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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-01
(45)【発行日】2022-08-09
(54)【発明の名称】被覆体、および、その利用
(51)【国際特許分類】
   B65D 65/38 20060101AFI20220802BHJP
   C01B 33/035 20060101ALI20220802BHJP
【FI】
B65D65/38
C01B33/035
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018123486
(22)【出願日】2018-06-28
(65)【公開番号】P2020001758
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】吉村 聡子
(72)【発明者】
【氏名】川口 一博
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-237722(JP,A)
【文献】実開昭52-039462(JP,U)
【文献】特開昭58-099311(JP,A)
【文献】実開昭50-095377(JP,U)
【文献】特表2010-528955(JP,A)
【文献】特開2009-298672(JP,A)
【文献】実開平04-132083(JP,U)
【文献】実開昭57-006792(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 65/38
C01B 33/035
B65D 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶シリコンを包装する包装袋の開口部より連なる、前記包装袋の内壁における少なくとも一部の領域を覆うための被覆体であって、
前記開口部に配置された状態において、前記被覆体の上部における先端が外側に折り返されて、前記包装袋の上端に掛止され、かつ、前記折り返しにより前記開口部の周縁が覆われており、前記被覆体の下部における先端が外側に折り返されていることを特徴とする、被覆体。
【請求項2】
壁厚が100μm以上1000μm以下であることを特徴とする、請求項1記載の被覆体。
【請求項3】
前記包装袋と同じ材質であることを特徴とする、請求項1または2記載の被覆体。
【請求項4】
インフレーションチューブにより形成されることを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の被覆体。
【請求項5】
前記多結晶シリコンが、多結晶シリコンロッドの破砕物であることを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の被覆体。
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載の被覆体を前記包装袋に装着した状態により、前記多結晶シリコンを前記包装袋に充填することを特徴とする、多結晶シリコン包装袋の製造方法。
【請求項7】
さらに、前記包装袋のシール前に、前記被覆体を前記包装袋から取り外す工程を含むことを特徴とする、請求項6記載の多結晶シリコン包装袋の製造方法。
【請求項8】
請求項1~5の何れか1項に記載の被覆体を、前記包装袋に装着した状態で、前記多結晶シリコンを前記包装袋へ手作業で充填することを特徴とする、多結晶シリコンの充填方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆体、および、その利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高密度集積電子回路の形成には高純度の単結晶シリコンウェーハが必要である。通常、単結晶シリコンウェーハは、CZ法(Czochralski:チョクラルスキー法)により製造した単結晶シリコンロッドを切り出すことで得られる。このCZ法由来単結晶シリコンロッドを製造するための原料として、ポリシリコンとも呼ばれる多結晶シリコンが用いられている。多結晶シリコンロッドは、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により、トリクロロシランまたはモノシラン等のシラン原料ガスを、加熱された多結晶シリコンのシリコン芯線に接触させることにより、該シリコン芯線の表面に多結晶シリコンを気相成長(析出)させる、所謂、シーメンス法により製造される。多結晶シリコンロッドは、破砕されて、前記CZ法由来単結晶シリコンロッドの原料に供される。
