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特許7118009粒子捕捉デバイス及び粒子を均一に捕捉する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】粒子捕捉デバイス及び粒子を均一に捕捉する方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20220805BHJP
【FI】
C12M1/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018555013
(86)(22)【出願日】2017-12-05
(86)【国際出願番号】 JP2017043641
(87)【国際公開番号】W WO2018105608
(87)【国際公開日】2018-06-14
【審査請求日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】P 2016237237
(32)【優先日】2016-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康夫
(72)【発明者】
【氏名】室田 敦史
(72)【発明者】
【氏名】大坂 享史
(72)【発明者】
【氏名】緒方 寿幸
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/016842(WO,A1)
【文献】特開2012-177686(JP,A)
【文献】国際公開第2014/020657(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/038670(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/057234(WO,A1)
【文献】HOSOKAWA, M. et al.,"Size-selective microcavity array for rapid and efficient detection of circulating tumor cells.",ANAL. CHEM.,2010年08月01日,Vol.82, No.5,pp.6629-6635,doi:10.1021/ac10122x
【文献】SAEKI, T. et al.,"Digital cell counting device integrated with a single-cell array.",PLOS ONE,2014年02月,Vol.9, No.2,e89011(p.1-8),doi:10.1371/journal.pone.0089011
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00- 3/10
C12N 15/00-15/90
C12Q 1/00- 3/00
C12N 1/00- 7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と、前記第1の基板の一方側に平行に対向するように配置された第2の基板とを備え、
前記第1の基板は、前記第1の基板の他方側に開口し、粒子1個を捕捉可能な大きさを有する凹部を複数有しており、
前記凹部は、前記一方側と前記他方側とを連通し、前記粒子の分散媒が移動可能な大きさを有する連通孔を有しており、
前記第1の基板と前記第2の基板との間は、前記第1の基板の前記連通孔を前記分散媒の流入口とし、前記第1の基板の一方側の端部を前記分散媒の流出口とする流路を形成しており、
前記連通孔の開口面積の合計がmm以上mm未満であり、前記流出口における前記流路の断面積が、前記連通孔の開口面積の合計の0.8倍以上であるか、又は
前記連通孔の開口面積の合計が10mm以上100mm以下であり、前記流出口における前記流路の断面積が、前記連通孔の開口面積の合計の0.1倍以上であり、
前記粒子が細胞又は細胞塊である
粒子捕捉デバイス。
【請求項2】
前記連通孔の開口面積の合計が10mm 以上50mm 以下であり、前記流出口における前記流路の断面積が、前記連通孔の開口面積の合計の0.26倍以上である、請求項1に記載の粒子捕捉デバイス。
【請求項3】
前記流出口における前記流路の断面積が前記連通孔の開口面積の合計よりも大きい、請求項1又は2に記載の粒子捕捉デバイス。
【請求項4】
前記第1の基板と前記第2の基板との間の距離が100μm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の粒子捕捉デバイス。
【請求項5】
前記粒子の直径が1~500μmである、請求項1~のいずれか一項に記載の粒子捕捉デバイス。
【請求項6】
第1の基板と、前記第1の基板の一方側に平行に対向するように配置された第2の基板とを備え、
前記第1の基板は、前記第1の基板の他方側に開口し、粒子1個を捕捉可能な大きさを有する凹部を複数有しており、
前記凹部は、前記一方側と前記他方側とを連通し、前記粒子の分散媒が移動可能な大きさを有する連通孔を有しており、
前記第1の基板と前記第2の基板との間は、前記第1の基板の前記連通孔を前記分散媒の流入口とし、前記第1の基板の一方側の端部を前記分散媒の流出口とする流路を形成しており、
前記連通孔の開口面積の合計がmm以上100mm 以下であり、
前記第1の基板と前記第2の基板との間の距離が100μm以上であり、
前記粒子が細胞又は細胞塊である
粒子捕捉デバイス。
【請求項7】
前記連通孔の開口面積の合計が2mm 以上50mm 以下である、請求項6に記載の粒子捕捉デバイス。
【請求項8】
