマーとしては、例えば、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド(PO)付加物ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド(EO)付加物ジ(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、PO変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、PO変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、PO変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、PO変性テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
多官能オリゴマーとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトリレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、シリコーン(メタ)アクリレートオリゴマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
多官能オリゴマーとしては、ウレタンアクリレートオリゴマーが好ましい。前記ウレタンアクリレートオリゴマーとしては、市販品を用いることができる。前記市販品としては、例えば、日本化学合成株式会社製のUV-2000B、UV-2750B、UV-3000B、UV-3010B、UV-3200B、UV-3300B、UV-3700B、UV-6640B、UV-8630B、UV-7000B、UV-7610B、UV-1700B、UV-7630B,UV-6300B、UV-6640B、UV-7550B、UV-7600B、UV-7605B、UV-7610B、UV-7630B、UV-7640B、UV-7650B、UT-5449、UT-5454;巴工業株式会社製のCN929、CN961E75、CN961H81、CN962、CN963、CN963A80、CN963B80、CN963E75、CN963E80、CN963J85、CN965、CN965A80、CN966A80、CN966H90、CN966J75、CN968、CN981、CN981A75、CN981B88、CN982、CN982A75、CN982B88、CN982E75、CN983、CN985B88、CN9001、CN9002、CN9788、CN970A60、CN970E60、CN971、CN971A80、CN972、CN973A80、CN973H85、CN973J75、CN975、CN977C70、CN978、CN9782、CN9783、CN996、CN9893;ダイセル・サイテック社製のEBECRYL210、EBECRYL220、EBECRYL230、EBECRYL270、KRM8200、EBECRYL5129、EBECRYL8210、EBECRYL8301、EBECRYL8804、EBECRYL8807、EBECRYL9260、KRM7735、KRM8296、KRM8452、EBECRYL4858、EBECRYL8402、EBECRYL9270、EBECRYL8311、EBECRYL8701などが挙げられる。
【0021】
多官能化合物の含有量が多いほど、硬度が向上するが、延伸性が低下する傾向にある。分子量/官能基数の値が大きいほど少ない含有量で上記の効果を発揮し、小さいほど効果が少ない。また、重量平均分子量が大きいほど、硬化型組成物の粘度が上昇する傾向にある。重量平均分子量としては15,000以下が好ましい。
【0022】
ここで、重量平均分子量とは、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(日本Water社製、「Waters 2695(本体)」と「Waters 2414(検出器)」)に、カラム:Shodex GPC KF-806L(排除限界分子量:2×107、分離範囲:100~2×107、理論段数:10,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:10μm)の3本直列を用いることにより測定した値を指す。
【0023】
<その他のモノマー>
重合性化合物としてその他のモノマーを含んでいてもよく、例えば、単独重合体のガラス転移温度が50℃未満の単官能モノマーなどが挙げられる。
このような単官能モノマーとしては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
<粒子>
平均一次粒子径が20nm以上100nm以下である粒子を含有する。このような平均一次粒子径の粒子を含有することにより、重合時の硬化収縮を緩和させることができる。
ここで、粒子の平均一次粒子径は、例えば、走査型電子顕微鏡により測定することができる。
このような粒子としては、沈降性が良好である点からシリカ粒子が好ましい。なお、シリカ粒子以外でも、比重がシリカ粒子と同程度のものであれば用いることができる。
シリカ粒子の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、粘度の観点から、湿式で合成され、有機系の表面処理がなされ、有機系分散媒に溶媒置換されたシリカ分散液が好ましい。また、コストの観点からは、シリカ粒子に表面処理剤や分散剤などを加えながらミル分散させて得るシリカ分散液なども好ましい。従来、インクジェットでは高濃度の粒子分散体を吐出することは、インク流路内での粒子の沈降や、乾燥による極度の増粘、硬化が発生するために困難であった。これに対し、本発明では、前述のようにヘッド内でのインク循環を行うことによって、安定した吐出を可能としている。
【0025】
吐出される液滴中の平均一次粒子径が20nm以上100nm以下である粒子と、該粒子以外の成分との割合は、10質量%以上15質量%以下であることが好ましい。平均一次粒子径が20nm以上100nm以下である粒子が「1つでも」液滴中に入っていれば硬化収縮を抑えることができる。このような硬化型組成物の吐出される液滴体積(ノズル1吐出分)中の粒子割合=印刷物中の単位面積当たりの粒子含有割合を一定にするため、本発明の液体吐出ヘッドを用いる。