【0003】
多結晶シリコンの破砕物は、保管および輸送のため、プラスチック等の樹脂製包装袋に充填される。破砕された多結晶シリコンは鋭利な角を有しており、充填の際に包装袋を突き破ることがある。包装袋に穴があくことは汚染の原因となり、多結晶シリコン製品に要求される高い純度を維持することは不可能となる。
【0004】
多結晶シリコン充填の際に包装袋を保護するための従来技術として、特許文献1には、充填装置を用いて、多結晶シリコンを懸吊された成形済みのバッグに充填する際に導入される、低汚染の非金属材料からなる懸吊されたエネルギー吸収体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2010-528955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来技術は、製品である多結晶シリコンを包装袋に充填する際に、包装袋を保護するためのものである。装置による多結晶シリコンの充填では、手作業で充填するよりも高いところから大量に多結晶シリコンを落下投入するため、包装袋を破損しやすい。従来技術に係るエネルギー吸収体を用いた場合、多結晶シリコンと包装袋内壁との接触は緩和される。しかし、包装袋内に自由に可動に懸吊されたエネルギー吸収体と、投入された多結晶シリコンとが激しく接触することでプラスチック粒子が発生し、これが製品汚染の原因の一つとなる。
【0007】
多結晶シリコンを包装袋に充填する際、充填時の衝撃や、多結晶シリコン同士の接触によって、微粉が舞い上がる。包装袋の内壁上部に、舞い上がった微粉が付着すると、充填後、包装袋をヒートシールなどによってシールする際に、粉噛み込みによるシール不良の原因となる。従来技術に係るエネルギー吸収体は包装袋内に懸吊されるが、包装袋の内壁を緊密に覆うものではなく、舞い上がった微粉が包装袋の内壁上部に付着することを防止できない。
【0008】
本発明の一態様は、多結晶シリコン充填時に包装袋を保護すると共に、包装袋の内壁上部への微粉付着を防止するための被覆体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る被覆体は、前記課題を解決するために、多結晶シリコンを包装する包装袋の開口部より連なる、前記包装袋の内壁における少なくとも一部の領域を覆うための被覆体であって、前記開口部に配置された状態において、前記被覆体の上部における先端が外側に折り返されて、前記包装袋の上端に掛止され、かつ、前記折り返しにより前記開口部の周縁が覆われており、前記被覆体の下部における先端が外側に折り返されていることを特徴としている。
【0010】
本発明の一態様に係る被覆体は、壁厚が100μm以上であることが好ましい。
【0011】
本発明の一態様に係る被覆体は、前記包装袋と同じ材質であることが好ましい。
【0012】
本発明の一態様に係る被覆体は、インフレーションチューブであることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様に係る被覆体は、前記多結晶シリコンが、多結晶シリコンロッドの破砕物であることが好ましい。
【0014】
本発明の一態様に係る多結晶シリコン包装袋の製造方法は、前記課題を解決するために、本発明の一態様に係る被覆体を、前記包装袋に装着した状態で、前記開口部より前記多結晶シリコンを充填することを特徴としている。
【0015】
本発明の一態様に係る多結晶シリコン包装袋の製造方法は、さらに、前記包装袋のシール前に、前記被覆体を前記包装袋から取り外す工程を含むことが好ましい。
【0016】
本発明の一態様に係る多結晶シリコンの充填方法は、前記課題を解決するために、本発明の一態様に係る被覆体を、前記包装袋に装着した状態で、前記多結晶シリコンを前記包装袋へ手作業で充填することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、多結晶シリコン充填時に包装袋を保護すると共に、包装袋の内壁上部への微粉付着を防止するための被覆体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態1に係る被覆体を表す斜視図である。
図2】本発明の実施形態1に係る被覆体を包装袋に装着した状態を表す端面図である。
図3】(a)~(c)はいずれも、図2の一部を示した拡大図である。
図4】本発明の実施形態1に係る被覆体を使用した多結晶シリコンの充填方法であって、被覆体装着時(a)、多結晶シリコン充填時(b)、被覆体取り外し時(c)、および包装袋シール時(d)を示す端面図である。
