(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】化合物、組成物及び表示素子
(51)【国際特許分類】
C09K 19/54 20060101AFI20220802BHJP
C09K 19/30 20060101ALI20220802BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20220802BHJP
C07D 211/12 20060101ALI20220802BHJP
C07D 211/70 20060101ALN20220802BHJP
C07D 211/72 20060101ALN20220802BHJP
C07D 211/20 20060101ALN20220802BHJP
C07D 211/58 20060101ALN20220802BHJP
【FI】
C09K19/54 C
C09K19/30
G02F1/13 500
C07D211/12
C07D211/70
C07D211/72
C07D211/20
C07D211/58
(21)【出願番号】P 2020089825
(22)【出願日】2020-05-22
(62)【分割の表示】P 2015244154の分割
【原出願日】2015-12-15
【審査請求日】2020-06-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】野瀬 清香
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/076077(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/079797(WO,A1)
【文献】特開2007-137921(JP,A)
【文献】特表2004-507607(JP,A)
【文献】特開2003-226876(JP,A)
【文献】特開昭60-067587(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102011013007(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/00 - 19/60
G02F 1/13
C07D 211
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I-1b)、(I-1d)、(I-2b)又は(I-2d)
【化1】
(式中、R
H10
は水素原子、-O・、水酸基、炭素原子数1~12のアルキル基、又は炭素原子数3~12のアルケニル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基を表し、
R
H20
は水素原子、-O・、水酸基、炭素原子数1~12のアルキル基、又は炭素原子数3~12のアルケニル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基を表し、
A
I11
及びA
I12
はそれぞれ独立して
(a) 1,4-シクロヘキシレン基、
(b) 1,4-フェニレン基、
(c) ナフタレン-2,6-ジイル基、
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)及び基(c)はそれぞれ独立してシアノ基、フッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基で置換されていてもよく、
Sp
I21
及びSp
I22
はそれぞれ独立して単結合、-OCH
2
-又は-OCO-を表し、
R
I1
は水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基を表す。)
で表される化合物を一種又は二種以上含有する、液晶組成物。
【請求項2】
一般式(I-1b)、(I-1d)、(I-2b)又は(I-2d)において、R
H10が水素原子を表す、請求項
1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
さらに下記化合物
【化2】
を含むことを特徴とする、請求項
1又は2に記載の液晶組成物。
【請求項4】
負の誘電率異方性を示す、請求項1から
3のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【請求項5】
さらに下記化合物
【化3】
を含むことを特徴とする、請求項1から
4のいずれか一項に記載の液晶組成物。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか一項に記載の組成物を使用した表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、組成物及び表示素子に関し、特に安定剤化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、時計、電卓をはじめとして、各種測定機器、自動車用パネル、ワードプロセッサー、電子手帳、プリンター、コンピューター、テレビ、時計、広告表示板等に用いられるようになっている。液晶表示方式としては、その代表的なものにTN(ツイステッド・ネマチック)型、STN(スーパー・ツイステッド・ネマチック)型、TFT(薄膜トランジスタ)を用いたVA(垂直配向)型やIPS(イン・プレーン・スイッチング)型又はFFS(フリンジ・フィールド・スイッチング)型等がある。液晶組成物に求められる主な特性としては、(1)水分、空気、熱、光などの外的刺激に対して安定であること、(2)室温を中心としてできるだけ広い温度範囲で液晶相を示していること、(3)低粘性であること、及び(4)駆動電圧が低いことの4つが挙げられ、個々の表示素子にとって誘電率異方性(Δε)や屈折率異方性(Δn)等を最適な値とするために、液晶組成物は数種類から数十種類の化合物から構成されていることが一般的である。