粒子の含有量は、硬化型組成物全量に対して、5質量%以上30質量%以下が好ましく、10質量%以上20質量%以下がより好ましい。粒子の含有量が5質量%以上30質量%以下の範囲において、硬化収縮を低減することができ、かつ液体の中で均一な分散を維持することができるという利点がある。
【0026】
<硬化手段>
本発明の硬化型組成物を硬化させる手段としては、加熱硬化又は活性エネルギー線による硬化が挙げられ、これらの中でも、活性エネルギー線による硬化が好ましい。
本発明の硬化型組成物を硬化させるために用いる活性エネルギー線としては、紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の、組成物中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されない。特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。また、紫外線照射の場合、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更に、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザダイオード(UV-LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線光源として好ましい。
【0027】
<重合開始剤>
本発明の硬化型組成物は、重合開始剤を含有していてもよい。重合開始剤としては、活性エネルギー線のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物(モノマーやオリゴマー)の重合を開始させることが可能なものであればよい。このような重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤、塩基発生剤等を、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができ、中でもラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。また、重合開始剤は、十分な硬化速度を得るために、組成物の総質量(100質量%)に対し、5~20質量%含まれることが好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物などが挙げられる。
また、上記重合開始剤に加え、重合促進剤(増感剤)を併用することもできる。重合促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルベンジルアミン及び4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどのアミン化合物が好ましく、その含有量は、使用する重合開始剤やその量に応じて適宜設定すればよい。
【0028】
<色材>
本発明の硬化型組成物は、色材を含有していてもよい。色材としては、本発明における組成物の目的や要求特性に応じて、ブラック、ホワイト、マゼンタ、シアン、イエロー、グリーン、オレンジ、金や銀等の光沢色、などを付与する種々の顔料や染料を用いることができる。色材の含有量は、所望の色濃度や組成物中における分散性等を考慮して適宜決定すればよく、特に限定されないが、組成物の総質量(100質量%)に対して、0.1~20質量%であることが好ましい。なお、本発明の硬化型組成物は、色材を含まず無色透明であってもよく、その場合には、例えば、画像を保護するためのオーバーコート層として好適である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができ、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機顔料としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、酸化鉄、酸化チタンを使用することができる。
有機顔料としては、例えば、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、染色レーキ(塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料が挙げられる。
また、顔料の分散性をより良好なものとするため、分散剤を更に含んでもよい。 分散剤としては、特に限定されないが、例えば、高分子分散剤などの顔料分散物を調製するのに慣用されている分散剤が挙げられる。
染料としては、例えば、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
<有機溶媒>
本発明の硬化型組成物は、有機溶媒を含んでもよいが、可能であれば含まない方が好ましい。有機溶媒、特に揮発性の有機溶媒を含まない(VOC(Volatile Organic Compounds)フリー)組成物であれば、当該組成物を扱う場所の安全性がより高まり、環境汚染防止を図ることも可能となる。なお、「有機溶媒」とは、例えば、エーテル、ケトン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、トルエンなどの一般的な非反応性の有機溶媒を意味するものであり、反応性モノマーとは区別すべきものである。また、有機溶媒を「含まない」とは、実質的に含まないことを意味し、0.1質量%未満であることが好ましい。
【0030】
<その他の成分>
本発明の活性エネルギー線硬化型組成物は、必要に応じてその他の公知の成分を含んでもよい。その他成分としては、特に制限されないが、例えば、従来公知の、界面活性剤、重合禁止剤、レべリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、粘度安定化剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、及び増粘剤などが挙げられる。
