(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】車両用システム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20220802BHJP
【FI】
G05D1/02 J
(21)【出願番号】P 2018139012
(22)【出願日】2018-07-25
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129654
【氏名又は名称】大池 達也
(72)【発明者】
【氏名】山本 道治
(72)【発明者】
【氏名】長尾 知彦
(72)【発明者】
【氏名】青山 均
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/187881(WO,A1)
【文献】特開2013-171368(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102682620(CN,A)
【文献】特開平06-265615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路が交差する箇所が含まれる走行エリア内を車両が移動する車両用システムであって、
前記走行エリアでは、磁極性が所定のパターンをなすように磁気発生源である磁気マーカが
通路が交差する箇所毎に配置されていると共に、前記磁気マーカの位置を特定可能なタグ情報を無線通信により出力する無線タグが一部の磁気マーカに対応して付設されており、
前記タグ情報を利用して
車両が検出した磁気マーカを特定し、当該磁気マーカの位置に基づいて車両が所在する車両位置を特定する第1の位置特定部と
、
車両が検出した磁気マーカの履歴情報であって該磁気マーカの磁極性の情報を含む検出履歴を利用して車両が新たに検出した磁気マーカを特定し、当該磁気マーカの位置に基づいて車両位置を特定する第2の位置特定部と、を備え
、
前記第2の位置特定部は、位置が特定された地点を起点として車両が移動した経路中の前記箇所毎に、当該箇所で交差する通路のうち車両が走行した通路を、前記走行エリアにおける磁気マーカの磁極性に関する前記所定のパターン及び前記検出履歴を利用して特定することで、当該経路により車両が移動した先の箇所を特定し、当該車両が移動した先の箇所に配置された磁気マーカを、車両が新たに検出した磁気マーカとして特定するように構成されている車両用システム。
【請求項2】
請求項1において、前記走行エリアでは、車両が移動可能な
行方向の通路と列方向の通路とが格子状をなすように設けられていると共に、いずれかの
通路が他の
通路と交差する
箇所である格子点毎に前記磁気マーカが配置されている車両用システム。
【請求項3】
請求項2において
、前記所定のパターンは、前記格子点が位置する行毎あるいは列毎に、前記磁気マーカの磁極性が交互に切り替わるパターンである車両用システム。
【請求項4】
請求項3において、前記第2の位置特定部は、車両が新たに検出した磁気マーカの磁極性と、直前に検出された磁気マーカの磁極性と、が一致しているか否かに応じて、前記行方向に沿う通路を車両が移動したか、前記列方向に沿う通路を車両が移動したか、を特定するように構成されている車両用システム。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項において、前記格子点は、行及び列の番地により特定可能であり、
前記走行エリア内の第1の地点から第2の地点に向けて移動する際には、行の番地をなす行番号が昇る側の移動方向および列の番号が昇る側の移動方向のうちのいずれかに移動する一方、
前記第2の地点から前記第1の地点に向けて逆向きに移動する際には、行の番地をなす行番号が昇る側の移動方向の逆向きの方向および列の番号が昇る側の移動方向の逆向きの方向のうちのいずれかに移動するよう、車両を制御する制御部を含む車両用システム。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項において、前記検出履歴には、車両により検出された磁気マーカの検出回数であるマーカ通過数が含まれ、前記第2の位置特定部は、該マーカ通過数を利用して前記車両位置を特定する車両用システム。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項において、前記検出履歴には、車両により検出された少なくとも2つの磁気マーカの磁極性の組合せが含まれ、
前記第2の位置特定部は、前記磁気マーカの磁極性の組合せを利用し
、通路が交差する箇所を通過して車両が走行した通路を特定する車両用システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項において、車両の方位を計測する電子コンパスを有し、前記検出履歴には、車両の方位を表す方位情報が含まれ、
前記第2の位置特定部は、前記方位情報を利用し、通路が交差する箇所を通過して車両が走行した通路を特定する車両用システム。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項において、前記第2の位置特定部は、前記第1の位置特定部により特定された磁気マーカを、前記経路の前記起点に設定する車両用システム。
【請求項10】
通路が交差する箇所が含まれる走行エリア内を車両が移動する車両用システムであって、
前記走行エリアでは、行方向の通路と列方向の通路とが格子状をなすと共に、行および列の番地により特定される格子点毎に磁気発生源である磁気マーカが配置されていると共に、前記格子点が位置する行毎あるいは列毎に、前記磁気マーカの磁極性が交互に切り替えられ、一部の磁気マーカに対応して、該磁気マーカの位置を特定可能なタグ情報を無線通信により出力する無線タグが付設されており、
前記タグ情報を利用して車両が検出した磁気マーカを特定し、当該磁気マーカの位置に基づいて車両が所在する車両位置を特定する第1の位置特定部と、
車両が検出した磁気マーカの履歴情報であって該磁気マーカの磁極性の情報を含む検出履歴を利用して車両が新たに検出した磁気マーカを特定し、当該磁気マーカの位置に基づいて車両位置を特定する第2の位置特定部と、
前記走行エリア内の第1の地点から第2の地点に向けて移動する際には、行の番地をなす行番号が昇る側の移動方向および列の番号が昇る側の移動方向のうちのいずれかに移動する一方、前記第2の地点から前記第1の地点に向けて逆向きに移動する際には、行の番地をなす行番号が昇る側の移動方向の逆向きの方向および列の番号が昇る側の移動方向の逆向きの方向のうちのいずれかに移動するよう、車両を制御する制御部と、を備え、
