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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-02
(45)【発行日】2022-08-10
(54)【発明の名称】中空糸膜モジュール
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/02 20060101AFI20220803BHJP
【FI】
B01D63/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018145841
(22)【出願日】2018-08-02
(65)【公開番号】P2020018979
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】薮野 洋平
(72)【発明者】
【氏名】小松 賢作
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-511530(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0039012(US,A1)
【文献】国際公開第2015/012293(WO,A1)
【文献】特開平11-319520(JP,A)
【文献】特開2016-068046(JP,A)
【文献】特開2018-051483(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0310903(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水が外側から内側に向かって透過する複数の中空糸膜を有し、各中空糸膜の一端部が封止剤により封止された中空糸膜束と、
前記複数の中空糸膜の他端部が開口した状態で前記他端部を固定する固定部材と、
を備え、
前記中空糸膜束は、前記中空糸膜の前記一端部が固定されない片端フリータイプであり、
前記複数の中空糸膜のそれぞれには、該中空糸膜の外面から突出した形状の突出部が設けられているとともに、当該突出部が設けられた前記中空糸膜は、伸度が20%以上500%未満で、且つ、有効長が0.3m以上2.5m以下に規定されており、
前記突出部は、隣の中空糸膜に設けられた突出部と接触する位置に配置されている中空糸膜モジュール。
【請求項2】
前記突出部は、前記封止剤によって封止された前記一端部に設けられている請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項3】
前記複数の中空糸膜の有効長の誤差は、10%未満である請求項2に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項4】
前記突出部は、前記複数の中空糸膜のそれぞれにおける長さ方向の中間部に設けられている請求項1に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項5】
前記突出部は、角のない形状を有する請求項1から4の何れか1項に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項6】
前記中空糸膜束が収容されるハウジングを備えている請求項1から5の何れか1項に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項7】
前記ハウジングの内部空間での前記中空糸膜束の充填率が20%以上65%未満である請求項6に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項8】
前記突出部の幅が前記中空糸膜の外径の1倍よりも大きく且つ3倍未満である請求項1から7の何れか1項に記載の中空糸膜モジュール。
【請求項9】
前記中空糸膜に外側から圧力がかけられる外圧濾過方式である、請求項6に記載の中空糸膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸膜モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、精密濾過や限外濾過などの水処理分野において、複数の中空糸膜が束状に固定された中空糸膜モジュールを用いた分離技術が知られている。中空糸膜モジュールを用いた分離技術は、地下水や伏流水など、比較的清澄な原水が対象とされることが多い。しかしながら、近年は、原水の適用範囲が広がっており、河川表流水、工業排水回収など、比較的、原水水質の変動や、原水の濁質成分が多い原水に対して適用される事例が増加している。よって、中空糸膜モジュールには、それらに対応できる高い濁質耐性が求められている。
