(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/514 20060101AFI20220805BHJP
A61F 13/532 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
A61F13/514 400
A61F13/532 200
(21)【出願番号】P 2018128871
(22)【出願日】2018-07-06
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134072
【氏名又は名称】白浜 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100066267
【氏名又は名称】白浜 吉治
(72)【発明者】
【氏名】黒田 賢一郎
(72)【発明者】
【氏名】丸山 貴史
(72)【発明者】
【氏名】チャテゥラパターノン カナポン
(72)【発明者】
【氏名】野田 祐樹
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-104297(JP,A)
【文献】国際公開第2011/013208(WO,A1)
【文献】実開昭59-189807(JP,U)
【文献】特開2012-105804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向及びそれに直交する
横方向を有し、前記
横方向の寸法を2等分する
縦断中心線と、透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、前記表裏面シート間に介在された吸収体とを備えた吸収性物品において、
前記
縦方向へ延び、かつ、互いに前記
横方向において対向して位置する第1及び第2
側縁部を有し、
前記吸収体は、前記
縦方向へ延び、かつ、表裏面側から透視可能な第1及び第2
側縁を有し、
前記第1
側縁部には前記吸収体の前記第1
側縁、前記第2縁部には前記吸収体の前記第2
側縁がそれぞれ位置しており、
前記裏面シートには、前記第1及び第2
側縁部のうちの前記第1
側縁部にのみ、前記
縦方向へ延びる装飾域が配置されており、
前記第1
側縁部において前記装飾域と前記吸収体の第1
側縁とが平面視において互いに重なり合っていることを特徴とする前記吸収性物品。
【請求項2】
前記装飾域の内側縁は、前記
縦断中心線に対して起伏を繰り返して前記
縦方向へ延びており、
前記装飾域の前記内側縁と前記
縦断中心線との前記
横方向における離間距離が、前記
縦方向において一定ではない請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記装飾域は、互いに独立した複数の着色された装飾部を有し、前記複数の着色された装飾部は、一部が互いに重なり合うように配置されている請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記装飾域は、前記装飾部間に形成された非装飾部を有する請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記装飾域の前記
縦方向の寸法は、前記吸収体の前記第1
側縁の前記
縦方向の寸法の半分以上の大きさを有し、前記装飾域において前記装飾部は前記
横方向の外側に密に配置されている請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記複数の着色された装飾部は、着色された色が前記
横方向の内側へ向かうにつれて次第に濃くなっている請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記装飾域が、前記吸収体の前記
横方向へ延びる
端縁の一部と重なる請求項1-6のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記
縦方向において互いに対向する第1域及び第2域と、前記第1域と第2域との間に位置する中間域とに区分されており、
前記第1
側縁部の外形線は、前記
縦断中心線に対して起伏を繰り返して前記
縦方向へ延びており、前記第1
側縁部の前記外形線と前記吸収体の前記第1
側縁との前記
横方向における離間寸法が、前記第1域、前記第2域及び前記
