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特許7117354半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/265 20060101AFI20220804BHJP
   C23C 16/28 20060101ALI20220804BHJP
   C23C 16/507 20060101ALI20220804BHJP
   C23C 16/52 20060101ALI20220804BHJP
   C23C 16/56 20060101ALI20220804BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20220804BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20220804BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
H01L21/265 F
C23C16/28
C23C16/507
C23C16/52
C23C16/56
H01L21/316 A
H01L21/31 C
H05H1/46 R
H05H1/46 L
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020153951
(22)【出願日】2020-09-14
(65)【公開番号】P2022047904
(43)【公開日】2022-03-25
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000039
【氏名又は名称】特許業務法人アイ・ピー・ウィン
(72)【発明者】
【氏名】市村 圭太
(72)【発明者】
【氏名】中山 雅則
(72)【発明者】
【氏名】井川 博登
(72)【発明者】
【氏名】竹島 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】舟木 克典
(72)【発明者】
【氏名】岸本 宗樹
(72)【発明者】
【氏名】山角 宥貴
(72)【発明者】
【氏名】坪田 康寿
(72)【発明者】
【氏名】上田 立志
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-179592(JP,A)
【文献】特表2011-529275(JP,A)
【文献】特開平10-012890(JP,A)
【文献】国際公開第2005/020306(WO,A1)
【文献】特開2010-040571(JP,A)
【文献】国際公開第2018/179352(WO,A1)
【文献】特開2012-199417(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/265
C23C 16/28
C23C 16/507
C23C 16/52
C23C 16/56
H01L 21/316
H01L 21/31
H05H 1/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスペクト比が20以上の高アスペクト比構造が設けられた基板を収容する処理室内に、不純物を含有する不純物含有ガスと希釈ガスを供給するガス供給工程と、
前記不純物含有ガス及び前記希釈ガスをプラズマ励起する工程と、
プラズマ励起により生成される前記不純物を含む活性種を前記基板に供給する工程と、
を行うことで前記高アスペクト比構造の内面に対して、コンフォーマルに不純物含有層を形成し、
前記ガス供給工程では、前記処理室内における前記不純物含有ガスの分圧が、前記処理室内において前記不純物含有ガスが重合体を含む堆積物を形成する分圧よりも小さい所定の分圧となるように、前記不純物含有ガスと前記希釈ガスの流量比を制御する
半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記所定の分圧は、0.01Pa以下である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記所定の分圧は0.002Pa以下である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記希釈ガスは、水素含有ガス又は希ガスの少なくともいずれか一つを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記不純物は、ホウ素、ヒ素、リン、ガリウムの少なくともいずれか一つである、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記不純物含有ガスは、ジボランガス、三塩化ホウ素ガス、及び三フッ化ホウ素ガスからなる群から選択される少なくともいずれか一つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記基板の表面はシリコン含有膜又はシリコン含有下地の少なくともいずれかにより構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記基板の表面はシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、及びシリコン酸窒化膜からなる群から選択される少なくともいずれか一つにより構成されている、請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記プラズマ励起する工程では、プラズマ励起する高周波電力の大きさを調整することにより、前記基板の表面に形成される前記不純物含有層のステップカバレッジを制御する請求項1~8のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記プラズマ励起する工程では、前記高周波電力の大きさを小さくすることにより、前記不純物含有層のステップカバレッジを大きくするよう調整する、請求項9に記載の半導
体装置の製造方法。
【請求項11】
前記基板の表面に前記不純物含有層を形成した後に、
酸素含有ガスをプラズマ励起する工程と、
プラズマ励起により生成される酸素を含む活性種を前記基板の表面に供給する工程と、
を行うことで前記不純物含有層の表面を酸化層へと改質する
請求項1~10のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記基板面上にはアスペクト比が20以上の高アスペクト比構造が形成されており、
前記高アスペクト比構造の内面に対してコンフォーマルに前記酸化層を形成する、請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記高アスペクト比構造の内面に形成される前記酸化層のステップカバレッジは70%以上である、請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記高アスペクト比構造の内面に形成される前記不純物含有層のステップカバレッジは70%以上である、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
アスペクト比が20以上の高アスペクト比構造が設けられた基板を収容する処理室と、
前記処理室内へ不純物を含有する不純物含有ガスと希釈ガスを供給するガス供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
前記処理室内へ供給された前記不純物含有ガス及び前記希釈ガスをプラズマ励起するプラズマ生成部と、
前記ガス供給系、前記排気系及び前記プラズマ生成部を制御して、
前記処理室内に前記不純物含有ガス及び前記希釈ガスを供給するガス供給処理と、
前記不純物含有ガス及び前記希釈ガスをプラズマ励起する処理と、
プラズマ励起により生成される前記不純物を含む活性種を前記基板に供給して、前記高アスペクト比構造の内面に対して、コンフォーマルに不純物含有層を形成する処理と、を行い、