請求項1~のいずれか一項に記載の粒子捕捉デバイスを用いることを含む、粒子を均一に捕捉する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一態様において、本発明は、粒子捕捉デバイスに関する。本願は、2016年12月7日に、日本に出願された特願2016-237237号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
細胞等の粒子を捕捉して網羅的に解析する需要がある。例えば、特に創薬分野において、細胞を単一細胞レベルで選別、回収して、選別された細胞を用いる試みがなされている。
【0003】
細胞を網羅的に捕捉する方法として、例えば、特許文献1には、大きさの異なる特定の細胞を分離する目的で、上表面と下表面に大きさの異なる開口部を有する基板を用い、開口部よりも小さい細胞を通過させ、所望の細胞を開口部に保持させる基板および方法が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、細胞を捕捉し平面上に整列するための基板として、1個の細胞を隔離して収容するための開口部を複数有し、開口部の底面に細胞が通過できない大きさの貫通孔を複数有する細胞捕捉基板が記載されている。
【0005】
また、1つの細胞のみが入る大きさのウェルを有するマイクロチップを用いて多数の単一細胞を同時に解析する方法が知られている。例えば、特許文献3には、1つの細胞のみが入る大きさのウェルを有するマイクロウェルアレイと、該マイクロウェルアレイで細胞を培養し、ウェル中に格納された細胞から産生される物質を検出するスクリーニング方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公平2-34597号公報
【文献】特許第2662215号公報
【文献】特許第4148367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、発明者らは、粒子1個を捕捉可能な大きさを有する凹部を複数備えた粒子捕捉デバイスを用いて、粒子を捕捉する場合に、粒子が均一に捕捉されない場合があることを見出した。ここで、粒子が均一に捕捉されないとは、粒子捕捉デバイス上の単位領域内に含まれる凹部の全数に対する粒子を捕捉した凹部の数の割合が、領域ごとにばらつくことを意味する。このような背景のもと、本発明は、粒子を均一に捕捉する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1実施形態において、本発明は、第1の基板と、前記第1の基板の一方側に平行に対向するように配置された第2の基板とを備え、前記第1の基板は、前記第1の基板の他方側に開口し、粒子1個を捕捉可能な大きさを有する凹部を複数有しており、前記凹部は、前記一方側と前記他方側とを連通し、前記粒子の分散媒が移動可能な大きさを有する連通孔を有しており、前記第1の基板と前記第2の基板との間は、前記第1の基板の前記連通孔を前記分散媒の流入口とし、前記第1の基板の一方側の端部を前記分散媒の流出口とする流路を形成しており、前記連通孔の開口面積の合計がmm以上mm未満であり前記流出口における前記流路の断面積が前記連通孔の開口面積の合計の0.8倍以上であるか、又は、前記連通孔の開口面積の合計が10mm以上100mm以下であり前記流出口における前記流路の断面積が前記連通孔の開口面積の合計の0.1倍以上であり、前記粒子が細胞又は細胞塊である、粒子捕捉デバイスである。
【0009】
1実施形態において、本発明は、第1の基板と、前記第1の基板の一方側に平行に対向するように配置された第2の基板とを備え、前記第1の基板は、前記第1の基板の他方側に開口し、粒子1個を捕捉可能な大きさを有する凹部を複数有しており、前記凹部は、前記一方側と前記他方側とを連通し、前記粒子の分散媒が移動可能な大きさを有する連通孔を有しており、前記第1の基板と前記第2の基板との間は、前記第1の基板の前記連通孔を前記分散媒の流入口とし、前記第1の基板の一方側の端部を前記分散媒の流出口とする流路を形成しており、前記連通孔の開口面積の合計がmm以上100mm 以下であり、前記第1の基板と前記第2の基板との間の距離が100μm以上であり、前記粒子が細胞又は細胞塊である、粒子捕捉デバイスである。
【0010】
1実施形態において、本発明は、第1の基板と、前記第1の基板の一方側に平行に対向するように配置された第2の基板とを備え、前記第1の基板は、前記第1の基板の他方側に開口し、粒子1個を捕捉可能な大きさを有する凹部を複数有しており、前記凹部は、前記一方側と前記他方側とを連通し、前記粒子の分散媒が移動可能な大きさを有する連通孔を有しており、前記第1の基板と前記第2の基板との間は、前記第1の基板の前記連通孔を前記分散媒の流入口とし、前記第1の基板の一方側の端部を前記分散媒の流出口とする流路を形成しており、前記流出口における前記流路の断面積が、前記連通孔の開口面積の合計の0.8倍以上である、粒子捕捉デバイスである。
1実施形態において、本発明は、前記粒子捕捉デバイスを用いることを含む、粒子を均一に捕捉する方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、粒子を均一に捕捉する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】粒子捕捉デバイスの一例を示す概略図である。(a)は正面断面図であり、(b)は上面図である。
図2】粒子捕捉デバイスの一例を示す斜視図である。
図3】(a)~(d)は、粒子捕捉デバイスの一例を示す斜視図である。
図4】粒子捕捉デバイスの一例を示す概略図である。(a)は正面断面図であり、(b)は上面図である。