【0003】
通常、中空糸膜束の片端部は、処理水を得るために開口しており、もう一方の端部は、何かしらの方法で封止されている。封止の方法として、U字中空糸膜を折り曲げる方法や、熱による溶着など様々な方法が知られている。近年は、中空糸膜を入れるハウジングと呼ばれる容器などに封止部分を樹脂でまとめて接着固定された両端固定タイプの中空糸膜モジュールが主流となってきている(特許文献1)。しかし、この構造では、濁質濃度の高い原水をろ過した場合に、十分な排出能力を得られない。このため、濾過の進行に伴い濁質成分が蓄積し、膜の閉塞に繋がるという問題があり、高濁質濃度の原水に対して、対応できないという問題点がある。
【0004】
この問題を解決するために、中空糸膜の一方端が開口した、片端フリータイプの中空糸膜モジュールが知られている(特許文献2、特許文献3)。特許文献2では、1本1本の中空糸膜端部がエポキシなどの接着樹脂によって、バラバラになるように封止されている。この構成では、濁質の排出性を高めることができると記載されている。併せて、中空糸膜に樹脂が浸透されることにより高い耐久性を有する封止部として使用できると記載されている。一方、特許文献3には、より制約が少なく、膜外への染み出しを抑制することができ、装置コストの抑制ができるフリー部の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-247649号公報
【文献】特開平5-15746号公報
【文献】特開2017-070914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2及び3に開示された中空糸膜モジュールでは、片端フリーの中空糸膜束が用いられるため、濾過中に中空糸膜同士が接触した状態に維持されてしまうことが起こり得る。この場合、膜有効利用率が低下するだけでなく、濁質排出性も低下してしまうという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、前記従来技術を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、膜有効利用率及び濁質排出性の低下を抑制することができる中空糸膜モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明は、原水が外側から内側に向かって透過する複数の中空糸膜を有し、各中空糸膜の一端部が封止剤により封止された中空糸膜束と、前記複数の中空糸膜の他端部が開口した状態で前記他端部を固定する固定部材と、を備える。前記中空糸膜束は、前記中空糸膜の前記一端部が固定されない片端フリータイプであり、前記複数の中空糸膜のそれぞれには、該中空糸膜の外面から突出した形状の突出部が設けられているとともに、当該突出部が設けられた前記中空糸膜は、伸度が20%以上500%未満で、且つ、有効長が0.3m以上2.5m以下に規定されており、前記突出部は、隣の中空糸膜に設けられた突出部と接触する位置に配置されている。
【0009】
本発明による中空糸膜モジュールでは、突出部同士が互いに接触することにより、中空糸膜同士が接触した状態に維持されてしまうことを抑制することができる。この結果、原水が中空糸膜を外側から内側に向かって透過するときの中空糸膜の通水抵抗が上がってしまうことを防止でき、膜有効利用率が低下することを防止することができる。
【0010】
なお、突出部は、隣の突出部と常時接触していてもよい。あるいは、突出部は、隣の突出部と接触しない状態で配置される一方で、中空糸膜が撓むこと等によって隣の突出部に接触するように配置されていてもよい。
【0011】
前記中空糸膜モジュールにおいて、前記突出部は、前記封止剤によって封止された前記一端部に設けられていてもよい。この態様では、封止剤で中空糸膜の一端部を封止するのと同時に突出部を形成することが可能となる。
【0012】
前記複数の中空糸膜の有効長の誤差は、10%未満であってもよい。この態様では、中空糸膜のそれぞれの有効長がばらつくことによって、隣り合う突出部同士の接触が阻害されるという事態を回避することができる。
【0013】
