(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、及びその硬化物、並びに光学成型材、レンズ、カメラモジュール
(51)【国際特許分類】
C08F 220/18 20060101AFI20220802BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
C08F220/18
G02B1/04
(21)【出願番号】P 2018081508
(22)【出願日】2018-04-20
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】松村 一成
(72)【発明者】
【氏名】加門 良啓
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健
(72)【発明者】
【氏名】井上 一真
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-023678(JP,A)
【文献】特開平04-164910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00 - 220/70
G02B 1/00 - 1/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される(メタ)アクリレート(A)、ウレタン構造を有さない脂環式(メタ)アクリレート(B)、及び重合開始剤(C)を含有する硬化性樹脂組成物。
【化1】
(式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を示す。Zは式(2)及び式(3)を構成単位とする繰り返し構造、又は式(2)及び式(4)を構成単位とする繰り返し構造を示し、式(3)又は式(4)で表される構成単位を式(1)中に4~50質量%未満含む。式(3)中、R
2及びR
3のいずれか一方は水素原子を示し、もう一方は炭素数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。式(4)中、R
4及びR
5は、それぞれ独立して炭素数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。)
【請求項2】
前記(メタ)アクリレート(A)及び(メタ)アクリレート(B)以外の(メタ)アクリレート(D)を含有する請求項1記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリレート(A)、(メタ)アクリレート(B)、並びに前記(メタ)アクリレート(A)及び(メタ)アクリレート(B)以外の(メタ)アクリレート(D)の合計100質量%に対して、(A)成分が5~95質量%、(B)成分が5~95質量%、(D)成分が50質量%以下であり、(A)、(B)及び(D)成分の合計量100質量部に対して、前記重合開始剤(C)を0.05~10質量部含有する、請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物。
【請求項5】
請求項4に記載の硬化物からなる光学成型材。
【請求項6】
請求項5に記載の光学成型材を含むレンズ。
【請求項7】
請求項6に記載のレンズを含むカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂組成物、及びその硬化物、並びに光学成型材、レンズ、カメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル用カメラ等に使用される小型カメラモジュールでは、高アッベ数のレンズと低アッベ数のレンズを複数枚組み合わせたレンズユニットを用いることで色収差を解消している。レンズ材料としては、易成型でコストにも優れることから、熱可塑性樹脂が用いられることが多い。例えば、高アッベ数レンズ用の材料としては、シクロオレフィン樹脂等が採用されている。
【0003】
一方で、レンズ等の光学成型材は、小型化や微細形状化、耐はんだリフロー化が求められるようになっており、「硬化性樹脂組成物」をレンズ材料に適応する検討が進められている。硬化性樹脂組成物は、低粘度であるため金型への浸入性に優れ、架橋構造の形成によってリフロー時の熱で溶融しない。
【0004】
例えば、特許文献1には、数平均分子量400以上のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、炭素数6以上の脂環式炭化水素基がエステル結合した(メタ)アクリレート化合物、(メタ)アクリル酸又は極性基を有する(メタ)アクリレート化合物並びにラジカル重合開始剤を含む組成物の硬化物が、透明性や耐熱性に優れるため、光学分野のレンズとして有用であることが開示されている。
【0005】
特許文献2には、アルコキシシラン構造を有する(メタ)アクリル系重合性単量体と、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系重合性単量体と、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートを含有する硬化性樹脂組成物の硬化物の耐熱性が高く、吸水性が低いため、レンズ等の光学部材に適していることが開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、分岐構造を有するポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート及び、(メタ)アクリロイルオキシ基を2個以上有するウレタンポリ(メタ)アクリレート及び/又はエポキシポリ(メタ)アクリレートを含有する注型重合用樹脂組成物が、可撓性及び低吸水性をバランス良く具備するポリマーを与えるため、レンズ等の光学部材に有用であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開2011/016356号パンフレット
【文献】国際公開2011/087008号パンフレット
【文献】特開平4-164910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び2の硬化性樹脂組成物に含まれる数平均分子量400以上のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートやポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートは、低温で固化しやすいため、組成物の保管安定性に課題がある。また、特許文献3の硬化性樹脂組成物は、硬化物の着色や光学特性(屈折率、アッベ数)に課題がある。
【0009】
本発明は透明性、屈折率及びアッベ数が高く、着色の小さい硬化物が得られ、低温の保管安定性に優れる硬化性樹脂組成物、及びその硬化物、並びに光学成型材、レンズ、カメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、下記式(1)で表される(メタ)アクリレート(A)、ウレタン構造を有さない脂環式(メタ)アクリレート(B)、及び重合開始剤(C)を含有する硬化性樹脂組成物が提供される。この硬化性樹脂組成物は、前記(メタ)アクリレート(A)及び(メタ)アクリレート(B)以外の(メタ)アクリレート(D)を含有してもよい。
【0011】
【化1】
