(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-03
(45)【発行日】2022-08-12
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法およびヒータユニット
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20220804BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20220804BHJP
C23C 16/52 20060101ALI20220804BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/205
C23C16/52
(21)【出願番号】P 2020565714
(86)(22)【出願日】2019-12-26
(86)【国際出願番号】 JP2019051203
(87)【国際公開番号】W WO2020145183
(87)【国際公開日】2020-07-16
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2019000743
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 忍
(72)【発明者】
【氏名】上野 正昭
(72)【発明者】
【氏名】小杉 哲也
(72)【発明者】
【氏名】村田 等
(72)【発明者】
【氏名】杉下 雅士
(72)【発明者】
【氏名】山田 朋之
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-165290(JP,A)
【文献】特開平10-270454(JP,A)
【文献】実開昭52-127477(JP,U)
【文献】特開平01-210831(JP,A)
【文献】特開2016-057142(JP,A)
【文献】国際公開第2018/100850(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/205
C23C 16/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を内部に収容する反応室と、
前記反応室の周囲を覆うように設けられる炉体と、
前記炉体の内部もしくは内側に、複数のゾーンに分割して設けられる発熱体と、
前記複数のゾーン毎に、前記発熱体の近傍に測温点が位置するように設けられる複数の第1温度センサと、
その測温点が対応する少なくとも1つの前記第1温度センサの測温点と近接するように配置される第2温度センサと、
前記複数のゾーンの少なくとも1つに設けられ、対応する前記第1温度センサ及び前記第2温度センサのそれぞれの測温点を、保護管内で近接させて保持する温度検出具と、
を備え、
前記温度検出具は、前記炉体の外周から前記反応室の中心軸に垂直に挿通され、前記保護管の先端が前記反応室の外側で管軸上に位置するように構成された基板処理装置。
【請求項2】
前記反応室は一端に開口部を有する反応管内に形成され、複数の基板を内部に収容する請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記反応室の内部もしくは外側であって前記第1温度センサの測温点よりも前記基板に近く且つ前記発熱体から遠い位置に設けられる第3温度センサと、
前記第3温度センサが検知する温度が所定の目標に一致するように、前記第1温度センサの温度を参照しながら前記発熱体の発熱量を制御する温度調節器と、を更に備え、
前記温度調節器は、前記第1温度センサの異常を検知すると、前記第1温度センサの温度に代えて、対応する前記第2温度センサの温度を参照して、前記発熱量の制御を続けることが可能なように構成された請求項1記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記第2温度センサの温度が異常に高いときに、対応するゾーンの前記発熱体の発熱量を低下させる過熱保護器を、更に備える請求項3記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第3温度センサは、前記複数のゾーン毎に設けられ、
前記温度調節器は、前記複数のゾーン毎に、前記発熱体の発熱量を制御する請求項3記載の基板処理装置。
【請求項6】
基板を内部に収容する反応室と、
前記反応室の周囲を覆うように設けられる炉体と、
前記炉体の内部もしくは内側に、複数のゾーンに分割して設けられる発熱体と、
前記複数のゾーン毎に、前記発熱体の近傍に測温点が位置するように設けられる複数の第1温度センサと、
その測温点が対応する少なくとも1つの前記第1温度センサの測温点と近接するように配置される第2温度センサと、
前記複数のゾーン毎に設けられ、対応する前記第1温度センサ及び前記第2温度センサのそれぞれの測温点を、保護管の先端の内側で近接させて保持する温度検出具と、
を備え、
前記複数のゾーンの一つのゾーンに設けられる前記温度検出
具は、
前記炉体の外周から前記反応室の中心軸に向かって挿通され、前記保護管
の先端が前記反応室の外側で中心軸上に位置するように構成された基板処理装置。
【請求項7】
前記複数の温度検出具のそれぞれの保護管は、その先端が前記炉体の内側に届くように前記炉体を水平方向に貫通して設けられる請求項6記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記第3温度センサはカスケード温度センサである請求項5記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記温度検出具は、
前記保護管に挿通可能な外径と4つの内部孔を有する一定断面の棒状に形成され、一端において、前記4つの内部孔を隣り合う2組の内部孔に分離するようにすり割り加工された絶縁管と、
前記炉体を貫通させて設けられる前記保護管と、
を有して、前記第1温度センサの素線と前記第2温度センサの素線とが、2組の孔のそれぞれに挿通され、前記第1温度センサ及び前記第2温度センサのそれぞれの測温点を、前記すり割りの内側で近接させて保持する請求項6記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記発熱体の内、反応管の周囲に対応するゾーンの発熱体は、前記炉体の内面上に露出させて設けられ、前記反応管の開口部側の端と反対の端に対応するゾーンの発熱体は、前記反対の端に面する炉体の内面から浮かせて設けられ、
