(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】液状組成物、並びに該液状組成物を使用した、フィルムおよび積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 27/18 20060101AFI20220802BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20220802BHJP
C08L 71/00 20060101ALI20220802BHJP
C08F 214/26 20060101ALI20220802BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20220802BHJP
C08L 27/14 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
C08L27/18
C08K3/013
C08L71/00
C08F214/26
C08L101/00
C08L27/14
(21)【出願番号】P 2021083930
(22)【出願日】2021-05-18
(62)【分割の表示】P 2018528908の分割
【原出願日】2017-07-21
【審査請求日】2021-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2016144722
(32)【優先日】2016-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017026385
(32)【優先日】2017-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017099294
(32)【優先日】2017-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細田 朋也
(72)【発明者】
【氏名】寺田 達也
(72)【発明者】
【氏名】小林 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山邊 敦美
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第97/048774(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/00-27/24
C08K 3/013
C08L 71/00
C08F 214/26
C08L 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状媒体と該液状媒体に分散した樹脂パウダーとを含み、樹脂パウダーの体積基準累積90%径が8μm以下であり、樹脂パウダーが下記重合体(X)を含む樹脂であり、ポリテトラフルオロエチレンのパウダ
ーと無機質フィラー
とを含むことを特徴とする液状組成物。
重合体(X):テトラフルオロエチレンに基づく単位を有する含フッ素重合体であって、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基およびイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する、融点が260~320℃である含フッ素重合体。
【請求項2】
前記樹脂パウダーの平均粒径が0.3~6μmである、請求項1に記載の液状組成物。
【請求項3】
前記無機質フィラーが、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルーン、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、グラファイト、炭素繊維、ガラスバルーン、炭素バーン、木粉およびホウ酸亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の液状組成物。
【請求項4】
前記樹脂パウダーの含有量が、前記ポリテトラフルオロエチレンのパウダーの100質量部に対して、5~500質量部である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項5】
前記ポリテトラフルオロエチレンのパウダーと前記無機質フィラーの総含有量が、前記樹脂パウダー100質量部に対して、0.1~300質量部である、請求項1~
4のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項6】
前記液状媒体が、水、アルコール類、含窒素化合物、含硫黄化合物、エーテル類、エステル類、ケトン類、グリコールエーテル類およびセロソルブ類からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項7】
前記液状媒体が、水、γ-ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、2-ヘプタノン、シクロヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソペンチルケトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキシルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル、ジオキサン、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、ベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルモノグリシジルエーテル、エチルモノグリシジルエーテル、ジメチルホルムアミド、ミネラルスピリット、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロポリエーテルおよび各種シリコーンオイルからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項8】
前記液状媒体が水である、請求項1~
7のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項9】
前記液状組成物が、さらに、ノニオン性界面活性剤を含む、請求項1~
8のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項10】
液状媒体と該液状媒体に分散した樹脂パウダーとを含み、樹脂パウダーの体積基準累積90%径が8μm以下であり、樹脂パウダーが下記重合体(X)を含む樹脂であることを特徴とする分散液と、ポリテトラフルオロエチレ
ンと無機質フィラーとを混合して、前記樹脂パウダーと前記液状媒体と前記ポリテトラフルオロエチレンのパウダ
ーと前記無機質フィラーとを含む液状組成物を得る、液状組成物の製造方法。
重合体(X):テトラフルオロエチレンに基づく単位を有する含フッ素重合体であって、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基およびイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する、融点が260~320℃である含フッ素重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状組成物、並びに液状組成物を使用した、フィルムおよび積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス製品の軽量化、小型化、高密度化に伴い、各種プリント基板の需要が伸びている。プリント基板としては、例えば、ポリイミド等の絶縁材料からなる基板上に金属箔を積層し、該金属箔をパターニングして回路を形成したものが用いられている。プリント基板には、高周帯域の周波数に対応する優れた電気的特性(低誘電率等)や、はんだリフローに耐え得る優れた耐熱性等が求められている。
【0003】
誘電率が低く、プリント基板に有用な材料として、ポリテトラフルオロエチレンからなる、平均粒径が0.02~5μmのフルオロポリマー微細粉末をポリイミドに充填した樹脂組成物を含有するフィルムが提案されている(特許文献1)。該フィルムの製造では、フルオロポリマー微細粉末をポリアミック酸溶液に混合して液状組成物とし、該液状組成物を平らな表面上に塗布し、乾燥した後、加熱によりポリアミック酸をイミド化させる。
【0004】
また、プリント基板に有用な材料として、カルボニル基含有基等の官能基を有する含フッ素共重合体を含む、平均粒径が0.02~50μmの樹脂パウダーと、熱硬化性樹脂の硬化物とを含む層が金属箔上に形成された積層体も提案されている(特許文献2)。該積層体の製造では、熱硬化性樹脂を含む溶液に樹脂パウダーを分散させて液状組成物とし、該液状組成物を金属箔等の表面に塗布し、乾燥した後に硬化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-142572号公報
【文献】国際公開第2016/017801号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、2の製造方法ではいずれも、ポリアミック酸溶液への混合前のフルオロポリマー微細粉末や、熱硬化性樹脂を含む溶液への混合前の樹脂パウダーが粉体として取り扱われる。しかし、これらを粉体として取り扱うと、混合容器や反応容器に投入した際に粉体が飛散して容器の壁面に付着しやすく、また他の液と混合する際にダマになりやすく均一に分散させにくい。量産プロセスにおいては、これら粉体をあらかじめ分散液の状態にして、配管ラインを通じて混合容器または反応容器に投入できることが重要である。
【0007】
本発明は、樹脂パウダーを液状媒体に分散させた液状組成物を提供することを目的とする。また、該液状組成物を用いた、フィルムや積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成を有する。
[1]液状媒体と該液状媒体に分散した樹脂パウダーとを含み、樹脂パウダーの平均粒径が0.3~6μm、体積基準累積90%径が8μm以下であり、樹脂パウダーが下記重合体(X)を含む樹脂であることを特徴とする液状組成物。
重合体(X):テトラフルオロエチレンに基づく単位を有する含フッ素重合体であって、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基およびイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する含フッ素重合体。
[2]前記重合体(X)が、テトラフルオロエチレンに基づく単位と前記官能基を有する単位とを有する含フッ素共重合体である、[1]の液状組成物。
[3]前記重合体(X)が、さらに、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)に基づく単位を有する含フッ素共重合体である、[1]または[2]の液状組成物。
[4]前記液状組成物が、さらに、界面活性剤を含む、[1]~[3]のいずれかの液状組成物。
[5]前記液状組成物が、さらに、重合体(X)以外の重合体からなる樹脂のパウダー、または、無機質フィラーを含む、[1]~[3]のいずれかの液状組成物。
【0009】
[6]下記含フッ素共重合体をフィルム全量に対して80質量%以上含み、熱膨張(収縮)変化比(x方向(大きい熱膨張(収縮)率)とy方向(小さい熱膨張(収縮)率)の比x/y)が1.0~1.3であるフィルム。
含フッ素共重合体:テトラフルオロエチレンに基づく単位と、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基およびイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基を有する単位とを有する含フッ素共重合体。
[7]10cm2の面積の中に20μm以上の光学的不均一物の数が20個以下である、[6]のフィルム。
[8]前記フィルムの表面の算術平均粗さRaが2.0μm以上である、[6]または[7]のフィルム。
【0010】
[9]基材と、該基材の片面または両面に[6]~[8]のいずれかのフィルムからなる層とを有することを特徴とする積層体。
[10]前記基材が金属基材であり、前記フィルム層の厚みが15μm以下である、[9]の積層体。
[11]反り率が25%以下である、[9]または[10]の積層体。
[12]前記[6]のフィルムからなる層を有する層間絶縁膜、ソルダーレジストまたはカバーレイフィルム。
【0011】
[13]前記[1]~[5]のいずれかの液状組成物を製膜化するとともに液状媒体を除去することを特徴とするフィルムの製造方法。
[14]強化繊維基材に含浸させて製膜化する、[13]の製造方法。
[15]前記フィルムの比誘電率が2.0~3.5である、[13]または[14]の製造方法。
【0012】
[16]前記[1]~[5]のいずれかの液状組成物を基材上で製膜化するとともに液状媒体を除去して前記基材に積層された樹脂層を形成することを特徴とする積層体の製造方法。
[17]前記樹脂層の露出面の算術平均粗さRaが2.0μm以上である、[16]の製造方法。
[18]前記液状媒体を除去した後、遠赤外線を放射する加熱プレートから一面に向かって放射される熱幅射と不活性ガスを噴射しつつ加熱する、[16]または[17]の製造方法。
[19]前記樹脂層を形成した後該樹脂層表面をプラズマ処理する、[16]~[18]のいずれかの製造方法。
[20]前記樹脂層の比誘電率が2.0~3.5である、[16]~[19]のいずれかの製造方法。
[21]前記基材が金属基材である、[16]~[20]のいずれかの製造方法。
【0013】
[22]前記[16]~[21]のいずれかの製造方法で少なくとも片面に樹脂層を有する積層体を製造し、次いで得られた積層体を樹脂層表面を積層面として第2の基材と積層することを特徴とする積層体の製造方法。
[23]前記第2の基材がプリプレグであり、該プリプレグのマトリックス樹脂が融点が280℃以下の熱可塑性樹脂または熱硬化温度が280℃以下の熱硬化性樹脂であり、120~300℃で熱プレスして積層する、[22]の製造方法。
[24]前記[16]~[23]のいずれかの製造方法で製造された少なくとも片面に金属層を有する積層体の該金属層を、エッチングしてパターンを形成することを特徴とするプリント基板の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の液状組成物を使用することにより、樹脂パウダーを飛散させることなく、樹脂パウダーを樹脂やその原料等に均一に分散させることができる。また、上記液状組成物を用いた本発明の製造方法によれば、樹脂パウダーの分散の不均一化による不具合が抑制された、フィルムや積層体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書における下記の用語の意味は以下の通りである。
「比誘電率」は、SPDR(スピリットポスト誘電体共振器)法により、23℃±2℃、50±5%RHの範囲内の環境下にて、周波数2.5GHzで測定される値である。
重合体における「単位」は、単量体が重合することによって形成された、該単量体1分子に由来する原子団を意味する。単位は、重合反応によって直接形成された原子団であってもよく、重合反応によって得られた重合体を処理することによって該原子団の一部が別の構造に変換された原子団であってもよい。
「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの総称である。
「算術平均粗さ(Ra)」は、JIS B0601:2013(ISO4287:1997,Amd.1:2009)に基づき測定される算術平均粗さである。Raを求める際の、粗さ曲線用の基準長さlr(カットオフ値λc)は0.8mmとした。
【0016】
[液状組成物]
本発明の液状組成物は、液状媒体と該液状媒体に分散した樹脂パウダーとを含む液状組成物であり、樹脂パウダーは後述の重合体(X)を含む。加えて、樹該脂パウダーの平均粒径は0.3~6μmであり、体積基準累積90%径(D90)は8μm以下である。
分散媒である液状媒体は、常温で液状の不活性な成分であり、水等の無機質溶媒や有機溶媒等からなる。液状媒体は、液状組成物に含まれる他の成分よりも低沸点であり、加熱等により揮発し除去できるものであることが好ましい。
樹脂パウダーは重合体(X)以外の重合体を含んでいてもよい。
さらに、液状組成物は、液状媒体および上記樹脂パウダー以外の成分を有していてもよい。例えば、界面活性剤等の分散安定性を向上させる成分、無機質粒子や非溶融性有機質粒子等からなるフィラー、上記樹脂パウダーにおける樹脂とは異なる樹脂のパウダー、液状媒体に溶解した硬化性または非硬化性の樹脂等が挙げられる。
本発明の液状組成物が含有する他の成分としては、特に、界面活性剤やフィラーが好ましい。
【0017】
重合体(X)は、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」という。)に基づく単位(以下、「TFE単位」という。)を含有する含フッ素重合体であって、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、エポキシ基およびイソシアネート基からなる群から選ばれる少なくとも1種の官能基(以下、「官能基(i)」ともいう。)を有する含フッ素重合体である。
