(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】繊維集束剤、繊維材料、成形材料、及び成形品
(51)【国際特許分類】
D06M 15/55 20060101AFI20220802BHJP
D06M 15/564 20060101ALI20220802BHJP
C08J 5/06 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
D06M15/55
D06M15/564
C08J5/06
(21)【出願番号】P 2022527763
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 JP2021021119
(87)【国際公開番号】W WO2021261197
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2020107644
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】李 福志
(72)【発明者】
【氏名】長尾 憲治
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/216457(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/105442(WO,A1)
【文献】特開平5-132863(JP,A)
【文献】国際公開第2020/026991(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/009234(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00-15/715
C08J 5/06-5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコキシポリオキシアルキレン構造、ウレタン結合、(メタ)アクリロイル基、及びエポキシ基を有するビニルエステル樹脂(A)と、水性媒体とを含有することを特徴とする繊維集束剤であって、前記ビニルエステル樹脂(A)のエポキシ当量が3,500~11,000g/当量であることを特徴とする繊維集束剤。
【請求項2】
前記ビニルエステル樹脂(A)が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂由来の構造を有するものである請求項1記載の繊維集束剤。
【請求項3】
エポキシ樹脂(B)を含有する請求項1又は2記載の繊維集束剤。
【請求項4】
前記ビニルエステル樹脂(A)以外のビニルエステル樹脂(C)を含有する請求項1又は2記載の繊維集束剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の繊維集束剤を有することを特徴とする繊維材料
【請求項6】
請求項5記載の繊維材料及び熱硬化性樹脂を含有することを特徴とする成形材料。
【請求項7】
請求項6記載の成形材料の硬化物であることを特徴とする成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維集束剤、繊維材料、成形材料、及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
高強度で優れた耐久性の求められる自動車部材や航空機部材等としては、例えばエポキシ樹脂やビニルエステル樹脂(エポキシアクリレート)等のマトリックス樹脂と、ガラス繊維や炭素繊維等を含む繊維強化プラスチックが使用されている。
【0003】
前記繊維強化プラスチックに使用するガラス繊維や炭素繊維としては、通常、高強度を付与する観点から、繊維集束剤によって数千~数万程度に集束された繊維材料を使用することが多い。
【0004】
前記繊維集束剤としては、例えば、アルコキシポリオキシアルキレン構造及びウレタン結合を有するビニルエステル樹脂を含有するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この繊維集束剤は集束性に優れるものの、繊維樹脂間の界面せん断強度が不十分であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、集束性及び繊維樹脂間の界面せん断強度に優れる繊維集束剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前記課題を解決すべく検討した結果、特定の構造を有するビニルエステル樹脂と、水性媒体とを含有する繊維集束剤を使用することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、アルコキシポリオキシアルキレン構造、ウレタン結合、(メタ)アクリロイル基、及びエポキシ基を有するビニルエステル樹脂(A)と、水性媒体とを含有することを特徴とする繊維集束剤であって、前記ビニルエステル樹脂(A)のエポキシ当量が3,500~11,000g/当量であることを特徴とする繊維集束剤に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の繊維集束剤は、成形品に優れた強度を付与可能な繊維材料の製造に使用可能であり、かつ、繊維の集束性に優れることから、ガラス繊維や炭素繊維等の集束剤に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の繊維集束剤は、アルコキシポリオキシアルキレン構造、ウレタン結合、(メタ)アクリロイル基、及びエポキシ基を有するビニルエステル樹脂(A)と、水性媒体とを含有するものである。
【0011】
前記ビニルエステル樹脂(A)について説明する。前記ビニルエステル樹脂(A)は、アルコキシポリオキシアルキレン構造を有するが、アルコキシポリオキシアルキレン構造とは、ポリオキシアルキレン鎖の片末端がアルコキシ基で封鎖された構造である。
【0012】
前記ポリオキシアルキレン鎖としては、例えば、ポリオキシエチレン鎖、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシブチレン鎖等が挙げられ、これらがブロック状又はランダム状に配置されたものも含まれる。
【0013】
前記ポリオキシアルキレン鎖の末端を封鎖するアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
【0014】