前記突出部は、前記複数の中空糸膜のそれぞれにおける長さ方向の中間部に設けられていてもよい。
【0014】
前記突出部は、角のない形状を有していてもよい。この態様では、突出部が中空糸膜に接触するようなことがあったとしても、中空糸膜を傷付けることを防止することができる。
【0015】
前記中空糸膜モジュールは、前記中空糸膜束が収容されるハウジングを備えていてもよい。すなわち、中空糸膜モジュールは、浸漬型の中空糸膜モジュールでも良いが、ハウジングを備えていて、その中に中空糸膜束が収納されてモジュール化された構成でもよい。
【0016】
前記ハウジングの内部空間の容積に対する前記中空糸膜束の充填率は、20%以上65%未満であってもよい。この態様では、ハウジング内部の空間を中空糸膜束で適度に満たしつつ、中空糸膜同士が接触した状態に維持されてしまうことを効果的に抑制することができる。すなわち、充填率が20%未満になれば、中空糸膜同士の接触する割合が低減されるものの中空糸膜自体の膜面積が減るため、濾過性能が低下してしまう。一方、充填率が65%以上になると、突出部の存在如何によらず中空糸膜の接触箇所が増大するため、突出部を設けることによる効果を得難くなる。
【0017】
前記突出部の幅は、前記中空糸膜の外径の1倍よりも大きく且つ3倍未満であってもよい。この態様では、突出部による効果を有効に発揮させることができるとともに、中空糸膜同士の間隙が広くなり過ぎることを抑制して、中空糸膜の物理洗浄時に中空糸膜が曲がる、折れる等の問題が生ずることを防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、膜有効利用率及び濁質排出性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る中空糸膜モジュールの全体構成を示す図である。
図2】前記中空糸膜モジュールに設けられた中空糸膜及び突出部を概略的に示す図である。
図3】前記突出部の変形例を説明するための図である。
図4】中空糸膜同士が接触した状態で維持されているときの様子を示す図である。
図5】前記突出部の変形例を説明するための図である。
図6】前記突出部の変形例を説明するための図である。
図7】前記突出部の変形例を説明するための図である。
図8】その他の実施形態に係る中空糸膜モジュールの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
(全体構成)
図1に示すように、本実施形態に係る中空糸膜モジュール10は、複数の中空糸膜12を有する中空糸膜束14と、中空糸膜束14が収容されるハウジング16と、ハウジング16内に固定された固定部材18と、を有する。
【0022】
ハウジング16は、上下方向に長い縦長の内部空間を有する密閉構造を有する。ハウジング16内の固定部材18は、ハウジング16の内部空間を中空糸膜束14が収容される収容空間S1と、収容空間S1の上側に位置する上部空間S2とに仕切っている。
【0023】
固定部材18には、中空糸膜12の上端部が固定されている。中空糸膜12の上端部は、開口しており、この開口は、固定部材18に形成された貫通孔18aを通して上部空間S2に連通している。一方、中空糸膜12の下端部は、どこにも固定されずフリーな状態となっている。
【0024】
ハウジング16の下端部には、原水を供給するポンプ21が接続された原水配管22と、圧縮空気を供給するコンプレッサ25が接続された空気配管26とが接続されていている。原水配管22と空気配管26とは互いに接続されて1つの配管となって、ハウジング16の下端部に接続されている。なお、原水配管22と空気配管26は、別個にハウジング16に接続されていてもよい。
【0025】
原水配管22に設けられた開閉弁22aを開放することにより、原水が収容空間S1に導入される。空気配管26に設けられた開閉弁26aを開放することにより、バブリング洗浄用の圧縮空気が収容空間S1に導入される。中空糸膜モジュール10では、収容空間S1内に導入された原水が中空糸膜12の外側から内側に透過することによって原水が濾過される。すなわち、本実施形態のモジュール10は、中空糸膜12に外側から圧力がかけられる外圧濾過式の中間糸膜モジュールとして構成されている。なお、本実施形態では、中空糸膜12の外側を積極的に加圧する構成が採用されているがこれに限られない。例えば、中空糸膜12の内側が吸引されて結果として外側の圧力の方が内側の圧力よりも高くなって、原水が中空糸膜12を外側から内側に透過する構成が採用されてもよい。