前記ガス供給処理では、前記処理室内における前記不純物含有ガスの分圧が、前記処理室内において前記不純物含有ガスが重合体を含む堆積物を形成する分圧よりも小さい所定の分圧となるように、前記不純物含有ガスと前記希釈ガスの流量比を制御することが可能なように構成された制御部と、
を備える基板処理装置。
【請求項16】
アスペクト比が20以上の高アスペクト比構造が設けられた基板を収容する処理室内に、不純物を含有する不純物含有ガスと希釈ガスを供給するガス供給手順と、
前記不純物含有ガス及び前記希釈ガスをプラズマ励起する手順と、
プラズマ励起により生成される前記不純物を含む活性種を前記基板に供給する手順と、
を行うことで前記高アスペクト比構造の内面に対して、コンフォーマルに不純物含有層を形成する手順をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラムであって、
前記ガス供給手順では、前記処理室内における前記不純物含有ガスの分圧が、前記処理室内において前記不純物含有ガスが重合体を含む堆積物を形成する分圧よりも小さい所定の分圧となるように、前記不純物含有ガスと前記希釈ガスの流量比を制御する、コンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法、基板処理装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板の表面に形成されている膜をプラズマにより改質する処理が行われることがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-183487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した半導体装置の製造工程の一工程として、例えばホウ素(B)含有ガスを用いて基板の表面に不純物(ドーパント)としてBを注入(ドーピング)する基板処理工程が行われているが、Bが注入される際に堆積物が生成されてしまい、基板の表面に堆積物が付着してしまう場合があった。
【0005】
本開示の目的は、プラズマを用いて基板へのドーピング処理を行う際に、堆積物の発生を抑制することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
基板を収容する処理室内に、不純物を含有する不純物含有ガスと希釈ガスを供給するガス供給工程と、
前記不純物含有ガス及び前記希釈ガスをプラズマ励起する工程と、
プラズマ励起により生成される前記不純物を含む活性種を前記基板に供給する工程と、
を行うことで前記基板の表面に不純物含有層を形成し、
前記ガス供給工程では、前記処理室内における前記不純物含有ガスの分圧が、前記処理室内において前記不純物含有ガスが重合体を含む堆積物を形成する分圧よりも小さい所定の分圧となるように、前記不純物含有ガスと前記希釈ガスの流量比を制御する
技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、プラズマを用いて基板へのドーピング処理を行う際に、堆積物の発生を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置100の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示す図である。
図2】本開示の一態様におけるプラズマの発生原理を例示する図である。
図3】本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置100のコントローラ221の概略構成図であり、コントローラ221の制御系をブロック図で示す図である。
図4】異なる条件によりそれぞれ形成されたB含有層の、撥水性、ドーズ量及びステップカバレッジの測定結果を示した図である。
図5図5(A)は、基板表面に堆積物が有る場合の基板の表面状態を示した図であり、図5(B)は、基板表面に堆積物が無い場合の基板の表面状態を示した図である。
図6図6(A)は、基板に対して3500W、2000W、500Wの高周波電力をそれぞれ供給して形成されたB含有層中のB濃度を示した図であり、図6(B)は、基板に対してB含有ガスの供給時間を30秒又は60秒にしてそれぞれ形成されたB含有層中のB濃度を示した図であり、図6(C)は、基板に対してB含有ガスの分圧を0.002Pa、0.01Pa、0.05Pa、0.1Paにしてそれぞれ形成されたB含有層中のB濃度を示した図である。
図7図7(A)は、基板に対して3500W、2000W、500Wの高周波電力をそれぞれ供給して形成されたB含有層のステップカバレッジを示した図であり、図7(B)は、基板に対してB含有ガスの供給時間を30秒又は60秒にしてそれぞれ形成されたB含有層のステップカバレッジを示した図であり、図7(C)は、基板に対してB含有ガスの分圧を0.002Pa、0.01Pa、0.05Pa、0.1Paにしてそれぞれ形成されたB含有層のステップカバレッジを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について図1図3を参照しながら説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置
図1に示すように、基板処理装置100は、基板としてのウエハ200を収容してプラズマ処理する処理炉202を備えている。処理炉202は、処理室201を構成する処理容器203を備えている。処理容器203は、ドーム型の上側容器210と碗型の下側容器211とを備えている。上側容器210が下側容器211の上に被さることにより、処理室201が形成される。
【0011】
下側容器211の下部側壁には、搬入出口(仕切弁)としてのゲートバルブ244が設けられている。ゲートバルブ244を開くことにより、搬入出口245を介して処理室201内外へウエハ200を搬入出することができる。ゲートバルブ244を閉じることにより、処理室201内の気密性を保持することができる。
【0012】
図2に示すように、処理室201は、プラズマ生成空間201aと、プラズマ生成空間201aに連通し、ウエハ200が処理される基板処理空間201bと、を有している。プラズマ生成空間201aの周囲であって処理容器203の外周側には、後述する共振コイル212が設けられている。プラズマ生成空間201aは、プラズマが生成される空間であって、処理室201の内、例えば共振コイル212の下端(図1における一点鎖線)よりも上方側の空間をいう。一方、基板処理空間201bは、ウエハ200がプラズマで処理される空間であって、共振コイル212の下端よりも下方側の空間をいう。
【0013】
処理室201内の底側中央には、基板載置部としてのサセプタ217が配置されている。サセプタ217の上面には、ウエハ200が載置される基板載置面217dが設けられている。サセプタ217の内部には、加熱機構としてのヒータ217bが埋め込まれている。ヒータ電力調整機構276を介してヒータ217bに電力が供給されることにより、基板載置面217d上に載置されたウエハ200を、例えば25~1000℃の範囲内の所定の温度に加熱することができる。
【0014】
サセプタ217は、下側容器211とは電気的に絶縁されている。サセプタ217の内部にはインピーダンス調整電極217cが装備されている。インピーダンス調整電極217cは、インピーダンス調整部としてのインピーダンス可変機構275を介して接地されている。インピーダンス可変機構275のインピーダンスを所定の範囲内で変化させることによって、インピーダンス調整電極217cおよびサセプタ217を介して、プラズマ処理中のウエハ200の電位(バイアス電圧)を制御することが可能となる。
【0015】
サセプタ217の下方には、サセプタ217を昇降させるサセプタ昇降機構268が設けられている。サセプタ217には、貫通孔217aが3つ設けられている。下側容器211の底面には、ウエハ200を支持する支持体としての支持ピン266が、3つの貫通孔217aのそれぞれに対応するように3本設けられている。サセプタ217が下降させられた際、3本の支持ピン266の各先端が、対応する各貫通孔217aを突き抜けて、サセプタ217の基板載置面217dよりも上面側へそれぞれ突出する。これにより、ウエハ200を下方から保持することが可能となる。