前記温度検出具の内、前記反応管の周囲に対応するゾーンの温度検出具は、保護管の先端が前記炉体の内面から所定量突出するように同じ長さに構成され、前記反対の端に対応するゾーンの温度検出具は、前記炉体の外周から前記反応管の管軸に垂直に挿通され保護管の先端が前記反応管の外側で前記管軸上に位置するように、他の温度検出具よりも保護管が長く構成された請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記複数のゾーンの内、少なくとも前記開口部側の端とは反対の端に対応するゾーンに設けられ、前記反応室の内部もしくは外側であって前記第1温度センサの測温点よりも前記基板に近く且つ前記発熱体から遠い位置に測温点が配置される第3温度センサと、
前記開口部側の端とは反対の端に対応するゾーンの前記第3温度センサの測温点をカスケード用保護管内に保持するカスケード温度検出具と、
前記第3温度センサが検知する温度が所定の目標に一致するように、前記第1温度センサの温度を参照しながら前記発熱体の発熱量を制御する温度調節器と、更に備え、
前記カスケード温度検出具は、前記炉体の外周から反応管の管軸に垂直に挿通され、前記カスケード用保護管の先端が前記管軸上にあって、対応するゾーンの温度検出具の先端と前記反応管の前記反対の端の間に位置するように構成された請求項10記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記カスケード温度検出具は、
前記温度検出具の保護管と異なる材質で構成された前記カスケード用保護管と、
前記保護管に挿通可能な外径と4つの内部孔を有する一定断面の棒状に形成され、一端においてすり割り加工された絶縁管と、
を有して、前記開口部側の端と反対の端に対応するゾーンの前記第3温度センサの素線が、前記4つの内部孔の内の2つに挿通され、前記第3温度センサの測温点を保持する請求項11記載の基板処理装置。
【請求項13】
基板を内部に収容する反応室の内部に基板を収容する工程と、
前記反応室の周囲を覆うように設けられる炉体の内部もしくは内側に、複数のゾーンに分割して設けられた発熱体によって、前記反応室内を加熱する工程と、
前記炉体の内部もしくは内側に設けられる発熱体と、
前記発熱体の近傍に測温点が位置するように設けられる第1温度センサと、
その測温点が前記第1温度センサの測温点と近接するように配置される第2温度センサと、
前記反応室の内部もしくは外側であって前記第1温度センサの測温点よりも前記基板に近く且つ前記発熱体から遠い位置に設けられる第3温度センサと、
を備える基板処理装置を準備する工程と、
前記第3温度センサが検知する温度が所定の目標に一致するように、前記第1温度センサの温度を参照しながら前記発熱体の発熱量を制御して前記反応室内を加熱する工程と、
前記反応室内へ処理ガスを供給し、前記基板を処理する工程と、を備え、
前記加熱する工程では、
前記複数のゾーン毎に前記発熱体の近傍に測温点が位置するように設けられる複数の第1温度センサと、
その測温点が対応する前記第1温度センサの少なくとも1つの測温点と近接するように配置される第2温度センサと、
前記炉体の外周から前記反応室の中心軸に垂直に挿通され、保護管の先端が前記反応室の外側で管軸上に位置するように、前記複数のゾーンの少なくとも1つに設けられ、対応する前記第1温度センサ及び前記第2温度センサのそれぞれの測温点を、前記保護管内で近接させて保持する温度検出具と、が用いられ、
前記第1温度センサの異常を検知すると、前記第1温度センサの温度に代えて前記第2温度センサの温度を参照して、前記発熱量の制御を続ける半導体装置の製造方法。
【請求項14】
反応室の周囲を覆うように設けられる炉体と、
前記炉体の内部もしくは内側に、複数のゾーンに分割して設けられる発熱体と、
前記複数のゾーン毎に、前記発熱体の近傍に測温点が位置するように設けられる複数の第1温度センサと、
その測温点が対応する少なくとも1つの前記第1温度センサの測温点と近接するように配置される第2温度センサと、
前記複数のゾーンの少なくとも1つに設けられ、対応する前記第1温度センサ及び前記第2温度センサのそれぞれの測温点を、保護管内で近接させて保持する温度検出具と、を備え、
前記温度検出具は、前記炉体の外周から前記反応室の中心軸に垂直に挿通され、前記保護管の先端が前記反応室の外側で管軸上に位置するように構成されているヒータユニット。
【請求項15】
反応室の周囲を覆うように設けられる炉体と、
前記炉体の内部もしくは内側に、複数のゾーンに分割して設けられる発熱体と、
前記複数のゾーン毎に、前記発熱体の近傍に測温点が位置するように設けられる複数の第1温度センサと、
その測温点が対応する少なくとも1つの前記第1温度センサの測温点と近接するように配置される第2温度センサと、
前記複数のゾーン毎に設けられ、対応する前記第1温度センサ及び前記第2温度センサのそれぞれの測温点を、保護管の先端の内側で近接させて保持する温度検出具と、を備え、
前記複数のゾーンの一つのゾーンに設けられる前記温度検出
具は、
前記炉体の外周から前記反応室の中心軸に向かって挿通され、前記保護管
の先端が
前記反応室の外側で中心軸上に位置するように構成されているヒータユニット。
【請求項16】
更に、4つの内部孔を有する一定断面の棒状に形成されるとともに一端においてすり割り加工され、複数の前記保護管内にそれぞれ設けられる絶縁管を有する請求項15記載のヒータユニット。
【請求項17】
前記第1温度センサの素線と前記第2温度センサの素線とが、前記4つの内部孔にそれぞれに挿通され、前記第1温度センサ及び前記第2温度センサのそれぞれの測温点が、前記すり割りの内側で近接させて保持される請求項16のヒータユニット。
【請求項18】
炉体の内部もしくは内側に、複数のゾーンに分割して設けられる発熱体と、
前記複数のゾーン毎に、前記発熱体の近傍に測温点が位置するように設けられる複数の第1温度センサと、
その測温点が対応する少なくとも1つの前記第1温度センサの測温点と近接するように配置される第2温度センサと、