【0003】
上記の液晶組成物の特性のうち、Δεについては、正の値である組成物と負の値である組成物が各々使い分けられている。これらのうち、Δεが正の値を示す液晶材料を用いる表示方式としては、TN型、STN型、IPS型、更にFFS型などが挙げられる。Δεが負の値を示す液晶材料を用いる表示方式としては、ECB型、VA型、更にFFS型などが挙げられる。一方、全ての駆動方式において低電圧駆動、高速応答、広い動作温度範囲が求められている。すなわち、Δεの絶対値が大きく、粘度(η)が小さく、高いネマチック相-等方性液体相転移温度(Tni)が要求されている。また、Δnとセルギャップ(d)との積であるΔn×dの設定から、液晶組成物のΔnをセルギャップに合わせて適当な範囲に調節する必要がある。加えて液晶表示素子をテレビ等へ応用する場合においては高速応答性が重視されるため、γ1の小さい液晶組成物が要求される。
【0004】
上記の要求を満たすべく、種々の液晶化合物がこれまでに開発されてきた。とりわけ、液晶組成物の粘度を低下させるために効果的な方法として、(A)のようなアルケニル化合物を用いる例が既に開示されている(特許文献1参照)。
【0005】
【0006】
しかし、アルケニル化合物を含む液晶組成物は表示不良を示すことがある(特許文献2参照)。一般的にはアルケニル化合物の含有量が減少すると液晶組成物のηが上昇し、高速応答の達成が困難になるため、表示不良の抑制と高速応答の両立が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-37054号公報
【文献】特開2008-144135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明が解決しようとする課題は、液晶組成物の劣化を防止し、液晶組成物との相溶性が高く、液晶組成物の保存安定性を損なうことなく、かつ簡便に製造可能な化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明者は上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本願発明の完成に至った。
すなわち、本発明は、一般式(I)
【0010】
【0011】
(式中、RH10は水素原子、-O・、水酸基、炭素原子数1~12のアルキル基、又は炭素原子数3~12のアルケニル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基を表し、
RH11、RH12、RH13及びRH14はそれぞれ独立して炭素原子数1~6のアルキル基を表し、あるいはRH11とRH12、及び/又はRH13とRH14は一緒になって環構造を形成していてもよく、
RH15及びRH16はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
YIは-CH2-、=CH-、-NH-、又は=N-を表し、
SpI1及びSpI2はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から12のアルキレン基を表すが、アルキレン基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CO-、-CH=CH-又は-C≡C-により置き換えられてもよく、
AI1は
(a) 1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-に置き換えられてもよい。)
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(c) ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられても良い。)
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)及び基(c)はそれぞれ独立してシアノ基、フッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基で置換されていてもよく、
mは1、2又は3を表し、
nは0、1、2又は3を表し、
pは0,1,2、3又は4を表し、
ZI1は水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基を表すが、アルキル基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CO-、-CH=CH-又は-C≡C-により置き換えられてもよく、あるいはZI1は一般式(I-Z)
【0012】
【0013】
(式中、SpIZ1及びSpIZ2はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から12のアルキレン基を表すが、アルキレン基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CO-、-CH=CH-又は-C≡C-により置き換えられてもよく、