(式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を示す。Zは式(2)及び式(3)を構成単位とする繰り返し構造、又は式(2)及び式(4)を構成単位とする繰り返し構造を示し、式(3)又は式(4)で表される構成単位を式(1)中に4質量%以上50質量%未満含む。式(3)中、R
2及びR
3のいずれか一方は水素原子を示し、もう一方は炭素数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。式(4)中、R
4及びR
5は、それぞれ炭素数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。)
【0012】
本発明の一態様によれば、前記(メタ)アクリレート(A)、(メタ)アクリレート(B)、並びに前記(メタ)アクリレート(A)及び(メタ)アクリレート(B)以外の(メタ)アクリレート(D)の合計100質量%に対して、(A)成分が5~95質量%、(B)成分が5~95質量%、及び(D)成分が50質量%以下であり、(A)、(B)及び(D)成分の合計量100質量部に対して、前記重合開始剤(C)を0.05~10質量部含有する上記の硬化性樹脂組成物が提供される。
【0013】
本発明の一態様によれば、上記の硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物が提供される。
【0014】
本発明の一態様によれば、上記の硬化物からなる光学成型材が提供される。
【0015】
本発明の一態様によれば、上記の光学成型材を含むレンズが提供される。
【0016】
本発明の一態様によれば、上記のレンズを含むカメラモジュールが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明は透明性、屈折率及びアッベ数が高く、着色の小さい硬化物が得られ、低温の保管安定性に優れる硬化性樹脂組成物、及びその硬化物、並びに光学成型材、レンズ、カメラモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の硬化物からなるカメラレンズを備えたカメラモジュールの一実施形態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の総称、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の総称である。「(メタ)アクリロイル基」は「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の総称であり、CH2=C(R)-C(=O)-(Rは水素原子又はメチル基)で表される基である。
また、「モノマー単位」とは、重合体を構成する繰り返し単位を意味する。
【0020】
<硬化性樹脂組成物>
本発明の硬化性樹脂組成物は、下記式(1)で表される(メタ)アクリレート(A)、ウレタン構造を有さない脂環式(メタ)アクリレート(B)、重合開始剤(C)を含有する。
【0021】
【化2】
(式(1)中、R
1は水素原子又はメチル基を示す。Zは式(2)及び式(3)を構成単位とする繰り返し構造、又は式(2)及び式(4)を構成単位とする繰り返し構造を示し、式(3)又は式(4)で表される構成単位を式(1)中に4質量%以上50質量%未満含む。式(3)中、R
2及びR
3のいずれか一方は水素原子を示し、もう一方は炭素数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。式(4)中、R
4及びR
5は、それぞれ独立して炭素数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示す。)
なお、本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)及び(B)成分以外の(メタ)アクリレート(D)を含有してもよい。以下、各成分について順番に説明する。
【0022】
[(A)成分]
(A)成分は、前記式(1)で表される(メタ)アクリレートであり、本発明の硬化物のアッベ数を高める成分である。式(1)中のZ部分に分岐構造のアルキレングリコール基を有することで、硬化性樹脂組成物の低温における保管安定性と、硬化物の高いアッベ数を両立することができる。
【0023】
式(3)中のR2、R3で表される炭素数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、1-ペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、2-メチル-1-ブチル基、2-メチル-2-ブチル基、3-メチル-1-ブチル基、3-メチル-2-ブチル基、t-アミル基、1-ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2,3-ジメチル-2-ブチル基、3,3-ジメチル-1-ブチル基、3,3-ジメチル-2-ブチル基、2-エチル-1-ブチル基、2-メチル-1-ペンチル基、2-メチル-2-ペンチル基、2-メチル-3-ペンチル基、3-メチル-1-ペンチル基、3-メチル-2-ペンチル基、3-メチル-3-ペンチル基、4-メチル-1-ペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基等を示す。このうち、原料入手の容易性から、R2及びR3のいずれか一方が水素原子であり、もう一方がメチル基であるものが好ましい。
【0024】
式(4)中、R4及びR5は、それぞれ独立して炭素数1~6の直鎖状又は分岐状のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、1-ペンチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、2-メチル-1-ブチル基、2-メチル-2-ブチル基、3-メチル-1-ブチル基、3-メチル-2-ブチル基、t-アミル基、1-ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2,3-ジメチル-2-ブチル基、3,3-ジメチル-1-ブチル基、3,3-ジメチル-2-ブチル基、2-エチル-1-ブチル基、2-メチル-1-ペンチル基、2-メチル-2-ペンチル基、2-メチル-3-ペンチル基、3-メチル-1-ペンチル基、3-メチル-2-ペンチル基、3-メチル-3-ペンチル基、4-メチル-1-ペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基等を示し、同じアルキル基でも異なるアルキル基でもよい。このうち、原料入手の容易性から、R4及びR5がいずれもメチル基であるか、又はR4及びR5のうちいずれか一方がエチル基であり、もう一方がn-ブチル基であるものが好ましい。
【0025】
なお、式(1)において、式(2)及び式(3)を構成単位とする繰り返し構造とは、式(2)だけを構成単位とする繰り返し構造と式(3)だけを構成単位とする繰り返し構造との結合、1個の式(2)と1個の式(3)とを構成単位とする繰り返し構造の結合、1個の式(2)と2個以上の式(3)とを構成単位とする繰り返し構造の結合、2個以上の式(2)と1個の式(3)とを構成単位とする繰り返し構造の結合、2個以上の式(2)と2個以上の式(3)とを構成単位とする繰り返し構造の結合、それらの結合の更なる結合等のことである。式(2)及び式(4)を構成単位とする繰り返し構造についても、式(2)及び式(3)を構成単位とする繰り返し構造と同様である。