中間域において互いに異なる請求項1-6のいずれかに記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収体は、前記
縦方向へ延びるスリットを有し、前記スリットは前記第1及び第2
側縁部の少なくとも前記第1
側縁部側に形成されており、前記第1
側縁部において前記装飾域と前記スリットとが互いに重なる請求項1-8のいずれかに記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は吸収性物品に関し、より詳しくは、軽失禁パッド、パンティライナ、生理用ナプキン、おりもの吸収用パッド、尿吸収パッド、大人用及び子供用の使い捨ておむつ等の吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、裏面シートの外面に装飾域を有する吸収性物品は、知られている。例えば、特許文献1には、透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、表裏面シート間に介在された吸収体とを備える吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許公開2016/0331598号公報(US2016/0331598A1)
【0004】
特許文献1に開示された吸収性物品においては、裏面シートの外面に装飾域が位置し、装飾域が外面から透視可能な吸収体の外形輪郭と重なることで、吸収体が吸収性物品の中心から位置ずれしていても目立たなくなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、装飾域が吸収体の外形輪郭全体と重なっていることから、着用者または着用補助者が、吸収体の存在域を把握することができず、体液の吸収性に関して不安感を与えてしまうおそれがある。また、装飾域が吸収体の外形輪郭の両端及び/または両側において対称となるデザインを有することから、吸収体がわずかに位置ずれしていた場合であっても、その位置ずれを目立たせてしまうおそれがあるという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記課題に対し、着用者等に対して吸収性に関して不安感を与えることがなく、かつ、吸収体の位置ずれが目立ち難い吸収体物品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、縦方向及びそれに直交する横方向を有し、前記横方向の寸法を2等分する縦断中心線と、透液性の表面シートと、不透液性の裏面シートと、前記表裏面シート間に介在された吸収体とを備えた吸収性物品に関する。
【0008】
本発明に係る吸収性物品は、前記縦方向へ延び、かつ、互いに前記横方向において対向して位置する第1及び第2側縁部を有し、前記吸収体は、前記縦方向へ延び、かつ、表裏面側から透視可能な第1及び第2側縁を有し、前記第1側縁部には前記吸収体の前記第1側縁、前記第2縁部には前記吸収体の前記第2側縁がそれぞれ位置しており、前記裏面シートには、前記第1及び第2側縁部のうちの前記第1側縁部にのみ、前記縦方向へ延びる装飾域が配置されており、前記第1側縁部において前記装飾域と前記吸収体の第1側縁とが平面視において互いに重なり合っていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る吸収性物品は、以下の実施態様を含む。下記の実施態様は、単独の構成のほかに、任意に選択して複数の実施態様に係る構成を組み合わせることができる。
(1)前記装飾域の内側縁は、前記縦断中心線に対して起伏を繰り返して前記縦方向へ延びており、前記装飾域の前記内側縁と前記縦断中心線との前記横方向における離間距離が、前記縦方向において一定ではない。
(2)前記装飾域は、互いに独立した複数の着色された装飾部を有し、前記複数の着色された装飾部は、一部が互いに重なり合うように配置されている。
(3)前記装飾域は、前記装飾部間に形成された非装飾部を有する。
(4)前記装飾域の前記縦方向の寸法は、前記吸収体の前記第1側縁の前記縦方向の寸法の半分以上の大きさを有し、前記装飾域において前記装飾部は前記横方向の外側に密に配置されている。
(5)前記複数の着色された装飾部は、着色された色が前記横方向の内側へ向かうにつれて次第に濃くなっている。