図5】粒子捕捉デバイスの一例を示す概略図である。(a)は正面断面図であり、(b)は上面図である。
図6】(a)~(i)は、粒子捕捉デバイスの製造方法を説明する図である。
図7】比較例1の粒子捕捉デバイスで細胞を捕捉し、蛍光顕微鏡観察を行った結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、場合により図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一又は対応する符号を付し、重複する説明は省略する。なお、各図における寸法比は、説明のため誇張している部分があり、必ずしも実際の寸法比とは一致しない。
【0014】
[粒子捕捉デバイス]
1実施形態において、本発明は、第1の基板と、前記第1の基板の一方側に平行に対向するように配置された第2の基板とを備え、前記第1の基板は、前記第1の基板の他方側に開口し、粒子1個を捕捉可能な大きさを有する凹部を複数有しており、前記凹部は、前記一方側と前記他方側とを連通し、前記粒子の分散媒が移動可能な大きさを有する連通孔を有しており、前記第1の基板と前記第2の基板との間は、前記第1の基板の前記連通孔を前記分散媒の流入口とし、前記第1の基板の一方側の端部を前記分散媒の流出口とする流路を形成しており、前記連通孔の開口面積の合計が1mm以上10mm未満であり前記流出口における前記流路の断面積が前記連通孔の開口面積の合計の0.8倍以上であるか、又は、前記連通孔の開口面積の合計が10mm以上1000mm以下であり前記流出口における前記流路の断面積が前記連通孔の開口面積の合計の0.1倍以上である、粒子捕捉デバイスを提供する。実施例において後述するように、本実施形態の粒子補足デバイスによれば、粒子を均一に捕捉することができる。
【0015】
本実施形態の粒子補足デバイスは、第1の基板と、前記第1の基板の一方側に平行に対向するように配置された第2の基板とを備え、前記第1の基板は、前記第1の基板の他方側に開口し、粒子1個を捕捉可能な大きさを有する凹部を複数有しており、前記凹部は、前記一方側と前記他方側とを連通し、前記粒子の分散媒が移動可能な大きさを有する連通孔を有しており、前記第1の基板と前記第2の基板との間は、前記第1の基板の前記連通孔を前記分散媒の流入口とし、前記第1の基板の一方側の端部を前記分散媒の流出口とする流路を形成しており、前記連通孔の開口面積の合計が1mm以上であり、前記第1の基板と前記第2の基板との間の距離が100μm以上であってもよい。実施例において後述するように、このような粒子補足デバイスによっても粒子を均一に捕捉することができる。
【0016】
図1(a)及び(b)、図2図3(a)~(d)、図4(a)及び(b)、図5(a)及び(b)は、それぞれ本実施形態の粒子捕捉デバイスの一例を示す概略図である。図1(a)は正面断面図であり、図1(b)は上面図である。また、図2図3(a)~(d)は、斜視図である。また、図4(a)は正面断面図であり、図4(b)は上面図である。また、図5(a)は正面断面図であり、図5(b)は上面図である。
【0017】
本実施形態の粒子捕捉デバイス100は、第1の基板10と、第1の基板10の一方側11に平行に対向するように配置された第2の基板20とを備えている。また、第1の基板10は、第1の基板10の他方側12に開口し、粒子1個を捕捉可能な大きさを有する凹部13を複数有している。また、凹部13は、一方側11と他方側12とを連通し、前記粒子の分散媒が移動可能な大きさを有する連通孔14を有している。また、第1の基板10と第2の基板20との間は、第1の基板10の連通孔14を分散媒の流入口とし、第1の基板10の一方側11の端部11a及び11bを前記分散媒の流出口とする流路30を形成している。また、流出口11a及び11bにおける流路30の断面積の合計は、連通孔14の開口面積の合計が1mm以上10mm未満、例えば2~8mmである場合には、連通孔14の開口面積の合計の0.8倍以上である。また、流出口11a及び11bにおける流路30の断面積の合計は、連通孔14の開口面積の合計が10mm以上1000mm以下、例えば10~500mm、例えば10~300mm、例えば10~100mm、例えば10~50mmである場合には、連通孔14の開口面積の合計の0.1倍以上である。
【0018】
あるいは、本実施形態の粒子捕捉デバイス100は、連通孔14の開口面積の合計が1mm以上、例えば1~1000mm、例えば1~500mm、例えば1~300mm、例えば1~100mm、例えば1~50mmであり、前記第1の基板と前記第2の基板との間の距離が100μm以上であってもよい。
【0019】
図1に示す粒子捕捉デバイスの場合、流出口の面積とは、第1の基板10の一方側11の端部(11a及び11b)における流路30の断面積の合計である。
【0020】
実施例において後述するように、本実施形態の粒子捕捉デバイスは、連通孔14の開口面積の合計が1mm以上10mm未満である場合に、流出口の面積が連通孔14の開口面積の合計の0.8倍以上であることにより、粒子を均一に捕捉することができる。また、本実施形態の粒子捕捉デバイスは、連通孔14の開口面積の合計が10mm以上1000mm以下である場合に、流出口の面積が連通孔14の開口面積の合計の0.1倍以上であることにより、粒子を均一に捕捉することができる。また、本実施形態の粒子捕捉デバイスは、連通孔14の開口面積の合計が1mm以上であり、第1の基板と第2の基板との間の距離が100μm以上であることにより、粒子を均一に捕捉することができる。
【0021】