【0026】
式(1)で表される(メタ)アクリレートは、式(5)で表されるジオールを原料とし、その両末端の水酸基を(メタ)アクリレートとすることによって製造することができる。
【0027】
【0028】
式(5)中、Zは式(2)及び式(3)を構成単位とする繰り返し構造、又は式(2)及び式(4)を構成単位とする繰り返し構造を示し、式(3)又は式(4)で表される構成単位を式(5)中に4質量%以上50質量%未満含む。
【0029】
式(5)で表されるジオールのうち、Zが式(2)及び式(3)を構成単位とする繰り返し構造で示されるものは、1,4-テトラメチレングリコールあるいはその閉環体であるテトラヒドロフランと、2-アルキル-1,4-テトラメチレングリコールあるいはその閉環体である2-アルキルテトラヒドロフランとをランダム共重合することによって製造することができる。
【0030】
式(5)で表されるジオールのうち、Zが式(2)及び式(4)を構成単位とする繰り返し構造で示されるものは、1,4-テトラメチレングリコールあるいはその閉環体であるテトラヒドロフランと、2,2-ジアルキル-1,3-プロピレングリコールあるいはその閉環体である2,2-ジアルキルオキセタンとをランダム共重合することによって製造することができる。
【0031】
式(1)で表される(メタ)アクリレートのうち、式(3)又は式(4)の構成単位の割合は、4質量%以上50質量%未満であり、好ましくは6質量%以上40質量%以下、より好ましくは8質量%以上30質量%以下である。式(3)又は式(4)の構成単位の割合が4質量%以上であることにより、低温で結晶化を起こしにくい(メタ)アクリレートとなる。式(3)又は式(4)の構成単位の割合が50質量%未満であることにより、柔軟性のある(メタ)アクリレートとなる。式(1)で表される(メタ)アクリレート中に含まれる式(3)又は式(4)の構成単位の割合は、式(5)で表されるジオールを製造する際にランダム共重合させる各成分の使用量を調整することによって、4質量%以上50質量%未満にすることができる。
【0032】
(A)成分の数平均分子量は、500~5000であることが好ましい。分子量をこの範囲とすることで、他の成分との相溶性が良好となり、また硬化物の屈折率、アッベ数が良好となる。
【0033】
(A)成分の含有量は、(A)及び(B)成分の合計量100質量%、さらに(D)成分を含有する場合は、それらの合計量100質量%に対して、5~95質量%が好ましく、15~85質量%より好ましく、25~75質量%がさらに好ましい。(A)成分の含有量が多いほど硬化物の着色が小さくなり、少ないほど硬化性樹脂組成物の低温保管安定性が良くなる傾向ある。
本発明では、(A)成分の含有量を5~95質量%とすることで、硬化物のアッベ数をより高くすることができる。
【0034】
[(B)成分]
(B)成分は、ウレタン構造を有さない脂環式(メタ)アクリレートであり、本発明の硬化物の屈折率を高める成分である。(B)成分は、単官能であってもよいし、多官能であってもよい。(B)成分は、ウレタン構造を有さないことで、硬化物の屈折率を高く、着色を小さくすることができる。ウレタン構造を有さない脂環式(メタ)アクリレートとしては、ウレタン構造を有さない炭素原子数3~20の脂環構造を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。炭素原子数3~20の脂環構造としては、炭素原子数3~20の炭素原子を有する、飽和若しくは不飽和単環式又は飽和多環式脂肪族基等が挙げられ、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、アダマンチル、トリシクロデカン、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル等が挙げられる。
【0035】
(B)成分の具体例としては、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、(1R)-フェンチル(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ノルボルナンジメタノールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
(B)成分としては、屈折率及びアッベ数の点から、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0037】
(B)成分の含有量は、(A)及び(B)成分の合計量100質量%、さらに(D)成分を含有する場合は、それらの合計量100質量%に対して、5~95質量%が好ましく、15~85質量%より好ましく、25~75質量%がさらに好ましい。(B)成分の含有量は多いほど、硬化性樹脂組成物の低温保管安定性が良くなり、少ないほど硬化物のアッベ数が高くなる傾向ある。
本発明では、(B)成分の含有量を5~95質量%とすることで、硬化物の屈折率をより高くすることができる。
【0038】
[(C)成分]
(C)成分である重合開始剤としてはラジカル重合開始剤が挙げられ、例えば光重合開始剤、熱重合開始剤、レドックス重合に用いられる過酸化物等が挙げられる。重合開始剤(C)の種類は重合方法に応じて適宜選択することができる。
【0039】
光重合開始剤は光重合に用いられるラジカル重合開始剤である。光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン型化合物、アントラキノン型化合物、アルキルフェノン型化合物、チオキサントン型化合物、アシルフォスフィンオキサイド型化合物、フェニルグリオキシレート型化合物等が挙げられる。
【0040】
ベンゾフェノン型化合物としては、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4-フェニルベンゾフェノン等が挙げられ、
アントラキノン型化合物としては、t-ブチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン等が挙げられ、
アルキルフェノン型化合物としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン等が挙げられる。
【0041】
チオキサントン型化合物としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン等が挙げられ、
アシルフォスフィンオキサイド型化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等が挙げられ、
フェニルグリオキシレート型化合物としては、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等が挙げられる。
【0042】
これら光重合開始剤の中でも、硬化物が着色するのを抑制できる点で、アルキルフェノン型化合物が好ましく、その中でも特に2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましい。また、硬化物の内部まで十分に硬化しやすくなる点ではアシルフォスフィンオキサイド型化合物が好ましく、その中でも特に、硬化物の着色を抑制できる点で、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドが好ましい。