(6)前記装飾域が、前記吸収体の前記横方向へ延びる端縁の一部と重なる。
(7)前記縦方向において互いに対向する第1域及び第2域と、前記第1域と第2域との間に位置する中間域とに区分されており、前記第1側縁部の外形線は、前記縦断中心線に対して起伏を繰り返して前記縦方向へ延びており、前記第1側縁部の前記外形線と前記吸収体の前記第1側縁との前記横方向における離間寸法が、前記第1域、前記第2域及び前記中間域において互いに異なる。
(8)前記吸収体は、前記縦方向へ延びるスリットを有し、前記スリットは前記第1及び第2側縁部の少なくとも前記第1側縁部側に形成されており、前記第1側縁部において前記装飾域と前記スリットとが互いに重なる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の吸収性物品においては、着用者等に吸収体の位置ずれを把握され難く、かつ、吸収性に関しての不安感を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面は、本発明の特定の実施の形態を示し、発明の不可欠な構成ばかりでなく、選択的及び好ましい実施の形態を含む。
【
図1】第1実施形態に係る吸収性物品の一例として示す、生理用ナプキンを裏面側から視た平面図。
【
図4】
図1と同様の生理用ナプキンを裏面側から視た平面図。
【
図5】(a)
図4の一点鎖線V(a)で囲んだ領域の一部拡大図。(b)
図4の一点鎖線V(b)で囲んだ領域の一部拡大図。
【
図6】生理用ナプキンの変形例の一例における、
図2と同様の生理用ナプキンを表面側から視た平面図。
【
図7】生理用ナプキンの他の変形例の一例における、
図4と同様の生理用ナプキンを裏面側から視た平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
下記の実施の形態は、添付の図面に示す吸収性物品に関し、発明の不可欠な構成ばかりではなく、選択的及び好ましい構成を含む。以下、添付の図面を参照して、この発明に係る吸収性物品の一例である生理用ナプキン10の実施形態を説明する。生理用ナプキン10は、縦方向(第1方向又は第2方向)Yと、横方向(第2方向又は第1方向)Xと、厚さ方向Zとを有する。
【0013】
図1~3を参照すると、生理用ナプキン10は、その横方向における寸法を2等分する縦断中心線(第1中心線)Pと縦方向Yの寸法を2等分する横断中心線(第1中心線)Qとを有し、肌対向面側及びその反対側の非肌対向面側と、肌対向面側に位置する透液性の表面シート11と、非肌対向面側に位置する不透液性の裏面シート12と、これら両シート11,12間に位置する吸液性の吸収体20とを含む。
【0014】
生理用ナプキン10は、略十字状の形状を有し、その外形線(外郭線)は、縦方向Yの内側に向かって凹曲する第1及び第2端縁10a,10bと、横断中心線Qと交差する部分において横方向Xの外側へ凸曲する第1及び第2側縁10c,10dとから画成されている。
【0015】
なお、図示していないが、生理用ナプキン10の柔軟性を向上させるために、表面シート11と吸収体20との間に比較的に嵩高の繊維不織布製の中間シートを配置してもよい。
【0016】
生理用ナプキン10は、説明の便宜上、縦方向Yにおいて、第1端縁10a側に位置する第1端域31と、第2端縁10b側に位置する第2端域32と、第1端域31と第2端域32との間に位置する中間域33とに区分される。また、生理用ナプキン10は、横方向Xにおいて、縦断中心線Pと第1側縁10cとの間に位置する第1側域34と、縦断中心線Pと第2側縁10dとの間に位置する第2側域35とに区分される。第1及び第2側縁10c,10d(第1及び第2側縁部17,18)は、複数の括れ部を有する非流線形状であって、第1端域31、第2端域32及び中間域33のそれぞれにおいて互いに異なる形状を有する。なお、第1及び第2端域31,32と中間域33とは、それぞれ、生理用ナプキン10の縦方向Yの寸法を略3等分した縦寸法を有する領域であってもよいし、各領域31-33が、それぞれ、生理用ナプキン10の縦方向の寸法の20~50%の大きさを有するものであってもよい。
【0017】
