(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】インク、インク収容容器、インクジェット記録装置、及び記録方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/037 20140101AFI20220802BHJP
C09D 11/32 20140101ALI20220802BHJP
C09D 11/033 20140101ALI20220802BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20220802BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220802BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
C09D11/037
C09D11/32
C09D11/033
C09B67/20 L
C09B67/20 H
B41J2/01 501
B41M5/00 120
(21)【出願番号】P 2018204019
(22)【出願日】2018-10-30
【審査請求日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2018022251
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018184958
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】松山 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】横濱 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】相良 亜弥佳
(72)【発明者】
【氏名】工藤 真樹
(72)【発明者】
【氏名】梅村 和彦
(72)【発明者】
【氏名】今永 之弘
(72)【発明者】
【氏名】吉原 真由美
【審査官】山本 悦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-171574(JP,A)
【文献】特開2006-176623(JP,A)
【文献】特開2018-002828(JP,A)
【文献】特開2013-056489(JP,A)
【文献】特開2017-014150(JP,A)
【文献】特開2018-020548(JP,A)
【文献】特開2013-076068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-13/00
C09B 48/00
B41J 2/01
B41M 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、下記一般式(1)で表されるキナクリドン誘導体、及びSP値が9.0以上、11.0以下の溶剤Aを含み、前記溶剤Aの含有量が10質量%未満であるインク。
【化1】
(式中、R
1,R
2,R
3およびR
4は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~4のアルキル基を表し、同一でも異なっていてもよい。また、R
5およびR
6は炭素数1~4のアルキル基を表し、同一でも異なっていてもよい。m
は1~2の整数を表し、nは0~2の整数を表す。)
【請求項2】
前記溶剤Aの含有量が、2質量%以上8質量%以下である請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記顔料に対する、前記キナクリドン誘導体の含有率が1質量%以上10質量%以下である請求項1または2に記載のインク。
【請求項4】
前記キナクリドン誘導体のインク中における含有量が、インク全量に対して0.01質量%以上1.00質量%以下である請求項1から3のいずれかに記載のインク。
【請求項5】
前記キナクリドン誘導体のインク中における含有量と、前記溶剤Aの含有量の比(前記キナクリドン誘導体/前記溶剤A)が0.045以上0.18以下である請求項1から4のいずれかに記載のインク。
【請求項6】
前記溶剤Aが、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、イソプロピリデングリセロール及びN,N-ジメチル-β-ブトキシプロピオンアミドから選択される少なくとも1種である請求項1から5のいずれかに記載のインク。
【請求項7】
前記顔料が、キナクリドン顔料である請求項1から6のいずれかに記載のインク。
【請求項8】
前記顔料が、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド122とC.I.ピグメントバイオレット19の混晶、またはC.I.ピグメントレッド202とC.I.ピグメントバイオレット19の混晶である請求項1から7のいずれかに記載のインク。
【請求項9】
前記インクが更に樹脂エマルションを含有し、前記樹脂エマルションは、アクリル樹脂またはウレタン樹脂からなる請求項1から8のいずれかに記載のインク。
【請求項10】
前記インクが更にポリエチレンワックスを含有する請求項1から9のいずれかに記載のインク。
【請求項11】
前記インクが更にポリエーテル変性シロキサン化合物を含有する請求項1から請求項10のいずれかに記載のインク。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかに記載のインクを容器中に収容してなるインク収容容器。
【請求項13】
請求項12に記載のインク収容容器と、前記インク収容容器から供給されるインクを吐出する吐出手段を有するインクジェット記録装置。
【請求項14】
請求項1から11のいずれかに記載のインクを記録媒体に付与するインク付与工程を有する記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク、インク収容容器、インクジェット記録装置、及び記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、他の記録方式に比べてプロセスが簡単で、かつフルカラー化が容易であり、簡略な構成の装置であっても高解像度の画像が得られるという利点があることから普及し、パーソナルからオフィス用途、商業印刷や工業印刷の分野へと広がりつつある。このようなインクジェット記録方式では、色材として水溶性染料を用いた水系インク組成物が主に使用されているが、耐水性及び耐光性に劣るという欠点があるため、水溶性染料に代わる水不溶性の顔料を用いた顔料インクの開発が進められている。
【0003】
オフィス用途のインクジェット印刷では、記録媒体として主に普通紙が使用され、高い画像濃度が要求されている。一般に、顔料インクを普通紙に印字した場合、顔料は紙表面に留まることなく紙中へ浸透するため、紙表面の顔料密度が低くなり、画像濃度が低下する。インク中の顔料濃度を高くすれば画像濃度は高くなるが、インクの粘度が増大し、吐出安定性が低下する。
【0004】
高速印字化対策として記録媒体に付着したインクの乾燥速度を早めるため、インクに疎水性溶剤等の浸透剤を添加して水を記録媒体中に浸透させることにより、乾燥を速める手段がとられている。
水溶媒の顔料分散体と疎水性溶媒のインクの両方の環境下で分散安定性を満たすことが求められている。
【0005】
また、上記のインクジェット記録方式や筆記具に使用する水性顔料インクは、染料を水に溶解して調製する水性染料インクと異なり、水に溶解しない顔料を水中に長期間安定的に分散させる必要があるため、種々の顔料分散体が開発されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、顔料が安定に分散し、良好な分散状態が長期保存においても維持できる水性顔料分散液の製造方法として、キナクリドン系顔料(a)、アニオン性基含有有機高分子化合物(c)、塩基性化合物(d)、及び溶解度パラメータの水素結合項δhが7~13である水溶性有機化合物(e)、キナクリドン系顔料誘導体(b)を含有する混合物を混練し、常温で固体の顔料分散体を作製する混練工程と、前記顔料分散体に水性媒体を混合する混合工程を有する水性顔料分散液の製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、顔料分散体およびインクの良好な保存安定性を両立し、吐出安定性に優れた水性インクの実現にも有効な新規の特定の構造を有するキナクリドン化合物の混合物を含むインクが開示されている。
更に、特許文献3には、顔料、ワックス、水溶性溶剤、及び水を少なくとも含むインクであって、前記水溶性溶剤としてSP値が9.0以上、11.0以下の溶剤が含まれ、インク中のワックス含有量と、SP値が9.0以上、11.0以下の溶剤の含有量との比率(質量基準)が、1.0:2.5~1.0:25.0の範囲にあるインクが開示されている。このインクは、高画像濃度で高彩度な画像でありながら、画像の耐擦過性に優れ、かつ保存安定性及び吐出安定性にも優れることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、保存性に優れ、ビーディングが抑制された記録が可能なインクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、次の<1>の発明によって解決される。
<1>顔料、下記一般式(1)で表されるキナクリドン誘導体、及びSP値が9.0以上、11.0以下の溶剤Aを含み、前記溶剤Aの含有量が10質量%未満であるインク。
【化1】
(式中、R
1,R
2,R
3およびR
4は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~4のアルキル基を表し、同一でも異なっていてもよい。また、R
5およびR
6は炭素数1~4のアルキル基を表し、同一でも異なっていてもよい。m、nは0~2の整数を表す。ただし、m、nが同時に0である場合を除く。)