これら光重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
熱重合開始剤は熱重合に用いられるラジカル重合開始剤であり、熱重合開始剤としては例えば有機過酸化物、アゾ化合物等が挙げられる。
【0044】
有機過酸化物の具体例としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート及びパーオキシエステル等が挙げられる。
ケトンパーオキサイドとしては、メチルエチルケトンパーオキサイド等が挙げられ、
パーオキシケタールとしては、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等が挙げられ、
ハイドロパーオキサイドとしては、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド等が挙げられ、
ジアルキルパーオキサイドとしては、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド等が挙げられ、
ジアシルパーオキサイドとしては、ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等が挙げられ、
パーオキシジカーボネートとしては、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート等が挙げられ、
パーオキシエステルとしては、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等が挙げられる。
【0045】
アゾ化合物の具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス-1-シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリック酸、2,2’-アゾビス-(2-アミジノプロパン)ジハイドロクロライド等が挙げられる。
これら熱重合開始剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
熱重合開始剤としては、硬化物に気泡が生じにくい点で、有機過酸化物が好ましい。硬化性樹脂組成物の硬化時間とポットライフのバランスを考慮すると、有機過酸化物の10時間半減期温度は35℃~80℃の範囲にあることが好ましく、より好ましくは40~75℃であり、さらに好ましくは45℃~70℃である。10時間半減期温度が35℃以上であれば、常温で硬化性樹脂組成物がゲル化しにくくなり、ポットライフが良好となる。一方、10時間半減期温度が80℃以下であれば、硬化性樹脂組成物の硬化時間を短縮できる。このような有機過酸化物としては、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(市販品としては、日油株式会社製の「商品名:パーオクタO」、10時間半減期温度=65.3℃)、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(市販品としては、日油株式会社製の「商品名:パーブチルO」、10時間半減期温度=72.1℃)、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(市販品としては、日油株式会社製の「商品名:パーロイルTCP」、10時間半減期温度=40.8℃)等が好ましい例として挙げられる。
【0047】
レドックス重合に用いられる過酸化物としては、例えばジベンゾイルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これら過酸化物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、レドックス重合には、通常、レドックス系重合開始剤が用いられる。レドックス系重合開始剤は、過酸化物と還元剤とを併用した重合開始剤である。上述した過酸化物をレドックス系重合開始剤として使用する場合、還元剤との組み合わせの一例は以下の通りである。
(1)ジベンゾイルパーオキサイド(過酸化物)と、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジン等の芳香族3級アミン類(還元剤)との組み合わせ。
(2)ハイドロパーオキサイド(過酸化物)と金属石鹸類(還元剤)との組み合わせ。
(3)ハイドロパーオキサイド(過酸化物)とチオ尿素類(還元剤)との組み合わせ。
【0048】
(C)成分の含有量は、(A)及び(B)成分の合計100質量部、さらに(D)成分を含有する場合は、それらの合計100質量部に対して、0.05~10質量部が好ましく、0.1~5質量部が好ましく、0.2~3質量部がより好ましい。(C)成分の含有量は多いほど、硬化性樹脂組成物の硬化性が良好となり少ないほど硬化物の透明性が良好となる傾向がある。
【0049】
[(D)成分]
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂組成物の粘度や、硬化物の硬度、ガラス転移点の調整の目的で、さらに(D)成分として、(A)及び(B)成分以外の(メタ)アクリレートを含有してもよい。(D)成分は、単官能であってもよいし、多官能であってもよい。
【0050】
単官能の(D)成分の具体例としては、カルボキシル基を含有する(メタ)アクリレート、水酸基を有する(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、芳香環構造を含有する(メタ)アクリレート、ヘテロ環構造を含有する(メタ)アクリレート、アルコキシ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
【0051】
カルボキシル基を含有する(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸、コハク酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、マレイン酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、フタル酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル等が挙げられる。
【0052】
水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0053】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0054】
芳香環構造を含有する(メタ)アクリレートとしては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェニルフェニル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、(1-ナフチル)メチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
ヘテロ環構造を含有する(メタ)アクリレートとしては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン等が挙げられ、
アルコキシ(メタ)アクリレートとしては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
