(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】撮像システム、撮像装置、撮像方法、および、撮像システムを搭載した移動体
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20220802BHJP
G01B 11/30 20060101ALI20220802BHJP
G06T 7/70 20170101ALI20220802BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220802BHJP
【FI】
G01B11/00 H
G01B11/30 W
G06T7/70 A
G06T7/00 650A
(21)【出願番号】P 2018051833
(22)【出願日】2018-03-19
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】山田 学
【審査官】信田 昌男
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-007099(JP,A)
【文献】特開2006-146956(JP,A)
【文献】特開2000-088568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00
G01B 11/30
G06T 7/70
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載され、該移動体が移動する路面を撮像する撮像装置と、
音出力部から出力される音を発生する音発生部と、
前記撮像装置による撮像画像に含まれる被写体の
車線の端を示す白線の画像の、該撮像画像内での
、予め設定された前記白線の理想的な位置を示す基準ラインに対する位置を検出する検出部と、
前記検出部で検出された前記
白線の画像の前記撮像画像内での
前記基準ラインに対する位置に応じて、前記音発生部による前記音の発生を制御する音発生制御部と、
を備える
撮像システム。
【請求項2】
前記音出力部は、
前記移動体の、該移動体が移動する方向に対して左および右の位置にそれぞれ配置され、
前記音発生制御部は、
前記検出部により検出された前記
白線の画像の前記撮像画像での
前記基準ラインに対する位置に応じて、前記左の位置に配置される前記音出力部と、前記右の位置に配置される前記音出力部とのうち何れから音を出力するかを切り換える
請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
前記音発生制御部は、
前記検出部により検出された前記
白線の画像の前記撮像
画像内での
前記基準ラインに対する位置に応じて前記音発生部で発生する前記音を変化させる
請求項1または請求項2に記載の撮像システム。
【請求項4】
前記音発生制御部は、
前記検出部により検出された前記
白線の画像の前記撮像
画像内での
前記基準ラインに対する位置に応じて前記音発生部で発生する前記音の音量を変化させる
請求項3に記載の撮像システム。
【請求項5】
前記音発生制御部は、
前記検出部により検出された前記
白線の画像の前記撮像
画像内での
前記基準ラインに対する位置に応じて前記音発生部で発生する前記音の発生パターンを変化させる
請求項3または請求項4に記載の撮像システム。
【請求項6】
前記検出部は、
前記
白線の画像の前記移動体の移動の方向に対して左右の端に基づき、該
白線の画像の前記撮像画像内での位置を検出する
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の撮像システム。
【請求項7】
前記検出部は、
前記
白線の画像の前記移動体の移動の方向に対して左右の何れか一方の端に基づき、該
白線の画像の前記撮像画像内での位置を検出する
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の撮像システム。
【請求項8】
移動体に搭載され、該移動体が移動する路面を撮像する撮像部と、
音出力部から出力される音を発生する音発生部と、
前記撮像部による撮像画像に含まれる被写体の
車線の端を示す白線の画像の、該撮像画像内での
、予め設定された前記白線の理想的な位置を示す基準ラインに対する位置を検出する検出部と、
前記検出部で検出された前記
白線の画像の前記撮像画像内での
前記基準ラインに対する位置に応じて、前記音発生部による前記音の発生を制御する音発生制御部と、
を備える
撮像装置。
【請求項9】
移動体に搭載され、該移動体が移動する路面を撮像する撮像ステップと、
音出力部から出力される音を発生する音発生ステップと、
前記撮像ステップにより撮像された撮像画像に含まれる被写体の
車線の端を示す白線の画像の、該撮像画像内での
、予め設定された前記白線の理想的な位置を示す基準ラインに対する位置を検出する検出ステップと、
前記検出ステップにより検出された前記
白線の画像の前記撮像画像内での
前記基準ラインに対する位置に応じて、前記音発生ステップによる前記音の発生を制御する音発生制御ステップと、
を有する
撮像方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項7の何れか1項に記載の撮像システムを搭載した移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像システム、撮像装置、撮像方法、および、撮像システムを搭載した移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
各種道路において、車両走行の安全性、快適性の確保、要修繕箇所の抽出などのため、路面のひび割れ率、わだち掘れ量、平坦性などの路面性状の測定が定期的に行われている。これらの測定を行う際には、対象路線において車両通行規制を行い、規制領域内で人手により測定を行うことが従来一般的であった。近年では、カメラやセンサを搭載した車両により走行しながら道路面の情報を取得することで、通行規制を行うことなく路面性状測定を実施する技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、車線と自車両との相対位置が所定の範囲外であれば、相対位置の距離に応じて警告音の音量や周波数を変える技術が開示されている。特許文献1によれば、自動操舵機能において自動操舵制御の開始時に、運転者に最適なラインで自動操舵制御を開始する事が可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、車両にカメラを搭載し、走行しながら道路面を撮像する手法では、ひび割れの検出やわだち掘れの測定をする際には、測定精度を向上させるために、高解像度、且つ、1画素当たりの路面分解能が高い画像を用いることが好ましい。このとき、撮像範囲を広くすると、1画素当たりの路面分解能が低くなるため、撮像範囲が撮像すべき範囲をカバーしつつ、なるべく狭い範囲となるような画角設定とするのが望ましい。
【0005】
ところが、撮像範囲が撮像すべき範囲(計測に用いる範囲)を最低限でカバーするような画角設定とすると、例えば車両の走行軌跡が蛇行した場合に、撮像すべき範囲が撮像範囲からはみ出てしまうおそれがある。この場合において、撮像すべき範囲が撮像範囲に収まっているか否かを運転者が認識することが困難であるという問題があった。この問題点については、上述した特許文献1でも解決できていない。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、搭載した撮像装置で車両の進行中に路面の撮像を行う場合に、撮像すべき範囲が撮像範囲からはみ出さないような運転制御を容易に実行できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、移動体に搭載され、移動体が移動する路面を撮像する撮像装置と、音出力部から出力される音を発生する音発生部と、撮像装置による撮像画像に含まれる被写体の車線の端を示す白線の画像の、撮像画像内での、予め設定された白線の理想的な位置を示す基準ラインに対する位置を検出する検出部と、検出部で検出された白線の画像の撮像画像内での基準ラインに対する位置に応じて、音発生部による音の発生を制御する音発生制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、搭載した撮像装置で車両の進行中に路面の撮像を行う場合に、撮像すべき範囲が撮像範囲からはみ出さないような運転制御を容易に実行できるようになるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、わだち掘れ量の計測を説明するための図である。
【
図2】
図2は、平坦性の計測を説明するための図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る撮像システムの構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に適用可能な、ステレオカメラによる、車両の進行方向の撮像範囲を説明するための図である。
【
図5】
図5は、実施形態に適用可能な、ステレオカメラによる、車両の道路幅方向の撮像範囲を説明するための図である。
【
図6】
図6は、実施形態に適用可能な、ステレオカメラによるステレオ撮像範囲の、車両の進行方向における重複を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る、3台のステレオカメラを備える撮像システムの例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る撮像システムの概略的な構成の例を示すブロック図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る撮像システムのハードウェア構成の例を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、実施形態に係るステレオカメラの一例の構成を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、実施形態に適用可能な情報処理装置の一例の構成を示すブロック図である。
【
図12】
図12は、実施形態に適用可能な情報処理装置の機能を説明するための一例の機能ブロック図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係る平坦性の算出処理を示す一例のフローチャートである。
【
図14】
図14は、実施形態に適用可能なデプスマップの生成処理を示す一例のフローチャートである。