【0026】
ハウジング16には、収容空間S1に連通するように、原水の排出部28が設けられている。この排出部28には、原水を原水供給先に戻す戻し管29が接続される。またハウジング16には、上部空間S2に連通するように、濾過水の排出部31が設けられている。この排出部31には、濾過水の送出管32が接続される。濾過水の送出管32には、逆圧洗浄を行うための逆圧管34が接続されていて、逆圧管34に接続されたコンプレッサ35から上部空間S2内に圧縮空気を送り込むことができる。
【0027】
(中空糸膜束)
中空糸膜束14は、複数の中空糸膜12を有しており、これら複数の中空糸膜12は束状に配置されている。中空糸膜束14は、外径が、5~200cmの範囲で複数の中空糸膜12が配設されることが好ましく、5~100cmであることがより好ましく、5~50cmであることがさらに好ましい。
【0028】
ハウジング16内での中空糸膜束14の充填率は、20%以上、65%未満であることが好ましく、さらに好ましくは、20%以上、60%未満であり、最も好ましくは、20%以上、55%未満である。充填率が20%未満の場合には、ハウジング16内部で、十分な空間が形成されるため、中空糸膜12同士の接触する割合が低減されるものの中空糸膜束14の膜面積が減るため、濾過性能が低下してしまう。一方、充填率が65%以上の場合には、ハウジング16内部において、中空糸膜12間の隙間が小さくなり、後述の突出部40を設けることによる効果を得難くなる。なお、充填率は、(中空糸膜12の断面積×中空糸膜12の本数)をハウジング16の内側空間の断面積で除して、これに100をかけて得られたものである。ハウジング16の内側空間の断面積は、(ハウジング16の内径の1/2)×(ハウジング16の内径の1/2)×3.14によって算出される。
【0029】
(中空糸膜)
中空糸膜12の素材等は、特に限定されないが、片端フリー構造の場合には、中空糸膜12が物理洗浄時に揺動するために、一定の柔軟性を有していることが好ましい。具体的には、中空糸膜12の伸度が、20%以上、500%未満であることが好ましい。さらに好ましくは、20%以上、400%未満、最も好ましくは、20%以上、300%未満である。中空糸膜12の伸度がこれ以上小さい場合には、物理洗浄時の揺動中に十分な強度を維持することができず、中空糸膜12が破断してしまうなどの問題が発生する場合がある。一方で、500%以上の場合には、中空糸膜12が柔らかすぎてしまい、後述の突出部40による中空糸膜12の接触防止効果を発揮しにくくなってしまう。
【0030】
中空糸膜12の有効長は、0.3m以上、2.5m以下であることが好ましく、さらに好ましくは、0.3m以上、2.0m以下であり、最も好ましくは、0.3m以上、1.8m以下である。有効長が短すぎる場合には、中空糸膜12に間隙をあけなくても、濁質を十分に排出することが可能となる。一方で、有効長が長すぎる場合には、後述する突出部40の効果を有効に発揮させることができなくなる虞がある。
【0031】
中空糸膜12の外径は、特に限定されないが、0.5mm以上、5.0mm未満であることが好ましく、さらに好ましくは、0.5mm以上、4.0mm未満であり、最も好ましくは、0.5mm以上、3.0mm未満である。
【0032】
(突出部)
図2に示すように、中空糸膜12の一端部は、1本1本バラバラに封止剤38によって封止されている。封止剤38は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等、2液混合式の樹脂を用いたものである。封止剤38を構成する樹脂が中空糸膜12の外側まではみ出すことにより、中空糸膜12の一端部には、中空糸膜12の外面から突出した形状の突出部40が設けられている。すなわち、突出部40は、管状の中空糸膜12の端部を塞ぐ封止剤38と一体的に設けられている。
【0033】
突出部40の幅は、中空糸膜12の幅よりも大きくなっている。具体的には、中空糸膜12の外径(OD)に対する突出部40の最大幅(Dmax)の比は、1倍よりも大きく、3倍未満であることが好ましく、さらに好ましくは、1倍よりも大きく、2.5倍未満であり、最も好ましくは、1倍よりも大きく、2倍未満である。比Dmax/ODが3倍以上の場合には、中空糸膜束14の一端と、他端で幅が違いすぎてしまい、物理洗浄時に中空糸膜12が曲がる、折れるなどの問題が発生する場合があり得る。
【0034】