【0031】
<硬化型組成物の調製>
本発明の硬化型組成物は、上述のように、粒子及び重合性化合物を含み、前記粒子は、平均一次粒径20nm以上100nm以下であり、2官能以上の官能基を持つ多官能化合物を重合性化合物全量に対して25質量%以上45質量%以下含有する。
本発明の硬化型組成物は、上述した各種成分を用いて作製することができ、その調製手段や条件は特に限定されないが、例えば、粒子、重合性化合物、顔料、分散剤等をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミルなどの分散機に投入し、分散させて粒子あるいは顔料分散液を調製し、粒子あるいは顔料分散液に更に重合性化合物、開始剤、重合禁止剤、界面活性剤などを混合させることにより調製することができる。
【0032】
<粘度>
本発明の硬化型組成物の粘度は、用途や適用手段に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、当該組成物をノズルから吐出させるような吐出手段を適用する場合には、20℃から65℃の範囲における粘度、望ましくは25℃における粘度が3~40mPa・sが好ましく、5~30mPa・sがより好ましく、6~15mPa・sが特に好ましい。また当該粘度範囲を、上記有機溶媒を含まずに満たしていることが特に好ましい。なお、上記粘度は、東機産業株式会社製コーンプレート型回転粘度計VISCOMETER TVE-22Lにより、コーンロータ(1°34’×R24)を使用し、回転数50rpm、恒温循環水の温度を20℃~65℃の範囲で適宜設定して測定することができる。循環水の温度調整にはVISCOMATE VM-150IIIを用いることができる。
【0033】
<用途>
本発明の硬化型組成物の用途は、一般に硬化型材料が用いられている分野であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、成形用樹脂、塗料、接着剤、絶縁材、離型剤、コーティング材、シーリング材、各種レジスト、各種光学材料などが挙げられる。
更に、本発明の硬化型組成物は、インクとして用いて2次元の文字や画像、各種基材への意匠塗膜を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。この立体造形用材料は、例えば、粉体層の硬化と積層を繰り返して立体造形を行う粉体積層法において用いる粉体粒子同士のバインダーとして用いてもよく、また、
図2や
図3に示すような積層造形法(光造形法)において用いる立体構成材料(モデル材)や支持部材(サポート材)として用いてもよい。なお、
図2は、本発明の硬化型組成物を所定領域に吐出し、活性エネルギー線を照射して硬化させたものを順次積層して立体造形を行う方法であり(詳細後述)、
図3は、本発明の硬化型組成物305の貯留プール(収容部)301に活性エネルギー線304を照射して所定形状の硬化層306を可動ステージ303上に形成し、これを順次積層して立体造形を行う方法である。
【0034】
本発明の硬化型組成物を用いて立体造形物を造形するための立体造形装置としては、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、該組成物の収容手段、供給手段、吐出手段や活性エネルギー線照射手段等を備えるものが挙げられる。
また、本発明は、硬化型組成物を硬化させて得られた硬化物や当該硬化物が基材上に形成された構造体を加工してなる成形加工品も含む。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された硬化物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形することが必要な用途に好適に使用される。 上記基材としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、又はこれらの複合材料などが挙げられ、加工性の観点からはプラスチック基材が好ましい。
【0035】
<組成物収容容器>
本発明の組成物収容容器は、硬化型組成物が収容された状態の容器を意味し、上記のような用途に供する際に好適である。例えば、本発明の硬化型組成物がインク用途である場合において、当該インクが収容された容器は、インクカートリッジやインクボトルとして使用することができ、これにより、インク搬送やインク交換等の作業において、インクに直接触れる必要がなくなり、手指や着衣の汚れを防ぐことができる。また、インクへのごみ等の異物の混入を防止することができる。また、容器それ自体の形状や大きさ、材質等は、用途や使い方に適したものとすればよく、特に限定されないが、その材質は光を透過しない遮光性材料であるか、又は容器が遮光性シート等で覆われていることが望ましい。
【0036】
本発明の像の形成方法は、活性エネルギー線を用いてもよいし、加温なども挙げられる。本発明の硬化型組成物を活性エネルギー線で硬化させるためには、活性エネルギー線を照射する照射工程を有し、本発明の像の形成装置は、活性エネルギー線を照射するための照射手段と、本発明の硬化型組成物を収容するための収容部と、を備え、該収容部には前記容器を収容してもよい。更に、硬化型組成物を吐出する吐出工程、吐出手段を有していてもよい。吐出させる方法は特に限定されないが、連続噴射型、オンデマンド型等が挙げられる。オンデマンド型としてはピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられる。
【0037】
図1は、インクジェット吐出手段を備えた像形成装置の一例である。イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色硬化型インクのインクカートリッジと吐出ヘッドを備える各色印刷ユニット323a、323b、323c、323dにより、供給ロール321から供給された記録媒体322にインクが吐出される。その後、インクを硬化させるための光源324a、324b、324c、324dから、活性エネルギー線を照射して硬化させ、カラー画像を形成する。その後、記録媒体322は、加工ユニット325、印刷物巻取りロール326へと搬送される。各印刷ユニット323a、323b、323c、323dには、インク吐出部でインクが液状化するように、加温機構を設けてもよい。また必要に応じて、接触又は非接触により記録媒体を室温程度まで冷却する機構を設けてもよい。また、インクジェット記録方式としては、吐出ヘッド幅に応じて間欠的に移動する記録媒体に対し、ヘッドを移動させて記録媒体上にインクを吐出するシリアル方式や、連続的に記録媒体を移動させ、一定の位置に保持されたヘッドから記録媒体上にインクを吐出するライン方式のいずれであっても適用することができる。