【
図15】
図15は、実施形態に適用可能な三角法を説明するための図である。
【
図16】
図16は、実施形態に適用可能な、カメラ位置および向きの推定処理を示す一例のフローチャートである。
【
図17】
図17は、実施形態に適用可能な、カメラ位置および向きの推定処理を説明するための図である。
【
図18】
図18は、実施形態に適用可能な、車両が路面の撮像を行うために走行する場合の、路面と、ステレオ撮像範囲との関係の例を示す図である。
【
図19】
図19は、実施形態に係る警告音発生処理を示す一例のフローチャートである。
【
図20】
図20は、実施形態に適用可能な道路面画像の例を示す図である。
【
図21】
図21は、実施形態の変形例に係る警告音発生処理を示す一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照して、撮像システム、撮像装置、撮像方法、および、撮像システムを搭載した移動体の実施形態を詳細に説明する。
【0011】
[既存の道路性状の検査方法の概略]
実施形態の説明に先んじて、既存の道路性状の検査方法について、概略的に説明する。道路性状を評価するための指標として、舗装の維持管理指数(MCI:Maintenance Control Index)が定められている。MCIは、舗装の供用性を、「ひび割れ率」、「わだち掘れ量」および「平坦性」という3種類の路面性状値によって定量的に評価するものである。
【0012】
これらのうち、「ひび割れ率」は、路面を50cmのメッシュに分割した各領域において、ひび割れの本数およびパッチング面積に応じて、下記の通り、ひび割れ面積を算出し、算出結果を式(1)に適用して、ひび割れ率を求める。
【0013】
ひび割れ1本⇒0.15m2のひび
ひび割れ2本⇒0.25m2のひび
パッチング面積0~25%⇒ひび割れ0m2
パッチング面積25~75%⇒ひび割れ0.125m2
パッチング面積75%以上⇒ひび割れ0.25m2
【0014】
【0015】
「わだち掘れ量」は、
図1(a)および
図1(b)に例示されるように、1車線について2本発生する「わだち」の深さD
1およびD
2を計測し、計測された深さD
1およびD
2のうち大きい値を採用する。「わだち」の掘れ方には、幾つかのパターンがあるので、それぞれのパターンに合わせた計測方法が規定される。
図1(a)は、2本の「わだち」の間が、2本の「わだち」の両端より高い場合、
図1(b)は、2本の「わだち」の間が、2本の「わだち」の両端より低い場合の計測方法の例を示している。
【0016】
平坦性は、路面の車両の進行方向に沿って、基準面からの高さを1.5m間隔で3箇所、計測する。例えば、
図2に示されるように、車両の下面に1.5m間隔でA、B、Cの3箇所、測定器を設け、高さX
1、X
2およびX
3を計測する。計測された高さX
1、X
2およびX
3に基づき式(2)により変位量dを求める。この計測を、車両を移動させながら複数回実行する。これにより得られた複数の変位量dに基づき式(3)を計算し、平坦性σを算出する。
【0017】
【0018】
【0019】
上述した「ひび割れ率」、「わだち掘れ量」および「平坦性」の計測を、100mの評価区間毎に実行する。損傷箇所が予め分かっている場合は、100mを40m+60mなどより小さい単位に分割して計測を行う場合もある。100m単位で実行された計測結果に基づきMCIを算出し、調書を作成する。
【0020】
MCIは、計測したひび割れ率C[%]、わだち掘れ量D[mm]、および、平坦性σ[mm」に基づき、表1に示される4つの式を計算して値MCI、MCI1、MCI2およびMCI3を算出する。そして、算出された値MCI、MCI1、MCI2およびMCI3のうち、最小値をMCIとして採用する。採用されたMCIに基づき表2に示す評価基準に従い評価を行い、評価区間の路面に修繕が必要か否かを判定する。
【0021】
【0022】
【0023】
[実施形態]
次に、実施形態に係る撮像システムについて説明する。実施形態では、ステレオ撮像が可能なカメラ(ステレオカメラ)を車両に取り付けて路面を撮像する。撮像されたステレオ撮像画像に基づき撮像位置から路面に対する奥行き情報を取得して路面の3次元形状を生成し、3次元路面データを作成する。この3次元路面データを解析することで、MCIを求めるために用いる「ひび割れ率」、「わだち掘れ量」および「平坦性」を取得することができる。
【0024】
より具体的に説明する。ステレオカメラは、所定の長さ(基線長と呼ぶ)を離して設けられた2つのカメラを備え、この2つのカメラで撮像された2枚ペアの撮像画像(ステレオ撮像画像と呼ぶ)を出力する。このステレオ撮像画像に含まれる2枚の撮像画像間で対応する点を探索することで、撮像画像中の任意の点について、奥行き距離を復元することができる。撮像画像の全域について奥行きを復元し、各画素を奥行き情報により表したデータを、デプスマップと呼ぶ。すなわち、デプスマップは、それぞれ3次元の情報を持つ点の集合からなる3次元点群情報である。
【0025】
このステレオカメラを車両の後方など1箇所に下向きに取り付け地面を撮像できるようにし、計測したい道路に沿って車両を移動させる。説明のため、測定のために車両に搭載するステレオカメラは、撮像範囲が、道路幅方向の規定の長さをカバーしているものとする。
【0026】
わだち掘れ量Dは、このステレオカメラにより撮像されたステレオ撮像画像から復元されたデプスマップ中の道路幅方向にストライプ状に切り取った部分の奥行き値を並べる。この奥行きの道路幅方向の変化に基づき、わだち掘れ深さD1およびD2を計算することができる。
【0027】
ひび割れ率Cは、路面を撮像した撮像画像を解析して「ひび」などを検出し、検出結果に基づき上述した式(1)による計算を行うことで取得する。
【0028】
ここで、車両の進行方向では、1回の撮像による撮像範囲が限定されるため、例えば100m区間のひび割れ率Cを1回の撮像による撮像画像に基づき計算することができない。そこで、車両を道路に従い移動させながら、撮像範囲の車両の進行方向の長さに応じた移動毎に順次、撮像を行う。このとき、前回の撮像における撮像範囲と、今回の撮像における撮像範囲とが、予め設計された重複率以上で重複するように、撮像のトリガを制御する。
【0029】
このように、車両の移動に応じて撮像のトリガを制御することで、計測したい道路の路面を漏れなく撮像できる。そのため、車両の進行に応じて順次撮像された撮像画像をスティッチングと呼ばれる画像処理などを用いて繋ぎ合わせて、例えば100m区間の路面の画像を含む1枚の画像を生成する。この画像を目視確認あるいは解析することで、道路面上のひび割れ率Cを計測できる。
【0030】
平坦性の測定は、Structure from Motion(以下、SfM)と呼ばれる、異なる撮像地点の画像から十分に重複して撮像された画像に基づき、その撮像位置を推定する技術を使う。
【0031】
SfMの処理の概要について説明する。まず、撮像範囲を重複して撮像された画像を用い、それぞれの画像中で同一地点を撮像した点を対応点として検出する。対応点は、可能な限り多数を検出することが望ましい。次に、例えば1枚目の画像の撮像地点から、2枚目の画像の撮像地点へのカメラの移動を、回転と並進を未知パラメータとして、検出した対応点の座標を用いた連立方程式を立て、最もトータルの誤差が小さくなるようなパラメータを求める。このようにして、2枚目の画像の撮像位置を算出できる。
【0032】
上述したように、それぞれの撮像地点におけるステレオ撮像画像から、画像中の任意の点の奥行きがデプスマップとして復元できている。1枚目のステレオ撮像画像に対応するデプスマップに対して、2枚目のステレオ撮像画像に対応するデプスマップを、上述の連立方程式により求めた2枚目のカメラの撮像位置を原点としたデプスマップに座標変換する。これにより、2枚のデプスマップを、1枚目のデプスマップの座標系に統一することができる。換言すれば、2枚のデプスマップを合成して1枚のデプスマップを生成できる。
【0033】
この処理を、例えば100m区間において撮像した全てのステレオ撮像画像に基づくデプスマップについて行い合成することで、1つの3次元空間中に、100m区間の道路面が復元される。このようにして復元された道路面の奥行き値を上述の式(2)に適用することで、変位量dを算出できる。この変位量dを上述の式(3)に適用して、平坦性σを算出する。
【0034】
実施形態では、車両に搭載したステレオカメラによる撮像と、撮像されたステレオ撮像画像に対する画像処理を行うことによって、MCIを求めるための、道路面の平坦性σ、わだち掘れ量D、および、ひび割れ率Cを、纏めて計測することができる。実施形態では、この計測を、ステレオカメラとステレオ撮像画像に対する画像処理を行う情報処理装置とからなる撮像システムを用いて実施可能であり、MCIを簡易な構成により求めることが可能となる。
【0035】
[実施形態の概要]
実施形態では、この路面の3次元形状を生成するためのステレオカメラによる路面撮像に当たり、当該ステレオカメラが搭載された車両が路面撮像を実施しながら道路を移動中に、3次元形状の生成のため撮像されるべき撮像範囲に対して、ステレオカメラの撮像範囲の偏りやはみ出しが発生した場合に、警告を発するようにしている。これにより、ステレオカメラの撮像範囲が撮像すべき範囲を含んでいるか否かを運転者が容易に認識可能となり、撮像すべき範囲から当該撮像範囲がはみ出さないような運転制御を容易に実行できる。またこれにより、路面の3次元形状を生成するための路面撮像を、より効率的に実行できる。
【0036】
[実施形態に適用可能なカメラ配置]
次に、実施形態に適用可能なカメラ配置の例について説明する。
図3は、実施形態に係る撮像システムの構成例を示す図である。
図3(a)は、実施形態に係る撮像システムが車両1に搭載される様子を車両1の側面から示した図である。
図3(a)において、図の左端に向けた方向が、車両1の進行方向とする。すなわち、
図3(a)において、車両1の左端側が車両1の前部であり、右端側が車両1の後部である。
図3(b)は、当該車両1を後部側から見た例を示す図である。
【0037】
実施形態に係る撮像システムは、当該撮像システムを搭載する移動体としての車両1の車体後部に撮像装置取付用の取付部2を備える取付部材3を固定し、取付部2に1以上のステレオカメラ6を取り付ける。ここでは、
図3(b)に例示されるように、車両1の車体の幅方向の両端側に、2台のステレオカメラ6Lおよび6Rが取り付けられるものとする。各ステレオカメラ6Lおよび6Rは、車両1が移動する路面4を撮像する向きに取り付けられる。好ましくは、各ステレオカメラ6Lおよび6Rは、路面4を垂直方向から撮像するように取り付けられる。