官能基(i)は、重合体(X)中の単位に含まれていてもよく、その場合、官能基(i)を有する単位はフッ素原子を有する単位であってもよく、フッ素原子を有しない単位であってもよい。以下、官能基(i)を有する単位を「単位(1)」ともいう。単位(1)はフッ素原子を有しない単位が好ましい。
また、官能基(i)は重合体(X)の主鎖の末端基に含まれていてもよく、その場合、重合体(X)は単位(1)を有していてもよく、有していなくてもよい。官能基(i)を有する末端基は、重合開始剤、連鎖移動剤等に由来する末端基であり、官能基(i)を有する、または重合体形成の反応の際に官能基(i)を生じる、重合開始剤や連鎖移動剤を使用することにより官能基(i)を有する末端基が形成される。また、重合体形成後にその末端基に官能基(i)を導入することもできる。末端基に含まれる官能基(i)としては、アルコキシカルボニル基、カーボネート基、カルボキシ基、フルオロホルミル基、酸無水物残基、ヒドロキシ基が好ましい。
【0018】
重合体(X)としては、単位(1)とTFE単位とを有する共重合体が好ましい。また、その場合、重合体(X)は、必要に応じて、単位(1)およびTFE単位以外の単位をさらに有してもよい。単位(1)およびTFE単位以外の単位としては、後述のPAVE単位やHFP単位等のペルフルオロの単位が好ましい。
以下、単位(1)とTFE単位とを有する共重合体である重合体(X)を例にして本発明を説明する。
【0019】
官能基(i)におけるカルボニル基含有基としては、構造中にカルボニル基を含む基であれば特に制限はなく、例えば、炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有してなる基、カーボネート基、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基、酸無水物残基、ポリフルオロアルコキシカルボニル基、脂肪酸残基等が挙げられる。なかでも、機械粉砕性向上、金属との融着性向上の点から、炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有してなる基、カーボネート基、カルボキシ基、ハロホルミル基、アルコキシカルボニル基および酸無水物残基が好ましく、カルボキシ基および酸無水物残基がより好ましい。
【0020】
炭化水素基の炭素原子間にカルボニル基を有してなる基における炭化水素基としては、例えば、炭素原子数2~8のアルキレン基等が挙げられる。なお、該アルキレン基の炭素原子数は、該アルキレン基におけるカルボニル基以外の部分の炭素原子の数である。該アルキレン基は直鎖状でも分岐状でもよい。
ハロホルミル基は、-C(=O)-X(ただし、Xはハロゲン原子である。)で表される基である。ハロホルミル基におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。すなわち、ハロホルミル基としてはフルオロホルミル基(カルボニルフルオリド基ともいう。)が好ましい。
アルコキシカルボニル基におけるアルコキシ基は、直鎖状でも分岐状でもよい。該アルコキシ基としては、炭素原子数1~8のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基またはエトキシ基が特に好ましい。
【0021】
単位(1)としては、官能基(i)を有する単量体(以下、「単量体(m1)」ともいう。)に基づく単位が好ましい。単量体(m1)が有する官能基(i)は1個でも2個以上でもよい。単量体(m1)が2個以上の官能基(i)を有する場合、それら官能基(i)は、それぞれ同じでもよく、異なってもよい。
単量体(m1)としては、官能基(i)を1つ有し、重合性二重結合を1つ有する化合物が好ましい。
単量体(m1)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
単量体(m1)のうち、カルボニル基含有基を有する単量体としては、例えば、酸無水物残基と重合性不飽和結合とを有する環状炭化水素化合物(以下、「単量体(m11)」ともいう。)、カルボキシ基を有する単量体(以下「単量体(m12)」ともいう。)、ビニルエステル、(メタ)アクリレート、CF2=CFORf1COOX1(ただし、Rf1は、エーテル性酸素原子を含んでもよい炭素原子数1~10のペルフルオロアルキレン基であり、X1は、水素原子または炭素原子数1~3のアルキル基である。)等が挙げられる。
【0023】
単量体(m11)としては、例えば、不飽和ジカルボン酸の酸無水物等が挙げられる。不飽和ジカルボン酸の酸無水物としては、例えば、無水イタコン酸(以下、「IAH」ともいう。)、無水シトラコン酸(以下、「CAH」ともいう。)、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物(別称:無水ハイミック酸。以下、「NAH」ともいう。)、無水マレイン酸等が挙げられる。
単量体(m12)としては、例えば、イタコン酸、シトラコン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸等が挙げられる。
ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、ブタン酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられる。
(メタ)アクリレートとしては、例えば、(ポリフルオロアルキル)アクリレート、(ポリフルオロアルキル)メタクリレート等が挙げられる。
【0024】
ヒドロキシ基を含む単量体としては、例えば、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、アリルエーテル類、不飽和カルボン酸エステル類((メタ)アクリレート、クロトン酸エステル等)であって末端または側鎖に1個以上のヒドロキシ基を有する化合物、および不飽和アルコール類が挙げられる。具体的には、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、クロトン酸2-ヒドロキシエチル等、アリルアルコール等が挙げられる。
エポキシ基を含む単量体としては、例えば、不飽和グリシジルエーテル類(例えば、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル等。)、不飽和グリシジルエステル類(例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等。)等が挙げられる。
イソシアネート基を含む単量体としては、例えば、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)エチルイソシアネート、1,1-ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられる。
【0025】
単位(1)は、機械粉砕性向上、金属との融着性向上の点から、官能基(i)として少なくともカルボニル基含有基を有することが好ましい。単量体(m1)としては、カルボニル基含有基を有する単量体が好ましい。
カルボニル基含有基を有する単量体としては、熱安定性、金属との融着性向上の点から、単量体(m11)が好ましい。なかでも、IAH、CAHおよびNAHが特に好ましい。IAH、CAHおよびNAHからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いると、無水マレイン酸を用いた場合に必要となる特殊な重合方法(特開平11-193312号公報参照。)を用いることなく、酸無水物残基を含有する含フッ素共重合体を容易に製造できる。IAH、CAHおよびNAHのなかでは、密着性がより優れる点から、NAHが好ましい。
【0026】
重合体(X)は、単位(1)およびTFE単位以外の単位として、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(以下、「PAVE」ともいう。)に基づく単位(以下、「PAVE単位」という。)を有してもよい。
【0027】
PAVEとしては、例えば、CF2=CFORf2(ただし、Rf2は、エーテル性酸素原子を含んでもよい炭素原子数1~10のペルフルオロアルキル基である。)が挙げられる。Rf2におけるペルフルオロアルキル基は、直鎖状でもよく分岐状でもよい。Rf2の炭素原子数は1~3が好ましい。
CF2=CFORf2としては、CF2=CFOCF3、CF2=CFOCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF3(以下、「PPVE」ともいう。)、CF2=CFOCF2CF2CF2CF3、CF2=CFO(CF2)8F等が挙げられ、PPVEが好ましい。
PAVEは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
重合体(X)は、単位(1)およびTFE単位以外の単位として、ヘキサフルオロプロピレン(以下、「HFP」ともいう。)に基づく単位(以下、「HFP単位」という。)を有してもよい。
【0029】
重合体(X)は、単位(1)およびTFE単位以外の単位として、PAVE単位およびHFP単位以外の単位(以下、「他の単位」という。)を有してもよい。
【0030】
他の単位としては、含フッ素単量体(ただし、単量体(m1)、TFE、PAVEおよびHFPを除く。)に基づく単位、非含フッ素単量体(ただし、単量体(m1)を除く。)に基づく単位が挙げられる。
【0031】
前記含フッ素単量体としては、重合性二重結合を1つ有する含フッ素化合物が好ましく、例えば、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン等のフルオロオレフィン(ただし、TFEおよびHFPを除く。)、CF2=CFORf3SO2X3(ただし、Rf3は、炭素原子数1~10のペルフルオロアルキレン基、またはエーテル性酸素原子を含む炭素原子数2~10のペルフルオロアルキレン基であり、X3はハロゲン原子またはヒドロキシ基である。)、CF2=CF(CF2)pOCF=CF2(ただし、pは1または2である。)、CH2=CX4(CF2)qX5(ただし、X4は水素原子またはフッ素原子であり、qは2~10の整数であり、X5は水素原子またはフッ素原子である。)、ペルフルオロ(2-メチレン-4-メチル-1、3-ジオキソラン)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上用いてもよい。
前記含フッ素単量体としては、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレンおよびCH2=CX4(CF2)qX5が好ましい。
CH2=CX4(CF2)qX5としては、CH2=CH(CF2)2F、CH2=CH(CF2)3F、CH2=CH(CF2)4F、CH2=CF(CF2)3H、CH2=CF(CF2)4H等が挙げられ、CH2=CH(CF2)4F、またはCH2=CH(CF2)2Fが好ましい。
【0032】
前記非含フッ素単量体としては、重合性二重結合を1つ有する非含フッ素化合物が好ましく、例えば、エチレン、プロピレン等の炭素原子数3以下のオレフィン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上用いてもよい。
単量体(m42)としては、エチレンまたはプロピレンが好ましく、エチレンが特に好ましい。
【0033】
前記含フッ素単量体と前記非含フッ素単量体とは、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、前記含フッ素単量体と前記非含フッ素単量体とを併用してもよい。
【0034】
重合体(X)としては、後述の重合体(X-1)および重合体(X-2)が好ましく、重合体(X-1)が特に好ましい。
【0035】
重合体(X-1)は、単位(1)とTFE単位とPAVE単位とを有し、全単位の合計に対する単位(1)の割合が0.01~3モル%であり、TFE単位の割合が90~99.89モル%であり、PAVE単位の割合が0.1~9.99モル%である共重合体である。
【0036】
重合体(X-1)は、必要に応じて、HFP単位および他の単位の少なくとも一方をさらに有してもよい。重合体(X-1)は、単位(1)とTFE単位とPAVE単位とからなるものでもよく、単位(1)とTFE単位とPAVE単位とHFP単位とからなるものでもよく、単位(1)とTFE単位とPAVE単位と他の単位とからなるものでもよく、単位(1)とTFE単位とPAVE単位とHFP単位と他の単位とからなるものでもよい。
【0037】
重合体(X-1)としては、カルボニル基含有基を含む単量体に基づく単位とTFE単位とPAVE単位とを有する共重合体が好ましく、単量体(m11)に基づく単位とTFE単位とPAVE単位とを有する共重合体が特に好ましい。好ましい重合体(X-1)の具体例としては、TFE/PPVE/NAH共重合体、TFE/PPVE/IAH共重合体、TFE/PPVE/CAH共重合体等が挙げられる。
【0038】
重合体(X-1)は、末端基として官能基(i)を有していてもよい。官能基(i)は、重合体(X-1)の製造時に用いられる、ラジカル重合開始剤、連鎖移動剤等を適宜選定することにより導入できる。
【0039】
重合体(X-1)を構成する全単位の合計に対する単位(1)の割合は、0.01~3モル%であり、0.03~2モル%が好ましく、0.05~1モル%が特に好ましい。単位(1)の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、嵩密度が大きな樹脂パウダーが得られやすい。また、液状組成物により形成したフィルム等と他材料(金属等)との層間密着性が優れる。単位(1)の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、重合体(X-1)の耐熱性や色目等が良好である。
【0040】
重合体(X-1)を構成する全単位の合計に対するTFE単位の割合は、90~99.89モル%であり、95~99.47モル%が好ましく、96~98.95モル%が特に好ましい。TFE単位の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、重合体(X-1)が電気特性(低誘電率等)、耐熱性、耐薬品性等に優れる。TFE単位の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、重合体(X-1)が溶融成形性、耐ストレスクラック性等に優れる。
【0041】
重合体(X-1)を構成する全単位の合計に対するPAVE単位の割合は、0.1~9.99モル%であり、0.5~9.97モル%が好ましく、1~9.95モル%が特に好ましい。PAVE単位の含有量が前記範囲の範囲内であれば、重合体(X-1)が成形性に優れる。
【0042】
重合体(X-1)中の全単位の合計に対する、単位(1)、TFE単位およびPAVE単位の合計の割合は、90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、98モル%以上がさらに好ましい。該割合の上限は特に限定されず、100モル%であってもよい。
【0043】
重合体(X-1)中の各単位の含有量は、溶融核磁気共鳴(NMR)分析等のNMR分析、フッ素含有量分析、赤外吸収スペクトル分析等により測定できる。例えば、特開2007-314720号公報に記載のように、赤外吸収スペクトル分析等の方法を用いて、重合体(X-1)を構成する全単位中の単位(1)の割合(モル%)を求めることができる。
【0044】
重合体(X-2)は、単位(1)とTFE単位とHFP単位とを有し、全単位の合計に対する単位(1)の割合が0.01~3モル%であり、TFE単位の割合が90~99.89モル%であり、HFP単位の割合が0.1~9.99モル%である共重合体(ただし、重合体(X-1)は除く。)である。
【0045】
重合体(X-2)は、必要に応じて、PAVE単位や他の単位をさらに有してもよい。重合体(X-2)は、単位(1)と単位(2)とHFP単位とからなるものでもよく、単位(1)とTFE単位とHFP単位とPAVE単位とからなるもの(ただし、重合体(X-1)は除く。)でもよく、単位(1)とTFE単位とHFP単位と他の単位とからなるものでもよく、単位(1)とTFE単位とHFP単位とPAVE単位と他の単位とからなるもの(ただし、重合体(X-1)は除く。)でもよい。
【0046】
重合体(X-2)としては、カルボニル基含有基を含む単量体に基づく単位とTFE単位とHFP単位とを有する共重合体が好ましく、単量体(m11)に基づく単位とTFE単位とHFP単位とを有する共重合体が特に好ましい。好ましい重合体(X-2)の具体例としては、TFE/HFP/NAH共重合体、TFE/HFP/IAH共重合体、TFE/HFP/CAH共重合体等が挙げられる。
なお、重合体(X-2)は、重合体(X-1)と同様に、官能基(i)を有する末端基を有していてもよい。
【0047】