前記アルコキシポリオキシアルキレン構造は、水分散性がより向上することから、その構造中に、オキシエチレン単位による構造を35質量%以上有するものであることが好ましい。
【0015】
また、前記アルコキシポリオキシアルキレン構造は、水分散性がより向上することから、300~7,000の数平均分子量を有するものであることが好ましい。
【0016】
前記アルコキシポリオキシアルキレン構造の質量比率は、水分散性がより向上することから、前記ビニルエステル樹脂(A)中、3~60質量%が好ましく、10~55質量%がより好ましい。
【0017】
また、前記ビニルエステル樹脂(A)は、(メタ)アクリロイル基を有するが、集束性が向上し、かつ、より界面せん断強度が向上することから、その(メタ)アクリロイル当量は、3,500~11,000g/当量が好ましく、5,000~9,000がより好ましい。
【0018】
本発明において、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルとメタクリロイルの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタアクリレートの一方又は両方をいい、「酸(無水物)」とは、酸及び酸無水物の一方又は両方をいう。
【0019】
前記ビニルエステル樹脂(A)は、エポキシ基を有し、そのエポキシ当量は、3,500~11,000g/当量であるが、より界面せん断強度が向上することから、4,000~10,000g/当量が好ましく、5,000~9,000g/当量がより好ましい。
【0020】
また、前記ビニルエステル樹脂(A)は、集束性が向上し、かつ、より高強度の成形品が得られるすることから、ビスフェノールA型エポキシ樹脂由来の構造を有するものが好ましい。
【0021】
前記ビニルエステル樹脂(A)の重量平均分子量は、集束性がより向上することから、5,000~30,000が好ましく、8,000~18,000がより好ましい。
【0022】
前記ビニルエステル樹脂(A)は、例えば、アルコキシポリオキシアルキレン構造及びエポキシ基を有するウレタン樹脂(a1)と(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸無水物(a2)とを反応させることにより得られる。
【0023】
前記ビニルエステル樹脂(A)は、前記ウレタン樹脂(a1)の有するエポキシ基(EP)に対する(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸無水物(a2)由来のカルボキシル基(COOH)の当量比(EP/COOH)を1未満とすることにより得られるが、より効率的に界面せん断強度に優れる繊維集束剤が得られることから、前記当量比(EP/COOH)は0.2~0.6が好ましく、0.3~0.5がより好ましい。
【0024】
前記ウレタン樹脂(a1)の有するエポキシ基と前記(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸無水物(a2)との反応は、好ましくは、60~140℃において、エステル化触媒を用いて行われる。また、重合禁止剤等を使用することもできる。
【0025】
前記ウレタン樹脂(a1)は、エポキシ基を有するが、集束性が向上し、かつ、より高強度の成形品が得られることから、前記ウレタン樹脂(a1)のエポキシ当量は250~2,000g/当量の範囲であることが好ましい。
【0026】
前記ウレタン樹脂(a1)は、例えば、無溶剤下または有機溶剤の存在下で、エポキシ基及び水酸基を有する化合物(a1-1)、ポリイソシアネート(a1-2)、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル(a1-3)、必要に応じて、前記化合物(a1-1)以外のポリオール(a1-4)及び鎖伸長剤(a1-5)を、従来知られた方法で反応させることによって製造することができる。具体的には、安全性を考慮し、50~120℃の反応温度で、1~15時間反応させることが好ましい。
【0027】
前記エポキシ基及び水酸基を有する化合物(a1-1)としては、例えば、水酸基を有するエポキシ樹脂を使用することができる。
【0028】
前記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エチルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ブチルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、オクチルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシンノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールADノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールSノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられるが、集束性が向上し、かつ、より高強度の成形品が得られることから、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、またはビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。なお、これらのエポキシ樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0029】
前記化合物(a1-1)としては、水酸基を有するフェノールノボラック型エポキシ樹脂、水酸基を有するクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、または水酸基を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂を使用することが好ましいが、これらの中でも、集束性が向上し、かつ、より高強度の成形品が得られることから、水酸基を有するビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0030】
前記化合物(a1-1)としては、エポキシ当量が150~2,000g/当量であるものを使用することが好ましく、150~900g/当量であるものを使用することがより好ましく、150~500g/当量であるものを使用することがさらに好ましい。
【0031】