実施例において後述するように、粒子を均一に捕捉することができない場合としては、例えば、粒子捕捉デバイスの中央部では粒子の捕捉率が少なく、粒子捕捉デバイスの端部(流出口に近い部分)では粒子の捕捉率が多くなる場合が挙げられる。より具体的には、図7に示す写真がこのような例である。なお、本明細書において、粒子の捕捉率とは、単位領域内に含まれる凹部の全数に対する粒子を捕捉した凹部の数の割合をいう。また、単位領域は、特に限定されず、例えば顕微鏡で観察した場合の1視野であってもよい。
【0022】
一方、本実施形態の粒子捕捉デバイスでは、粒子捕捉デバイスの中央部における粒子の捕捉率と、粒子捕捉デバイスの端部における粒子の捕捉率との間にばらつきが小さい。したがって、本実施形態の粒子捕捉デバイスによれば、粒子捕捉デバイスの全体に渡って、粒子を均一に捕捉することができる。本明細書において、「粒子の捕捉率が均一である」とは、「捕捉率のばらつきが小さい」と同義であり、粒子捕捉デバイスの任意の領域間における、粒子の捕捉率の比が、例えば0.7以上、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上であることを意味する。
【0023】
従来のデバイスでは、凹部への細胞等の粒子の捕捉は、粒子の重量による自然落下や遠心力による強制的な落下によって行われていたが、捕捉率が低いことが問題となっていた。これに対し、本実施形態の粒子捕捉デバイスによれば、凹部13から連通孔14への液体の流れが生じ得るため、液体の流れにより粒子が容易に凹部に捕捉され、捕捉率が向上する傾向にある。
【0024】
また、従来のデバイスでは、捕捉した細胞等の粒子の回収を試みる際、凹部からの吸引では粒子そのものを巻き込んだ液体の流れを作ることが難しく、目的粒子の回収の成功率が低いことが問題となっていた。これに対し、本実施形態の粒子捕捉デバイスによれば、凹部13の連通孔14を通して流路30から凹部13の開口部に向かう液体の流れが生じ得るため、従来のデバイスに比べて、粒子の回収成功率が向上する傾向にある。
【0025】
(粒子)
本実施形態の粒子捕捉デバイスにおいて、粒子としては特に制限されず、例えば、細胞、細胞塊、樹脂粒子、金属粒子、ガラス粒子、セラミック粒子等が挙げられる。粒子の直径は特に制限されず、例えば約1~500μmであってもよく、例えば約1~200μmであってもよく、例えば約1~100μmであってもよく、例えば約1~50μmであってもよい。本明細書において、粒子の直径とは、粒子の投影面積と同じ面積の円の直径をいうものとする。
【0026】
(分散媒)
粒子を捕捉するにあたり、粒子は分散媒に懸濁された状態で第1の基板10の他方側12から供給される。分散媒としては、特に制限されず、水、緩衝液、等張液、培地等が挙げられ、目的に応じて適宜用いることができる。
【0027】
(第1の基板)
図1(a)に示すように、第1の基板10は、凹部13がパターニングされた層10aと、連通孔14がパターニングされた層10bとから形成されていてもよい。基板10は、例えば図2に示すように、複数個の凹部13が同一間隔で縦横に配置された構造を有していてもよい。
【0028】
図2中、Bは粒子1個を表す。図2に示すように、凹部13の形状は、粒子1個を捕捉可能な形状であれば特に制限はない。凹部13の形状は、円筒形であってもよく、複数の面により構成される多面体(例えば、直方体、六角柱、八角柱等)であってもよく、逆円錐台形であってもよく、逆角錐台形(逆三角錐台形、逆四角錐台形、逆五角錐台形、逆六角錐台形、七角以上の逆多角錐台形)等であってもよく、これらの形状の二つ以上を組み合わせた形状であってもよい。
【0029】
凹部13の形状は、例えば、一部が円筒形であり、残りが逆円錐台形であってもよい。凹部13の形状が円筒形、直方体である場合、凹部13の底部は通常、平坦であるが、曲面(凸面や凹面)であってもよい。
【0030】
凹部13の寸法は、凹部13に捕捉しようとする粒子の直径と凹部13の寸法の好適な比を考慮して適宜決定することができる。凹部13は、パターニングされ、形態、その密度等が制御されていることが好ましい。
【0031】
また、凹部13の形状や寸法は、凹部13に捕捉されるべき粒子の種類(粒子の形状や寸法等)を考慮して、1つの凹部13に1個の粒子が捕捉されるように、適宜決定することができる。
【0032】
1つの凹部13に、1個の粒子が捕捉されるようにするためには、凹部13の平面形状に内接する最大円の直径が、凹部13に捕捉しようとする粒子の直径の0.5~2倍の範囲であることが好ましく、0.8~1.9倍の範囲であることがより好ましく、0.8~1.8倍の範囲であることが更に好ましい。
【0033】
また、凹部13の深さは、凹部13に捕捉しようとする粒子の直径の0.5~4倍の範囲であることが好ましく、0.8~1.9倍の範囲であることがより好ましく、0.8~1.8倍の範囲であることが更に好ましい。
【0034】
例えば、捕捉しようとする粒子が直径約1~50μmの略球形である場合、第1の基板10の厚さ、凹部13の数、凹部13の寸法は以下の通りであることが好ましい。
【0035】
まず、第1の基板10の厚さは、1~100μmが好ましく、10~50μmがより好ましい。また、第1の基板10が有する凹部13の数は、特に制限はないが、1cmあたり、例えば、2,000~1,000,000個の範囲であることが好ましい。また、凹部13の開口率は、製造上の技術的な問題から100%に満たない場合がある。凹部13の開口率は、例えば1~90%の範囲であることが好ましい。
【0036】