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保存性に優れ、ビーディングが抑制された記録が可能なインクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る記録装置の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】本発明に係るインク収容容器の一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のインクにおいては溶剤としてSP値が9.0以上、11.0以下の溶剤(溶剤Aという)を用いる。
インクに溶剤としてSP値が9.0以上、11.0以下の溶剤Aを配合した場合、このインクをコート紙に付与した場合、コート紙のコート層上の画像部では残留溶剤が少なくなるため、ビーディングの発生が抑えられるという効果が得られる。しかし、一方で、コート紙などの水の吸収性が低い記録媒体に対しても溶剤Aはコート層を通過して、セルロース層にまで達するため、加熱乾燥によってもセルロース層に残留する溶剤を低減することは困難である。このため、印刷物をスタックした場合にセルロース層中に残留した溶剤の影響で、重ねた紙に画像が転写するブロッキングと呼ばれる問題が発生する。加えて、溶剤Aは前記一般式(1)で表されるキナクリドン誘導体を用いて分散したインクの保存安定性に影響を与え、インクに対して10質量%を超えると分散は不安定になり、インクジェットを用いた吐出にも悪影響を及ぼすようになり、発色性などの画像品質を悪くする原因になり得る。
顔料は分散が難しく、分散樹脂のみで分散しても保存性に問題が生じることがある。しかし、前記一般式(1)で表されるキナクリドン誘導体とSP値が9.0以上、11.0以下の水溶性溶剤を併用し、分散することで、保存安定性および吐出安定性が良好で、高発色なインクを得ることができ、SP値が9.0以上、11.0以下の水溶性溶剤を10質量%未満に限定することで、ビーディングが抑制され、乾燥性が高くブロッキングが防止できることにより、良好な品位の記録が可能なインクを得ることが可能になることを見出した。
このような事実に基づき、商用印刷用紙に用いられるコート紙に対しても、優れた発色性、安定性、乾燥性を備えた本発明のインクを発明するに至った。
【0012】
以下、上記本発明<1>について詳しく説明するが、その実施の形態には次の<2>から<13>も含まれるので、これらについても併せて説明する。
【0013】
<2> 前記溶剤Aの含有量が、2質量%以上8質量%以下である<1>に記載のインク。
<3> 前記顔料に対する、前記キナクリドン誘導体の含有率が1質量%以上10質量%以下である<1>または<2>に記載のインク。
<4> 前記キナクリドン誘導体のインク中における含有量が、インク全量に対して0.01質量%以上1.00質量%以下である<1>から<3>のいずれかに記載のインク。
<5> 前記キナクリドン誘導体のインク中における含有量と、前記溶剤Aの含有量の比(前記キナクリドン誘導体/前記溶剤A)が0.045以上0.18以下である<1>から<4>のいずれかに記載のインク。
<6> 前記溶剤Aが、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、イソプロピリデングリセロール及びN,N-ジメチル-β-ブトキシプロピオンアミドから選択される少なくとも1種である<1>から<5>のいずれかに記載のインク。
<7> 前記顔料が、キナクリドン顔料である<1>から<6>のいずれかに記載のインク。
<8> 前記顔料が、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド122とC.I.ピグメントバイオレット19の混晶、またはC.I.ピグメントレッド202とC.I.ピグメントバイオレット19の混晶である<1>から<7>のいずれかに記載のインク。
<9> 前記インクが更に樹脂エマルションを含有し、前記樹脂エマルションは、アクリル樹脂またはウレタン樹脂からなる<1>から<8>のいずれかに記載のインク。
<10> 前記インクが更にポリエチレンワックスを含有する<1>から<9>のいずれかに記載のインク。
<11> 前記インクが更にポリエーテル変性シロキサン化合物を含有する<1>から<10>のいずれかに記載のインク。
<12> <1>から<11>のいずれかに記載のインクを容器中に収容してなるインク収容容器。
<13> <12>に記載のインク収容容器と、前記インク収容容器から供給されるインクを吐出する吐出手段を有するインクジェット記録装置。
<14> <1>から<11>のいずれかに記載のインクを記録媒体に付与するインク付与工程を有する記録方法。
【0014】
本発明のインクは、顔料、下記一般式(1)で表されるキナクリドン誘導体、及びSP値が9.0以上、11.0以下の溶剤Aを含み、前記溶剤Aの含有量が10質量%未満である。
【化1】
(式中、R
1,R
2,R
3およびR
4は水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~4のアルキル基を表し、同一でも異なっていてもよい。また、R
5およびR
6は炭素数1~4のアルキル基を表し、同一でも異なっていてもよい。m、nは0~2の整数を表す。ただし、m、nが同時に0である場合を除く。)
【0015】
前記一般式(1)で表されるキナクリドン誘導体は下記反応式(1)から(2)に示す反応により、キナクリドン誘導体混合物として得ることができる。
まず、下記反応式(1)に示すようにキナクリドン化合物(A-1)と過剰量のクロロスルホン酸を無溶媒下で反応させて水洗することによりクロロスルホン酸基及びスルホン酸基が置換されたキナクリドン混合物(A-2)を得る。次いで反応式(2)に示すように前記(A-2)とジアルキルアミンとを反応させてキナクリドン誘導体混合物(A-3)を得る。このようにして反応で得られるキナクリドン誘導体混合物は、一般式(1)においてm=1かつn=1の場合のキナクリドン誘導体を含有する。また、一般式(1)において、m=1、n=1で示されるキナクリドン誘導体においても、スルホン酸基およびジアルキルアミノスルホン酸基の置換位置が異なるキナクリドン誘導体が存在し、これらの混合物であっても良い。
本発明においては、前記一般式(1)で表されるキナクリドン誘導体は、混合物であっても良く、前記の方法によって得られたキナクリドン誘導体混合物を用いることができる。
【化2】
【化3】
【0016】
前記キナクリドン誘導体混合物において、前記一般式(1)においてm=1かつn=1の場合のキナクリドン誘導体を含有することは、例えば質量分析によって確認することができる。
例えば、得られたキナクリドン誘導体混合物の質量分析において、556.1±0.1の正の分子イオンピークを有し、かつ554.1±0.1の負イオン分子ピークを有する場合、置換位置は特定できないが、以下の式で表されるm=1かつn=1であるキナクリドン化合物が混在していることが確認される。また正イオン測定で611.2に正の分子イオンピークがみられると、以下の式で表されるm=2かつn=0のキナクリドン化合物も混在していることがわかる。
質量分析においては装置により質量精度、分解能は異なるが、ここで言う「±0.1」はこの質量分析の誤差範囲を表している。この範囲内に入れば本発明におけるm=1かつn=1のキナクリドン誘導体を特定できたものとする。
【化4】
【0017】
また、インク中に前記一般式(1)で表されるキナクリドン誘導体が含まれているかどうかは、例えば、以下のようにすることで判断することができる。
まず、インクの他の成分とキナクリドン誘導体を含む顔料成分に分離する。インクに溶解している成分は遠心沈降や限外ろ過により分離し、インク中に分散している成分(定着用樹脂など)や、顔料に付着(吸着)している分散樹脂などの成分は、これらを溶解する溶剤で溶かして除く。この操作は、インクに含まれる材料によっても変わる。キナクリドン誘導体と顔料をインク中の他の成分から分離した後、ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC-MS)による硫黄を含む官能基の量により、前記一般式(1)で表されるキナクリドン誘導体を検出することが可能である。
【0018】
<インク>
以下、インクに用いる有機溶剤、水、色材、樹脂、添加剤等について説明する。
【0019】
-色材-
本発明では、色材としては、顔料を用いる。顔料には、界面活性剤で顔料を分散した界面活性剤分散顔料、樹脂で顔料を分散した樹脂分散顔料、顔料の表面を樹脂で被覆した樹脂被覆分散顔料及び顔料表面に親水基を設けた自己分散顔料などがあるが、水分散性のものが好ましい。
【0020】
本発明のインクは、マゼンタインクであることが好ましい。
前記顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料などが挙げられる。これらの中でも多環式顔料などが好ましく、特にキナクリドン顔料が好ましい。
前記顔料の例としては、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、150、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、209、219、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38などが挙げられる。キナクリドン顔料が好ましく、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド122とC.I.ピグメントバイオレット19の混晶、またはC.I.ピグメントレッド202とC.I.ピグメントバイオレット19の混晶がより好ましい。
【0021】
使用する顔料のBET比表面積は、好ましくは約10m2/g以上約1500m2/g以下、より好ましくは約20m2/g以上約600m2/g以下、更に好ましくは約50m2/g以上約300m2/g以下である。
所望の比表面積のものの利用が容易ではない場合には、顔料を比較的小さい粒径にするため、一般的なサイズ減少又は粉砕処理(例えば、ボールミル粉砕、ジェットミル粉砕、超音波処理)を行えば良い。
前記水分散性顔料の体積平均粒径(D50)は、インク中において10nm以上200nm以下が好ましい。