前記化合物(a1-1)の有する水酸基は、集束性が向上し、かつ、より高強度の成形品が得られることから、前記ウレタン樹脂(A)が有するエポキシ基の全量に対して、5~150モル%の範囲であることが好ましく、5~130モル%の範囲であることがより好ましく、5~120モル%の範囲であることが、さらに好ましい。
【0032】
前記ポリイソシアネート(a1-2)としては、例えば、1,3-及び1,4-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,4-フェニレンジイソシアネート(2,4-TDI)、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート(2,6-TDI)、1-メチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-2,6-フェニレンジイソシアネート、1-メチル-3,5-フェニレンジイソシアネート、1-エチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1-イソプロピル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,3-ジメチル-4,6-フェニレンジイソシアネート、1,4-ジメチル-2,5-フェニレンジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート、1-メチル-3,5-ジエチルベンゼンジイソシアネート、3-メチル-1,5-ジエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、1,3,5-トリエチルベンゼン-2,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、1-メチル-ナフタレン-1,5-ジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、ナフタレン-2,7-ジイソシアネート、1,1-ジナフチル-2,2’-ジイソシアネート、ビフェニル-2,4’-ジイソシアネート、ビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3-3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,2’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4-ジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;1,3-シクロペンチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ジ(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;及びこれらの3量体等を使用することができる。これらの中でも、界面せん断強度がより向上することから、芳香族ポリイソシアネートが好ましい。
【0033】
前記ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル(a1-3)は、下記一般式(1)で表されるものである。
【0034】
【化1】
(式中、R
1はアルキル基、R
2はアルキレン基であり、nは1以上の整数である。)
【0035】
前記ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル(a1-3)としては、保存安定性がより向上することから、上記一般式(1)中のR1がメチル基やエチル基やプロピル基やブチル基であるものが好ましく、メチル基であるものがより好ましい。
【0036】
また、上記一般式(1)中のR2は保存安定性及び繊維集束性がより向上することから、エチレン基やプロピレン基であるものが好ましく、エチレン基であるものがより好ましい。
【0037】
上記一般式(1)中のnは、保存安定性、繊維集束性、得られる成形品の強度がより向上することから、5~150の整数であるものが好ましく、5~100の整数であるものがより好ましい。
【0038】
また、前記ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル(a1-3)としては、保存安定性がより向上することから、水酸基価が10~200の範囲であるものが好ましく、15~200の範囲であるものがより好ましい。
【0039】
前記ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル(a1-3)としては、保存安定性及び繊維集束性がより向上することから、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルを使用することがより好ましく、ポリオキシエチレンモノメチルエーテルを使用することが特に好ましい。
【0040】
前記ポリオール(a1-4)としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、アクリル共重合体に水酸基を導入したアクリルポリオール、分子内に水酸基を有するブタジエンの共重合体であるポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、エチレン-酢酸ビニル共重合体の部分鹸化物などを使用することができる。
【0041】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素原子を2以上有する化合物の1種または2種以上を開始剤として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。
【0042】
また、前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステルとポリオールとを反応させて得られるものや、ホスゲンとビスフェノールA等とを反応させて得られるものを使用することができる。
【0043】
また、前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるポリエステルポリオールや、ε-カプロラクトンやγ-ブチロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルや、これらの共重合ポリエステルなどを使用することができる。
【0044】
前記ポリエーテルポリオール、前記ポリカーボネートポリオール、前記脂肪族ポリエステルポリオールとしては、数平均分子量が300~4,000のものを使用することが好ましく、500~2,000のものを使用することがより好ましい。
