IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社アルバックの特許一覧

<>
  • 特許-成膜装置および成膜方法 図1
  • 特許-成膜装置および成膜方法 図2
  • 特許-成膜装置および成膜方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】成膜装置および成膜方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/00 20060101AFI20220804BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
C23C14/00 B
H01L21/31 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020559732
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2019035460
(87)【国際公開番号】W WO2020115980
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2020-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2018226772
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】特許業務法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【弁理士】
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】矢島 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】中村 文生
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕子
(72)【発明者】
【氏名】植 喜信
(72)【発明者】
【氏名】小倉 祥吾
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-064187(JP,A)
【文献】特表2015-529395(JP,A)
【文献】特開2008-088483(JP,A)
【文献】特開2012-162806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00 -14/58
C23C 16/00 -16/56
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/469
H01L 21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜室を有するチャンバ本体と、前記チャンバ本体に取り付けられた天板とを有し、前記天板は、窓部と、前記窓部を支持し第1の加熱源を含む枠部とを有するチャンバと、
前記成膜室に配置され、基板を支持する支持面を有するステージと、
前記天板に設置され、前記窓部を介してエネルギ線を前記支持面に照射する照射源を有する光源ユニットと、
前記天板に対向して配置され前記エネルギ線を透過させる材料で構成され、成膜室に対向した面に第2の加熱源が取り付けられたシャワープレートと、前記天板と前記シャワープレートとの間に形成され、前記エネルギ線の照射を受けて硬化するエネルギ線硬化樹脂を含む原料ガスが導入される空間部とを有し、原料ガスを前記空間部から前記シャワープレートを通して前記成膜室に供給するガス供給部と、
前記チャンバに接続され、前記窓部堆積した前記エネルギ線硬化樹脂を除去するクリーニングガスを前記原料ガスとは異なる配管から前記空間部へ導入するクリーニングユニットと
を具備し、
前記第1の加熱源は、前記枠部を前記エネルギ線硬化樹脂の気化温度以上に加熱し、
前記第2の加熱源は、前記シャワープレートを前記エネルギ線硬化樹脂の気化温度以上に加熱し、
前記クリーニングユニットは、前記クリーニングガスとして酸素プラズマを発生させるプラズマ発生器を含み、
前記プラズマ発生器は、前記ガス供給部の一辺に沿って配置される複数の第1プラズマ発生器と、前記一辺に隣接する他の二辺にそれぞれ配置される複数の第2プラズマ発生器とを含み、