前記第2の位置特定部は、車両が新たに検出した磁気マーカの磁極性と、直前に検出された磁気マーカの磁極性と、が一致していた回数を、移動を開始した格子点の行の番地及び列の番地のうちのいずれか一方の番地に加算すると共に、車両が新たに検出した磁気マーカの磁極性と、直前に検出された磁気マーカの磁極性と、が不一致であった回数を、移動を開始した格子点の行の番地及び列の番地のうちのいずれか他方の番地に加算することにより、車両の移動先の格子点の番地を特定し、当該格子点に配置された磁気マーカを、車両が新たに検出した磁気マーカとして特定するように構成されている車両用システム。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか1項において、前記一部の磁気マーカは、前記無線タグと一体的に構成されている車両用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行エリア内を車両が移動する車両用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば空港や港湾などでは、各種の作業を担う車両の走行エリアが設けられている。例えば空港では、旅客の輸送や荷物の運搬、旅客機への燃料供給などを目的として、GSE(Ground Support Equipment)車両と呼ばれる車両が運用されている。また、港湾などのコンテナ埠頭では、コンテナを移動するための車両が運用されている(例えば特許文献1参照。)。これらの車両の運用には多くの人手が必要になるため、車両の運用に要するコストを低減するための技術が強く要請されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば工場内の床面に敷設された磁気テープを伝って走行する搬送車両であれば、車両位置の特定が比較的容易であり、作業車両の管理や制御などを比較的低コストで実現できる。一方、港湾のコンテナ埠頭や空港などで運用され、走行エリア内を自由度高く移動する車両の場合、車両位置の特定が難しいことに起因し、車両の管理や制御に要するコストを低減するための技術の確立が容易でないという問題がある。例えばGPS(Global Positioning System)を利用して車両位置を測位する技術があるが、港湾のコンテナ埠頭や空港などでの車両の運用では、電波を反射する金属製のコンテナの脇の通路や空港施設の屋内の通路など、GPS電波の良好な受信状態を阻害する走行環境が多く存在している。
【0005】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、走行エリア内を移動する車両の管理や制御等に好適な車両用システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、走行エリア内を車両が移動する車両用システムであって、
前記走行エリアでは、磁極性が所定のパターンをなすように磁気発生源である磁気マーカが配置されていると共に、前記磁気マーカの位置を特定可能なタグ情報を無線通信により出力する無線タグが一部の磁気マーカに対応して付設されており、
前記タグ情報を利用して特定された磁気マーカの位置に基づいて車両が所在する車両位置を特定する第1の位置特定部と、
該第1の位置特定部が車両位置を特定する際の基準になった磁気マーカを通過した後の経路において、車両が検出した磁気マーカの履歴情報であって該磁気マーカの磁極性の情報を含む検出履歴を利用して車両が新たに検出した磁気マーカを特定し、当該磁気マーカの位置に基づいて車両位置を特定する第2の位置特定部と、を備える車両用システムにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両用システムが対象とする走行エリアでは、一部の磁気マーカに対して、無線タグが付設されている。無線タグが付設された磁気マーカを車両が検出したときには、タグ情報を利用して磁気マーカを特定でき、その磁気マーカの位置に基づいて車両位置を特定できる。
【0008】
また、本発明の車両用システムが対象とする走行エリアでは、磁極性が所定のパターンをなすように磁気マーカが配置されている。そのため、無線タグが付設された磁気マーカを通過後の経路では、車両が検出した磁気マーカを特定するに当たっては、磁極性の情報を含む磁気マーカの検出履歴を利用できる。この検出履歴を利用すれば、確実性高く車両が検出した磁気マーカを特定できる。そして、このように特定した磁気マーカの位置に基づけば、車両位置を比較的容易に特定できる。
【0009】
このように本発明の車両用システムは、走行エリア内の車両の位置を確実性高く特定可能なシステムであり、走行エリア内を移動する車両の管理や制御等に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1における、コンテナ埠頭の作業車両を対象とする作業車両システムの説明図。
【
図2】実施例1における、RFIDタグが取り付けられた磁気マーカの斜視図。
【
図5】実施例1における、作業車両及び磁気マーカの説明図。
【
図6】実施例1における、作業車両のシステム構成を示すブロック図。
【
図7】実施例1における、磁気マーカを通過する際の磁気計測値の変化を例示するグラフ。
【
図8】実施例1における、磁気マーカを通過する際の車幅方向の磁気計測値の分布を例示するグラフ。
【
図9】実施例1における、サーバ装置による遠隔制御の開始処理の流れを示すフロー図。
【
図10】実施例1における、自動走行経路を例示する説明図。
【
図11】実施例1における、作業車両による自動走行制御の流れを示すフロー図。
【
図12】実施例1における、サーバ装置による遠隔制御中の処理の流れを示すフロー図。
【
図13】実施例1における、作業車両の移動経路の例を示す説明図。
【
図14】実施例1における、磁気マーカの検出履歴を例示する説明図。
【
図15】実施例1における、作業車両の移動先を特定する方法の説明図。
【
図16】実施例1における、磁気マーカの検出履歴の別例を示す説明図。
【
図17】実施例2における、片側2車線の道路における磁気マーカの配置例を示す説明図。
【
図18】実施例2における、BRTの路線における磁気マーカの配置例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、走行エリア内の車両を管理するための車両用システムに関する例である。この内容について、
図1~
図16を用いて説明する。
【0012】
車両用システムの一例である
図1の作業車両システム1は、コンテナ船101を横付けするコンテナ埠頭に設けられた作業エリア1A内を移動する作業車両(車両)5を管理するためのシステムである。作業エリア1Aには、コンテナ102の搬入エリアであるコンテナヤード105や、コンテナ102を船積するクレーンヤード107などが設けられている。作業車両5は、コンテナヤード105とクレーンヤード107との間でコンテナ102を運搬する作業を担っている。
【0013】
コンテナヤード105には、搬入されて積み上げられたコンテナ102を作業車両5に移載するための小型のクレーン104が設けられている。コンテナヤード105では、クレーン104によってコンテナ102を吊上げて作業車両5に移載する。クレーンヤード107には、船積用の大型のクレーン103が設けられている。クレーンヤード107では、吊上げ場所に停車した作業車両5が運搬するコンテナ102をクレーン103が吊上げて船積する。
【0014】
作業エリア1Aでは、作業車両5が移動可能な通路108が縦横10m間隔の格子状に設けられ、通路108が交差する格子点毎に磁気マーカ10が配置されている。作業車両システム1では、例えば港湾管理施設109内に設置されたサーバ装置18による管理の下、複数の作業車両5が相互に干渉しないように作業エリア1A内を移動してコンテナ102の運搬作業を実施する。
【0015】
作業エリア1Aでは、N極の磁気マーカ10Nを白抜きの○印で示し、S極の磁気マーカ10Sを塗り潰しの●印により示す
図1の通り、N極の磁気マーカ10Nが配列された行と、S極の磁気マーカ10Sが配列された行と、が交互に現れるように磁気マーカ10が配置されている。
【0016】
作業エリア1A内の一部の磁気マーカ10には、無線通信によりタグ情報を送信(出力)するRFIDタグ15が付設されている。
図1では、磁気マーカ10を示す○印あるいは●印の外側に円を設けることで、RFIDタグ15が付設された磁気マーカ(タグ付きマーカ)10を識別可能に示している。
【0017】