AIZ1は
(a) 1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-に置き換えられてもよい。)
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(c) ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられても良い。)
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)及び基(c)はそれぞれ独立してシアノ基、フッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基で置換されていてもよく、
qは0,1,2、3又は4を表し、
RIZ1は一般式(I-H)
【0014】
【化4】
(式中、R
H20は水素原子、-O・、水酸基、炭素原子数1~12のアルキル基、又は炭素原子数3~12のアルケニル基、炭素原子数1~12のアルコキシ基を表し、
R
H21、R
H22、R
H23及びR
H24はそれぞれ独立して炭素原子数1~6のアルキル基を表し、あるいはR
H11とR
H12、及び/又はR
H13とR
H14は一緒になって環構造を形成していてもよく、
R
H25及びR
H26はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基を表し、
Y
Hは-COO-、-CH
2-、=CH-、-NH-、又は=N-を表し、
uは0、1、2又は3を表し、
vは0、1、2又は3を表す。)で表される基を表し、
A
IZ1、Sp
IZ2、R
H25及び/又はR
H26が複数存在する場合はそれらは同一であっても異なっていてもよい。)を表し、
A
I1、Sp
I1及びSp
I2中の1個又は2個以上の基は一般式(I-Z)により置換されていてもよく、
A
I1、Sp
I2、R
H15、R
H16及び/又は一般式(I-Z)が複数存在する場合はそれらは同一であっても異なっていてもよい。)
で表される化合物
を提供し、併せて当該化合物を含有する液晶組成物及び表示素子を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る化合物は、それを含有する液晶組成物の光による劣化を防止し、液晶組成物との相溶性が高く、それを含有する液晶組成物の保存安定性を損なうことなく、かつ簡便に製造可能である。本発明に係る化合物を用いた液晶組成物を用いると高速応答液晶表示素子の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一般式(I)において、RH10は光劣化防止能を高めるには水素原子又は水酸基であることが好ましく、水素原子であることが特に好ましい。また、液晶組成物との相溶性を高めるためには炭素原子数1~12のアルキル基又は炭素原子数3~12のアルケニル基であることが好ましい。
【0017】
RH11、RH12、RH13及びRH14はそれぞれ独立して炭素原子数1~4のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることが特に好ましい。また、合成時に混入する極性不純物の除去を容易にするためにはRH11とRH12は一緒になって環構造を形成することが好ましく、RH13とRH14は一緒になって環構造を形成することが好ましく、RH11とRH12及びRH13とRH14が一緒になって環構造を形成することが好ましい。
【0018】
RH15及びRH16はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基であることが好ましく、製造の容易さから水素原子であることが特に好ましい。
【0019】
mは1であることが好ましい。
【0020】
nは0又は1であることが好ましく、1であることがより好ましい。m+nは1又は2であることが好ましく、2であることがより好ましい。
【0021】
YIは液晶組成物との相溶性を高めるには-CH2-又は=CH-であることが好ましく、光劣化防止能を高めるためには-NH-又は=N-であることが好ましい。
【0022】
SpI1及びSpI2はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から6のアルキレン基であることが好ましく、アルキル基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-又は-C≡C-により置き換えられていてもよい。SpI1及びSpI2は単結合であることが特に好ましい。
【0023】
AI1は
(a) 1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-に置き換えられてもよい。)
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(c) ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基であることが液晶組成物の保存安定性を高めるためには好ましく、上記の基(a)、基(b)及び基(c)はそれぞれ独立してシアノ基、フッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基で置換されていてもよい。具体的には、AI1は1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又は1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基を表すことが好ましく、これらの基は無置換であることが好ましく、又、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基で置換されていてもよい。
