(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】位置決め部材及びそれを用いた偏波合成モジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 6/42 20060101AFI20220802BHJP
G02B 6/27 20060101ALI20220802BHJP
G02B 6/34 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
G02B6/42
G02B6/27
G02B6/34
(21)【出願番号】P 2018066560
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2020-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】原 徳隆
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-148499(JP,A)
【文献】特開平01-109542(JP,A)
【文献】特開2005-043434(JP,A)
【文献】特表2013-543137(JP,A)
【文献】特開2016-212127(JP,A)
【文献】特開2017-181862(JP,A)
【文献】特開2013-101244(JP,A)
【文献】米国特許第05977567(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/42-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光学部品を位置決めする位置決め部材であり、
厚みが0.1~1mmの薄型金属プレートを複数積層した積層体を備え、
該積層体を構成する第1のプレートの上面と前記第1のプレートよりも上側に配置された第2のプレートの側面により各光学部品の位置決めを行う位置決め部材において、
該光学部品を位置決めする前記第2のプレートの2つの平行でない側面が交わる部分には、当該交わる部分を含み、かつ前記2つの平行でない側面の一方のみに形成される切取り部分を備えており、該切取り部分が形成された側面と該切取り部分とで形成される角部分は曲率を持つ形状であることを特徴とする位置決め部材。
【請求項2】
請求項1に記載の位置決め部材において、異なる該光学部品が
該積層体を構成する異な
るプレートの上面に各々配置されていることを特徴とする位置決め部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の位置決め部材において、該切取り部分の形状はU字状であることを特徴とする位置決め部材。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の位置決め部材を備え、偏波面が異なる複数の光波を合波する偏波合成モジュールにおいて、
偏波合成に使用される複数の光学部品を有し、
該光学部品の全部が1つの該位置決め部材上に配置されていることを特徴とする偏波合成モジュール。
【請求項5】
請求項4に記載の偏波合成モジュールにおいて、波長が異なる複数の光波毎に、各々偏波合成を行うことを特徴とする偏波合成モジュール。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の偏波合成モジュールにおいて、該光学部品を収容する筐体を備え、該筐体の底面には、少なくとも2つの平行でない側面を有する段差を有し、前記2つの側面が交わる段差部分には、当該交わる段差部分を含む切取り部分を有しており、該位置決め部材は、前記2つの側面に接するように配置されていることを特徴とする偏波合成モジュール。
【請求項7】
請求項4乃至6のいずれかに記載の偏波合成モジュールにおいて、前記第2のプレートには、複数の光学部品を位置決めするための側面を有することを特徴とする偏波合成モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置決め部材及びそれを用いた偏波合成モジュールに関し、特に、光学部品の位置決めを行う位置決め部材と、偏波合成に使用される複数の光学部品が当該位置決め部材上に配置されている偏波合成モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信分野や光計測分野において、複数の光波を偏波面が異なるように合波する偏波合成モジュールが利用されている。このような偏波合成モジュールでは、複数の光学部品で空間光学系を形成するため、1つの位置決め部材上に全ての光学部品を固定配置することが行われている。
【0003】
従来の偏波合成モジュールでは、特許文献1に示すように、1つの半波長板や1つの偏光ビームスプリッタ(PBS)を組み合わせて配置する際に、ベース板上に突出部材を配置し、該突出部材を挟んで、半波長板とPBSとを対向配置することが行われている。