【0016】
処理室201の上方、つまり上側容器210の上部には、ガス供給ヘッド236が設けられている。ガス供給ヘッド236は、キャップ状の蓋体233と、ガス導入口234と、バッファ室237と、開口238と、遮蔽プレート240と、ガス吹出口239とを備え、処理室201内へガスを供給するように構成されている。バッファ室237は、ガス導入口234より導入されるガスを分散する分散空間として機能する。
【0017】
ガス導入口234には、ジボラン(B)ガス等の不純物であるBを含有するガス(B含有ガス)を供給するガス供給管232aの下流端と、水素(H)ガス等の水素(H)含有ガスを供給するガス供給管232bの下流端と、酸素(O)ガス等の酸素含有ガス(O含有ガス)を供給するガス供給管232cの下流端と、が合流するように接続されている。ガス供給管232aには、ガス流の上流側から順に、B含有ガス供給源250a、流量制御装置としてのマスフローコントローラ(MFC)252a、開閉弁としてのバルブ253aが設けられている。ガス供給管232bには、ガス流の上流側から順に、H含有ガス供給源250b、MFC252b、バルブ253bが設けられている。ガス供給管232cには、ガス流の上流側から順に、O含有ガス供給源250c、MFC252c、バルブ253cが設けられている。ガス供給管232a~232cが合流した下流側には、バルブ243aが設けられている。バルブ253a~253c,243aを開閉させることで、MFC252a~252cにより流量を調整しつつ、B含有ガス、H含有ガス、O含有ガスのそれぞれを処理容器203内へ供給することが可能となる。なお、ガス供給管232a~232cからは、上述の各種ガスの他、不活性ガスとしてのNガスを供給することが可能なようにも構成されている。
【0018】
B含有ガスは不純物含有ガスとして用いられ、H含有ガスは希釈ガスとして用いられる。B含有ガスとH含有ガスを含む混合ガスは、後述する基板処理工程において、プラズマ化され、シリコン(Si)含有膜(Si含有膜)であるシリコン(Si)膜が形成されたウエハ200に対して供給され、ウエハ200の表面に形成されているSi膜に不純物であるBをドーピングしてBを含むB含有層(B含有膜)に改質するように作用する。O含有ガスは、後述する基板処理工程において、プラズマ化されてウエハ200に対して供給され、ウエハ200の表面に形成されているB含有層を改質(酸化)するように作用する。O含有ガスは、後述する基板処理工程において酸化剤(酸化ガス)として作用する。Nガスは、後述する基板処理工程において、プラズマ化されることなく用いられ、パージガス等として作用する場合がある。
【0019】
主に、ガス供給ヘッド236(蓋体233、ガス導入口234、バッファ室237、開口238、遮蔽プレート240、ガス吹出口239)、ガス供給管232a、MFC252a、バルブ253a,243aにより、第1供給系(B含有ガス供給系、不純物含有ガス供給系)が構成される。また、主に、ガス供給ヘッド236、ガス供給管232b、MFC252b、バルブ253b,243aにより、第2供給系(H含有ガス供給系、希釈ガス供給系)が構成される。また、主に、ガス供給ヘッド236、ガス供給管232c、MFC252c、バルブ253c,243aにより、第3供給系(O含有ガス供給系、酸化剤供給系)が構成される。第2ガス供給系を第1ガス供給系に含めて不純物含有ガス供給系として考えてもよい。
【0020】
下側容器211の側壁には、処理室201内を排気する排気口235が設けられている。排気口235には、排気管231の上流端が接続されている。排気管231には、上流側から順に、圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ242、バルブ243b、真空排気装置としての真空ポンプ246が設けられている。主に、排気口235、排気管231、APCバルブ242、バルブ243bにより、排気系が構成されている。真空ポンプ246を排気系に含めてもよい。
【0021】
処理室201の外周部、すなわち、上側容器210の側壁の外側には、処理容器203を囲うように螺旋状の共振コイル212が設けられている。共振コイル212には、RF(Radio Frequency)センサ272、高周波電源273および周波数整合器(周波数制御部)274が接続されている。共振コイル212の外周側には、遮蔽板223が設けられている。
【0022】
高周波電源273は、共振コイル212に対して高周波電力(RF電力)を供給するよう構成されている。RFセンサ272は、高周波電源273の出力側に設けられている。RFセンサ272は、高周波電源273から供給される高周波電力の進行波や反射波の情報をモニタするよう構成されている。周波数整合器274は、RFセンサ272でモニタされた反射波の情報に基づいて、反射波が最小となるように、高周波電源273から出力される高周波電力の周波数を整合させるよう構成されている。
【0023】
共振コイル212の両端は、電気的に接地されている。共振コイル212の一端は、可動タップ213を介して接地されている。共振コイル212の他端は、固定グランド214を介して接地されている。共振コイル212のこれら両端の間には、高周波電源273から給電を受ける位置を任意に設定できる可動タップ215が設けられている。
【0024】
遮蔽板223は、共振コイル212の外側への電磁波の漏れを遮蔽するとともに、共振回路を構成するのに必要な容量成分を共振コイル212との間に形成するよう構成されている。
【0025】
主に、共振コイル212、RFセンサ272、周波数整合器274により、プラズマ生成部(プラズマ生成ユニット)が構成されている。高周波電源273や遮蔽板223をプラズマ生成部に含めてもよい。
【0026】
以下、プラズマ生成部の動作や生成されるプラズマの性質について、図2を用いて補足する。
【0027】
共振コイル212は、高周波誘導結合プラズマ(ICP)電極として機能するよう構成されている。共振コイル212は、所定の波長の定在波を形成し、全波長モードで共振するように、その巻径、巻回ピッチ、巻数等が設定される。共振コイル212の電気的長さ、すなわち、アース間の電極長は、高周波電源273から供給される高周波電力の波長の整数倍の長さとなるように調整される。一例として、共振コイル212の有効断面積は50~300mmとされ、コイル直径は200~500mmとされ、コイルの巻回数は2~60回とされる。共振コイル212に供給される高周波電力の大きさは0.5~5kW、好ましくは1.0~4.0kWとされ、周波数は800kHz~50MHzとされる。共振コイル212で発生させる磁場は0.01~10ガウスとされる。本実施形態では、好適な例として、高周波電力の周波数を27.12MHz、共振コイル212の電気的長さを1波長の長さ(約11メートル)に設定している。
【0028】
周波数整合器274は、反射波電力に関する電圧信号をRFセンサ272から受信し、反射波電力が最小となるように、高周波電源273が出力する高周波電力の周波数(発振周波数)を増加または減少させるような補正制御を行う。発振周波数の補正は、周波数整合器274が備える周波数制御回路を用いて行われる。周波数制御回路は、プラズマ点灯前は、共振コイル212の無負荷共振周波数で発振し、プラズマ点灯後は、反射波電力が最小となるように予め設定された周波数(無負荷共振周波数を増加または減少させた周波数)で発振するよう構成される。周波数制御回路は、補正後の周波数を含む制御信号を高周波電源273に向けてフィードバックする。高周波電源273は、この制御信号に基づいて高周波電力の周波数を補正する。高周波電力の周波数は、伝送線路における反射波電力がゼロとなるような共振周波数に最適化される。
【0029】