中空糸膜12の長さ方向における突出部40の長さ(L)は、0.05cm以上、15cm以下であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1cm以上、10cm以下であり、最も好ましくは、0.1cm以上、5cm以下である。突出部40が長すぎる場合には、中空糸膜12の有効長が短くなるため、処理流量が低下してしまう。一方で、突出部40が短すぎる場合には、突出部40を構成する樹脂封止剤38のアンカー効果が低下し、耐久性が低下してしまう。
【0035】
突出部40は、各中空糸膜12に設けられている。これら突出部40は、図3に示すように、隣に位置する中空糸膜12に設けられた突出部40と接触する位置に配置されている。各突出部40が各中空糸膜12において自由端となっている端部に設けられているため、例えば、各端部が固定部材18から等距離の位置に位置していれば、隣同士の突出部40は互いに接触可能な位置となる。一方、各端部が固定部材18から正確に等距離の位置になかったとしても、中空糸膜12の有効長のばらつきが所定範囲内に収まっていれば、隣同士の突出部40は互いに接触可能となる。すなわち、図3に示すように、横から見たときに、一の中空糸膜12に設けられた突出部40と、その隣に配置された中空糸膜12に設けられた突出部40とが重なる部位を有するように2つの突出部40が配置されていれば、隣同士の突出部40は互いに接触可能な位置となる。
【0036】
中空糸膜12の1本1本の有効長の誤差は、10%未満であることが好ましく、さらに好ましくは5%未満であり、最も好ましくは、2%以下である。
【0037】
本実施形態に係る中空糸膜モジュール10では、中空糸膜12の外側から内側に向けて処理液を通過させる外圧濾過方式によって運転された場合に、中空糸膜束14の外周側から内周側に向けて圧力がかかる。このため、中空糸膜12に突出部40が設けられていなければ、図4に示すように、ハウジング16内に充填された中空糸膜12同士の接触面積が増大することとなる。この場合、特に中空糸膜束14の内側に位置する中空糸膜12において、中空糸膜12同士が接触した部分では通水することが難しくなり、透水性能が低下する傾向にある。これは、純水透水性の評価試験で確認することができる。特に、高い純水透水性能を有する中空糸膜12の場合には、中空糸膜12同士の接触部分の抵抗値が相対的に大きくなるために、より顕著にそのような現象が発生する。
【0038】
そればかりではなく、中空糸膜12同士の接触部分においては、物理逆洗時に濁質成分が排出されにくく、逆洗後も濁質成分が溜まったままになりやすい。このため、逆洗によって濁質成分を中空糸膜12から剥離させることができたとしても、中空糸膜12同士の隙間が十分にない場合には、濁質成分を排出しきれず、徐々に蓄積する現象が発生する。
【0039】
そこで、中空糸膜12に突出部40が設けられることによって、1本1本の中空糸膜12の間に間隙を持たせることができ、それによって、濁質排出性を改善できるだけでなく、より通水しやすくすることができる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態による中空糸膜モジュール10では、突出部40同士が互いに接触することにより、中空糸膜12同士が接触した状態に維持されてしまうことを抑制することができる。この結果、原水が中空糸膜を外側から内側に向かって透過するときの中空糸膜12の通水抵抗が上がってしまうことを防止でき、膜有効利用率が低下することを防止することができる。
【0041】
また本実施形態では、突出部40が、中空糸膜12において、封止剤38によって封止された端部に設けられているので、封止剤38で中空糸膜12の一端部を封止するのと同時に突出部40を形成することが可能となる。
【0042】
ここで、図2に示す例では、突出部40が、自由端となっている中空糸膜12の下端部に設けられているが、これに限られるものではない。例えば、図5に示すように、突出部40は、中空糸膜12の一端部に設けられるのではなく、中空糸膜12の長さ方向の中間部に設けられていてもよい。この場合、突出部40は、中空糸膜12の一端部を封止する工程と別の工程で形成されることとなる。この場合でも、各突出部40は、互いに接触可能な位置に配置されている必要がある。
【0043】
突出部40の形状は、特に限定されるものではないが、角のない形状が好ましい。そうすれば、突出部40が中空糸膜12に接触するようなことがあったとしても、中空糸膜12を傷付けることを防止することができる。