前記第1プラズマ発生器は、互いに隣接して配置され、
前記第2プラズマ発生器は、互いにオフセットして配置される
成膜装置。
【請求項2】
請求項に記載の成膜装置であって、
前記照射源は、紫外線ランプである
成膜装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の成膜装置を用いた成膜方法であって、
前記ガス供給部から前記支持面に支持された基板上に前記原料ガスを供給することで、前記基板上にエネルギ線硬化樹脂を堆積させ、
前記照射源から前記窓部を介してエネルギ線を照射することで、前記エネルギ線硬化樹脂の硬化物層を形成し、
前記窓部堆積したエネルギ線硬化樹脂を前記クリーニングガスで除去する
成膜方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギ線硬化樹脂からなる樹脂層を形成する成膜装置および成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線硬化樹脂等のエネルギ線硬化樹脂を硬化して樹脂層を基板上に形成する際、典型的には、以下の2工程が行われる。すなわち、冷却ステージによって基板を支持し、当該樹脂を含む原料ガスを冷却ステージに支持された基板上に供給する工程と、基板上に紫外線等の光を照射し、基板上に硬化した樹脂層を形成する工程とである。
【0003】
特に最近では、このような複数の工程をそれぞれ別の真空チャンバで行うことはせず、基板上に原料ガス供給する工程と、紫外線等によって基板上に硬化した樹脂層を形成する工程とを1つの真空チャンバ内で行う成膜装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-064187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の成膜装置においては、チャンバの天板に紫外線を透過する窓部が設けられており、当該窓部を介して成膜室へ紫外線を照射することで、ステージ上の基板に堆積した紫外線硬化樹脂の硬化物層が形成される。一方、成膜処理の繰り返しに伴い、天板に付着する樹脂の量が増すことで、窓部を透過する紫外線の光量が低下し、ステージ上の基板に十分な量の紫外線を照射することができなくなる。このため、チャンバを大気に開放して天板を洗浄し、あるいは交換する作業が頻繁化し、生産性の向上を図ることが困難であった。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、生産性の向上を図ることができる成膜装置および成膜方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る成膜装置は、チャンバと、ステージと、光源ユニットと、ガス供給部と、クリーニングユニットとを具備する。
前記チャンバは、成膜室を有するチャンバ本体と、窓部を有し前記チャンバ本体に取り付けられた天板とを有する。
前記ステージは、前記成膜室に配置され、基板を支持する支持面を有する。
前記光源ユニットは、前記天板に設置され、前記窓部を介してエネルギ線を前記支持面に照射する照射源を有する。
前記ガス供給部は、前記エネルギ線の照射を受けて硬化するエネルギ線硬化樹脂を含む原料ガスを前記成膜室に供給する。
前記クリーニングユニットは、前記チャンバに接続され、前記天板に付着した前記エネルギ線硬化樹脂を除去するクリーニングガスを前記成膜室へ導入する。
【0008】
上記成膜装置は、天板に付着したエネルギ線硬化樹脂を除去するクリーニングユニットを備えているため、チャンバを大気に開放することなく天板のクリーニングを行うことが可能となり、これにより生産性の向上を図ることができる。
【0009】
前記クリーニングユニットは、前記クリーニングガスとして酸素プラズマを発生させるプラズマ発生器を含んでもよい。
【0010】
前記ガス供給部は、前記天板に対向して配置され前記エネルギ線を透過させる材料で構成されたシャワープレートと、前記天板と前記シャワープレートとの間に形成され前記原料ガスが導入される空間部とを有してもよい。この場合、前記クリーニングユニットは、前記クリーニングガスを前記空間部へ導入する。これにより、天板だけでなく、シャワープレートのクリーニングも行うことができる。
【0011】
前記クリーニングユニットは、前記クリーニングガスとして酸素プラズマを発生させるプラズマ発生器を含んでもよい。