また、例えば、凹部13が円筒形の場合、凹部13の寸法は、直径1~100μmが好ましく、直径2~50μmがより好ましく、直径3~25μmが更に好ましい。また、凹部13の深さは、1~100μmが好ましく、2~70μmがより好ましく、3~50μmが更に好ましく、4~30μmが特に好ましい。凹部13の深さが1μm以上の場合、粒子を捕捉しやすく、実用化の観点から好ましい。また、凹部13の深さが100μm以下の場合、複数の粒子が捕捉されるおそれが低い観点から好ましい。
【0037】
(連通孔)
連通孔14の寸法は、凹部13に捕捉しようとする粒子の直径と、凹部13の寸法と、連通孔14を移動させるべき粒子の分散媒の特性等を考慮して適宜決定することができる。連通孔14は、パターニングされ、形態、細孔の径、その密度等が制御されていることが好ましい。連通孔が制御されている場合、粒子の分散媒の透過量の均等性を確保しやすいため好ましい。しかしながら、連通孔14としては、パターニングにより作製されたものに限られず、例えば、多孔質膜等の多孔質材料を使用して形成したものも使用することができる。
【0038】
詳細には、連通孔14の数、位置、形状、大きさ等は、粒子を通過せずに捕捉(凹部13の内部に格納)することができ、分散媒が移動可能な大きさであれば、特に限定されない。
【0039】
例えば、図2に示すように、凹部13が円筒状である場合には、凹部13の底部に、凹部13の直径よりも小さい直径の円筒状の連通孔14を複数個設けてもよい。また、図3に示すように、凹部13が円筒状である場合には、凹部13の底部に、図3(a)~(d)の14a~14dに示すような形状の連通孔を設けてもよい。
【0040】
例えば、捕捉しようとする粒子が直径約1~50μmの略球形である場合であって、連通孔14が円筒状である場合、連通孔14の直径は、10nm~20μmが好ましく、50nm~15μmがより好ましく、100nm~10μmが更に好ましい。連通孔14が柵状の場合、その幅は10nm~20μmが好ましく、50nm~15μmがより好ましく、100nm~10μmが更に好ましい。連通孔14が格子状の場合、一辺は10nm~20μmが好ましく、50nm~15μmがより好ましく、100nm~10μmが更に好ましい。
【0041】
(連通孔の開口面積の合計)
例えば、連通口14が円筒状である場合、連通口14の第1の基板と平行な面の断面積は、連通口14の全体にわたって一定である。この場合、連通口14の任意の位置における、第1の基板と平行な面の断面積を連通口14の開口面積とすればよい。
【0042】
また、連通口14の第1の基板と平行な面の断面積が一定でない場合、連通口14の開口面積とは、第1の基板と平行な面の断面積のうち、最も小さい断面積を連通口14の開口面積とすればよい。
【0043】
連通口14の開口面積の合計とは、本実施形態の粒子補足デバイスが有する、全ての連通口14の開口面積を合計した面積である。
【0044】
(第2の基板)
図1(a)に示すように、本実施形態の粒子捕捉デバイスは、第1の基板10の一方側11に平行に対向するように配置された第2の基板20を備えている。また、第1の基板10と第2の基板20との間は、第1の基板10の連通孔14を流入口とし、第1の基板10の一方側11の端部11a及び11bを流出口とする流路30を形成している。
【0045】
図2に示すように、第1の基板10と第2の基板20との間には、第1の基板10を支持するピラー22が存在していてもよい。ピラー22が存在する場合、第1の基板10を支持し、本発明の目的を達成できる限り、ピラー22の数、位置、形状、大きさ等は特に制限されない。
【0046】
本実施形態の粒子捕捉デバイスにおいて、流出口の面積は、連通孔14の開口面積の合計よりも大きくてもよい。ここで、上述したように、図1(a)に示す粒子捕捉デバイスの場合、流出口の面積は、第1の基板10の一方側11の端部(11a及び11b)における流路30の断面積の合計である。
【0047】
また、連通孔14を、多孔質膜等の多孔質材料を使用して形成した場合には、多孔質材料の空隙率に基づいて連通孔14の開口面積を求めることができる。より具体的には、例えば、凹部13の開口面積の合計と、連通孔14を形成する多孔質材料の空隙率との積を、連通孔14の開口面積の合計とみなしてもよい。
【0048】
本実施形態の粒子捕捉デバイスにおいて、流出口の面積は、連通孔14の開口面積の合計の1.2倍以上であってもよく、1.5倍以上であってもよく、2倍以上であってもよく、2.5倍以上であってもよく、3倍以上であってもよく、4倍以上であってもよく、5倍以上であってもよい。流出口の面積に上限は特にないが、例えば連通孔14の開口面積の合計の50倍程度を上限とするのが実用的である。
【0049】
実施例において後述するように、流出口の面積が、連通孔14の開口面積の合計よりも大きい場合、粒子を更に均一に捕捉することができる傾向にある。
【0050】
また、例えば、捕捉しようとする粒子が直径約1~50μmの略球形である場合、第1の基板10と第2の基板20との間の距離は、例えば100μm以上であってもよく、例えば150μm以上であってもよく、例えば200μm以上であってもよく、例えば250μm以上であってもよく、例えば300μm以上であってもよく、例えば350μm以上であってもよい。第1の基板10と第2の基板20との間の距離の上限は、粒子捕捉デバイスの性能としては限定されないが、実用性等(分散媒の使用量、観察する顕微鏡のサイズ等)を考慮すると、5mm以下が好ましい。
【0051】
実施例において後述するように、第1の基板10と第2の基板20との間の距離が上記の範囲にあることにより、粒子を更に均一に捕捉することができる傾向にある。
【0052】
(材質)
本実施形態の粒子捕捉デバイスの材質は、特に限定されないが、粒子の観察を容易とする観点から、透明性のある材質であることが好ましい。更に、捕捉した粒子を、蛍光観察を指標として観察する場合には、自家蛍光の少ない材質であることが好ましい。