以上の構成により、プラズマ生成空間201a内に励起される誘導プラズマは、処理室201の内壁やサセプタ217等との容量結合が殆どない良質なものとなる。プラズマ生成空間201a中には、電気的ポテンシャルの極めて低い、平面視がドーナツ状のプラズマが生成されることとなる。共振コイル212の電気的長さを高周波電力の1波長の長さとする本実施形態の例では、共振コイルの電気的中点に相当する高さ位置の近傍において、このようなドーナツ状のプラズマが生成される。
【0030】
図3に示すように、制御部としてのコントローラ221は、CPU(Central Processing Unit)221a、RAM(Random Access Memory)221b、記憶装置221c、I/Oポート221dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM221b、記憶装置221c、I/Oポート221dは、内部バス221eを介して、CPU221aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ221には、入出力装置225として、例えばタッチパネル、マウス、キーボード、操作端末等が接続されていてもよい。コントローラ221には、表示部として、例えばディスプレイ等が接続されていてもよい。
【0031】
記憶装置221cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、CD-ROM等で構成されている。記憶装置221c内には、基板処理装置100の動作を制御する制御プログラム、基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ221に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。RAM221bは、CPU221aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0032】
I/Oポート221dは、上述のMFC252a~252c、バルブ253a~253c,243a,243b、ゲートバルブ244、APCバルブ242、真空ポンプ246、ヒータ217b、RFセンサ272、高周波電源273、周波数整合器274、サセプタ昇降機構268、インピーダンス可変機構275等に接続されている。
【0033】
CPU221aは、記憶装置221cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置225からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置221cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。図1に示すように、CPU221aは、読み出したプロセスレシピの内容に沿うように、I/Oポート221dおよび信号線Aを通じてAPCバルブ242の開度調整動作、バルブ243bの開閉動作、および真空ポンプ246の起動および停止を、信号線Bを通じてサセプタ昇降機構268の昇降動作を、信号線Cを通じてヒータ電力調整機構276による温度センサに基づくヒータ217bへの供給電力量調整動作(温度調整動作)およびインピーダンス可変機構275によるインピーダンス値調整動作を、信号線Dを通じてゲートバルブ244の開閉動作を、信号線Eを通じてRFセンサ272、周波数整合器274および高周波電源273の動作を、信号線Fを通じてMFC252a~252cによる各種ガスの流量調整動作およびバルブ253a~253c,243aの開閉動作を、それぞれ制御するように構成されている。
【0034】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置100を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、ウエハ200の表面に不純物の一例であるBをドーピングしてB含有層を形成し、ドーピング処理後のB含有層の表面にキャップ層としての酸化層を形成する基板処理シーケンス例について説明する。以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作はコントローラ221により制御される。
【0035】
本態様の基板処理シーケンスでは、
基板を収容する処理室201内に、不純物含有ガスとしてのB含有ガスと、希釈ガスとしてのH含有ガスを供給するガス供給工程と、
B含有ガスとH含有ガスの混合ガスをプラズマ励起する工程と、
プラズマ励起により生成される不純物としてのBを含む活性種をウエハ200に供給する工程と、
を行うことでウエハ表面に不純物含有層としてのB含有層を形成し、
ガス供給工程では、処理室201内におけるB含有ガスの分圧が、処理室201内においてB含有ガスが重合体(多量体)を含む堆積物を形成する分圧よりも小さい所定の分圧となるように、B含有ガスとH含有ガスの流量比を制御する。
【0036】
そして、本態様の基板処理シーケンスでは、
ウエハ表面に不純物含有層としてのB含有層を形成した後に、
O含有ガスをプラズマ励起する工程と、
プラズマ励起により生成される酸素(O)を含む活性種をウエハ表面に供給する工程と、を行うことでB含有層の表面に酸化層を形成する。
【0037】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0038】
(ウエハ搬入)
サセプタ217を所定の搬送位置まで降下させた状態で、ゲートバルブ244を開き、処理対象のウエハ200を、図示しない搬送ロボットにより処理容器203内へ搬入する。処理容器203内へ搬入されたウエハ200は、サセプタ217の基板載置面217dから上方へ突出した3本の支持ピン266上に水平姿勢で支持される。処理容器203内へのウエハ200の搬入が完了した後、処理容器203内から搬送ロボットのアーム部を退去させ、ゲートバルブ244を閉じる。その後、サセプタ217を所定の処理位置まで上昇させ、処理対象のウエハ200を、支持ピン266上からサセプタ217上へと移載させる。
【0039】
処理対象のウエハ200の表面には、アスペクト比が20以上の高アスペクト比を有する構造が形成されており、この高アスペクト比構造の内面を含むウエハ200の表面には、改質対象の膜であるSi含有膜としてのシリコン(Si)膜が予め形成されている。高アスペクト比構造とは、例えばトレンチ等の溝構造や、ピラーホール等の筒状構造などを含む。以下において、ウエハ表面とは、ウエハ200上に形成された高アスペクト比構造の内側面や底面等の面を含む。
【0040】
(圧力調整、温度調整)
続いて、処理容器203内が所望の処理圧力となるように、真空ポンプ246によって真空排気される。処理容器203内の圧力は圧力センサで測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ242がフィードバック制御される。また、ウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ217bによって加熱される。処理容器203内が所望の処理圧力となり、また、ウエハ200の温度が所望の処理温度に到達して安定したら、後述するドーピング処理を開始する。
【0041】
(ドーピング処理)
B含有ガスであるBガス及びH含有ガスであるHガスを処理容器203内へ供給してプラズマ励起させ、Bを含む活性種とHの活性種を生成する。具体的には、バルブ253a,253bを開き、MFC252a、252bにより流量調整しながら、ガス導入口234、バッファ室237、ガス吹出口239を介して処理室201内へB含有ガス、H含有ガスを混合させつつ供給する。このとき、共振コイル212に対して、高周波電源273から高周波電力を供給する。これにより、プラズマ生成空間201a内における共振コイル212の電気的中点に相当する高さ位置に、平面視がドーナツ状である誘導プラズマが励起される。
【0042】
混合ガスに含まれるB含有ガスおよびH含有ガスは、誘導プラズマの励起等により活性化(励起)されて反応し、処理容器203内においてBを含む活性種が生成される。Bを含む活性種には、励起状態のB原子(B)、イオン化されたB原子、および、Bラジカルのうち、少なくともいずれかが含まれる。また、混合ガスに含まれるH含有ガスも、誘導プラズマの励起等により活性化され、処理容器203内においてHの活性種が生成される。Hの活性種には、励起状態のH原子(H)、イオン化されたH原子、および、Hラジカルのうち、少なくともいずれかが含まれる。