図5】本発明の実施形態2に係る被覆体を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態について、図1~4を参照して以下に説明する。
【0020】
(概要)
図1および図2に示すように、本実施形態に係る被覆体100は、上部折り返し1と、下部折り返し2と、外壁面3とを備える。上部折り返し1と被覆体100の外壁面3との間に、空隙1bが形成される。被覆体100は筒状に形成されており、上下方向に貫通する開口部10が形成されている。ここで、被覆体100の“上”“下”については、被覆体100が包装袋200に装着された際に、包装袋200の底に向く側を“下”、その反対側を“上”と定義する。
【0021】
本実施形態における被覆体100は、図2に示すように、多結晶シリコンである製品300を包装するための包装袋200に装着(配置)して使用される。被覆体100が包装袋200に装着される際、被覆体100は、包装袋開口部210より連なる、包装袋内壁面202における少なくとも一部の領域を覆う態様により、上部折り返し1によって包装袋200の上端(包装袋開口部210の周縁)を覆うように掛止して装着される。前記一部の領域は、包装袋上端部201からシール位置203までの領域を含むことが好ましい。シール位置203とは、製品300を包装袋200に充填後、包装袋200を密封する際にシールが形成される位置を示す。ここで、シールは、包装袋200において、重なり合うフィルム同士を圧着しあうことで形成されることが好ましい。このようなシールの方法として、例えば、熱溶着によるヒートシールなどが挙げられる。前記構成によれば、製品300を包装袋200に充填する際、製品300から包装袋内壁面202が保護される。また、製品300に由来する微粉302が、包装袋内壁面202におけるシール位置203に付着することを防ぐことができる。
【0022】
(構造)
被覆体100は、包装袋200を用いて形成される。そのため、被覆体100の材質は、包装袋200と同じ低密度ポリエチレン樹脂製フィルムである。例えば、包装袋200の開口部から底部までの長さが略半分となるように、包装袋200を開口部と平行に切断し、開口された上端および下端を外側に折り返すことで、被覆体100が形成される。被覆体100を包装袋200と同じ材質で形成した場合、被覆体100と製品300とが接触した際に発生する削り微粉は、包装袋200と同じ材質となる。よって、包装袋200以外の材料からなる削り微粉などの混入可能性が低減され、多結晶シリコンである製品300の汚染が低減される効果がある。なお、製品300は多結晶シリコンロッドの破砕物であってもよい。多結晶シリコンロッドの破砕物は、不定形で、鋭敏な突出部を多く有しているため、製品300と包装袋内壁面202との接触によって包装袋200を傷つけ易い。よって、上記削り微粉が発生する可能性が高く、被覆体100を包装袋200と同じ材質で形成することによる製品300の汚染低減効果は顕著となる。被覆体100は、包装袋200と同材質のインフレーションチューブを用いて形成されてもよい。また、被覆体100の材質はこれに限定されず、例えば、可塑性に富むプラスチックフィルムにより形成されてもよい。具体的には、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリ塩化ビニールなどからなるフィルムが例示できる。
【0023】
被覆体100は、包装袋200から形成した場合、包装袋200と同じ壁厚となる。ここで、壁厚とはフィルムの厚さを示す。このような壁厚によると、被覆体100を包装袋200に装着することで、被覆体100が包装袋200を覆う部分は包装袋200を二重に重ねた場合と同じ状態となる。よって、包装袋200の自立安定性が向上する。本実施形態における被覆体100の壁厚は、包装袋200の壁厚と同じ250μmであるが、これに限定されない。被覆体100の壁厚は、少なくとも包装袋200の自立安定性を向上させる程度であることが好ましい。具体的な被覆体100の壁厚として、100μm以上が好ましく、150μm以上がより好ましく、200μm以上がより好ましく、250μm以上がより好ましい。また、壁厚が厚すぎると、柔軟性に欠け被覆体100の取り扱いが困難となるため、被覆体100の壁厚は1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましい。
【0024】