前記複数のゾーンの少なくとも1つに設けられ、対応する前記第1温度センサ及び前記第2温度センサのそれぞれの測温点を、保護管内で近接させて保持する温度検出具と、を備え、
前記温度検出具は、前記炉体の外周から反応室の中心軸に垂直に挿通され、前記保護管の先端が前記反応室の外側で管軸上に位置するように構成されているヒータユニットにより、前記反応室に配置された基板を加熱して処理する工程を有する半導体装置の製造方法。
【請求項19】
炉体の内部もしくは内側に、複数のゾーンに分割して設けられる発熱体と、
前記複数のゾーン毎に、前記発熱体の近傍に測温点が位置するように設けられる複数の第1温度センサと、
その測温点が対応する少なくとも1つの前記第1温度センサの測温点と近接するように配置される第2温度センサと、
前記複数のゾーン毎に設けられ、対応する前記第1温度センサ及び前記第2温度センサのそれぞれの測温点を、保護管の先端の内側で近接させて保持する温度検出具と、を備え、
前記複数のゾーンの一つのゾーンに設けられる前記温度検出具は、前記炉体の外周から反応室の中心軸に向かって挿通され、前記保護管の先端が前記反応室の外側で前記中心軸上に位置するように構成されているヒータユニットにより、前記反応室に配置された基板を加熱して処理する工程を有する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法およびヒータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置(IC等)の製造において、基板を熱処理するため、バッチ式縦形熱処理装置が広く使用されている。従来のこの種の熱処理装置の処理炉においては、上端が閉塞し下端が開放された略円筒形の縦型反応管の内部に、複数枚のウェハを搭載したボートを下方から挿入し、反応管の外側を囲むように設けられたヒータにより、ボート上のウェハを熱処理する。ボート上において、複数枚のウェハは、水平姿勢、かつ互いにウェハの中心を揃えた状態で多段に積層されて保持される。
【0003】
また、上述の熱処理装置においては、ヒータの近傍に熱電対(ヒータ熱電対、スパイク熱電対とも言う。)を配置して加熱側の温度を計測し、ウェハもしくは反応管の近傍に熱電対(カスケード熱電対、プロファイル熱電対とも言う。)を配置して被加熱体の温度を計測し、それらの計測温度に基づいてヒータをフィードバック制御している。また、ヒータの近傍に熱電対(以下、過熱検知熱電対という。)を配置してヒータの異常加熱を検出し、強制的にヒータ電源を遮断するなどして装置保護を行っている。
【0004】
さらに、熱処理装置では、基板を処理する処理シーケンスの実行中に、熱電対が故障した場合、フェイルセーフの思想から、2つの近傍に配置されたヒータ熱電対と過熱検知熱電対を切替え可能に設け、一方の熱電対が故障した場合には、一方の熱電対の代替えとして他方の熱電対を用いて、他方の熱電対の測定温度をそのまま、一方の熱電対のときに設定した設定温度と一致するように制御させるようにした装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の技術では、2つの熱電対は比較的近傍に配置されているとはいえ測定箇所が異なるため、一方の熱電対の代替えとして他方の熱電対の測定温度をそのまま設定温度となるように制御すると、本来温度制御したい一方の熱電対の測定温度と設定温度とに食い違いが発生することとなり、安定な温度制御の継続を行うことが困難になる。
本開示の課題は、温度センサとしての熱電対が故障した場合でも、温度制御の安定継続が可能な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る一態様によれば、
基板を内部に収容する反応室と、
前記反応室の周囲を覆うように設けられる炉体と、
前記炉体の内部もしくは内側に設けられる発熱体と、
前記発熱体の近傍に測温点が位置するように設けられる第1温度センサと、
その測温点が前記第1温度センサの測温点と近接するように配置される第2温度センサと、
前記反応室の内部もしくは外側であって前記第1温度センサの測温点よりも前記基板に近く且つ前記発熱体から遠い位置に設けられる第3温度センサと、
前記第3温度センサが検知する温度が所定の目標に一致するように、前記第1温度センサの温度を参照しながら前記発熱体の発熱量を制御する温度調節器と、
を備え、
前記温度調節器は、前記第1温度センサの異常を検知すると、前記第1温度センサの温度に代えて前記第2温度センサの温度を参照して、前記発熱量の制御を続けることが可能な構成が提供される。
【発明の効果】
【0008】
上記の構成により、温度制御の安定継続が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施形態における基板処理装置の斜透視図である。
【
図2】本開示の実施形態における処理炉の垂直断面図である。
【
図3】本開示の実施形態における処理炉と熱電対を示す図である。
【
図5】本開示の実施形態における温度検出具の構造を示す図である。
【
図7】
図5の温度検出具の絶縁管の先端を示す図であり、(a)は
図6のB方向からの側面図であり、(b)は
図6と同じ方向からの側面図である。
【
図9】
図8の温度検出具の絶縁管の先端を示す図であり、(a)は
図8のB方向からの側面図であり、(b)は
図8と同じ方向からの側面図である。
【
図10】
図3の温度制御部のPID制御について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態)
本開示の実施形態として、半導体装置の製造工程の1工程としての熱処理による基板処理工程を実施する基板処理装置の構成例について、
図1を用いて説明する。
図1は、本開示の実施形態における基板処理装置の斜透視図である。
図1に示すように、実施形態に係る基板処理装置10は、筐体101を備え、シリコン等からなる基板であるウェハ200を筐体101内外へ搬送するために、ウェハキャリア(基板収容器)としてカセット(ポッド、FOUPとも言う)110が使用される。
【0011】
筐体101の正面前方側にはカセットステージ105が設置されている。カセット110は、筐体101外の工程内搬送装置(図示せず)によって、カセットステージ105上に搬入、載置され、また、カセットステージ105上から筐体101外へ搬出される。