【0004】
近年では、複数の異なる波長を用いた光変調器も提案されており、例えば、変調速度400Gbpsの2波長型光変調器も提案されている。このような広帯域の変調器では、2つの偏波合成光学系を並列に配置した構成が採用されている。各偏波合成光学系を構成する波長板(水晶)、偏波合成素子(PBC)及びビームシフターは、互いの位置や角度の関係のほか、他の光学部品との位置や角度の関係を正確に位置決めする必要がある。
【0005】
特許文献1に記載の技術を用いると、波長板とPBCの実装時の平行度は正確に決定することができる。しかしながら、光軸に垂直な方向での位置決めが困難であった。また、ビームシフターを含めた多くの光学部品を正確に位置決め(角度決めを含む)することも、困難であった。
【0006】
これに対し、位置決め部材として、複数の薄型金属プレートを積層した積層体を用いたものが提案されている。薄型金属プレートは、厚みが0.1~1mm程度のSUS304などの金属板であり、フォトレジストで形成したパターンとエッチング技術とを用いて、自由なパターン形状の金属プレートを形成することが可能である。
【0007】
互いに異なるパターンを有する複数の金属プレートを積層し、全体を圧着加熱することで、積層体全体を一体化することできる。各金属プレートの上面や金属プレートの側面を使用することで、積層体上に光学部品の位置決めができる位置決め部材を構成することが可能となる。
【0008】
金属プレートの側面を利用して光学部品の位置決めする際には、少なくとも平行でない2つの側面を使用して位置決めを行うことが必要となる。しかしながら、2つの側面が交わる部分の形状は、平面視した際に、2つの直線が交わるような鋭利な形状となはならず、エッチングの影響で丸みを帯びた形状となり易い。
【0009】
これに対し、水晶や石英等の結晶材料から構成される光学部品は、角部分が鋭利であり、上述した金属プレートを用いた位置決め部材に光学部品を配置すると、2つの側面が交差する部分に光学部品の角部分が突き当ることとなる。その結果、「浮き」や「傾き」と呼ばれるプレートの側面から光学部品が離れる現象が発生し、正確な位置決めが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、複数の光学部品を正確に位置決めすることができる位置決め部材を提供することである。さらに、当該位置決め部材を用いて、複数の光学部品を正確に位置決めでき、精度の高い空間光学系を備えた偏波合成モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の位置決め部材やそれを用いた偏波合成モジュールは、以下の技術的特徴を有する。
(1) 複数の光学部品を位置決めする位置決め部材であり、厚みが0.1~1mmの薄型金属プレートを複数積層した積層体を備え、該積層体を構成する第1のプレートの上面と前記第1のプレートよりも上側に配置された第2のプレートの側面により各光学部品の位置決めを行う位置決め部材において、該光学部品を位置決めする前記第2のプレートの2つの平行でない側面が交わる部分には、当該交わる部分を含み、かつ前記2つの平行でない側面の一方のみに形成される切取り部分を備えており、該切取り部分が形成された側面と該切取り部分とで形成される角部分は曲率を持つ形状であることを特徴とする位置決め部材である。
(2) 上記(1)に記載の位置決め部材において、異なる該光学部品が該積層体を構成する異なるプレートの上面に各々配置されていることを特徴とする。
(3) 上記(1)又は(2)に記載の位置決め部材において、該切取り部分の形状はU字状であることを特徴とする。
【0013】
(4) 上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の位置決め部材を備え、偏波面が異なる複数の光波を合波する偏波合成モジュールにおいて、偏波合成に使用される複数の光学部品を有し、該光学部品の全部が1つの該位置決め部材上に配置されていることを特徴とする偏波合成モジュールである。
【0014】
(5) 上記(4)に記載の偏波合成モジュールにおいて、波長が異なる複数の光波毎に、各々偏波合成を行うことを特徴とする。
【0015】
(6) 上記(4)又は(5)に記載の偏波合成モジュールにおいて、該光学部品を収容する筐体を備え、該筐体の底面には、少なくとも2つの平行でない側面を有する段差を有し、前記2つの側面が交わる段差部分には、当該交わる段差部分を含む切取り部分を有しており、該位置決め部材は、前記2つの側面に接するように配置されていることを特徴とする。
【0016】