【0022】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0023】
なお、本発明では、色調調整の目的で染料を併用しても構わないが、耐候性を劣化させない範囲内で使用する必要がある。
【0024】
-顔料誘導体―
上記顔料を水に分散するため、親水基を結合させた顔料誘導体が用いられる場合があり、分散剤等を用いて顔料を分散する際に、顔料に対して少量の顔料誘導体を加えて、ミリングまたは混練することにより分散体を作成することができる。顔料誘導体を用いると分散液の安定性を高めることが可能であり、少量の添加により高い効果が期待できる。分散液に用いる顔料と顔料誘導体の疎水部の構造が異なっていても十分な吸着力を得ることは可能であり、十分な保存安定性を得ることは可能であるが、顔料と顔料誘導体の疎水部が同じ構造であるほうが、吸着力は高く顔料表面に顔料誘導体が吸着した場合にはがれにくくなるため、より高い保存安定性が得られる。本発明においては、顔料誘導体として、前記一般式(1)で表されるキナクリドン誘導体を用い、顔料に対して1質量%以上10質量%以下の添加量が好ましく、より好ましくは、顔料に対して2質量%以上8質量%以下である。
また、前記一般式(1)で表されるキナクリドン誘導体のインクにおける含有量は、インク全量に対して0.01質量%以上1.00質量%以下が好ましい。0.01質量%以上であると、保存安定性および吐出安定性が充分に得られる。また、1.00質量%以下であると、印刷物の彩度が低くなることがない。
更に、前記キナクリドン誘導体のインク中における含有量と、前記溶剤Aの含有量の比(前記キナクリドン誘導体/前記溶剤A)が0.045以上0.18以下であることが好ましく、上記範囲内であると高い保存安定性が得られる。
尚、インクが前記一般式(1)で表されるキナクリドン誘導体を混合物として含む場合、前記一般式(1)で表されるキナクリドン誘導体の含有量は、含有される前記一般式(1)で表されるキナクリドン誘導体の合計の含有量であり、前記一般式(1)で表されるキナクリドン誘導体混合物の含有量を言う。
【0025】
-顔料分散剤-
本発明で用いる分散剤としては、特に制限はなく、顔料分散液の調整時に用いられる分散剤の中から目的に応じて適宜選択することができる。
例えば、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン-β-ナフチルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル等のノニオン系界面活性剤、あるいは、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン-β-ナフチルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルホスホン酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルカルボン酸塩、ラウリルエーテルホスホン酸塩、オクチルエーテルカルボン酸塩、ジスチリルフェニルエーテル硫酸塩、スチリルフェニルエーテルホスホン酸塩、β-ナフチルエーテルカルボン酸塩等のアニオン系界面活性剤を分散剤として用いることができる。
【0026】
-共重合体-
本発明では共重合体を顔料分散剤として用いることができる。
共重合体としては、アクリル酸系共重合体、ビニル系共重合体、ポリエステル系共重合体、ポリウレタン系共重合体を用いることができる。ここで、アクリル酸系共重合体はアクリル酸誘導体モノマー、及び/またはメタクリル酸誘導体モノマーを用いた共重合体を指す。
【0027】
さらに、本発明には重合性モノマーからなる繰り返し単位を有することができ、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、例えば、重合性の疎水性モノマー、重合性の親水性モノマー、重合性界面活性剤などが挙げられる。
疎水性モノマーとしては、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレン、α-メチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、4-クロロメチルスチレン等の芳香族環を有する不飽和エチレンモノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸ヘンイコシル、(メタ)アクリル酸ドコシル等の(メタ)アクリル酸アルキル;1-ヘプテン、3,3-ジメチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘキセン、5-メチル-1-ヘキセン、1-オクテン、3,3-ジメチル-1-ヘキセン、3,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、1-ノネン、3,5,5-トリメチル-1-ヘキセン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、1-ドコセ等のアルキル基を有する不飽和エチレンモノマー等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0028】
親水性モノマーとしては、特に限定されないが、(メタ)アクリル酸又はその塩、マレイン酸又はその塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸、イタコン酸モノメチル、フマル酸、4-スチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-メタクイロキシエチルアシッドホスホエート、1-メタクリロキシエタン-1,1-ジホスホン酸等のアニオン性不飽和エチレンモノマー;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニルピロリドン、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-t-ブチルアクリルアミド、N-オクチルアクリルアミド、N-t-オクチルアクリルアミド、ダイアセトンアミド等の非イオン性不飽和エチレンモノマー等が挙げられ、二種以上を併用してもよい。
【0029】
重合性界面活性剤としては、ラジカル重合可能な不飽和二重結合性基を分子内に少なくとも1つ以上有するアニオン性又は非イオン性の界面活性剤が挙げられる。
【0030】
前記アニオン性界面活性剤としては、硫酸アンモニウム塩基(-SO3
-NH4
+)などの硫酸塩基とアリル基(-CH2-CH=CH2)とを有する炭化水素化合物、硫酸アンモニウム塩基(-SO3
-NH4
+)などの硫酸塩基とメタクリル基〔-CO-C(CH3)=CH2〕とを有する炭化水素化合物、又は硫酸アンモニウム塩基(-SO3
-NH4
+)などの硫酸塩基と1-プロペニル基(-CH=CH2CH3)とを有する芳香族炭化水素化合物が挙げられる。その具体例としては、三洋化成社製のエレミノールJS-20、及びRS-300、第一工業製薬社製のアクアロンKH-10、アクアロンKH-1025、アクアロンKH-05、アクアロンHS-10、アクアロンHS-1025、アクアロンBC-0515、アクアロンBC-10、アクアロンBC-1025、アクアロンBC-20、及びアクアロンBC-2020などが挙げられる。
【0031】
前記非イオン性界面活性剤としては、1-プロペニル基(-CH=CH2CH3)とポリオキシエチレン基〔-(C2H4O)n-H〕とを有する炭化水素化合物又は芳香族炭化水素化合物が挙げられる。その具体例としては、第一工業製薬社製のアクアロンRN-20、アクアロンRN-2025、アクアロンRN-30、及びアクアロンRN-50、花王社製のラテムルPD-104、ラテムルPD-420、ラテムルPD-430、及びラテムルPD-450などが挙げられる。
【0032】
共重合体は撹拌機、温度計、窒素導入管を備えたフラスコ内の溶媒に、モノマー成分を重合開始剤存在下窒素ガス還流下、50℃以上150℃以下程度の温度で反応させることで得られる。合成した共重合体の水溶液または水分散液の粘度の調整は、分子量を変えることで可能であり、重合時のモノマー濃度、重合開始剤量、重合温度、重合時間を変えればよい。
前記重合温度に関しては、高温にて短時間で重合すると低分子量の共重合体が得られやすく、低温度にて長時間かけて重合すれば高分子量の共重合体が得られやすい傾向にある。前記重合開始剤の含有量については、多い方が低分子量の共重合体が得られやすく、少ない方が高分子量の共重合体が得られやすい傾向にある。前記反応時のモノマー濃度については、高濃度の方が低分子量の共重合体が得られやすく、低濃度の方が高分子量の共重合体が得られやすい傾向にある。共重合体の重量平均分子量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3,000以上60,000以下が好ましく、4,000以上50,000以下がより好ましく、5,000以上30,000以下が更に好ましい。前記重量平均分子量が好ましい範囲内であると、インクジェット記録用インクに用いた場合、分散安定性、吐出安定性が良好となる点で有利である。
前記重量平均分子量は、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0033】
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
多価アルコール類の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等が挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
多価アルコールアリールエーテル類としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
アミド類としては、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等が挙げられる。
アミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