【0053】
第1の基板10及び第2の基板20の具体的な材質としては、例えば、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、エポキシ等の、透明性があり、自家蛍光が少ない一般的な樹脂を用いることができる。
【0054】
また、粒子として細胞を捕捉する場合には、本実施形態の粒子捕捉デバイスの材質は、細胞毒性を有さず、細胞の接着性が低いものであることが好ましい。
【0055】
本実施形態の粒子捕捉デバイスの材質は、粒子1個を捕捉し得る大きさの凹部13、及び分散媒が移動可能な大きさの連通孔14を形成する観点から、微細加工が容易である硬化性樹脂組成物(以下、「感光性樹脂組成物」という場合がある。)を用いて重合したものであることが好ましい。
【0056】
硬化性樹脂組成物としては、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより架橋して硬化する性質を有するものであり、ネガタイプのフォトレジスト、ネガタイプのドライフィルムレジスト、微細な構造を有する微小樹脂成形等に使用されるものが好ましい。以下、硬化性樹脂組成物をフォトリソグラフィ法によって所望の形状に硬化させた硬化物のことを樹脂パターンという場合がある。
【0057】
硬化性樹脂組成物を、微小樹脂成形等の用途として使用する場合、まず、樹脂パターンを形成させる基材の表面に硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化性樹脂組成物に含まれる溶剤成分を揮発させて樹脂膜を作製する。次いで、その樹脂膜の表面に、形成させるパターンの形状となるフォトマスクを載置し、紫外線等の活性エネルギー線を照射する。その後、現像工程、及び必要に応じてポストベーク工程を経ることにより、基材の表面に樹脂パターンが形成される。この樹脂パターンを、本実施形態の粒子捕捉デバイスに使用することができる。
【0058】
このような硬化性樹脂組成物としては、例えば、エポキシ官能性ノボラック樹脂と、トリアリールスルホニウム塩等のカチオン系光重合開始剤と、エポキシ官能基と反応可能な希釈剤とを含み、完全に硬化して、剥離しにくい樹脂となる光硬化性組成物;多官能性ビスフェノールAホルムアルデヒド-ノボラック樹脂と、酸発生剤であるトリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートと、溶剤のPGMEAとを含み、厚膜形成可能な樹脂となる光硬化性組成物等、微小樹脂成形に一般的に用いられる樹脂組成物を採用できる。
【0059】
さらに、エポキシ樹脂と特定の酸発生剤とを組み合わせて感光性(硬化性)樹脂組成物を調製し、この硬化性樹脂組成物を使用して樹脂パターンを形成すれば、高感度で、加熱硬化時の体積収縮が小さく、アスペクト比が高い形状の樹脂パターンを形成できる。
【0060】
硬化性(感光性)樹脂組成物としては、例えば、(a)多官能エポキシ樹脂と、(b)カチオン重合開始剤と、を含む感光性樹脂組成物が挙げられる。
【0061】
《(a)多官能エポキシ樹脂》
本実施形態で使用される多官能エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂であり、硬化性樹脂組成物で形成された樹脂膜を硬化させるのに十分な数のエポキシ基を1分子中に含むエポキシ樹脂であれば、どのようなエポキシ樹脂でもよい。このような多官能エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニル型ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0062】
多官能エポキシ樹脂の1分子中に含まれるエポキシ基の数である官能性は、2以上であることが好ましく、3~12であることがより好ましい。多官能エポキシ樹脂の官能性が3以上であることにより、高いアスペクト比と解像性を有する樹脂パターンを形成することができるので好ましく、多官能エポキシ樹脂の官能性が12以下であることにより、樹脂合成の制御が容易となり、また樹脂パターンの内部応力が過剰に大きくなることを抑制できるので好ましい。
【0063】
多官能エポキシ樹脂の質量平均分子量は、300~5000であることが好ましく、500~4000であることがより好ましい。多官能エポキシ樹脂の質量平均分子量が300以上であることにより、硬化性樹脂組成物が活性エネルギー線照射によって硬化する前に熱フローしてしまうことを抑制できる点で好ましく、多官能エポキシ樹脂の質量平均分子量が5000以下であることにより、パターニング現像時の適当な溶解速度を得ることができる点で好ましい。
【0064】
感光性樹脂組成物中における上記多官能エポキシ樹脂の含有量は、全固形分中、10~99.9質量%であることが好ましく、30~99.9質量%であることがより好ましい。これにより、基板上にコーティングした際に、高感度で適当な硬度の感光性樹脂膜が得られる。
【0065】
《(B)カチオン重合開始剤》
次に、カチオン重合開始剤について説明する。カチオン重合開始剤は、紫外線、遠紫外線、KrF、ArF等のエキシマレーザー光、X線、電子線等の活性エネルギー線の照射を受けてカチオンを発生し、そのカチオンが重合開始剤となり得る化合物である。
【0066】