【0012】
前記プラズマ発生器は、前記ガス供給部の周囲の複数個所に設けられてもよい。
【0013】
前記ステージは、前記支持面を冷却可能な冷却源を有してもよい。
【0014】
前記天板は、前記窓部を支持する枠部と、前記枠部を加熱する加熱源をさらに有してもよい。
【0015】
前記照射源は、紫外線ランプであってもよい。
【0016】
本発明の一形態に係る成膜方法は、前記ガス供給部から前記支持面に支持された基板上に原料ガスを供給することで、前記基板上にエネルギ線硬化樹脂を堆積させることを含む。
前記照射源から前記窓部を介してエネルギ線を照射することで、前記エネルギ線硬化樹脂の硬化物層が形成される。
前記天板に付着したエネルギ線硬化樹脂がクリーニングガスで除去される。
【発明の効果】
【0017】
以上述べたように、本発明によれば、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る成膜装置を示す概略断面図である。
図2】上記成膜装置におけるプラズマ発生器の配置例を示すガス供給部の概略平面図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る成膜装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る成膜装置100を示す概略断面図である。図においてX軸方向及びY軸方向は互いに直交する水平方向を示し、Z軸方向はX軸方向及びY軸方向に直交する方向を示している。
【0021】
成膜装置100は、基板上に、エネルギ線硬化樹脂である紫外線硬化樹脂からなる層を形成するための成膜装置として構成されている。成膜装置100は、紫外線硬化樹脂を含む原料ガスを基板W上に供給した後、基板W上に紫外線を照射して紫外線硬化樹脂層を形成するための装置である。
【0022】
[成膜装置]
成膜装置100は、チャンバ10を備える。チャンバ10は、チャンバ本体11と、チャンバ本体11の開口部11aを気密に閉塞する天板12とを有する。
成膜装置100は、ステージ15と、光源ユニット20と、ガス供給部30と、クリーニングユニット40とをさらに備える。
【0023】
(チャンバ)
チャンバ本体11は、上部が開口する金属製の直方体形状の真空容器であり、内部に成膜室13を有する。成膜室13は、チャンバ本体11の底部に接続された真空排気系19を介して所定の減圧雰囲気に排気または維持することが可能に構成される。
【0024】
天板12は、紫外線UVを透過させる窓部121と、窓部121を支持する枠部122とを有する。窓部121は、石英ガラス等の紫外線透過性材料で構成され、枠部122はアルミニウム合金等の金属材料で構成される。窓部121の数は特に限定されず、2つ以上であってもよいし、単数であってもよい。
【0025】
(ステージ)
ステージ15は、成膜室13に配置される。ステージ15は、基板Wを支持する支持面151aを有するステージ本体151を有する。
【0026】
ステージ15は、支持面151aを所定温度以下に冷却することが可能な冷却源153を有する。冷却源153は、例えば、ステージ本体151に内蔵された冷却水等の冷却媒体が循環する冷却ジャケットで構成される。冷却源153による支持面151aの冷却温度は、後述する原料ガス中の紫外線硬化樹脂を凝縮させるのに十分な適宜の温度に設定される。なお、上記所定温度以下に冷却された基板Wが成膜室13に搬送されるように構成されてもよい。
【0027】
基板Wは、ガラス基板であるが、半導体基板であってもよい。基板の形状や大きさは特に限定されず、矩形でもよいし円形でもよい。基板Wの成膜面には、あらかじめ素子が形成されていてもよい。この場合、基板Wに成膜される樹脂層は、上記素子の保護膜として機能する。
【0028】
(光源ユニット)
光源ユニット20は、カバー21と、照射源22とを有する。カバー21は、天板12の上に配置され、照射源22を収容する光源室23を有する。光源室23は、例えば、大気雰囲気である。照射源22は、ステージ15の支持面151aに向けて、天板12の窓部121を介してエネルギ線としての紫外線UVを照射する光源であり、典型的には、紫外線ランプで構成される。これに限られず、照射源22には、紫外線UVを発光する複数のLED(Light Emitting Diode)がマトリクス状に配列された光源モジュールが採用されてもよい。
【0029】