作業車両システム1では、作業エリア1A内の通路108の各格子点が行及び列の番地により特定されている。それ故、作業車両システム1では、格子点毎に配置された各磁気マーカ10を、行及び列の番地により特定可能である。番地を構成する行番号の昇順は、
図1中の上下方向の上方向に向かっている。また、列番号の昇順は、
図1中の左右方向の右方向に向かっている。作業エリア1Aでは、コンテナヤード105に対してクレーンヤード107が同図中で右上に位置している。そのため、クレーンヤード107の番地は、コンテナヤード105の番地に対して行番号及び列番号ともに番号が昇る側に位置している。
【0018】
それ故、コンテナヤード105から出発した作業車両5は、行番号が昇る側、及び列番号が昇る側のいずれかに移動することでクレーンヤード107に到達できる。そこで本例では、コンテナヤード105からクレーンヤード107に向かう場合について、列番号が変わらず行番号が増える行昇り方向、及び行番号が変わらず列番号が増える列昇り方向の2方向に、作業車両5の移動方向を制限している。なお、クレーンヤード107からコンテナヤード105に向かう場合については、作業車両5の移動方向を逆向きの2方向に制限すると良い。
【0019】
作業車両システム1(
図1)では、サーバ装置18と作業車両5とが無線通信を介して通信可能に接続されている。サーバ装置18は、各作業車両5の車両位置を管理すると共に、各作業車両5を移動させる経路(自動走行経路)を演算し、その経路に沿って走行できるように作業車両5を遠隔制御する。作業車両5は、磁気マーカ10を検出する毎にサーバ装置18にマーカ検出情報を送信する。サーバ装置18は、マーカ検出情報の送信元の作業車両5に対して経路情報を送信する。作業車両5は、この経路情報が示す経路に沿って移動できるように自動走行する。
【0020】
以下、作業エリア1Aに敷設される(1)磁気マーカ10を概説した後、(2)サーバ装置18、(3)作業車両5、の構成を説明する。
(1)磁気マーカ
磁気マーカ10(
図2)は、直径20mm、高さ28mmの柱状をなし、作業車両5が移動する路面100S(
図1)に設けた孔に収容された状態で敷設される。磁気マーカ10をなす磁石は、磁性材料である酸化鉄の磁粉を基材である高分子材料中に分散させたフェライトプラスチックマグネットまたはフェライトラバーマグネットであり、最大エネルギー積(BHmax)=6.4kJ/m
3という特性を備えている。この磁気マーカ10は、作業車両5側の検出ユニット2(
図5を参照して後述。)の取付け高さとして想定する範囲100~250mmの上限の250mm高さにおいて、8μT(マイクロテスラ)の磁束密度の磁気を作用する。磁気マーカ10では、柱状の軸方向の両端のうちの一方がN極となり、他方がS極となっている。磁気マーカ10の上下を入れ替えて施工することで、N極として検出される磁気マーカ10Nと、S極として検出される磁気マーカ10Sと、を切替できる。
【0021】
なお、一部の磁気マーカ10では、
図2のごとく、無線によりタグ情報を出力するRFIDタグ(Radio Frequency IDentification Tag、無線タグ)15が、路面100S側の表面に積層配置されている。RFIDタグ15は、無線による外部給電により動作し、タグ情報の一例をなすタグIDを外部出力する。なお、以下の説明では、RFIDタグ15が取り付けられた磁気マーカ10を適宜、タグ付きマーカ10と記載する。RFIDタグ15が取り付けられていない磁気マーカ10を適宜、タグなしマーカ10と記載する。さらに、磁極性の区別が必要な場合には、タグ付きマーカ10N(N極の場合)等と記載する。
【0022】
RFIDタグ15は、
図3のごとく、例えばPET(PolyEthylene Terephthalate)フィルムから切り出したタグシート150の表面にICチップ157が実装された電子部品である。タグシート150の表面には、ループコイル151及びアンテナ153の印刷パターンが設けられている。ループコイル151は、外部からの電磁誘導によって励磁電流が発生する受電コイルである。アンテナ153は、タグID等を無線送信するための送信アンテナである。RFIDタグ15としては、好ましくはUHF帯の無線タグを採用すると良い。
【0023】
(2)サーバ装置
サーバ装置18は、
図4のごとく、CPU(Central Processing Unit)181やROM(Read Only Memory)182やRAM(Random Access Memory)183などの電子部品が実装された電子基板180を中心にして構成されたコンピュータ装置である。電子基板180には、I/O(Input/Output)184を介して、ハードディスクドライブ等の記憶装置185や無線通信ユニット189等が接続されている。サーバ装置18は、以下の各部としての機能を備えている。(2.1)~(2.3)の各部の機能は、記憶装置185から読み出したソフトウェアプログラムをCPU181で処理することで実現される。(2.4)~(2.6)の各部の機能は、RAM183や記憶装置185の記憶エリアを利用して実現される。
【0024】
(2.1)位置特定部:作業車両5が位置する車両位置を特定する。位置特定部は、作業車両5が検出した磁気マーカ10の番地により車両位置を特定する。
(2.2)経路演算部:作業車両5を移動させる経路(自動走行経路)を演算する。例えばコンテナ102をコンテナヤード107に搬送する作業の場合、経路演算部は、作業車両5の現在地を出発地点として、コンテナ102を荷受けする荷受け地を経由しコンテナ102を引き渡す荷渡し地に至る自動走行経路を演算により決定する。
(2.3)遠隔制御部:予定された自動走行経路に沿って作業車両5を移動させるように遠隔制御する。遠隔制御部は、作業車両5を移動させる自動走行経路を示す経路情報を送信することで作業車両5を遠隔制御する。
【0025】
(2.4)マーカデータベース(マーカDB)185M:マーカDB185Mは、作業エリア1Aに配置された各磁気マーカ10の情報が格納されたデータベースである。磁気マーカ10の情報としては、磁気マーカ10の番地、絶対位置、磁極性などの情報がある。さらに、タグ付きマーカ10の情報には、付設されたRFIDタグ15の識別情報であるタグID(タグ情報)が紐付け(対応付け)られている。
(2.5)地図データベース(地
図DB)185T:地
図DB185Tには、作業エリア1Aを表すエリアマップ上に各磁気マーカ10が対応付けられた地図データが格納されている。エリアマップ上の各磁気マーカ10には、番地、絶対位置、磁極性などの情報が紐付けられている。
(2.6)車両位置記憶部185R:上記の位置特定部が特定した車両位置を記憶する。
【0026】
(3)作業車両
作業車両5は、例えば車幅3m、全長8m程度の車両であり、幅2.4m、長さ6mのコンテナを積載可能である。作業車両5は、前側2輪の操舵輪と、後ろ側2輪の駆動輪とを備えている。操舵輪は、ステアリングアクチュエータによる駆動されて操舵される。駆動輪は、駆動モータにより駆動される。
【0027】
作業車両5は、
図5及び
図6のごとく、磁気マーカ10を検出等する検出ユニット2、RFIDタグ15からタグIDを取得するタグリーダユニット34、及び車載制御ユニット32、などを備えている。さらに、作業車両5は、駆動モータやブレーキアクチュエータやステアリングアクチュエータなどを制御する車両ECU(Electronic Control Unit)61を備えている。車両ECU61は、サーバ装置18から受信する経路情報に沿って作業車両5を自動走行させる制御を実行可能である。なお、検出ユニット2及びタグリーダユニット34について、容易な理解のため別体で図示しているが、これらが一体化されたユニットを採用しても良い。
【0028】
(3.1)検出ユニット