【0043】
そして、生成されたBを含む活性種が、Hの活性種とともにウエハ200に対して供給される。その結果、ウエハ200の表面に予め形成されているSi膜が改質される。このようにして、改質対象のSi膜中に不純物としてのBが注入されて、ウエハ200表面にB含有層が形成される。
【0044】
つまり、処理室201内に供給された不純物含有ガスであるB含有ガス及びH含有ガスをプラズマ励起し、プラズマ励起により生成された不純物であるBを含む活性種をウエハ200表面に供給してウエハ200表面に不純物含有層であるB含有層を形成する。
【0045】
本工程における処理条件としては、
ガス供給流量:1~100sccm、好ましくは2~10sccm
ガス供給流量:100~3000sccm、好ましくは1000~2000sccm
各ガス供給時間:1~300秒、好ましくは10~60秒
高周波電力:100~5000W、好ましくは500~3500W
処理温度:室温~900℃、好ましくは500~700℃
処理圧力:5~150Pa、より好ましくは30~150Pa
プラズマ生成空間から基板表面までの距離:10~150mm、好ましくは30~100mm
が例示される。
なお、本実施形態では、B含有ガス供給系から供給するB含有ガスとして、Hガスにより2%に希釈されたBガスを供給している。すなわち、上述した処理条件におけるBガス供給流量は、Hガスにより2%に希釈されたB含有ガスの供給流量を示している。
【0046】
特に処理圧力を30Pa以上とすることで、本処理条件下における処理容器203の内壁へのスッパッタリングの発生を抑制することができる。
なお、上述の「プラズマ生成空間から基板表面までの距離」とは、共振コイル212の下端位置からウエハ200の表面までの距離のことである。
また、本明細書における「1~100sccm」のような数値範囲の表記は、「1sccm以上100sccm以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0047】
ここで、処理室201内における混合ガス(B含有ガス、H含有ガス)の全圧に対するB含有ガスの分圧を、処理室201内においてB含有ガスが重合体(多量体)を含む堆積物を形成する分圧よりも小さい所定の分圧(すなわち、不純物であるBを含有する堆積物が堆積しない分圧以下の範囲内の所定の分圧)であって、例えば0.01Pa以下であって、好ましくは0.002Pa以下とする。具体的には、B含有ガス供給系(不純物含有ガス供給系)におけるMFC252a、及びH含有ガス供給系(希釈ガス供給系)におけるMFC252bをそれぞれ制御することで、処理室201内における混合ガスの全圧に対するB含有ガスの分圧を所定の分圧とするように調整する。このように、ドーピング処理における、処理室内の全圧に対するB含有ガスの分圧を、0.01Pa以下とすることにより、Bを含有する堆積物の生成が抑制され、0.002Pa以下とすることにより、さらにBを含有する堆積物の生成が抑制される。この分圧が0.01Paを超えると、基板表面に付着したBを含有する堆積物によって表面粗さ(ラフネス)が顕著に増大し、デバイス特性を低下させる可能性があり、また、この付着した堆積物が、ドーピング処理後の他の基板処理(例えば成膜処理等)において、処理の均一性を低下させるなどの悪影響を及ぼす可能性がある。
【0048】
なお、B含有ガスの分圧は、排気系を制御して、処理室201内のガスの全圧を調整することでも調整可能である。しかし、B含有ガスの分圧を下げるために処理室201内の全圧を下げる(例えば30Pa未満とする)場合、処理容器203の内壁へのスパッタリングが発生し易くなる。そのため、B含有ガスの分圧は、希釈ガスであるH含有ガスとの供給流量比を制御することにより調整することが望ましい。
【0049】
不純物であるBを含有する堆積物は、不純物含有ガスであるB含有ガスの重合体(多量体)を少なくとも含む。特にB含有ガスであるBは、デカボラン(B1014)等の重合体(多量体)を作りやすく、分圧(濃度)が高いほど重合体が生成されやすくなる。重合体が生成されると、重合体が膜表面に堆積して堆積物となる。また、重合体以外にも、不純物であるB単体が膜中にドーピングされずに膜表面に残留して堆積物となることもある。ドーピング処理における不純物含有ガスの全圧に対するB含有ガスの分圧を、上述したように0.01Pa以下とすることにより、Bを含有する重合体が生成されにくくなり、0.002Pa以下とすることにより、Bを含有する重合体がより生成されにくくなり、Bを含有する堆積物の生成が抑制される。ただし、B含有ガスの分圧が0.0001Pa未満とすると、膜表面へのBのドーピングが実質的に生じなくなる。B含有ガスの分圧を0.0001Pa以上とすることで膜表面へのBのドーピングを実用的な速度で行うことができる。
【0050】
そして、所定時間が経過し、ウエハ200中への所定量のBの注入が完了したら、高周波電源273による電力供給を停止すると共に、バルブ253a,253bを閉じて処理室201内へのB含有ガス及びH含有ガスの供給を停止する。
【0051】
また、プラズマ励起により生成されたBを含む活性種は、等方性を有し、ウエハ200表面に均一に供給され、アスペクト比が20以上の高アスペクト比構造のウエハ200の内面に対してコンフォーマルに不純物含有層であるB含有層を形成する。ここで、形成されるB含有層のステップカバレッジは70%以上、好ましくは80%以上である。
【0052】
ここで、ドーピング処理における不純物含有ガス(B含有ガス)及び希釈ガス(H含有ガス)をプラズマ励起する高周波電力の大きさ、不純物含有ガス及び希釈ガスの供給時間、又は不純物含有ガスの分圧の少なくともいずれかを調整することにより、ウエハ表面に形成されるB含有層のステップカバレッジを所定値以上となるように制御することができる。
【0053】
具体的には、ドーピング処理において、B含有ガス及びH含有ガスをプラズマ励起する高周波電力の大きさを小さくすることにより、B含有層のステップカバレッジを大きくするよう調整することができ、高周波電力の大きさを所定の電力値以下とすることにより、B含有層のステップカバレッジを所定値以上となるように調整することができる。
【0054】
また、ドーピング処理において、B含有ガス及びH含有ガスの供給時間を長くすることにより、B含有層のステップカバレッジを大きくするよう調整することができ、供給時間を所定の時間以上とすることにより、B含有層のステップカバレッジを所定値以上となるように調整することができる。
【0055】
(酸化処理)
次に、O含有ガスとしてのOガスを処理容器203内へ供給してプラズマ励起させ、Oの活性種を生成する。具体的には、バルブ253cを開き、MFC252cにより流量調整しながら、ガス導入口234、バッファ室237、ガス吹出口239を介して処理室201内へOガスを供給する。このとき、共振コイル212に対して、高周波電源273から高周波電力を供給する。これにより、プラズマ生成空間201a内における共振コイル212の電気的中点に相当する高さ位置に、平面視がドーナツ状である誘導プラズマが励起される。
【0056】
ガスは、誘導プラズマの励起等により活性化(励起)されて反応し、処理容器203内においてOを含む活性種が生成される。Oを含む活性種には、励起状態のO原子(O)、イオン化されたO原子、および、Oラジカルのうち、少なくともいずれかが含まれる。
【0057】
そして、生成されたOを含む活性種が、ウエハ200に対して供給される。その結果、上述したドーピング処理によってウエハ200の表面に形成されたB含有層の表面が酸化されて酸化層が形成される。
【0058】
つまり、ウエハ表面に、不純物含有層であるB含有層を形成した後に、処理室201内に供給されたO含有ガスであるOガスをプラズマ励起し、プラズマ励起により生成されたOを含む活性種をウエハ200表面に供給することにより不純物含有層であるB含有層の表面に酸化層(キャップ層)を形成する。これにより、不純物含有層であるB含有層から不純物であるBが脱離してしまうのが抑制され、B含有層中のB濃度を高く維持することができる。