【0038】
以降、ステレオカメラ6Lおよび6Rを区別する必要の無い場合には、ステレオカメラ6Lおよび6Rをステレオカメラ6として纏めて記述する。
【0039】
ステレオカメラ6は、例えば車両1の内部に設置された、例えばパーソナルコンピュータ(PC)5により制御される。作業者はPC5を操作し、ステレオカメラ6による撮像開始を指示する。撮像開始が指示されると、PC5は、ステレオカメラ6による撮像を開始する。撮像は、ステレオカメラ6すなわち車両1の移動速度に応じてタイミング制御され、繰り返し実行される。
【0040】
作業者は、例えば必要な区間の撮像の終了に応じてPC5を操作し撮像終了を指示する。PC5は、撮像終了の指示に応じて、ステレオカメラ6による撮像を終了させる。
【0041】
車両1に対して、さらに、左側用のスピーカ8Lと、右側用のスピーカ8Rと、が設置される。スピーカ8Lおよび8Rは、例えば車両1の運転席に対して左右に配置される。これらスピーカ8Lおよび8Rは、PC5の音声出力により、スピーカ8Lとスピーカ8Rとでそれぞれ独立して音を出力するように駆動される。スピーカ8Lおよび8Rは、空気振動としての音を出力する音出力部であるといえる。
【0042】
図4および
図5は、実施形態に適用可能な、ステレオカメラ6の撮像範囲の例を示す図である。なお、
図4および
図5において、上述した
図3と共通する部分には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0043】
図4は、実施形態に適用可能な、ステレオカメラ6による、車両1の進行方向の撮像範囲(進行方向視野Vpとする)を説明するための図である。なお、
図4は、上述の
図1と同様に、図の左端に向けた方向を、車両1の進行方向としている。進行方向視野Vpは、
図4に示されるように、ステレオカメラ6の画角αと、ステレオカメラ6の路面4に対する高さhとに従い決定される。
【0044】
図5は、実施形態に適用可能な、ステレオカメラ6による、車両1の道路幅方向の撮像範囲を説明するための図である。
図5は、車両1を後部側から見た図であり、
図3(b)と共通する部分には同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0045】
図5(a)において、ステレオカメラ6Lは、2つの撮像レンズ6L
Lおよび6L
Rを備える。撮像レンズ6L
Lおよび6L
Rを結ぶ線を基線、その長さを基線長と呼び、ステレオカメラ6Lは、基線が車両1の進行方向に対して垂直になるように配置される。ステレオカメラ6Rも同様に、基線長だけ離れた2つの撮像レンズ6R
Lおよび6R
Rを備え、基線が車両1の進行方向に対して垂直になるように配置される。
【0046】
図5(b)は、実施形態に適用可能な、ステレオカメラ6Lおよび6Rの撮像範囲の例を示す。ステレオカメラ6Lにおいて、撮像レンズ6L
Lおよび6L
Rそれぞれの撮像範囲60L
Lおよび60L
Rは、基線長および高さhに応じてずれて重ねられる。ステレオカメラ6Rについても同様に、撮像レンズ6R
Lおよび6R
Rそれぞれによる、撮像範囲60R
Lおよび60R
Rは、基線長および高さhに応じてずれて重ねられる。
【0047】
以下、特に記載の無い限り、これら撮像範囲60L
Lおよび60L
R、ならびに、撮像範囲60R
Lおよび60R
Rを、それぞれ纏めてステレオ撮像範囲60Lおよび60Rと呼ぶ。ステレオカメラ6Lおよび6Rは、
図5(b)に示されるように、ステレオ撮像範囲60Lおよび60Rが、ステレオ撮像範囲60Lの車両1の幅方向の一端と、ステレオ撮像範囲60Rの当該幅方向の他端とが、領域61において所定の重複率で重複するように、配置される。
【0048】
図6は、実施形態に適用可能な、ステレオカメラ6Lによるステレオ撮像範囲60Lの、車両1の進行方向における重複を示す図である。なお、
図6において、左カメラ視野V
Lおよび右カメラ視野V
Rは、それぞれステレオカメラ6Lにおける撮像レンズ6L
Lおよび6L
Rの視野(撮像範囲)を示している。移動中の車両1において、ステレオカメラ6Lにより2回の撮像を行ったものとする。ステレオカメラ6Lは、1回目は、ステレオ撮像範囲60L(撮像範囲60L
Lおよび60L
R)の撮像を行い、2回目は、ステレオ撮像範囲60Lに対して、車両1の進行方向に、車両1の移動距離に応じた距離だけ移動したステレオ撮像範囲60L’(撮像範囲60L
L’および60L
R’)の撮像を行う。
【0049】
このとき、ステレオ撮像範囲60Lとステレオ撮像範囲60L’とが、進行方向視野Vpに対して予め定められた進行方向重複率Dr以上の重複率で重複するように、ステレオカメラ6Lの撮像タイミングを制御する。このように、時間軸に沿ってステレオ撮像範囲60Lおよび60L’を順次撮像することで、ステレオ撮像範囲60Lおよび60L’を撮像した2枚のステレオ撮像画像を繋ぎ合わせる処理を容易とすることができる。
【0050】
なお、上述では、実施形態に係る撮像システムが2台のステレオカメラ6Lおよび6Rを用いるものとして説明したが、これはこの例に限定されない。例えば、実施形態に係る撮像システムは、
図7(a)に示されるように、ステレオカメラ6Lおよび6Rに対してさらに1台のステレオカメラ(ステレオカメラ)6Cを加え、3台のステレオカメラ6L、6Rおよび6Cを用いて構成してもよい。
【0051】
図7(a)の例では、ステレオカメラ6Lおよび6Rの間隔が、ステレオカメラ6Lおよび6Rのみを用いる場合に比べて広げられ、その中央部にステレオカメラ6Cが配置されている。
図7(b)に示されるように、ステレオカメラ6Cの撮像レンズ6C
Lおよび6C
Rによる撮像範囲60C
Lおよび60C
Rにより、ステレオ撮像範囲60Cが構成される。ステレオカメラ6L、6Cおよび6Rは、それぞれによる各ステレオ撮像範囲60L、60Cおよび60Rが車両1の幅方向に所定の重複率で以て重複するように配置される。
【0052】
このように、1車線を撮像するために、3台のステレオカメラ6L、6Cおよび6Rを用いることで、車線の右側、中央および左側にそれぞれ撮像範囲を設定して撮像が可能となり、高画質(高解像)なステレオ撮像画像を、少ない台数のステレオカメラで撮像可能となる。ここで、特に道路幅は、一般的には、3.5mと規定されている。そこで、この道路幅の3.5mに対応して、ステレオカメラ6Lおよび6Rにより車線の道路幅方向の両端を撮像し、ステレオカメラ6Cにより中央部を撮像することが考えられる。
【0053】
なお、撮像範囲がこの規定される道路幅(3.5m)をカバー可能な画角を有するステレオカメラを1台のみ用いて、撮像システムを構成してもよい。
【0054】
上述した構成において、PC5は、ステレオカメラ6Lおよび6Rで撮像された各ステレオ撮像画像を解析し、撮像すべき範囲の境界、例えば道路の白線を検出する。PC5は、撮像範囲境界とステレオカメラ6Lおよび6Rによる各ステレオ撮像範囲との位置関係に応じて、スピーカ8Lおよび8Rの何れから警告音を出力するかを制御する。例えば、撮像範囲が撮像範囲境界に対して所定以上に右に寄っている場合、右側設置用のスピーカ8Rから警告音を出力する。
【0055】
また、PC5は、撮像範囲が撮像範囲境界に対して寄っている度合いに応じて、警告音の発生パターン(音量、周波数、間欠発生の間隔、など)を変化させることができる。これにより、車両1の運転者は、警告音を聞くことで左右どちらにどれだけ走行軌跡が偏っているかを直感的に判断でき、撮像すべき範囲がステレオカメラ6Lおよび6Rによる各ステレオ撮像画像からはみ出さないような運転制御を容易に実現できる。
【0056】
[実施形態に係る撮像システムの構成]
次に、実施形態に係る撮像システムの構成について説明する。以下では、撮像システムが2台のステレオカメラを備えるものとして説明を行う。
【0057】
図8は、実施形態に係る撮像システムの概略的な構成の例を示すブロック図である。
図8において、撮像システム10は、撮像部100
1および100
2と、撮像制御部101と撮像範囲判定部102と、音発生制御部103と、音発生部104と、を含む。
【0058】
撮像部1001および1002は、それぞれ上述したステレオカメラ6Lおよび6Rに対応する。撮像制御部101は、それぞれ撮像部1001および1002の撮像タイミング、露光、シャッタ速度などの撮像動作を制御すると共に、各撮像部1001および1002から出力された各ステレオ撮像画像を取得する。
【0059】
撮像範囲判定部102は、撮像制御部101により取得された各ステレオ撮像画像を解析し、各ステレオ撮像画像に含まれる撮像範囲境界(例えば路面の白線)を検出する。撮像範囲判定部102は、検出された撮像範囲境界の、各ステレオ撮像画像における位置に基づき、車両1の走行軌跡が、撮像範囲境界に対して左右に偏っているか否かを判定する。このように、撮像範囲判定部102は、ステレオ撮像画像内での所定範囲の画像の位置を検出する検出部として機能する。
【0060】
音発生部104は、スピーカ8Lおよび8Rと、スピーカ8Lおよび8Rを駆動するための増幅器と、を含み、入力された音信号を音として出力する。音発生制御部103は、音発生部104により出力させる音の音信号を発生する。音発生制御部103は、撮像範囲判定部102による、車両1の走行軌跡が、撮像範囲境界に対して左右に偏っているか否かの判定結果に応じたパターンの音を出力させる音信号を生成する。
【0061】
図9は、実施形態に係る撮像システム10のハードウェア構成の例を示すブロック図である。
図9において、撮像システム10は、ステレオカメラ6Lおよび6Rと、
図3のPC5に対応する情報処理装置50と、スピーカ8Lおよび8Rと、を含む。
【0062】
情報処理装置50は、所定のタイミングでトリガを生成し、生成したトリガをステレオカメラ6Lおよび6Rに送る。ステレオカメラ6Lおよび6Rは、このトリガに応じて同期して撮像を行う。ステレオカメラ6Lおよび6Rにより撮像された各ステレオ撮像画像は、情報処理装置50に供給される。情報処理装置50は、ステレオカメラ6Lおよび6Rから供給された各ステレオ撮像画像をストレージなどに記憶、蓄積する。情報処理装置50は、蓄積したステレオ撮像画像に基づき、デプスマップの生成、生成したデプスマップの繋ぎ合わせ、などの画像処理を実行する。
【0063】
また、情報処理装置50は、ステレオカメラ6Lおよび6Rにより撮像された各ステレオ撮像画像に基づき、車両1の走行軌跡の、撮像範囲境界に対する左右の偏り度合を判定し、判定結果に応じて、警告音を発生させるための音信号を生成する。ここでは、情報処理装置50は、スピーカ8Lおよび8Rを駆動するための増幅器を内蔵するものとし、情報処理装置50により発生された警告音の音信号に応じて、スピーカ8Lおよび8Rから音が出力される。