筐体101内の前後方向における略中央部には、カセット棚114が設置されている。カセット棚114は、複数個のカセット110を保管する。カセット棚114の一部として、移載棚123が設けられ、移載棚123には、後述するウェハ移載機構112の搬送対象となるカセット110が収納される。
カセットステージ105とカセット棚114との間には、カセット搬送装置115が設置されている。カセット搬送装置115は、カセットステージ105、カセット棚114、移載棚123の間で、カセット110を搬送する。
【0012】
カセット棚114の後方には、ウェハ移載機構112が設置されている。ウェハ移載機構112は、ウェハ200を移載棚123上のカセット110内からピックアップして、後述するボート(基板保持具)217へ装填(チャージング)したり、ウェハ200をボート217から脱装(ディスチャージング)して、移載棚123上のカセット110内へ収納したりすることができる。
【0013】
筐体101の後側上方には、処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部は、炉口シャッタ116により開閉可能なように構成されている。処理炉202の構成については後述する。
処理炉202の下方には、ボート217を昇降させて処理炉202内外へ搬送する機構としてのボートエレベータ121が設置されている。ボートエレベータ121には、昇降台としてのアーム122が設置されている。アーム122上には、シールキャップ219が水平姿勢で設置されている。シールキャップ219は、ボート217を鉛直に支持するとともに、ボートエレベータ121によりボート217が上昇したときに、処理炉202の下端部を気密に閉塞する蓋体として機能するものである。ボート217の構成については後述する。
【0014】
(処理炉の構成)
次に、実施形態における処理炉202の構成について、
図2を用いて説明する。
図2は、基板処理装置の処理炉の垂直断面図である。この実施形態においては、処理炉202は、バッチ式縦形ホットウオール形の熱処理炉として構成されている。
【0015】
(反応管)
処理炉202は、その内側に、縦形の反応管222を備えている。反応管222は、上端が閉塞され下端が開口された略円筒形状をしており、開口された下端が下方を向くように、かつ、筒の中心軸(管軸)が鉛直になるように縦向きに配置されている。
反応管222内には、基板保持具としてのボート217によって水平姿勢で多段に積層された複数枚のウェハ200を収容して処理する反応室としての処理室204が形成される。反応管222の内径は、ウェハ200群を保持するボート217の最大外径よりも大きくなるように設定されている。
反応管222は、本例では、石英(SiO2)や炭化シリコン(SiC)等の耐熱性の高い材料によって、略円筒形状に一体成形されている。
【0016】
反応管222の下端部は、その水平断面が略円形リング形状であるマニホールド206によって気密に封止されている。反応管222は、その保守点検作業や清掃作業のために、マニホールド206に着脱自在に取り付けられている。マニホールド206が筐体101に支持されることにより、反応管222は、筐体101に鉛直に据え付けられた状態になっている。マニホールド206の下端開口は、ウェハ200群を保持したボート217を出し入れするための炉口205を構成している。
【0017】
(基板保持具)
マニホールド206には、マニホールド206の下端開口を閉塞するシールキャップ219が、鉛直方向下側から当接されるようになっている。シールキャップ219は反応管222の外径と同等以上の外径を有する円盤形状に形成されており、反応管222の外部に鉛直に設備されたボートエレベータ121によって、前記円盤形状を水平姿勢に保った状態で鉛直方向に昇降されるように構成されている。
シールキャップ219上には、ウェハ200を保持する基板保持具としてのボート217が鉛直に支持されるようになっている。ボート217は、上下で一対の端板と、両端板間に渡って鉛直に設けられた複数本、本例では3本のウェハ保持部材(ボート支柱)とを備えている。端板及びウェハ保持部材は、例えば、石英(SiO2)や炭化珪素(SiC)等の耐熱性の高い材料から構成される。
【0018】
各ウェハ保持部材には、水平方向に刻まれた多数条の保持溝が、長手方向にわたって等間隔に設けられている。各ウェハ保持部材は、保持溝が互いに対向し、各ウェハ保持部材の保持溝の鉛直位置(鉛直方向の位置)が一致するように設けられている。ウェハ200の周縁が、複数本のウェハ保持部材における同一の段の保持溝内に、それぞれ挿入されることにより、複数枚(例えば、50~150枚程度)のウェハ200は、水平姿勢、かつ互いにウェハの中心を揃えた状態で鉛直方向に多段に積層されて保持される。
【0019】
また、ボート217とシールキャップ219との間には、保温筒210が設けられている。保温筒210は、例えば、石英(SiO2)や炭化珪素(SiC)等の耐熱性材料から構成されている。保温筒210によって、後述するヒータユニット208からの熱が、マニホールド206側に伝わるのを抑止する。
【0020】
シールキャップ219の下側(処理室204と反対側)には、ボート217を回転させるボート回転機構237が設けられている。ボート回転機構237のボート回転軸は、シールキャップ219を貫通してボート217を下方から支持している。ボート回転軸を回転させることにより、処理室204内にてウェハ200を回転させることが可能となる。シールキャップ219は、上述のボートエレベータ121によって鉛直方向に昇降されるように構成されており、これにより、ボート217を処理室204内外に搬送することが可能となっている。
ボート回転機構237及びボートエレベータ121は、制御部280に電気的に接続されている。制御部280は、ボート回転機構237及びボートエレベータ121が所望のタイミングにて所望の動作をするように制御する。
【0021】
(ヒータユニット)
反応管222の外部には、反応管222内を全体にわたって均一または所定の温度分布に加熱する炉体としてのヒータユニット208が、反応管222を包囲するように設けられている。ヒータユニット208は、断熱材等で筒状又は箱状に構成された炉体と、炉体の内周面付近に設けられる発熱体209とで構成され、基板処理装置10の躯体209に支持されることにより鉛直に据え付けられる。発熱体209は、例えば、カーボンヒータ等の抵抗加熱ヒータにより構成され、本例では炉体の内面に露出されている。