【0044】
例えば、図2に示すように、突出部40は略球状であってもよい。また、中空糸膜12の長さ方向に長い長丸状に形成されていてもよい。また、図6に示すように、突出部40は、湾曲状の外面を有する先端側湾曲部40aと、中空糸膜12の長さ方向に略同幅で延びる筒状部40bと、湾曲状の外面を有する基端側湾曲部40cとを備えた構成であってもよい。また、図7に示すように、突出部40は、湾曲状の外面を有する先端側湾曲部40aと、幅を変化させながら中空糸膜12の長さ方向に延びる筒状部40bと、湾曲状の外面を有する基端側湾曲部40cとを備えた構成であってもよい。
【0045】
本実施形態では、中空糸膜12の下端部がフリーの状態になるように配置された構成としたが、これに限られるものではない。例えば、中空糸膜12の下端部が固定部材18に固定される一方で、中空糸膜12の上端がどこにも固定されないフリーな状態で配置されていてもよい。
【0046】
図8に示すように、中空糸膜モジュール10は、浸漬型の中空糸膜モジュール10として構成されていてもよい。すなわち、中空糸膜モジュール10は、固定部材18と、中空糸膜束14と、ヘッダ45と、を有し、原水が貯留された原水槽47の中に浸漬されている。この中空糸膜モジュール10では、中空糸膜12の内側が負圧になるように吸引されるように構成されている。この結果として、外側の圧力の方が内側の圧力よりも高くなる。このため、ヘッダ45内には、原水が中空糸膜12を外側から内側に透過することによって濾過された濾過水が流入する。ヘッダ45には、濾過水の送出管32が接続される。原水槽47には、バブリング洗浄用の圧縮空気を送る空気配管26が接続されている。
【実施例
【0047】
以下、実施例について説明する。
【0048】
(実施例1)
伸度180%の中空糸膜12を用いて、図1示すような中空糸膜モジュール10を作製した。中空糸膜12の下端部はエポキシ系樹脂で封止されており、中空糸膜12の上端部は、開口している。そして、中空糸膜12の有効長は1mであり、中空糸膜束14の外径は20cmとした。ハウジング16の内部空間の容積に対する中空糸膜束14の充填率は39%であった。中空糸膜12の外径(OD)は1.25mmであり、突出部40の幅(Dmax)は1.5mmであった。したがって、中空糸膜12の外径に対する突出部40の幅の比Dmax/ODは、1.2であった。これによって、中空糸膜12同士の間に間隙ができることが確認できた。中空糸膜12の有効長の誤差は、2%であった。
【0049】
(実施例2)
有効長1.8m、外径1.0mmの中空糸膜12を用い、幅Dmaxが2mmになるように、中空糸膜12に突出部40を形成した。このときのDmax/ODは2.0である。
【0050】
この中空糸膜12を用いて、外径20cmの中空糸膜束14とし、ハウジング16内に収納した。中空糸膜束14の充填率は、45%であった
(実施例3)
有効長0.3m、外径2.0mmの中空糸膜12を用い、幅Dmaxが2.5mmとなるように、中空糸膜12に突出部40を形成した。このときのDmax/ODは1.25である。
【0051】
この中空糸膜12を用いて、外径20cmの中空糸膜束14とし、ハウジング16内に収納した。中空糸膜束14の充填率は、26%であった。
【0052】
(比較例1)
1.25mmの幅ODを有する中空糸膜12に対し、中空糸膜束14の幅ODが1.25mmとなるように、中空糸膜12の端部を封止剤38で封止した。封止剤38は、中空糸膜12の外面から突出していないので、突出部40は形成されていない。すなわち、Dmax/ODは1.0である。それ以外は、実施例1と同様の構成である。
【0053】
(比較例2)
比較例2では、比較例1と同様に、1.25mmの幅ODを有する中空糸膜12に対し、中空糸膜束14の幅ODが1.25mmとなるように、中空糸膜12の端部を封止剤38で封止した。封止剤38は、中空糸膜12の外面から突出していないので、突出部40は形成されていない。一方、比較例2では、比較例1と異なり、中空糸膜束14の充填率が10%に設定されている。それ以外は、比較例1と同様の構成である。
【0054】
(比較例3)
Dmax/ODの比が3倍以上になるような中空糸膜束14を作製することは困難であり、評価できなかった。
【0055】
(比較例4)
実施例1と同様の構造を有する中空糸膜12を用いて中空糸膜束14を作成し、充填率を65%以上にしようとしたが、そのような中空糸膜モジュール10を作製することができなかった。