上部折り返し1および下部折り返し2のそれぞれは、折り返しが形成された後においても、安定して折り返された状態が維持されることが好ましい。このため、上部折り返し1および下部折り返し2の折り返しのそれぞれに係る幅は、0.5cm以上が好ましく、0.8cm以上がより好ましく、1cm以上が特に好ましい。被覆体100は、包装袋200の上端に上部折り返し1によって掛止して装着される。このように装着された状態を安定に保持するために、上部折り返し1の折り返し幅は、1.5cm以上がより好ましく、2cm以上がより好ましく、3cm以上がより好ましく、4cm以上が最も好ましい。
【0025】
被覆体100のサイズは、包装袋200のサイズに合わせて形成される。図2のように、被覆体100は、包装袋開口部210に収まりよく装着されることが好ましい。前記構成によれば、被覆体100は、製品300を包装袋200に充填する際、包装袋200の上部内壁を緊密に覆い、製品300と包装袋内壁面202上部との接触による包装袋200の傷つきを防止する。包装袋200の傷つきに由来する削り微粉の発生を抑制することで、製品の汚染可能性が低減する。被覆体100の折り返し下端2bは、製品上面301より上部となり、かつ、シール位置203よりも下部となることが好ましい。前記構成によれば、折り返し下端2bと製品上面301が接触しないため、充填後に被覆体100と充填された製品300が接触せず、製品の汚染可能性が低減する。また、製品300を包装袋200に充填する際、製品300に由来する微粉302が舞い上がり、包装袋内壁面202上部に付着する。この微粉302は、包装袋を密封する際に粉噛み込みによるシール不良の原因となる。被覆体100が、包装袋開口部210に収まりよく装着されるサイズであれば、微粉302は被覆体100に付着し、包装袋内壁面202におけるシール位置203への付着は防止される。よって、シール位置203に傷や微粉の付着がないことで、良好なシールが得られる。
【0026】
被覆体100の開口部10は、製品300を把持した手を通過させることが可能な大きさを有することがより好ましい。これにより、被覆体100を包装袋200に装着し、手作業で製品300を充填する場合においても、手の動きが妨げられない。
【0027】
(折り返し)
上部折り返し1および下部折り返し2について、図3を参照して詳細に説明する。上部折り返し1は、上部折り返し1形成前の被覆体100の上部における先端を、外側に折り返して形成される。下部折り返し2は、下部折り返し1形成前の被覆体100の下部における先端を、外側に折り返して形成される。図3に示すように、上部折り返し1は、外壁面3との間に空隙1bを形成することで、上部折り返し1により被覆体100が包装袋200の上部に掛止され、安定して装着される。また、上部折り返し1により被覆体100の上端部1aが包装袋200の外側に配されるため、上端部1aと製品300との接触が抑えられる。同時に、包装袋上端部201は被覆体100に覆われるため、包装袋上端部201と製品300との接触が抑えられる。同様に、下部折り返し2により、被覆体100の下端部2aと製品300との接触が抑えられる。
【0028】
ここで、上端部1a、下端部2a、および包装袋上端部201は、金属刃などにより切断されることで形成されるため、微量の金属汚染が残存する。多結晶シリコン製品は非常に高い純度が要求されるため、微量の金属汚染が残存した切断端部と、製品300とが接触することで、許容できない汚染が製品300に発生する可能性がある。前記構成によれば、図3の(a)で示すように、被覆体100および包装袋200の切断端部が全て製品と接触しない位置に配されることで、製品300の汚染可能性を抑えることができる。
【0029】
本実施形態における上部折り返し1および下部折り返し2は、1回の折り返しにより形成される。ただし、折り返し回数に制限はなく、折り返し回数が2回でもよく、3回でもよく、4回でもよく、5回以上でもよい。また、上部折り返し1と下部折り返し2で異なる折り返し回数となってもよい。折り返し回数を増やすことで、折り返しについて折り返された状態が維持されやすくなるとともに、上端部1aおよび/または下端部2aが、製品300にさらに接触しにくい構造となる。
【0030】
図3の(b)に示すように、下部折り返し2により、包装袋内壁面202と被覆体100の外壁面3とは直接接触しない。被覆体100が形成される場合、筒状に形成されたプラスチックフィルムなどにおいて、外部に曝される外壁面は内壁面と比べて汚染可能性が高い。前記構成によれば、汚染可能性が高い外壁面3が包装袋内壁面202に接触しにくい構造となる。このため、包装袋200の汚染可能性を低減し、さらに製品300の汚染可能性を低減することができる。また、被覆体100がインフレーションチューブにより形成される場合、インフレーションチューブの内壁面は、使用時に開口するまでは外部に曝されず保管されるため、汚染可能性が低い。よって、被覆体100がインフレーションチューブにより形成されることは、製品300における汚染可能性低減の観点から、特に好ましい。