【0064】
以下では、情報処理装置50が警告音を発生させるための音信号を生成し、生成された音信号によりスピーカ8Lおよび8Rから音を出力することを、「情報処理装置50がスピーカ8Lおよび8Rから音を出力する」などのように記述する。
【0065】
図10は、実施形態に係るステレオカメラ6Lの一例の構成を示すブロック図である。なお、ステレオカメラ6Rは、このステレオカメラ6Lと同様の構成にて実現可能であるので、ここでの説明を省略する。
【0066】
図10において、ステレオカメラ6Lは、撮像光学系600
Lおよび600
Rと、撮像素子601
Lおよび601
Rと、駆動部602
Lおよび602
Rと、信号処理部603
Lおよび603
Rと、出力部604と、を含む。これらのうち、撮像光学系600
L、撮像素子601
L、駆動部602
L、および、信号処理部603
Lは、上述した撮像レンズ6L
Lに対応する構成である。同様に、撮像光学系600
R、撮像素子601
R、駆動部602
R、および、信号処理部603
Rは、上述した撮像レンズ6L
Rに対応する構成である。
【0067】
撮像光学系600Lは、画角α、焦点距離fを有する光学系であって、被写体からの光を撮像素子601Lに投射する。撮像素子601Lは、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を用いた光センサであって、投射された光に応じた信号を出力する。なお、撮像素子601Lに、CCD(Charge Coupled Device)による光センサを適用してもよい。駆動部602Lは、撮像素子601Lを駆動し、撮像素子601Lから出力された信号に対してノイズ除去、ゲイン調整などの所定の処理を施して出力する。信号処理部603Lは、駆動部602Lから出力された信号に対してA/D変換を施して、当該信号をディジタル方式の画像信号(撮像画像)に変換する。信号処理部603Lは、変換した画像信号に対してガンマ補正など所定の画像処理を施して出力する。信号処理部603Lから出力された撮像画像は、出力部604に供給される。
【0068】
撮像光学系600R、撮像素子601R、駆動部602R、および、信号処理部603Rの動作は、上述の撮像光学系600L、撮像素子601L、駆動部602L、および、信号処理部603Lと同様なので、ここでの説明を省略する。
【0069】
駆動部602Lおよび602Rは、例えば情報処理装置50から出力されたトリガが供給される。このトリガは、ステレオカメラ6Rに含まれる駆動部602Lおよび602Rと同期して、供給される。駆動部602Lおよび602Rは、このトリガに従い、撮像素子601Lおよび601Rから信号を取り込み、撮像を行う。
【0070】
ここで、駆動部602Lおよび602Rは、撮像素子601Lおよび601Rにおける露光を、一括同時露光方式により行う。この方式は、グローバルシャッタと呼ばれる。これに対して、ローリングシャッタは、画素位置の上から順番(ライン順)に光を取り込んでいく方式であるため、フレーム中の各ラインは、厳密に同じ時刻の被写体を写したものではない。ローリングシャッタ方式の場合、1フレームの撮像信号を取り込んでいる間にカメラもしくは被写体が高速に動いてしまうと、被写体の像がライン位置に応じてずれて撮像されてしまう。そのため、実施形態に係るステレオカメラ6Lおよび6Rでは、グローバルシャッタを用いて、投影幾何的に正しく道路形状が撮像されるようにする。
【0071】
出力部604は、信号処理部603Lおよび603Rから供給された各フレームの撮像画像を、1組のステレオ撮像画像として出力する。出力部604から出力されたステレオ撮像画像は、情報処理装置50に送られ、蓄積される。
【0072】
図11は、実施形態に適用可能な情報処理装置50の一例の構成を示すブロック図である。
図11において、情報処理装置50は、それぞれバス5030に接続されたCPU(Central Processing Unit)5000と、ROM(Read Only Memory)5001と、RAM(Random Access Memory)5002と、グラフィクスI/F(インタフェース)5003と、ストレージ5004と、入力デバイス5005と、データI/F5006と、通信I/F5007と、を備える。さらに、情報処理装置50は、それぞれバス5030に接続されたカメラI/F5010と、オーディオI/F5011と、速度取得部5021と、を備える。
【0073】
ストレージ5004は、データを不揮発に記憶する記憶媒体であって、ハードディスクドライブやフラッシュメモリを適用できる。ストレージ5004は、CPU5000が動作するためのプログラムやデータが記憶される。
【0074】
CPU5000は、例えば、ROM5001やストレージ5004に予め記憶されたプログラムに従い、RAM5002をワークメモリとして用い、この情報処理装置50の全体の動作を制御する。グラフィクスI/F5003は、CPU5000によりプログラムに従い生成された表示制御信号に基づき、ディスプレイ5020が対応可能な表示信号を生成する。ディスプレイ5020は、グラフィクスI/F5003から供給された表示信号に応じた画面を表示する。
【0075】
入力デバイス5005は、ユーザ操作を受け付け、受け付けたユーザ操作に応じた制御信号を出力する。入力デバイス5005としては、マウスやタブレットといったポインティングデバイスや、キーボードを適用できる。また、入力デバイス5005とディスプレイ5020とを一体的に形成し、所謂タッチパネル構成としてもよい。
【0076】
データI/F5006は、外部の機器との間でデータの送受信を行う。データI/F5006としては、例えばUSB(Universal Serial Bus)を適用可能である。通信I/F5007は、CPU5000の指示に従い、外部のネットワークに対する通信を制御する。
【0077】
カメラI/F5010は、各ステレオカメラ6Lおよび6Rに対するインタフェースである。各ステレオカメラ6Lおよび6Rから出力された各ステレオ撮像画像は、カメラI/F5010を介して、例えばCPU5000に渡される。また、カメラI/F5010は、CPU5000の指示に従い上述したトリガを生成し、生成したトリガを各ステレオカメラ6Lおよび6Rに送る。
【0078】
オーディオI/F5011は、D/A変換器を含み、例えばCPU5000により生成された左右チャネルのディジタル方式の音声信号を、左右チャネルのアナログ方式の音声信号に変換して出力する。また、ここでは、オーディオI/F5011は、音声信号をスピーカ8Lおよび8Rを駆動可能に増幅する増幅回路を内蔵し、それぞれ増幅された左チャネルの音声信号(L出力)と、右チャネルの音声信号(R出力)とを出力し、スピーカ8Lおよび8Rに供給する。
【0079】
速度取得部5021は、車両1の速度を示す速度情報を取得する。車両1に各ステレオカメラ6Lおよび6Rが取り付けられている場合、速度取得部5021が取得する速度情報は、各ステレオカメラ6Lおよび6Rの、被写体(路面)に対する速度を示す。速度取得部5021は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)の信号を受信する機能を有し、受信したGNSSによる信号のドップラー効果に基づき車両1の速度を示す速度情報を取得する。これに限らず、速度取得部5021は、車両1から直接的に速度情報を取得することもできる。
【0080】
図12は、実施形態に適用可能な情報処理装置50の機能を説明するための一例の機能ブロック図である。
図12において、情報処理装置50は、撮像画像取得部500aおよび500bと、UI部501と、制御部502と、撮像画像記憶部503と、撮像制御部504と、を含む。情報処理装置50は、また、マッチング処理部510と、3D情報生成部511と、3D情報取得部520と、状態特性値算出部521と、調書作成部522と、を含む。情報処理装置50は、さらに、撮像範囲判定部530と、音発生制御部531と、を含む。
【0081】
これら撮像画像取得部500、UI部501、制御部502、撮像制御部504、マッチング処理部510、3D情報生成部511、3D情報取得部520、状態特性値算出部521、調書作成部522、撮像範囲判定部530および音発生制御部531は、CPU5000上で動作するプログラムにより実現される。これに限らず、これら撮像画像取得部500、UI部501、制御部502、撮像制御部504、マッチング処理部510、3D情報生成部511、3D情報取得部520、状態特性値算出部521、調書作成部522、撮像範囲判定部530および音発生制御部531の一部または全部を、互いに協働して動作するハードウェア回路により構成してもよい。
【0082】
撮像画像取得部500は、各ステレオカメラ6Lおよび6Rから、ステレオ撮像画像を取得する。撮像画像記憶部503は、撮像画像取得部500により取得されたステレオ撮像画像および進行方向撮像撮像を、例えばストレージ5004に記憶する。また、撮像画像記憶部503は、ストレージ5004から、記憶されたステレオ撮像画像および進行方向撮像撮像を取得する。
【0083】
UI部501は、入力デバイス5005やディスプレイ5020に対する表示によるユーザインタフェースを実現する。制御部502は、この情報処理装置50全体の動作を制御する。
【0084】
撮像制御部504は、上述した撮像制御部101に対応する。すなわち、撮像制御部504は、各ステレオカメラ6Lおよび6Rの被写体(路面4)に対する速度を示す速度情報を取得し、取得した速度情報と、予め設定される各ステレオカメラ6Lおよび6Rの画角α、高さhと、に基づき、各ステレオカメラ6Lおよび6Rの同期撮像を指示するためのトリガを生成する。
【0085】
マッチング処理部510は、撮像画像取得部500により取得されたステレオ撮像画像を構成する2枚の撮像画像を用いてマッチング処理を行う。3D情報生成部511は、3次元情報に係る処理を行う。例えば、3D情報生成部511は、マッチング処理部510によるマッチング処理の結果を用いて三角法などにより深度情報を求め、求めた深度情報に基づき3次元点群情報を生成する。
【0086】
3D情報取得部520は、3D情報生成部511によりステレオ撮像画像毎に求めた3次元点群情報を取得する。状態特性値算出部521は、3D情報取得部520により取得された各3次元点群情報と、撮像画像取得部500により取得された各ステレオ撮像画像とを用いて、MCIを求めるための、ひび割れ率C、わだち掘れ量Dおよび平坦性σの各状態特性値を算出する。調書作成部522は、状態特性値算出部521により算出された各状態特性値に基づきMCIを求め、調書を作成する。