(7) 上記(4)乃至(6)のいずれかに記載の偏波合成モジュールにおいて、前記第2のプレートには、複数の光学部品を位置決めするための側面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、複数の光学部品を位置決めする位置決め部材であり、厚みが0.1~1mmの薄型金属プレートを複数積層した積層体を備え、該積層体を構成する第1のプレートの上面と前記第1のプレートよりも上側に配置された第2のプレートの側面により各光学部品の位置決めを行う位置決め部材において、該光学部品を位置決めする前記第2のプレートの2つの平行でない側面が交わる部分には、当該交わる部分を含む切取り部分を備えており、該切取り部分が形成された側面と該切取り部分とで形成される角部分は曲率を持つ形状であるため、光学部品の角部が該切取り部分に入り込むため、光学部品が第2のプレートの側面から離れるような「浮き」や「傾き」を生じることが無い。それによって、複数の光学部品を位置決め部材上に正確に配置することが可能な位置決め部材を提供することができる。
【0018】
さらに、上述した位置決め部材を使用して偏波合成モジュールを構成することで、偏波合成に使用される複数の光学部品を正確に位置決めでき、精度の高い空間光学系を備えた偏波合成モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明が適用される偏波合成モジュールの一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の位置決め部材に配置された光学部品を示す平面図である。
【
図3】本発明の位置決め部材の一例を示す斜視図である。
【
図4】本発明の位置決め部材を備えた偏波合成モジュールの一部を示す平面図である。
【
図5】凹状の切取り部分の他の形状を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の位置決め部材及びそれを用いた偏波合成モジュールについて、好適例を用いて詳細に説明する。
まず、本発明が適用される偏波合成モジュールの一例について、
図1を用いて説明する。
図1は、光変調素子2から出射される4つの信号光を、各々波長毎に偏波合成し、2つの波長の偏波合成光(a,b)を出力するための光学系を示している。
【0021】
光変調素子2から出射される4つの信号光は、4つのレンズが配置されたレンズアレー3により平行光となる。中央側の2つの信号光は、波長板4により偏波面が約90度回転される。51及び52は偏波合成素子(PBC)であり、波長板4を通過した信号光と波長板4を通過しない信号光とを偏波合成している。偏波合成された信号光は、ビームシフター(61,62)を通過して、筐体1の外部に導出される。筐体1には信号光が通過する貫通孔が設けられ、筐体1に台座(71,72)により保持されたコリメータレンズ(81,82)でビーム成形されて、不図示の光ファイバ等に導入される。
【0022】
本発明の位置決め部材は、
図2及び3に示すように、光学部品である波長板4、偏波合成素子51及び52、ビームシフター61及び62を位置決めする位置決め部材であり、複数の薄型金属プレート(91~93)を積層した積層体を備え、該積層体を構成する第1のプレート(例えば92)の上面と前記第1のプレートよりも上側に配置された第2のプレート(例えば93)の側面により該光学部品の位置決めを行う位置決め部材において、該光学部品を位置決めする前記第2のプレートの2つの平行でない側面(例えば、DとC,EとF)が交わる部分には、当該交わる部分を含む切取り部分(A)を備えていることを特徴とする。
【0023】
図3に示すように、位置決め部材はSUS304等の薄型金属プレート(91~93)を積層して構成され、各薄型金属プレートの厚みは0.1~1mm程度である。
図3では3枚の金属プレートを積層しているが、本発明は、これらに限定されるものではない。各層の金属プレートは、フォトレジストを用いたエッチング等により、任意の形状を備えることが可能である。
【0024】
複数の薄型金属プレート(91~93)は、積層され、圧着加熱により接合され、一体化される。積層する際に符号Gに示すような位置決めマークを設けたり、積層された金属プレートの側面(例えば、符号Gの位置)を溶接等で強固に結合することも可能である。
【0025】
また、光学部品が大きい場合、側面を形成する金属プレートは1枚ではなく、同じパターンの金属プレートを複数枚重ね合わせ、全体を圧着加熱することで側面を形成してもよい。こうすることで側面の面積を大きくできるため、光学部品の位置合わせが容易になるとともに位置精度を向上することができる。
【0026】
各光学部品は、例えば、金属プレート91を第1のプレート、金属プレート92を第2のプレートとした場合、第1のプレートである金属プレート91の上面と、第2のプレートである金属プレート92の側面Bを使用して位置決めされる。また、金属プレート92を第1のプレート、金属プレート93を第2のプレートとした場合、第1のプレートである金属プレート92の上面と、第2のプレートである金属プレート93の側面(C,D,E,F)を使用して位置決めされる。当然、金属プレート91を第1のプレートとし、金属プレート93を第2のプレートとすることも可能である。