【0031】
また、図3の(c)に示すように、下部折り返し2により、被覆体100の下端が折り返し下端2bとなり、自由端2cではなくなる。自由端2cは揺れ動きやすいため、製品300充填の際に、金属汚染の可能性がある下端部2aと製品300とが接触する可能性がある。また、手作業により製品300を充填する際には、自由端2cが手に接触することで、操作性が落ちる。下部折り返し2により、被覆体100の下端が折り返し下端2bとなることで、折り返し下端2bは自由端2cと比べて揺れ動きにくく、製品や手との接触可能性が低減する。すなわち、下部折り返し2により、製品300の汚染可能性が低減し、また、手作業による充填時における操作性が向上する。
【0032】
(使用方法)
被覆体100の使用方法について、図4を参照して以下に説明する。図4の(a)で示すように、製品300を包装袋200に充填する前に、被覆体100を包装袋200に装着する。被覆体100は、上部折り返し1が包装袋200の上端を覆うように掛止されることで、包装袋200に装着される。これにより、被覆体100と包装袋200とを備える、包装袋400が形成される。
【0033】
次に、図4の(b)で示すように、包装袋400に製品300を手作業で充填される。手作業で充填することで、製品300と、包装袋400との接触が低減され、包装袋400の傷つきや、包装袋400に由来する削り微粉などによる製品300の汚染可能性が低減される。
【0034】
被覆体100を備える包装袋400は、製品300を充填する際に発生する微粉302が、包装袋内壁面202におけるシール位置203に付着しないように構成されている。そのため、包装袋200を密封する際の粉噛み込みによる、包装袋200のシール不良が低減される。
【0035】
そして、図4の(c)で示すように、製品300の充填が終了後、包装袋200のシール前に被覆体100が包装袋200から取り外される。その後、図4の(d)で示すように、包装袋200はヒートシールなどによりシールされる。
【0036】
被覆体100は、1回のみの使用で廃棄されてもよいし、繰り返し使用されてもよい。被覆体100はプラスチックフィルムなどの比較的安価な材質により形成されるため、交換容易である。
【0037】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図5を参照して以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0038】
本実施形態に係る被覆体500は、材質として硬質な強化プラスチックにより形成されることを特徴とする点において、実施形態1と異なる。
【0039】
前記材質は、強化プラスチックに限定されない。被覆体500の構造が形成された後に、自重によりその形状が変更されない程度の剛性を有する材質が好ましい。また、被覆体500を包装袋200に装着した際に、包装袋200が潰れない程度に軽量であることが好ましい。好ましい材質として、具体的には、繊維強化プラスチック、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレートなどが例示できる。
【0040】
前記構成によれば、被覆体500を装着した包装袋200は、高い自立安定性を得ることができる。また、開口部510の形状が固定されるため、安定して製品300を包装袋200に充填することができる。さらに、被覆体500の強度が向上し、製品300との接触から包装袋200をより確実に保護することができる。
【0041】
本実施形態においては、製造時にこれらの折り返しを有する形状として成形される。
【0042】
開口部510は略四角形状に形成されるが、これに限らず、略四角形状以外の略多角形状や、略円形状に形成されてもよい。
【0043】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る被覆体100は、前記課題を解決するために、多結晶シリコンを包装する包装袋200の開口部210より連なる、前記包装袋の内壁(包装袋内壁面202)における少なくとも一部の領域を覆うための被覆体100であって、前記開口部210に配置された状態において、前記被覆体100の上部における先端が外側に折り返されて(上部折り返し1)、前記包装袋200の上端に掛止され、かつ、前記折り返し(上部折り返し1)により前記開口部210の周縁が覆われており、前記被覆体100の下部における先端が外側に折り返されている(下部折り返し2)ことを特徴としている。