上記以外の単官能の(D)成分として、さらに、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート及びヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0057】
多官能の(D)成分の具体例としては、2~6官能の(メタ)アクリレートを挙げることができる。2官能の(メタ)アクリレートとしては、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0058】
アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0059】
また上記以外の2官能の(メタ)アクリレートとしては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリカーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス(4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)フルオレン、ウレタンジ(メタ)アクリレート等の2官能の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0060】
3官能の(メタ)アクリレートとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス((メタ)アクロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられ、
4官能の(メタ)アクリレートとしては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられ、
5官能の(メタ)アクリレートとしては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられ、
6官能の(メタ)アクリレートとしては、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0061】
また、(D)成分としては、ラジカル重合性基を有するシルセスキオキサン化合物等のラジカル重合性基を有するオルガノポリシロキサンも挙げられる。ラジカル重合性基を有するシルセスキオキサン化合物は、分子内にラジカル重合性基を有するアルコキシシラン化合物等を縮合反応する方法等で得られる。ラジカル重合性基を有するアルコキシシラン化合物としては、例えば3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン等が挙げられる。(A)成分及び(B)成分との相溶性や共重合性に優れる観点から、アルコキシシラン化合物のラジカル重合性基としては(メタ)アクリロイル基が好ましく、したがって、ラジカル重合性基を有するアルコキシシラン化合物としては、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
【0062】
ラジカル重合性基を有するラジカル重合性基を有するオルガノポリシロキサン化合物としては市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製の「商品名:AC-SQTA-100」、「商品名:AC-SQ SI-20」、「商品名:MAC-SQ TM-100」、「商品名:MAC-SQ SI-20」等のラジカル重合性基を有するシルセスキオキサン化合物が挙げられる。
【0063】
(D)成分の含有量は、(A)、(B)及び(D)成分の合計100質量%に対して、50質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましく、40質量%以下であることがさらに好ましい。(D)成分の含有量は、少ないほど、本発明の効果を損なわずに、硬化性樹脂組成物の粘度や、硬化物の硬度、ガラス転移点の調整を行うことができる。
【0064】
[その他の成分]
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、前記(A)~(D)成分以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、連鎖移動剤、ゴム、シリカ粒子、ジルコニア、可塑剤、消泡剤、揺変剤、離型剤、充填剤、蛍光体、顔料等が挙げられる。その他の成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
本発明の硬化性樹脂組成物は、酸化防止剤を含有することで、硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性を向上することができ、また、硬化物の酸化による着色を抑制できる。酸化防止剤の具体例としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。
【0066】
フェノール系酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコールビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。
【0067】
リン系酸化防止剤としては、トリエチルホスファイト、トリ(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、トリストリデシルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。
【0068】
硫黄系酸化防止剤としては、ジヘキシルスルフィド、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジトリデシル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステリアル-3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(β-ラウリルチオプロピオネート)等が挙げられる。
【0069】
本発明の硬化性樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有することで、耐候性を向上することができる。紫外線吸収剤の具体例としては、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-オクチルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-デシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4,4’-ジブトキシベンゾフェノン等の2―ヒドロキシベンゾフェノンの誘導体;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジターシャリイブチルフェニル)ベンゾトリアゾール或いはこれらのハロゲン化物;フェニルサリシレート、p-ターシャリイブチルフェニルサリシレート、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0070】