【0045】
前記鎖伸長剤(a1-5)としては、ポリアミンや、その他活性水素原子を有する化合物等を使用することができる。
【0046】
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン等のジアミン類;N-ヒドロキシメチルアミノエチルアミン、N-ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N-ヒドロキシプロピルアミノプロピルアミン、N-エチルアミノエチルアミン、N-メチルアミノプロピルアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン;ヒドラジン、N,N’-ジメチルヒドラジン、1,6-ヘキサメチレンビスヒドラジン;コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド;β-セミカルバジドプロピオン酸ヒドラジド、3-セミカルバジドプロピルカルバジン酸エステル、セミカルバジド-3-セミカルバジドメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサンを使用することができる。
【0047】
前記その他活性水素を有する化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等のグリコール化合物;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等のフェノール化合物、及び水等を使用することができる。
【0048】
前記鎖伸長剤(a1-5)は、例えば、ポリアミンが有するアミノ基と過剰のイソシアネート基との当量比が、1.9以下(当量比)となる範囲で使用することが好ましく、0.3~1.0(当量比)の範囲で使用することがより好ましい。
【0049】
前記ウレタン化反応は、無触媒下で行うこともできるが、公知の触媒、例えば、オクチル酸第一錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジブチル錫ジフタレート、ジブチル錫ジメトキシド、ジブチル錫ジアセチルアセテート、ジブチル錫ジバーサテート等の錫化合物、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、トリエタノールアミンチタネート等のチタネート化合物、その他、3級アミン化合物、4級アンモニウム塩等を使用してもよい。
【0050】
本発明の繊維集束剤は、前記ビニルエステル樹脂(A)を必須成分とするものであるが、エポキシ樹脂(B)、前記ビニルエステル樹脂(A)以外のビニルエステル樹脂(C)を含有していてもよい。
【0051】
前記エポキシ樹脂(B)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ビスクレゾールフルオレン型等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、オキゾドリドン変性エポキシ樹脂、これらの樹脂の臭素化エポキシ樹脂等のフェノールのグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル等の多価アルコールのグリシジルエーテル、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、1-エポシエチル-3,4-エポキシシクロヘキサン等の脂環式エポキシ樹脂、フタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ジグリシジル-p-オキシ安息香酸、ダイマー酸グリシジルエステルなどのグリシジルエステル、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、テトラグリシジル-m-キシレンジアミン、トリグリシジル-p一アミノフェノール、N,N-ジグリシジルアニリンなどのグリシジルアミン、1,3-ジグリシジル-5,5-ジメチルヒダントイン、トリグリシジルイソシアヌレートなどの複素環式エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの中でも、成形品強度と成形材料の取り扱い性、成形材料の成形時の流動性により優れることから2官能性芳香族系エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。なお、これらのエポキシ樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0052】
前記ビニルエステル樹脂(C)としては、エポキシ基を有さないものが好ましい。なお、このビニルエステル樹脂(C)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0053】
前記ビニルエステル樹脂(C)の原料となるエポキシ樹脂は、成形品強度と成形材料の取り扱い性、成形材料の成形時の流動性により優れることから2官能性芳香族系エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびビスフェノールF型エポキシ樹脂がより好ましい。なお、これらのエポキシ樹脂は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0054】
本発明において、エポキシ樹脂中の少なくとも1以上のエポキシ基に、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸無水物が付加したものはビニルエステル樹脂とする。
【0055】
前記水性媒体としては、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール化合物;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル化合物;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム化合物、などが挙げられる。本発明では、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、又は、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみが特に好ましい。
【0056】