【0087】
撮像範囲判定部530は、上述した撮像範囲判定部102に対応し、撮像画像取得部500により取得された各ステレオ撮像画像を解析し、各ステレオ撮像画像に含まれる撮像範囲境界を検出する。撮像範囲判定部102は、検出された撮像範囲境界の、各ステレオ撮像画像における位置に基づき、車両1の走行軌跡の、撮像範囲境界に対する左右の偏り度合を判定する。
【0088】
音発生制御部531は、上述した音発生制御部103に対応し、撮像範囲判定部530による、車両1の走行軌跡の、撮像範囲境界に対する左右の偏り度合の判定結果に応じたパターンの音を出力させる音信号を生成する。
【0089】
情報処理装置50における実施形態に係る各機能を実現するためのプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)、フレキシブルディスク(FD)、DVD(Digital Versatile Disk)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供される。これに限らず、当該プログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、当該ネットワークを介してダウンロードさせることにより提供してもよい。また、当該プログラムをインターネットなどのネットワークを経由して提供または配布するように構成してもよい。
【0090】
当該プログラムは、撮像画像取得部500、UI部501、制御部502、撮像画像記憶部503、撮像制御部504、マッチング処理部510、3D情報生成部511、3D情報取得部520、状態特性値算出部521、調書作成部522、撮像範囲判定部530および音発生制御部531を含むモジュール構成となっている。実際のハードウェアとしては、CPU5000がストレージ5004などの記憶媒体から当該プログラムを読み出して実行することにより、上述した各部がRAM5002などの主記憶装置上にロードされ、撮像画像取得部500、UI部501、制御部502、撮像画像記憶部503、撮像制御部504、マッチング処理部510、3D情報生成部511、3D情報取得部520、状態特性値算出部521、調書作成部522、撮像範囲判定部530および音発生制御部531が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0091】
[実施形態に適用可能なトリガ生成方法]
次に、実施形態に適用可能な、各ステレオカメラ6Lおよび6Rに対して撮像を指示するためのトリガの生成方法について、より詳細に説明する。実施形態において、撮像制御部101は、ステレオカメラ6Lおよび6Rの被測定物(路面4)に対するステレオ撮像範囲の、車両1の速度の方向の距離を、車両1が速度情報が示す速度で移動する時間に対して、当該時間より短い所定時間以下の時間間隔でトリガを生成する。
【0092】
すなわち、トリガは、ステレオカメラ6Lおよび6Rにおける路面4の撮影範囲が、車両1の進行方向に所定の重複率(進行方向重複率Dr)を保つように発生させる必要がある。これは、後述するように、各ステレオ撮像画像から撮像位置を算出する処理において、安定的に精度の高いカメラ位置を算出するため、十分な対応点を検出できるようにすることが目的である。進行方向重複率Drの下限値は、例えば実験的に「60%」のように決定される。
【0093】
実施形態において、トリガの生成方法は、下記の3通りの方法を適用できる。
(1)一定時間間隔で生成する方法(第1の生成方法)
(2)カメラの移動速度を検出して生成する方法(第2の生成方法)
(3)撮像画像を用いて移動距離を算出して生成する方法(第3の生成方法)
【0094】
(第1の生成方法)
先ず、トリガの第1の生成方法について説明する。第1の生成方法においては、撮像中の車両1の最高速度Speedと、撮像範囲の大きさ(撮像範囲の車両1の進行方向の長さ)と、からトリガの時間間隔を決める。速度取得部5021は、車両1におけるシステム設定値や、情報処理装置50に対するユーザ入力により、車両1の最高速度Speedを予め取得しておく。撮像制御部504は、速度取得部5021から最高速度Speedを取得し、トリガの時間間隔を、取得した最高速度Speedと、進行方向視野Vpおよび進行方向重複率Drと、を用いて、下記の式(4)により算出する。なお、進行方向重複率Drは、上述した下限値が適用される。
【0095】
【0096】
式(4)により、1秒間に生成すべきトリガ数fpsが算出される。トリガ数fpsの逆数が、生成すべき次のトリガまでの時間間隔となる。
【0097】
進行方向視野Vpは、模式的には、
図4を用いて説明したように、各ステレオカメラ6Lおよび6Rの路面4からの高さhと、各ステレオカメラ6Lおよび6Rの画角αと、に基づき設定できる。実際は、さらに、各ステレオカメラ6Lおよび6Rの路面4に対する角度なども考慮して、進行方向視野Vpを設定する。
【0098】
ここで、移動中の車両1が右もしくは左にカーブした際には、ステレオカメラ6Lおよび6Rのうち外側にあるカメラの移動量が大きくなる。そのため、車両1の最高速度Speedをそのまま使うのではなく、外側カメラの位置に基づく回転移動の速度を使うと、より好ましい。
【0099】
撮像制御部504は、生成したトリガに応じて撮像されたステレオ撮像画像を、全て例えばストレージ5004やRAM5002に記憶し、蓄積する。
【0100】
(第2の生成方法)
次に、トリガの第2の生成方法について説明する。上述した第1の方法は、シンプルである一方、車両1が停止している状態や、所定の速度よりも低速で移動している状態では、最高速度Speedに対して過剰に細かい間隔で撮像することになり、蓄積されるステレオ撮像画像の量が大きくなってしまう。第2の生成方法では、撮像制御部504は、カメラの移動速度を検出し、検出された移動速度に応じてトリガを生成する。
【0101】
撮像制御部504は、速度取得部5021により取得された速度情報が示す現在の車両1の速度を、式(4)の最高速度Speedとして用いて、次のトリガまでの時間間隔を算出し、撮像を行う。第2の生成方法によれば、車両1の移動速度が小さいほど、トリガ生成の時間間隔が長くなり、無駄な撮像が行われることが抑制される。
【0102】
撮像制御部504は、生成したトリガに応じて撮像されたステレオ撮像画像を、全て例えばストレージ5004やRAM5002に記憶し、蓄積する。
【0103】
なお、この第2の生成方法と、上述した第1の生成方法は、組み合わせて実施することが可能である。
【0104】
(第3の生成方法)
次に、トリガの第3の生成方法について説明する。第3の生成方法では、上述した第1の生成方法と同様に、車両1の最高速度Speedに基づいた一定時間間隔でトリガを生成する。ここで、第3の生成方法においては、トリガに応じて撮像されたステレオ撮像画像を、全て蓄積するのではなく、進行方向重複率Drが予め設定された値を下回った場合にのみ蓄積する。
【0105】
後述するが、車両1の進行方向に重複するように撮像されたステレオ撮像画像のみを用いて、カメラ(車両1)の移動距離を算出することが可能である。
【0106】
撮像制御部504は、最後に蓄積されたステレオ撮像画像と、直前に撮像されたステレオ撮像画像とを用いてカメラの移動距離を算出する。撮像制御部504は、算出した距離が、進行方向重複率Drの下限値に対応した移動距離を超えたか否かを判定する。撮像制御部504は、超えたと判定した場合には、直前に撮像されたステレオ撮像画像を蓄積する。一方、撮像制御部504は、超えていないと判定した場合は、直前に撮像したステレオ撮像画像を破棄する。
【0107】
これにより、車両1の現在速度を計測するためのセンサを用いずとも、移動速度が小さいときには無駄な画像蓄積が行われないことになる。
【0108】
[実施形態に適用可能な路面性状値の算出方法]
次に、実施形態に適用可能な路面性状値の算出方法について説明する。以下では、実施形態に適用可能な平坦性σ、わだち掘れ量Dおよびひび割れ率Cの計測方法について説明する。
【0109】
(平坦性)
図13は、実施形態に適用可能な平坦性の算出処理を示す一例のフローチャートである。ステップS100で、撮像画像取得部500により、ステレオカメラ6Lおよび6Rにより撮像され、例えばストレージ5004に記憶されたステレオ撮像画像が取得される。ステレオ撮像画像が取得されると、処理は、並列して処理が可能なステップS101aおよびステップS101bに移行する。
【0110】
ステップS101aでは、ステップS100で取得されたステレオ撮像画像に基づきデプスマップが生成される。
図14および
図15を用いて、実施形態に適用可能なデプスマップの生成処理について説明する。
図14は、実施形態に適用可能なデプスマップの生成処理を示す一例のフローチャートである。
【0111】
ステップS120で、マッチング処理部510は、撮像画像取得部500からステレオ撮像画像を取得する。次のステップS121で、マッチング処理部510は、取得したステレオ撮像画像を構成する2枚の撮像画像に基づきマッチング処理を行う。次のステップS122で、3D情報生成部511は、ステップS121のマッチング処理結果に基づき深度情報を計算し、3次元点群情報であるデプスマップを生成する。
【0112】
ステップS121およびステップS122の処理について、より具体的に説明する。実施形態では、ステレオ撮像画像を構成する2枚の撮像画像を用いて、ステレオ法により深度情報を計算する。ここでいうステレオ法は、2つのカメラにより異なる視点から撮像された2枚の撮像画像を用い、一方の撮像画像のある画素(参照画素)に対して、他方の撮像画像内における対応する画素(対応画素)を求め、参照画素と対応画素とに基づき三角法により深度(奥行き値)を算出する方法である。
【0113】
ステップS121で、マッチング処理部510は、撮像画像取得部500から取得した、ステレオ撮像画像を構成する2枚の撮像画像を用い、基準となる一方の撮像画像における参照画素を中心とする所定サイズの領域に対応する、探索対象となる他方の撮像画像内の領域を、当該他方の撮像画像内で移動させて、探索を行う。
【0114】
対応画素の探索は、様々な方法が知られており、例えば、ブロックマッチング法を適用することができる。ブロックマッチング法は、一方の撮像画像において参照画素を中心としてM画素×N画素のブロックとして切り出される領域の画素値を取得する。また、他方の撮像画像において、対象画素を中心としてM画素×N画素のブロックとして切り出される領域の画素値を取得する。画素値に基づき、参照画素を含む領域と、対象画素を含む領域との類似度を計算する。探索対象の画像内でM画素×N画素のブロックを移動させながら類似度を比較し、最も類似度が高くなる位置のブロックにおける対象画素を、参照画素に対応する対応画素とする。