記録媒体322は、特に限定されないが、紙、フィルム、セラミックスやガラス、金属、これらの複合材料等が挙げられ、シート状であってもよい。また片面印刷のみを可能とする構成であっても、両面印刷も可能とする構成であってもよい。一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、ダンボール、壁紙や床材等の建材、コンクリート、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用する ことができる。
更に、光源324a、324b、324cからの活性エネルギー線照射を微弱にするか又は省略し、複数色を印刷した後に、光源324dから活性エネルギー線を照射してもよい。これにより、省エネ、低コスト化を図ることができる。
本発明のインクにより記録される記録物としては、通常の紙や樹脂フィルムなどの平滑面に印刷されたものだけでなく、凹凸を有する被印刷面に印刷されたものや、金属やセラミックなどの種々の材料からなる被印刷面に印刷されたものも含む。また、2次元の画像を積層することで、一部に立体感のある画像(2次元と3次元からなる像)や立体物を形成することもできる。
【0038】
図2は、本発明に係る別の像形成装置(3次元立体像の形成装置)の一例を示す概略図である。
図2の像形成装置339は、インクジェットヘッドを配列したヘッドユニット(AB方向に可動)を用いて、造形物用吐出ヘッドユニット330から第一の硬化型組成物を、支持体用吐出ヘッドユニット331、332から第一の硬化型組成物とは組成が異なる第二の硬化型組成物を吐出し、隣接した紫外線照射手段333、334でこれら各組成物を硬化しながら積層するものである。より具体的には、例えば、造形物支持基板337上に、第二の硬化型組成物を支持体用吐出ヘッドユニット331、332から吐出し、活性エネルギー線を照射して固化させて溜部を有する第一の支持体層を形成した後、当該溜部に第一の硬化型組成物を造形物用吐出ヘッドユニット330から吐出し、活性エネルギー線を照射して固化させて第一の造形物層を形成する工程を、積層回数に合わせて、上下方向に可動なステージ338を下げながら複数回繰り返すことで、支持体層と造形物層を積層して立体造形物335を製作する。その後、必要に応じて支持体積層部336は除去される。なお、
図2では、造形物用吐出ヘッドユニット330は1つしか設けていないが、2つ以上設けることもできる。
【0039】
<液体吐出装置>
本発明者が鋭意検討した結果、前述の硬化型組成物を含むインクを、後述の循環機構を持つ液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置を用いて吐出させることによって、優れた延伸性と高硬度を兼ね備えた硬化物が得られることを知見した。
【0040】
本発明の液体吐出装置は、上記硬化型組成物と、硬化型組成物が循環する循環流路を有する個別液室と、個別液室と連通し液滴を吐出するノズルと、を有する液体吐出ヘッドを、備え、更に必要に応じてその他の部材を備えている。
液体吐出ヘッドは、硬化型組成物の圧力を検出する圧力センサと、硬化型組成物を循環させる循環速度を制御する循環速度制御部と、を備えており、
所望の圧力になるように循環速度を制御することが好ましい。これにより、液体吐出装置は、粒子の沈降を抑制することができ、均一な分散を維持することができる。
循環速度制御部は、圧力センサの検出値が所望の圧力より小さい場合は、循環速度を速くすることが、粒子の沈降を抑制する点から好ましい。
【0041】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの一例について
図4~12を参照して説明する。
図4は本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観斜視説明図、
図5は本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の断面説明図、
図6は本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と平行な方向の断面説明図、
図7は本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル板の平面説明図、
図8は本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの流路部材を構成する各部材の平面説明図、
図9A及び
図9Bは本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの共通液室部材を構成する各部材の平面説明図である。
図10は本発明の液体循環システムの一例を示すブロック図である。
図11は
図5のA-A’断面図、
図12は
図5のB-B’断面図である。
【0042】
この液体吐出ヘッドは、ノズル板1と、流路板2と、壁面部材としての振動板部材3とを積層接合している。そして、振動板部材3を変位させる圧電アクチュエータ11と、共通液室部材20と、カバー29を備えている。
ノズル板1は、液体を吐出する複数のノズル4を有している。
流路板2は、ノズル4に通じる個別液室6、個別液室6に通じる流体抵抗部7、流体抵抗部7に通じる液導入部8を形成している。また、流路板2は、ノズル板1側から複数枚の板状部材41~45を積層接合して形成され、これらの板状部材41~45と振動板部材3を積層接合して流路部材40が構成されている。
振動板部材3は、液導入部8と共通液室部材20で形成される共通液室10とを通じる開口としてのフィルタ部9を有している。