重合体(X-2)を構成する全単位の合計に対する単位(1)の割合は、0.01~3モル%であり、0.02~2モル%が好ましく、0.05~1.5モル%が特に好ましい。単位(1)の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、嵩密度が大きな樹脂パウダーが得られやすい。また、液状組成物により形成したフィルム等と他材料(金属等)との層間密着性が優れる。単位(1)の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、重合体(X-2)の耐熱性や色目等が良好である。
【0048】
重合体(X-2)を構成する全単位の合計に対するTFE単位の割合は、90~99.89モル%であり、91~98モル%が好ましく、92~96モル%が特に好ましい。TFE単位の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、重合体(X-2)が電気特性(低誘電率等)、耐熱性、耐薬品性等に優れる。TFE単位の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、重合体(X-2)が溶融成形性、耐ストレスクラック性等に優れる。
【0049】
重合体(X-2)を構成する全単位の合計に対するHFP単位の割合は、0.1~9.99モル%であり、1~9モル%が好ましく、2~8モル%が特に好ましい。HFP単位の含有量が前記範囲の範囲内であれば、重合体(X-2)が成形性に優れる。
【0050】
重合体(X-2)中の全単位の合計に対する単位(1)、TFE単位、およびHFP単位の合計の割合は、90モル%以上が好ましく、95モル%以上がより好ましく、98モル%以上がさらに好ましい。該割合の上限は特に限定されず、100モル%であってもよい。
【0051】
重合体(X)の融点は、260~380℃が好ましい。重合体(X)の融点が260℃以上であれば、耐熱性に優れる。重合体(X)の融点が380℃以下であれば、成形性に優れる。特に成形後の粒子による表面凹凸などの問題が発生しづらい。
また、重合体(X)は、溶融成形可能であることが好ましい。なお、「溶融成形可能」であるとは、溶融流動性を示すことを意味する。「溶融流動性を示す」とは、荷重49Nの条件下、樹脂の融点よりも20℃以上高い温度において、溶融流れ速度が0.1~1000g/10分となる温度が存在することを意味する。「溶融流れ速度」とは、JIS K 7210:1999(ISO 1133:1997)に規定されるメルトマスフローレート(MFR)を意味する。溶融成形可能な重合体(X)の融点は、260~320℃がより好ましく、280~320℃がさらに好ましく、295~315℃が特に好ましく、295~310℃が最も好ましい。重合体(X)の融点が上記範囲の下限値以上であれば、耐熱性に優れる。重合体(X)の融点が上記範囲の上限値以下であれば、溶融成形性に優れる。
なお、重合体(X)の融点は、当該重合体(X)を構成する単位の種類や含有割合、分子量等によって調整できる。例えば、TFE単位の割合が多くなるほど、融点が高くなる傾向がある。
【0052】
重合体(X)のMFRは、0.1~1000g/10分が好ましく、0.5~100g/10分がより好ましく、1~30g/10分がさらに好ましく、5~20g/10分が特に好ましい。MFRが上記範囲の下限値以上であれば、重合体(X)が成形加工性に優れ、液状組成物を用いて形成したフィルム等の表面平滑性、外観に優れる。MFRが上記範囲の上限値以下であれば、重合体(X)が機械強度に優れ、また液状組成物を用いて形成したフィルム等が機械強度に優れる。
【0053】
MFRは、重合体(X)の分子量の目安であり、MFRが大きいと分子量が小さく、MFRが小さいと分子量が大きいことを示す。重合体(X)の分子量、ひいてはMFRは、重合体(X)の製造条件によって調整できる。例えば、単量体の重合時に重合時間を短縮すると、MFRが大きくなる傾向がある。
【0054】
重合体(X)の比誘電率は、2.5以下が好ましく、2.4以下がより好ましく、2.0~2.4が特に好ましい。重合体(X)の比誘電率が低いほど、液状組成物を用いて形成したフィルム等の電気特性がより優れ、例えば該フィルムをプリント基板の基板として用いた場合に優れた伝送効率が得られる。
共重合体(X)の比誘電率は、TFE単位の含有量により調整できる。
【0055】
重合体(X)は、常法により製造できる。重合体(X)の製造方法としては、例えば、国際公開第2016/017801号の[0053]~[0060]に記載の方法が挙げられる。
【0056】
樹脂パウダーは、重合体(X)以外の重合体を含有していてもよい。
樹脂パウダーに含有されていてもよい重合体(X)以外の重合体としては、電気的信頼性の特性を損なわない限り特に限定されず、例えば、重合体(X)以外の含フッ素重合体、芳香族ポリエステル、ポリアミドイミド、熱可塑性ポリイミド等が挙げられる。該重合体としては、電気的信頼性の観点から、重合体(X)以外の含フッ素重合体が好ましい。該重合体は、1種を単独で用いても、2種以上用いてもよい。
重合体(X)以外の含フッ素共重合体としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」ともいう。)、TFE/PAVE共重合体(ただし、重合体(X)を除く。)、TFE/HFP共重合体(ただし、重合体(X)を除く。)、エチレン/TFE共重合体等が挙げられる。重合体(X)以外の含フッ素重合体としては、耐熱性の点から、融点が280℃以上であるものが好ましい。
【0057】
樹脂パウダーは、重合体(X)を主成分とすることが好ましい。重合体(X)が主成分であれば、嵩密度の高い樹脂パウダーが得られやすい。樹脂パウダーの嵩密度が大きいほど、ハンドリング性が優れる。なお、樹脂パウダーが「重合体(X)を主成分とする」とは、樹脂パウダーの全量に対する重合体(X)の割合が、80質量%以上であることを意味する。パウダー材料の全量に対する重合体(X)の割合は、85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0058】
樹脂パウダーの平均粒径は、0.3~6μmであり、0.4~5μmが好ましく、0.5~4.5μmがより好ましく、0.7~4μmがさらに好ましく、1~3.5μmが特に好ましい。樹脂パウダーの平均粒径が前記範囲の下限値以上であれば、樹脂パウダーの流動性が充分で取り扱いが容易であり、かつ平均粒径が小さいことから、熱可塑性樹脂等への樹脂パウダーの充填率を高くすることができる。充填率が高いほど、液状組成物を用いて形成したフィルム等の電気特性(低誘電率等)が優れる。また、樹脂パウダーの平均粒径が小さいほど、液状組成物を用いて形成したフィルムの厚みを薄くでき、例えばフレキシブルプリント基板の用途に有用な薄さにすることも容易である。樹脂パウダーの平均粒径が前記範囲の上限値以下であれば、樹脂パウダーの液状媒体への分散性が優れる。
【0059】
樹脂パウダーの平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求められる体積基準累積50%径(D50)である。すなわち、レーザー回折・散乱法により粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径である。
【0060】
樹脂パウダーの体積基準累積90%径(D90)は、8μm以下であり、6μm以下が好ましく、1.5~5μmが特に好ましい。D90が上限値以下であれば、樹脂パウダーの液状媒体への分散性が優れる。
樹脂パウダーのD90は、レーザー回折・散乱法により求められる。すなわち、レーザー回折・散乱法により粒度分布を測定し、粒子の集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が90%となる点の粒子径である。
【0061】
樹脂パウダーの疎充填嵩密度は、0.05g/mL以上が好ましく、0.05~0.5g/mLがより好ましく、0.08~0.5g/mLが特に好ましい。
樹脂パウダーの密充填嵩密度は、0.05g/mL以上が好ましく、0.05~0.8g/mLがより好ましく、0.1~0.8g/mLが特に好ましい。
疎充填嵩密度または密充填嵩密度が大きいほど、樹脂パウダーのハンドリング性がより優れる。また、熱可塑性樹脂等への樹脂パウダーの充填率を高くすることができる。疎充填嵩密度または密充填嵩密度が前記範囲の上限値以下であれば、汎用的なプロセスで使用できる。
【0062】
樹脂パウダーの製造方法としては、重合で得た重合体(X)や、市販の重合体(X)を含むパウダー材料を、必要に応じて粉砕した後に分級(篩い分け等)し、平均粒径が0.3~6μmでD90が8μm以下の樹脂パウダーを得る方法が挙げられる。溶液重合、懸濁重合または乳化重合により重合体(X)を製造した場合は、重合に用いた有機溶媒または水性媒体を除去して粒状の重合体(X)を回収した後に、粉砕や分級(篩い分け等)を行う。重合で得た重合体(X)の平均粒径が0.3~6μmでD90が8μm以下である場合は、重合体(X)をそのまま樹脂パウダーとして使用できる。
樹脂パウダーが重合体(X)以外の重合体を含む場合は、該重合体と重合体(X)とを溶融混練した後に粉砕して分級することが好ましい。
【0063】
パウダー材料の粉砕方法および分級方法としては、国際公開第2016/017801号の[0065]~[0069]に記載の方法を採用できる。
なお、樹脂パウダーとしては、所望の樹脂パウダーが市販されていればそれを用いてもよい。
【0064】
本発明の液状組成物における液状媒体は、水等の無機質溶媒や有機溶媒等からなる。液状媒体は、相溶性の2種以上の液状媒体の混合物であってもよい。例えば、水溶性有機溶媒と水との混合物であってもよく、2種以上の有機溶媒の混合物であってもよい。
液状媒体の沸点は270℃以下が好ましく、70~260℃の沸点を有する液状媒体が好ましい。
無機質溶媒としては水が好ましい。
有機溶媒としては、公知の液状媒体を使用でき、例えば、エタノール等のアルコール類、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の含窒素化合物、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類、酢酸エチル等のエステル類、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル等のグリコールエーテル類、メチルセロソルブ等のセロソルブ類等が挙げられる。
なお、液状媒体は、重合体(X)と反応しない化合物である。
【0065】
有機溶媒としては、具体的には、下記有機溶媒が挙げられる。
γ-ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、2-ヘプタノン、シクロヘプタノン、シクロヘキサノン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、メチル-n-ペンチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソペンチルケトン。
エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、シクロヘキシルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル、ジオキサン、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル。
アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、ベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン。
メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルモノグリシジルエーテル、エチルモノグリシジルエーテル、ジメチルホルムアミド、ミネラルスピリット、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン。
パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロポリエーテル、各種シリコーンオイル。
【0066】
本発明の液状組成物中の液状媒体の含有量は、樹脂パウダー100質量部に対して、1~1000質量部が好ましく、10~500質量部がより好ましく、30~250質量部が特に好ましい。液状媒体の含有量が前記範囲内であれば、後述の製膜時の塗工性が良好となる。また、液状媒体の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、液状媒体の使用量が少ないため、液状媒体の除去工程に由来する製膜品への外観不良が起こりにくい。
【0067】
本発明の液状組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。界面活性剤としては、特に限定されず、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤等が挙げられる。なかでも、界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤が好ましい。界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明における界面活性剤は、少なくとも含フッ素基と親水性基を有するものであることが必要であり、少なくとも親油性基と親水性基を有するものであれば、特に限定されるものではなく、この他に親油性基が含有されているものであってもよい。少なくとも含フッ素基と親水性基を有するフッ素系添加剤を用いることにより、分散媒となる溶剤の表面張力を低下させ、フッ素樹脂表面に対する濡れ性を向上させてフッ素樹脂の分散性を向上させると共に、含フッ素基がフッ素樹脂表面に吸着し、親水性基が分散媒となる液状媒体中に伸長し、この親水性基の立体障害によりフッ素樹脂の凝集を防止して分散安定性を更に向上させるものとなる。含フッ素基としては、例えば、パーフルオロアルキル基、パーフルオロアルケニル基などが挙げられ、親水性基としては、例えば、エチレンオキサイドや、プロピレンキサイド、アミノ基、ケトン基、カルボキシル基、スルホン基などの1種又は2種以上が挙げられ、親油性基としては、例えば、アルキル基、フェニル基、シロキサン基などの1種又は2種以上が挙げられる。
具体的に用いることできるフッ素系添加剤としては、パーフルオロアルキル基含有のフタージェントMシリーズ、フタージェントFシリーズ、フタージェントGシリーズ、フタージェントP・Dシリーズ、フタージェント710FL、フタージェント710FM、フタージェント710FS、フタージェント730FL、フタージェント730LM、フタージェント610FM、フタージェント601AD、フタージェント601ADH2、フタージェント602A、フタージェント650AC、フタージェント681(ネオス社製)、サーフロンS-386などのサーフロンシリーズ(AGCセイミケミカル社製)、メガファックF-553、メガファックF-555、メガファックF-556、メガファックF-557、メガファックF-559、メガファックF-562、メガファックF-565などのメガファックシリーズ(DIC社製)、ユニダインDS-403Nなどのユニダインシリーズ(ダイキン工業社製)、などを用いることができる。これらの界面活性剤は、用いるフッ素樹脂と溶剤の種類によって、適宜最適なものが選択されるものであるが、1種類、または2種類以上を組み合わせて用いることも可能である。また界面活性剤を2種類以上を組み合わせて使用する場合、少なくとも1種類は含フッ素基と親水性基を有するものであることが必要であり、残りの種類は含フッ素基を含んでいなくてもよい。
【0068】
本発明の上記液状組成物には、さらに、シリコーン系消泡剤やフルオロシリコーン系消泡剤を含有させることができる。用いることができる消泡剤としては、シリコーン系やフルオロシリコーン系のエマルジョン型、自己乳化型、オイル型、オイルコンパウンド型、溶液型、粉末型、固形型などがあるが、用いる液状媒体との組合せで、適宜最適なものが選択されることになる。消泡剤の含有量は、樹脂パウダーの含有量(濃度)等により変動するものであるが、液状組成物全量に対して、好ましくは、有効成分として1質量%以下である。
【0069】
本発明の液状組成物が界面活性剤を含む場合、液状組成物中の界面活性剤の含有量は、樹脂パウダー100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.2~10質量部がより好ましく、0.3~7質量部が特に好ましい。界面活性剤の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、優れた分散性が得られやすい。界面活性剤の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、界面活性剤の特性に影響されることなく樹脂パウダーの特性を得ることができる。例えば本発明の液状組成物を用いて形成したフィルム等の誘電率や誘電正接を低くできる。
【0070】
本発明の液状組成物は、フィラーを含んでいてもよい。本発明の液状組成物がフィラーを含むことで、本発明の液状組成物を用いて形成したフィルム等の誘電率や誘電正接を低くできる。フィラーとしては、無機質フィラーが好ましく、国際公開第2016/017801号の[0089]に記載のものが挙げられる。無機質フィラーは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、後述の非熱溶融性樹脂(PTFEや熱硬化性樹脂の硬化物等)の微粒子からなるパウダーは有機質フィラーとみなすことができ、有機質フィラーとしては特にPTFEのパウダーが好ましい。