【0115】
類似度は、様々な計算方法により算出できる。例えば、式(5)に示される、正規化相互相関(NCC:Normalized Cross-Correlation)は、コスト関数の1つであって、コストを示す数値CNCCの値が大きいほど、類似度が高いことを示す。式(5)において、値MおよびNは、探索を行うための画素ブロックのサイズを表す。また、値I(i,j)は、基準となる一方の撮像画像における画素ブロック内の画素の画素値を表し、値T(i,j)は、探索対象となる他方の撮像画像における画素ブロック内の画素値を表す。
【0116】
【0117】
マッチング処理部510は、上述したように、一方の撮像画像における、M画素×N画素の画素ブロックに対応する、他方の撮像画像における画素ブロックを、他方の撮像画像内で例えば画素単位で移動させながら式(5)の計算を実行し、数値CNCCを算出する。他方の撮像画像において、数値CNCCが最大となる画素ブロックの中心画素を、参照画素に対応する対象画素とする。
【0118】
図14の説明に戻り、ステップS122で、3D情報生成部511は、ステップS121のマッチング処理により求められた、参照画素および対応画素に基づき、三角法を用いて奥行き値(深度情報)を算出し、ステレオ撮像画像を構成する一方の撮像画像および他方の撮像画像に係る3次元点群情報を生成する。
【0119】
図15は、実施形態に適用可能な三角法を説明するための図である。図中のターゲット物体403(例えば路面4上の1点)までの距離Sを、各撮像素子402(撮像素子601
Lおよび601
Rに対応)に撮像された画像内の撮像位置情報から算出することが処理の目的である。すなわち、この距離Sが、対象となる画素の深度情報に対応する。距離Sは、下記の式(6)により計算される。
【0120】
なお、式(6)において、値baselineは、カメラ400aおよび400b間の基線の長さ(基線長)を表す。これは、
図5の例では、撮像レンズ6L
Lおよび6L
R(ステレオカメラ6Lの場合)による基線長に対応する。値fは、レンズ401(撮像レンズ6L
Lおよび6L
Rに対応)の焦点距離を表す。値qは、視差を表す。視差qは、参照画素と対応画素の座標値の差分に、撮像素子の画素ピッチを乗じた値である。対応画素の座標値は、ステップS121のマッチング処理の結果に基づき得られる。
【0121】
【0122】
この式(6)が、2つのカメラ400aおよび400b、すなわち、撮像レンズ6LLおよび6LRを利用した場合の距離Sの算出方法となる。これは2つのカメラ400aおよび400b、すなわち、撮像レンズ6LLおよび6LRによりそれぞれ撮像された撮像画像から距離Sを算出するものである。実施形態では、この式(6)による算出方法を、ステレオカメラ6Lの撮像レンズ6LLおよび6LR、ならびに、ステレオカメラ6Rの撮像レンズ6RLおよび6RRにより撮像された各撮像画像に適用して、画素毎に距離Sを算出する。
【0123】
図13の説明に戻り、ステップS101bで、3D情報生成部511は、カメラ位置および向きを推定する。ここで、カメラ位置は、例えばステレオカメラ6Lを一体と捉えた場合のその中心座標を示す。ステップS101bの処理の詳細については、後述する。
【0124】
ステップS101aおよびステップS101bの処理が終了すると、処理がステップS102に移行される。ステップS102で、3D情報生成部511は、時系列上で隣接する2つのデプスマップについて、ステップS101bで推定したカメラ位置および向きに基づき、前時刻のデプスマップの座標系に合うように、当該前時刻の次の次時刻のデプスマップの座標変換を行う。
【0125】
なお、前時刻および次時刻は、ステレオカメラ6Lおよび6Rにおいてトリガに応じて時系列上で連続的に実行された1回目の撮像と、2回目の撮像とにおいて、1回目の撮像が行われた時刻を前時刻、2回目の撮像が行われた時刻を次時刻としている。すなわち、前時刻のデプスマップは、1回目の撮像によるステレオ撮像画像に基づき生成されたデプスマップであり、次時刻のデプスマップは、2回目の撮像によるステレオ撮像画像に基づき生成されたデプスマップである。
【0126】
次のステップS103で、3D情報生成部511は、ステップS102で座標変換された次時刻のデプスマップを、前時刻のデプスマップに統合する。すなわち、ステップS102の座標変換により、前時刻および次時刻の2つのデプスマップが共通の座標系に並ぶため、これら2つのデプスマップを統合することができる。この、ステップS102およびステップS103の処理を、全ての時刻で撮像されたステレオ撮像画像に対して実施する。
【0127】
なお、
図5や
図7に示すように、ステレオカメラ6Lおよび6R、あるいは、ステレオカメラ6L、6Cおよび6Rを道路幅方向に複数台並べて用いる場合、道路幅方向に並んだステレオカメラ同士(例えばステレオカメラ6Lおよび6R)においても、同様にしてカメラ位置および向きを推定し、その後、デプスマップ統合を行う。
【0128】
また、上述した第3の生成方法における、カメラ(車両1)の移動距離は、ステップS102の座標変換、および、ステップS103のデプスマップ統合処理において、算出が可能である。
【0129】
次のステップS104で、3D情報取得部520は、3D情報生成部511から、ステップS103で統合されたデプスマップを取得する。そして、状態特性値算出部521は、3D情報取得部520に取得されたデプスマップに基づき、平坦性σを算出する。すなわち、デプスマップが統合されると、計測した区間の道路について路面形状が、1つの3次元空間中の点群として復元される。点群が復元されると、路面上の各サンプリング地点について、規定に従い前後1.5m地点の座標を結んだ座標系を取り、中心部分の3次元点群までの距離を算出することで、式(2)と同様に変位量dを算出でき、式(3)に従い、この変位量dから平坦性σを算出できる。
【0130】
(わだち掘れ量)
わだち掘れ量Dについては、ステップS104で、状態特性値算出部521は、3D情報取得部520に取得されたデプスマップを道路幅方向にスキャンすることで、
図1(a)および
図1(b)に示されるような深さD
1およびD
2を取得することができる。これら取得した深さD
1およびD
2と、デプスマップをスキャンした断面の情報に基づき、わだち掘れ量Dを求めることができる。
【0131】
(ひび割れ率)
状態特性値算出部521は、例えば、ステップS103において統合されたデプスマップに対し、ステップS100で取得されたステレオ撮像画像を適用する。すなわち、状態特性値算出部521は、車両1の進行方向に、進行方向重複率Drで以て重複して撮像された各ステレオ撮像画像を統合する。状態特性値算出部521は、統合した画像に対して規定に従い50cmのメッシュを設定し、画像解析により各メッシュ内のひび、パッチングなどの情報を取得し、取得した情報に基づき規定に従いひび割れ率Cを算出する。
【0132】
(カメラ位置および向きの推定処理)
次に、上述した
図13のフローチャートにおけるステップS101bの、カメラ位置および向きの推定処理について、より詳細に説明する。
図16は、実施形態に適用可能な、カメラ位置および向きの推定処理を示す一例のフローチャートである。実施形態では、カメラ位置および向きを、上述したSfMを用いて推定する。
【0133】
ステップS130で、3D情報生成部511は、撮像画像取得部500からステレオ撮像画像を取得する。ここで、3D情報生成部511は、時系列上で連続的に撮像された2枚のステレオ撮像画像(前時刻のステレオ撮像画像、次時刻のステレオ撮像画像、とする)を取得する。次に、ステップS131で、3D情報生成部511は、取得した各ステレオ撮像画像から特徴点を抽出する。この特徴点抽出処理は、各ステレオ撮像画像の対応点として検出しやすい点を見つける処理であって、典型的には、画像中の変化があり、かつ変化が一様でないコーナーと呼ばれる点を検出する。
【0134】
次のステップS132で、3D情報生成部511は、前時刻のステレオ撮像画像内で特徴点として抽出された点と同じ場所を撮像した点を、次時刻のステレオ撮像画像内から検出する。この検出処理は、オプティカルフローと呼ばれる手法や、SIFT(Scale-Invariant Feature Transform)、SURF(Speed-Upped Robust Feature)などに代表される特徴点マッチングと呼ばれる手法を適用することができる。
【0135】
次のステップS133で、3D情報生成部511は、カメラの初期位置および向きを推定する。3D情報生成部511は、ステップS132において各ステレオ撮像画像で検出された対応点の座標を固定値とし、次時刻のステレオ撮像画像を撮像したカメラの位置および向きをパラメータとして連立方程式を解くことで、カメラの位置を推定し、3次元座標を算出する(ステップS134)。
【0136】
図17を参照しながら、カメラの初期位置および向きの推定方法について説明する。式(7)は、空間の点X
jを、カメラ(視点)P
iに投影した座標x
ijの関係を表している。なお、式(7)において、値nが3次元空間における点の数、値mは、カメラ(撮像画像)の数をそれぞれ表す。
【0137】
【0138】
各値Pは、それぞれのカメラについて、3次元空間の点の座標をその画像の2次元座標に変換する投影行列であって、次式(8)で表される。式(8)は、右辺に示す3次元座標の2行2列の変換行列と、3次元座標から2次元座標への射影変換fiから成る。
【0139】
【0140】
図17において、カメラに映った座標x
ijのみが与えられた連立方程式を用いて、値X
jと値P
iとを算出する。この連立方程式の解法には、線形最小二乗法を用いることができる。
【0141】
次のステップS135で、3D情報生成部511は、ステップS134で算出されたカメラ位置を示す3次元座標を最適化する。連立方程式を解いて算出されたカメラの位置および向きは、十分な精度を有していない場合がある。そのため、算出された値を初期値として最適化処理を行うことで、精度を向上させる。
【0142】
画像上探索により取得された対応点座標と、ステップS134で算出された3次元座標および式(8)の投影行列をパラメータとして上述した式(7)により算出される2次元座標xij(再投影座標と呼ばれる)と、の差は、残差と呼ばれる。カメラの位置および向きを算出するために用いた全てのステレオ撮像画像中の、全ての対応点について、この残差の総和が最小になるように、パラメータを最適化演算によって調整する。これを、バンドル調整と呼ぶ。バンドル調整による全体最適化を行うことで、カメラの位置および向きの精度を向上させることができる。