【0056】
(各パラメータの評価方法)
中空糸膜12の伸度は、以下のように測定した。まず、測定対象物である中空糸膜12を5cmとなるように切断した。この切断した中空糸膜12を、オートグラフ(株式会社島津製作所製のAG-Xplus)を用いて、25℃の水中で、100mm/分の速さで引っ張る引張試験を行った。そして、中空糸膜12が破断した際の長さを測定した。破断した際の中空糸膜12の有効長さを、測定対象の元の長さで割ったときの数値の百分率を、伸度(%)と定義した。
【0057】
中空糸膜12の外径は、以下のとおりとした。中空糸膜12をカッターナイフで切断し、切断断面をマイクロスコープ(キーエンス株式会社製 VHX-6000)にて観察し、20本の中空糸膜12の平均外径を、中空糸膜12の外径と定義した。
【0058】
封止部分の最大外径即ち突出部40の幅をデジタルノギスを用いて測定した。そして、封止部分の最大の大きさ(突出部40の最大幅の部分)を30本測定し、それらの平均値を突出部40の幅(最大外径)とした。
【0059】
有効長の誤差は、中空糸膜束14の全ての中空糸膜12の有効長を測定した場合の標準偏差を平均値で割った値とした(CV値と同義)。
【0060】
(濁質排出性の効果評価方法)
水酸化第二鉄の懸濁液からなり、SS濃度が300mg/Lのモデル水を原水として、中空糸膜モジュールを用いて、外圧全濾過方式により流量150LMH(L/m/h)の条件で30分間、定流量濾過を行った。そして、濾過運転後、中空糸膜モジュールの濾液側から0.2MPaの圧縮空気により逆圧洗浄を実施し、その後、下部からのバブリング洗浄を実施した。バブリング用の空気流量は1700NL/hとした。濾過運転中に中空糸膜モジュールに供給されたSS供給量に対して、バブリング洗浄によりハウジング16から排出されたSS排出量の比率により濁質排出性を評価した。
【0061】
(純水透水性の効果評価方法)
中空糸膜モジュールに純水で、100kPaの圧力をかけたときに、得られる純水透水量を、純水透水性(m/h/100kPa)とした。
【0062】
(モジュールの膜有効利用率)
1本の中空糸膜12で測定した時の透水性能に中空糸膜12の本数を乗じて得られる値を理論上のモジュール透水性とする一方で、中空糸膜モジュールで実測したときのモジュール透水性を、理論上のモジュール透水性で割って100をかけて得られる値を、膜有効利用率(%)とした。
【0063】
【表1】
【0064】
(評価結果)
表1に示すように、実施例1の中空糸膜モジュール10では、濁質排出性が98%であった。同様に、実施例2及び3では、濁質排出性がそれぞれ97%、99%であった。これに対し、比較例1では、濁質排出性が85%と低かった。これにより、中空糸膜12に突出部40が形成されていないものに比べ、突出部40が形成されているものでは、濁質排出性が向上することが分かる。すなわち、突出部40が形成されていることにより、中空糸膜12同士の接触が抑制されるため、バブリング洗浄によるSS排出性の向上が図られていると推測される。また、膜有効利用率においては、実施例1~3は、何れも比較例1及び2に比べて高かった。すなわち、突出部40の存在により、中空糸膜束14としてのモジュール透水性が、理論上のモジュール透水性から低下し難いことが分かる。すなわち、突出部40の存在によって、中空糸膜12同士の接触面積の増大が抑制され、透水性能が低下しないことが分かる。一方、比較例2では、濁質排出性が98%と高くなっているが、比較例2では、充填率が10%と低いことから、中空糸膜自体が動きやすくなっていることに起因して濁質排出性が高くなっていると推測される。その一方で、比較例2では、有効利用率が比較例1と同様に、実施例1~3に対して低くなっている。このことから、充填率が10%程度でも、中空糸膜同士の接触が生じている可能性があると言える。なお、モジュールの純水透水性は、実施例1~3に比べ、比較例2において、低くなっている。これは、比較例2では、充填率が低くそもそも膜面積が小さいからである。
【0065】
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 中空糸膜モジュール
12 中空糸膜
14 中空糸膜束
16 ハウジング
18 固定部材
38 封止剤
40 突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8