【0071】
本発明の液状組成物がフィラーを含む場合、液状組成物中のフィラーの含有量は、樹脂パウダー100質量部に対して、0.1~300質量部が好ましく、1~200質量部がより好ましく、3~150質量部がさらに好ましく、5~100質量部が特に好ましく、10~60質量部が最も好ましい。フィラーの含有量が多いほど、得られるフィルムの線膨張係数(CTE)が低くなり、フィルムの熱寸法性が優れる。さらには加熱プロセスにおいての寸法変化が小さく、成形安定性に優れる。
【0072】
本発明の液状組成物は、重合体(X)以外の樹脂のパウダー、または液状媒体に溶解した硬化性または非硬化性の樹脂を含有してもよい。重合体(X)以外の樹脂であって、液状媒体に非溶解の樹脂は微粒子として(すなわち、樹脂パウダーとして)液状組成物に含有される。かかる液状媒体に非溶解の樹脂および液状媒体に溶解した硬化性または非硬化性の樹脂を、以下、「第2の樹脂」と総称する。
液状媒体に非溶解性の第2の樹脂は、非硬化性の樹脂であってもよく、硬化性の樹脂であってもよい。
非硬化性の樹脂は熱溶融性の樹脂や非溶融性の樹脂が挙げられる。非硬化性の樹脂は、重合体(X)の官能基(i)と反応しうる反応性基を有していてもよい。熱溶融性の樹脂としては、例えば、重合体(X)以外の含フッ素重合体からなるフッ素樹脂、熱可塑性ポリイミド等が挙げられる。非溶融性の樹脂としては、PTFEや硬化性樹脂の硬化物等が挙げられ、これらの微粒子はフィラーとみなすこともできる。
硬化性樹脂としては、反応性基を有する重合体、反応性基を有するオリゴマー(低重合体)、低分子化合物、反応性基を有する低分子化合物等が挙げられる。硬化性樹脂は、それ自身の反応性基間の反応、重合体(X)の官能基(i)と反応、硬化剤との反応等により、硬化する樹脂である。硬化性樹脂としては熱硬化性樹脂が好ましい。硬化性樹脂は、本発明の液状組成物から液状媒体が除去されたのち、硬化されることが好ましい。
反応性基としては、カルボニル基含有基、ヒドロキシ基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。
【0073】
第2の樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリイミドや、熱硬化性ポリイミド、それらの前駆体であるポリアミック酸が挙げられる。ポリアミック酸は、通常、重合体(X)の官能基(i)と反応しうる反応性基を有している。熱可塑性ポリイミド等は、官能基(i)と反応しうる反応性基を有していなくてもよい。
ポリアミック酸を形成するジアミンや多価カルボン酸二無水物としては、例えば、特許第5766125号公報の[0020]、特許第5766125号公報の[0019]、特開2012-145676号公報の[0055]、[0057]等に記載のものが挙げられる。なかでも、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン等の芳香族ジアミンと、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族多価カルボン酸二無水物との組合せが好ましい。ジアミンおよび多価カルボン酸二無水物またはその誘導体は、それぞれ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0074】
熱溶融性の第2の樹脂や硬化して熱溶融性の樹脂となる第2の樹脂の場合、その熱溶融性樹脂としては、融点が280℃以上であるものが好ましい。これにより、液状組成物により形成したフィルム等において、はんだリフローに相当する雰囲気に曝されたときの熱による膨れ(発泡)が抑制されやすい。
【0075】
第2の樹脂は、また、熱溶融性ではない重合体からなる樹脂であってもよい。PTFEなど非溶融性樹脂や熱硬化性樹脂の硬化物からなる樹脂等の熱溶融性ではない樹脂は、液状媒体に非溶融性の樹脂であり、前記無機質フィラーと同様に、液状媒体中に微粒子状に分散される。
【0076】
熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、多官能シアン酸エステル樹脂、多官能マレイミド-シアン酸エステル樹脂、多官能性マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラニン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン-尿素共縮合樹脂、反応性基を有するフッ素樹脂(ただし、重合体(X)を除く。)が挙げられる。なかでも、プリント基板用途に有用な点から、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ビスマレイミド樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂が好ましく、エポキシ樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂が特に好ましい。熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0077】
エポキシ樹脂としては、プリント基板用の各種基板材料を形成するために用いられるエポキシ樹脂であれば、特に限定されない。具体的には、ナフタレン型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ化合物、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物、トリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。また、上記列挙した以外にも、各種のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、酸化型エポキシ樹脂を使用してもよいし、その他、リン変性エポキシ樹脂なども使用可能である。エポキシ樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。特に、硬化性に優れるという点では、1分子中に2以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を使用することが好ましい。
【0078】
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、100~1000000が好ましく、1000~100000がより好ましい。エポキシ樹脂の重量平均分子量が前記範囲内であれば、液状組成物により形成したフィルム等と他材料(金属等)との層間密着性が優れる。
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。
【0079】
ビスマレイミド樹脂としては、特開平7-70315号公報に記載されるような、ビスフェノールA型シアン酸エステル樹脂とビスマレイミド化合物とを併用した樹脂組成物(BTレジン)や、国際公開第2013/008667号に記載の発明やその背景技術に記載のものが挙げられる。
【0080】
第2の樹脂として、熱硬化性樹脂を用いる場合、本発明の液状組成物は硬化剤を含んでもよい。硬化剤としては、熱硬化剤(メラミン樹脂、ウレタン樹脂等)、エポキシ硬化剤(ノボラック型フェノール樹脂、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド等)等が挙げられる。
【0081】
本発明の液状組成物中の樹脂パウダーの含有量は、第2の樹脂の100質量部に対して、5~500質量部が好ましく、10~400質量部が好ましく、20~300質量部が特に好ましい。樹脂パウダーの含有量が前記範囲の下限値以上であれば、液状組成物を用いて形成したフィルム等が電気特性に優れる。樹脂パウダーの含有量が前記範囲の上限値以下であれば、液状組成物において樹脂パウダーが均一に分散しやすく、また液状組成物を用いて形成したフィルム等が機械的強度に優れる。
【0082】
本発明の液状組成物が第2の樹脂を含む場合、液状組成物中の液状媒体の含有量は、樹脂パウダーおよび第2の樹脂の合計100質量部に対して、1~1000質量部が好ましく、10~500質量部がより好ましく、30~250質量部が特に好ましい。液状媒体の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、液状組成物の粘度が高すぎず、後述の製膜時の塗工性が良好となる。液状媒体の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、液状組成物の粘度が低すぎず製膜時の塗工性が良好であり、また液状媒体の使用量が少ないため、液状媒体の除去工程に由来する製膜品への外観不良が起こりにくい。
なお、第2の樹脂が液状媒体とともに配合された場合(例えば、第2の樹脂の分散液や溶液が、樹脂パウダーと液状媒体とを含む組成物に配合された場合)、液状組成物中の液状媒体の含有量とは、それら液状媒体を合計した含有量である。
【0083】
本発明の液状組成物が硬化剤を含む場合、液状組成物中の硬化剤の含有量は、熱硬化性樹脂が持つ反応性基量に対して、0.5~2.0当量が好ましく、0.8~1.2当量がより好ましい。
【0084】
本発明の液状組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、樹脂パウダーと、必要に応じて使用する他の成分と、液状媒体とを混合して撹拌する方法が挙げられる。混合撹拌の手段としては、例えば、ホモミキサー、高速攪拌機、超音波分散機、ホモジナイザー、湿式ボールミル、ビーズミル、湿式ジェットミルなどの分散機を使用することが好ましい。
本発明の液状組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤を含む本発明の液状組成物の場合、樹脂パウダーと界面活性剤と液状媒体とを、分散機を用いて分散させることにより、分散状態において樹脂パウダーの動的光散乱法による平均粒径が、0.3~6μm以下の微粒子径であり保存安定性、長期保存後の再分散性に優れた安定な液状組成物を得ることができる。
【0085】
本発明の液状組成物を用いれば、樹脂パウダーを粉体として扱う場合に比べて、樹脂パウダーを飛散させることなく熱可塑性樹脂等に均一に分散できる。
また、本発明の液状組成物では、平均粒径およびD90が特定の範囲に制御された樹脂パウダーが液状媒体に分散されているため、分散性に優れている。そのため、本発明の液状組成物を用いてフィルムや積層体等を形成した際に、それらにおける樹脂パウダーの分散の不均一化に起因する電気特性の低下や、他基材の密着性力の低下等の不具合を抑制できる。
【0086】
本発明の液状組成物が他の成分としてフィラーを含む場合、樹脂パウダーとともにフィラーのパウダーを液状媒体に分散させることにより本発明の液状組成物を製造できる。フィラーの分散液を樹脂パウダーとともに液状媒体に配合してもよく、フィラーの分散液と樹脂パウダーの分散液とを混合してもよい。フィラーの分散液における液状媒体としては、前記液状媒体を使用できる。フィラーや非熱溶融性樹脂の分散液と樹脂パウダーの分散液における液状媒体が異なる場合は、それら液状媒体が相溶性であればよい。
【0087】
他の成分が第2の樹脂の場合、液状媒体に非溶解性の樹脂はその樹脂の粉末を樹脂パウダーとともに液状媒体に分散させて本発明の液状組成物を製造することができる。また、あらかじめ液状媒体に分散させた第2の樹脂の分散液を樹脂パウダー分散液に混合して製造することもでき、第2の樹脂の分散液に樹脂パウダーを分散させて製造することもできる。
第2の樹脂が液状媒体に溶解性の樹脂の場合、樹脂パウダーの分散液に第2の樹脂の配合し溶解させて本発明の液状組成物を製造することができる。第2の樹脂を液状媒体の溶液に混合して製造することもでき、該溶液に樹脂パウダーを分散させて製造することもできる。
樹脂パウダーの分散液と、他の成分を含む液の混合方法は、特に限定されず、例えば、公知の撹拌機を用いる方法が挙げられる。液状組成物にフィラーや硬化剤等を含ませる場合、それらは混合前の分散液に添加してもよく、混合前の他の成分を含む液に添加してもよく、混合後の混合液に添加してもよい。
【0088】
本発明の液状組成物は、例えば、後述するフィルム、繊維強化フィルム、プリプレグ、積層体の製造に使用できる。
また、本発明の液状組成物は、平角導体の絶縁層の形成にも使用できる。例えば、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステルイミドのうちいずれかの樹脂を主成分とする絶縁層を形成する際に、該樹脂を含む液である絶縁塗料に本発明の液状組成物を配合した液状組成物を用いることで、絶縁層の誘電率を低下させることが可能である。絶縁層の誘電率の低下は、絶縁塗料に樹脂パウダーを添加した塗料でも達成できるが、分散性の観点で、絶縁塗料に本発明の液状組成物を配合した液状組成物を用いることが好ましい。絶縁層の具体例としては、例えば、特開2013-191356号公報に記載された絶縁皮膜が挙げられる。
【0089】
また、本発明の液状組成物は、シームレスベルトの形成にも使用できる。例えば、ポリイミド系樹脂と導電性フィラーを含む液に対して本発明の液状組成物を配合した液状組成物を使用することで、記録媒体(紙)の搬送性に優れ、かつ、清掃性に優れるシームレスベルトを提供できる。記録媒体の搬送性に優れ、清掃性に優れるシームレスベルトは、ポリイミド系樹脂と導電性フィラーを含む液に樹脂パウダーを添加したものでも得られるが、分散性の観点で、前記液に本発明の液状組成物を配合した液状組成物を用いることが好ましい。シームレスベルトとしては、例えば、特開2011-240616号公報に記載されたものが挙げられる。
【0090】
[フィルムの製造方法]
本発明のフィルムの製造方法は、本発明の液状組成物を製膜化するとともに液状媒体を除去することを特徴とする。製膜化方法は、担体表面上への塗布が好ましく、担体上に塗布することにより液状組成物からなる膜が形成される。液状組成物の膜が形成された後、液状組成物の膜を加熱するなどの方法で液状媒体を揮発させ、液状媒体が除去された固体状の膜や少なくとも液状媒体の一部が除去された非流動性の膜が形成される。以下、液状媒体の除去を「乾燥」ともいい、塗布する操作を「塗工」ともいう。
液状組成物の製膜方法としては、特に限定されず、例えば、スプレー法、ロールコート法、スピンコート法、バー塗布法、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、グラビアオフセット法、ナイフコート法、キスコート法、バーコート法、ダイコート法、ファウンテンメイヤーバー法、スロットダイコート法等の公知の湿式塗布方法が挙げられる。
【0091】
乾燥においては、必ずしも液状媒体を完全に除去する必要はなく、塗膜が膜形状を安定して維持できるまで行えばよい。乾燥においては、液状組成物に含まれていた液状媒体のうち、50質量%以上を除去することが好ましい。
乾燥方法は、特に限定されず、例えば、オーブンにより加熱する方法、連続乾燥炉により加熱する方法、赤外線等の熱線照射により加熱する方法等が挙げられる。
乾燥温度は、液状媒体が除去される際に気泡が生じない範囲であればよく、例えば、50~250℃が好ましく、70~220℃がより好ましい。
乾燥時間は、0.1~30分が好ましく、0.5~20分がより好ましい。
乾燥は、1段階で実施してもよく、異なる温度にて2段階以上で実施してもよい。
【0092】
本発明のフィルムの製造方法としては、乾燥後の膜を別途加熱するかまたは乾燥に引き続いて加熱し、重合体(X)を溶融させることが好ましい。重合体(X)を溶融させることにより、樹脂パウダーの個々の粒子を溶融一体化し、均質な樹脂膜とすることができる。本発明の液状組成物がフィラーを有する場合は、フィラーが均一に分散した樹脂膜を得ることができる。本発明の液状組成物が熱溶融性の第2の樹脂を含有する場合は、重合体(X)と第2の樹脂との溶融ブレンド物からなる樹脂膜を製造することができる。熱硬化性の第2の樹脂を含有する場合は、重合体(X)と第2の樹脂の硬化物からなる樹脂膜を製造することができる。樹脂膜の加熱は膜の露出面からの加熱に限られず、担体側から加熱することもできる。また、重合体(X)を溶融させるための加熱は加圧下に行うこともでき、加熱加圧下の溶融等により、より均質な膜とすることができる。
【0093】
重合体(X)を溶融させるための加熱方法としては、オーブン加熱、熱線照射加熱、連続乾燥炉による加熱、熱板や熱ロールによる加熱等が挙げられる。
重合体(X)を溶融させるための加熱は、閉鎖系で行うこともできる。液状媒体が存在する塗膜の乾燥においては、気化した液状媒体が膜から除去されなければならないことより、膜の片面は解放面である必要がある。一方、液状媒体が膜から充分に除去された後の加熱では、液状媒体の除去を必要としないことより、たとえば2枚の加熱板の間で加圧して均質性の高い膜を製造することができる。
重合体(X)を溶融させるための加熱温度は、270~400℃が好ましく、310~370℃がより好ましい。
加熱時間は、1~300分が好ましく、3~60分がより好ましい。
【0094】