検出ユニット2は、
図5及び
図6のごとく、磁気検出部であるセンサアレイ21と、IMU(Inertial Measurement Unit)22と、が一体化された棒状のユニットである。この検出ユニット2は、路面100Sと対面する状態で、例えば作業車両5の車体の前部に取り付けられる。
図5の作業車両5の場合、路面100Sを基準とした検出ユニット2の取付け高さが200mmとなっている。
【0029】
検出ユニット2のセンサアレイ21は、一直線上に配列された15個の磁気センサCn(nは1~15の整数)と、図示しないCPU等を内蔵した検出処理回路212と、を備えている。センサアレイ21では、15個の磁気センサCnが10cmの等間隔で配置されている。検出ユニット2は、センサアレイ21における磁気センサCnの配列方向が車幅方向に一致するように作業車両5に取り付けられる。
【0030】
磁気センサCnは、アモルファスワイヤなどの感磁体のインピーダンスが外部磁界に応じて敏感に変化するという公知のMI効果(Magneto Impedance Effect)を利用して磁気を検出するセンサである。磁気センサCnでは、アモルファスワイヤなどの図示しない感磁体が直交する2軸方向に沿って配置され、これにより直交する2軸方向に作用する磁気の検出が可能となっている。なお、本例では、進行方向及び車幅方向の磁気成分を検出できるように磁気センサCnがセンサアレイ21に組み込まれている。
【0031】
磁気センサCnは、磁束密度の測定レンジが±0.6mTであって、測定レンジ内の磁束分解能が0.02μTという高感度のセンサである。ここで、磁気マーカ10は、上記のように、磁気センサCnの取付け高さとして想定する範囲100~250mmにおいて8μT以上の磁束密度の磁気を作用できる。磁束密度8μT以上の磁気を作用する磁気マーカ10であれば、磁束分解能が0.02μTの磁気センサCnを用いて確実性高く検出可能である。
【0032】
センサアレイ21の検出処理回路212(
図6)は、磁気マーカ10を検出するためのマーカ検出処理などを実行する演算回路である。この検出処理回路212は、各種の演算を実行するCPUのほか、ROMやRAMなどのメモリ素子等を利用して構成されている。
【0033】
検出処理回路212は、各磁気センサCnが出力するセンサ信号を3kHz周期で取得してマーカ検出処理を実行する。そして、マーカ検出処理の検出結果を車載制御ユニット32に入力する。詳しくは後述するこのマーカ検出処理では、磁気マーカ10の検出に加えて、磁気マーカ10の磁極性の検出や、磁気マーカ10に対する作業車両5の横ずれ量の計測等が行われる。
【0034】
検出ユニット2に組み込まれたIMU22は、慣性航法による作業車両5の相対位置の推定に必要な計測値を取得する慣性航法ユニットである。IMU22は、方位を計測する電子コンパスである2軸磁気センサ221や、加速度を計測する2軸加速度センサ222と、角速度を計測する2軸ジャイロセンサ223などを備えている。
【0035】
(3.2)タグリーダユニット
図6のタグリーダユニット34は、磁気マーカ10(
図2)の表面に積層配置されたRFIDタグ15と無線で通信する通信ユニットである。タグリーダユニット34は、RFIDタグ15の動作に必要な電力を無線で送電してRFIDタグ15を動作させ、RFIDタグ15の識別情報であるタグID(タグ情報)を取得する。
【0036】
(3.3)車載制御ユニット
車載制御ユニット32(
図6)は、検出ユニット2やタグリーダユニット34を制御すると共に、作業車両5を自動走行させるための制御を実行するユニットである。車載制御ユニット32は、図示しないCPUのほか、ROM、RAM、フラッシュROMなどの記憶素子を備えている。車載制御ユニット32は、以下の各手段としての機能を実現する。(3.3.1)~(3.3.5)の各部の機能は、ソフトウェアプログラムをCPUが処理することで実現される。(3.3.6)、(3.3.7)の各部の機能は、記憶素子の記憶エリアを利用して実現される。
【0037】
(3.3.1)ユニット制御部:検出ユニット2やタグリーダユニット34を制御する。(3.3.2)情報通信部:磁気マーカ10を検出したときにサーバ装置18にマーカ検出情報を送信する一方、自動走行経路を表す経路情報をサーバ装置18から受信する。
(3.3.3)直進到達地点設定部:経路情報が表す自動走行経路において、作業車両5が直進により到達可能な中間地点を直進到達地点として設定する。
(3.3.4)自動走行制御部:直進到達地点に向けて自動走行するための目標操舵角や目標車速などの制御値を演算する。
(3.3.5)位置特定部:作業車両5が位置する車両位置を特定する。
【0038】
(3.3.6)車載マーカデータベース(車載マーカDB)320:サーバ装置18のマーカDB185Mと同様のデータベース。タグ付きマーカ10が検出されたとき、この車載マーカDB320を参照すれば、磁気マーカ10を特定可能である。
(3.3.7)マーカ履歴記憶部321:磁気マーカ10の検出回数であるマーカ通過数を、磁気マーカ10の検出履歴として記憶する。直前に検出された磁気マーカ10の磁極性と、新たに検出された磁気マーカ10の磁極性と、の組合せ毎のマーカ通過数が記憶される。(N-N)マーカ通過数、(S-S)マーカ通過数、(N-S)マーカ通過数、(S-N)マーカ通過数の4種類のマーカ通過数がある。なお、遠隔制御の開始時には、出発地点に対応する起点の磁気マーカ10の磁極性が直前に検出された磁気マーカ10の磁極性として記憶される。
【0039】
ここで、マーカ通過数の計数対象となる経路としては、位置が特定された地点を起点(基準)とした経路が設定される。例えば、作業車両5の出発地点や、左折地点や、右折地点等のほか、タグ情報を利用して番地を特定可能なタグ付きマーカ10等が、起点となり得る。そして、これらの地点がマーカ通過数の計数対象の経路の起点となる。
【0040】
次に、(1)マーカ検出処理、及び(2)作業車両システム1の全体動作について説明する。
(1)マーカ検出処理
マーカ検出処理は、検出ユニット2のセンサアレイ21が実行する処理である。センサアレイ21は、磁気センサCnを用いて3kHzの周期でマーカ検出処理を実行する。なお、磁気マーカ10が検出されたときには、タグリーダユニット34によるタグ情報の読み取り処理が実行される。
【0041】
上記のごとく、磁気センサCnは、作業車両5の進行方向及び車幅方向の磁気成分を計測するように構成されている。例えばこの磁気センサCnが、進行方向に移動して磁気マーカ10の真上を通過するとき、進行方向の磁気計測値は、
図7のごとく磁気マーカ10の前後で正負が反転すると共に、磁気マーカ10の真上の位置でゼロを交差するように変化する。したがって、作業車両5の走行中では、いずれかの磁気センサCnが検出する進行方向の磁気について、その正負が反転するゼロクロスZcが生じたとき、検出ユニット2が磁気マーカ10の真上に位置すると判断できる。検出処理回路212は、このように検出ユニット2が磁気マーカ10の真上に位置し進行方向の磁気計測値のゼロクロスZcが生じたときに磁気マーカ10を検出したと判断する。
【0042】
また、例えば、磁気センサCnと同じ仕様の磁気センサについて、磁気マーカ10の真上を通過する車幅方向の仮想線に沿う移動を想定すると、車幅方向の磁気計測値は、磁気マーカ10を挟んだ両側で正負が反転すると共に、磁気マーカ10の真上の位置でゼロを交差するように変化する。15個の磁気センサCnを車幅方向に配列した検出ユニット2の場合には、磁気マーカ10を介してどちらの側にあるかによって磁気センサCnが検出する車幅方向の磁気の正負が異なってくる(
図8)。
【0043】