【0024】
pは0、1又は2であることが好ましい。
【0025】
ZI1は水素原子又は炭素原子数1から6のアルキル基であることが好ましく、アルキル基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-又はCH=CH-により置き換えられていることも好ましい。該アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよいが、直鎖状であることが好ましい。また、ZI1は一般式(I-Z)で表される構造であることが光劣化防止能を高めるためには好ましい。
【0026】
一般式(I-Z)中の SpIZ1及びSpIZ2はそれぞれ独立して単結合又は炭素原子数1から6のアルキレン基であることが好ましく、アルキル基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-又は-C≡C-により置き換えられていてもよい。SpIZ1及びSpIZ2は単結合であることが特に好ましい。
【0027】
AIZ1は
(a) 1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-に置き換えられてもよい。)
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(c) ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)
からなる群より選ばれる基であることが液晶組成物の保存安定性を高めるためには好ましく、上記の基(a)、基(b)及び基(c)はそれぞれ独立してシアノ基、フッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基で置換されていてもよい。具体的には、AIZ1は1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又は1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基を表すことが好ましく、これらの基は無置換であることが好ましく、又、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基で置換されていてもよい。
【0028】
qは0、1又は2であることが好ましい。
【0029】
一般式(I-H)中のRH20は光劣化防止能を高めるには水素原子又は水酸基であることが好ましく、製造の容易さから水素原子であることが特に好ましい。
【0030】
RH21、RH22、RH23及びRH24はそれぞれ独立して炭素原子数1~4のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることが特に好ましい。また、合成時に混入する極性不純物の除去を容易にするためにはRH21とRH22は一緒になって環構造を形成することが好ましく、RH23とRH24は一緒になって環構造を形成することが好ましく、RH21とRH22及びRH23とRH24が一緒になって環構造を形成することが好ましい。
【0031】
RH25及びRH26はそれぞれ独立して水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基であることが好ましく、製造の容易さから水素原子であることが特に好ましい。
【0032】
YHは液晶組成物との相溶性を高めるには-CH2-又は=CH-であることが好ましく、光劣化防止能を高めるためには-NH-又は=N-であることが好ましい。
【0033】
uは1であることが好ましい。
【0034】
vは0又は1であることが好ましく、1であることがより好ましい。u+vは1又は2であることが好ましく、2であることがより好ましい。
【0035】
光劣化防止能を高めるためには、AI1、SpI1及びSpI1中の1個又は2個以上の基が一般式(I-Z)により置換されていることが好ましい。AI1、SpI1及びSpI1において一般式(I-Z)により置換される数の合計は、1~6であることが好ましく、1~4であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
【0036】
一般式(I)で表される化合物は、以下の一般式(I-A)であることが好ましい。
【0037】
【0038】
(式中、RH10、RH11,RH12,RH13、RH14、RH15、RH16、YI、SpI1、SpI2、AI1、m、n、p、RH20、RH21,RH22,RH23、RH24、RH25、RH26、YH、SpIZ1、SpIZ2、AIZ1、u、v及びqはそれぞれ独立して一般式(I)中のRH10、RH11,RH12,RH13、RH14、RH15、RH16、YI、SpI1、SpI2、AI1、m、n、p、RH20、RH21,RH22,RH23、RH24、RH25、RH26、YH、SpIZ1、SpIZ2、AIZ1、u、v及びqと同じ意味を表し、
rは0、1、2又は3を表し、