(ガス供給部)
ガス供給部30は、紫外線UVの照射を受けて硬化する樹脂(紫外線硬化樹脂)を含む原料ガスを成膜室13へ供給する。ガス供給部30は任意に構成可能であり、本実施形態ではシャワープレート31と、空間部32とを有する。
【0030】
シャワープレート31は、矩形の板形状を有し、面内に複数のガス供給孔311を有する。複数のガス供給孔311は、シャワープレート31を厚み方向に貫通し、空間部32と成膜室13とを相互に連通させる。シャワープレート31は、石英ガラス等の紫外線透過性材料で構成される。シャワープレート31は、適宜の固定部材を介してチャンバ本体11の内壁面に固定される。
【0031】
空間部32は、天板12とシャワープレート31との間に形成される。空間部32には、原料ガス生成部101を介して上記原料ガスが導入される。
【0032】
紫外線硬化樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂を用いることができる。また、上記樹脂には重合開始剤等を添加して用いることも可能である。このような樹脂を含む原料ガスは、チャンバ10の外部に設置される原料ガス生成部101によって生成される。原料ガス生成部101は配管130を介して、ガス供給部30の空間部32へ上記樹脂を含む原料ガスを導入する。
【0033】
原料ガス生成部101は、樹脂材料供給ライン110と、気化器120と、配管130とを有する。
【0034】
樹脂材料供給ライン110は、液状の樹脂材料が充填されたタンク111と、タンク111から樹脂材料を気化器120へ搬送する配管112とを有する。タンク111から気化器120への樹脂材料の搬送には、例えば窒素などの不活性ガスからなるキャリアガスが用いられる。また、配管112には、バルブV1や、図示しない液体流量制御器等を取り付けることも可能である。
【0035】
気化器120で生成された原料ガスは、配管130を介してガス供給部30の空間部32へ供給される。配管130にはバルブV2が取り付けられており、空間部32へのガスの流入が調節可能である。さらに図示しない流量制御器を取り付けることによって、空間部32へ流入するガスの流量を制御することも可能である。
【0036】
ガス供給部30はさらに、天板12の枠部122を加熱する第1の加熱源341と、シャワープレート31を加熱する第2の加熱源342とを有する。
【0037】
第1の加熱源341は、天板12の枠部122に内蔵された温水通路で構成される。第2の加熱源342は、シャワープレート31の表面に固定されたヒータで構成される。第2の加熱源342は、図示するようにシャワープレート31の成膜室13に対向する面に取り付けられてもよいし、空間部32に対向する面に取り付けられてもよい。
【0038】
第1の加熱源341および第2の加熱源342は、空間部32に導入された原料ガスに含まれる樹脂材料が空間部32の内壁に付着するのを防止するためのものであり、当該樹脂材料の気化温度以上の適宜の温度にガス供給部30を加熱することが可能に構成される。なお、ガス供給部30に近接するチャンバ10の上部(開口部11a)にも、第3の加熱源343として例えばカートリッジヒータや温水通路が設けられてもよい。
【0039】
上述のようにガス供給部30は、第1の加熱源341、第2の加熱源342および第3の加熱源343により、原料ガス中の樹脂材料の気化温度以上に維持される。ところが、例えば天板12の窓部121など、伝熱効率が比較的低い領域は十分な温度に加熱されず、樹脂成分が凝縮、付着することがある。そして、成膜時間(基板の処理枚数)の増大に従い、空間部32の内面に樹脂が付着する領域やその厚みが増すことで、ガス供給部30を透過する紫外線の光量が低下し、ステージ15上の基板Wに十分な量の紫外線を照射することができない場合がある。
そこで本実施形態では、天板12、シャワープレート31、チャンバ本体11の開口部11a等に付着した原料ガス中の樹脂成分を除去するためのクリーニングユニット40を備える。
【0040】
(クリーニングユニット)
クリーニングユニット40は、チャンバ10に接続され、空間部32にクリーニングガスを導入する。本実施形態においてクリーニングユニット40は、クリーニングガスとして酸素プラズマを発生させるプラズマ発生器41を含む。
【0041】