本発明の繊維集束剤は、前記ビニルエステル樹脂(A)、及び水性媒体を含有するものであるが、前記ビニルエステル樹脂(A)が、水性媒体中に分散された水分散体であること好ましい。
【0057】
本発明の繊維集束剤は、例えば、前記ビニルエステル樹脂(A)及び前記ビニルエステル樹脂(B)の混合溶液と乳化剤とを混合、撹拌し、次いで、それらの混合物と前記水性媒体とを混合し、必要に応じて脱溶剤することによって得ることができる。
【0058】
前記乳化剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンベンジルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンクミルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンナフチルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらの中でも、得られる成形品の強度がより向上することから、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体が好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテルがより好ましい。これらの乳化剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0059】
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンエイコシルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体のヘキシルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体のオクチルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体のノニルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体のラウリルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体のステアリルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体のエイコシルエーテル等のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体のアルキルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、乳化性が向上することから、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のアルキル基の炭素原子数が8~18のものが特に好ましい。これらのポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0060】
前記ポリオキシアルキレンスチリルフェニルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル等のスチレン付加モル数が1~3のポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、スチレン付加モル数が1~3のポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体のスチリルフェニルエーテルなどが挙げられるが、乳化性が向上することから、スチレン付加モル数が1~3のポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルが好ましい。これらのポリオキシアルキレンスチリルエーテルは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0061】
前記ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体としては、乳化性が向上することから、平均分子量が1,000~30,000の範囲のものが好ましく、5,000~20,000の範囲のものがより好ましい。また、ポリオキシエチレンの含有量は40~90質量%の範囲のものが好ましく、50~80質量%の範囲のものがより好ましい。
【0062】
本発明の繊維集束剤中の前記水性媒体の質量比率は、保存安定性及び塗工作業性がより向上することから、10~98質量%の範囲であることが好ましく、20~90質量%の範囲であることがより好ましい。
【0063】
本発明の繊維集束剤中の固形分の質量比率は、保存安定性及び塗工作業性がより向上することから、2~80質量%の範囲であることが好ましく、10~70質量%の範囲であることがより好ましい。
【0064】
また、本発明の繊維集束剤は、必要に応じてシランカップリング剤、硬化触媒、潤滑剤、充填剤、チキソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤等の添加剤、pH調整剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、分散安定剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、耐熱性付与剤、無機充填剤、有機充填剤、可塑剤、補強剤、触媒、抗菌剤、防カビ剤、防錆剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、顔料、染料、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥水剤、撥油剤、中空発泡体、結晶水含有化合物、難燃剤、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤、防藻剤、顔料分散剤、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤を併用することができる。
【0065】
特に、本発明の繊維集束剤を、ガラス繊維の集束剤に使用する場合には、前記ガラス繊維に対する集束剤の接着強さをより一層向上するうえでシランカップリング剤を組み合わせ使用することが好ましい。
【0066】