検出ユニット2の各磁気センサCnの車幅方向の磁気計測値を例示する
図8の分布に基づけば、車幅方向の磁気の正負が反転するゼロクロスZcを挟んで隣り合う2つの磁気センサCnの中間の位置、あるいは検出する車幅方向の磁気がゼロであって両外側の磁気センサCnの正負が反転している磁気センサCnの直下の位置が、磁気マーカ10の車幅方向の位置となる。検出処理回路212は、検出ユニット2の中央の位置(磁気センサC8の位置)に対する磁気マーカ10の車幅方向の位置の偏差を上記の横ずれ量として計測する。例えば、
図8の場合であれば、ゼロクロスZcの位置がC9とC10との中間辺りのC9.5に相当する位置となっている。上記のように磁気センサC9とC10の間隔は10cmであるから、磁気マーカ10の横ずれ量は、車幅方向において検出ユニット2の中央に位置するC8を基準として(9.5-8)×10cm=15cmとなる。
【0044】
なお、
図7及び
図8の磁気計測値の分布におけるゼロクロスZcの両側の正負は、磁気マーカ10の磁極性がN極であるS極であるかによって入れ替わる。検出処理回路212は、
図7あるいは
図8の磁気計測値の分布において、ゼロクロスZcの両側の正負の位置関係に応じて磁気マーカ10の磁極性を検出する。
【0045】
(2)作業車両システムの動作
次に、作業車両システム1の動作について
図9~
図12を参照して説明する。
図9は、サーバ装置18による遠隔制御の開始処理の流れを示すフロー図である。
図10は、この開始処理により演算された自動走行経路1Rを例示している。
図11は、遠隔制御されている最中に作業車両5で実行される自動走行制御の流れを示すフロー図である。
図12は、遠隔制御中のサーバ装置18で実行される処理の流れを示すフロー図である。以下、コンテナヤード105からクレーンヤード107に向けて作業車両5がコンテナ102を搬送するときの処理動作の例を説明する。
【0046】
サーバ装置18は、作業車両5の遠隔制御に際して、作業車両5に実行させる所定の作業内容を設定するための図示しない作業内容入力画面を作業オペレータに提示する。この作業内容入力画面上では、例えばマウスやキーボード等の入力デバイスを操作することで作業車両5に実行させる作業内容を入力可能である。作業内容には、作業車両5がコンテナ102を荷受けする荷受け地や、コンテナ102を引き渡す荷渡し地等の情報が含まれる。荷受け地や荷渡し地としては、例えばコンテナヤード105あるいはクレーンヤード107内の磁気マーカ10の番地を指定可能である。
【0047】
サーバ装置18は、
図9のごとく、作業内容入力画面上で作業オペレータが入力した荷受け地や荷渡し地等を含む作業内容に応じて、まず、目的地を設定する(S101)。続いてサーバ装置18は、上記のステップS101で設定された目的地に移動するための自動走行経路1Rを演算する(S102)。
【0048】
ここで、現在地を出発地点として出発した後、荷受け地に到達するまでの間は、この荷受け地が作業車両5の目的地となる。また、荷受け地でコンテナ102を積み込んだ後、荷渡し地に到達するまでの間は、この荷渡し地が作業車両5の目的地となる。なお、遠隔制御の出発地点となる作業車両5の現在地は、前回の遠隔制御の際の最終到達値(絶対位置)としてサーバ装置18により記憶されている。
【0049】
本例の作業車両システム1では、磁気マーカ10が位置する番地が作業車両5の停止場所となっている。それ故、停止場所の磁気マーカ10に対する作業車両5の横ずれ量や、この磁気マーカ10を検出した後の移動量等の相対位置の分だけ、停止場所の磁気マーカ10の絶対位置をオフセットすれば、作業車両5の現在地を特定できる。
【0050】
以下、
図10のごとく、コンテナヤード105の8行14列の番地(荷受け地)の磁気マーカ10を起点として行に沿って直進し、左折地点である8行30列の番地で左折した後、クレーンヤード107の14行30列の目的地(荷渡し地)に至る自動走行経路1Rが演算により決定された場合を例示して説明する。
【0051】
サーバ装置18は、上記のステップS102のように自動走行経路1Rを演算すると、この自動走行経路1Rを示す経路情報を作業車両5に向けて送信する(S103)。この経路情報には、出発地点に対応する8行14列の番地、左折地点である8行30列の番地、目的地である14行30列の番地の情報が含まれている。
【0052】
作業車両5の車載制御ユニット32は、
図11のごとく、上記の経路情報を受信すると、まず、出発地点から行あるいは列に沿う直進により到達できる直進到達地点を設定する(S201)。上記の経路情報の場合であれば、車載制御ユニット32は、出発地点(8行14列)から行に沿う直進により到達できる左折地点(8行30列)を直進到達地点として設定する。さらに、このように直進到達地点を新たに設定すると、車載制御ユニット32は、上記の4種類のマーカ通過数((N-N)、(S-S)、(N-S)、(S-N)の各マーカ通過数)をゼロ回にリセットする(S202)。
【0053】
続いて車載制御ユニット32は、上記のステップS201で設定した直進到達地点(8行30列)に向けて走行するための自動走行制御P1を開始する。この自動走行制御P1では、第8行に沿って走行するための作業車両5の方位制御を含め、慣性航法による方位推定や相対位置の推定結果が活用される。
【0054】
起点(基準)となる磁気マーカ10(8行14列)を出発した後、次の磁気マーカ10を検出するまでの間は、慣性航法による相対位置の推定が繰り返し実行され、自動走行制御P1に利用される。この間、車載制御ユニット32は、センサアレイ21を制御して上記のマーカ検出処理P2を繰り返し実行させる(S203:NO)。なお、磁気マーカ10が検出された場合のマーカ検出処理P2には、磁気マーカ10に対する横ずれ量の計測や、検出された磁気マーカ10の磁極性の検出等が含まれている。
【0055】
新たな磁気マーカ10が検出されたとき(S203:YES)、車載制御ユニット32は、まず、直前の磁気マーカ10の磁極性と、新たに検出された磁気マーカ10の磁極性と、の組合せの適否を判断する(S204)。例えば上記のようにN極の磁気マーカ10Nが配列された第8行に沿う自動走行経路1R(
図10)の場合であれば、N極の磁気マーカ10Nが連続して検出されるはずである。そこで、車載制御ユニット32は、直前の磁気マーカ10及び新たに検出された磁気マーカ10の磁極性が共にN極であれば、磁極性の組合せが適切であると判断する(S204:YES)。一方、それ以外の磁極性の組合せの場合には(S204:NO)、自動走行制御が中断されて所定のエラー処理E1に移行する。なお、エラー処理E1としては、例えば作業車両5を停止させてオペレータを呼び出す等の処理を採用すると良い。
【0056】
前回の磁気マーカ10の磁極性と、新たに検出された磁気マーカ10の磁極性と、の組合せが適切であった場合(S204:YES)、車載制御ユニット32は、タグリーダユニット34を制御し、タグ情報を読み取るためのタグ読取処理P3を実行させる。例えば出発地点を出発した直後の8行15列の磁気マーカ10は、RFIDタグ15が付設されていないため、タグ情報の読み取りが不可能である。車載制御ユニット32は、タグ情報を読み取りできなかったとき、すなわち新たに検出された磁気マーカ10がタグなしマーカ10であったとき(S204:NO)、上記のマーカ履歴記憶部321が記憶しているマーカ通過数を1回加算する(S216)。なお、上記の通り、マーカ通過数としては、磁極性の組合せに応じた4種類がある。上記のステップS216では、上記のステップS204で判断された磁極性の組合せに対応するマーカ通過数が1回加算される。
【0057】