【0022】
(ガス供給系)
ガス供給系について、
図2を用いて説明する。
図2に示すように、処理室204内に処理ガスを供給するガスノズル224が、シールキャップ219を鉛直方向に貫通して設けられている。なお、ガスノズル224は、マニホールド206を水平方向に貫通するように設けてもよい。ガスノズル224には、処理ガス供給機構226が接続されている。処理ガス供給機構226は、上流から順に、処理ガスを供給する処理ガス供給源、流量制御装置としてのMFC(マスフローコントローラ)、及び開閉バルブを有する。主にガスノズル224から処理ガス供給部が構成される。なお、処理ガス供給機構226を処理ガス供給部に含めて考えることもできる。
処理ガス供給機構226のMFCや開閉バルブは、制御部280に電気的に接続されている。制御部280は、処理室204内に供給するガスの種類が所望のタイミングにて所望のガス種となるよう、また、供給するガスの流量が所望のタイミングにて所望の流量となるよう、MFC及び開閉バルブを制御する。
【0023】
(ガス排気系)
マニホールド206の側壁の一部には、処理室204内の雰囲気を排気する排気管231が接続されている。排気管231には、上流から順に、圧力検出器としての圧力センサ236、圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ232が設けられている。APCバルブ232の下流には、排気管233を介し、真空排気装置としての真空ポンプ234が接続されている。主に排気管231により、反応管222内からガスを排気する排気部が構成される。なお、APCバルブ232、真空ポンプ234を、排気部に含めて考えることもできる。
APCバルブ232および圧力センサ236は、制御部280に電気的に接続されている。制御部280は、処理室204内の圧力が所望のタイミングにて所望の圧力となるように、圧力センサ236により検出された圧力値に基づいてAPCバルブ232の開度を制御する。
【0024】
(コントローラ)
制御部(コントローラ)280は、図示しない操作部や入出力部を備え、基板処理装置10の各構成部と電気的に接続されており、基板処理装置10の各構成部を制御する。制御部280は、成膜等のプロセスの制御シーケンスを時間軸で示したレシピに基づく温度制御や圧力制御、流量制御および機械駆動制御を指令する。
【0025】
(温度検出装置)
実施形態における温度検出装置の概略について、
図3、4を参照しながら説明する。
図3は、実施形態における処理炉と熱電対を示す垂直断面図である。
図4は、
図3の処理炉の、リブ211部分における水平断面図である。
【0026】
図3に示すように、第1温度センサとしてのヒータ熱電対51a~51hおよび第2温度センサとしての過熱検知熱電対53a~53hを含む温度検出具300a~300hは、ヒータユニット208を水平方向に貫通し、先端がリブ211から突出するように、ヒータユニット208に設けられている。ヒータ熱電対51a~51hおよび過熱検知熱電対53a~53hの各熱電対接合部(以下、単に接合部ともいう。)は、測温点であり、反応管222の外側側面に対向している。このとき、これらの接合部は、ウェハ200又は反応管222との距離よりも発熱体209又は炉体内面との距離の方が小さい。ヒータ熱電対51a~51hおよび過熱検知熱電対53a~53hの各素線は、ヒータユニット208の外側に延びており、温度制御部282に接続されている。温度検出具300a~300hを代表させる場合は、温度検出具300と称す。ヒータ熱電対51a~51hを代表させる場合は、ヒータ熱電対51と称し、過熱検知熱電対53a~53hを代表させる場合は、過熱検知熱電対53と称す。
【0027】
また、
図3に示すように、第3温度センサとしてのカスケード熱電対52a~52gは、反応管222とボート217との間に設けられた保護管62内に収容されている。保護管62は、炭化シリコン(SiC)等の耐熱性の高い材料によって、円管形状に形成され、上端は閉じられ、下端に開口部を有し、鉛直方向に延在するように設置されている。なお、カスケード熱電対52hを含む温度検出具400hは、反応管222の上方に設けられている。
【0028】
ヒータユニット208は、複数の加熱ゾーンに分割されており、
図3の例では7つのゾーンに分割されている。反応管222の側面の周囲には、炉体の最上部側のヒータ(U1ゾーンヒータ)208aと、U1ゾーンヒータ208aの直ぐ下のヒータ(U2ゾーンヒータ)208bと、U2ゾーンヒータ208bの直ぐ下のヒータ(CUゾーンヒータ)208cと、CUゾーンヒータ208cの直ぐ下のヒータ(Cゾーンヒータ)208dと、Cゾーンヒータ208dの直ぐ下のヒータ(CLゾーンヒータ)208eと、CLゾーンヒータ208eの直ぐ下のヒータ(L1ゾーンヒータ)208fと、最下部側のヒータ(L2ゾーンヒータ)208gと、が炉体の内面上に露出させて設けられている。各加熱ゾーンの発熱体である抵抗加熱ヒータは他の加熱ゾーンから独立していて個別に制御される。温度検出具300の貫通孔をリブ211上に設けたことで、各ゾーンにおいて、温度検出具300の先端(接合部)と、上下の発熱体との距離を、一定にすることが容易となる。更には、必要に応じて、温度検出具300の先端と、発熱体の蛇行パターンとの位置関係を、複数のゾーンに亘って揃えることができる。なお温度検出具300の貫通孔によって、リブ211は途切れうる。また、あるゾーンの発熱体の段数が奇数である場合、ゾーンの中心よりも上又は下にずれた位置に配置されうる。
【0029】
また、反応管222の上方には、炉体の天井208tの内面から浮かせてヒータ(Sub-Uゾーンヒータ)208hが設けられている。天井208tは断熱材および排気口を有する。各ゾーンのヒータ208a~208gに炉体の外面側から冷却空気が流入し内面側に流入して、反応管222とヒータユニット208との間の空間を経て、天井208tの排気口から排出されるよう構成されている。
【0030】