振動板部材3は、流路板2の個別液室6の壁面を形成する壁面部材である。この振動板部材3は2層構造(限定されない)とし、流路板2側から薄肉部を形成する第1層と、厚肉部を形成する第2層で形成され、第1層で個別液室6に対応する部分に変形可能な振動領域30を形成している。
【0043】
ここで、ノズル板1には、
図7にも示すように、複数のノズル4が千鳥状に配置されている。
流路板2を構成する板状部材41には、
図8Aに示すように、個別液室6を構成する貫通溝部(溝形状の貫通穴の意味)6aと、流体抵抗部51、循環流路52を構成する貫通溝部51a、52aが形成されている。
同じく板状部材42には、
図8Bに示すように、個別液室6を構成する貫通溝部6bと、循環流路52を構成する貫通溝部52bが形成されている。
同じく板状部材43には、
図8Cに示すように、個別液室6を構成する貫通溝部6cと、循環流路53を構成するノズル配列方向を長手方向とする貫通溝部53aが形成されている。
同じく板状部材44には、
図8Dに示すように、個別液室6を構成する貫通溝部6dと、流体抵抗部7なる貫通溝部7aと、液導入部8を構成する貫通溝部8aと、循環流路53を構成するノズル配列方向を長手方向とする貫通溝部53bが形成されている。
同じく板状部材45には、
図8Eに示すように、個別液室6を構成する貫通溝部6eと、液導入部8を構成するノズル配列方向を長手方向とする貫通溝部8b(フィルタ下流側液室となる)と、循環流路53を構成するノズル配列方向を長手方向とする貫通溝部53cが形成されている。
振動板部材3には、
図8Fに示すように、振動領域30と、フィルタ部9と、循環流路53を構成するノズル配列方向を長手方向とする貫通溝部53dが形成されている。
このように、流路部材を複数の板状部材を積層接合して構成することで、簡単な構成で複雑な流路を形成することができる。
以上の構成により、流路板2及び振動板部材3からなる流路部材40には、各個別液室6に通じる流路板2の面方向に沿う流体抵抗部51、循環流路52及び循環流路52に通じる流路部材40の厚み方向の循環流路53が形成される。なお、循環流路53は後述する循環共通液室50に通じている。
【0044】
一方、共通液室部材20には、供給・循環機構494から液体が供給される共通液室10と循環共通液室50が形成されている。
共通液室部材20を構成する第1共通液室部材21には、
図9Aに示すように、圧電アクチュエータ用貫通穴25aと、下流側共通液室10Aとなる貫通溝部10aと、循環共通液室50となる底の有る溝部50aが形成されている。
同じく第2共通液室部材22には、
図9Bに示すように、圧電アクチュエータ用貫通穴25bと、上流側共通液室10Bとなる溝部10bが形成されている。
また、
図4も参照して、第2共通液室部材22には、共通液室10のノズル配列方向の一端部と供給ポート71を通じる供給口部となる貫通穴71aが形成されている。
同様に、第1共通液室部材21及び第2共通液室部材22には、循環共通液室50のノズル配列方向の他端部(貫通穴71aと反対側の端部)と循環ポート81を通じる貫通穴81a、81bが形成されている。
なお、
図9A及び
図9Bにおいて、底の有る溝部については面塗りを施して示している(以下の図でも同じである)。
このように、共通液室部材20は、第1共通液室部材21及び第2共通液室部材22によって構成され、第1共通液室部材21を流路部材40の振動板部材3側に接合し、第1共通液室部材21に第2共通液室部材22を積層して接合している。
【0045】
ここで、第1共通液室部材21は、液導入部8に通じる共通液室10の一部である下流側共通液室10Aと、循環流路53に通じる循環共通液室50とを形成している。また、第2共通液室部材22は、共通液室10の残部である上流側共通液室10Bを形成している。
このとき、共通液室10の一部である下流側共通液室10Aと循環共通液室50とはノズル配列方向と直交する方向に並べて配置されるとともに、循環共通液室50は共通液室10内に投影される位置に配置される。
これにより、循環共通液室50の寸法が流路部材40で形成される個別液室6、流体抵抗部7及び液導入部8を含む流路に必要な寸法による制約を受けることがなくなる。
そして、循環共通液室50と共通液室10の一部が並んで配置され、循環共通液室50は共通液室10内に投影される位置に配置されることで、ノズル配列方向と直交する方向のヘッドの幅を抑制することができ、ヘッドの大型化を抑制できる。共通液室部材20は、ヘッドタンクや液体カートリッジから液体が供給される共通液室10と循環共通液室50を形成する。
一方、振動板部材3の個別液室6とは反対側に、振動板部材3の振動領域30を変形させる駆動手段としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ11を配置している。
この圧電アクチュエータ11は、
図6に示すように、ベース部材13上に接合した圧電部材を有し、圧電部材にはハーフカットダイシングによって溝加工して1つの圧電部材に対して所要数の柱状の圧電素子12A、12Bを所定の間隔で櫛歯状に形成している。
ここでは、圧電素子12Aは駆動波形を与えて駆動させる圧電素子とし、圧電素子12Bは駆動波形を与えないで単なる支柱として使用しているが、すべての圧電素子12A、12Bを駆動させる圧電素子として使用することもできる。
そして、圧電素子12Aを振動板部材3の振動領域30に形成した島状の厚肉部である凸部30aに接合している。また、圧電素子12Bを振動板部材3の厚肉部である凸部30bに接合している。
この圧電部材は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極が設けられ、外部電極にフレキシブル配線部材15が接続されている。
【0046】
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば、圧電素子12Aに与える電圧を基準電位から下げることによって圧電素子12Aが収縮し、振動板部材3の振動領域30が下降して個別液室6の容積が膨張することで、個別液室6内に液体が流入する。