前記シランカップリング剤としては、例えば、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-ヒドロキシルエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-ヒドロキシルエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(2-ヒドロキシルエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-ヒドロキシルエチル)アミノプロピルメチルジエトキシシランまたはγ-(N,N-ジ-2-ヒドロキシルエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシランまたはγ-(N-フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトフェニルトリメトキシシラン等を使用することができる。
【0067】
前記シランカップリング剤は、繊維集束剤中の樹脂成分の合計100質量部に対して1~30質量部の範囲で使用することが好ましい。
【0068】
また、本発明の繊維集束剤は、例えば、酢ビ系、エチレン酢ビ系、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系等のエマルジョン;スチレン-ブタジエン系、アクリロニトリル-ブタジエン系、アクリル-ブタジエン系等のラテックス、更には、ポバールやセルロース等の水溶性樹脂等と組み合わせ使用することもできる。
【0069】
本発明の繊維集束剤は、例えばガラス繊維や炭素繊維等の糸切れや毛羽立ち等を防止することを目的として、複数の繊維の集束や表面処理に使用できる。
【0070】
本発明の繊維集束剤を用いて処理可能な繊維材料としては、例えば、ガラス繊維や炭素繊維、シリコンカーバイド繊維、パルプ、麻、綿、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、ポリイミド、あるいはケブラー、ノーメックス等のアラミド等からなるポリアミド繊維等が挙げられる。これらの中でもガラス繊維や炭素繊維は、高強度であることから使用することが好ましい。
【0071】
前記繊維集束剤を用いて処理可能なガラス繊維としては、例えば、含アルカリガラス、低アルカリガラス、無アルカリガラス等を原料にして得られたものを使用することができるが、特に、経時劣化も少なく機械的特性が安定している無アルカリガラス(Eガラス)を使用することが好ましい。
【0072】
また、前記繊維集束剤を用いて処理可能な炭素繊維としては、一般にポリアクリロニトリル系、ピッチ系等の炭素繊維を使用することができる。なかでも、前記炭素繊維としては、優れた強度を付与する観点から、ポリアクリロニトリル系の炭素繊維を使用することが好ましい。
【0073】
また、前記炭素繊維としては、より一層優れた強度等を付与する観点から、0.5~20μmの単糸径を有するものを使用することが好ましく、2~15μmのものを使用することがより好ましい。
【0074】
前記炭素繊維としては、例えば撚糸、紡糸、紡績加工、不織加工したものを使用することができる。また、前記炭素繊維としてはフィラメント、ヤーン、ロービング、ストランド、チョップドストランド、フェルト、ニードルパンチ、クロス、ロービングクロス、ミルドファイバー等のものを使用することができる。
【0075】
前記ガラス繊維や炭素繊維を、本発明の繊維集束剤を用いて集束化し、前記ガラス繊維束や炭素繊維束の表面に、皮膜を形成する方法としては、例えば、繊維集束剤をキスコーター法、ローラー法、浸漬法、スプレー法、刷毛などその他公知の方法で、繊維表面に繊維集束剤を均一に塗布する方法が挙げられる。前記繊維集束剤が溶媒として水性媒体や有機溶剤を含む場合には、前記塗布後に加熱ローラーや熱風、熱板等を用いて、加熱乾燥することが好ましい。
【0076】
前記繊維の表面に形成された皮膜の付着量は、集束化され表面処理の施された繊維束の全質量に対して0.1~5質量%であることが好ましく、0.3~1.5質量%であることがより好ましい。
【0077】
前記方法で得られた集束化され表面処理の施された本発明の繊維材料は、後述するマトリックス樹脂等と組み合わせ使用することによって、高強度な成形品を製造するための成形材料に使用することができる。
【0078】
本発明の繊維材料は、マトリックス樹脂と組み合わせ使用し成形品等を形成した際に、前記繊維とマトリックス樹脂との界面の密着性を著しく向上できるため、成形品の強度を向上することが可能である。
【0079】
本発明の成形材料に使用されるマトリックス樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を使用することができる。前記熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ビニルウレタン樹脂等を使用することができる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、6-ナイロン、6,6-ナイロン等のポリアミド樹脂、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリアセタール、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン等を使用することができる。
【0080】
前記マトリックス樹脂としては、より高強度な成形品を得られることから、熱硬化性樹脂が好ましく、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂がより好ましい。
【0081】
本発明の成形材料は、前記繊維材料と前記マトリックス樹脂と、必要に応じて重合性単量体等を含むものであるが、例えば、ハンドレイアップ法、スプレーアップ法、FRPライニング法等、レジントランスファーモールディング法(RTM法)、レジンインジェクション法(RI法)、バキュームアシストレジントランスファーモールディング法(VARTM法)、インフュージョン成形法、プレス成形法、オートクレーブ成形法、フィラメントワインディング法、引き抜き成形法等の、様々な成形方法により高強度な成形品を得ることができる。例えば、成形にはプリプレグやシートモールディングコンパウンド(SMC)状のものを使用することができる。
【0082】
前記プリプレグは、例えば、前記マトリックス樹脂を離型紙上に塗布し、その塗布面に表面処理の施された繊維材料を載置し、必要に応じてローラー等を用いて押圧含浸することによって製造することができる。
【0083】
前記プリプレグを製造する際には、前記マトリックス樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂や、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂などを使用することが好ましい。