含硫黄化合物類としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。
その他の有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0034】
有機溶剤として、炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
【0035】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
【0036】
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0037】
本発明のインクは、SP値が9.0以上11.0以下の溶剤Aを少なくとも1種含有する。これにより、記録媒体への濡れ性が向上し、塗工層を持つ吸インク性の悪いコート紙などの商業印刷用紙にもインク成分が浸透し、ビーディングを抑制することが可能となる。
【0038】
SP値は溶解パラメータのことで、溶剤、樹脂や顔料など、水や溶剤に対して溶解または分散して用いられる材料の親和性、溶解性の指標として一般に広く用いられている。SP値の求め方は、実験により測定する方法や、浸漬熱など物理特性の測定から計算する方法、分子構造から計算する方法など様々な方法が提唱されているが、本発明ではFedorsが提唱した分子構造から計算する方法を用いる。この方法は分子構造がわかればSP値が計算できる点と、実験による測定値との差が小さい点で有効である。Fedorsの方法では、各原子や原子団の25℃における蒸発エネルギーΔe
i、モル体積Δv
iを下表のように定め、この値を式(1)に代入することでSP値を求めることができる。なお、本発明では25℃におけるSP値を用い、温度換算等は行わない。
【数1】
なお式(1)において、ΔE:凝集エネルギー密度、V:モル体積、Δe
i:原子または原子団の蒸発エネルギー、Δv
i:原子または原子団のモル体積、である。
【0039】
例えば、イソプロピリデングリセロール(iPDG)のSP値は、下記表1の値より次のように計算される。
SP値=(14150/139.8)
1/2=10.1(cal/cm
3)
1/2
【表1】
【0040】
前記溶剤Aとしては水溶性のものが好ましく、特に3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(SP値10.7)、イソプロピリデングリセロール(SP値9.8)及びN,N-ジメチル-β-ブトキシプロピオンアミド(SP値9.8)が好ましい。これらの溶剤は、乾燥性に優れる。
SP値が9.0未満の有機溶剤は、一般に水への溶解性が非常に低く分離が発生し易く、また、SP値が11.0を超える有機溶剤は、乾燥性やビーディングが悪化する傾向があるため、これらの溶剤のみでインクを構成することはできず、SP値が9.0以上11.0以下の溶剤Aと混合して用いる必要がある。
SP値が9.0以上11.0以下の溶剤Aの含有量は、インク全体の10質量%未満であり、好ましくは2質量%以上8質量%以下である。含有量が2質量%以上であれば、ビーディング抑制効果がより向上する。また、含有量が10質量%未満であれば、インクの粘度上昇により吐出安定性が悪化することがなく、8質量%以下であると更に好ましい。
ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC-MS)を用いることで、溶剤を含む有機化合物の定量ができ、インクにおける溶剤Aの含有量を求めることができる。
【0041】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0042】
-樹脂エマルション
樹脂エマルションとしては、造膜性(画像形成性)に優れ、かつ高撥水性、高耐水性、高耐候性を備えたものが、高耐水性で高画像濃度(高発色性)の画像記録に有用であり、例えば、縮合系合成樹脂、付加系合成樹脂、天然高分子化合物などが挙げられる。
前記縮合系合成樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、アクリル-シリコーン樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。前記付加系合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルエステル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、不飽和カルボン酸系樹脂などが挙げられる。前記天然高分子化合物としては、例えば、セルロース類、ロジン類、天然ゴムなどが挙げられる。また、樹脂エマルションとしては、樹脂自身が親水基を持ち自己分散性を持つもの、樹脂自身は分散性を持たず界面活性剤や親水基を持つ樹脂により分散性を付与したものが使用できる。これらの中でも、特にポリアクリル樹脂またはポリウレタン樹脂が好ましく、前記樹脂エマルションを2種類以上併用してもよい。
不飽和単量体の乳化重合の場合には、不飽和単量体、重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤、キレート剤、及びpH調整剤などを添加した水中で反応させて樹脂エマルションを得るため、容易に水分散性樹脂を得ることができ、樹脂構成を替えやすく、目的の性質を作りやすい。
【0043】
樹脂エマルションは、強アルカリ性、強酸性下では分散破壊や加水分解などの分子鎖の断裂が引き起こされるため、pHは4以上12以下が好ましく、特に水分散性着色剤との混和性の点から、6以上11以下がより好ましく、7以上10以下が更に好ましい。
【0044】
樹脂エマルションの平均粒径(D50)は、分散液の粘度と関係しており、組成が同じものでは粒径が小さくなるほど同一固形分での粘度が大きくなる。インク化した時に過剰な高粘度にならないためにも水分散性樹脂の平均粒子径(D50)は50nm以上が好ましい。また、粒径が数十μmになるとインクジェットヘッドのノズル口より大きくなるため使用できない。ノズル口より小さくても粒子径の大きな粒子がインク中に存在すると吐出性を悪化させる。そこで、インク吐出性を阻害させないため平均粒子径(D50)は200nm以下がより好ましく、150nm以下が更に好ましい。
【0045】
また、樹脂エマルションは、水分散性着色剤を紙面に定着させる働きを有し、常温で被膜化して着色剤の定着性を向上させる機能を有する。そのため、樹脂エマルションの最低造膜温度(MFT)は30℃以下であることが好ましい。また、ガラス転移温度が-40℃以下になると、樹脂皮膜の粘稠性が強くなり印字物にタックが生じるため、ガラス転移温度は-30℃以上であることが好ましい。
樹脂エマルションのインク中の含有量は、固形分で0.5質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上8質量%以下がより好ましい。
【0046】
-ワックス-
本発明によるインクはワックスを含んでもよく、ワックスは水溶性、水分散性のいずれであってもよい。水溶性ワックスとしては、水酸基、カルボキシル基、エチレンオキサイド基、アミン基等の親水基を有すワックス、水分散性ワックスとしては、主として、ワックスエマルションとして使用することができる。
【0047】
具体的には、カルナバワツクス、キャンデリラワックス、みつろう、ライスワックス、ラノリン等の植物、動物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト等の鉱物系ワックス、カーボンワックス、へキストワックス、ポリエチレンワックス、ステアリン酸アミド等の合成ワックス類、αオレフイン・無水マレイン酸共重合体等の天然・合成ワックスエマルションや配合ワックス等を単独または複数種を混合して使用することができる。また、その他のラテックス、コロイド溶液、懸濁液等も使用することができる。本発明においては、水溶性溶剤との溶解性・分散性が良好であるポリエチレンワックスが望ましい。
【0048】
ワックスは市販されているものを利用することも可能であり、その具体例としてはセロゾール524(カルナバワックス、融点83℃、粒径200nm、中京油脂製)、HYTEC E-6500(ポリエチレンワックス、融点140℃、粒径60nm、東邦化学製)、HYTEC E-8237(ポリエチレンワックス、融点106℃、粒径80nm、東邦化学製)、HYTEC P-9018(ポリプロピレンワックス、融点156℃、粒径60nm、東邦化学製)、ノプコートPEM-177(ポリオレフィンワックス、融点105℃、粒径10nm、サンノプコ製)、AQUACER498(パラフィン系ワックス、融点58℃、ビックケミージャパン製)、AQUACER535(混合系ワックス、融点95℃,ビックケミージャパン製)、AQUACER531(ポリエチレンワックス、融点130℃、粒径123nm、ビックケミージャパン製)、AQUACER515(ポリエチレンワックス、融点135℃、粒径33nm、ビックケミージャパン製)などが挙げられる。
【0049】
ワックスの融点は、70℃以上170℃以下の範囲が好ましく、より好ましくは100℃以上140℃以下である。融点が70℃以上であれば画像がべたつくことがなく、画像を重ねても画像転写は発生しない。融点が170℃以下であれば、画像を擦ったときの摩擦熱で融解し、滑り性が得られるため、画像の耐擦過性は良好となる。
【0050】
ワックスの体積平均粒子径は、200nm以下が好ましく、より好ましくは20nm以上150nm以下である。200nm以下であれば、ノズルやヘッド内のフィルターに引っかかることがなく、良好な吐出が得られる。
【0051】
インクに対するワックス固形分の添加量は0.05質量%以上2質量%以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.1質量%以上0.5質量%以下である。添加量が0.1質量%以上であれば、印字後の画像表面に滑り性を付与することができ、画像の耐擦過性を高く維持することができる。また、添加量が0.5質量%以下であれば、インク中の溶剤にワックスが溶解または分散することができるため、ヘッドに析出して付着することがなくなるため、良好にインク滴を吐出することが可能となる。