その後、圧電素子12Aに印加する電圧を上げて圧電素子12Aを積層方向に伸長させ、振動板部材3の振動領域30をノズル4に向かう方向に変形させて個別液室6の容積を収縮させることにより、個別液室6内の液体が加圧され、ノズル4から液体が吐出される。
そして、表面張力によって液体が共通液室10から引き込まれ液体が充填される。最終的には、供給タンク及び循環タンクや水頭差で規定される負圧と、メニスカスの表面張力とのつり合いにより、メニスカス面が安定するため、次の吐出動作に移行可能となる。
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き-押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。また、上述した実施形態では、個別液室6に圧力変動を与える圧力発生手段として積層型圧電素子を用いて説明したが、これに限定されず、薄膜状の圧電素子を用いることも可能である。更に、個別液室6内に発熱抵抗体を配し、発熱抵抗体の発熱によって気泡を生成して圧力変動を与えるものや、静電気力を用いて圧力変動を生じさせるものを使用することができる。
【0047】
次に、本実施形態にかかる液体吐出ヘッドを用いた液体循環システムの一例を、
図10を用いて説明する。
図10は、本実施形態に係る液体循環システムを示すブロック図である。
図10に示すように、液体循環システムは、メインタンク、液体吐出ヘッド、供給タンク、循環タンク、コンプレッサ、真空ポンプ、送液ポンプ、レギュレータ(R)、供給側圧力センサ、循環側圧力センサなどで構成されており、更に全体のインク循環速度を調整する循環速度制御部から成る。供給側圧力センサは、供給タンクと液体吐出ヘッドとの間であって、液体吐出ヘッドの供給ポート71(
図4参照)に繋がった供給流路側に接続されている。循環側圧力センサは、液体吐出ヘッドと循環タンクとの間であって、液体吐出ヘッドの循環ポート81(
図4参照)に繋がった循環流路側に接続されている。
循環タンクの一方は第一送液ポンプを介して供給タンクと接続されており、循環タンクの他方は第二送液ポンプを介してメインタンクと接続されている。これにより、供給タンクから供給ポート71を通って液体吐出ヘッド内に液体が流入し、循環ポートから排出されて循環タンクへ排出され、更に第1送液ポンプによって循環タンクから供給タンクへ液体が送られることによって液体が循環する。
また、供給タンクにはコンプレッサがつなげられていて、供給側圧力センサで所定の正圧が検知されるように制御される。一方、循環タンクには真空ポンプがつなげられていて、循環側圧力センサで所定の負圧が検知されるよう制御される。これにより、液体吐出ヘッド内を通って液体を循環させつつ、メニスカスの負圧を一定に保つことができる。
また、液体吐出ヘッドのノズルから液滴を吐出すると、供給タンク及び循環タンク内の液体量が減少していくため、適宜メインタンクから第二送液ポンプを用いて、メインタンクから循環タンクに液体を補充することが望ましい。メインタンクから循環タンクへの液体補充のタイミングは、循環タンク内のインクの液面高さが所定高さよりも下がったら液体補充を行うなど、循環タンク内に設けた液面センサなどの検知結果によって制御することができる。
【0048】
次に、液体吐出ヘッド内における液体の循環について説明する。
図4に示すように、共通液室部材20の端部に、共通液室に連通する供給ポート71と、循環共通液室50に連通する循環ポート81が形成されている。供給ポート71及び循環ポート81は夫々チューブを介して液体を貯蔵する供給タンク・循環タンク(
図10参照)につなげられている。そして、供給タンクに貯留されている液体は、供給ポート71、共通液室10、液導入部8、流体抵抗部7を経て、個別液室6へ供給される。
更に、個別液室6内の液体が圧電素子12の駆動によりノズル4から吐出される一方で、吐出されずに個別液室6内に留まった液体の一部もしくは全ては流体抵抗部51、循環流路52、53、循環共通液室50、循環ポート81を経て、循環タンクへと循環される。
なお、液体の循環は液体吐出ヘッドの動作時のみならず、動作休止時においても実施することができる。動作休止時に循環することによって、個別液室内の液体は常にリフレッシュされると共に、液体に含まれる成分の凝集や沈降を抑制できるので好ましい。
【0049】
更に、本発明のように、インク内に沈降しやすい粒子を含む場合、インクの循環速度が遅いと、循環流路内にて粒子の沈降や固着が発生する場合がある。すると、循環流路内の抵抗が強くなるため、供給側圧力センサ又は循環側圧力センサでの検出値が小さくなる。その場合は、インクの循環速度を速めるよう制御することで、沈降部を解消させることができる。
具体的には、供給側圧力センサ又は循環側圧力センサでの検出値が、あらかじめ設定した下限目標値(一例として、正常時の圧力の半分未満)にまで低下した場合、あらかじめ設定した圧力変化率で目標圧力(正常時の圧力)にまで昇圧するように流量を制御する。検出値が前記目標圧力に到達した時点から予め定められた時間が経過するまでの間、この増加させた流量を維持する。これにより、沈降部を解消することができる。
【0050】
次に、本発明に係る液体吐出装置の一例について
図13及び
図14を参照して説明する。
図13は液体吐出装置の要部平面説明図、
図14は液体吐出装置の要部側面説明図である。
この液体吐出装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド404を搭載した液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド404は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
液体吐出ヘッド404の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド404に供給するための供給・循環機構494により、液体が液体吐出ヘッド404内に供給・循環される。なお、本例において、供給・循環機構494は、供給タンク、循環タンク、コンプレッサ、真空ポンプ、送液ポンプ、レギュレータ(R)等で構成される。また、供給側圧力センサは、供給タンクと液体吐出ヘッドとの間であって、液体吐出ヘッドの供給ポート71に繋がった供給流路側に接続されている。循環側圧力センサは、液体吐出ヘッドと循環タンクとの間であって、液体吐出ヘッドの循環ポート81に繋がった循環流路側に接続されている。