ヒータ熱電対51a、カスケード熱電対52aおよび過熱検知熱電対53aは、処理炉202のU1ゾーンヒータ208aの温度検出用であり、ヒータ熱電対51b、カスケード熱電対52bおよび過熱検知熱電対53bは、U2ゾーンヒータ208bの温度検出用であり、ヒータ熱電対51c、カスケード熱電対52cおよび過熱検知熱電対53cは、CUゾーンヒータ208cの温度検出用であり、ヒータ熱電対51d、カスケード熱電対52dおよび過熱検知熱電対53dは、Cゾーンヒータ208dの温度検出用であり、ヒータ熱電対51e、カスケード熱電対52eおよび過熱検知熱電対53eは、CLゾーンヒータ208eの温度検出用であり、ヒータ熱電対51f、カスケード熱電対52fおよび過熱検知熱電対53fは、L1ゾーンヒータ208fの温度検出用であり、ヒータ熱電対51g、カスケード熱電対52gおよび過熱検知熱電対53gは、L2ゾーンヒータ208gの温度検出用である。ヒータ熱電対51h、カスケード熱電対52hおよび過熱検知熱電対53hは、Sub-Uゾーンヒータ208hの温度検出用である。一般的に、ヒータ熱電対51、カスケード熱電対52、過熱検知熱電対53は、対応するゾーンの高さ方向の範囲内(例えば中央付近)で、リブ211上の位置に取り付けられるが、ヒータ熱電対51a等は、U1ゾーンの下端付近に設けられ、ヒータ熱電対51g等は、L2ゾーンの上端付近に設けられる。
【0031】
ヒータ熱電対51a~51hの計測温度は、分割された要素(加熱ゾーン)ごとに独立にまたは連携してフィードバック制御され、ヒータ熱電対51a~51hの計測温度を参照しつつ、カスケード熱電対52a~52hの計測温度と目標温度との誤差が小さくなるように、ヒータユニット208の発熱量が制御される。
なお、ヒータ熱電対51a~51eを用いずに過熱検知熱電対53a~53hを用いて、カスケード熱電対52a~52hの計測温度を参照しつつ、過熱検知熱電対53a~53hの計測温度と目標温度との誤差が小さくなるように、ヒータユニット208の発熱量を制御することも可能である。
【0032】
次に、実施形態における温度検出具の構造を、
図5~7を用いて説明する。
図5は、実施形態における温度検出具の構造を示す断面図である。
図6は、
図5の円Aの部分の拡大断面図である。
図7は、温度検出具300の絶縁管312の先端を示す図であり、
図7(a)は
図6のB方向からの側面図であり、
図7(b)は
図6と同じ方向からの側面図である。
図3に示すように、U1ゾーンヒータ208a~L2ゾーンヒータ208gに対応する温度検出具300a~300gは、温度検出具300a~300gの先端がヒータユニット208の炉体(より正確にはリブ211)の内面から所定量突出するように同じ長さに構成される。Sub-Uゾーンヒータ208hに対応する温度検出具300hは、炉体であるヒータユニット208の外周から反応管222の管軸に垂直に天井208t内に挿通され温度検出具300hの先端が反応管222の外側で反応管222の管軸上に位置するように、温度検出具300a~300gよりも保護管313が長く構成されている。保護管313の先端は天井208t内の断熱材から露出して設置されている。
【0033】
図5に示すように、温度検出具300は、ヒータ熱電対51、過熱検知熱電対53と、絶縁管312と、保護管313と、を備える。保護管313は、再結晶アルミナ(Al2O3)、ムライトやステンレス等の耐熱性の高い材料により円筒形状に形成られ、一端は閉じられ、他端は開口部を有する。再結晶アルミナは、1000℃以下の発熱体からの赤外線を良く透過することが知られる。
【0034】
図6、7に示すように、絶縁管312は保護管313に挿通可能な外径と4つの内部孔312a,312b,312c,312dを有する一定断面の棒状に形成され、一端において、4つの内部孔312a,312b,312c,312dを、左右に隣り合う2組の内部孔312a,312cと内部孔312b,312dとに分離するようにすり割り加工により溝312eが横方向に形成されている。絶縁管312は、例えばアルミナ製であり、内部孔312a~312dは熱電対素線をそれぞれ挿通可能な内径の孔である。溝312eは、内部孔312a~312dを、溝の内側に露出させるのに十分な幅を有する。
【0035】
ヒータ熱電対51は、熱電対接合部23aと、熱電対接合部23aで接合された2本の熱電対素線21a,22aを有する。例えば、熱電対素線21aはプラス線であり、その材質は白金ロジウムである。熱電対素線21bはマイナス線であり、その材質は白金である。ヒータ熱電対51の熱電対素線21a,22aが、1組の内部孔312a,312bのそれぞれに挿通され、ヒータ熱電対51の熱電対接合部23aを、溝312eの内側で近接させて保持されている。
【0036】
過熱検知熱電対53は、熱電対接合部23bと、該熱電対接合部23bで接合された2本の熱電対素線21b,22bを有する。例えば、熱電対素線21cはプラス線であり、その材質は白金ロジウムである。熱電対素線21dはマイナス線であり、その材質は白金である。過熱検知熱電対53の熱電対素線21b,22bが、1組の内部孔312c,312dのそれぞれに挿通され、過熱検知熱電対53の熱電対接合部23bを、溝312eの内側で近接させて保持されている。つまり、ヒータ熱電対51と過熱検知熱電対53は、それらの熱電対接合部から伸びる熱電対素線が、溝の間を架け渡すようにして、左右に並んで設けられる。これにより上下(管軸)方向に温度勾配があっても、両者は同じ温度を検出できる。また保護管313の先端から熱電対接合部23a及び23bまでのB方向の距離は、略等しく、保護管313の先端がリブから突出する長さの略半分になるように設定されうる。例えば、突出する長さが11mmであれば、5.5mmに設定される。
【0037】
Sub-Uゾーンヒータ208hに対応する温度検出具300hは、保護管313、熱電対素線21a,22a,21b,22bの長さを除いて、温度検出具300と同様の構造である。
【0038】
このように、ヒータ熱電対51および過熱検知熱電対53は、その熱電対接合部23a,23bが、保護管313の先端内部空間にある。また、その熱電対素線21a,22a,21b,22bが、絶縁管312の4孔にそれぞれ挿通され、絶縁管312の先端とは反対側の端面から、ヒータユニット208の外面へと引き出され、コネクタ314に接続される構成になっている。絶縁管312や保護管313は、熱容量を小さくするために細く構成することが好ましく、例えばそれぞれの外径は6mm以下、4mm以下とすることができる。
【0039】
次に、実施形態におけるカスケード熱電対52hを有する温度検出具400の構造を、