【0052】
-界面活性剤-
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
界面活性剤は、親水基によりアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤に大別され、疎水基によりフッ素系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤等に大別することができる。
【0053】
アニオン系界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。
【0054】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオール、グリコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、アセチレングリコールなどが挙げられる。
【0055】
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。
中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
【0056】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
【0057】
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
【0058】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0059】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0060】
-ポリエーテル変性シロキサン化合物-
本発明で用いるインクの材料として、界面活性剤であるポリエーテル変性シロキサン化合物を用いることもできる。これにより、ヘッドノズルプレート撥インク層に濡れ難いインクとなり、インクのノズル付着による吐出不良を防ぎ、吐出安定性が向上する。また、特に問題になりやすいノズル撥インク層面にインクが付着し難く、吐出不良が生じ難いインクとなる。中でも、下記一般式(2)で示されるものが好ましく、特に、水分散性の色材の種類や有機溶剤の組合せによって分散安定性を損なわず、動的表面張力が低く、浸透性、レベリング性の高いものが好ましい。これらのポリエーテル変性シロキサン化合物は、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【化5】
(上記式中、R5は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、mは0~23の整数、nは1~10の整数、aは1~23の整数、bは0~23の整数を表す。)
【0061】
上記一般式(2)で示される化合物の例としては、次の式(2-1)から式(2-3)の化合物が挙げられる。
【化6】
【化7】
【化8】
【0062】
更に、上記化合物と同等の効果を示す市販品のポリエーテル変性シロキサン化合物界面活性剤としては、TORAY ダウ・コーニング社製の、71ADDITIVE,74ADDITIVE,57ADDITIVE,8029ADDITIVE,8054ADDITIVE,8211ADDITIVE,8019ADDITIVE,8526ADDITIVE,FZ-2123,FZ-2191、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製の、TSF4440,TSF4441,TSF4445,TSF4446,TSF4450,TSF4452,TSF4460、日信化学工業社製の、シルフェイスSAG002,シルフェイスSAG003,シルフェイスSAG005,シルフェイスSAG503A,シルフェイスSAG008,シルフェイスSJM003、エボニック社製の、TEGO_Wet_KL245,TEGO_Wet_250,TEGO_Wet_260,TEGO_Wet_265,TEGO_Wet_270,TEGO_Wet_280、ビックケミー・ジャパン社製の、BYK-345,BYK-347,BYK-348,BYK-375,BYK-377等が挙げられる。
【0063】
また、必要に応じて、上記ポリエーテル変性シロキサン化合物界面活性剤と、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール又はアセチレンアルコール系界面活性剤を併用しても良い。
【0064】
界面活性剤のインク中の含有量は、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.5質量%以上3質量%以下がより好ましい。0.001質量%以上であれば、界面活性剤の添加効果が得られる。しかし、5質量を超えると添加効果が飽和するため増量しても意味がない。
【0065】
-その他の成分-
本発明のインクには、前記成分の他に、必要に応じて、公知の種々の添加剤を加えても良い。その例としては、浸透剤、抑泡剤(消泡剤)、pH調整剤、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤などが挙げられる。
【0066】
<浸透剤>
浸透剤としては、炭素数8~11の非湿潤剤性ポリオール化合物又はグリコールエーテル化合物を少なくとも1種が好ましい。ここで、非湿潤剤性とは、25℃の水中において0.2質量%以上5.0質量%以下の間の溶解度を有することを意味する。これらの浸透剤の中でも、下記一般式(3)で表される1,3-ジオール化合物が好ましく、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール[溶解度:4.2%(25℃)]、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール[溶解度:2.0%(25℃)]が特に好ましい。
【化9】
(上記式中、R′はメチル基又はエチル基、R″は水素又はメチル基、R″′はエチル基又はプロピル基である。)
【0067】
その他の非湿潤剤性ポリオール化合物としては、例えば、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,3-ジメチル-1,2-ブタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、5-ヘキセン-1,2-ジオールなどの脂肪族ジオールが挙げられる。
浸透剤のインク中の含有量は、0.5質量%以上4質量%以下が好ましく、1質量%以上3質量%以下がより好ましい。0.5質量%以上であれば、インクの浸透性効果が得られ、画像品質が向上する。また、4質量%以下であれば、インクに十分に溶解するので、分離したりインク初期粘度が高くなる等の不具合は生じない。
【0068】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0069】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0070】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0071】
-キレート試薬-
キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等がある。
【0072】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0073】
<酸化防止剤>
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、などが挙げられる。
【0074】
<紫外線吸収剤>
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤、などが挙げられる。
【0075】
-インクの製造-
本発明のインクは、顔料、前記キナクリドン誘導体、有機溶剤、水、及び必要に応じて添加するその他の成分を水性媒体中に分散又は溶解し、更に必要に応じて攪拌混合して製造する。この攪拌混合は、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェイカー、超音波分散機等により行うことができ、攪拌混合は通常の攪拌羽を用いた攪拌機、マグネチックスターラー、高速の分散機等で行うことができる。
【0076】
-インク物性-
本発明のインクの物性には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。
しかし、インクの静的表面張力が20mN/m以上であり、且つ、最大泡圧法によるバブルライフタイム15msec時の動的表面張力が34mN/m以下にすると、記録媒体に対し十分な濡れ性を確保することができるにも関わらず、インクジェットヘッドのノズルプレートオプツール撥水膜に濡れ難くなり、吐出安定性も確保でき、極めて安定なインクとなるので好ましい。
また、インクの25℃での粘度は5mPa・s以上25mPa・s以下が好ましく、6mPa・s以上20mPa・s以下がより好ましい。5mPa・s以上であれば印字濃度や文字品位の向上効果が得られる。また25mPa・s以下であれば、インク吐出性を確保することができる。
上記粘度は、例えば粘度計(RE-550L、東機産業社製)を用いて、25℃で測定することができる。
【0077】
本発明のインクは、インクジェットヘッドとして、インク流路内のインクを加圧する圧力発生手段として圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるいわゆるピエゾ型のもの(特開平2-51734号公報参照)、あるいは、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させるいわゆるサーマル型のもの(特開昭61-59911号公報参照)、インク流路の壁面を形成する振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで,インク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させる静電型のもの(特開平6-71882号公報参照)などのいずれのインクジェットヘッドを搭載するプリンタにも良好に使用できる。