この装置は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド404に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
更に、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド404の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド404のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
主走査移動機構493、供給・循環機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
このように構成したこの装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド404を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
このように、この装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について
図15を参照して説明する。
図15は同ユニットの要部平面説明図である。
この液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給・循環機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0051】
本発明において、「液体吐出ヘッド」とは、ノズルから液体を吐出・噴射する機能部品である。
吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0052】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、供給・循環機構、キャリッジ、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていてもよい。
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドと供給・循環機構が一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドと供給・循環機構が一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットの供給・循環機構と液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、供給・循環機構若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0053】
本発明において、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
この「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
例えば、「液体吐出装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
また、「液体吐出装置」は、吐出された液滴によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
また、「液体吐出装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
【0055】
(シリカ粒子分散体の調製例)
シリカ粒子としては、下記(1)~(4)の市販のシリカゾルを用意し、シリカ粒子分散体を以下のとおり調製した(単体での固形分量比50質量%)。
シリカの分散媒が水の場合は、一度エタノールに溶媒置換した後に、アクリロイルモルホリンへと溶媒置換した。
メチルエチルケトンが分散媒の場合は、アクリロイルモルホリンとの溶媒置換により取り除いた。即ち、シリカ分散液に揮発性の低いアクリロイルモルホリンを加えた後、エバポレーターを用いて除いた。
【0056】
-シリカゾル-
(1)MEK-ST-40(日産化学工業株式会社製)(シリカ粒子の平均一次粒子径:10nm~15nm、[BET法])
(2)MEK-ST-L(日産化学工業株式会社製)(シリカ粒子の平均一次粒子径:40nm~50nm、[BET法])
(3)MEK-ST-ZL(日産化学工業株式会社製)(シリカ粒子の平均一次粒子径:70nm~100nm、[BET法])
(4)MEK-ST-2040(日産化学工業株式会社製)(シリカ粒子の平均一次粒子径:200nm、[遠心沈降法])
上記シリカ粒子の平均一次粒子径は、いずれも、走査型電子顕微鏡により測定した。
【0057】
(実施例1~5及び比較例1~7)
-硬化型組成物の作製-
表1~表3に示す処方(硬化型組成物全量に対する質量%)に従い、常法により、組成物を作製した。
次に、得られたシリカ粒子分散体(単体での固形分量比50質量%)を、表1~表3に示した固形分含有量となるように、上記の組成物に添加し、実施例1~5及び比較例1~7の硬化型組成物を調製した。
【0058】
<硬化物の作製>
実施例1~5及び比較例1、3~6の硬化型組成物については、
図4から
図12で示した循環機構を有する液体吐出ヘッド、及び微駆動機構を有する
図13の液体吐出装置を用いて、平均厚みが10μmになるようにポリカーボネート基材(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、ユーピロン100FE2000マスキング、厚み100μm)上に吐出した。
比較例2、7の硬化型組成物については、GEN4ヘッド(リコープリンティングシステムズ社製)搭載の液体吐出装置を用いて、平均厚みが10μmになるようにポリカーボネート基材(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、ユーピロン100FE2000マスキング、厚み100μm)上に吐出した。