図8、9を用いて説明する。
図8は、温度検出具400の先端を示す図である。
図9は、温度検出具400の絶縁管412の先端を示す図であり、
図9(a)は
図8のB方向からの側面図であり、
図9(b)は
図8と同じ方向からの側面図である。
温度検出具400は温度検出具300と同様な構造である。ただし、温度検出具400は温度検出具300よりも長く形成されている。温度検出具400は、ヒータユニット208の外周から反応管222の管軸に垂直に挿通され、保護管413hの先端が反応管222の管軸上にあって温度検出具300hの先端と反応管222の上端の間に位置する。
【0040】
絶縁管412は、絶縁管312と同様に、保護管413に挿通可能な外径と4つの内部孔412a,412b,412c,412dを有する一定断面の棒状に形成され、一端において、四つの内部孔412a,412b,412c,412dを隣り合う2組の内部孔412a,412cと内部孔412b,412dとに分離するようにすり割り加工により溝412eが形成されている。
【0041】
カスケード熱電対52hは、ヒータ熱電対51と同様に、熱電対接合部23hと、該熱電対接合部23hで接合された2本の熱電対素線21h,22hを有する。例えば、熱電対素線21hはプラス線であり、その材質は白金ロジウムである。熱電対素線21hはマイナス線であり、その材質は白金である。カスケード熱電対52hの熱電対素線21h,22hが、1組の内部孔412a,412bのそれぞれに挿通され、カスケード熱電対52hの熱電対接合部23hを、溝412eの内側で近接させて保持されている。なお、内部孔412c,412dには熱電対素線は挿通されていない。
【0042】
(本実施形態に係る基板処理動作)
次に、本実施形態に係る基板処理動作を、ICの製造方法における成膜工程を例にして説明する。この基板処理動作は、コントローラ280により制御される。まず、ウェハチャージングステップにおいて、ウェハ200はボート217に装填される。複数枚のウェハ200は、ボート217におけるチャージング状態において、その中心を揃えられて互いに平行かつ水平、多段に積載され、整列されている。
次に、ボートローディングステップにおいて、複数枚のウェハ200を積載、保持したボート217は、処理室204に搬入(ボートローディング)される。続いて、減圧ステップにおいて、排気管231を介して真空ポンプ234により、反応管222の内部が所定の真空度に減圧されるとともに、昇温ステップにおいて、温度検出装置により測定した温度に基づき、ヒータユニット208により反応管222の内部が所定の温度に昇温される。
【0043】
次に、成膜ステップにおいて、ボート217が回転されつつ、所定の原料ガスが、ガスノズル224に供給され、処理室204に導入される。処理室204に導入された原料ガスは、反応管222内に流出して、マニホールド206に開設された排気管231から排気される。成膜ステップにおいて、温度検出装置により測定した温度に基づき、ヒータユニット208により反応管222の内部が所定の温度に維持される。このようにして、ウェハ200の表面に接触しながら上下で隣合うウェハ200とウェハ200との間の空間を平行に流れて行く原料ガスによって、ウェハ200の表面が成膜される。
【0044】
以上のようにして所望の成膜処理がなされた後に、原料ガスの供給が停止され、不活性ガスにより、処理室204内が大気圧に復帰される。また、温度検出装置により測定した温度に基づき、反応管222の内部が所定の温度に降温される。その後、ボートアンローディングステップにおいて、シールキャップ219が下降されることによって処理室204の下端が開口され、ボート217に保持された状態で処理済みのウェハ200群が処理室204から外部に搬出(ボートアンローディング)される。
【0045】
上述した昇温動作、温度維持動作、降温動作は、ヒータ熱電対51およびカスケード熱電対52により測定した温度に基づき、該測定温度が目標温度にとなるよう、コントローラ280の温度制御部282の温度調節器により制御、例えばPID制御が行われる。
図10は温度制御部282の温度調節器のPID制御について説明する図である。
図10に示すように、ヒータユニット208は抵抗加熱ヒータ520による加熱と空気による冷却によって温度制御が行われる。すなわち、抵抗加熱ヒータへの電力量およびAPCバルブ513の開度によって温度制御が行われる。
温度制御部282の温度調節器282aは、主制御部であるコントローラ280から入力される温度設定値とカスケード熱電対52からの温度の偏差を出力する第1の減算器501と、第1の減算器501の出力に応じてPID演算して、ヒータ熱電対51からの測定温度が追従すべき値を指示する第1のPID演算部(PID1)502と、第1のPID演算部(PID1)502の出力とヒータ熱電対51からの温度の偏差を出力する第2の減算器503と、第2の減算器503の出力に応じてPID演算して、電力調整器511への操作量を指示する第2のPID演算部(PID2)504と、を備える。電力調整器511は指示された操作量に応じた電力を抵抗加熱ヒータ520に供給する。
【0046】
また、温度調節器282aは、テーブル505に格納されたヒータ温度設定値と第2の減算器503の偏差を出力する第3の減算器506と、第3の減算器506の出力に応じてPID演算して、演算部508への制御値を出力する第3のPID演算部(PID3)507と、第3のPID演算部(PID3)507の出力をAPCバルブ513の開度に変換する演算部508と、を備える。ヒータ温度設定値よりヒータ熱電対の温度が高い(温度偏差設定より大きい)場合、温度偏差設定になるように第3のPID演算部507で制御演算し、演算部508は制御演算結果を空冷(Intake風量(バルブ開度))に変換して出力する。演算部508の出力によってAPCバルブドライバ512が制御され、APCバルブドライバ512によってAPCバルブ513の開度が制御されて、ヒータユニット208の空冷量が制御される。
【0047】
基板処理装置10においては、ヒータユニット208と反応管222の間にヒータ熱電対51を配置してヒータユニット208近傍の温度を計測し、同時に反応管222の内部にカスケード熱電対52を配置して反応管222内部の温度を計測し、それらの計測温度に基づいて、温度制御部282の温度調節器282aは反応管222内部の温度を所望の目標温度となるようにヒータユニット208をフィードバック制御している。ヒータユニット208は複数のゾーンに分割されており、各一つのゾーンに対し、一つのヒータ熱電対51を用いて温度制御している。