【0143】
以上が、通常のSfMにおけるカメラ位置および向き推定のベース処理である。実施形態では、基線長が既知のステレオカメラ6Lおよび6Rを使用しているため、車両1の移動に応じて撮像範囲を重複させて撮像されたステレオ撮像画像における対応点の検出に加えて、ステレオ撮像画像を構成する2枚の撮像画像における対応点の探索が容易である。したがって、空間での3次元座標Xjが実スケール(現実の大きさ)で確定し、移動後のカメラの位置および向きも安定的に算出できる。
【0144】
なお、上述したように、実施形態に適用可能な撮像システム10では、情報処理装置50においてトリガを生成し、生成したトリガを各ステレオカメラ6Lおよび6Rに全てのカメラに分配することで、各ステレオカメラ6Lおよび6Rが同期して撮像を行う構成となっている。このとき、各ステレオカメラ6Lおよび6Rが有するクロック生成器や、情報処理装置50においてトリガを分配するためのトリガ分配部品、情報処理装置50や各ステレオカメラ6Lおよび6Rにおけるトリガ配線長の差異などの影響により、実際に各ステレオカメラ6Lおよび6Rがトリガを取り込んで撮像を実行するタイミングに僅かなズレが発生する可能性がある。この撮像タイミングのズレは、可能な限り抑制することが好ましい。
【0145】
特に基線長が既知であるステレオカメラ6Lおよび6Rの間では、撮像タイミングのズレを極力抑えることが望ましい。例えば、カメラI/F5010aから各ステレオカメラ6Lおよび6Rにトリガ供給の配線を行う際に、トリガの品質確保のための中継器や、静電ノイズなどから保護するためにフォトカプラを経由する場合がある。この場合に、ステレオカメラ6Lおよび6R間でこれら中継器やフォトカプラを共有することが望ましい。
【0146】
[実施形態に係る警告音発生制御]
次に、実施形態に係る警告音の発生制御について、より詳細に説明する。
図18は、実施形態に適用可能な、車両1が路面4の撮像を行うために走行する場合の、路面4と、ステレオカメラ6Lおよび6Rによるステレオ撮像範囲60Lおよび60Rと、の関係の例を示す図である。実施形態に係る撮像システム10では、1または複数のステレオカメラを用いて路面4の撮像を行う。ここでは、上述したように、2台のステレオカメラ6Lおよび6Rを用いて路面4を撮像するものとする。
【0147】
図18(a)は、車両1が車線の中央部分を走行している例を示す。
図18(a)に示されるように、車両1の後部の取付部2に取り付けられたステレオカメラ6Lおよび6Rにより、ステレオカメラ6Lおよび6Rそれぞれのステレオ撮像範囲60Lおよび60Rが互いに重複部分を持ち、且つ、車両1が走行中の路面4における車線の幅方向全てが当該ステレオ撮像範囲60Lおよび60Rに収まるように撮像を行う。
【0148】
ここで、車線の端に配される白線41と、車線のセンターラインである白線42とにより、路面4に対する撮像範囲境界が定義されるものとする。
図18(a)の例では、ステレオ撮像範囲60Lおよび60Rは、白線41および42を共に含んでいる。この場合、車両1は、路面40を正常に進行しているものとされ、MCIを求めるために十分な路面4の撮像画像を得ることが可能である。
【0149】
図18(b)は、車両1が進行方向に対して右に寄ってしまった例を示す。この場合、ステレオカメラ6Lおよび6Rによるステレオ撮像範囲60Lおよび60Rに含まれるべき白線41および42のうち、進行方向に対して左側の白線41が当該ステレオ撮像範囲60Lおよび60Rに含まれない事態が起こり得る。この場合、本来撮像されるべき路面4の一部が撮像されないことになり、撮像データが有効に利用できないおそれがある。
【0150】
運転者は、車両1自体が車線をはみ出して走行している場合には、目視で知覚できる。一方、ステレオ撮像範囲60Lおよび60Rに、車線の幅方向に対するマージンが少ない場合、車両1自体は車線内中央付近を走行していたとしても、白線41または42がステレオ撮像範囲60Lおよび60R内に含まれていない事態も有り得る。この場合は、運転者が目視でその状態を知覚するのは困難である。
【0151】
そこで、実施形態では、路面4において撮像すべき範囲の、ステレオ撮像範囲60Lおよび60R内での位置に応じて警告音を発生させるようにする。例えば、当該撮像すべき範囲がステレオ撮像範囲60Lおよび60R内で進行方向に対して右に寄っている場合、車両1が左に寄って走行していると判定して左側用のスピーカ8Lから警告音を出力させる。これにより、運転者は、当該撮像すべき範囲がステレオ撮像範囲60Lおよび60Rに収まるような運転を容易に実行できる。
【0152】
なお、ステレオ撮像範囲60Lおよび60Rそのものが右に寄ると、車両1は、右に寄っている。また、撮像すべき範囲が、フロントの右から左に移動した場合、例えばステレオ撮像範囲60Lおよび60Rの右側に位置するセンターラインが右から左に移動した場合、車両1は、右に寄っていることになる。
【0153】
図19は、実施形態に係る警告音発生処理を示す一例のフローチャートである。情報処理装置50は、ステップS200で、撮像画像取得部500により、路面4をステレオカメラ6Lおよび6Rにより撮像した各ステレオ撮像画像を取得する。以下、ステレオカメラ6Lおよび6Rにより撮像した各ステレオ撮像画像を、これらを特に区別する必要の無い限り、纏めて道路面画像として説明を行う。
【0154】
次のステップS201で、情報処理装置50は、撮像範囲判定部530により、ステップS200で取得された道路面画像から撮像範囲境界を検出する。ここでは、例として、車線を区分する白線を撮像範囲境界として検出するものとする。
【0155】
撮像範囲判定部530による撮像範囲境界の検出処理について、
図20を用いて説明する。
図20は、実施形態に適用可能な道路面画像の例を示す図である。
図20(a)は、白線41および42が配された路面4の例を示し、ステレオカメラ6Lおよび6Rによるステレオ撮像範囲60Lおよび60Rは、それぞれの一部が重複部分を有し、且つ、車線の幅方向が収まるように配置されている。したがって、ステレオ撮像範囲60Lおよび60Rは、白線41および42の画像が含まれる。
【0156】
図20(b)および
図20(c)は、それぞれ、ステレオカメラ6Lおよび6Rによる、あるタイミングにおけるステレオ撮像画像61Lおよび61Rの例を示す。この例では、ステレオカメラ6Lによるステレオ撮像画像61Lに白線41の画像が含まれ(
図20(b))、ステレオカメラ6Rによるステレオ撮像画像61Rに白線42の画像が含まれている(
図20(c))。撮像範囲判定部530は、ステレオ撮像画像61Lおよび61Rの組を1枚の道路面画像と見做し、この道路面画像に対して、例えばハフ変換による直線検出を実施し、検出された直線の中から進行方向に略平行な直線を探索し、探索された直線を車線を区分する白線41または42であると判定する。
【0157】
次のステップS202で、撮像範囲判定部530は、道路面画像内に、撮像範囲境界が2つ検出されたか否かを判定する。撮像範囲判定部530は、撮像範囲境界が2つ検出されなかったと判定した場合(ステップS202、「No」)、処理をステップS220に移行させる。
【0158】
ステップS220で、撮像範囲判定部530は、ステップS202で検出されなかった撮像範囲境界が、進行方向に対して右側の撮像範囲境界であるかを判定する。撮像範囲判定部530は、検出されなかった撮像範囲境界が進行方向に対して右側の撮像範囲境界であると判定した場合(ステップS220、「Yes」)、処理をステップS221に移行させる。
【0159】
ステップS221で、情報処理装置50において、音発生制御部531は、左側用のスピーカ8Lに出力させるための警告音を発生させる。この場合、車両1の進行方向が左側に寄っており、撮像すべき範囲が既に道路面画像に収まっていないため、発生させる警告音の音量を、比較的大きな第1の音量とする。
【0160】
一方、撮像範囲判定部530は、ステップS220で、検出されなかった撮像範囲境界が進行方向に対して右側の撮像範囲境界ではない、すなわち、検出されなかった撮像範囲境界が進行方向に対して左側の撮像範囲境界であると判定した場合(ステップS220、「No」)、処理をステップS222に移行させる。ステップS222で、音発生制御部531は、右側用のスピーカ8Rに出力させるための警告音を、第1の音量で発生させる。
【0161】
撮像範囲判定部530は、上述したステップS202において、2つの撮像範囲境界が検出されたと判定した場合(ステップS202、「Yes」)、処理をステップS203に移行させる。
【0162】
ステップS203で、撮像範囲判定部530は、検出された各撮像範囲境界の、道路面画像内での位置に基づく判定を行う。具体的には、撮像範囲判定部530は、検出された各撮像範囲境界と、道路面画像の端と、の間の画素数が所定数以上であるか否かを判定する。
【0163】
ここでは、撮像範囲判定部530は、道路面画像の進行方向に対して左右の各端と、検出された2つの撮像範囲境界において、当該各端に近い各撮像範囲境界との間の画素数を計数する。
図20の例では、道路面画像の左端と、道路面画像に含まれる白線41の画像との間の画素数(左側画素数とする)と、道路面画像の右端と、道路面画像に含まれる白線42の画像との間の画素数(右側画素数とする)とが、それぞれ所定数以上であるか否かを判定する。
【0164】
撮像範囲判定部530は、各撮像範囲境界と、道路面画像の端と、の間の画素数が所定数以上ではない、すなわち、所定数未満であると判定した場合(ステップS203、「No」)、処理をステップS210に移行させる。ステップS210で、撮像範囲判定部530は、右側画素数が所定値未満であるか否かを判定する。ここで、撮像範囲境界(白線41または42)が道路面画像に含まれるが、画像端に近い位置にある場合は、車両1の走行軌跡が撮像すべき範囲の左右何れかに寄っていて、撮像すべき範囲が道路面画像からはみ出してしまうおそれがあると判断できる。
【0165】
撮像範囲判定部530は、右側画素数が所定値未満であると判定した場合(ステップS210、「Yes」)、処理をステップS212に移行させる。ステップS212で、音発生制御部531は、左側用のスピーカ8Lに出力させるための警告音を発生させる。この場合、車両1の進行方向が左側に寄っているが、撮像すべき範囲は道路面画像に収まっている状態であるため、発生させる警告音の音量を、比較的小さな第2の音量とする。第2の音量は、上述した第1の音量よりも小さい音量である。