このようなカチオン重合開始剤としては、例えば、4-(2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-メチルフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-(β-ヒドロキシエトキシ)フェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-メチル-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(3-メチル-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-フルオロ4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-メチル-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2,3,5,6-テトラメチル-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2,6-ジクロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2,6-ジメチル-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2,3-ジメチル-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-メチル-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(3-メチル-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-フルオロ4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-メチル-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2,3,5,6-テトラメチル-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2,6-ジクロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2,6-ジメチル-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2,3-ジメチル-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-クロロ-4-アセチルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-クロロ-4-(4-メチルベンゾイル)フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-クロロ-4-(4-フルオロベンゾイル)フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-クロロ-4-(4-メトキシベンゾイル)フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-クロロ-4-ドデカノイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-クロロ-4-アセチルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-クロロ-4-(4-メチルベンゾイル)フェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-クロロ-4-(4-フルオロベンゾイル)フェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-クロロ-4-(4-メトキシベンゾイル)フェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-クロロ-4-ドデカノイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-クロロ-4-アセチルフェニルチオ)フェニルビス(4-クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-クロロ-4-(4-メチルベンゾイル)フェニルチオ)フェニルビス(4-クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-クロロ-4-(4-フルオロベンゾイル)フェニルチオ)フェニルビス(4-クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-クロロ-4-(4-メトキシベンゾイル)フェニルチオ)フェニルビス(4-クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-クロロ-4-ドデカノイルフェニルチオ)フェニルビス(4-クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4-(2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4-(2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4-(2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムパークロレート、4-(2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-(2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