【0084】
また、前記シートモールディングコンパウンドは、例えば、前記マトリックス樹脂と、スチレン等の重合性不飽和単量体との混合物を、前記表面処理の施された繊維材料に十分含浸し、シート状に加工等することによって製造することができる。前記シートモールディングコンパウンドを製造する際には、前記マトリックス樹脂として、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂等を使用することが好ましい。
【0085】
前記成形材料の硬化は、例えば、加圧または常圧下、加熱または光照射によってラジカル重合させることによって進行する。かかる場合には、公知の熱硬化剤や光硬化剤等を組み合わせ使用することができる。
【0086】
また、前記成形材料としては、例えば前記熱可塑性樹脂と前記表面処理の施された繊維材料とを加熱下で混練等したものが挙げられる。かかる成形材料は、例えば射出成形法等による二次加工に使用することができる。
【0087】
また、前記熱可塑性樹脂によるプリプレグは、例えば、表面処理の施された繊維材料をシート状に載置し、溶融した前記熱可塑性樹脂を含浸することによって製造することができる。
【0088】
前記熱可塑性樹脂によるプリプレグは、例えば、1枚以上積層し、次いで加圧または常圧下、加熱し成形すること等による二次加工に使用することができる。
【0089】
前記成形材料を用いて得られた成形品は、高強度であることから、例えば自動車部材、航空機部材、風車部材、産業用部材等に使用することができる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。エポキシ当量は、JIS K7236:2001に基づいて測定したものであり、酸価は、JIS K0070:1992に基づいて測定したものであり、樹脂の平均分子量は、下記のGPC測定条件で測定したものである。
【0091】
[GPC測定条件]
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度4mg/mLのテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0092】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0093】
(合成例1:ビニルエステル樹脂(C-1)の水分散体の製造)
温度計、撹拌装置、還流冷却管、滴下装置を備えた4ツロフラスコに、ポリオキシエチレンモノエチルエーテル(日油株式会社製「ユニオックスM-550」、水酸基価:100) 124質量部、及びビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン1050」、エポキシ当量:477g/当量)99質量部、及びメチルエチルケトン65質量部を加え、40℃で十分に撹拌溶解した。次いで、40℃でトリレンジイソシアネート38質量部を添加し、60~65℃で6時間反応させ赤外線吸収スペクトルによりNCOの2260cm-1の特性ピークの消失を確認した。
その後、40℃まで冷却しアクリル酸15質量部、t-ブチルハイドロキノン1質量部、2-メチルイミダゾール3質量部を仕込み、窒素と空気とを1対1で混合したガス流通下で、75~80℃まで昇温した。更に、75~80℃で10時間反応させると、酸価が1mgKOH/g以下になってので、反応を終了した。なお、このビニルエステル樹脂(C-1)の重量平均分子量は13,000であり、エポキシ基は有していなかった。
次いで、40℃まで冷却しポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(花王株式会社製「エマルゲンA-500」)27質量部を加え十分に撹拌した。次いで、イオン交換水850質量部を30分かけて滴下し、更に15分間撹拌混合した。この水分散物を減圧蒸留により濃縮して、不揮発分30質量%のビニルエステル樹脂(C-1)の水分散体を得た。
【0094】
(実施例1:繊維集束剤(1)の製造及び評価)
温度計、撹拌装置、還流冷却管、滴下装置を備えた4ツロフラスコに、ポリオキシエチレンモノエチルエーテル(日油株式会社製「ユニオックスM-550」、水酸基価:100) 124質量部、及びビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン1050」、エポキシ当量:477g/当量)99質量部、及びメチルエチルケトン65質量部を加え、40℃で十分に撹拌溶解した。次いで、40℃でトリレンジイソシアネート38質量部を添加し、60~65℃で6時間反応させ赤外線吸収スペクトルによりNCOの2260cm-1の特性ピークの消失を確認した。
その後、40℃まで冷却しアクリル酸7.5質量部、t-ブチルハイドロキノン1質量部、2-メチルイミダゾール3質量部を仕込み、窒素と空気とを1対1で混合したガス流通下で、75~80℃まで昇温した。更に、75~80℃で10時間反応させると、酸価が0mgKOH/gになったので、反応を終了し、ビニルエステル樹脂(A-1)の溶液を得た。なお、このビニルエステル樹脂(A-1)の重量平均分子量は14,000であり、エポキシ当量は7,000g/当量であった。
なお、このビニルエステル樹脂(A-1)の重量平均分子量は14,000であり、エポキシ当量は7,000g/当量であった。
次いで、40℃まで冷却しポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(花王株式会社製「エマルゲンA-500」)27質量部を加え十分に撹拌した。次いで、イオン交換水850質量部を30分かけて滴下し、更に15分間撹拌混合した。この水分散物を減圧蒸留により濃縮して、不揮発分30質量%のビニルエステル樹脂(A-1)の水分散体である繊維集束剤(1)を得た。
【0095】
[炭素繊維束の作製]
ポリアクリロニトリル系炭素繊維(単糸径7μm、ストランド強度4,400MPa、弾性率235GPa、6000本)のノーサイズ糸を束ね、繊維集束剤(1)をイオン交換水で不揮発分5質量%に希釈したものを浸漬法で含浸し、ローラーで絞ることで有効成分の付着量を1質量%に調整し、次いで、150℃で30分間熱処理することによって、繊維集束剤(1)によって表面処理の施された炭素繊維束(1)を得た。
【0096】
[繊維集束性の評価]