【0166】
一方、撮像範囲判定部530は、右側画素数が所定値未満ではない、すなわち、左側画素数が所定値未満であると判定した場合(ステップS210、「No」)、処理をステップS211に移行させる。ステップS211で、音発生制御部531は、右側用のスピーカ8Rに出力させるための警告音を、第2の音量で発生させる。
【0167】
ステップS211、ステップS212、ステップS221またはステップS222で警告音が発生されると、この
図19のフローチャートにおける一連の処理が終了される。
【0168】
上述のステップS203において、撮像範囲判定部530は、各撮像範囲境界と、道路面画像の端と、の間の画素数が所定数以上であると判定した場合(ステップS203、「Yes」)、この
図19のフローチャートにおける一連の処理を終了させる。すなわち、この場合は、撮像すべき範囲が余裕を持って道路面画像に収まっているとして、警告音を発しない。
【0169】
上述した
図19のフローチャートによる処理は、例えばステレオカメラ6Lおよび6Rによる1回の撮像毎(1フレームの撮像毎)に実行される。これに限らず、
図19のフローチャートにおける処理を、ステレオカメラ6Lおよび6Rによる複数回の撮像毎に実行してもよい。
【0170】
なお、上述では、音発生制御部531は、撮像範囲境界が2つ検出されたか否かに応じて警告音の音量を第1の音量および第2の音量の2段階で制御しているが、これはこの例に限定されない。
【0171】
例えば、音発生制御部531は、撮像範囲境界が2つ検出されたか否かに応じて、警告音の周波数を変化させてもよい。この場合、ステップS220の判定において第1の周波数の警告音とし、ステップS210の判定においては、第1の周波数より低い第2の周波数の警告音とすることが考えられる。
【0172】
また例えば、音発生制御部531は、警告音を間欠発生の音とし、撮像範囲境界が2つ検出されたか否かに応じて、間欠発生の間隔を変えてもよい。この場合、ステップS220の判定において第1の間隔で警告音を発生し、ステップS210の判定においては、第1の周波数より間隔の長い第2の間隔で警告音を発生することが考えられる。
【0173】
さらにまた、音発生制御部531は、警告音の音量を、撮像範囲境界と道路面画像との間の画素数に応じて、警告音の音量、周波数、あるいは、間欠発生の間隔を変化させることも考えられる。
【0174】
[実施形態の変形例]
次に、実施形態の変形例について説明する。上述した実施形態における
図19のフローチャートによる処理では、路面4に配される左右の白線41および42を検出している。これに対して、実施形態の変形例では、路面4に配される左右の白線41および42のうち一方のみを検出して撮像範囲の判定を行う。
【0175】
実施形態の変形例では、道路面画像に対して白線41または42が理想的な位置に含まれる場合のラインを基準ラインとして予め設定する。基準ラインは、例えば、道路面画像における、進行方向に垂直な軸(X軸とする)の、画素単位の座標(X座標)で設定される。また、検出された白線41または42と基準ラインとがこれ以上離れていると撮像すべき範囲が道路面画像からはみ出すおそれがあると判定するための第1の閾値と、これ以上離れていると撮像すべき範囲が道路面画像からはみ出していると判定するための、第1の閾値より大きな第2の閾値と、を予め設定する。なお、これら、基準ライン、第1の閾値および第2の閾値は、車両1が走行する走行車線の車線幅に応じて設定する。
【0176】
実施形態の変形例に係る撮像範囲判定部530は、道路面画像に含まれる白線41または42の画像のX座標と、この基準ラインのX座標との差分と、第1の閾値および第2の閾値と、に基づき、撮像範囲の判定を行う。
【0177】
図21は、実施形態の変形例に係る警告音発生処理を示す一例のフローチャートである。
図21のフローチャートにおいて、情報処理装置50は、ステップS300で、撮像画像取得部500により、路面4をステレオカメラ6Lおよび6Rにより撮像した各ステレオ撮像画像を、道路面画像として取得する。次のステップS301で、情報処理装置50は、撮像範囲判定部530により、ステップS300で取得された道路面画像から撮像範囲境界を検出する。ここでは、例として、車線を区分する白線41および42のうち、左側の白線41を撮像範囲境界として検出するものとする。
【0178】
ステップS302で、撮像範囲判定部530は、道路面画像内に、撮像範囲境界が検出されたか否かを判定する。撮像範囲判定部530は、撮像範囲境界が検出されなかったと判定した場合(ステップS302、「No」)、処理をステップS322に移行させる。この場合、車両1の進行方向が右に寄っており、且つ、撮像すべき範囲が既に道路面画像に収まっていないと判断できる。
【0179】
ステップS322で、音発生制御部531は、右側用のスピーカ8Rに出力させるための警告音を、上述した、比較的大きな音量である第1の音量で発生させる。
【0180】
撮像範囲判定部530は、ステップS302で、道路面画像内に、撮像範囲境界が検出されたと判定した場合(ステップS302、「Yes」)、処理をステップS303に移行させる。ステップS303で、撮像範囲判定部530は、検出された撮像範囲境界と、基準ラインとの間の画素数が第1の閾値未満であるか否かを判定する。撮像範囲判定部530は、当該画素数が第1の閾値未満ではない、すなわち、第1の閾値以上であると判定した場合(ステップS303、「No」)、処理をステップS304に移行させる。
【0181】
ステップS304で、撮像範囲判定部530は、ステップS301で検出された撮像範囲境界と、基準ラインとの間の画素数が第2の閾値未満であるか否かを判定する。撮像範囲判定部530は、当該画素数が第2の閾値未満ではない、すなわち、第2の閾値以上であると判定した場合(ステップS304、「No」)、処理をステップS320に移行させる。この場合、撮像すべき範囲が道路面画像から既にはみ出していると判断できる。
【0182】
ステップS320で、撮像範囲判定部530は、ステップS301で検出された撮像範囲境界の位置が、基準ラインに対して、進行方向の右側であるか否かを判定する。右側であると判定した場合(ステップS320、「Yes」)、処理をステップS321に移行させる。ステップS321で、音発生制御部531は、左側用のスピーカ8Lに出力させるための警告音を、第1の音量で発生させる。
【0183】
一方、撮像範囲判定部530は、ステップS301で検出された撮像範囲境界の位置が、基準ラインに対して、進行方向の右側ではない、すなわち、進行方向の左側であると判定した場合(ステップS320、「No」)、処理を上述したステップS322に移行させる。ステップS322で、音発生制御部531は、右側用のスピーカ8Rに出力させるための警告音を、第1の音量で発生させる。
【0184】
上述したステップS304で、撮像範囲判定部530は、ステップS301で検出された撮像範囲境界と、基準ラインとの間の画素数が第2の閾値未満であると判定した場合(ステップS304、「Yes」)、処理をステップS310に移行させる。この場合、撮像すべき範囲が道路面画像からはみ出す可能性があるが、未だはみ出していないと判断できる。
【0185】
ステップS310で、撮像範囲判定部530は、ステップS301で検出された撮像範囲境界の位置が、基準ラインに対して、進行方向の右側であるか否かを判定する。右側であると判定した場合(ステップS310、「Yes」)、処理をステップS311に移行させる。ステップS311で、音発生制御部531は、左側用のスピーカ8Lに出力させるための警告音を、比較的小さな音量である第2の音量で発生させる。
【0186】
一方、撮像範囲判定部530は、ステップS301で検出された撮像範囲境界の位置が、基準ラインに対して、進行方向の右側ではない、すなわち、進行方向の左側であると判定した場合(ステップS310、「No」)、処理をステップS312に移行させる。ステップS312で、音発生制御部531は、右側用のスピーカ8Rに出力させるための警告音を、第2の音量で発生させる。
【0187】
このように、撮像範囲の判定を、路面4に配される左右の白線41および42のうち一方のみを検出して行う場合であっても、車両1の進行方向が撮像すべき範囲に対して左右何れかに寄っているかを判定でき、運転者は、当該撮像すべき範囲がステレオ撮像範囲60Lおよび60Rに収まるような運転を容易に実行できる。
【0188】
なお、実施形態の変形例においても、上述の実施形態と同様に、音発生制御部531は、撮像範囲境界と基準ラインとの間の画素数が第2の閾値未満であるか否かに応じて警告音の音量を第1の音量および第2の音量の2段階で制御しているが、これはこの例に限定されない。
【0189】
例えば、音発生制御部531は、撮像範囲境界と基準ラインとの間の画素数に応じて、警告音の周波数を変化させてもよい。この場合、ステップS320の判定において第1の周波数の警告音とし、ステップS310の判定においては、第1の周波数より低い第2の周波数の警告音とすることが考えられる。
【0190】
また例えば、音発生制御部531は、警告音を間欠発生の音とし、撮像範囲境界と基準ラインとの間の画素数に応じて、間欠発生の間隔を変えてもよい。この場合、ステップS320の判定において第1の間隔で警告音を発生し、ステップS310の判定においては、第1の周波数より間隔の長い第2の間隔で警告音を発生することが考えられる。
【0191】
さらにまた、音発生制御部531は、警告音の音量を、撮像範囲境界と基準ラインとの間の画素数に応じて、警告音の音量、周波数、あるいは、間欠発生の間隔を変化させることも考えられる。
【0192】
なお、上述の各実施形態は、本発明の好適な実施の例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形による実施が可能である。
【符号の説明】
【0193】
1 車両
4 路面
5 PC
6,6C,6L,6R ステレオカメラ
6LL,6LR,6RL,6RR 撮像レンズ
8L,8R スピーカ
10 撮像システム
41,42 白線
50 情報処理装置
60C,60L,60R ステレオ撮像範囲
60CL,60CR,60LL,60LR,60RL,60RR 撮像範囲
1001,1002 撮像部
101,504 撮像制御部
102,530 撮像範囲判定部
103,531 音発生制御部
104 音発生部
500 撮像画像取得部
503 撮像画像記憶部
5011 オーディオI/F
5021 速度取得部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0194】