そして、車載制御ユニット32は、このマーカ通過数を利用して新たに検出された磁気マーカ10を特定する(S217)。例えばN極の行に沿って列番号の昇る方向(列昇り方向)に走行している場合には、出発地点に対応する番地(8行14列)の列番号に、(N-N)マーカ通過数を加算した番地を、新たに検出された磁気マーカ10の番地として特定できる(第2の位置特定部)。
【0058】
作業車両5が自動走行しているとき、タグなしマーカ10を検出する毎に、上記のステップS203:YES~S217の処理が実行されてマーカ通過数が1回ずつ加算される。例えば、起点である8行14列の番地から行に沿って移動し、磁気マーカ10の検出に応じて(N-N)マーカ通過数が3回になったとき、起点の番地である8行14列の列番号に3回を加算することで、8行17列の磁気マーカ10を特定できる。
【0059】
例えば第8行に沿って作業車両5が移動して8行19列のタグ付きマーカ10に到達すると、そのタグ付きマーカ10の検出に応じて(S203:YES)、タグ情報の読み取りが可能になる(S205:YES)。車載制御ユニット32は、タグ情報に含まれるタグIDを利用して車載マーカDB320を参照し、検出されたタグ付きマーカ10を特定する(S206、第1の位置特定部)。また、車載制御ユニット32は、検出されたタグ付きマーカ10を新たな経路の起点に設定し、全てのマーカ通過数をゼロにリセットする(S207)。
【0060】
なお、タグ付きマーカ10に到達したが、冠水等の影響によりタグ情報を読み取りできない場合が考えられる。このような場合、上記のステップS205:NO以降の処理により、そのタグ付きマーカ10がタグなしマーカ10として取り扱いされるのみである。このように
図11に示す作業車両5の処理では、タグ情報の読み取りを失敗したことで、処理が破綻することはない。このような取扱いは、後述する
図12のサーバ装置18の処理についても同様である。
【0061】
車載制御ユニット32は、タグ付きマーカ10であるかタグなしマーカ10であるかに関わらず、検出できた磁気マーカ10を特定できたときには、マーカ検出情報を生成し、サーバ装置18に送信する(S208)。このマーカ検出情報には、磁気マーカ10を検出した旨、及び磁気マーカ10の磁極性の情報が含まれているほか、タグ付きマーカ10の場合であればタグID(タグ情報)が含まれている。
【0062】
このようにマーカ検出情報を送信した後、車載制御ユニット32は、上記のステップS201で設定した直進到達地点に作業車両5が到達したか否かを判断する(S209)。具体的には、上記のステップS206あるいはS217で特定された磁気マーカ10の番地が、直進到達地点の番地に一致しているか否かを判断する。直進到達地点でなく、その手前に作業車両5が位置している場合には(S209:NO)、自動走行制御P1を継続し、マーカ検出処理P2に続く上記のステップS203以降の処理を繰り返し実行する。
【0063】
一方、作業車両5が直進到達地点に到達している場合、すなわち上記のステップS206あるいはS217で特定された磁気マーカ10の番地が直進到達地点の番地に一致している場合(S209:YES)、車載制御ユニット32は、さらに、その直進到達地点が目的地であるか否かを判断する(S210)。作業車両5が目的地に到達している場合には(S210:YES)、自動走行制御を終了する。
【0064】
作業車両5が、目的地ではない直進到達地点に到達している場合には(S210:NO)、上記のステップS201に戻って新たな直進到達地点を設定する。さらに、そのときの作業車両5の位置に対応する磁気マーカ10を、新たな直進到達地点に至る経路の起点に設定するために各マーカ通過数をゼロリセットしたうえ(S202)、自動走行制御P1を継続する。
【0065】
例えば上記のように8行14列の番地を起点とし、8行30列の番地で左折した後、14行30列の番地の目的地に至る自動走行経路1R(
図10)であれば、8行30列の左折地点が直進到達地点となる。さらに、この左折地点の通過後では、目的地である14行30列の番地が直進到達地点となる。
【0066】
サーバ装置18は、
図12のごとく、作業車両5を遠隔制御している間、作業車両5が送信してくるマーカ検出情報の受信を待機する(S301:NO)。そして、マーカ検出情報を受信する毎に(S301:YES)、タグID(タグ情報)が含まれるか否かを判断する(S302)。タグIDが含まれていれば(S302:YES)、そのタグIDを利用してマーカDB185Mを参照し、対応する磁気マーカ10の位置を特定する(S303)。そして、サーバ装置18は、特定された磁気マーカ10の番地(位置)を作業車両5の車両位置として記憶、管理する。
【0067】
一方、マーカ検出情報にタグIDが含まれていない場合(S302:NO)、サーバ装置18は、エリアマップ上で記憶している作業車両5の車両位置(磁気マーカ10の番地)に対して行方向あるいは列方向に隣り合う4つの磁気マーカ10のうちのいずれかを、新たに検出された磁気マーカ10として特定する(S313)。
【0068】
上記のごとく、本例では、コンテナヤード105からクレーンヤード107へ向かう作業車両5について、移動可能な方向が、行方向に沿って列番号が昇る方向(列昇り方向)と、列方向に沿って行番号が昇る方向(行昇り方向)と、に制限されている。したがって、作業車両5によって検出された磁気マーカ10は、上記の4つの磁気マーカ10のうち、列番号が昇る側に位置する磁気マーカ10、及び行番号が昇る側に位置する磁気マーカ10の2つの磁気マーカ10のうちのいずれかということになる。
【0069】
サーバ装置18で記憶されている車両位置に当たる磁気マーカ10(前回検出された磁気マーカ10)の磁極性と、新たに検出された磁気マーカ10の磁極性と、の組合せによれば、上記の2つの磁気マーカ10のうちのいずれかを確定的に選択できる。例えば前回の磁気マーカ10と新たに検出された磁気マーカ10との磁極性の組合せがN極-N極あるいはS極ーS極の組合せの場合、行に沿って隣り合う磁気マーカ10を新たな磁気マーカ10として特定できる。また例えば、N極-S極あるいはS極-N極の組合せであれば、列に沿って隣り合う磁気マーカ10を新たな磁気マーカ10として特定できる。
【0070】
サーバ装置18は、上記のステップS303あるいはS313のように作業車両5が新たに検出した磁気マーカ10を特定すると、その磁気マーカ10の番地を作業車両5の車両位置として記憶して管理する(S304)。さらに、サーバ装置18は、新たに記憶した車両位置が、上記のステップS102(
図9)で演算した自動走行経路1R(
図10)上にあるか否かを判断する(S305)。作業車両5が自動走行経路1R上に位置していない場合には(S305:NO)、エラー処理E2に移行する。なお、エラー処理E2としては、例えば作業車両5を停止させてオペレータを呼び出す等の処理を採用すると良い。
【0071】
作業車両5が自動走行経路1R上に位置していれば(S305:YES)、サーバ装置18は、作業車両5が目的地に到達しているか否かを判断する(S306)。そして、目的地に到達していれば、遠隔制御を終了させる(S306:YES)。一方、作業車両5が目的地の手前であれば、作業車両5からの新たなマーカ検出情報の受信を待機する(S306:NO)。その後、マーカ検出情報を受信すれば、上記のステップS301に続く処理を実行する。
【0072】
以上のような構成の作業車両システム(車両用システム)1が管理する作業エリア(走行エリア)1Aでは、一部の磁気マーカ10に対して、タグ情報を出力するRFIDタグ(無線タグ)15が付設されている。RFIDタグ15が付設された磁気マーカ10を作業車両5が検出したときには、タグ情報に含まれるタグIDを利用して磁気マーカ10を特定でき、これにより車両位置を特定可能である(第1の位置特定部)。