【0044】
前記構成によれば、多結晶シリコンの包装袋内壁面202上部の一定領域を覆うことで、多結晶シリコンである製品300充填時に、製品300と包装袋内壁面202との接触を防止する。また、製品300充填時に発生する微粉302が、包装袋内壁面202におけるシール位置203へ付着することが防止され、シール時の粉噛み込みによる不良を低減できる。上部折り返し1によって被覆体100が包装袋200の上端に掛止できると共に、汚染可能性がある上端部1aが製品300に接触しない構造となる。下部折り返し2により、汚染可能性がある下端部2aもまた製品300に接触しない構造となる。また、汚染可能性のある被覆体100の外壁面3が、包装袋内壁面202に接触しにくい構造となる。さらに、被覆体100の下端が自由端2cではなくなり、手作業での製品300充填時における手への引っ掛かりが抑制される。
【0045】
本発明の態様2に係る被覆体100は、壁厚が100μm以上であることが好ましい。前記構成によれば、被覆体100が一定以上の壁厚を持つことで、包装袋200に装着した際の、包装袋200の自立安定性が高まる。
【0046】
本発明の態様3に係る被覆体100は、前記包装袋200と同じ材質であることが好ましい。前記構成によれば、包装袋200の材質以外の材質に由来する汚染物質混入の可能性を低減することができる。
【0047】
本発明の態様4に係る被覆体100は、インフレーションチューブであることが好ましい。インフレーションチューブは、チューブ状に製造後、両側にガゼット加工を施す等した上で圧して平坦化し保管される。インフレーションチューブ使用時に、開口してチューブ状物とした上で、被覆体100を形成することができる。前記構成によれば、インフレーションチューブは、被覆体100形成の際に開口するまでは、内壁面が外気に曝されず、内壁面の清浄状態が保持される。よって、製品300の汚染が防止できる。
【0048】
本発明の態様5に係る被覆体100は、前記多結晶シリコン(製品300)が、多結晶シリコンロッドの破砕物であることが好ましい。多結晶シリコンロッドの破砕物は、不定形で、鋭敏な突出部も多く有している。そのため、製品300充填時において、製品300と包装袋内壁との接触によって包装袋200が傷つきやすい。また、前記鋭敏な突出部に起因して製品300の充填時に多結晶シリコン同士の接触により、微粉302が特に発生しやすい。前記構成によれば、被覆体100による包装袋内壁面202の保護効果、および、包装袋内壁面202への微粉302付着防止効果が、より効果的に発揮できる。
【0049】
本発明の態様6に係る多結晶シリコン包装袋の製造方法は、前記課題を解決するために、本発明の一態様に係る被覆体を、前記包装袋に装着した状態で、前記開口部より前記多結晶シリコンを充填することを特徴としている。前記構成によれば、製品300充填の際に、被覆体100により包装袋200を保護することができる。
【0050】
本発明の態様7に係る多結晶シリコン包装袋の製造方法は、さらに、前記包装袋のシール前に、前記被覆体を前記包装袋から取り外す工程を含むことが好ましい。前記構成によれば、製品300充填の際に発生する微粉302における、包装袋内壁面202におけるシール位置203への付着が防止され、包装袋200をシールする際の粉噛み込みによる不良が低減できる。
【0051】
本発明の態様8に係る多結晶シリコンの充填方法は、前記課題を解決するために、本発明の一態様に係る被覆体を、前記包装袋に装着した状態で、前記多結晶シリコンを前記包装袋へ手作業で充填することを特徴としている。前記構成によれば、製品300を包装袋200に充填する際に、包装袋開口部210に手を差し入れても、被覆体100の下端が外側に折り返された折り返し下端2bとなっており、手への引っかかりが抑制できる。
【0052】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1,501 上部折り返し
1a 上端部
1b 空隙
2,502 下部折り返し
2a 下端部
2b 折り返し下端
2c 自由端
3 外壁面
10,510 開口部
100,500 被覆体
200,400 包装袋
201 包装袋上端部
202 包装袋内壁面
203 シール位置
210 包装袋開口部
300 製品
301 製品上面
302 微粉
図1
図2
図3
図4
図5