【0048】
更に本実施形態では、制御量であるヒータ温度を測定する手段として、ヒータ熱電対51と過熱検知熱電対53とを、選択的に第2の減算器503に接続する切替器509と、少なくともヒータ熱電対51の状態に基づいて切替器509を制御する切替制御器(断線判定器)510と、過熱検知熱電対53の検出温度が異常に高温であること検知した場合に、電力調整器511に対してヒータ電力を遮断させる信号を出力する過熱保護器514を有する。なお、ヒータ熱電対51と過熱検知熱電対53からの信号は、切替器509等に入力される前もしくは後に、周知の冷接点補償、線形化、アナログデジタル変換等が為され、また冷接点補償回路には、バーンアウト検出用回路が設けられうる。
【0049】
切替器509は、ヒータ熱電対51と過熱検知熱電対53からの信号を合成(平均化)するように構成された回路において、一方の熱電対からの接続を切断することによっても実現されうる。
切替制御器510は、ヒータ熱電対51の検出温度を監視し、バーンアウト検出用回路によって断線時に現れる、所定の第1しきい値より高い温度又は電圧、或いは振動(ノイズ)を検知すると、過熱検知熱電対53からの信号を選択するように切替器509を制御する。
過熱保護器514は、過熱検知熱電対53の検出温度を監視し、通常の使用では到達することが無いようなヒータユニット208の温度(例えば800℃)に対応する、所定の第2しきい値より高い温度等を所定時間以上連続して検知すると、上述の遮断させる信号を出力する。ここで、第2しきい値は、第1しきい値よりも低い。過熱保護器514が想定する熱電対のショートモードの故障は、オープンモードの故障よりも頻度が低い。従って、過熱保護器514は、更にヒータ熱電対51が正常(例えば、検出温度が、冷接点よりも高温である第3しきい値から第2しきい値の間)であり、過熱検知熱電対53の検出温度が第1しきい値より高い場合、上述の遮断させる信号を出力せず、代わりに制御部280にアラームを出力するように構成することができる。これにより過熱検知熱電対53の断線による不必要な強制遮断を避けることができる。
【0050】
このように基板処理装置10では、ヒータ熱電対51が断線した場合など使用不能になった場合に、過熱検知熱電対53に切り替えて温度制御を継続するバックアップ機能を具備している。切り替えの基準(使用しているヒータ熱電対51又は過熱検知熱電対53が正常かどうか)には他のものが用いられてよく、ヒータ熱電対51と過熱検知熱電対53に所定以上の温度差があると、高い温度を示す熱電対が断線したと判断してもよく、第2の減算器503の出力(内部ループの誤差信号)等が所定時間以上連続して所定値を超えたことによって判断してもよい。温度制御に用いる熱電対を、ヒータ熱電対51から過熱検知熱電対53に切り替えて制御を続行したとしても、それらの熱電対が設けられる位置の違いがないので、位置の違いによって測定温度が異なることがなく、ヒータ出力の変動(正常値に戻るための変動は除く)を防ぐことができる。
【0051】
実施形態によれば、次の(A1)~(A2)の少なくとも一つの効果を得ることができる。
(A1)ヒータユニットに挿通させて保護管を設け、その中にヒータ熱電対および過熱検知熱電対を配置したので、過熱検知熱電対の温度特性を、ヒータ熱電対の温度特性に近づけることができる。これにより、ヒータ熱電対が断線等により使用できない場合も、過熱検知熱電対に切り替えて温度計測が可能となる。
(A2)1本の絶縁管に4つの内部孔を設け、該内部孔に1対のヒート熱電対および1対の過熱検知熱電対を挿通し、その絶縁管1本のみを1つの保護管内に配置したので、保護管の外径を小さくできる。これにより、ヒータユニットに保護管を設置することが容易となる。
【0052】
なお、本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変更が可能であることはいうまでもない。
実施形態では、ヒータ熱電対51が断線した場合に、過熱検知熱電対53に切り替えて温度制御を継続する例について説明したが、さらに第3の熱電対を熱的に一体に設け、ヒータ熱電対51及び過熱検知熱電対53の両方が断線した場合に、第3の熱電対に切り替えるようにしてもよい。
また、実施形態では、温度制御部282はPID制御する例を説明したが、ヒータの温度であるヒータ温度、および、処理室内の温度である炉内温度のうち少なくともいずれか一つの温度データの基準温度と、該基準温度に制御されたヒータへの定常状態での電力供給値と、ヒータ温度、および、炉内温度のうち少なくともいずれか一つの温度データの予測温度を予測する予測モデルを記憶する予測モデル記憶領域と、を備え、温度データ及び電力供給値を取得し、予測モデルを使用して所定の方程式を作成すると共に、該方程式に基づき基準温度と予測温度とのズレが最小となるような解を演算することにより、ヒータに出力される電力供給値を最適にするよう制御するようにしてもよい。
【0053】
また、上述した実施形態では、ホットウオール型のバッチ装置について例示したが、コールドウオール型や、枚葉或いは多枚葉装置(にも適用可能である。つまり第1温度センサ及び第2温度センサが、第3温度センサよりも加熱手段の近くに(加熱手段により熱的に結合して)設けられ、或いは、第3温度センサが第1温度センサ及び第2温度センサよりも被加熱体(基板)の近くに設けられるような装置において、適用できる。
また、本開示は、半導体製造装置だけでなく、LCD製造装置のようなガラス基板を処理する装置や、他の基板処理装置にも適用できる。基板処理の処理内容は、CVD、PVD、酸化や窒化等の改質、表面処理(トリートメント)、アニール、エッチング、レジストの焼き締めやアッシング等の各種の熱処理であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
10…基板処理装置
51…ヒータ熱電対(第1温度センサ)
52…カスケード熱電対(第3温度センサ)
53…過熱検知熱電対(第2温度センサ)
204…処理室(反応室)
208…ヒータユニット(炉体)
282…温度制御部(温度調節器、過熱保護器)
520…抵抗加熱ヒータ(発熱体)