rが0を表す場合、ZIAは水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基を表すが、アルキル基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CO-、-CH=CH-又は-C≡C-により置き換えられてもよく、
rが1を表す場合、ZIAは炭素原子数1~12のアルキレン基を表すが、アルキレン基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CO-、-CH=CH-又は-C≡C-により置き換えられてもよく、あるいはZA1は
(a) 1,4-シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の-CH2-又は隣接していない2個以上の-CH2-は-O-に置き換えられてもよい。)
(b) 1,4-フェニレン基(この基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられてもよい。)及び
(c) ナフタレン-2,6-ジイル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又はデカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基(ナフタレン-2,6-ジイル基又は1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基中に存在する1個の-CH=又は隣接していない2個以上の-CH=は-N=に置き換えられても良い。)
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)及び基(c)はそれぞれ独立してシアノ基、フッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基で置換されていてもよく、
rが2を表す場合、ZIAは(Z3-1)~(Z3-12)
【0039】
【0040】
(式中、RZ31及びRZ32は、水素原子、水酸基又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、該アルキル基中に存在する1個又は2個以上の-CH2-はそれぞれ独立して-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CO-、-CH=CH-又は-C≡C-に置換されてもよく、また、環状構造中の水素原子はシアノ基、フッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基で置換されてもよい。)
で表される基から選ばれる基を表し、
rが3を表す場合、ZIAは(Z4-1)~(Z4-21)
【0041】
【0042】
(式中、環状構造中の水素原子はシアノ基、フッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基で置換されてもよい。)
で表される基から選ばれる基を表し、
RH20、RH21,RH22,RH23、RH24、RH25、RH26、YH、SpIZ1、SpIZ2、AIZ1、u、v及び/又はqが複数存在する場合はそれらは同一であっても異なっていてもよい。)
一般式(I-A)において、rは0又は1であることが好ましい。
【0043】
一般式(I-A)中のrが0を表す場合、ZIAは水素原子、炭素原子数1から8のアルキル基を表すことが好ましく、該アルキル基は直鎖状でも分枝状でもよいが、直鎖状であることが好ましい。また、アルキル基は-O-又はCH=CH-により置き換えられていることも好ましい。
【0044】
一般式(I-A)中のrが1を表す場合、ZIAは炭素原子数1から8のアルキレン基を表すことが好ましく炭素原子数1から6のアルキレン基であることがより好ましく、該アルキレン基は直鎖状でも分枝状でもよいが、直鎖状であることが好ましい。また、該アルキレン基中に存在する1個又は隣接していない2個以上の-CH2-は、それぞれ独立して-O-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-又は-C≡C-で置換されていることも好ましい。また、ZIAは1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、ピリジン-2,5-ジイル基、ピリミジン-2,5-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、ナフタレン-1,4-ジイル基、テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル基、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイル基又は1,3-ジオキサン-2,5-ジイル基を表すことが好ましく、これらの基はそれぞれ独立して無置換であることが好ましく、又、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基で置換されていてもよい。
【0045】
一般式(I-A)中のrが2を表す場合、ZIAは炭素原子数1から12の3価の炭化水素基を表すことが好ましく、当該炭化水素基中の炭素原子中に存在する1個又は隣接していない2個以上の-CH2-はそれぞれ独立して-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CO-、-CH=CH-又は-C≡C-により置換されてもよい。
【0046】