【0059】
本工程における処理条件としては、
ガス供給流量:100~2000sccm
ガス供給時間:10~60秒、好ましくは10~30秒
高周波電力:100~5000W、好ましくは500~3500W
処理温度:室温~900℃、好ましくは500~700℃
処理圧力:5~100Pa、より好ましくは30~100Pa
プラズマ生成空間から基板表面までの距離:10~150mm、好ましくは30~100mm
が例示される。
【0060】
この酸化処理により、アスペクト比が20以上の高アスペクト比構造のウエハ200の内面に対してコンフォーマルに酸化層が形成される。ここで、形成される酸化層のステップカバレッジは70%以上、好ましくは80%以上である。特に本実施形態においては、ドーピング処理において高アスペクト比構造の内面にBを含む堆積物が付着するのが抑制されるため、堆積物の付着に起因する酸化層のステップカバレッジの低下(均一性の低下)を防止することができる。
【0061】
なお、この酸化処理によれば、Oを含む活性種をウエハ200表面に供給することで、さらにウエハ200表面に付着した堆積物を除去することもできる。すなわち、少量の堆積物がウエハ200表面に付着した場合であっても、この酸化処理を行うことで堆積物を除去することができる。ただし、この酸化処理によって堆積物の除去を行う場合、堆積物が除去されるまで酸化処理を行うため、堆積物が付着していない場合に比べて、酸化処理を行う時間を長くする必要がある。結果として酸化層が必要以上の厚さとなることがあり、また、酸化処理によってB含有層から不純物であるBの一部が脱離して、B濃度が低下することがある。したがって、この酸化処理を行う場合であっても、本実施形態のように、ウエハ200表面への堆積物の付着を抑制するようにドーピング処理を行うことが望ましい。
【0062】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
上述の酸化処理が完了した後、処理容器203内へのOガスの供給を停止するとともに、共振コイル212への高周波電力の供給を停止する。そして、パージガスとしてのNガスを処理容器203内へ供給し、排気管231より排気する。これにより、処理容器203内がパージされ、処理容器203内に残留するガスや反応副生成物が処理容器203内から除去される。その後、処理容器203内の雰囲気がNガスに置換され、処理容器203内の圧力が常圧に復帰される。
【0063】
(ウエハ搬出)
続いて、サセプタ217を所定の搬送位置まで下降させ、ウエハ200を、サセプタ217上から支持ピン266上へと移載させる。その後、ゲートバルブ244を開き、図示しない搬送ロボットを用い、処理後のウエハ200を処理容器203外へ搬出する。以上により、本態様に係る基板処理工程を終了する。
【0064】
(3)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
【0065】
(a)上述したドーピング処理を行うことにより、不純物(B)を含有する堆積物の生成、及びウエハ上への堆積物の付着が抑制される。このため、堆積物を除去する工程が不要若しくは除去する時間を短縮することができる。この結果、スループットを向上させることができる。また、ドーピング処理後にOプラズマ処理(酸化処理)を行う場合にも、堆積物の除去が不要、若しくは除去する時間を短縮することができるので、Oプラズマ処理の時間の短縮が可能となり、酸化層の厚さの増大を抑制し、また、不純物含有層中の不純物濃度を高く維持することができる。
【0066】
(b)処理容器203内での堆積物の付着が抑制され、処理容器203内や処理容器203内の基材のメンテナンスの頻度を少なくすることができる。
【0067】
(c)上述したドーピング処理における高周波電力の大きさ又は不純物含有ガスの供給時間、不純物含有ガスの分圧の少なくともいずれかを調整することにより、高アスペクト比構造における不純物含有層のステップカバレッジを所定値以上となるように制御することが可能となる。
【0068】
(d)上述したドーピング処理の後に、酸化処理を行うことにより、不純物含有層上に形成されたキャップ層(酸化層)のステップカバレッジを向上させることが可能となる。すなわち、ドーピング処理における堆積物の生成を抑制することにより、ドーピング処理後の酸化処理において、堆積物によるステップカバレッジの低下やキャップ層の増大を抑制することができる。さらに、キャップ層の増大を抑制することで、結果として不純物濃度を高く維持することが可能となる。
【0069】
(e)また、上述したドーピング処理の後に、酸化処理を行うことにより、少量の堆積物が堆積した場合であっても、堆積した堆積物を除去することができる。
【0070】
(f)上述の効果は、B含有ガス以外の、処理室内で重合体を含む堆積物を形成する不純物含有ガスを用いる場合や、Oガス以外のO含有ガスを用いる場合にも、同様に得られる。
【0071】
なお、上記実施形態のドーピング処理においては、B含有ガスとしてBガスを用いる場合を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、不純物含有ガスとしてBガスの他、例えば、三塩化ホウ素(BCl)ガス、三フッ化ホウ素(BF)ガスの少なくともいずれか一つを含むガスを用いることができる。この場合であっても、上述の基板処理シーケンスと同様の効果が得られる。
【0072】
また、上記実施形態では、不純物としてBをドーピングする場合を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、不純物としてBの他、例えばヒ素(As)、リン(P)、ガリウム(Ga)の少なくともいずれか一つを用いることができる。この場合であっても、上述の基板処理シーケンスと同様の効果が得られる。
【0073】
また、上記実施形態では、希釈ガスとしてH含有ガスを用いる場合を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)等の希ガスを用いることができる。この場合であっても、上述の基板処理シーケンスと同様の効果が得られる。
【0074】
また、上記実施形態の酸化処理においては、O含有ガスとしてOガスを用いる場合を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、O含有ガスとしてOガスの他、例えば、オゾン(O)ガス、水蒸気(HOガス)、一酸化窒素(NO)ガス等を用いることができる。この場合であっても、上述の基板処理シーケンスと同様の効果が得られる。
【0075】
また、上記実施形態では、改質対象として、Si膜が表面に形成されたウエハを用いる場合を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではなく、改質対象としてSi膜の他、シリコン酸化(SiO)膜、シリコン窒化(SiN)膜、シリコン酸窒化(SiON)膜等の他のSi含有膜や、Si基板により構成されるSi含有下地や、Si以外の元素を含む他の膜であって、金属元素を含む膜であってもよい。また、改質対象としてのSi膜は、アモルファスシリコン(a-Si)、単結晶シリコン(c-Si)、多結晶シリコン(Poly-Si)等により構成される膜であってもよい。また、改質対象は、Si膜とその上面に形成されたSiO膜のように、複数の膜(層)が積層されたものであってもよい。これらの場合においても、上述の基板処理シーケンスと同様の効果が得られる。
【0076】
<他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。但し、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【実施例1】
【0077】