また、本発明のインクは、インクカートリッジ等のインク収容容器中に収容して使用しても良い。
【0078】
<インク収容容器>
本発明のインク収容容器は、本発明のインクを容器中に収容してなり、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材等を有してなる。
前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク収容部などを少なくとも有するもの、などが好適に挙げられる。
【0079】
<記録媒体>
本発明のインクを用いて記録を行うことが可能な記録媒体には特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、普通紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、汎用印刷用紙などが挙げられる。しかし、本発明のインクは、商業印刷用紙に対しても他の用紙と同様に良好な記録が可能である点で、非常に優れたものである。
ここでいう商業印刷用紙とは、支持体の少なくとも一方の面上に塗工層を有する印刷用紙のことであり、例えば、塗工層材料として炭酸カルシウムやカオリン等のフィラーを用いた印刷用紙が挙げられる。また、商業印刷用紙の一例である印刷コート紙は、塗工層がクレー(カオリン)や炭酸カルシウムなどの白色顔料と、デンプンなどの接着剤(バインダー)で作られている。
【0080】
本発明のインクを用いて形成された画像を有する記録物は、高画質で滲みがなく、経時安定性に優れ、各種の印字乃至画像が記録された資料等として各種用途に好適に使用することができる。
記録媒体の中でも、画像品質(画像濃度、彩度、ビーディング、カラーブリード)に優れ、かつ光沢性が高く、更にスミア定着性にも優れた画像が記録できる点から、吸液特性が一定範囲内の記録媒体が好適である。具体的には、支持体の少なくとも一方の面上に塗工層を有する商業印刷用紙が挙げられ、前記塗工層を有する面の、動的走査吸液計で測定した接触時間100msにおける純水の前記印刷用紙への転移量が2mL/m2以上35mL/m2以下であり、かつ接触時間400msにおける純水の前記印刷用紙への転移量が3mL/m2以上40mL/m2以下である印刷用紙が好ましい。これよりも純水の転移量が少なすぎると、ビーディング(隣り合ったドットが引き付けあったりして画像にブツブツ感が出るような現象)及びカラーブリード(色間の滲み)が発生し易くなることがあり、純水の転移量が多すぎると、記録後のインクドット径が所望の径よりも小さくなりベタ画像が埋まらないことがある。
【0081】
純水の転移量は、動的走査吸液計(K350シリーズD型、協和精工社製)を用いて測定することができる。接触時間100msにおける転移量は、それぞれ接触時間の近隣接触時間における転移量の測定値から補間により求めることができる。
【0082】
吸液特性が前記一定範囲内にある印刷用紙の市販品としては、例えば、PODグロスコート、OKトップコート+、OK金藤+、SA金藤+(王子製紙社製)、スーパーMIダル、オーロラコート、スペースDX(日本製紙社製)、αマット、ミューコート(北越製紙社製)、雷鳥アート、雷鳥スーパーアート(中越パルプ工業社製)、パールコートN(三菱製紙社製)などが挙げられる。
【0083】
<記録装置、記録方法>
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機、立体造形装置などに好適に使用することができる。
本発明において、記録装置、記録方法とは、記録媒体に対してインクや各種処理液等を吐出することが可能な装置、当該装置を用いて記録を行う方法である。記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
この記録装置には、インクを吐出するヘッド部分だけでなく、記録媒体の給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
記録装置、記録方法は、加熱工程に用いる加熱手段、乾燥工程に用いる乾燥手段を有しても良い。加熱手段、乾燥手段には、例えば、記録媒体の印字面や裏面を加熱、乾燥する手段が含まれる。加熱手段、乾燥手段としては、特に限定されないが、例えば、温風ヒーター、赤外線ヒーターを用いることができる。加熱、乾燥は、印字前、印字中、印字後などに行うことができる。
また、記録装置、記録方法は、インクによって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、幾何学模様などのパターン等を形成するもの、3次元像を造形するものも含まれる。
また、記録装置には、特に限定しない限り、吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、吐出ヘッドを移動させないライン型装置のいずれも含まれる。
更に、この記録装置には、卓上型だけでなく、A0サイズの記録媒体への印刷も可能とする広幅の記録装置や、例えばロール状に巻き取られた連続用紙を記録媒体として用いることが可能な連帳プリンタも含まれる。
記録装置の一例について
図1乃至
図2を参照して説明する。
図1は同装置の斜視説明図である。
図2はメインタンクの斜視説明図である。記録装置の一例としての画像形成装置400は、シリアル型画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク410(410k、410c、410m、410y)の各インク収容部411は、例えばアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。インク収容部411は、例えば、プラスチックス製の収容容器ケース414内に収容される。これによりメインタンク410は、各色のインクカートリッジとして用いられる。
一方、装置本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側にはカートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、メインタンク410が着脱自在に装着される。これにより、各色用の供給チューブ436を介して、メインタンク410の各インク排出口413と各色用の吐出ヘッド434とが連通し、吐出ヘッド434から記録媒体へインクを吐出可能となる。
【0084】
この記録装置には、インクを吐出する部分だけでなく、前処理装置、後処理装置と称される装置などを含むことができる。
前処理装置、後処理装置の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などのインクの場合と同様に、前処理液や、後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液や、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
前処理装置、後処理装置の他の態様として、インクジェット記録方式以外の、例えば、ブレードコート法、ロールコート法、スプレーコート法による前処理装置、後処理装置を設ける態様がある。
【0085】
<記録物>
本発明のインク記録物は、記録媒体上に、本発明のインクを用いて形成された画像を有してなる。
インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録して記録物とすることができる。
【0086】
本発明のインクの用途は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、印刷物、塗料、コーティング材、下地用などに応用することが可能である。さらに、インクとして用いて2次元の文字や画像を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。
立体造形物を造形するための立体造形装置は、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、インクの収容手段、供給手段、吐出手段や乾燥手段等を備えるものを使用することができる。立体造形物には、インクを重ね塗りするなどして得られる立体造形物が含まれる。また、記録媒体等の基材上にインクを付与した構造体を加工してなる成形加工品も含まれる。成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された記録物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形する用途に好適に使用される。
【0087】
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印刷等は、いずれも同義語とする。
【0088】
記録媒体、メディア、被印刷物は、いずれも同義語とする。
【実施例】
【0089】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、例中の「部」及び「%」は、特に断りのない限り、「質量部」及び「質量%」である。
【0090】
<キナクリドン誘導体混合物>
氷水浴にて冷却した200mL四ツ口フラスコに、クロロスルホン酸50部を仕込み、C.I.Pigment Red 122(大日精化社製レッドNo.81)5部を10~15℃の温度にて5分間かけ少しずつ添加した。さらに80℃で3時間攪拌を行い、室温にもどした後、反応溶液を氷水600部中に攪拌しながら加えてスルホン化物を析出させた。次いで、濾別して、0.1%塩酸300部で洗浄し、更にイオン交換水300部で洗浄し、赤色の中間物ウエットケーキを得た。このウエットケーキに水150mLを加え撹拌しながら氷水浴で4℃に冷却した。これにジエチルアミン10.75gを5分間かけ滴下し、さらに70℃の温度で3時間撹拌した。室温まで冷却した後、撹拌しながら濃塩酸15.6gを加え、析出している赤色沈殿物を濾取した。このウエットケーキをイオン交換水にて撹拌ろ過洗浄をおこない、60℃にて加熱減圧乾燥2日間することにより、えび茶色粉末のキナクリドン誘導体混合物、下記式(1-1)と式(1-2)の混合物2.67gを得た。