本発明の硬化性樹脂組成物は、連鎖移動剤として多官能チオールを含有することで、硬化性を向上することができる。多官能チオールの具体例としては、1,4-ビス(3-メルカプトプロピオニルオキシ)ブタン、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、トリス-[(3-メルカプトブチリルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトブチレート)等が挙げられる。
【0071】
[硬化性樹脂組成物の製造方法]
硬化性樹脂組成物の製造方法としては、例えば、(A)~(C)成分、必要に応じて(D)成分、その他の成分を撹拌混合する方法が挙げられる。撹拌混合は常温で実施してもよいし、必要に応じて30~100℃に加熱してもよい。
【0072】
[硬化性樹脂組成物の低温保管安定性]
本発明の硬化性樹脂組成物は、輸送時や保管時に低温となる場合があるため、低温で成分の析出がなく、低温保管安定性が優れることが好ましい。低温で成分が析出すると、硬化性樹脂組成物の配合比率が変化するため、硬化物の特性が不安定になり好ましくない。
【0073】
以上説明した本発明の硬化樹脂組成物は、低温の保管安定性に優れ、透明性、屈折率及びアッベ数が高く、着色の小さい硬化物が得られることから、その硬化物は、光学成型材、レンズ、カメラモジュールとして好適である。
【0074】
<硬化物>
本発明の硬化物は、上述の硬化性樹脂組成物を硬化して得ることができる。
硬化物を得る方法としては、例えば、本発明に係る硬化性樹脂組成物を所定の形状としておき、これを硬化させて所定の形状を有する硬化物を得る方法が挙げられる。このようにして所定の形状を有する硬化物を得る方式としては、例えば、硬化性樹脂組成物を型に流し込むキャスティング成形方式、液体樹脂射出成形方式(LIM方式)、トランスファー成形方式等や、硬化性樹脂組成物を塗工するコーティング方式やプリンティング成形方式、ポッティング成形方式等が挙げられる。また、硬化性樹脂組成物を硬化する方法としては、硬化性樹脂組成物に含まれる重合開始剤((C)成分)の種類に応じて、光重合、熱重合及びレドックス重合のいずれかの方法を採用できる。
【0075】
光重合で硬化性樹脂組成物を硬化して硬化物を得る場合、硬化性樹脂組成物に照射する光の波長は特に制限されないが、波長が200~400nmの紫外線を照射することが好ましい。紫外線の光源の具体例としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、UV-LEDランプ、ケミカルランプ、ブラックライト等が挙げられる。硬化性樹脂組成物を光重合した後には、アフターキュアーをさらに行ってもよい。これにより、硬化物中に残存する未反応の(メタ)アクリロイル基の量を減少させることができ、硬化物の強度をより高めることができる。また、光重合開始剤の分解物による着色を退色できる。アフターキュアーの条件としては、70~150℃で0.5~24時間が好ましく、80~130℃で1~15時間がより好ましい。
【0076】
熱重合により硬化性樹脂組成物を硬化して光学部材用樹脂を得る場合、硬化条件は特に限定されないが、着色が抑制された光学部材用樹脂が得られやすい点から、硬化温度は40~150℃が好ましく、60~130℃がより好ましい。LIM方式やトランスファー成形方式等のように、予め加熱された型に硬化性樹脂組成物を注入して成形する場合の硬化時間(加熱時間)は、硬化温度によっても異なるが、例えば硬化温度が100℃の場合、1~180秒が好ましく、1~120秒がより好ましく、1~60秒がさらに好ましい。一方、キャスティング成形方式のように常温の型に硬化性樹脂組成物を注入後、加熱する場合の硬化時間は、硬化温度によっても異なるが、例えば硬化温度が70℃の場合、5分~5時間が好ましく、10分~3時間がより好ましい。
硬化性樹脂組成物を熱重合した後には、アフターキュアーをさらに行うことが好ましい。これにより、硬化物中に残存する未反応の(メタ)アクリロイル基の量を減少させることができ、硬化物の強度をより高めることができる。アフターキュアーの条件としては、50~200℃で0.1~10時間が好ましく、70~150℃で0.2~5時間がより好ましい。
【0077】
レドックス重合により硬化性樹脂組成物を硬化して硬化物を得る場合、レドックス系重合開始剤を用いることで、5~40℃の常温で硬化することができる。得られる硬化物に残存する未反応の(メタ)アクリロイル基の量を減少させることができ、硬化物の強度をより高めることができる点から、硬化温度は15~40℃が好ましい。また、硬化性樹脂組成物がゲル化しにくく、安定的に取り扱える点から、予め還元剤を硬化性樹脂組成物に溶解させておき、これに過酸化物を追加する手順で硬化を実施する方法が好ましい。
【0078】
[硬化物の屈折率(nD)]
硬化物の屈折率(nD)は、1.48以上であることが好ましく、1.49以上であることがより好ましく、1.50以上であることは更に好ましい。硬化物の屈折率が1.48以上であれば、レンズ等の光学成型材に適用した場合に成型材を薄くすることができる。なお、屈折率は、後述する方法により測定される値である。
【0079】
[硬化物のアッベ数]
硬化物のアッベ数は、54以上であることが好ましく、54.5以上であることがより好ましく、55以上であることは更に好ましい。硬化物のアッベ数が54以上であれば、レンズ等の光学成型材に適用した場合に色収差が生じにくくなり、光学設計が容易となる。なお、アッベ数は、後述する方法により測定される値である。
【0080】
<光学成型材>
本発明の光学成型材は、上述の硬化物を成形して作製される。該成形は、硬化性樹脂組成物を硬化した後に行ってもよく、硬化と同時に行ってもよい。
光学成型材としては、例えば、発光ダイオードモジュール、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末、パソコン、カメラ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)デバイス、フラットパネルディスプレイ、タッチパネル、電子ペーパー、フォトダイオード、フォトトランジスタ、太陽電池、プロジェクター、自動車等に使用されるレンズ、光回折格子、フィルム、シート、光導波路、封止材、接着剤、反射材、波長変換材、硝子繊維強化プラスチック等が挙げられる。本発明の光学成型材は、高いアッベ数及び高いガラス転移点を有するため、カメラレンズ等のレンズとして特に有用である。
【0081】
<レンズ>
本発明のレンズは、本発明の硬化物を含む。該レンズは、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末、パソコン、デジタルカメラ等の電子機器、自動車のバックカメラ、ドライブレコーダー、運転支援センサー等に備え付けられるカメラモジュールに用いられる。本発明のレンズは、本発明の硬化物のみで構成されてもよいが、平面ガラス、曲面ガラス又はガラスウエハー等の透明基材と、該透明基材の片面又は両面上に形成された本発明の硬化物とからなるハイブリッドレンズであってもよい。
【0082】
レンズの成形方法としては、上下型で硬化性樹脂組成物を挟み込んだ後、加熱又は光照射により樹脂を硬化することでレンズを得るキャスティング方式等が挙げられる。キャスティング方式としては、レンズ個片を1点ずつ成形する方法や、複数のレンズ形状が転写されたウエハーを成形した後、レンズ個片を切り出すウエハーレベル方式等が挙げられる。
【0083】
[カメラモジュール]
本発明のカメラモジュールは、本発明のレンズを含む。
図1に、本発明のカメラモジュールの一例の断面図を示す。