表面にSi膜が形成されたウエハであるサンプル1~サンプル7を用意し、サンプル1~サンプル7に対して、それぞれ図4に示す条件でドーピング処理を行って、ドーピング処理後のウエハ表面の撥水性と、Bドーズ量の深さ方向の分布を評価した。なお、これらのサンプルの表面には、自然酸化膜としてのSiO層が形成されている。
【0078】
サンプル1に対して、処理温度を700℃、高周波電力を3500W、処理圧力(全圧)を100Pa、B含有ガスとしてのBガスの分圧を0.002Pa、BガスとHガスの供給時間を30秒とし、上述したドーピング処理を行った。ここでは、Hガスにより2%に希釈されたBガス(2%Bガス)の供給流量を2sccm、Hガスの供給流量を1998sccmとし、処理室中に供給されるBガスとHガスの流量比を1:50000とすることにより、B含有ガスの分圧を0.002Paとした。
【0079】
サンプル2に対して、高周波電力を2000Wとしてドーピング処理を行った。他の処理条件は、上述のサンプル1における処理条件と共通の条件とした。
【0080】
サンプル3に対して、高周波電力を500Wとしてドーピング処理を行った。他の処理条件は、上述のサンプル1における処理条件と共通の条件とした。
【0081】
サンプル4に対して、B含有ガスとH含有ガスの供給時間を60秒としてドーピング処理を行った。他の処理条件は、上述のサンプル1における処理条件と共通の条件とした。
【0082】
サンプル5に対して、B含有ガスの分圧を0.01Paとし、上述したドーピング処理を行った。ここでは、2%Bガスの供給流量を10sccm、Hガスの供給流量を1990sccmとし、処理室中に供給されるBガスとHガスの流量比を1:10000とすることにより、B含有ガスの分圧を0.01Paとした。他の処理条件は、上述のサンプル1における処理条件と共通の条件とした。
【0083】
サンプル6に対して、B含有ガスの分圧を0.05Paとし、上述したドーピング処理を行った。ここでは、2%Bガスの供給流量を50sccm、Hガスの供給流量を1950sccmとし、処理室中に供給されるBガスとHガスの流量比を1:2000とすることにより、B含有ガスの分圧を0.05aとした。他の処理条件は、上述のサンプル1における処理条件と共通の条件とした。
【0084】
サンプル7に対して、B含有ガスの分圧を0.1Paとし、上述したドーピング処理を行った。ここでは、2%Bガスの供給流量を100sccm、Hガスの供給流量を1900sccmとし、処理室中に供給されるBガスとHガスの流量比を1:1000とすることにより、B含有ガスの分圧を0.01Paとした。他の処理条件は、上述のサンプル1における処理条件と共通の条件とした。
【0085】
そして、ドーピング処理後のサンプル1~サンプル7を、それぞれ1%のフッ化水素(HF)水溶液を用いて30秒洗浄した後の表面状態を比較した。図5(A)に示すように表面状態が親水性を示した場合には、撥水性を「無し」とし、図5(B)に示すように表面状態が撥水性を示した場合には、撥水性を「有り」とした。なお、表面に堆積物が無い場合には、HFで自然酸化膜を除去した後も撥水性を示し、表面に堆積物が有る場合には、HFで自然酸化膜を除去した後も撥水性を示さずに親水性を示すこととなる。
【0086】
図4に示されているように、サンプル1~サンプル4のB含有ガスの分圧を0.002Paにした場合と、サンプル5のB含有ガスの分圧を0.01にした場合には撥水性が示され、表面への堆積物の付着が十分に抑制されたことが確認された。サンプル6のB含有ガスの分圧を0.05Paにした場合と、サンプル7のB含有ガスの分圧を0.1Paにした場合には、撥水性が示されず、表面に堆積物があることが確認された。
【0087】
すなわち、ドーピング処理におけるB含有ガスの分圧を0.01Pa以下、好ましくは0.002Pa以下とすることにより、堆積物の生成が抑制され、ウエハ上に堆積物が付着することを抑制できることが確認された。
【0088】
次に、二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry、略称:SIMS)を用いて、サンプル1~サンプル7にそれぞれ形成されたB含有層中に含まれるBの深さ方向の濃度(atom/cm)の分布を分析した。
【0089】
図6(A)は、サンプル1~サンプル3にそれぞれ形成されたB含有層中に含まれるBの、ウエハ表面からの深さ方向におけるSIMS分析結果を示す。
【0090】
図6(A)に示すように、深さ5nmにおいて、サンプル1の3500Wの高周波電力を供給して形成されたB含有層は、サンプル2の2000Wの高周波電力を供給して形成されたB含有層と比較してドーズ量が増加し、サンプル2の2000Wの高周波電力を供給して形成されたB含有層は、サンプル3の500Wの高周波電力を供給して形成されたB含有層と比較してドーズ量が増加した。すなわち、ドーズ量は、高周波電力の大きさに依存し、高周波電力の大きさによってドーズ量が制御されることが確認された。
【0091】
図6(B)は、サンプル1とサンプル4にそれぞれ形成されたB含有層中に含まれるBの、ウエハ表面からの深さ方向におけるSIMS分析結果を示す。
【0092】
図6(B)に示すように、深さ5nmにおいて、サンプル4のB含有ガスとH含有ガスの混合ガスを60秒供給して形成されたB含有層は、サンプル1のB含有ガスとH含有ガスの混合ガスを30秒供給して形成されたB含有層と比較してドーズ量が増加した。すなわち、ドーズ量は、B含有ガスとH含有ガスの混合ガスの供給時間に依存し、B含有ガスとH含有ガスの混合ガスの供給時間によってドーズ量が制御されることが確認された。
【0093】
図6(C)は、サンプル1、サンプル5~サンプル7にそれぞれ形成されたB含有層中に含まれるBの、ウエハ表面からの深さ方向におけるSIMS分析結果を示す。
【0094】
図6(C)に示すように、深さ5nmにおいて、サンプル1のB含有ガスの分圧を0.002Paにして形成されたB含有層は、サンプル5のB含有ガスの分圧を0.01Paにして形成されたB含有層と比較してドーズ量が増加した。また、サンプル6のB含有ガスの分圧を0.05Paにして形成されたB含有層は、サンプル1のB含有ガスの分圧を0.002Paにして形成されたB含有層と比較してドーズ量が増加した。また、サンプル7のB含有ガスの分圧を0.1Paにして形成されたB含有層は、サンプル6のB含有ガスの分圧を0.05Paにして形成されたB含有層と比較してドーズ量が増加した。すなわち、ドーズ量は、B含有ガスの分圧に依存し、B含有ガスの分圧によってドーズ量が制御されることが確認された。
【0095】
次に、約3.5nmの深さを有する溝状構造が形成され、表面にSi膜が形成されたウエハであるサンプル1´~サンプル7´を用意し、サンプル1´~サンプル7´に対して、上述したサンプル1~サンプル7と同様に、それぞれ図4に示す条件でドーピング処理を行って、溝状構造の内面におけるB含有層のステップカバレッジ(層厚均一性)を評価した。
【0096】
ステップカバレッジは、ウエハ表面から深さ方向に0.25nm付近のB濃度(atom/cm)をCtopとし、3.5nm付近のB濃度をCbtmとしたときに、100×Cbtm/Ctopで算出した。
【0097】
図7(A)は、サンプル1´~サンプル3´にそれぞれ形成されたB含有層中に含まれるBの、ウエハ表面からの深さ方向におけるSIMS分析結果を示す。
【0098】
サンプル1´の3500Wの高周波電力を供給して形成されたB含有層のステップカバレッジは26%だった。サンプル2´の2000Wの高周波電力を供給して形成されたB含有層のステップカバレッジは73%だった。サンプル3´の500Wの高周波電力を供給して形成されたB含有層のステップカバレッジは81%だった。すなわち、ドーピング処理における高周波電力の大きさを低くすることによりステップカバレッジが改善されることが確認された。すなわち、ステップカバレッジは、高周波電力の大きさに依存し、高周波電力によって制御されることが確認された。
【0099】
図7(B)は、サンプル1´、サンプル4´にそれぞれ形成されたB含有層中に含まれるBの、ウエハ表面からの深さ方向におけるSIMS分析結果を示す。
【0100】