【0027】
本発明の特徴の一つは、位置決めに使用される第2のプレートの2つの側面、例えば、金属プレート93の側面CとD,又は同じ金属プレートの側面EとFに関し、互いの側面を延長して交差する部分には、当該交わる部分を含む、凹状の切取り部分Aが設けられていることである。切取り部分Aの形状は、
図2及び3に示すように、U字状の丸みを帯びた形状に限定されず、例えば、
図5の符号Kのような矩形状等であっても良い。ただし、矩形状のような直線的な形状の組合せは、金属プレートの成形時に直線の交点である角に丸みが発生し易いため、予めU字状に丸みを帯びた形状の方が、より正確に成形することが可能である。
【0028】
特に、
図3に示すように側面CとDのうち一方の側面(この場合は側面D)のみにU字状の切取り部分を設ける場合、他方の側面(側面C)と光学部品が接触する長さや面積が大きくなるため光学部品をより安定に精度よく固定することができる。
【0029】
また、
図3における側面Dと切取り部分Aとで形成される角部分13には加工やハンドリングによる変形が発生しやすい。このような変形は光学部品の位置決め精度を低下させる要因となるため、角部分の角度は、平面視した際に90度以上とすることが望ましい。また当該角部分を角とせず曲率を持つ形状としてもよい。
【0030】
また、位置決め部材の側面には、直線部分が多いことから、U字状の切取り部の方が、目立ち易く、光学部品の取り付け作業の作業効率が高い。例えば、光学部品を取り付ける際に、U字状部分を探し、U字状部分に光学部品の角部が来るように配置するだけで、簡単に位置決めを行うことができる。
【0031】
図1で示した偏波合成モジュールに使用する光学部品を、
図3の位置決め部材上に配置した様子(平面図)を、
図2に示す。波長板4は、金属プレート91の上面と金属プレート92の側面Bで位置決めされる。当然、後述するPBCの位置決めと同様に、2つの側面を用いた位置決めを採用することも可能である。
【0032】
PBC(51,52)は、金属プレート92の上面と金属プレート93の側面(CとD)によって位置決めされている。また、ビームスプリッタ(61,62)は、金属プレート92の上面と金属プレート93の側面(EとF)によって位置決めされている。位置決め部材上に配置された光学部品は、不図示の接着剤等で各金属プレートに固定される。
【0033】
次に、
図2のように光学部品を位置決め部材上に配置したものを、
図4に示すように、筐体1内の所定の位置に配置する方法について説明する。
光学部材を載せた位置決め部材は符号9で示されている。筐体1の内側の底面は、光変調素子2などを配置する部分12と、位置決め部材9を配置する部分10との間には、段差11が形成されている。
【0034】
位置決め部材9の筐体1内での位置決めは、段差11の設けられた、少なくとも2つの平行でない側面(IとJ)に、位置決め部材9を当接させて行う。この場合も
図2及び3と同様に、2つの側面(IとJ)が交わる段差部分には、当該交わる段差部分を含む切取り部分Hを設けることが好ましい。
【0035】
切取り部分Hの形状としては、
図5に示すように、2つの側面(IとJ)から矩形状Kのような構成も採用できる。ただし、筐体1の内面は、切削機で削り出す方法で形成されるため、矩形状の凹部よりも、
図4のようなU字状の凹部の方が形成し易い。
【0036】
また、
図4に示すように側面IとJのうち一方の側面(この場合は側面I)のみにU字状の切取り部分を設ける場合、他方の側面(側面J)と光学部品が接触する長さや面積が大きくなるため光学部品をより安定に精度よく固定することができる。
【0037】
図4における側面Iと切取り部分Hとで形成される角部分には加工やハンドリングによる変形が発生しやすい。このような変形は光学部品の位置決め精度を低下させる要因となるため、角部分の角度は、平面視した際に90度以上とすることが望ましい。また当該角部分を角とせず曲率を持つ形状としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上説明したように、本発明によれば、複数の光学部品を正確に位置決めすることができる位置決め部材を提供することができる。また、当該位置決め部材を用いて、複数の光学部品を正確に位置決めでき、精度の高い空間光学系を備えた偏波合成モジュールを提供することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 筐体
2 光変調素子
3 偏光板
4 波長板
51,52 偏光合成フィルタ(PBC)
61,62 ビームスプリッタ
71,72 台座
81,82 コリメータ用レンズ
91~93 薄型金属プレート
A 切取り部
B~F 金属プレートの側面
H 切取り部分