吸収体20は、生理用ナプキン10の外形線に沿う外形を有し、第1端縁10aと対向する第1端縁20aと第2端縁10bと対向する第2端縁20bと、第1及び第2端縁10a,10b間において縦方向へ延びる第1及び第2側縁20c,20dとを有する。吸収体20の第1及び第2側縁20c,20dは、生理用ナプキン10の第1及び第2側縁10c,10dの形状に沿うように、複数の括れ部を有する非流線形状を有する。
【0018】
吸収体20は、所要の形状に賦形された吸液性コアを含んでおり、コアラップシートに包被されていることが好ましい。吸液性コアは、不水溶性の超吸収性ポリマー粒子(SAP粒子)と、フラップ木材パルプ(パルプ繊維)やレーヨン繊維等のセルロース系繊維とからなる吸収性・離散性材料を有する。
【0019】
表裏面シート11,12は、吸収体20の外周から外方へ延出しており、表面シートの肌対向面側には、横方向において互いに対向するように縦方向Yへ延びる一対のサイドシート14が配置される。一対のサイドシート14は、表面シート11にサイド接着部を介して接合される。
【0020】
生理用ナプキン10は、縦方向Yにおいて互いに対向して横方向Xへ延びる第1及び第2端部(第1縁部または第2縁部)15,16と、横方向Xにおいて互いに対向して縦方向Yへ延びる第1及び第2側縁部(第1縁部または第2縁部)17,18とを有する。第1及び第2側縁部17,18は、それぞれ、横方向Xの外側へ凸となるウイング部19を有する。第1端部15と第2端部16とには、それぞれ、吸収体20の第1端縁20aと第2端縁20bとが位置し、第1側縁部17と第2側縁部18とには、それぞれ、吸収体20の第1側縁20cと第2側縁20dとが位置する。生理用ナプキン10は、吸収体20の外周縁から延出する外周縁部をさらに有する。外周縁部を形成するように互いに積層されたシートは、生理用ナプキン10の外周縁に沿って位置する外周シール部7を介して互いに接合されている。生理用ナプキン10の外周にシートを熱溶着した外周シール部7が位置することによってその外形状が明瞭になるといえる。
【0021】
生理用ナプキン10は、3つ折りにされた状態で個包装体に収容される。個包装体は、包装シートと生理用ナプキン10とを折り畳んで形成されるものであって、生理用ナプキン10は、折り畳むときに形成される縦方向Yへ延びる第1折曲線101と第2折曲線102とを有する。第1及び第2折曲線101,102は、一対のウイング部19の基端部分と重なるように縦方向Yへ延びている。
【0022】
吸収体20のウイング部19間に位置する領域は、着用者の膣口対向域であって、該領域には、吸収体20が他の部分に比して肉厚にされた中高部分21が位置する。吸収体20は、生理用ナプキン10を構成するシート材料に比して高剛性または半剛性であって、所要の厚さ寸法を有することから、その外形線は表面シート11及び裏面シート12を介して生理用ナプキン10の表面側及び裏面側から透視される。生理用ナプキン10がウイング部19を有していない場合には、縦方向Yにおいて、生理用ナプキン10の第1折曲線101と第2折曲線102との間に配置されていることが好ましい。
【0023】
図示していないが、生理用ナプキン10の裏面側には、複数の止着域が配置される。複数の止着域は、生理用ナプキン10を下着等の被服に止着するためのものであって、縦方向Yへ延びる複数のライン状に塗布された粘着剤や感圧性接着剤から形成される。
【0024】
表面シート11には、開口プラスチックフィルム、織布、不織布等の体液に含まれる液体成分を透過可能なシートを好適に用いることができる。裏面シート12には、ポリエチレン、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂を主体とした熱可塑性樹脂フィルム、通気性を付与した熱可塑性樹脂フィルムなどを好適に用いることができる。サイドシート14には、表面シート11と同様のシート材を用いることができる。但し、生理用ナプキン10の外側へ体液が流れにくくするためには、疎水性もしくは撥水性を有するシート材を用いることが好ましい。
【0025】
外周シール部7における各シートの接合は、接着剤による接合、超音波溶着、熱溶着、レーザー溶着、高周波溶着等の公知の溶着手段による接合、及びエンボス加工による接合を、単独又は組み合わせて行うことができる。また、厚さ方向において積層されたシートは、ホットメルト接着剤等の接着剤を介して互いに接合される。ホットメルト接着剤の塗工方法としては、スパイラル塗工、コーター塗工、カーテンコーター塗工、スプレー塗工などの各種公知の塗工方法が挙げられる。