サンプル1´のB含有ガスとH含有ガスの混合ガスを30秒供給して形成されたB含有層のステップカバレッジは26%だった。サンプル4´のB含有ガスとH含有ガスの混合ガスを60秒供給して形成されたB含有層のステップカバレッジは53%だった。すなわち、ドーピング処理におけるB含有ガスとH含有ガスの混合ガスの供給時間を長くすることによりステップカバレッジが改善されることが確認された。すなわち、ステップカバレッジは、B含有ガスとH含有ガスの混合ガスの供給時間に依存し、B含有ガスとH含有ガスの混合ガスの供給時間によって制御されることが確認された。
【0101】
図7(C)は、サンプル1´、サンプル5´~サンプル7´にそれぞれ形成されたB含有層中に含まれるBの、ウエハ表面からの深さ方向におけるSIMS分析結果を示す。
【0102】
サンプル1´のB含有ガスの分圧を0.002Paにして形成されたB含有層のステップカバレッジは26%だった。サンプル5´のB含有ガスの分圧を0.01Paにして形成されたB含有層のステップカバレッジは49%だった。サンプル6´のB含有ガスの分圧を0.05Paにして形成されたB含有層のステップカバレッジは87%だった。サンプル7のB含有ガスの分圧を0.1Paにして形成されたB含有層のステップカバレッジは63%だった。すなわち、ステップカバレッジは、B含有ガスの分圧に依存し、B含有ガスの分圧によって制御されることが確認された。
【0103】
すなわち、不純物としてのBが注入されたB含有層のドーズ量もステップカバレッジも、ドーピング処理における高周波電力の電力値、B含有ガスとH含有ガスの混合ガスの供給時間及びB含有ガスの分圧に依存し、ドーピング処理における高周波電力の電力値、B含有ガスとH含有ガスの供給時間及びB含有ガスの分圧によって制御されることが確認された。
【0104】
<本開示の好ましい態様>
以下、好ましい態様について付記する。
【0105】
(付記1)
本開示の一態様によれば、
基板を収容する処理室内に、不純物を含有する不純物含有ガスと希釈ガスを供給するガス供給工程と、
前記不純物含有ガス及び前記希釈ガスをプラズマ励起する工程と、
プラズマ励起により生成される前記不純物を含む活性種を前記基板に供給する工程と、
を行うことで前記基板の表面に不純物含有層を形成し、
前記ガス供給工程では、前記処理室内における前記不純物含有ガスの分圧が、前記処理室内において前記不純物含有ガスが重合体(多量体)を含む堆積物を形成する分圧よりも小さい所定の分圧となるように、前記不純物含有ガスと前記希釈ガスの流量比を制御する
半導体装置の製造方法が提供される。
【0106】
(付記2)
付記1に記載の方法であって、好ましくは、
前記所定の分圧は、0.01Pa以下である。
【0107】
(付記3)
付記2に記載の方法であって、好ましくは、
前記所定の分圧は0.002Pa以下である。
【0108】
(付記4)
付記1~3のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記基板面上には高アスペクト比を有する構造が形成されており、
前記高アスペクト比を有する構造の内面に対してコンフォーマルに前記不純物含有層を形成する。
【0109】
(付記5)
付記4に記載の方法であって、好ましくは、
前記高アスペクト比を有する構造の内面に形成される前記不純物含有層のステップカバレッジは70%以上、好ましくは80%以上である。
【0110】
(付記6)
付記1~5のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記希釈ガスは、水素(H)又は希ガスの少なくともいずれか一つを含む。
【0111】
(付記7)
付記1~6のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記不純物は、ホウ素(B)、ヒ素(As)、リン(P)、ガリウム(Ga)の少なくともいずれか一つである。
【0112】
(付記8)
付記7に記載の方法であって、好ましくは、
前記不純物含有ガスは、ジボラン(B)、三塩化ホウ素(BCl)、三フッ化ホウ素(BF)の少なくともいずれか一つを含む。
【0113】
(付記9)
付記1~8のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記不純物含有ガスはジボラン(B)ガスであり、前記希釈ガスは水素(H)ガスである。
【0114】
(付記10)
付記1~9のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記基板の表面はSi含有膜又はSi含有下地により構成されている。
【0115】
(付記11)
付記10に記載の方法であって、好ましくは、
前記基板の表面はSi(a-Si、c-Si、Poly-Si)、又はSi酸化膜の少なくともいずれかにより構成されている。
【0116】
(付記12)
付記1~11のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記プラズマ励起する工程では、プラズマ励起する高周波電力(RF電力)の大きさを調整することにより、前記基板の表面に形成される前記不純物含有層のステップカバレッジを(所定値以上となるように)制御する。
【0117】
(付記13)
付記12に記載の方法であって、好ましくは、
前記高周波電力の大きさを小さくすることにより、前記不純物含有層のステップカバレッジを大きくするよう調整する。
【0118】
(付記14)
付記1~13のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記ガス供給工程では、前記不純物含有ガスの供給時間を調整することにより、前記基板の表面に形成される前記不純物含有層のステップカバレッジを(所定値以上となるように)制御する。
【0119】
(付記15)
付記14に記載の方法であって、好ましくは、
前記不純物含有ガスの供給時間を長くすることにより、前記不純物含有層のステップカバレッジを大きくするよう調整する。
【0120】
(付記16)
付記1~15のいずれかに記載の方法であって、好ましくは、
前記基板の表面に前記不純物含有層を形成した後に、
酸素含有ガスをプラズマ励起する工程と、
プラズマ励起により生成される酸素を含む活性種を前記基板の表面に供給する工程と、
を行うことで前記不純物含有層の表面に酸化層(キャップ層)を形成する。
【0121】
(付記17)
付記16に記載の方法であって、好ましくは、
前記基板面上には高アスペクト比を有する構造が形成されており、
前記高アスペクト比を有する構造の内面に対してコンフォーマルに前記酸化層を形成する。
【0122】
(付記18)
付記17に記載の方法であって、好ましくは、
前記高アスペクト比を有する構造の内面に形成される前記酸化層のステップカバレッジは70%以上、好ましくは80%以上である。
【0123】
(付記19)
付記17又は付記18に記載の方法であって、好ましくは、
前記酸化層を形成する工程では、さらに前記基板の表面に付着した堆積物を除去する。
【0124】
(付記20)
本開示の他の態様によれば、
基板を収容する処理室と、
前記処理室内へ不純物を含有する不純物含有ガスと希釈ガスを供給するガス供給系と、
前記処理室内を排気する排気系と、
前記処理室内へ供給された前記不純物含有ガス及び前記希釈ガスをプラズマ励起するプラズマ生成部と、
前記ガス供給系、前記排気系及び前記プラズマ生成部を制御して、付記1における各処理(各工程)を行うよう制御することが可能なように構成された制御部と、
を備える基板処理装置が提供される。
【0125】
(付記21)
本開示のさらに他の態様によれば、
付記1における各手順(各工程)をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム、又は当該プログラムを記録するコンピュータにより読み取り可能な記録媒体が提供される。
【符号の説明】
【0126】
200 ウエハ(基板)
203 処理容器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7