ZIAは、式(Z3-1)~式(Z3-12)で表される基から選択される基であることが好ましい。RZ31及びRZ32は、水素原子、水酸基又は炭素原子数1~8のアルキル基を表すことが好ましく、直鎖状であることが好ましい。また、式(Z3-4)~式(Z3-12)はそれぞれ独立して無置換であることが好ましく、又、式(Z3-4)~式(Z3-12)中の水素原子はシアノ基、フッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基で置換されていてもよい。
【0047】
原料の入手容易さ及び製造の容易さの観点から、式(Z3-1)、式(Z3-2)、及び無置換の式(Z3-3)~(Z3-12)から選ばれる基を表すことが特に好ましい。
一般式(I-A)中のrが3を表す場合、ZIAは炭素原子数1から12の4価の炭化水素基を表すことが好ましく、当該炭化水素基中の炭素原子中に存在する1個又は隣接していない2個以上の-CH2-はそれぞれ独立して-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CO-、-CH=CH-又は-C≡C-により置換されてもよい。
ZIAは、式(Z4-1)~式(Z4-21)で表される基から選択される基であることが好ましい。
式(Z4-3)~式(Z4-21)はそれぞれ独立して無置換であることが好ましく、又、式(Z4-3)~式(Z4-21)中の水素原子はシアノ基、フッ素原子、塩素原子、メチル基又はメトキシ基で置換されていてもよい。
【0048】
原料の入手容易さ及び製造の容易さの観点から、式(Z4-1)、式(Z4-2)、及び無置換の式(Z4-3)~(Z4-21)から選ばれる基を表すことが特に好ましい。
一般式(I)及び一般式(I-A)で表される化合物は、一般式(I-A1)で表される化合物が好ましい。
【0049】
【化8】
(式中、Y
I、Sp
I1、Sp
I2、A
I及びpはそれぞれ独立して一般式(I)中のY
I、Sp
I1、Sp
I2、A
I及びpと同じ意味を表し、
R
HA01は水素原子又は水酸基を表し、
Z
IA1は水素原子又は炭素原子数1から12のアルキル基を表すが、アルキル基中に存在する1個の-CH
2-又は隣接していない2個以上の-CH
2-は-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CO-、-CH=CH-又は-C≡C-により置き換えられてもよく、あるいはZ
IA1は一般式(I-H1)
【0050】
【0051】
(式中、Y1H1及びRHA20はそれぞれ独立して一般式(I-A1)中のYI、Ra01と同じ意味を表す。)で表される基を表し、
AI1及びSpI2が複数存在する場合はそれらは同一であっても異なっていてもよい。)
RHA01及びRHA20は水素原子であることが好ましい。
【0052】
Y1及びY1H1は-CH2-、=CH-又は-NH-であることが好ましい。
【0053】
一般式(I)で表される化合物としては、以下の一般式(I-1a)~(I-4h)が特に好ましい。
【0054】
【0055】
(式中、R
H10は前記一般式(I)中のR
H10と同じ意味を表し、A
I11及びA
I12はそれぞれ独立して前記一般式(I)中のA
I1と同じ意味を表し、Sp
I21及びSp
I22はそれぞれ独立して前記一般式(I)中のSp
I2と同じ意味を表し、R
I1は水素原子、炭素原子数1から12のアルキル基を表すが、アルキル基中に存在する1個の-CH
2-又は隣接していない2個以上の-CH
2-は-O-、-S-、-COO-、-OCO-、-CO-、-CH=CH-又は-C≡C-により置き換えられてもよい。)
【化11】
(式中、R
H10及びR
H20は、前記一般式(I)中のR
H10及びR
H20とそれぞれ同じ意味を表し、A
I11及びA
I12はそれぞれ独立して前記一般式(I)中のA
I1と同じ意味を表し、Sp
I21及びSp
I22はそれぞれ独立して前記一般式(I)中のSp
I2と同じ意味を表す。)
【0056】
【化12】
(式中、R
H10及びR
H20は前記一般式(I)中のR
H10及びR
H20とそれぞれ同じ意味を表すが、複数存在するR
H20は同一であっても異なっていてもよい。)
【0057】
【0058】
【0059】
(式中、RH10及びRH20は前記一般式(I)中のRH10及びRH20とそれぞれ同じ意味を表すが、複数存在するRH20は同一であっても異なっていてもよい。)
本発明において、一般式(I)で表される化合物は、以下のようにして製造することができる。勿論本発明の趣旨及び適用範囲は、これら製造例により制限されるものではない。
(製法1)一般式(I)で表される化合物の合成方法(1)
【0060】
【0061】
(式中、RH10、RH11,RH12,RH13、RH14、RH15、RH16、m、n、SpI1、SpI2、AI1及びpは前記一般式(I)中のRH10、RH11,RH12,RH13、RH14、RH15、RH16、m、n、SpI1、SpI2、AI1及びpと同じ意味を表す。Xはハロゲン原子を表す。)
一般式(S-1)で表される化合物を一般式(S-2)で表される化合物と反応させることにより、一般式(I)で表される化合物のうち、一般式(I1)で表される化合物を得ることができる。反応例として例えば、一般式(S-1)で表される化合物に対して塩基を加えてホスホニウム塩を生成させ、これを一般式(S-2)で表される化合物と反応させる方法が挙げられる。塩基としては例えばナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、t-ブトキシカリウム、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、リチウムジイソプロピルアミド、ブチルリチウムなどが挙げられる。