特に、有効波長帯は2~20μmである遠赤外線を用いた熱線照射加熱方法が、樹脂の均質な溶融をもたらし、溶融不充分な粒子の残存が少ない溶融樹脂膜を得る方法として好ましい。照射する遠赤外線の有効波長帯は、3~7μmがより好ましい。また、遠赤外線加熱と熱風加熱を組み合わせて加熱することもできる。
また、遠赤外線を放射する加熱プレートから膜面に向かって熱輻射が放出されるとともに、不活性ガスを噴射しつつ加熱すると、より効率よく熱処理が行われる。担体側から加熱する場合も、膜面側に不活性ガスを噴射することが同様に好ましい。また、加熱対象が酸化する場合は、遠赤外線を放射する際に膜面側の雰囲気中の酸素濃度を500ppmから100ppmにすることが好ましく、さらには300ppmから200ppmが好ましい。
【0095】
本発明の製造方法によって製造されたフィルムが、後述の積層体の材料として使用される場合など、フィルムの用途によっては、本発明の液状組成物中の樹脂パウダー中の重合体(X)が充分溶融されていない状態のフィルムであってもよい。フィルムが加熱されて均質な重合体(X)となる用途にはそのようなフィルムを使用することができる。また、第2の樹脂を含む本発明の液状組成物においても、フィルムの用途によっては(後述のプリプレグ製造の場合など)その第2の樹脂は充分溶融されていなくてもよく、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂は充分硬化されていなくてもよい。
上記の用途以外に使用されるフィルムにおいては、溶融性の第2の樹脂は溶融して均質化していることが好ましく、硬化性樹脂は充分硬化されていることが好ましい。たとえば、ポリアミック酸の場合は、乾燥後の加熱はポリアミック酸がポリイミドとなる温度(例えば、350~550℃)に加熱されることが好ましく、たとえば、エポキシ樹脂の場合はその硬化温度(例えば、50~250℃)に加熱されることが好ましい。
【0096】
担体上に形成された膜を担体から分離することにより、フィルムが得られる。担体として、非付着性の表面を有する担体を用いることにより、容易に分離することができる。また、付着性表面を有する担体においては、付着性を低減させる表面処理等を施した担体を用いることが好ましい。また、付着性の高い表面を有する担体の場合は、担体を溶解させる等の手段で除去することもできる。たとえば、金属製担体の場合は、エッチング等で担体を除去することができる。
【0097】
本発明のフィルムの製造方法で得られるフィルムは、金属積層板およびプリント基板の製造に使用できる。これらの用途に使用されるフィルムとしては、樹脂パウダーと液状媒体のみを含むか、または、さらに界面活性剤を含む液状組成物から得られるフィルムが好ましい。場合によっては、フィラーを含む液状組成物であってもよい。
なお、本発明のフィルムの製造方法によって、後述の繊維強化フィルムやプリプレグと呼ばれるフィルムを製造することもできる。さらに、担体と分離されないことを除き、本発明のフィルムの製造方法と同様の方法で、積層体を製造することもできる。本発明の積層体の製造方法においては、分離されない担体を基材という。
【0098】
後述の繊維強化フィルムやプリプレグを除き(すなわち、強化繊維を含むものを除き)、本発明の製造方法で製造されるフィルムの厚みは、1~3000μmが好ましい。プリント基板用途の場合、フィルムの厚みは、3~2000μmがより好ましく、5~1000μmがさらに好ましく、6~500μmが特に好ましい。
上記フィルムの比誘電率は、2.0~3.5が好ましく、2.0~3.0が特に好ましい。比誘電率が前記範囲の上限値以下であれば、プリント基板用途等の低誘電率が求められる用途に有用である。比誘電率が前記範囲の下限値以上であれば、電気特性と接着融着性の双方に優れる。
後述の繊維強化フィルムやプリプレグを除き、本発明の製造方法で製造されるフィルムは、MD方向(液状組成物の塗工方向)およびTD方向(MD方向の垂直方向)における熱膨張(収縮)率の比(以下、熱膨張(収縮)変化比、とも記す)であるx/yが1.0~1.4であることが好ましく、1.0~1.3であることがより好ましい。x/yが前記範囲であると金属積層板およびプリント基板を形成した際の反りが抑制されるため好ましい。なお、熱膨張(収縮)変化比は、x方向(大きい熱膨張(収縮)率)とy方向(小さい熱膨張(収縮)率)の比であり、「x/y」で表す。
また、上記フィルムは、表面の算術平均粗さRaが樹脂厚み未満であり、2.0μm以上であることが好ましい。これにより、表面にプリプレグ等の積層対象物を熱プレスにより貼り合わせた場合に、フィルムと積層対象物の間で優れた密着性が得られる。
Raは、2.0~30μmが好ましく、2.1~10μmがより好ましく、2.2~5μmがさらに好ましい。Raが前記範囲の下限値以上であれば、フィルムと積層対象物との密着性に優れる。Raが前記範囲の上限値以下であれば、フィルムに貫通穴が形成されにくい。
【0099】
本発明のフィルムの製造方法により、本発明の液状組成物を担体上に配置した強化繊維基材に含浸させ、乾燥した後に加熱して繊維強化フィルムを製造することができる。
強化繊維としては、無機繊維、金属繊維、有機繊維等が挙げられる。
無機繊維としては、炭素繊維、黒鉛繊維、ガラス繊維、シリコンカーバイト繊維、シリコンナイトライド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、ボロン繊維等が挙げられる。
金属繊維としては、アルミニウム繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維等が挙げられる。
有機繊維としては、芳香族ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ナイロン繊維、ポリエチレン繊維等が挙げられる。
強化繊維基材を形成する強化繊維としては、ガラス繊維、アラミド繊維および炭素繊維が好ましい。強化繊維としては、比重が小さく、高強度、高弾性率である点から、炭素繊維が特に好ましい。強化繊維は、表面処理が施されているものであってもよい。強化繊維としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
強化繊維は、表面処理が施されているものであってもよい。また、プリント基板用途では、強化繊維としては、ガラス繊維が好ましい。
【0100】
強化繊維基材の形態としては、繊維強化フィルムの機械的特性の点から、シート状に加工されたものが好ましい。具体的には、例えば、複数の強化繊維からなる強化繊維束を織成してなるクロス、複数の強化繊維が一方向に引き揃えられた基材、それらを積み重ねたもの等が挙げられる。強化繊維は、強化繊維シートの長さ方向の全長または幅方向の全幅にわたり連続している必要はなく、途中で分断されていてもよい。
強化繊維としては、長さが10mm以上の連続した長繊維が好ましい。強化繊維は、強化繊維シートの長さ方向の全長または幅方向の全幅にわたり連続している必要はなく、途中で分断されていてもよい。
【0101】
強化繊維基材に本発明の液状組成物を含浸させた後、乾燥して液状媒体の少なくとも一部を除去し、さらに加熱する。含浸後の乾燥および加熱は、前記と同様に行える。繊維強化フィルムにおいては、その中に含まれる樹脂パウダーに由来する樹脂は、繊維強化フィルムの形状が保持される限り、充分に溶融されていなくてもよい。そのような繊維強化フィルムは成形材料として使用でき、成形とともに加熱加圧して成形体を製造できる。
【0102】
本発明の製造方法で得られる繊維強化フィルムは、金属積層板およびプリント基板の製造に使用できる。
繊維強化フィルムの厚みは、1~3000μmが好ましい。プリント基板用途の場合、繊維強化フィルムの厚みは、3~2000μmがより好ましく、5~1000μmがさらに好ましく、6~500μmが特に好ましい。
【0103】
繊維強化フィルムの比誘電率は、2.0~3.5が好ましく、2.0~3.0が特に好ましい。比誘電率が前記範囲の上限値以下であれば、プリント基板用途等の低誘電率が求められる用途に有用である。比誘電率が前記範囲の下限値以上であれば、電気特性と融着性の双方に優れる。
【0104】
本発明のフィルムの製造方法により、本発明の液状組成物を担体上に配置した強化繊維基材に含浸させ、乾燥させてプリプレグを製造することができる。プリプレグの製造は、乾燥後の加熱を行わないかまたは充分加熱することなく行うことを除き、前記繊維強化フィルムの製造と同様に行える。すなわち、プリプレグは、強化繊維と溶融されていない(または充分溶融されていない)樹脂パウダーと、第2の樹脂である未硬化の硬化性樹脂とを含むフィルムである。
プリプレグ製造に使用される液状組成物は、第2の樹脂として未硬化の硬化性樹脂を含む。未硬化の硬化性樹脂としては、常温で固体状の熱硬化性樹脂が好ましい。常温で液状の熱硬化性樹脂の場合は、プリプレグ製造においける乾燥後の加熱により部分硬化させ、熱硬化し得る固体状の樹脂とすることができる。
【0105】
プリプレグ製造における乾燥においては、液状媒体が残存していてもよい。プリプレグにおいては、液状組成物に含まれていた液状媒体のうち、70質量%以上が除去されていることが好ましい。
本発明の液状組成物が第2の樹脂として熱硬化性樹脂を含む場合には、乾燥後の加熱で熱硬化性樹脂が硬化しやすいことより、乾燥後の加熱は熱硬化性樹脂が硬化しない温度で行うことが好ましい。ただし、前記のように、部分硬化させることが好ましい場合もある。この場合、通常、重合体(X)は溶融されないことより、プリプレグを硬化させる場合に重合体(X)が溶融する温度で行うことが好ましい。
【0106】
本発明の製造方法で得られるプリプレグは成形材料として使用でき、成形とともに加熱加圧して成形体を製造できる。例えば、金属積層板およびプリント基板の製造に使用できる。また、本発明の製造方法で得られるプレプリグは、プリント基板のような電子部品用途以外にも使用できる。例えば、岸壁工事において耐久性と軽量性が必要とされる矢板の材料や、航空機、自動車、船舶、風車、スポー用具等の様々な用途に向けた部材を製造する材料としても使用できる。
【0107】
プリプレグの比誘電率は、2.0~4.0が好ましく、2.0~3.5が特に好ましい。比誘電率が前記範囲の上限値以下であれば、プリント基板用途等の低誘電率が求められる用途に有用である。比誘電率が前記範囲の下限値以上であれば、電気特性と融着性の双方に優れる。
【0108】
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法は、前記した本発明の液状組成物を基材上で製膜化するとともに液状媒体を除去して前記基材に積層された樹脂層を形成することを特徴とする。
この製造方法は、前記フィルムの製造方法において、乾燥後に、または乾燥し加熱した後に、担体とフィルムを分離することなく、フィルムと単体の積層体を得る方法に相当する。積層体の製造方法においては、担体に相当する部分を基材といい、フィルムに相当する部分を「樹脂層」という。樹脂層は、前記繊維強化フィルムに相当する部分であってもよく、前記プリプレグは、に相当する部分であってもよい。
【0109】
本発明の積層体の製造方法により形成される樹脂層は、基材の厚み方向の片面のみに形成されてもよく、両面に形成されてもよい。積層体の反りを抑制しやすく、電気的信頼性に優れる金属積層板を得やすい点では、基材の両面に樹脂層を形成することが好ましい。樹脂層はフィルム状であるのが好ましい。
【0110】
基材の両面に樹脂層を形成する場合、基材の一方の面に対して液状組成物の塗布および乾燥を行った後に、他方の面に対して液状組成物の塗布および乾燥を行うことが好ましい。乾燥後の加熱については、基材の両面に対して液状組成物の塗布および乾燥を行った後に行ってもよく、基材の一方の面に対して分散液または液状組成物の塗布から加熱までを行った後に、他方の面に対して液状組成物の塗布から加熱までを行ってもよい。
【0111】
積層体における樹脂層の厚みは、樹脂層に含まれるフィラーが10体積%未満の場合、0.5~30μmが好ましい。プリント基板用途の場合、樹脂層の厚みは、0.5~25μmがより好ましく、1~20μmがさらに好ましく、2~15μmが特に好ましい。好ましい範囲において、積層体の反りが抑制される。樹脂層に含まれるフィラーが10体積%以上の場合、0.5~3000μmが好ましい。プリント基板用途の場合、樹脂層の厚みは、1~1500μmがより好ましく、3~500μmがさらに好ましく、2~100μmが特に好ましい。
基材の両面に樹脂層を有する積層体の場合、それぞれの樹脂層の組成および厚みが同じになるようにしてもよく、異なるようにしてもよい。積層体の反りの抑制の点では、それぞれの樹脂層の組成や厚みが同じなるようにすることが好ましい。
【0112】
樹脂層の比誘電率は、2.0~3.5が好ましく、2.0~3.0が特に好ましい。比誘電率が前記範囲の上限値以下であれば、プリント基板用途等の低誘電率が求められる用途に有用である。比誘電率が前記範囲の下限値以上であれば、電気特性と融着性の双方に優れる。
なお、基材が耐熱性樹脂等の非導電材料からなる場合、積層体全体の比誘電率も上記範囲であることが好ましい。
【0113】
本発明の製造方法で得られた積層体を、その樹脂層表面にフィルムやシート等の積層対象物を積層する用途に使用する場合には、その接合強度を高めまた気泡等の残存を防止するために、樹脂層の露出面は平滑性の高い面であることが好ましい。
なお、積層対象物は本発明の製造方法で得られた積層体であってもよい。この場合、樹脂層の露出面に他の積層体の基材面または樹脂層面が積層される。樹脂面同士を積層する場合は、樹脂層面間に積層対象物を介在させて積層してもよい。
樹脂層の露出面の平滑性を高めるためには、乾燥後の膜の溶融を充分行うことができる温度で行うとともに、加熱板や加熱ロール等で加圧することが好ましい。
得られる積層体の樹脂層の露出面の表面の算術平均粗さRaは樹脂層厚み未満であり、2.0μm以上であると好ましい。これにより、積層対象物を熱プレス等により積層した場合に、樹脂層と積層対象物の間で優れた密着性が得られる。
前記Raは、樹脂層厚み未満であり、かつ、2.0~30μmが好ましく、2.0~15μmがより好ましく、2.1~12μmがさらに好ましく、2.1~10μmが特に好ましく、2.2~8μmが最も好ましい。Raが前記範囲の下限値以上であれば、樹脂層と積層対象物との密着性に優れる。Raが前記範囲の上限値以下であれば、樹脂層に貫通穴が形成されることなく積層することができる。
【0114】
また、本発明の製造方法で得られた積層体を、その樹脂層表面にフィルムやシート等の積層対象物を積層する用途に使用する場合には、その接合強度を高めるために、積層体製造後樹脂層表面にコロナ放電処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。特にプラズマ処理が好ましい。接合強度を高めるための表面処理は、公知の条件で行うことができる。
【0115】
プラズマ処理に用いるプラズマ照射装置は、特に限定されず、高周波誘導方式、容量結合型電極方式、コロナ放電電極-プラズマジェット方式、平行平板型、リモートプラズマ型、大気圧プラズマ型、ICP型高密度プラズマ型等を採用した装置が挙げられる。
プラズマ処理に使用するガスとしては、特に限定されず、酸素、窒素、希ガス(アルゴン)、水素、アンモニア等が挙げられ、希ガスまたは窒素が好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
プラズマ処理の雰囲気は、希ガスまたは窒素ガスの体積分率が50体積%以上の雰囲気が好ましく、70体積%以上の雰囲気がより好ましく、90体積%以上の雰囲気がさらに好ましく、100体積%の雰囲気が特に好ましい。希ガスまたは窒素ガスの体積分率が下限値以上であれば、フッ素樹脂フィルムの表面を、算術平均粗さRaが2.0μm以上でありプラズマ処理した表面に更新することが容易になる。
プラズマ処理におけるガス流量は、特に限定されない。
【0116】
プラズマ処理においては、処理を行うにつれてフィルム表面のRaは大きくなるが、処理を行いすぎると一旦大きくなったRaが再び小さくなる傾向がある。そのため、処理が過度にならないように、電極間ギャップ、装置の出力等を調節して発生する電子のエネルギー(1~10eV程度)を制御し、処理時間を設定する。
【0117】
基材としては、特に限定されず、例えば、金属フィルム、耐熱性樹脂フィルム、金属蒸着耐熱性樹脂フィルム等が挙げられる。
金属フィルムを構成する金属としては、用途に応じて適宜選択でき、例えば、銅もしくは銅合金、ステンレス鋼もしくはその合金、チタンもしくはその合金等が挙げられる。金属フィルムとしては、圧延銅箔、電解銅箔といった銅フィルムが好ましい。金属フィルムの表面には、防錆層(例えばクロメート等の酸化物皮膜)や耐熱層が形成されていてもよい。また、樹脂層との密着性を向上させるために、金属フィルムの表面にカップリング剤処理等が施されてもよい。
金属フィルムの厚みは、特に限定されず、用途に応じて、充分な機能が発揮できる厚みを選定すればよい。
金属蒸着耐熱性樹脂フィルムとしては、下記耐熱性樹脂フィルムの片面または両面に、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の蒸着法で上記金属を蒸着したフィルムが挙げられる。
【0118】
耐熱性樹脂フィルムは、耐熱性樹脂の1種以上を含むフィルムである。ただし、耐熱性樹脂フィルムは、含フッ素重合体を含まない。耐熱性樹脂フィルムは、単層フィルムであってもよく、多層フィルムであってもよい。