【0091】
【0092】
<共重合体>
1,6-ヘキサンジオール(東京化成工業株式会社製)62.0部(525mmol)を塩化メチレン700mLに溶解し、ピリジン20.7部(262mmol)を加えた。この溶液に、2-ナフタレンカルボニルクロリド(東京化成工業株式会社製)50.0部(262mmol)を塩化メチレン100mLに溶解した溶液を、2時間かけて撹拌しながら滴下した後、室温で6時間撹拌した。得られた反応溶液を水洗した後、有機相を単離し、硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を留去した。残留物を、溶離液として塩化メチレン/メタノール(体積比:98/2)混合溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、2-ナフトエ酸-2-ヒドロキシエチルエステル52.5部を得た。
次に、2-ナフトエ酸-2-ヒドロキシエチルエステル42.1部(155mmol)を乾燥メチルエチルケトン80mLに溶解し、60℃まで加熱した。この溶液に、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズMOI、昭和電工株式会社製)24.0部(155mmol)を乾燥メチルエチルケトン20mLに溶解した溶液を、1時間かけて撹拌しながら滴下した後、70℃で12時間撹拌した。室温まで冷却した後、溶媒を留去した。残留物を、溶離液として塩化メチレン/メタノール(体積比:99/1)混合溶媒を用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、下記式(3)で表される構造を有するモノマー57.0部を得た。
【化11】
【0093】
次いで、アクリル酸(シグマアルドリッチ社製)1.20部(16.7mmol)、及び前記式(3)で表される構造を有するモノマー7.12部(16.7mmol)を乾燥メチルエチルケトン40mLに溶解してモノマー溶液を調製した。そのモノマー溶液の10%を冷却管を装備した100mLのフラスコに加え、アルゴン気流下で75℃まで加熱した後、この溶液に、この溶液を攪拌しながら、残りのモノマー溶液に0.273部(1.67mmol)の2,2’-アゾイソ(ブチロニトリル)(東京化成社製)を溶解した溶液を1.5時間かけて滴下し、さらに60℃で15時間撹拌した。室温まで冷却し、得られた反応溶液をヘキサンに投下した。析出した共重合体をろ別し、減圧乾燥して共重合体8.13部を得た。得られた共重合体を100%酸中和するようにジメチルエタノールアミン水溶液に溶解しながら、共重合体の濃度が10%になるようにイオン交換水で濃度調整することで共重合体を得た。得られた共重合体の重量平均分子量は、21,800であった。
【0094】
[実施例1]
<分散体1>
イオン交換水81部に、前記共重合体3.2部とジメチルアミノエタノール0.8部を投入して溶解し、上記式(1-1)で表される化合物と式(1-2)で表される化合物の混合物である<キナクリドン誘導体混合物>1.0部とキナクリドン顔料(C.I.Pigment Red 202とPigment Violet 19の混晶顔料、BASF社製Cinquasia Magenta D4500J)14.0部を加えて超音波ホモジナイザーにより10分間プレ分散を行った。これを0.05mmのジルコニアビーズを用いたウルトラアスペックミルUAM015型(寿工業(株)製)に投入して1時間分散処理を行い、得られた分散体を1μmフィルターでろ過することで顔料濃度14%の分散体1を得た。
【0095】
<インク1>
・分散体1 ・・・36.0部
・3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン ・・・ 1.0部
・3-メチル-1,3-ブタンジオール ・・・19.0部
・1,2-プロパンジオール ・・・10.0部
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール ・・・ 2.0部
・ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル ・・・ 1.0部
(エマルゲンLS-106、花王株式会社製)
・2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール ・・・ 0.5部
・防腐防黴剤 ・・・ 0.1部
(プロキセルLV、アーチ・ケミカルズ・ジャパン社製)
・イオン交換水 ・・・30.4部
分散体1以外の前記成分をイオン交換水に溶解してビヒクルを作製した後、分散体1と混合し、平均孔径が1μmのフィルターでろ過してインク1を得た。
【0096】
[実施例2]
実施例1のインク1において、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン1.0部を2.0部に、3-メチル-1,3-ブタンジオール19.0部を18.0部に変更した以外は実施例1と同様の処方、方法を用いてインク2を得た。
【0097】
[実施例3]
実施例1のインク1において、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン1.0部を5.0部に、3-メチル-1,3-ブタンジオール19.0部を15.0部に変更した以外は実施例1と同様の処方、方法を用いてインク3を得た。
【0098】
[実施例4]
実施例3のインク3において、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン5.0部を、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル5.0部に変更した以外は実施例3と同様の処方、方法を用いてインク4を得た。
【0099】
[実施例5]
実施例3のインク3において、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン5.0部を、メチルトリグリコール5.0部に変更した以外は実施例3と同様の処方、方法を用いてインク5を得た。
【0100】
[実施例6]
実施例3のインク3において、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン5.0部を、イソプロピリデングリセロール5.0部に変更した以外は実施例3と同様の処方、方法を用いてインク6を得た。
【0101】
[実施例7]
実施例3のインク3において、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン5.0部を、N,N-ジメチル-β-ブトキシプロピオンアミド5.0部に変更した以外は実施例3と同様の処方、方法を用いてインク7を得た。
【0102】
[実施例8]
<分散体2>
実施例1の分散体1におけるキナクリドン顔料(C.I.Pigment Red 202とPigment Violet 19の混晶顔料、BASF社製Cinquasia Magenta D4500J)14.0部をキナクリドン顔料(C.I.Pigment Red 122、大日精化社製 レッドNo.81)14.0部に変えた以外は分散体1と同様の処方、方法を用いて分散体2を得た。
<インク8>
実施例3のインク3における分散体1を分散体2に変えた以外は、実施例3のインク3と同様の処方、方法を用いてインク8を得た。
【0103】
[実施例9]
<分散体3>
実施例1の分散体1におけるキナクリドン顔料(C.I.Pigment Red 202とPigment Violet 19の混晶顔料、BASF社製Cinquasia Magenta D4500J)14.0部をキナクリドン顔料(C.I.Pigment Violet 19、クラリアント・ジャパン製Ink Jet MAGENTA E5B)14.0部に変えた以外は分散体1と同様の処方、方法を用いて分散体3を得た。
<インク9>
実施例3のインク3における分散体1を分散体3に変えた以外は、実施例3のインク3と同様の処方、方法を用いてインク9を得た。
【0104】
[実施例10]
<分散体4>
実施例1の分散体1におけるキナクリドン顔料(C.I.Pigment Red 202とPigment Violet 19の混晶顔料、BASF社製Cinquasia Magenta D4500J)14.0部をキナクリドン顔料(C.I.Pigment Red 122とPigment Violet 19の混晶顔料、DIC製FASTGEN SUPER Magenta RE-05)14.0部に変えた以外は分散体1と同様の処方、方法を用いて分散体4を得た。
<インク10>
実施例3のインク3における分散体1を分散体4に変えた以外は、実施例3のインク3と同様の処方、方法を用いてインク10を得た。
【0105】
[実施例11]
<分散体5>
実施例1の分散体1におけるキナクリドン顔料(C.I.Pigment Red 202とPigment Violet 19の混晶顔料、BASF社製Cinquasia Magenta D4500J)14.0部をアゾ顔料(C.I.Pigment Red 184、Cappelle Pigment NV製Naphtol Carmine 6B)14.0部に変えた以外は分散体1と同様の処方、方法を用いて分散体5を得た。
<インク11>
実施例3のインク3における分散体1を分散体5に変えた以外は、実施例3のインク3と同様の処方、方法を用いてインク11を得た。
【0106】
[実施例12]
<分散体6>
実施例1の分散体1におけるキナクリドン顔料(C.I.Pigment Red 202とPigment Violet 19の混晶顔料、BASF社製Cinquasia Magenta D4500J)14.0部をアゾ顔料(C.I.Pigment Red 150、富士色素製Pigment Red 150)14.0部に変えた以外は分散体1と同様の処方、方法を用いて分散体6を得た。
<インク12>
実施例3のインク3における分散体1を分散体6に変えた以外は、実施例3のインク3と同様の処方、方法を用いてインク12を得た。
【0107】