一般式(I1)で表される化合物を還元することにより、一般式(I)で表される化合物のうち、一般式(I2)で表される化合物を得ることができる。反応例として例えば、一般式(I1)で表される化合物と触媒を水素雰囲気下で共存させる方法が挙げられる。この際、触媒としては例えばパラジウム炭素、ウィルキンソン錯体などが挙げられる。
(製法2)一般式(I)で表される化合物の合成方法(2)
【0062】
【0063】
(式中、RH10、RH11,RH12,RH13、RH14、RH15、RH16、m、n、SpI1、SpI2、AI1及びpは前記一般式(I)におけるRH10、RH11,RH12,RH13、RH14、RH15、RH16、m、n、SpI1、SpI2、AI1及びpと同じ意味を表す。)
一般式(S-3)で表される化合物を一般式(S-2)で表される化合物と反応させることにより、一般式(I)で表される化合物のうち、一般式(I3)で表される化合物を得ることができる。反応例として例えば、必要ならば酸触媒の存在下、一般式(S-3)で表される化合物を一般式(S-2)で表される化合物と脱水縮合する方法が挙げられる。この場合の溶媒としてはベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。また、酸触媒としては例えば塩酸、硫酸、重硫酸カリウムなどの無機酸や、三フッ化ホウ素などのルイス酸、フマル酸、フタル酸、オギザリル酸、カンファースルホン酸、p-トルエンスルホン酸などの有機酸、アンバーリスト-15などの固体酸等が挙げられる。この際、一般式(S-2)で表される化合物が塩基性化合物である場合、必要に応じて酸触媒は1当量を超える量を加えることができる。
【0064】
一般式(I3)で表される化合物を還元することにより、一般式(I)で表される化合物のうち、一般式(I4)で表される化合物を得ることができる。反応例として例えば、一般式(I3)で表される化合物を還元剤を用いて還元する方法が挙げられる。この際、還元剤としては例えば水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウムなどが挙げられる。
【0065】
前記各工程において記載した以外の反応条件として、例えば実験化学講座(日本化学会編、丸善株式会社発行)、Organic Syntheses(A John Wiley & Sons,Inc.,Publication)、Beilstein Handbook of Organic Chemistry(Beilstein-Institut fuer Literatur der Organischen Chemie、Springer-Verlag Berlin and Heidelberg GmbH & Co.K)、Fiesers’ Reagents for Organic Synthesis(John Wiley & Sons,Inc.)等の文献に記載のもの又はSciFinder(Chemical Abstracts Service,American Chemical Society)、Reaxys(Elsevier Ltd.)等のデータベースに収載のものが挙げられる。
【0066】
また、各工程において適宜反応溶媒を用いることができる。溶媒の具体例としてはエタノール、テトラヒドロフラン、トルエン、ジクロロメタン、水等が挙げられる。有機溶媒及び水の二相系で反応を行う場合、相間移動触媒を添加することも可能である。相間移動触媒の具体例としてはベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
【0067】
また、各工程において必要に応じて精製を行うことができる。精製方法としてはクロマトグラフィー、再結晶、蒸留、昇華、再沈殿、吸着、分液処理等が挙げられる。精製剤の具体例としてはシリカゲル、NH2シリカゲル、アルミナ、活性炭等が挙げられる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を挙げて本発明を更に記述するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例の組成物における「%」は『質量%』を意味する。化合物の純度はGC又はUPLCによって分析した。化合物及び反応溶媒の略称は以下の通りである:テトラヒドロフラン(THF)、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリドン(TMP)
(実施例1)化合物(I-1b-1)の製造
【0069】
【0070】
窒素雰囲気下、撹拌装置、滴下ろうと、温度計を備えた反応容器に、化合物(SB-1)(7.80g)、トルエン5ml及びTHF10mlを加え、氷冷下で撹拌した。この混合物に対し、t-ブトキシカリウム(1.45g)を10℃以下を保ちながら加えた。この反応混合物を5℃で30分撹拌したのち、トルエン5mlに溶解させたTMP(1.55g)を10℃以下を保ちながら滴下した。この反応混合物を5~10℃で1時間撹拌した後、水5mlを加えて撹拌し、有機層を分けとり、さらに水3mlで洗浄した。得られた有機層から溶媒を留去したのち、カラムクロマトグラフィー(NH2シリカゲル、トルエン)を通過させた。得られた溶液を濃縮し、再結晶(ヘキサン/THF、-20℃)を行った。析出した固体をろ過し、真空乾燥させ、化合物(I-1b-1)(2.74g)を得た。