耐熱性樹脂とは、融点が280℃以上の高分子化合物、またはJIS C 4003:2010(IEC 60085:2007)で規定される最高連続使用温度が121℃以上の高分子化合物を意味する。耐熱性樹脂としては、例えば、ポリイミド(芳香族ポリイミド等。)、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン(ポリエーテルスルホン等。)、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶ポリエステル等が挙げられる。
耐熱性樹脂フィルムとしては、ポリイミドフィルムおよび液晶ポリエステルが好ましい。ポリイミドフィルムは、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤を含有してもよい。また、液晶ポリエステルフィルムは、電気特性向上の観点で好ましい。耐熱性樹脂フィルムには、樹脂層を形成する面にコロナ放電処理、プラズマ処理等の表面処理が施されてもよい。
【0119】
本発明の製造方法により得られる積層体が、第2の樹脂を含まない液状組成物から製造されたものであるか、熱融着性の第2の樹脂または熱融着性樹脂となる第2の樹脂を含む液状組成物である場合、積層体の製造において重合体(X)を含む樹脂パウダーを溶融して、熱融着性樹脂層を有する積層体とすることが好ましい。樹脂パウダーの溶融は、未溶融粒子が残存しないように、充分高温で行い、また加熱と同時に加圧も行うことが好ましい。
加熱や加圧が不充分な場合、樹脂パウダー粒子全体が溶融した場合であっても、その後冷却して形成された樹脂層に光学的な不均一部分(粒状物等)が生じることがある。これは、樹脂の結晶化や凝集化が不均一であるために生じると推測される。本発明では、この光学的な不均一部分を「異物」という。異物が生じる場合、30μmを超える大きさの異物は10cm2あたりに20個以下であることが好ましく、15個以下であることがより好ましく、10個以下であることが特に好ましい。異物の数が前記範囲の上限値以下であれば、樹脂層と基材間の接着強度が優れる。異物の生成は、前記本発明のフィルム製造においても生成することがある。
本発明の製造方法により得られる積層体が、充分に溶融されていない樹脂パウダーの粒子や硬化性の第2の樹脂を有する場合(例えば、樹脂層がプリプレグの層である場合)、得られた積層体は、その樹脂層面に積層対象物を加熱加圧等により積層する用途に使用することができ、また、加熱加圧等で成形体を製造する用途に使用できる。
【0120】
得られた、積層体は、成形体の製造や各種用途の部材として使用できる。この積層体の場合、さらに、その樹脂層面に積層対象物を加熱加圧等により積層することができる。
本発明の製造方法により得られる積層体における樹脂層は、重合体(X)を含む樹脂層であるので、成形性に優れ、また溶融密着性が高いことよりその樹脂面に積層対象物を積層した場合には積層面の接合強度が高い。また、本発明の製造方法により得られる積層体の複数枚を積層した場合も、基材表面と樹脂層との積層面や樹脂層面同士の積層面の接合強度が高い。
【0121】
本発明の製造方法で得られる積層体としては、金属基板の片面または両面に樹脂層を有する積層体が好ましい。特に、銅箔を基材とした積層体が好ましい。樹脂層は、強化繊維を有していてもよく、プリプレグの層(すなわち、強化繊維と未硬化の硬化性樹脂を含む樹脂層)であってもよい。
本発明の積層体の製造方法で得られる銅箔層を有する積層体は、また、その複数枚を積層して銅箔層を複数有する積層体とすることもできる。これら銅箔層を有する積層体がその片面または両面に樹脂層を有する場合はその樹脂層表面に銅箔層を積層することが好ましい。本発明の積層体の製造方法で得られる銅箔層を有する積層体やその積層物は、フレキシブル銅張積層板やリジッド銅張積層板として使用できる。
以下、銅箔層を有する積層体の製造を例に、本発明の積層体の製造方法をさらに説明する。
【0122】
銅箔層を有する積層体は、基材として銅箔を使用し、銅箔の片面に本発明の液状組成物を塗布して液状組成物の膜を形成し、次いで加熱乾燥により液状媒体を除去し、引き続き加熱して樹脂パウダーを溶融し、その後冷却して未溶融粒子のない均一な樹脂層を形成して製造することができる。前記のように銅箔の両面に樹脂層を形成することもできる。
液状組成物の膜の形成、加熱乾燥、樹脂パウダーを溶融は前記条件で行うことができる。たとえば、乾燥後の加熱を熱ロールによる加熱で行う場合、乾燥後の未溶融樹脂層と銅箔との積層体を耐熱ロールに接触させ、遠赤外線を照射しながら搬送して、未溶融樹脂層を溶融した樹脂層とすることができる。ロールの搬送速度は特に限定されないが、例えば4.7mの長さの加熱炉を用いた場合は4.7m/minから0.31m/minが好ましい。さらに短時間で膜全体を効率よく加熱するために、2.45mの長さの加熱炉を用いた場合は4.7m/minから2.45m/minとすることができる。
加熱温度は特に限定されないが、加熱炉の滞在時間を1分とすると330~380℃が好ましく、さらに好ましくは350~370℃である。滞在時間を長くすることで温度を下げることもできる。
製造される積層体の樹脂層の厚みは15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、8μm以下が特に好ましい。前記範囲の上限以下であれば樹脂層/銅箔の非対称な層構成の場合でも、反りを抑制することができる。積層体の反り率は25%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましく、7%以下が特に好ましい。反りが上限以下であれば、プリント基板に加工する際の成形プロセスにおいてハンドリング性に優れかつプリント基板としての誘電特性に優れる。
また、シリカやPTFE等のフィラーを含む液状組成物や第2の樹脂としてTFE/PAVE共重合体、TFE/HFP共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン(以下、「PCTFE」ともいう。)等のフッ素樹脂(ただし、重合体(X)を除く)を含む液状組成物を用いることで、反りをより一層抑制することができる。
【0123】
さらに、第2の樹脂として熱硬化性樹脂を含む本発明の液状組成物を用いて、硬化した熱硬化性樹脂を含む樹脂層と銅箔層を有する積層体を製造することもできる。液状組成物はフィラーを含んでもよく、強化繊維を用いて繊維強化樹脂層を形成してもよい。この場合の樹脂層の厚みは200μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。樹脂層の厚みが200μm以下であればプリント基板に加工された際の穴加工において加工性に優れ、接続信頼性に優れた電子回路を形成することが可能となる。また樹脂層にフィラーを含ませることで反りをより一層抑制することができる。
【0124】
銅箔層を有する積層体の製造において、アニール処理をすることで厚み方向(Z方向)の線膨張係数を低減することができる。これにより基材と樹脂層の界面間での剥離や、積層体の面内での厚みムラによる基板の電気特性のばらつきを低減することができる。アニール条件は、温度が80から190℃が好ましく、100℃から185℃がより好ましく、120℃から180℃が特に好ましい。時間においては、10分から300分が好ましく、20分から200分がより好ましく、30分から120が特に好ましい。アニールの温度および時間の条件が下限値以上であれば十分な線膨張係数の低減が可能であり、上限値以下であれば熱劣化を伴わず線膨張係数を低減することができる。アニールの圧力においては、0.001MPaから0.030MPaが好ましく、0.003MPaから0.020MPaがより好ましく、0.005MPaから0.015MPaが特に好ましい。下限値以上であれば、線膨張係数を低減することができる。上限値以下であれば、基材の圧縮がおこることなく線膨張係数を低減することができる。
【0125】
本発明の積層体の製造方法により、銅箔以外の金属基材を用いた積層体を製造することもできる。例えば、チタン箔の片面または両面に樹脂層を形成して、チタン箔と樹脂層を有する積層体を製造することができる。樹脂層の厚みは10μm以下が好ましい。このような積層体の樹脂層側に繊維強化複合材料を積層することで、例えばチタン箔/樹脂層/繊維強化複合材料のような層構成の成形体が得られる。積層する繊維強化複合材料としては、炭素繊維強化複合材料が特に好ましい。
【0126】
[フィルムや積層体の利用]
本発明の積層体の製造方法で得られる積層体と同様の構成の積層体は、本発明の積層体の製造方法以外の方法でも製造することができる。たとえば、前記本発明のフィルムの製造方法で得られたフィルムを基材の相当するフィルムやシートと積層して、前記積層体と同様の構成を有する積層体を製造することができる。また、本発明の積層体の製造方法では、両面が基材である積層体を製造することは困難であるが(基材間の液状組成物から液状媒体を除去することは困難であるから)、本発明のフィルムの製造方法で得られたフィルムを用いることにより、両面が基材である積層体を製造することができる。
また、本発明の積層体の製造方法で得られた積層体の樹脂層の面に基材に相当する積層対象物を積層して、両面が基材である積層体を製造することもできる。
以下、金属層と樹脂層(重合体(X)を有する樹脂層)とを各々少なくとも1層有する積層体(以下、「金属積層板」ともいう。)を例として、本発明の製造方法で得られたフィルムや積層体の利用例を説明する。
金属積層板は、前記した本発明のフィルムの製造方法で得られたフィルム(繊維強化フィルム、プリプレグのフィルムも包含する。)または本発明の積層体の製造方法で得られた積層体の、重合体(X)を含む樹脂層面に、金属層を形成して金属積層板を得ることができる。
フィルムや積層体の片面または両面に金属層を形成する方法としては、例えば、フィルムや積層体と金属箔とを積層する方法、フィルムや積層体の樹脂層表面に金属を蒸着する方法等が挙げられる。積層方法としては、例えば、熱ラミネート等が挙げられる。金属の蒸着方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられる。
【0127】
製造される金属積層板の積層構造としては、本発明の製造方法で得られるフィルムを使用する場合、フィルム/金属層、金属層/フィルム/金属層等が挙げられる。また、本発明の製造方法で得られる積層体を使用する場合、金属積層板の積層構造としては、積層体層/金属層、金属層/積層体層/金属層等が挙げられる。ただし、金属層に接する積層体中の層は樹脂層である。
【0128】
前記本発明の製造方法で得られたフィルムや積層体は、また、金属以外の材料からなるフィルムやシート等の形状の積層対象物と積層して、新たな積層体を製造する用途に使用できる。積層対象物としては、耐熱性樹脂のフィルムやシート、繊維強化樹脂シート、プリプレグ等が挙げられる。
積層対象物としてはプリプレグが好ましい。プリプレグとしては、強化繊維シートにマトリックス樹脂が含浸されたものが挙げられる。
【0129】
強化繊維シートとしては、前記強化繊維から構成されるシートが挙げられる。
マトリックス樹脂は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。本発明は、低温接合という観点ではマトリックス樹脂として、融点が280℃以下の熱可塑性樹脂または熱硬化温度が280℃以下の熱硬化性樹脂を用いる場合に特に有効である。
マトリックス樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、マトリックス樹脂中に国際公開第2016/017801号の[0089]に記載のフィラーを含んでもいてもよく、上記の強化繊維を含んでいてもよい。また強化繊維およびフィラーを同時に含んでいてもよい。
【0130】
マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂の場合は、液状組成物の説明で挙げた熱硬化性樹脂と同じものが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンエーテル、ポリブタジエンが好ましい。
マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂の場合、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート等)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン等)、スチレン系樹脂(ポリスチレン等)、ポリカーボネート、ポリイミド(芳香族ポリイミド等。)、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリアリルスルホン(ポリエーテルスルホン等。)、芳香族ポリアミド、芳香族ポリエーテルアミド、ポリフェニレンスルファイド、ポリアリルエーテルケトン、ポリアミドイミド、液晶ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、PTFE、TFE/PAVE共重合体、TFE/HFP共重合体、PCTFE等のフッ素樹脂(ただし、重合体(X)を除く)等が挙げられる。
【0131】
本発明の製造方法で得られたフィルムや積層体とプリプレグとの熱プレスの温度は、重合体(X)の融点以下が好ましく、120~300℃がより好ましく、140~240℃がさらに好ましく、160~220℃がさらに好ましい。熱プレス温度が前記範囲内であれば、プリプレグの熱劣化を抑制しつつ、本発明の製造方法で得られたフィルムや積層体とプリプレグとを優れた密着性で貼り付けられる。なお、樹脂層にフィラーおよび強化繊維、積層対象物にフィラー、強化繊維および重合体(X)を含んでいてもよい。
上記樹脂層と積層対象物を含む金属積層板の構成は下記に限定されるものではないが、金属層/樹脂層/積層対象物/樹脂層/金属層や金属層/積層対象物/樹脂層/積層対象物/金属層等の構成において、樹脂層の厚みは0.1μm~300μmが好ましく、0.3μm~150μmがより好ましく、0.5μm~100μmがより好ましく、0.7μm~70μmがさらに好ましく、1μm~50μmがさらに好ましく、2μm~40μmが特に好ましい。前記範囲の上限以下であれば、銅張積層板としての穴開け加工性が良好であり誘電特性が優れる。前記範囲の下限以上であれば金属層と樹脂層および積層対象物と樹脂層とを優れた密着性で貼り付けられる。
【0132】
また積層対象物が熱可塑性樹脂であり、前記熱可塑性樹脂の内ポリイミド(芳香族ポリイミド等。)、液晶ポリエステル、PTFE、TFE/PAVE共重合体、TFE/HFP共重合体、PCTFEのいずれかが50質量%以上含まれる場合、もしくは上記熱可塑性樹脂が合わせて50質量%以上含まれる場合、樹脂層と積層対象物との熱プレスの温度は、310~400℃が好ましく、320~380℃がより好ましく、330~370℃がさらに好ましい。熱プレス温度が前記範囲内であれば、積層対象物の熱劣化を抑制しつつ、樹脂層と積層対象物とを優れた密着性で貼り付けられる。尚、樹脂層にフィラーおよび強化繊維、積層対象物にフィラー、強化繊維および共重合体(X)を含んでいてもよい。
上記樹脂層と積層対象物を含む金属積層板の構成は下記に限定されるものではないが、金属層/樹脂層/積層対象物/樹脂層/金属層や金属層/積層対象物/樹脂層/積層対象物/金属層等の構成において、樹脂層の厚みは0.1μm~300μmが好ましく、0.3μm~150μmがより好ましく、0.5μm~100μmがより好ましく、0.7μm~70μmがさらに好ましく、1μm~50μmがさらに好ましく、2μm~40μmが特に好ましい。前記範囲の上限以下であれば、銅張積層板としての穴開け加工性が良好であり誘電特性が優れる。前記範囲の下限以上であれば金属層と接着層および積層対象物と樹脂層とを優れた密着性で貼り付けられる。
本発明の製造方法で得られたフィルムや積層体と積層対象物との密着性(剥離強度)は、5N/cm以上が好ましく、6N/cm以上がさらに好ましく、7N/cm以上が特に好ましい。
【0133】
プリプレグとしては、市販のプリプレグを使用できる。
例えば市販されているプリプレグとしては、以下の商品名のものが挙げられる。
パナソニック社製のMEGTRON GXシリーズのR-G520、R-1410W、R-1410A、R-1410E、MEGTRONシリーズのR-5680、R-5680(N)、R-5670、R-5670(N)、R-5620S、R-5620、R-5630、R-1570、HIPERシリーズノR-1650V、R-1650D、R-1650M、R-1650E。
日立化成工業社製のGEA-770G、GEA-705G、GEA-700G、GEA-679FG、GEA-679F(R)、GEA-78G、TD-002、GEA-75G、GEA-67、GEA-67G。
三菱ガス化学社製のGEPL-190T、GEPL-230T、GHPL-830X TypeA、GHPL-830NS、GHPL-830NSR、GHPL-830NSF。
DOOSAN CORPORATION社製のGEPL-190T、GEPL-230T、GHPL-830X TypeA、GHPL-830NS、GHPL-830NSR、GHPL-830NSF。