プラズマ発生器41は、ICPプラズマ装置、ECRプラズマ装置、ヘリコン波プラズマ発生装置など、酸素プラズマを生成することが可能な装置であれば特に限定されない。酸素プラズマの生成ガスには、例えば、酸素あるいは酸素とアルゴンの混合ガスが用いられる。生成された酸素プラズマ(酸素ラジカル)は、配管42を介してガス供給部30の空間部32に導入され、天板12、シャワープレート31、チャンバ本体11の開口部11a等に付着した樹脂を分解(灰化)、除去する。配管42にはバルブV3が取り付けられており、成膜中はバルブV3が閉じられることで、プラズマ発生器41内への原料ガスの侵入が阻止される。
【0042】
プラズマ発生器41は複数設置されるが、単数であってもよい。本実施形態においてプラズマ発生器41は、ガス供給部30の周囲の複数個所に設けられる。プラズマ発生器41の設置数や設置場所は特に限定されず、空間部32の大きさや形状に応じて、任意に設定することが可能である。
【0043】
図2は、プラズマ発生器41の配置例を示すガス供給部30の概略平面図である。同図に示すように、プラズマ発生器41は、ガス供給部30の一辺に沿って配置される一対の第1プラズマ発生器411と、当該一辺に隣接する他の2辺にそれぞれ配置される第2プラズマ発生器412とを含む。第1プラズマ発生器411は、互いに隣接して配置されることで空間部32のほぼ全領域に向けて酸素プラズマを照射する。一方、第2プラズマ発生器412は、互いにオフセットして配置されることで、第1プラズマ発生器41からの酸素プラズマの上流側および下流側に位置する空間部32内の領域に酸素プラズマを照射する。これにより、各々のプラズマ発生器41から照射される酸素プラズマの直進性が高い場合であっても、空間部32のすべての領域に十分な量の酸素プラズマを導入することができる。
【0044】
プラズマ発生器41がガス供給部30の外部に配置されることで、空間部32の内部で酸素プラズマを直接発生させる場合と比較して、装置構成の簡素化を図ることができる。また、プラズマ発生器41を複数備えることで、空間部32へ十分な量の酸素プラズマを供給することができる。
【0045】
成膜装置100は、制御部50をさらに備える。制御部50は、典型的には、コンピュータで構成され、成膜装置100の各部を制御する。
【0046】
[成膜方法]
続いて、以上のように構成される本実施形態の成膜装置100を用いた成膜方法について説明する。
【0047】
(成膜工程)
成膜工程では、紫外線硬化樹脂を含む原料ガスの供給工程と、紫外線樹脂層の硬化工程とを有する。
【0048】
成膜工程では、成膜室13は、真空排気系19によって所定の真空度に調圧されており、基板Wは、所定温度以下に冷却された支持面151aに配置されている。ガス供給部30は、第1~第3の加熱源341~343によって紫外線硬化樹脂の気化温度以上の温度に加熱されている。
【0049】
原料ガスの供給工程では、原料ガス生成部101で生成された紫外線硬化樹脂を含む原料ガスが、配管130を介してガス供給部30へ導入される。ガス供給部30に導入された原料ガスは、空間部32において拡散し、シャワープレート31の複数のガス供給孔311を介してステージ15上の基板Wの全面に供給される。基板Wの表面に供給された原料ガス中の紫外線硬化樹脂は、その凝縮温度以下の温度に冷却された基板Wの表面で凝縮し、堆積する。
【0050】
紫外線硬化樹脂の硬化工程では、原料ガスの供給が停止し、光源ユニット20の照射源22からステージ15の支持面151aに向けて紫外線UVが照射される。ガス供給部30は紫外線を透過させる材料で構成されているため、ガス供給部30を介して支持面151a上の基板Wに十分な量の紫外線UVが照射される。これにより、基板W上に紫外線硬化樹脂の硬化物層が形成される。
【0051】
硬化工程の完了後、基板Wは成膜室13から搬出され、新たに未成膜の基板Wが成膜室に搬入される。そして上述の各工程が同様に実施される。これにより、一台の成膜装置で、基板W上に所定厚みの紫外線硬化樹脂層を形成することができる。
【0052】
以上のような成膜処理を繰り返し実施することにより、ガス供給部30の空間部32には、原料ガス中の樹脂成分が徐々に堆積し、天板12の窓部121やシャワープレート31の紫外線透過率を低下させる場合がある。そこで本実施形態では、クリーニングユニット40を用いた空間部32のクリーニング処理が実施される。
【0053】
(クリーニング工程)