TM式摩擦抱合力試験機TM-200(大栄科学精機製作所製)を用い、ジグザグに配置した鏡面クロムメッキステンレス針3本を介して50gの張力で、炭素繊維束(1)を1000回擦過させ(往復運動速度300回/分)、炭素繊維束(1)の毛羽立ちの状態を下記の基準で目視判定した。
【0097】
○:擦過前と同じく毛羽発生が見られなかった。
×:毛羽発生が見られた。
【0098】
[単炭素繊維の作製]
ポリアクリロニトリル系炭素繊維(単糸径7μm、ストランド強度4,400MPa、弾性率235GPa、6000本)のノーサイズ糸に、繊維集束剤(1)をイオン交換水で不揮発分5質量%に希釈したものを浸漬法で含浸し、ローラーで絞ることで有効成分の付着量を1質量%に調整した後、単炭素繊維を取り出した。
【0099】
[マトリックス樹脂の調製]
ビニルエステル樹脂溶液(DICマテリアル株式会社製「エクスドーマ 9102-01NP」)100質量部に、6質量%ナフテン酸コバルト0.5質量部及びメチルエチルケトンパーオキサイド(日本油脂株式会社製「パーメックN」)1.0質量部を添加し、マトリックス樹脂を得た。
【0100】
[界面せん断強度の評価]
複合材料界面特性評価装置(東栄産業株式会社製「HM410」)を用い、マイクロドロップレット法により、繊維樹脂間の界面せん断強度を評価した。
上記で得た単炭素繊維にマトリックス樹脂を付着させ、マイクロドロップレットを作成し、25℃で12時間硬化させた後、更に60℃で3時間硬化させ、測定用サンプルを得た。このサンプルの繊維から樹脂を引き抜く際の最大引抜荷重F(mN)を測定し、下記式から、界面せん断強度τ(MPa)を算出した。
τ=F/πdL
(τ:界面せん断強度(MPa)、F:引抜最大荷重(mN)、d:繊維径(μm)、L:マイクロドロップレット軸長(μm)
◎:界面せん断強度が30MPa以上
〇:界面せん断強度が20MPa以上30MPa未満
×:界面せん断強度が20MPa未満
【0101】
(実施例2:繊維集束剤(2)の製造及び評価)
温度計、撹拌装置、還流冷却管、滴下装置を備えた4ツロフラスコに、ポリオキシエチレンモノエチルエーテル(日油株式会社製「ユニオックスM-550」、水酸基価:100) 124質量部、及びビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC株式会社製「エピクロン1050」、エポキシ当量:477g/当量)99質量部、及びメチルエチルケトン65質量部を加え、40℃で十分に撹拌溶解した。次いで、40℃でトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート38質量部を添加し、60~65℃で6時間反応させ赤外線吸収スペクトルによりNCOの2260cm-1の特性ピークの消失を確認した。
その後、40℃まで冷却しアクリル酸7.5質量部、t-ブチルハイドロキノン1質量部、2-メチルイミダゾール3質量部を仕込み、窒素と空気とを1対1で混合したガス流通下で、75~80℃まで昇温した。更に、75~80℃で10時間反応させると、酸価が0(mgKOH/g)になったので、反応を終了し、ビニルエステル樹脂(A-2)を得た。なお、このビニルエステル樹脂(A-2)の重量平均分子量は13,500であり、エポキシ当量は7,300g/当量であった。
次いで、40℃まで冷却しポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(花王株式会社製「エマルゲンA-500」)27質量部を加え十分に撹拌した。次いで、イオン交換水850質量部を30分かけて滴下し、更に15分間撹拌混合した。この水分散物を減圧蒸留により濃縮して、不揮発分30質量%のビニルエステル樹脂(A-2)の水分散体である繊維集束剤(2)を得た。
【0102】
実施例1で用いた繊維集束剤(1)を繊維集束剤(2)に変更した以外は、実施例1と同様にして、各種評価を行った。
【0103】
(実施例3:繊維集束剤(3)の製造及び評価)
実施例1と同様にして、ビニルエステル樹脂(A-1)の溶液を得た後、40℃まで冷却し、エポキシ樹脂(B-1)の水分散体(DIC株式会社製「ハイドラン N-320M」)465質量部、及びポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(花王株式会社製「エマルゲンA-500」)27質量部を加え十分に攪拌した。次いで、イオン交換水1,000質量部を30分かけて滴下し、更に15分間攪拌混合した。この水分散物を減圧蒸留により濃縮して、不揮発分30質量%のビニルエステル樹脂(A-1)及びエポキシ樹脂(B-1)の水分散体である繊維集束剤(3)を得た。ビニルエステル樹脂(A-1)/エポキシ樹脂(B-1)=25/75(質量比)であった。
【0104】
実施例1で用いた繊維集束剤(1)を繊維集束剤(3)に変更した以外は、実施例1と同様にして、各種評価を行った。
【0105】
(実施例4:繊維集束剤(4)の製造及び評価)
実施例1と同様にして、ビニルエステル樹脂(A-1)の溶液を得た後、40℃まで冷却し、合成例1で得たビニルエステル樹脂(C-1)の水分散体465質量部、及びポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル(花王株式会社製「エマルゲンA-500」)27質量部を加え十分に攪拌した。次いで、イオン交換水1000質量部を30分かけて滴下し、更に15分間攪拌混合した。この水分散物を減圧蒸留により濃縮して、不揮発分30質量%のビニルエステル樹脂(a1-1)のビニルエステル樹脂(A-1)及びビニルエステル樹脂(C-1)の水分散体である繊維集束剤(4)を得た。ビニルエステル樹脂(A-1)/ビニルエステル樹脂(C-1)=25/75(質量比)であった。
【0106】
実施例1で用いた繊維集束剤(1)を繊維集束剤(4)に変更した以外は、実施例1と同様にして、各種評価を行った。
【0107】
(比較例1:繊維集束剤(R1)の評価)
合成例1で得たビニルエステル樹脂(C-1)の水分散体を繊維集束剤(R1)とした。
【0108】
実施例1で用いた繊維集束剤(1)を繊維集束剤(R1)に変更した以外は、実施例1と同様にして、各種評価を行った。
【0109】
上記の実施例1~4及び比較例1の評価結果を表1に示す。
【0110】
【0111】
本発明の繊維集束剤である実施例1~4のものは、繊維集束性及び界面せん断強度に優れることが確認された。
【0112】
一方、比較例1は、本発明の必須成分であるビニルエステル樹脂(A)の代わりに、エポキシ基を有さないビニルエステル樹脂を用いた例であるが、界面せん断強度が不十分であることが確認された。