GUANDONG Shengyi SCI. TECH社製のSP120N、S1151G、S1151GB、S1170G、S1170GB、S1150G、S1150GB、S1140F、S1140FB、S7045G、SP175M、S1190、S1190B、S1170、S0701、S1141KF、S0401KF、S1000-2M、S1000-2MB、S1000-2、S1000-2B、S1000、S1000B、S1000H、S1000HB、S7136H、S7439、S7439B。
SHANGHAI NANYA社製のNY1135、NY1140、NY1150、NY1170、NY2150、NY2170、NY9135、NY9140、NY9600、NY9250、NY9140 HF、NY6200、NY6150、NY3170 LK、NY6300、NY3170M、NY6200、NY3150 HF CTI600、NY3170HF、NY3150D、NY3150HF、NY2170H、NY2170、NY2150、NY2140、NY1600、NY1140、NY9815HF、NY9810HF、NY9815、NY9810。
ITEQ CORPORATION社製のIT-180GN、IT-180I、IT-180A、IT-189、IT-180、IT-258GA3、IT-158、IT-150GN、IT-140、IT-150GS、IT-150G、IT-168G1、IT-168G2、IT-170G、IT-170GRA1、IT-958G、IT-200LK、IT-200D、IT-150DA、IT-170GLE、IT-968G、IT-968G SE、IT-968、IT-968 SE。
NANYA PLASTICS社製のUV BLOCK FR-4-86、NP-140 TL/B、NP-140M TL/B、NP-150 R/TL/B、NP-170 R/TL/B、NP- 180 R/TL/B、NPG R/TL/B、NPG-151、NPG-150N、NPG-150LKHD、NPG-170N、NPG-170 R/TL/B、NPG-171、NPG-170D R/TL/B、NPG-180ID/B、NPG-180IF/B、NPG-180IN/B、NPG-180INBK/B(BP)、NPG-186、NPG-200R/TL、NPG-200WT、FR-4-86 PY、FR-140TL PY、NPG-PY R/TL、CEM-3-92、CEM-3-92PY、CEM-3-98、CEM-3-01PY、CEM-3-01HC、CEM-3-09、CEM-3-09HT、CEM-3-10、NP-LDII、NP-LDIII、NP-175R/TL/B、NP-155F R/TL/B、NP-175F R/TL/B、NP-175F BH、NP-175FM BH。
TAIWAN UNION TECHNOLOGY社製のULVP series、LDP series。
ISOLA GROUP社製のA11、R406N、P25N、TerraGreen、I-Tera MT40、IS680 AG、IS680、Astra MT77、G200、DE104、FR408、ED130UV、FR406、IS410、FR402、FR406N、IS420、IS620i、370TURBO、254、I-Speed、FR-408HR、IS415、370HR。
PARK ELECTROCHEMICAL社製のNY9000、NX9000、NL9000、NH9000、N9000-13 RF、N8000Q、N8000、N7000-1、N7000-2 HTスラッシュ -3、N7000-3、N5000、N5000-30、N-5000-32、N4000-12、N4000-12SI、N4000-13、N4000-13SI、N4000-13SI、N4000-13EP、N4000-13EP SI、N4350-13RF、N4380-13RF、N4800-20、N4800-20SI、Meteorwave1000、Meteorwave2000、Meteorwave3000、Meteorwave4000、Mercurywave9350、N4000-6、N4000-6FC、N4000-7、N4000-7SI、N4000-11、N4000-29。
ROGERS CORPORATION社製のRO4450B、RO4450F、CLTE-P、3001 Bonding Film、2929 Bondply、CuClad 6700 Bonding Film、ULTRALAM 3908 Bondply、CuClad 6250 Bonding Film。
利昌工業社製のES-3329、ES-3317B、ES-3346、ES-3308S、ES-3310A、ES-3306S、ES-3350、ES-3352、ES-3660、ES-3351S、ES-3551S、ES-3382S、ES-3940、ES-3960V、ES-3960C、ES-3753、ES-3305、ES-3615、ES-3306S、ES-3506S、ES-3308S、ES-3317B、ES-3615。
【0134】
本発明のフィルムの製造方法で製造されたフィルムや本発明の積層体の製造方法で製造された積層体を用いて得られた、金属層が銅や銅合金等からなる金属積層板は、プリント基板の製造に用いることができる。本発明の積層体の製造方法で製造された、基材が銅や銅合金等からなる積層体もまた、プリント基板の製造に用いることができる。
プリント基板は、前記金属積層板等の金属層をエッチングしてパターン回路を形成して得ることができる。金属層のエッチングは、公知の方法を採用できる。
プリント基板の製造においては、金属層をエッチングしてパターン回路を形成した後に、該パターン回路上に層間絶縁膜を形成し、該層間絶縁膜上にさらにパターン回路を形成してもよい。層間絶縁膜は、例えば、本発明の製造方法で得られる液状組成物により形成できる。
具体的には、例えば、以下の方法が挙げられる。任意の積層構造の金属積層板の金属層をエッチングしてパターン回路を形成した後、本発明の液状組成物を該パターン回路上に塗布し、乾燥した後に加熱して層間絶縁膜とする。次いで、前記層間絶縁膜上に蒸着等で金属層を形成し、エッチングしてさらなるパターン回路を形成する。
【0135】
プリント基板の製造においては、パターン回路上にソルダーレジストを積層してもよい。ソルダーレジストは、例えば、本発明の液状組成物により形成できる。具体的には、本発明の液状組成物をパターン回路上に塗布し、乾燥した後に加熱してソルダーレジストを形成してもよい。
【0136】
また、プリント基板の製造においては、カバーレイフィルムを積層してもよい。カバーレイフィルムは、典型的には、基材フィルムと、その表面に形成された接着剤層とから構成され、接着剤層側の面がプリント基板に貼り合わされる。カバーレイフィルムとしては、例えば、本発明の製造方法で得たフィルムを使用できる。
また、金属積層板の金属層をエッチングして形成したパターン回路上に、本発明の製造方法で得たフィルムを用いた層間絶縁膜を形成し、該層間絶縁膜上にカバーレイフィルムとしてポリイミドフィルムを積層してもよい。
【0137】
得られるプリント基板は、高周波特性が必要とされるレーダー、ネットワークのルーター、バックプレーン、無線インフラ等の電子機器用基板や自動車用各種センサ用基板、エンジンマネージメントセンサ用基板として有用であり、特にミリ波帯域の伝送損失低減を目的とする用途に好適である。
【0138】
本発明の製造方法で得られるフィルムや積層体は、アンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品、スポーツ用具や、食品工業用品、のこぎり、すべり軸受け等の被覆物品等として使用できる。さらに例示すると、国際公開第2015/182702号の[0040]~[0044]に記載の用途にも使用できる。また、プリプレグはFRP、CFRPに用いることができるが、これは国際公開第2015/182702号の[0046]に記載の用途が挙げられる。また、本発明の液状組成物は、溶液系の塗料として用いることもできる。該塗料でコーティングされた物品としては、国際公開第2015/182702号の[0045]に記載されたものが挙げられる。また、特許第2686148号公報のように絶縁電線の絶縁層を形成する絶縁塗料として用いることもできる。
【0139】
絶縁電線としては、本発明の液状組成物を用いて、平角線の外周に厚みが10~150μmである絶縁被覆層を形成させた絶縁電線が挙げられる。前記絶縁被覆層の比誘電率は2.8以下であることが好ましい。また、前記絶縁被覆層と平角線で使用する金属種との密着強度が10N/cm以上であることが好ましい。前記絶縁電線は、絶縁増幅器、絶縁トランス、自動車のオルタネータ、ハイブリッド車の電動機の何れかの機器として好適である。
【実施例】
【0140】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。なお、以下の実施例では、本発明の液状組成物を含め、固体粒子を含む液状媒体を「分散液」という。
[測定方法]
重合体(X)および樹脂パウダーについての各種測定方法を以下に示す。
(1)共重合組成
重合体(X)の共重合組成のうち、NAHに基づく単位の割合(モル%)は、以下の赤外吸収スペクトル分析によって求めた。他の単位の割合は、溶融NMR分析およびフッ素含有量分析により求めた。
【0141】
<NAHに基づく単位の割合(モル%)>
含フッ素共重合体をプレス成形して厚み200μmのフィルムを得た後、赤外分光法により分析して赤外吸収スペクトルを得た。赤外吸収スペクトルにおいて、含フッ素共重合体中のNAHに基づく単位における吸収ピークは1778cm-1に現れる。該吸収ピークの吸光度を測定し、NAHのモル吸光係数20810mol-1・l・cm-1を用いて、含フッ素共重合体におけるNAHに基づく単位の割合を求めた。
【0142】
(2)融点(℃)
セイコー電子社製の示差走査熱量計(DSC装置)を用い、共重合体(X)を10℃/分の速度で昇温したときの融解ピークを記録し、極大値に対応する温度(℃)を融点(Tm)とした。
【0143】
(3)MFR(g/10分)
テクノセブン社製のメルトインデクサーを用い、372℃、49N荷重下で、直径2mm、長さ8mmのノズルから10分間(単位時間)に流出する共重合体(X)の質量(g)を測定してMFRとした。
【0144】
(4)比誘電率
ASTM D 150準拠の変成器ブリッジ法にて、温度を23℃±2℃の範囲内、相対湿度を50%±5%RHの範囲内に保持した試験環境において、絶縁破壊試験装置(YSY-243-100RHO(ヤマヨ試験機社製))にて、1MHzで求めた値を比誘電率とした。
【0145】
(5)重合体(X)の平均粒径
2.000メッシュ篩(目開き2.400mm)、1.410メッシュ篩(目開き1.705mm)、1.000メッシュ篩(目開き1.205mm)、0.710メッシュ篩(目開き0.855mm)、0.500メッシュ篩(目開き0.605mm)、0.250メッシュ篩(目開き0.375mm)、0.149メッシュ篩(目開き0.100mm)、および受け皿をこの順に上から重ねた。その上から試料(重合体(X))を入れ、30分間振とう器で篩分けを行った。その後、各篩の上に残った試料の質量を測定し、各目開き値に対する通過質量の累計をグラフに表し、通過質量の累計が50%の時の粒径を試料の平均粒径とした。
【0146】
(6)樹脂パウダーの平均粒径およびD90
堀場製作所社製のレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA-920測定器)を用い、樹脂パウダーを水中に分散させ、粒度分布を測定し、平均粒径(μm)およびD90(μm)を算出した。
【0147】
(7)疎充填嵩密度および密充填嵩密度
樹脂パウダーの疎充填嵩密度、密充填嵩密度は、国際公開第2016/017801号の[0117]、[0118]に記載の方法を用いて測定した。
【0148】
(8)銅箔との剥離強度
各例で得た片面銅張積層板、両面銅張積層板または積層体から、長さ100mm、幅10mmの矩形状の試験片を切り出した。前記試験片の長さ方向の一端から50mmの位置まで、一方の銅箔と樹脂層、銅箔を使用していない試験片については樹脂層と融着している相手材とを剥離した。次いで、前記試験片の長さ方向の一端から50mmの位置を中央にして、引張り試験機(オリエンテック社製)を用いて、引張り速度50mm/分で90度剥離し、最大荷重を剥離強度(N/10mm)とした。剥離強度が大きいほど、樹脂層と銅箔または樹脂層と相手材との間の密着性が優れていることを示す。
【0149】
(9)片面銅張積層板の反り率
各例で得た片面銅張積層板から180mm角の四角い試験片を切り出した。この試験片をJIS C 6471に規定されている測定方法に従い反り率を測定した。反り率が小さいほど、片面銅張積層板を他材料と積層した場合に、積層加工時の反りによる他材料との積層不良や、積層体としての反りが抑制された平坦性の高いプリント基板を得ることが可能となる。
【0150】
(10)厚み方向線膨張係数(ppm/℃)
各例で得た両面銅張積層板を10mm×10mmに裁断したサンプルについて、熱機械分析装置(NETZSCH社製、TMA402 F1 Hyperion)を用いて厚み方向の線膨張係数CTE(z)を測定した。具体的には、窒素雰囲気中、荷重を19.6mNとし、測定温度が-65℃から150℃の温度範囲を2℃/分の速度でサンプルを昇温し、サンプルの厚みの変位量を測定した。測定終了後、-40℃から125℃間のサンプルの変位量から-40℃から125℃での線膨張係数を求めた。
【0151】
(11)算術平均粗さRa
JIS B0601:2013(ISO4287:1997,Amd.1:2009)に基づいて、片面銅張積層板の樹脂層の表面のRaを測定した。Raを求める際の、粗さ曲線用の基準長さlr(カットオフ値λc)は0.8mmとした。
【0152】
(12)プリプレグとの界面の剥離強度
各例で得た金属積層板から、長さ100mm、幅10mmの矩形状の試験片を切り出した。前記試験片の長さ方向の一端から50mmの位置まで樹脂層とプリプレグとを剥離した。次いで、前記試験片の長さ方向の一端から50mmの位置を中央にして、引張り試験機(オリエンテック社製)を用いて、引張り速度50mm/分で90度剥離し、最大荷重を剥離強度(N/10mm)とした。剥離強度が大きいほど、樹脂層とプリプレグとの密着性が優れていることを示す。
【0153】
[製造例1]
単位(1)を形成する単量体としてNAH(無水ハイミック酸、日立化成社製)を、PPVE(CF2=CFO(CF2)3F、旭硝子社製)を用いて、国際公開第2016/017801号の[0123]に記載の手順で重合体(X-1)を製造した。
重合体(X-1)の共重合組成は、NAH単位/TFE単位/PPVE単位=0.1/97.9/2.0(モル%)であった。重合体(X-1)の融点は300℃であり、比誘電率は2.1であり、MFRは17.6g/10分であり、平均粒径は1554μmであった。
【0154】
次いで、ジェットミル(セイシン企業社製、シングルトラックジェットミル FS-4型)を用い、粉砕圧力0.5MPa、処理速度1kg/hrの条件で、重合体(X-1)を粉砕して樹脂パウダー(A)を得た。樹脂パウダー(A)の平均粒径は2.58μmであり、D90は7.1μmであった。樹脂パウダー(A)の疎充填嵩密度は0.278g/mLであり、密充填嵩密度は0.328g/mLであった。
【0155】
[製造例2]
ジェットミル(セイシン企業社製、シングルトラックジェットミル FS-4型)を用い、粉砕圧力0.5MPa、処理速度1kg/hrの条件で、PTFE(旭硝子社製 L169J)を粉砕し、PTFEからなる樹脂パウダー(B)を得た。樹脂パウダー(B)の平均粒径は3.01μmであり、D90は8.5μmであり、疎充填嵩密度は0.355g/mLであり、密充填嵩密度は0.387g/mLであった。
【0156】
[実施例1]
樹脂パウダー(A)120gに対し、ノニオン性界面活性剤(ネオス社製、フタージェント250)を9g、蒸留水234gの混合水溶液を徐々に添加し、撹拌機であるラボスターラー(ヤマト科学社製、型式:LT-500)を用いて60分撹拌して分散液(C-1)を得た。
【0157】
[実施例2]
ノニオン性界面活性剤をFTX-218P(ネオス社製)に変更し、蒸留水をN-メチル-2-ピロリドンに変更した以外は、実施例1と同様にして分散液(C-2)を得た。
【0158】
[実施例3]
ノニオン性界面活性剤をFTX-218P(ネオス社製)に変更し、蒸留水をN,N-ジメチルホルムアミドに変更した以外は、実施例1と同様にして分散液(C-3)を得た。
【0159】
[実施例4]
ノニオン性界面活性剤をフタージェント710FM(ネオス社製)に変更し、蒸留水をN,N-ジメチルアセトアミドに変更した以外は、実施例1と同様にして分散液(C-4)を得た。
【0160】
[比較例1]
樹脂パウダー(A)の代わりに、製造例2で得た樹脂パウダー(B)を用いた以外は、実施例1と同様にして分散液(C-5)を得た。
【0161】
[分散性評価]
各例で得た分散液について、1時間静置後と3日静置後の分散状態を目視にて確認し、下記の評価基準に従って分散性を評価した。
<1時間静置後>
○:樹脂パウダーが沈降せず、樹脂パウダーと液状媒体との分離が見られない。
×:樹脂パウダーが沈降し、樹脂パウダーと液状媒体との分離が見られる。
<3日静置後>
○:樹脂パウダーと液状媒体との分離が見られるが、再度ラボスターラーで6時間撹拌すると、凝集物の浮遊が見られず再分散可能である。