【0073】
また、作業車両システム(車両用システム)1が対象とする作業エリア(走行エリア)1Aでは、格子状をなす通路108の行毎に磁極性が異なるという所定のパターンで磁気マーカ10が配置されている。そのため、作業車両システム1では、作業車両5が検出した磁気マーカ10の磁極性の組合せに応じて、作業車両5が行に沿って走行したか、列に沿って走行したかの特定が可能である。例えば作業車両5がコンテナヤード105からクレーンヤード107に向けて移動している場合であれば、N極の磁気マーカ10Nの検出に続いてN極の磁気マーカ10Nが検出されたN極→N極の磁極性の組合せが3回繰り返せば、行に沿って列番号が3番昇るという作業車両5の走行を特定できる。このように本例の作業車両システム1では、作業車両5の走行中における磁気マーカ10の検出回数(マーカ通過数)や磁極性の組合せなどの検出履歴に応じて、作業車両5が移動した先の番地を特定可能である(第2の位置特定部)。
【0074】
このように作業車両システム1は、作業エリア1A内の作業車両5の位置を確実性高く特定可能なシステムであり、作業エリア1A内を移動する作業車両5の管理や制御等を確実性高く実行できる。この作業車両システム1は、GPS電波等の受信を前提とせずに作業車両5の車両位置を特定できる。そのため、例えば接岸したコンテナ船101やコンテナ102の脇や、クレーン103の下などGPS電波が不安定になる場所や、作為的にGPSの精度が抑えられることがある港湾などの施設においても、車両位置の特定精度が影響を受けることがない。作業車両システム1が特定する車両位置を利用すれば、作業車両5の所在を精度高く管理でき、確実な遠隔制御を実現できる。
【0075】
特に作業車両システム1では、磁気マーカ10の検出履歴を利用して作業車両5が検出した磁気マーカ10を特定可能である。それ故、この作業車両システム1では、全ての磁気マーカ10をタグ付きマーカ10とする必要がなく、磁気マーカ10の敷設コストを抑制できる。また、RFIDタグ15の密度を抑制できるため、タグリーダユニット34が他のRFIDタグ15と誤通信するおそれが少なくなっている。タグリーダユニット34において、通信精度を確保するためのフィルタ回路や高指向性のアンテナ等が必要ではないのでハードウェアコストを抑制できる。
【0076】
さらに、作業車両システム1では、タグ付きマーカ10を検出した際にRFIDタグ15との無線通信ができなかった場合、そのタグ付きマーカ10がタグなしマーカとして取り扱いされるだけである。したがって、RFIDタグ15との無線通信の失敗に起因して、作業車両5の位置を見失うことがない。磁気マーカ10が冠水するとRFIDタグ15との無線通信が不安定になる傾向があるが、作業車両システム1の場合、タグ情報の読み取り失敗によってシステム動作が不安定に陥るおそれが少ない。
【0077】
なお、本例では、磁気マーカ10の上面に、シート状のRFIDタグ15を取り付けた構成を例示しているが、磁気マーカ10とRFIDタグ15とが一体をなしている構成は必須ではない。磁気マーカ10とRFIDタグ15とが同じ位置に配置されていれば良く、磁気マーカ10の鉛直方向上方、あるいは下方にRFIDタグ15が配置されていても良い。
【0078】
また、本例では、作業車両5の経由地や目的地などを含む作業内容について、例えばキーボードやマウスやディスプレイ等の入力機器を利用して作業オペレータが入力する構成を例示している。コンテナ102の輸送情報を入力した処理装置が、例えば人工知能的な処理により必要な作業を決定し、その決定内容に応じて各作業車両5の作業内容を決定することも良い。
【0079】
さらに、作業車両5が備える4輪の車輪毎の回転速度あるいは回転量や、ステアリングあるいは操舵輪の操舵角などを利用して作業車両5の姿勢を検知するユニットを、上記のIMU22に代えて、あるいは加えて採用することも良い。各車輪の回転速度や回転量等は、各車輪に回転センサ等を取り付けるという比較的簡素な構成により計測可能である。このように操舵角や車輪毎の回転速度等を利用して作業車両5の姿勢を検知するユニットを採用すれば、作業車両5側のコスト上昇を抑制しながら、慣性航法による相対位置の推定等が可能になる。
【0080】
本例では、サーバ装置18から経路情報を受信した作業車両5が、自律的に走行する構成を例示している。これに代えて、サーバ装置18が作業車両5を遠隔制御して自動走行させる構成を採用することも良い。
【0081】
RFIDタグ15のタグIDを紐付けて磁気マーカ10の敷設位置が管理されるマーカDB185Mをサーバ装置18側に設けると共に、各作業車両5がマーカDB185Mと同じ車載マーカDB320を備える構成を例示している。これに代えて、各作業車両5が無線通信を介してサーバ装置18のマーカDB185Mにアクセスするように構成しても良い。
【0082】
なお、本例の作業車両システム1における各作業車両5の車両位置を特定する構成は、作業車両5を遠隔制御あるいは自律制御により自動走行させるシステムばかりでなく、作業者が運転する作業車両5の位置をサーバ装置18側で高精度に管理するためのシステムに対しても有用である。
【0083】
本例では、サーバ装置18が作業車両5の車両位置を記憶し、新たな磁気マーカ10が検出されたときに、その車両位置を随時更新する構成を例示している。これに代えて、出発地点に対応する磁気マーカ10を起点とした経路において、作業車両5による磁気マーカ10の検出履歴をサーバ装置18が記憶することも良い。例えば、検出履歴として、前回の磁気マーカと新たに検出された磁気マーカとについて磁極性の組合せの履歴を記憶しても良い。
【0084】
例えば
図13において矢印で示す経路に沿って作業車両5が移動したケースを考える。なお、同図の経路は、
図10で示した自動走行経路1Rとは別の経路である。この経路に沿って移動する作業車両5は、経路の起点である5行3列のN極の磁気マーカ10Nを出発した後、5行4列のN極の磁気マーカ10N、5行5列のN極の磁気マーカ10N、6行5列のS極の磁気マーカ10S、6行6列のS極の磁気マーカ10S、7行6列のN極の磁気マーカ10Nを、順次検出することになる。
【0085】
このとき、サーバ装置18には、
図14の検出履歴が記録される。同図における番号は、時間的な序列を表す番号であり、No.1が時間的に最も古い履歴に対応している。例えばこの検出履歴において、No.2の(N-N)の履歴は、5行4列のN極の磁気マーカ10Nに続いて5行5列のN極の磁気マーカ10Nを検出するという第5行に沿う移動を表している。また、No.5の(S-N)の履歴は、6行6列のS極の磁気マーカ10Sに続いて7行6列のN極の磁気マーカ10Nを検出するという第6列に沿う移動を表している。このように
図14の検出履歴によれば、
図13の移動経路を再現可能である。
【0086】
図14の検出履歴のうち、(N-N)や(S-S)など磁極性の切替がない履歴の回数と、(N-S)や(S-N)など磁極性が切り替わる履歴の回数と、を集計することも良い。同図の検出履歴の場合、磁極性の切替がない履歴の回数が3回であり、磁極性の切替がある履歴の回数が2回である。磁極性の切替がない履歴は、行方向に沿う移動に対応する履歴であり、磁極性の切替がある履歴は、列方向に沿う移動に対応する履歴である。したがって、磁極性の切替がない履歴の回数が3回で、磁極性の切替がある履歴の回数が2回の移動は、
図15のごとく、起点の5行3列の磁気マーカ10に対して、行番号が2つ増えて、列番号が3つ増える7行6列の磁気マーカ10に到達する移動となる。
【0087】
図13及び