【0026】
裏面シート12には、装飾域40が配置される。装飾域40は、着色された複数の装飾部41を有する。装飾部41は、大小の略三角形であって、生理用ナプキン10の第1及び第2側域34,35うちの第1側域34にのみ互いに独立した状態で配置されている。装飾部41は、縦方向Y及び横方向Xにおいて互いに間隔を空けて配置されている態様、平面視において一部が互いに重なり合っている態様等の複数の配置態様を有する。装飾域40は、裏面シート12の内面又は外面のいずれに配置されていてもよい。ただし、印刷によるインクの脱落を防止するために、裏面シート12の内面に装飾域40が配置されていることが好ましい。
【0027】
本明細書における「白色」とは、マンセル表色系で「N9.5」と表される色や、RGB色空間で「255,255,255」と表される色、所謂、「真っ白」を例示することができる。また、「真っ白」と同じ系統色である、色、具体的には、「真っ白」との色差が0以上、12未満である色も「白色」に含まれる。「白色」以外の色が有色であり、寒色はこの部類に属する。具体的には、上記に定義した「白色」との色差が40以上の色であることが好ましい。白色の特定方法は、白色に対する色差で比較でき、例えば、コニカミノルタ社製の色彩色差計CR-300を用いて特定することができる。
【0028】
装飾部41は、本発明の後記の技術的効果を奏する限りにおいて、図示した形状のほかに、略円形、略楕円形、略四角形、略台形、略星形、花弁形及びその他の各種公知の装飾模様、文字、キャラクター等の形状を有していてもよい。また、装飾部41は全体として着色されており、着色される色は、酸化チタン等の白色顔料を添加することによって白色化された生理用ナプキンを構成するシート材料及び吸収性コアと視覚上明瞭に識別できる色であればよく、例えば、赤色、青色、黄色、緑色等の着用者等の注意を惹きつけるような色合いであることが好ましい。また、裏面シート12全体が白色以外に着色されている場合には、装飾部41は、その着色されて色と補色関係にある色に着色されていることが好ましい。
【0029】
装飾部41は、それと重なる吸収体20の外郭線の形状が視覚上不明瞭になる限りにおいて、全体が着色されていなくてもよく、外形ラインのみが着色されたデザインであってもよい。また、裏面シート12の外面が不織布から形成されている場合には、着色されていない凹凸状のエンボス模様であってもよい。かかるエンボス模様であっても、光の屈折等によってそれに重なる吸収体20の外郭線の形状がぼやけて着用者等に明瞭に視認されないようにすることができる。
【0030】
装飾域40は、第1及び第2側縁部17,18のうちの第1側縁部17にのみ配置されており、平面視認において、吸収体20の第1及び第2側縁20c,20dのうちの第1側縁20cのみと重なって位置している。着色された装飾域40が吸収体20の第1側縁20cとのみ平面視において重なることによって、吸収体20の両側縁20c,20dのうちの第2側縁20dのみが表面側及び裏面側から明瞭に透視されることから、着用者または着用補助者は吸収体20の存在自体を認識しうるが、その外郭線を正確に把握することができない。したがって、例えば、生理用ナプキン10の高速製造ライン上において吸収体20が縦断中心線Pに関して位置ずれした場合、すなわち、第1側縁20cまたは第2側縁20d側へ偏倚して配置された場合であっても、位置ずれしていることを着用者等に把握されることはない。
【0031】
着用者等が一見して、生理用ナプキン10は吸収体20が正規な位置から位置ずれした製品であると認識されることはないことから、かかる位置ずれした製品を製造工程において不良品として処理する必要はなく、不良品の発生時に製造ラインを停止することによる生産性の低下や不良品を廃棄することによる製品コストの負担を低減することができる。
【0032】
また、着用者等は、生理用ナプキン10を個包装から取り出したときに、瞬時に、生理用ナプキン10の外形輪郭と吸収体20の外形輪郭とを認識して、それらの外形輪郭間の距離を把握することができる。このとき、吸収体20が横方向Xに位置ずれしているように見えた場合には、吸収体の品質や吸収性能に問題がなくても、製品自体の品質が悪くて粗悪品のような印象を与えてしまうおそれがある。実際には、吸収体20が横方向Xへ多少位置ずれしていたとしても吸収性能が低下する等の品質上の問題が生じることはないが、着用者に対して品質の誤認を与えないようにするために、できるだけ吸収体20が横方向Xへ位置ずれしていることを把握されないようにすることが好ましい。そのためには、着用者に対して一見して、吸収体20の外形輪郭、および、生理用ナプキン10外形輪郭と吸収体20の外形輪郭との距離を把握されないことが好ましい。