GC-MS:m/z 358.37 [M-15+]
実施例1と同様の反応、及び必要に応じて公知の方法に準拠した方法を用いて、実施例2(化合物(I-1b-2))~実施例8(化合物(I-2b-3))を合成した。
【0071】
【0072】
(実施例9)化合物(I-1a-1)の製造
【0073】
【0074】
撹拌装置を備えた加圧反応容器に、化合物(I-1b-1)(1.4g)、5%パラジウム炭素(50%wet品、0.2g)及び酢酸エチル10mlを加え、内部を水素で置換した後、40℃で8時間撹拌した。この混合物を室温まで冷却した後、ろ過して固体を除去した。得られた溶液を濃縮し、ヘキサン3mlを加えて-20℃で再結晶を行った。析出した固体をろ過し、真空乾燥させ、化合物(I-1a-1)(1.35g)を得た。
GC-MS:m/z 360.39 [M-15+]
実施例9と同様の反応、及び必要に応じて公知の方法に準拠した方法を用いて、実施例10(化合物(I-1a-1))~実施例16(化合物(I-2a-3))を合成した。
【0075】
【0076】
(実施例17)化合物(I-1d-1)の製造
【0077】
【0078】
窒素雰囲気下、撹拌装置、温度計、冷却管、ディーンスターク管を備えた反応容器に、TMP(1.55g)、化合物(SB-2)(2.37g)及びトルエン15mlを加え、3時間加熱還流し、生じた水を除去した。この混合物を室温まで冷却した後濃縮し、ヘキサン3mlを加えて-20℃で再結晶を行った。析出した固体をろ過し、真空乾燥させ、化合物(I-1d-1)(3.20g)を得た。
GC-MS:m/z 359.37 [M-15+]
実施例17と同様の反応、及び必要に応じて公知の方法に準拠した方法を用いて、実施例18(化合物(I-1d-2))~実施例24(化合物(I-2d-3))を合成した。
【0079】
【0080】
(実施例25)化合物(I-1c-1)の製造
【0081】
【0082】
窒素雰囲気下、撹拌装置、温度計を備えた反応容器に、化合物(I-1d-1)(1.50g)、及びメタノール10mlを加え、氷冷下撹拌しながら水素化ホウ素ナトリウム(0.15g)を加え、室温で5時間撹拌した。この反応混合物に対し、水20ml及びトルエン20mlを加えて撹拌した後、有機層を分けとり、水20mlで2回、飽和食塩水20mlで1回洗浄した。得られた有機層を濃縮し、ヘキサン3mlを加えて-20℃で再結晶を行った。析出した固体をろ過し、真空乾燥させ、化合物(I-1c-1)(1.23g)を得た。
GC-MS:m/z 361.67 [M-15+]
実施例25と同様の反応、及び必要に応じて公知の方法に準拠した方法を用いて、実施例26(化合物(I-1c-2))~実施例32(化合物(I-2c-3))を合成した。
【0083】
【0084】
上記、実施例1~32で得られた化合物のいずれかを含有する液晶組成物について、測定した特性は以下の通りである。
【0085】
VHR:周波数60Hz,印加電圧1Vの条件下で333Kにおける電圧保持率(%)を3段階評価した。
【0086】
A:98~100%
B:95~98%
C:95%以下
耐光VHR:液晶組成物に対して、厚さ0.5mmのガラスを介して超高圧水銀ランプを用いて紫外線を180J/m2照射する。紫外線照射後の液晶の電圧保持率を上述のVHR測定と同様の方法で測定する。但し、照射強度は366nmで0.1W/m2とした。評価は以下の3段階で行った。
A:90~100%
B:75~90%
C:75%以下
【0087】
相溶性:液晶組成物に、実施例1~90で得られた化合物のいずれかを500ppm添加した際の溶解の様子を目視で3段階評価した。
【0088】
A:すべて溶解する
B:わずかに溶解せず分離している
C:一部溶解せず分離している
保存安定性:液晶組成物を-20℃で1週間保存し、析出物の有無を目視で3段階評価した。
A:析出物なし
B:わずかに白濁が見られる
C:析出物が明らかに確認できる
(実施例33)液晶組成物の調製-1
以下の組成からなるホスト液晶組成物(H)を調製した。
【0089】
【0090】
このホスト液晶組成物(H)に対し、実施例1で得られた化合物(I-1b-1)を500ppm添加した。
実施例中の組成例を、測定した特性は以下の通りである。
【0091】
VHR:A
耐光VHR:A
相溶性:A
保存安定性:A
以下、実施例33と同様にして、実施例34~実施例64の測定を行った結果を以下に示す。
【0092】
【0093】
(比較例1)
比較例として、母体液晶(H)に対し、特にさらなる化合物を添加することなく特性を測定した結果は以下の通りである。
VHR:A
耐光VHR:C
保存安定性:A
この結果から、本願発明の化合物は、液晶組成物の保存安定性を損なうことなく、液晶組成物の光による劣化を防止する効果があることが分かる。
【0094】
(比較例2)
母体液晶(H)に対し、化合物(R-1)を500ppm添加し、測定を測定した結果は以下の通りである。
【0095】
【0096】
VHR:A
耐光VHR:A
相溶性:B
保存安定性:C
以下、比較例2と同様にして、比較例3,4の測定を行った結果を以下に示す。
【0097】
【0098】
【0099】
この結果から、本願発明の化合物は、液晶組成物の保存安定性を損なうことなく、液晶組成物との相溶性が高く、液晶組成物の光による劣化を防止する効果があることが分かる。