[実施例13]
<インク13>
・分散体1 ・・・36.0部
・3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン ・・・ 5.0部
・3-メチル-1,3-ブタンジオール ・・・10.0部
・1,2-プロパンジオール ・・・10.0部
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール ・・・ 2.0部
・ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル ・・・ 1.0部
(エマルゲンLS-106、花王株式会社製)
・ウレタン樹脂エマルション ・・・12.5部
(タケラックW-6110、三井化学株式会社製、32.0%水分散液)
・2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール ・・・ 0.5部
・防腐防黴剤 ・・・ 0.1部
(プロキセルLV、アーチ・ケミカルズ・ジャパン社製)
・イオン交換水 ・・・22.9部
分散体1以外の前記成分をイオン交換水に溶解してビヒクルを作製した後、分散体1と混合し、平均孔径が1μmのフィルターでろ過してインク13を得た。
【0108】
[実施例14]
<インク14>
・分散体1 ・・・36.0部
・3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン ・・・ 5.0部
・3-メチル-1,3-ブタンジオール ・・・10.0部
・1,2-プロパンジオール ・・・10.0部
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール ・・・ 2.0部
・ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル ・・・ 1.0部
(エマルゲンLS-106、花王株式会社製)
・アクリル樹脂エマルション ・・・10.0部
(NANOCLYL-S KPX、トーヨーケム株式会社製、40.0%水分散液) ・2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール ・・・ 0.5部
・防腐防黴剤 ・・・ 0.1部
(プロキセルLV、アーチ・ケミカルズ・ジャパン社製)
・イオン交換水 ・・・25.4部
分散体1以外の前記成分をイオン交換水に溶解してビヒクルを作製した後、分散体1と混合し、平均孔径が1μmのフィルターでろ過してインク14を得た。
【0109】
[実施例15]
実施例3のインク3において、ポリエチレンワックス(AQUACER531、BYK社製、45.0%水分散液)1.0部を追加し、イオン交換水を30.4部から29.4部へ変更した以外は実施例3と同様の処方、方法を用いてインク15を得た。
【0110】
[実施例16]
実施例3のインク3において、上記式(2-2)で表されるポリエーテル変性シロキサン化合物1.0部を追加し、イオン交換水を30.4部から29.4部へ変更した以外は実施例3と同様の処方、方法を用いてインク16を得た。
【0111】
[実施例17]
実施例1のインク1において、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン1.0部を7.8部に、3-メチル-1,3-ブタンジオール19.0部を12.2部に変更した以外は実施例1と同様の処方、方法を用いてインク17を得た。
【0112】
[実施例18]
実施例1のインク1において、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン1.0部を8.5部に、3-メチル-1,3-ブタンジオール19.0部を11.5部に変更した以外は実施例1と同様の処方、方法を用いてインク18を得た。
【0113】
[実施例19]
実施例1のインク1において、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン1.0部を9.8部に、3-メチル-1,3-ブタンジオール19.0部を10.2部に変更した以外は実施例1と同様の処方、方法を用いてインク19を得た。
【0114】
[比較例1]
実施例3のインク3において、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン5.0部を12.0部に、3-メチル-1,3-ブタンジオール15.0部を8.0部に変更した以外は実施例3と同様の処方と方法を用いてインク20を得た。
【0115】
[比較例2]
実施例3のインク3において、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン5.0部を2-ピロリドン5.0部に変更した以外は実施例3と同様の処方、方法を用いてインク21を得た。
【0116】
[比較例3]
実施例3のインク3において、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン5.0部をグリセリン5.0部に変更した以外は実施例3と同様の処方、方法を用いてインク22を得た。
【0117】
[比較例4]
<分散体7>
実施例1の分散体1において、上記式(1-1)で表される化合物と式(1-2)で表される化合物の混合物である<キナクリドン誘導体混合物>1.0部を加えず、キナクリドン顔料(C.I.Pigment Red 202とPigment Violet 19の混晶顔料、BASF社製Cinquasia Magenta D4500J)14.0部を15.0部に変更した以外は、分散体1と同様の処方と方法を用いて分散体7を得た。
<インク23>
実施例3のインク3において、分散体1を分散体7に変更した以外は実施例3と同様の処方と方法を用いてインク23を得た。
【0118】
【0119】
<インク保存安定性>
各インクをインクカートリッジに充填して70℃で14日間保存し、保存前の粘度に対する保存後の粘度の変化率を下記式から求め、下記の基準により評価した。
【数2】
なお、粘度の測定には、粘度計(RE80L、東機産業社製)を使用し、50回転又は100回転で25℃における粘度を測定した。評価結果を表3に示す。
[評価基準]
A:粘度の変化率が±5%以内
B:粘度の変化率が±5%を超え、±10%以内
C:粘度の変化率が±10%を超え、±30%以内
D:粘度の変化率が±30%を超える(ゲル化して評価不能)
【0120】
<インク吐出装置>
市販のインクジェットプリンタ(リコー製、IPSiO GX-e5500)に実施例、比較例で作成したインクをセットし、印字面積が5%の印刷チャートを1000枚印刷する動作を行った。印刷終了から24時間休止した後に、以下の<吐出安定性>、<彩度>、<ビーディング>、<乾燥性>について評価を行った。評価基準は以下に示す。結果を表3に示した。
【0121】
<吐出安定性>
前記インク吐出装置を用いて、全てのノズルから液滴の捨て打ちを1時間行った。
1時間後に、インクジェット用光沢紙(画彩写真仕上げValue、富士フイルム株式会社製)上にノズルチェックパターンを印刷して、全ノズル数384に対してインクが吐出された吐出ノズル数を確認し、以下の基準で評価した。結果を表3に示す。
[評価基準]
A:吐出ノズル数が384(全ノズル吐出)
B:吐出ノズル数が368以上(実使用上問題のないレベル)
C:吐出ノズル数が192以上368未満
D:吐出ノズル数が192未満
【0122】
<彩度>
画素密度1200dpi×1200dpi、記録媒体(OKトップコート+ 米坪量104.7g/m2(王子製紙社製))に5cm×5cmのベタ画像を形成し、内部の温度が100℃となるように設定した恒温槽で、印字部を30秒間乾燥した。反射型カラー分光測色濃度計(X-Rite社製)を用いて、L*a*b*の値を測定し、a*及びb*の測定値からC*値を算出し、下記評価基準に基づき、評価した。なお、ランクA、及びBが許容範囲である。
〔評価基準〕
A:C*が75以上
B:C*が70以上75未満
C:C*が65以上70未満
D:C*が65未満
【0123】
<ビーディング>
前記<彩度>評価と同様の方法を用いて形成した5cm×5cmのベタ画像のビーディングを目視により確認し、以下の基準で評価した。
〔評価基準〕
A:全くなし(15cmの距離からは視認できない)
B:ごく僅かにあり
(15cmの距離からは視認できるが、50cmの距離からは視認できない)
C:僅かにあり
(50cmの距離からは視認できるが、1mの距離からは視認できない)
D:激しくあり(1mの距離から視認できる)
【0124】
<乾燥性>
前記<彩度>評価と同様の方法を用いて形成した5cm×5cmのベタ画像の上に未印字の紙(4cm×4cm)を重ね、その上に縦2cm×横2cm×厚み0.2cmのゴムシートを紙の中央に配置して、ゴムシートから紙に掛かる圧力が、0.5kgf/cm2となるようにゴムシートの上に重りを載せ、23℃、50%RHの環境下で12時間放置した。放置後に、重ねた紙を剥がし、未印字の紙への顔料の転写具合を目視観察し、転写性を下記評価基準により評価した。
〔評価基準〕
A:紙への顔料の転写はほとんどみられず、紙同士の貼りつきもない
B:紙への顔料の転写はほとんどみられないが、紙同士の貼りつきがある
C:わずかに紙への顔料の転写が見られる(紙全体の10%未満の面積の転写)
D:明確な紙への顔料の転写が見られる(紙全体の10%以上の面積の転写)
【0125】
【符号の説明】
【0126】
400 画像形成装置
401 画像形成装置の外装
401c 装置本体のカバー
404 カートリッジホルダ
410 メインタンク
410k、410c、410m、410y ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色用のメインタンク
411 インク収容部
413 インク排出口
414 収容容器ケース
420 機構部
434 吐出ヘッド
436 供給チューブ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0127】
【文献】特開2014-065872号公報
【文献】特開2017-014150号公報
【文献】特開2016-145313号公報