【0033】
着用者に対して、吸収体20の外形輪郭や生理用ナプキン10外形輪郭と吸収体20の外形輪郭との距離を把握されないようにするためには、第1側縁20cのみならず第2側縁20dと平面視において重なるように装飾域40を配置することも考えられるが、かかる場合には、吸収体20の両側縁20c,20dを把握することができなくなって、着用者等に対して体液の吸収性、特に体液の横漏れに対する不安感を与えてしまうおそれがある。
【0034】
本実施形態に係る生理用ナプキン10においては、裏面シート12の第1側縁部17にのみ装飾域40が位置することから、吸収体20の第1側縁20cが視認されることはなく、吸収体20が多少横方向Xに位置ずれしていたとしても、吸収体20の外形輪郭及び生理用ナプキン10の外形輪郭と吸収体20の外形輪郭との離間距離を把握されて位置ずれしているとの印象を与えることはないから、吸収性能や品質等に関しての不安感を低減することができる。また、第2側縁部18に位置する吸収体20の第2側縁20dは明瞭に視認されることから、吸収体20が幅狭であるとの印象を与えることはなく、着用者等に対して吸収性及び体液の横漏れに関して不安感を低減することができる。
【0035】
また、吸収体20は所要の厚さ寸法を有することから、装飾域40と重なる吸収体20の第1側縁20dに沿って段差が生じる場合であっても、第1側縁部17と第2側縁部18とにおいて非対称のデザインを有することから、第1側縁部17の装飾域40が着用者等の注意を惹きつけて、かかる段差を目立たなくさせて吸収体20の位置ずれが把握されるのを抑制することができる。
【0036】
装飾域40は、少なくとも第1側縁部17に位置して吸収体20の第1側縁20cと平面視において互いに重なり合っているものであって、第1側域34の縦方向Y全域に配置されていてもよい。かかる場合には、吸収体20の第1側縁部20c側の形状を視認され難くすることによって、より吸収体20の外形を把握され難くすることができる。また、装飾域40は、第1側縁部17において吸収体20の第1側縁20cと平面視において重なる限りにおいて、ウイング部19を含めた第1側縁20cの横方向Xの外側に位置する部分に配置されていなくてもよい。
【0037】
図4において太い一点鎖線で示す、装飾域40の内側縁40a、すなわち、複数の装飾部41のうちの縦断中心線P側に位置する部分を縦方向Yへ非連続的につなげて形成される仮想ラインは、縦断中心線Pに対して起伏した形状を有している。具体的には、
図5(a)を参照すると、装飾部41は、ランダムな大きさ、位置、向きを有するように配置されており、任意の装飾部41Aの先端と縦断中心線Pとの横方向Xにおける離間寸法R1と、任意の装飾部41Bの先端と縦断中心線Pとの横方向Xにおける離間寸法R2とは互いに異なっている。装飾部41が不規則に配置されることから、縦方向Yへ並ぶ複数の装飾部41の離間寸法はすべて異なり、内側縁40aはジクザク状に縦方向Yへ非連続的に延びているといえる。このように、装飾域40の内側縁40aが縦断中心線Pに対して起伏した形状を有することから、それが直線状である場合に比して、着用者等の注意を装飾域40により強く引き付けて、縦方向Yへ延びる吸収体20の第1側縁20cの形状が把握されるのを抑制することができる。
【0038】
装飾域40の装飾部41は、略三角形状であって、第1側縁部17の第1側縁10c側から縦断中心線Pへ向かって先鋭状に延びた形状を有している。装飾部41がかかる形状を有することによって、装飾域40を形成する装飾部41の面積は、縦断中心線P側よりも吸収体20の第1側縁20cが位置する第1側縁10c側の方が相対的に大きくなるので、装飾部41の総面積を抑制しつつ効果的に吸収体20の外形が把握されるのを防止することができる。また、円形状や縦方向Yの外側へ先鋭状に延びている場合に比べて、装飾部41の先端が縦断中心線P側へ向いていることによって、着用者等の視線が無意識的に吸収体20の第1側縁20c側よりも縦断中心線P側へ向かうので、第1側縁20cの外形が注視されるのを抑制することができる。