図14の構成例では、作業車両5の移動方向が、行方向に沿って列番号が昇る方向(列昇り方向)と、列方向に沿って行番号が昇る方向(行昇り方向)と、の2方向に制限されている。これに代えて、格子状の通路108に沿って上下左右4方向に作業車両5が移動できるように構成しても良い。この場合には、
図14で例示したNo.1~No.5の各履歴に対して、移動方向を追加して記録すると良い。作業車両5が送信してくるマーカ検出情報に、上下左右の直交4方向のうちのいずれの方向であるかの方位情報が含まれていれば、
図16に例示する検出履歴を生成できる。方位情報は、例えばIMU22が計測する方位に基づく情報であれば良い。
【0088】
また、作業車両5の移動方向について、行及び列に沿う4方向に加えて、斜めに移動するパターンを追加しても良い。斜めの移動については、IMU22が計測する方位によって検出可能である。例えば、停車中の他の作業車両5を迂回するときや、逆向きに移動中の作業車両5と行き違うとき等に限って、斜めの移動を許可することも良い。このような構成を採用すれば、作業車両が他の作業車両を回避する際に必要となる移動距離の増加を抑えて、回避動作を効率良く実行できる。
【0089】
また、例えばコンテナヤード105からクレーンヤード107に向かう移動を斜めの移動のみで実現し、逆向きの移動は、縦横の移動のみで実現するように構成しても良い。このような構成を採用すると、コンテナヤード105からクレーンヤード107に向かって移動する作業車両5の移動ルートと、逆向きの作業車両5の移動ルートと、の重複箇所が格子点のみとなり、重複部分を少なくできる。そしてこれにより、コンテナヤード105からクレーンヤード107に向かって移動する作業車両5と、逆向きの作業車両5と、が干渉する度合いを低減でき、移動効率を向上できる。あるいは、作業の緊急度合いに応じて、コンテナの搬送作業をランク付けしても良い。例えば、ランクとしては、特急、通常などのランクがある。例えば、特急の搬送作業については、斜めの移動を含めて最短の移動経路を設定する一方、通常の搬送作業については、縦横の移動のみの移動経路を設定することも良い。この場合には、特急の搬送作業に要する移動距離を短くでき、作業時間を短縮できる。
【0090】
図1に示す通り、格子状に通路108が設けられた走行エリア1Aにおいて、行毎に磁気マーカ10の磁極性が切り替わるパターンを例示したが、列毎に磁極性を切り替えることも良い。磁極性のパターンとしては、これらのパターンに限定されるものではない。一定の規則性をもって磁極性が切り替わるパターンであれば、所定のパターンに該当している。
【0091】
本例では、通路108が格子状に設けられた走行エリア1Aを例示すると共に、格子の形状として縦横10m間隔の正方形の格子を例示している。格子の形状としては、正方形に限らず、長方形や、平行四辺形や、菱形や、三角形等の形状であっても良い。本例と同様、格子形状の頂点をなす各格子点に磁気マーカを配置すると良い。
【0092】
さらに、本例では、格子形状のサイズとして、縦横10m間隔の正方形を例示している。この正方形の格子形状のサイズとして、複数種類のサイズを設けることも良い。例えば、海側の格子形状のサイズを小さくする一方、陸側の格子形状を大きくする構成や、コンテナを積み下ろしするエリアの格子形状のサイズを小さくする一方、それ以外の作業車両が通過するエリアの格子形状のサイズを大きくする構成等を採用しても良い。さらに、行間の距離と、列間の距離と、が異なる長方形状の格子形状を設けることも良い。この場合、列間の距離を例えば10mで一定とする一方、コンテナを積み下ろしするエリアなどで行間の距離を例えば5m等、細かくし、それ以外の作業車両が通過するエリアでは行間の距離を例えば10m等、粗く設定しても良い。
【0093】
(実施例2)
本例は、実施例1の車両用システムを、車両が走行する道路に適用した例である。この内容について、
図17及び
図18を参照して説明する。
図17のように、片側2車線の道路において車線毎に磁気マーカ10の磁極性を異ならせると共に、一部の磁気マーカ10にRFIDタグ15を付設することも良い。同図では、実施例1の構成に基づき、車両の走行エリアとして、車両の移動方向が車線毎に定められた道路を想定した例である。
【0094】
図17に示す片側2車線の道路への適用では、RFIDタグ15が付設された磁気マーカ10(タグ付きマーカ、同図中で外側に円を設けたもの)を通過したとき、そのタグ付きマーカ10の敷設位置に基づいて車両位置を特定できる。その後、同じ磁極性の磁気マーカ10の検出を繰り返している間については、車線変更することなく車両が走行していると判断できる。タグ付きマーカ10を検出した後の磁気マーカ10の検出回数(マーカ通過数)を計数すれば、RFIDタグ15が付設されているか否かに関わらず検出した磁気マーカ10を特定可能であり、その敷設位置に基づいて車両位置を特定できる。
【0095】
本例の構成についても、実施例1と同様、各磁気マーカ10に関する情報を記憶するマーカDBを設けると良い。マーカDBでは、磁気マーカ10の絶対位置や磁極性のほか、序列番号で表される番地や、走行車線か追越車線か等の車線種別や、上り下りの情報などが記憶されていると良い。さらに、タグ付きマーカ10に関する情報には、付設されたRFIDタグ15の識別情報であるタグID(タグ情報)を紐付ける(対応付ける)と良い。例えば、直近で検出されたタグ付きマーカ10の番地に対して、磁気マーカ10の通過数を加算すれば、新たに検出された磁気マーカ10の番地を特定でき、敷設位置等の特定が可能である。このような構成を採用すれば、例えば、タグ付きマーカ10のタグ情報の読取を失敗してタグなしマーカ10として検出してしまった場合であっても、タグ情報の読取失敗に関わらず新たな磁気マーカ10の番地の特定が可能になる。
【0096】
バスレーンや連結バス等を利用することにより適時性の確保や輸送能力の増強を図る
図18に例示のBRT(Bus Rapid Transit)に実施例1の車両用システムの構成を適用することも良い。例えば市街地と居住区を結ぶバスの運行ルートのうち、市街地に向かう上りのルートにN極の磁気マーカ10Nを配置する一方、居住区に向かう下りのルートにS極の磁気マーカ10Sを配置すると良い。一部の磁気マーカ10(
図18において外側に円を設けた磁気マーカ)にRFIDタグ15を付設する一方、上記の
図17の場合と同様、マーカDBにおいて各磁気マーカ10の番地や敷設位置等を管理すると良い。タグ付きマーカ10を通過した後のマーカ通過数を計数すれば、新たに検出された磁気マーカ10の番地を特定でき、敷設位置を特定できる。また、同じ磁極性の磁気マーカ10の検出の繰り返しにより、上りあるいは下りのルートに沿うバスの移動を確認できる。
なお、その他の構成及び作用効果については、実施例1と同様である。
【0097】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。
【符号の説明】
【0098】
1 作業車両システム(車両用システム)
1A 作業エリア(走行エリア)
1R 経路(自動走行経路)
10 磁気マーカ
15 RFIDタグ(無線タグ)
18 サーバ装置(位置特定部、経路演算部、遠隔制御部)
185M マーカデータベース(マーカDB)
185R 車両位置記憶部
185T 地図データベース(地
図DB)
2 検出ユニット
21 センサアレイ
212 検出処理回路
22 IMU
32 車載制御ユニット(ユニット制御部、情報通信部、直進到達地点設定部、自動走行制御部、位置特定部)
320 車載マーカデータベース(車載マーカDB)
321 マーカ履歴記憶部
34 タグリーダユニット
5 作業車両(車両)
61 車両ECU