×:樹脂パウダーと液状媒体との分離が見られ、再度ラボスターラーで6時間撹拌しても、凝集物の浮遊が見られ再分散できない。
【0162】
各例の評価結果を表1に示す。なお、表1における略号は以下の意味を示す。
F250:フタージェント250(ネオス社製)
FTX-218P:FTX-218P(ネオス社製)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMAc:N,N-ジメチルアセトアミド
【0163】
【0164】
表1に示すように、樹脂パウダー(A)が液状媒体に分散した実施例1~4の分散液は、1時間静置後の分散状態は良好であり、分散性に優れていた。また、3日静置後には樹脂パウダーと液状媒体との分離が見られるが、再度ラボスターラーで6時間撹拌すると、凝集物の浮遊が見られず再分散可能であり、再分散性に優れていた。
一方、樹脂パウダー(A)の代わりに樹脂パウダー(B)を用いた比較例1の分散液は、1時間静置後後に樹脂パウダー(B)の一部が沈降して液状媒体と分離しており、分散状態が悪かった。また、3日静置後には樹脂パウダー(B)が全て沈降して分離しており、再度ラボスターラーで6時間撹拌しても、凝集体が浮遊して均一な分散液が得られず、再分散性も悪かった。
【0165】
[実施例5]
実施例1で得た分散液(C-1)を銅箔上に塗布し、乾燥して片面銅張積層板を2枚作製した。次いで、樹脂層が向い合うように片面銅張積層板2枚を重ね、プレス温度340℃、プレス圧力4.0MPa、プレス時間15分で真空熱プレスを行って両面銅張積層板を得た。得られた両面銅張積層板をエッチングし、比誘電率および剥離強度の測定結果を表2に示す。
【0166】
[実施例6]
実施例2で得た分散液(C-2)に平均粒径0.7μmのシリカフィラー(SFP-30M、Denka社製)を25質量%となるように添加し、その混合液を分散液(C-1)の代わりに用いる以外は、実施例5と同様にして両面銅張積層板を得た。剥離強度の測定結果を表2に示す。
【0167】
[比較例2]
比較例1で得た分散液(C-5)を分散液(C-1)の代わりに用いる以外は、実施例5と同様にして両面銅張積層板を得た。剥離強度の測定結果を表2に示す。
【0168】
【0169】
表2に示すように、本発明の分散液を用いた実施例5、6では、分散状態が悪い分散液(C-1)を用いた比較例2に比べて、両面銅張積層板における樹脂層と銅箔との剥離強度が高かった。
【0170】
[実施例7]
ノニオン性界面活性剤をフタージェント710-FM(ネオス社製)に変更し、蒸留水をジエチレングリコールジブチルエーテルに変更した以外は、実施例1と同様にして分散液を得た。続いて、上記のようにして得られた分散液を、横型のボールミルを用いて、15mm径のジルコニアボールにて分散を行い、分散液(C-6)を得た。分散液(C-6)を銅箔上に塗布し、窒素雰囲気下で220℃15分で乾燥し、その後350℃15分で加熱した後、徐冷することで樹脂層厚みが30μmの片面銅張積層体を2枚作製した。次いで、樹脂層が向い合うように片面銅張積層板2枚を重ね、プレス温度340℃、プレス圧力4.0MPa、プレス時間15分で真空熱プレスを行って両面銅張積層板を得た。
【0171】
[実施例8]
ジエチレングリコールジブチルエーテルをブチルカルビトールアセテートに変更した以外は、実施例7と同様にして分散液(C-7)を得た。分散液(C-7)を銅箔上に塗布し、窒素雰囲気下で250℃15分で乾燥し、実施例7と同様に片面銅張積層体および両面銅張積層板を得た。片面銅張積層体の反り率は4.4%であり、反りは小さかった。
【0172】
[実施例9]
ブチルカルビトールアセテートをブチルカルビトールに変更した以外は、実施例7と同様にして分散液(C-8)を得た。分散液(C-8)を銅箔上に塗布し、窒素雰囲気下で230℃15分で乾燥し、実施例7と同様に片面銅張積層体および両面銅張積層板を得た。片面銅張積層体の反り率は5.0%であり、反りは小さかった。
【0173】
[実施例10]
平均粒径0.7μmのシリカフィラー(SFP-30M、Denka社製。)120gに対し、ノニオン性界面活性剤(ネオス社製、フタージェント250)を9g、蒸留水234gの混合水溶液を徐々に添加し、撹拌機であるラボスターラー(ヤマト科学社製、型式:LT-500)を用いて60分撹拌して分散液(C-9)を得た。実施例1で作製した分散液(C-1)と分散液(C-9)を、(C-1):(C-9)=70:30の質量比で混合し、ラボスターラーで撹拌し均一な分散液を得た。続いて、上記のようにして得られた分散液を、横型のボールミルを用いて、15mm径のジルコニアボールにて分散を行い、分散液(C-10)を得た。分散液(C-10)を銅箔上に塗布し、窒素雰囲気下で100℃15分で乾燥し、その後350℃15分で加熱した後、徐冷することで片面銅張積層体板を作製した。得られた積層体を7cm角に成形した積層体は、円筒状に丸まることはなく、反りが抑制されていた。
【0174】
[実施例11]
実施例10の(C-1):(C-9)を60:40の質量比として分散液(C-11)を得た他は、実施例10と同様に片面銅張積層板を作製した。得られた片面銅張積層板を7cm角に成形した積層体は、円筒状に丸まることはなく、反りが抑制されていた。
【0175】
[実施例12]
実施例10の(C-1):(C-9)を50:50の質量比として分散液(C-12)を得た他は、実施例10と同様に片面銅張積層板を作製した。得られた片面銅張積層板を7cm角に成形した積層体は、円筒状に丸まることはなく、反りが抑制されていた。
【0176】
[実施例13]
実施例10の(C-1):(C-9)を40:60の質量比として分散液(C-13)を得た他は、実施例10と同様に片面銅張積層板を作製した。得られた片面銅張積層板を7cm角に成形した積層体は、円筒状に丸まることはなく、反りが抑制されていた。
【0177】
[実施例14]
ブチルカルビトールアセテートをDMFに変更した以外は、実施例7と同様にして分散液(C-14)を得た。分散液(C-14)を銅箔上に塗布し、窒素雰囲気下で150℃15分で乾燥し、その後350℃15分で加熱した後、実施例7と同様に両面銅張積層板を得た。
【0178】
[実施例15]
ブチルカルビトールアセテートをDMACに変更した以外は、実施例7と同様にして分散液(C-15)を得た。分散液(C-15)を銅箔上に塗布し、窒素雰囲気下で165℃15分で乾燥し、実施例7と同様に両面銅張積層板を得た。
【0179】
実施例7~15の剥離強度および、実施例10~13の比誘電率を表3に記す。
【0180】
【0181】
[実施例16]
分散液(C-1)とPTFE分散液である旭硝子社製のAD-911E(平均粒径0.25μm)を(C-1):AD-911Eを60:40の質量比で混合し、ラボスターラーで撹拌し均一な分散液(D-1)を得た。分散液(D-1)を銅箔上に塗布し、窒素雰囲気下で100℃15分で乾燥し、その後350℃15分で加熱した後、徐冷することで片面銅張積層板を2枚作製した。次いで、樹脂層が向い合うように片面銅張積層板2枚を重ね、プレス温度340℃、プレス圧力4.0MPa、プレス時間15分で真空熱プレスを行って両面銅張積層板を得た。
【0182】
[実施例17]
分散液(C-1)を銅箔上に塗布し、窒素雰囲気下で100℃15分で乾燥し、その後350℃15分で加熱した後、徐冷することで片面銅張積層板を作製した。次いで、0.1mm厚みのPTFEシート(淀川ヒューテック社製、PTFEシート)を中心に樹脂層が向い合うように片面銅張積層板2枚を重ね、プレス温度340℃、プレス圧力4.0MPa、プレス時間15分で真空熱プレスを行って両面銅張積層板を得た。
【0183】
[実施例18]
分散液(C-1)を銅箔上に塗布し、窒素雰囲気下で100℃15分で乾燥し、その後350℃15分で加熱した後、徐冷することで片面銅張積層板を作製した。
片面銅張積層板の樹脂層をポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン100EN。以下「PI」とも記す。)と接するように重ね、プレス温度340℃、プレス圧力4.0MPa、プレス時間15分で真空熱プレスを行って銅箔/樹脂層/PI構造の片面銅張積層板を作製した。得られた片面銅張積層板を7cm角に成形した積層体は、円筒状に丸まることはなく、反りが抑制されていた。
【0184】
[実施例19]
分散液(C-1)をPI上に塗布し、窒素雰囲気下で100℃15分で乾燥し、その後350℃15分で加熱した後、徐冷することでPI/樹脂層構造の積層体を2枚作製した。得られた積層体を樹脂層が向き合うように重ね、プレス温度340℃、プレス圧力4.0MPa、プレス時間15分で真空熱プレスを行ってPI/樹脂層/PI構造の積層体を作製した。得られた積層体を7cm角に成形した積層体は、円筒状に丸まることはなく、反りが抑制されていた。
【0185】
[実施例20]
分散液(C-1)を銅箔上に塗布し、窒素雰囲気下で100℃15分で乾燥し、その後350℃15分で加熱した後、徐冷することで片面銅張積層体を作製した。
片面銅張積層体の樹脂層をPIと接するように重ね、プレス温度340℃、プレス圧力4.0MPa、プレス時間15分で真空熱プレスを行って銅箔/樹脂層/PI/樹脂層/銅箔構造の両面銅張積層板を作製した。
【0186】
[実施例21]
分散液(C-1)を、ガラスクロス(有沢製作所製、品番:#1031)に含浸させ、110℃20分で乾燥させ、プリプレグを得た。該プリプレグの両面に銅箔を重ね、プレス温度340℃、プレス圧力4.0MPa、プレス時間15分で真空熱プレスを行って銅箔/プリプレグ/銅箔構造の両面銅張積層板を作製した。得られた積層板を用いて線膨張係数であるCTE(z)を測定したところ、189ppm/℃であった。
【0187】
[実施例22]
分散液(C-1)を銅箔上に塗布し、窒素雰囲気下で100℃15分で乾燥し、その後350℃15分で加熱した後、徐冷することで片面銅張積層体を2枚作製した。片面銅張積層板の樹脂層をエポキシ系プリプレグ(日立化成社製、GEA-67N)と接するように重ね、プレス温度180℃、プレス圧力3.0MPa、プレス時間60分で真空熱プレスを行って銅箔/樹脂層/硬化エポキシ系樹脂層/樹脂層/銅箔構造の両面銅張積層板を作製した。
【0188】
実施例16~22の樹脂層厚みおよび剥離強度を表4に記す。
【0189】
【0190】
[実施例23]
実施例5で得られた片面銅張積層板をエッチングし銅箔を除去して、フィルムを得た。得られたフィルムにおいてMD方向(分散液塗工時の塗工方向)およびTD方向(MD方向の垂直方向)の熱膨張率をTMA装置にて測定した。尚、測定装置はNETZSCH社製のTMA402F1Hyperionを用いて、測定モードが引張モード、測定温度が30℃から100℃、測定荷重が19.6mN、昇温速度が5℃/分、測定雰囲気が窒素雰囲気下で測定し、30℃から100℃に推移した際の熱膨張率を測定した。得られたフィルムを7cm角に成形したフィルムは、円筒状に丸まることはなく、反りが抑制されていた。
【0191】
[実施例24]
実施例14で得られた片面銅張積層板をエッチングし銅箔を除去して、銅箔塗工されていたフィルムを得た。得られたフィルムをTMA装置を用いて、MD方向およびTD方向の熱膨張率を測定した。得られたフィルムを7cm角に成形したフィルムは、円筒状に丸まることはなく、反りが抑制されていた。
【0192】
[実施例25]
実施例7で得られた片面銅張積層板をエッチングし銅箔を除去して、銅箔塗工されていたフィルムを得た。得られたフィルムを得られたフィルムをTMA装置を用いて、MD方向およびTD方向の熱膨張率を測定した。得られたフィルムを7cm角に成形したフィルムは、円筒状に丸まることはなく、反りが抑制されていた。
【0193】
[比較例3]
市販のPFAフッ素樹脂を用い、従来公知の手法にてフッ素樹脂フィルムを作成した。得られたフッ素樹脂フィルムの得られたフィルムを得られたフィルムをTMA装置を用いて、MD方向およびTD方向の熱膨張率を測定した。得られたフィルムを7cm角に成形したフィルムは、円筒状に1周丸まることはないが、反りはみられた。
【0194】
実施例23~25、比較例3のMD方向およびTD方向の熱膨張率を求めた。熱膨張率を「+」、収縮率を「-」で記す。MD方向/TD方向の各熱膨張率(収縮率)と、熱膨張(収縮)率比、樹脂層厚みおよび剥離強度を表5に記す。
なお、熱膨張(収縮)変化比は、x方向(大きい熱膨張(収縮)率)とy方向(小さい熱膨張(収縮)率)の比であり、「x/y」で表す。
【0195】
【0196】
[実施例26]
実施例21で得られた両面銅張積層板をプレス温度170℃、プレス圧力0.005MPa、30分で真空熱プレスを行ってアニールを実施した。得られた両面銅張積層板を用いて線膨張係数であるCTE(z)を測定したところ、45ppm/℃であった。
【0197】
[実施例27]
樹脂パウダー(A)120gに対し、ノニオン性界面活性剤(ネオス社製、フタージェント710FL)を12g、メチルエチルケトン234gを横型ボールミルポットに投入し、15mm径のジルコニアボールにて分散を行い、分散液(C-16)を得た。分散液(C-16)を厚み12μmの銅箔上に塗布し、窒素雰囲気下において100℃で15分乾燥し、350℃で15分加熱した後、徐冷することで厚み7μmの樹脂層を有する片面銅張積層板を得た。
得られた片面銅張積層板の樹脂層の表面をプラズマ処理した。プラズマ処理装置としてはNORDSON MARCH社のAP-1000を用いた。プラズマ処理条件としては、AP-1000のRF出力を300W、電極間ギャップを2インチ、導入ガスの種類をアルゴン(Ar)、導入ガス流量を50cm3/分、圧力を13Pa、処理時間を1分とした。プラズマ処理後の樹脂層の表面の算術平均粗さRaは2.5μmであった。
表面処理を実施してから72時間以内の片面銅箔積層板の樹脂層側に、プリプレグとしてFR-4(日立化成社製、強化繊維:ガラス繊維、マトリックス樹脂:エポキシ樹脂、品名:CEA-67N 0.2t(HAN)、厚み:0.2mm)を重ね、プレス温度185℃、プレス圧力3.0MPa、プレス時間60分の条件で真空熱プレスを行って金属積層板を得た(No.1)。
【0198】
プラズマ処理条件を表6に示すとおりに変更した以外は上記と同様にして片面銅張積層板を作製し、該片面銅張積層板を用いる以外は上記と同様にして金属積層板を得た(No.2~7)。
【0199】
各例のプラズマ処理条件、ならびにプラズマ処理後の樹脂層の表面の算術平均粗さRa、表面官能基密度、および樹脂層とプリプレグからなる層の間の剥離強度の測定結果を表6に示す。
【0200】
【0201】
表6に示すように、樹脂層の表面のRaを2.0μm以上にしたNo.1~4では、樹脂層とプリプレグからなる層の間の剥離強度が高く、それらの密着性が優れていた。
【0202】
[実施例28]
分散液(C-6)を銅箔上に塗布し、窒素雰囲気下で100℃15分で乾燥した。得られた積層体の銅箔側を、「ノリタケカンパニーリミテド社 R to R式 NORITAKE遠赤外線N2雰囲気炉」の搬送ロールであるポリイミドロールにポリイミドテープを貼り付け、設定温度340℃、酸素濃度200ppmで加熱し、片面銅張積層板を製造した。加熱時間は1分になるようにロール速度を調整した(4.7mの加熱炉を利用、ロール速度は4.7m/min)。
加熱処理後、目視で重合体(X)の溶融状態を評価した(No.1)。
評価は溶融後に残った異物(光学的な不均一物)の数と溶融の状態から目視で判断した。判断基準を以下に示す。
異物の数:
1:10cm2の面積の中に目視で確認できる異物の数が50個以上
2:10cm2の面積の中に目視で確認できる異物の数が20個以上~50個以下
3:10cm2の面積の中に目視で確認できる異物の数が20個以下
溶融の状態:
1:白い溶け残りが一部みられる
2:白い溶け残りはないが、部分的に光沢がみられない
3:溶け残りはない(全面が光沢にみえる)
【0203】
各例の設定温度(加熱温度)、加熱時間(加熱炉滞在時間)、加熱炉の長さ、ロール速度を表7に示すとおりに変更した以外は上記と同様にして片面銅張積層板を製造した(No.2~8)。
【表7】
【0204】
また、No.3、4、6について、マイクロスコープを用いて異物の大きさを測長した。異物の大きさはマイクロスコープでの撮影画像から短尺および長尺箇所を測長し、それらの平均測長を異物の大きさとした。MORITEX CORPORATION社製のSCOPEMAN DIGITAL CCD MICROSCOPE MS-804を用いて異物を観察および測長した。大きさが30μmを超えるものを異物として数え、10cm2の面積の中に存在する異物を数えた。No.3、4、6いずれも、10cm2の面積の中にマイクロスコープで確認できる異物の数が20個以下であった。
【産業上の利用可能性】
【0205】
本発明で得られるフィルム、繊維強化フィルム、プリプレグ、金属積層板、プリント基板等は、アンテナ部品、プリント基板、航空機用部品、自動車用部品、スポーツ用具や、食品工業用品、のこぎり、すべり軸受け等の被覆物品等として使用できる。
なお、2016年07月22日に出願された日本特許出願2016-144722号、2017年02月15日に出願された日本特許出願2017-026385号および2017年05月18日に出願された日本特許出願2017-099294号の明細書、特許請求の範囲および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。