【0039】
図2を参照すると、生理用ナプキン10の表面視においては、吸収体20が装飾域40の位置する裏面シート12の上方に位置することから、装飾域40のうちの縦断中心線P側に位置する部分が吸収体20によって視認され難い。また、装飾域40の着色された色によっては、例えば吸収体20が白色の場合にはその白色が強調されて見えてしまうことがあり、第1側縁20cの横方向Xの外側において透視される装飾域40によって、かえって第1側縁20cの形状が明瞭になってしまうおそれがある。
【0040】
本実施形態においては、装飾部41が互いに独立した形状を有していることから、装飾域40は、装飾部41間に位置する、装飾部41が配置されていない複数の非装飾部42を有する。複数の装飾部41によって吸収体20の第1側縁20cが視認され難くなる部分と、複数の非装飾部42によって第1側縁20cが不明瞭に視認される部分とが混在することで第1側縁20cの形状がはっきりと視認されずに、吸収体20の外形を把握されるのを抑制することができる。
【0041】
装飾域40の縦方向Yの寸法は、吸収体20の第1側縁20cの縦方向Yの寸法L1の少なくとも半分以上、好ましくは60%以上の大きさ、好ましくは80%以上の大きさを有する。装飾域40の縦方向Yの寸法が吸収体20の第1側縁20cの縦方向Yの寸法L1の半分以上の大きさを有することによって、吸収体20の第1側縁20cの大部分が装飾域40によって視認され難くなり、外形が把握されるのを抑制することができる。
【0042】
また、装飾域40では、縦断中心線P側に比べて第1側縁10c側において装飾部41が密に配置されている。横方向Xにおいて装飾部41を疎密に配置することによって、装飾域40は色の濃度のコントラストによる装飾要素を有するので、着用者の注意を惹きつけて、吸収体20の第1側縁20cが明瞭に視認され難くなるといえる。
【0043】
大部分の装飾部41において着色された色は、横方向Xの内側へ向かうにつれて次第に濃くなっている。このように、装飾部41の着色された色がグラデーションを有することによって、装飾域40が不規則なデザインを有し、着用者等に一見して吸収体20の外形を把握され難くすることができる。
【0044】
図5(b)を参照すると、装飾域40の一部は、平面視において、横方向Xへ延びる吸収体20の第1端縁20aの一部と重なっている。具体的には、装飾部41のうちの装飾部41D,41E,41Fが第1端縁20aの一部と重なっている。このように、装飾域40が、縦方向Yへ延びる第1側縁20cのみならず、それに交差して横方向Xへ延びる第1端縁20aの一部と重なることによって、吸収体20の外形が把握されるのをより効果的に抑制しうる。
【0045】
第1及び第2側縁部17、18は、複数の括れ部を有する非流線形状であって、生理用ナプキン10の第1端域31、第2端域32及び中間域33のそれぞれにおいて互いに異なる形状を有する。また、
図4を参照すると、第1端域31における第1及び第2側縁10c,10dと吸収体20の第1及び第2側縁20c,20dとの横方向Xの離間寸法W1、第2端域32における第1及び第2側縁10c,10dと吸収体20の第1及び第2側縁20c,20dとの横方向の離間寸法W3、中間域33における第1及び第2側縁10c,10dと吸収体20の第1及び第2側縁20c,20dとの横方向の離間寸法W2とは、互いに異なる大きさを有する。このように、離間寸法W1-W3がそれぞれ異なることから、第1側縁部17に位置する装飾域40の面積(装飾部41の面積の合計)が縦方向Yの各域31-33において異なって、装飾域40のデザイン性が向上して着用者等の注意を惹きつけ、吸収体20の第1側縁20cの形状や位置を注視しないようにすることができる。
【0046】
図6は、生理用ナプキン10の変形例の一例における模式的平面図であって、吸収体20の両側縁部には、縦方向Yへ延びるスリット51、52が形成されている。第1側縁部17において、装飾域40とスリット51が平面視において互いに重なり合っている。装飾域40がスリット51と重なることによって、生理用ナプキン10の表面視において、裏面シート12の外面に位置する装飾域40の裏面が直接視認されることから、装飾域40がより明瞭に視認されて吸収体20の外形が把握され難くなる。