なお、いずれも吐出の直後、フュージョンシステムズジャパン社製UV照射機LH6により光量1,500mJ/cm
2で紫外線を照射させ、各硬化物を得た。
【0059】
次に、得られた各硬化物について、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表1~表3に示した。
【0060】
<基材密着性>
基材としてはポリカーボネート基材(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、ユーピロン100FE2000マスキング、厚み100μm)を使用して評価を行った。得られた評価用のベタ塗膜に対して、JIS-K-5600-5-6に示されるクロスカット法による密着性試験を行い、下記基準により基材密着性を評価した。なお、○以上を合格レベルとした。
[評価基準]
○:マス目の剥がれがない、又は、カットの交差点における小さな剥がれのみの場合
△:マス目が1箇所以上剥がれる場合
×:クロスカット無しでテープ剥離のみで剥がれる場合
【0061】
<鉛筆硬度試験>
鉛筆硬度試験は、JIS K5600-5-4 引っかき硬度(鉛筆法)に準じて行った。装置としては、COTEC株式会社製ひっかき鉛筆硬度 TQC WWテスター(荷重750g専用)を用い、鉛筆は塗面に対して角度45°、荷重750gで押すように取り付けた。0.5mm/s~1mm/sの速度で試験を行った。
【0062】
<間欠吐出性>
液体吐出ヘッドからの液滴の飛翔状態を高速度カメラ(Microjet社製、JetScope 100L)で観察し、吐出周波数20kHzで1分間連続吐出した後、1分間吐出しない待機時間を持ち、再度吐出した際の吐出状態を観察し、下記基準で間欠吐出性を評価した。
[評価基準]
○:不吐出なし
△:不吐出1ch~4ch
×:不吐出5ch
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
表1~表3の結果から、実施例1~5と比較例1、3~4との対比によれば、2官能以上の多官能化合物の含有量が重合性化合物全量に対して25質量%以上45質量%以下であり、平均一次粒子径が20nm以上100nm以下である粒子を含有することによって、間欠吐出性及び基材密着性が向上することがわかった。
実施例1~5と比較例6との対比により、微粒子の粒子径が小さいと基材密着性が悪くなる傾向となることがわかった。
また、実施例1~5と比較例1との対比によれば、2官能以上の多官能化合物の含有量が重合性化合物全量に対して25質量%以上であることにより、鉛筆硬度が高く維持できることがわかった。
また、実施例1~5と比較例2、7との対比によれば、平均一次粒子径が20nm以上100nm以下である粒子を含有し、かつ循環機構付きヘッドで吐出させることにより、間欠吐出性が良化することがわかった。
【0067】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 2官能以上の多官能化合物を重合性化合物全量に対して25質量%以上45質量%以下、及び平均一次粒子径が20nm以上100nm以下である粒子を含有する硬化型組成物と、
前記硬化型組成物が循環する循環流路を有する個別液室と、
前記個別液室と連通し液滴を吐出するノズルと、
を有する液体吐出ヘッドを、
備えたことを特徴とする液体吐出装置である。
<2> 前記粒子が、シリカ粒子である前記<1>に記載の液体吐出装置である。
<3> 前記液体吐出ヘッドに前記硬化型組成物の圧力を検出する圧力センサと、
前記硬化型組成物を循環させる循環速度を制御する循環速度制御部と、を備え、
所望の圧力になるように前記循環速度を制御する前記<1>から<2>のいずれかに記載の液体吐出装置である。
<4> 前記循環速度制御部は、前記圧力センサの検出値が前記所望の圧力より小さい場合は、循環速度を速くする前記<3>に記載の液体吐出装置である。
<5> 2官能以上の多官能化合物を重合性化合物全量に対して25質量%以上45質量%以下、及び平均一次粒子径が20nm以上100nm以下である粒子を含有する硬化型組成物を、個別液室で循環させながら液体吐出ヘッドのノズルから吐出する吐出工程を、含むことを特徴とする液体吐出方法である。
<6> 前記粒子が、シリカ粒子である前記<5>に記載の液体吐出方法である。
<7> 前記硬化型組成物の圧力を圧力センサで検出する圧力検出工程と、
前記硬化型組成物を循環させる循環速度を制御する循環速度制御工程と、を含み、
所望の圧力になるように前記循環速度を制御する前記<5>から<6>のいずれかに記載の液体吐出方法である。
<8> 前記循環速度制御工程において、前記圧力センサの検出値が前記所望の圧力より小さい場合は、循環速度を速くする前記<7>に記載の液体吐出方法である。
<9> 2官能以上の多官能化合物を重合性化合物全量に対して25質量%以上45質量%以下、及び平均一次粒子径が20nm以上100nm以下である粒子を含有することを特徴とする硬化型組成物である。
<10> 前記粒子が、シリカ粒子である前記<9>に記載の硬化型組成物である。
<11> 前記粒子の含有量が、5質量%以上30質量%以下である前記<9>から<10>のいずれかに記載の硬化型組成物である。
<12> 前記<9>から<11>のいずれか記載の硬化型組成物からなることを特徴とする硬化型インクである。
<13> 前記<9>から<11>のいずれか記載の硬化型組成物を含むことを特徴とする硬化物である。
<14> 前記<13>に記載の硬化型インクが容器中に収容されたことを特徴とする収容容器である。
【0068】
前記<1>から<4>のいずれかに記載の液体吐出装置、前記<5>から<8>のいずれかに記載の液体吐出方法、前記<9>から<11>のいずれかに記載の硬化型組成物、前記<12>に記載の硬化型インク、前記<13>に記載の硬化物、及び前記<14>に記載の収容容器によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【文献】特開2010-106254号公報
【文献】特許第4739660号公報