図1に示すカメラモジュール100は、本発明のレンズであるカメラレンズ1a、1b及び赤外線カットフィルター5を備えるレンズホルダー2と、センサーチップ4及びボンディングワイヤ6a、6bを備える基板3とを具備する。基板3上に、レンズホルダー2が積層されている。なお、
図1に示すカメラモジュール100が備えるカメラレンズは2枚であるが、カメラレンズは1枚であってもよいし、3枚以上であってもよい。複数枚のレンズを備える場合、本発明のレンズ以外の樹脂製レンズや、ガラス製のカメラレンズが混在していてもよい。
また、その他の構成のカメラモジュールとしては、ウエハー上に形成された、レンズとイメージセンサーウエハーとの接着積層体をダイシングするウエハーレベル方式によって形成されるカメラモジュールが挙げられる。
【実施例】
【0084】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。以下の記載中、「部」は「質量部」を意味する。
【0085】
<評価方法>
実施例及び比較例における数平均分子量、低温保管安定性、全光線透過率/ヘーズ、YI値、屈折率/アッベ数についての評価は以下の方法で実施した。
【0086】
[数平均分子量]
合成例1~5で得られた化合物を溶剤(テトラヒドロフラン)に溶解し、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィを用いて分子量を測定した。得られた分子量をポリスチレン換算して、数平均分子量を求めた。
【0087】
[低温保管安定性]
得られた硬化性樹脂組成物を0℃で1週間保管し、以下の基準で安定性を評価した。
○:析出物無し。
×:析出物有り。
【0088】
[全光線透過率/ヘーズ]
得られた厚さ1mmの硬化物の全光線透過率及びヘーズをヘーズメーター(村上色彩技術研究所製、HM-150型)で測定し、透明性を評価した。
【0089】
[YI値]
得られた厚さ1mmの硬化物のYI値を分光測色計(コニカミノルタ製、CM-5)で測定し、着色性を評価した。
【0090】
[屈折率/アッベ数]
得られた厚さ1mmの硬化物の屈折率をカルニュー精密屈折計(島津製作所製、KPR-2000)で測定した。測定は、23℃で、中間液にジヨードメタン、モノブロモナフタレン、流動パラフィンの混合液を用いて実施した。
アッベ数は、得られた屈折率から、式(6)を用いて算出した。
アッベ数=(nD-1)/(nF-nC)・・式(6)
但し、nDはフラウンホーファーのD線(589nm)に対する屈折率を示し、nFは、フラウンホーファーのF線(486nm)に対する屈折率を示し、nCは、フラウンホーファーのC線(656nm)に対する屈折率を示す。
【0091】
<合成例>
[合成例1](1,4-テトラメチレングリコールと2-メチル-1,4-テトラメチレングリコールを共重合させた構造で表されるジオール(式(5)で表されるジオールのうち、式(3)で表される構成単位が、R2及びR3のいずれか一方は水素原子であり、もう一方はメチル基であるもの、数平均分子量1000)を原料とするメタクリレート(PBOLM1000)の合成)
精留塔(内径35mm、理論段数20段)、攪拌羽根、温度計及びエアー吹き込み管を付した3Lの5つ口フラスコを準備した。フラスコに、1,4-テトラメチレングリコールと2-メチル-1,4-テトラメチレングリコールを共重合させた構造で表されるジオール(式(5)で表されるジオールのうち、式(3)で表される構成単位が、R2及びR3のいずれか一方は水素原子であり、もう一方はメチル基であるもの、数平均分子量1000)900g、メチルメタクリレート(MMA)1070g、次亜リン酸ナトリウム1.9g及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.5gを入れた。フラスコの内液をエアーバブリング及び攪拌しながら、フラスコをオイルバスで加熱した。内温100~110℃でMMAと水を共沸により抜き出した。カールフィッシャー水分測定装置((株)三菱化学アナリティック製、商品名:CA-21)を用いてフラスコの内液の水分量を分析し、水分量が100ppm以下であることを確認した後、チタン酸テトラ-n-ブチルを10.1g添加した。その後内温100~120℃で塔頂温度が64~66℃の範囲になるように還流比を調整して、MMAとメタノールを共沸により抜き出しながら、反応を実施した。核磁気共鳴装置(日本電子(株)製、商品名:JNM-EX270)を用いて反応液の分析を行い、原料のジオールが検出されないことを確認した後、内温を40℃に下げた。
反応液に水54gと珪藻土116gを加えて1時間攪拌した後、4μmのろ紙を用いて室温にてろ過を行った。得られたろ液を、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、MMAを留去した。残渣にヘキサンを1.2L加えて溶解させた後、10質量%水酸化ナトリウム水溶液100gで洗浄し、500mlの水で3回洗浄した。洗浄後、減圧にして加熱し、ヘキサンを留去した。得られたPBOLM1000は、収量980g、収率96%、であった。NMR測定による解析を行ったところ、PBOLM1000中に式(3)で表される構成単位を14質量%含んでいた。
【0092】
[合成例2](1,4-テトラメチレングリコールと2-メチル-1,4-テトラメチレングリコールを共重合させた構造で表されるジオール(式(5)で表されるジオールのうち、式(3)で表される構成単位が、R2及びR3のいずれか一方は水素原子であり、もう一方はメチル基であるもの、数平均分子量1000)を原料とするアクリレート(PBOLA1000)の合成)
[合成例1]と同様な装置を準備し、フラスコに、1,4-テトラメチレングリコールと2-メチル-1,4-テトラメチレングリコールを共重合させた構造で表されるジオール(式(5)で表されるジオールのうち、式(3)で表される構成単位が、R2及びR3のいずれか一方は水素原子であり、もう一方はメチル基であるもの、数平均分子量1000)900g、メチルアクリレート1550g、次亜リン酸ナトリウム1.9g及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.8gを入れた。以降は[合成例1]と同様に操作し、フラスコの内液の水分量が100ppm以下であることを確認した後、チタン酸テトラ-n-ブチルを10.4g添加した。その後内温80~100℃で塔頂温度が62~64℃の範囲になるように還流比を調整して、メチルアクリレートとメタノールを共沸により抜き出しながら、反応を実施した。核磁気共鳴装置(日本電子(株)製、商品名:JNM-EX270)を用いて反応液の分析を行い、原料のジオールが検出されないことを確認した後、内温を40℃に下げた。
反応液に水54gと珪藻土116gを加えて1時間攪拌した後、4μmのろ紙を用いて室温にてろ過を行った。得られたろ液を、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、メチルアクリレートを留去した。ヘキサンを1.2L加えて溶解させた後、10質量%水酸化ナトリウム水溶液100gで洗浄し、500mlの水で3回洗浄した。洗浄後、減圧にして加熱し、ヘキサンを留去した。得られたPBOLA1000は、収量986g、収率92%であった。NMR測定による解析を行ったところ、PBOLA1000中に式(3)で表される構成単位を14質量%含んでいた。
【0093】