【0047】
なお、
図6では、一対のスリット51,52を介して裏面シート12の装飾域40を視認可能としているが、これに限られるものではない。例えば、吸収体20の全体又は一部に、縦方向Y及び/又は横方向Xへ延びる透視可能要素を配置し、生理用ナプキン10の表面側からも裏面シート12の装飾域40を視認させるようにすることによって、吸収体20の外形が把握され難くしてもよい。透視可能要素は、例えば、吸収体20の一部において他の部分に比べて低質量となっている部分、エンボス加工等による圧縮凹部によって肉薄となっており、装飾域40と表面シート11との離間距離を縮めることで透視され易くしている部分であってもよいし、装飾域40の着色された色の色相を吸収体20の色の色相と大きく変えることでより透視され易くすることも含む。
【0048】
図7は、生理用ナプキンの変形例の他の一例における模式的平面図である。本変形例においては、第1及び第2端部15,16のうちの第1端部15にのみ装飾域40が位置し、かつ、平面視において、装飾域40は吸収体20の第1端縁20aと互いに重なり合っている。このように、生理用ナプキン10の第1端部15にのみ装飾域40が位置することによって、生理用ナプキン10の裏面側及び装飾域40が透視される表面側において、縦方向Yの両端において異なるデザインを有する。
【0049】
吸収体20の第1端縁20aが装飾域40によって明瞭に視認されないことから、製造工程において吸収体20が縦方向Yに位置ずれした場合であっても、かかる位置ずれを着用者等に把握されるのを抑制することができる。また、第2端部16には装飾域40が位置しておらず、表裏面側において吸収体20の第2端縁20cの形状は明瞭に視認されることから、着用者等に対して吸収性及び縦方向Yの外側に体液が漏れることによる不安感を与えるおそれはない。
【0050】
ここで、「吸収体20が横方向Xに位置ずれしている」とは、生理用ナプキン10の縦断中心線Pに対して吸収体20の横方向Xの寸法を2等分する縦断中心線が第1側縁10c側又は第2側縁10d側に10mm未満位置ずれしている状態を意味する。横方向Xの位置ずれは、好ましくは5mm未満であって、かかる場合には、第1側縁10c側に位置する装飾域40によってその位置ずれが着用者等に把握されるのを抑制することができる。
【0051】
以上のように、装飾域40は、生理用ナプキン10の意匠性を高めるとともに、吸収体20の縦方向Yまたは横方向Xの位置ずれが把握されるのを抑制するために配置されるものである限りにおいて、吸収体20の第1側縁20cまたは第2側縁20dと重なるように配置されていてもよいし、第1端縁20aまたは第2端縁20bと重なるように配置されていてもよい。
【0052】
したがって、吸収体20の縦方向Y又は横方向Xにおける位置ずれが把握されるのを抑制するためには、装飾域40は、生理用ナプキン10の第1及び第2縁部(第1及び第2側縁部17,18、または、第1及び第2端部15,16)のうちの第1縁部においてのみ、第1方向(縦方向Yまたは横方向X)へ延びるように配置されて、吸収体20の第1縁(第1側縁20c又は第1端縁20a)と平面視において互いに重なっていればよい。
【0053】
吸収性物品10を構成する各構成部材には、特に明記されていない限りにおいて、本明細書に記載されている材料のほかに、この種の分野において通常用いられている、各種公知の材料を制限なく用いることができる。また、本明細書及び特許請求の範囲において使用されている、「第1」、「第2」及び「第3」の用語は、同様の要素、位置等を単に区別するために用いている。
【符号の説明】
【0054】
10 吸収性物品(生理用ナプキン)
11 表面シート
12 裏面シート
17 第1縁部(第1側縁部)
18 第2縁部(第2側縁部)
20 吸収体
20a 第3縁(第1端縁)
20c 第1縁(第1側縁)
20d 第2縁(第2側縁)
31 第1域(第1端域)
32 第2域(第2端域)
33 第3域(中間域)
40 装飾域
40a 内側縁
41 装飾部
42 非装飾部
51 スリット
52 スリット
L1 吸収体の第1縁の第1方向の寸法(吸収体の第1側縁の縦方向Yの寸法)
X 第2方向(横方向,縦方向)
Y 第1方向(縦方向,横方向)
P 第1中心線(縦断中心線)
Q 第1中心線(横断中心線)