クリーニング工程は、原料ガスの供給が停止した状態で実施される。各プラズマ発生器41(411,412)において発生した酸素プラズマ(酸素ラジカル)は、配管42を介してガス供給部30の空間部32へ導入される。空間部32の内面(天板12、シャワープレート31、チャンバ本体11の開口部11a)に付着した紫外線硬化樹脂の炭素は、酸素ラジカルと結合してCOとして気化し、分解される。分解した紫外線硬化樹脂は、成膜室13を介して真空排気系19により排気される。
【0054】
このようなクリーニング処理が定期的に実施されることで、空間部32に堆積した紫外線硬化樹脂が除去され、あるいは、空間部32に堆積する紫外線硬化樹脂の量が低下する。特に、天板12の窓部121など加熱源により直接加熱されない部位における樹脂の堆積が効果的に抑えられるため、長時間にわたり安定した紫外線の透過量が維持される。これにより、成膜すべき基板の処理枚数が増加するため、生産性に優れた成膜装置を提供することができる。
【0055】
以上のように本実施形態によれば、天板12、シャワープレート31、チャンバ本体11の開口部11aに付着した紫外線硬化樹脂を除去することが可能なクリーニングユニットを備えているため、長期にわたりガス供給部30を透過する紫外線の光量を十分に確保することが可能となり、これにより生産性の向上を図ることができる。
【0056】
また本実施形態によれば、成膜室13の真空状態を支持した状態で天板12などのクリーニング処理を実施することができるため、成膜室13を大気に開放することなく、成膜処理の合間で上記クリーニング処理を実施することができる。さらに、樹脂など、傷付けやすい部品の除去作業をクリーニングガスのプラズマを利用したアッシング処理で行うため、樹脂の付着面を傷付けることなく樹脂を除去することができる。
【0057】
[他の実施形態]
以上の実施形態では、ガス供給部30をシャワープレート31で構成したが、これに限られない。例えば図3に示すように、ガス供給部30'として、天板12とステージ15との間に配置された複数のガス供給配管33が採用されてもよい。
【0058】
ガス供給配管33は、Y軸方向に延在し、X軸方向に等間隔で配列される。ガス供給配管33の周面部には、ステージ15上の基板Wに向けて原料ガスを吐出する複数のガス供給孔が設けられる。このような構成によっても、基板Wの表面全域に均一に原料ガスを供給し、さらには紫外線UVを照射することができる。
【0059】
この場合、プラズマ発生器41は、天板12とガス供給配管33との間にクリーニングガスとしての酸素プラズマを導入する。これにより、天板12、ガス供給配管33に付着した樹脂を除去することができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0061】
例えば以上の実施形態では、クリーニングユニットとして、ガス供給部30の空間部32へ酸素プラズマを導入可能なプラズマ発生器を用いたが、これに限られず、空間部32の内部で酸素プラズマを直接発生させることが可能なプラズマ源がクリーニングユニットとして備えられてもよい。
【0062】
また、クリーニングガスとして酸素プラズマが採用されたが、クリーニングガスの種類はエネルギ線硬化樹脂の種類によって適宜設定可能である。
【0063】
また以上の実施形態では、エネルギ線が紫外線の例を示したが、これに限られない。例えば13MHz、27MHz程度の高周波電源から発生される電磁波を用いることも可能である。この場合、照射源は発振器等とすることができる。また、エネルギ線を電子ビームとし、照射源を電子ビーム源とすることも可能である。
【0064】
さらに、以上の実施形態に係る成膜装置を、例えば複数のチャンバを有するインライン式あるいはクラスタ式の成膜装置の一部として用いることも可能である。このような装置を用いることで、発光素子のような複数の層を有する素子等を作製することがより容易になる。また、このような装置によって、低コスト化、省スペース化及びさらなる生産性の向上を実現することができる。
【符号の説明】
【0065】
10…チャンバ
11…チャンバ本体
12…天板
13…成膜室
15…ステージ
20…光源ユニット
22…照射源
30,30'…ガス供給部
31…シャワープレート
32…空間部
40…クリーニングユニット
41,411,412…プラズマ発生器
100…成膜装置
151a…支持面
121…窓部
122…枠部
311…ガス供給孔
341…第1の加熱源
図1
図2
図3