[合成例3](1,4-テトラメチレングリコールとネオペンチルグリコールを共重合させた構造で表されるジオール(式(5)で表されるジオールのうち、式(4)で表される構成単位が、R4及びR5のいずれもメチル基であるもの、数平均分子量1800)を原料とするメタクリレート(PBOLM1800)の合成)
[合成例1]と同様な装置を準備し、フラスコに、1,4-テトラメチレングリコール)とネオペンチルグリコールを共重合させた構造で表されるジオール(式(5)で表されるジオールのうち、式(4)で表される構成単位が、R4及びR5のいずれもメチル基であるもの、数平均分子量1800)900g、MMA650g、次亜リン酸ナトリウム1.1g及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.5gを入れた。以降は、チタン酸テトラ-n-ブチルの添加量を5.6gとした以外は[合成例1]と同様に操作し、原料のジオールが検出されないことを確認した後、内温を40℃に下げた。
反応液に水30gと珪藻土65gを加えて1時間攪拌した後、4μmのろ紙を用いて室温にてろ過を行った。得られたろ液を、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、MMAを留去した。残渣にヘキサンを1.2L加えて溶解させた後、10質量%水酸化ナトリウム水溶液56gで洗浄し、280mlの水で3回洗浄した。洗浄後、減圧にして加熱し、ヘキサンを留去した。得られたPBOLM1800は、収量910g、収率94%、であった。NMR測定による解析を行ったところ、PBOLM1800中に式(4)で表される構成単位を18質量%含んでいた。
【0094】
[合成例4](1,4-テトラメチレングリコールと2-メチル-1,4-テトラメチレングリコールを共重合させた構造で表されるジオール(式(5)で表されるジオールのうち、式(3)で表される構成単位が、R2及びR3のいずれか一方は水素原子であり、もう一方はメチル基であるもの、数平均分子量2000)を原料とするメタクリレート(PBOLM2000)の合成)
[合成例1]と同様な装置を準備し、フラスコに、1,4-テトラメチレングリコール)と2-メチル-1,4-テトラメチレングリコールを共重合させた構造で表されるジオール(式(5)で表されるジオールのうち、式(3)で表される構成単位が、R2及びR3のいずれか一方は水素原子であり、もう一方はメチル基であるもの、数平均分子量2000)900g、MMA600g、次亜リン酸ナトリウム1.9g及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.5gを入れた。以降は、チタン酸テトラ-n-ブチルの添加量を5.0gとした以外は[合成例1]と同様に操作し、原料のジオールが検出されないことを確認した後、内温を40℃に下げた。
反応液に水27gと珪藻土58gを加えて1時間攪拌した後、4μmのろ紙を用いて室温にてろ過を行った。得られたろ液を、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、MMAを留去した。残渣にヘキサンを1.2L加えて溶解させた後、10質量%水酸化ナトリウム水溶液50gで洗浄し、250mlの水で3回洗浄した。洗浄後、減圧にして加熱し、ヘキサンを留去した。得られたPBOLM2000は、収量913g、収率95%、であった。NMR測定による解析を行ったところ、PBOLM2000中に式(3)で表される構成単位を14質量%含んでいた。
【0095】
[合成例5](数平均分子量1000のポリテトラメチレングリコールジメタクリレート(PBOM1000)の合成)
[合成例1]と同様な装置を準備し、フラスコに、ポリテトラメチレングリコール(保土谷化学工業(株)製、商品名PTG1000、数平均分子量1000)600g、メチルメタクリレート(MMA)1150g、次亜リン酸ナトリウム2.5g及びハイドロキノンモノメチルエーテル0.5gを入れた。以降は、チタン酸テトラ-n-ブチルの添加量を5.0gとした以外は[合成例1]と同様に操作し、原料のジオールが検出されないことを確認した後、内温を40℃に下げた。
反応液に水36gと珪藻土75gを加えて1時間攪拌した後、4μmのろ紙を用いて室温にてろ過を行った。得られたろ液を、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、MMAを留去した。ヘキサンを1.2L加えて溶解させた後、10質量%水酸化ナトリウム水溶液130gで洗浄し、330mlの水で3回洗浄した。洗浄後、減圧にして加熱し、ヘキサンを留去した。得られたPBOM1000は、収量969g、収率95%であった。
【0096】
[実施例1]
冷却器を備えた反応容器に、(A)成分としてPBOLM1000を50部、(B)成分としてFA-513Mを50部、(C)成分としてIRGCURE184(光重合開始剤)を2部加え、50℃で1時間攪拌混合した。1時間後常温まで冷却し、硬化性樹脂組成物を得た。
厚さ1mmのシリコーンシートをガスケットとして用いて、得られた硬化性樹脂組成物を2枚のガラス板で挟み込み、高圧水銀灯で積算光量3,000mJ/cm2の紫外線を照射した後、100℃で60分間加熱した。冷却後、シリコーンシート及び板ガラスを除去し、厚さ1mmの硬化物を得た。
得られた硬化性樹脂組成物及びその硬化物を用い、各評価を実施した。評価結果を表1に記載した。
【0097】
[実施例2~9及び比較例1~3]
用いた成分を表1に記載のものに変更した以外は、実施例1と同様に硬化性樹脂組成物及び硬化物を作製し、各評価を実施した。
【0098】
【0099】
なお、表1中の略語は下記の通りである。
PBOLM1000:合成例1で合成したメタクリレート化合物。
PBOLA1000:合成例2で合成したアクリレート化合物。
PBOLM1800:合成例3で合成したメタクリレート化合物。
PBOLM2000:合成例4で合成したメタクリレート化合物。
FA-513M:ジシクロペンタニルメタクリレート(日立化成(株)製、商品名:ファンクリルFA-513M)。
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート(三菱ケミカル(株)製、商品名:アクリエステルCH)。
PBOM1000:合成例5で合成したポリテトラメチレングリコールジメタクリレート。
IRGACURE184:1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF製、商品名:IRAGACURE184)。
MAC-SQ TM-100:メタクリロイル基を有するシルセスキオキサン化合物(東亜合成製、商品名:MAC-SQ TM-100)。
UA-4200:ウレタンアクリレート(新中村化学工業製、商品名:NKオリゴUA-4200)。
BPE-4:エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(第一工業製薬製、商品名:ニューフロンティアBPE-4)。
【0100】
表1に示すとおり、実施例1~9では、硬化性樹脂組成物の低温保管安定性が良好であり、硬化物は、透明性、屈折率、アッベ数が高く、着色が小さい結果となった。
一方、(A)成分の代わりにポリテトラメチレングリコールジメタクリレートを用いた比較例1では、硬化性樹脂組成物を低温で保管すると析出物が確認された。また、(B)成分の代わりに、ウレタンアクリレートを用いた比較例2では、屈性率が低く、着色が大きかった。(B)成分の代わりに、エポキシアクリレートを用いた比較例3では、アッベ数が低く、着色が大きかった。