4-(2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムテトラフルオロボレート、4-(2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムパークロレート、4-(2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、4-(2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムp-トルエンスルホネート、4-(2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムカンファースルホネート、4-(2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムノナフルオロブタンスルホネート、4-(2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-クロロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4-(2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-クロロフェニル)スルホニウムテトラフルオロボレート、4-(2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-クロロフェニル)スルホニウムパークロレート、4-(2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-クロロフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスファート、ジフェニル[4-(p-ターフェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル[4-(p-ターフェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスファート等が挙げられる。これらの化合物のうち、4-(2-クロロ-4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(株式会社ADEKA製、アデカオプトマーSP-172)、ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスファート(サンアプロ株式会社製、CPI-210S)、ジフェニル[4-(p-ターフェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル[4-(p-ターフェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリフルオロトリスペンタフルオロエチルホスファート(サンアプロ株式会社製、HS-1PG)が好ましい。
【0067】
硬化性樹脂組成物におけるカチオン重合開始剤の含有量は、0.1~10質量%が好ましく、0.5~5質量%であることがより好ましい。硬化性樹脂組成物におけるカチオン重合開始剤の含有量が0.1質量%以上であれば、硬化性樹脂組成物の活性エネルギー線露光による硬化時間を適切なものとすることができるので好ましい。また、硬化性樹脂組成物におけるカチオン重合開始剤の含有量が10質量%以下であれば、活性エネルギー線による露光後の現像性を良好なものとできるので好ましい。なお、上記含有量は、硬化性樹脂組成物が後述する溶剤成分を含まないとした場合のものである。したがって、硬化性樹脂組成物が後述する溶剤成分を含む場合には、溶剤成分の質量を除いた後におけるカチオン重合開始剤の含有量が上記含有量の範囲となるようにすればよい。その他、硬化性樹脂組成物の詳細については、特開2008-180877号公報、特開2011-111588号公報等に記載の当業者公知の方法に基づいて実施可能であることが当業者には当然に理解される。
【0068】
(変形例)
本実施形態の粒子捕捉デバイスにおいて、第1の基板10の形状、第2の基板20の形状、第1の基板10及び第2の基板20の配置は図1(b)のものに限られない。例えば、図1(b)では、第1の基板10及び第2の基板20はいずれも矩形であるが、第1の基板10、第2の基板20は、例えば円形であってもよく、三角形、五角形、六角形、七角形、八角形等の多角形であってもよい。
【0069】
また、図1(b)では、第1の基板10は、第2の基板20の中央に配置され、流出口が11a及び11bの2ヶ所存在しているが、例えば、第1の基板10は、第2の基板20と一方の端部を揃えた位置に配置され、流出口が11a又は11bの一方のみ存在していてもよい。
【0070】
《変形例1》
図4(a)及び(b)は、本実施形態の粒子捕捉デバイスの一例を示す概略図である。図4(a)は正面断面図であり、図4(b)は上面図である。
【0071】
粒子捕捉デバイス400は、第1の基板10と、第1の基板10の一方側11に平行に対向するように配置された第2の基板20とを備えている。また、第1の基板10は、第1の基板10の他方側12に開口し、粒子1個を捕捉可能な大きさを有する凹部13を複数有している。また、凹部13は、一方側11と他方側12とを連通し、前記粒子の分散媒が移動可能な大きさを有する連通孔14を有している。また、第1の基板10と第2の基板20との間は、第1の基板10の連通孔14を分散媒の流入口とし、第1の基板10の一方側11の端部11aを前記分散媒の流出口とする流路30を形成している。また、流出口11aの面積は、凹部13の開口面積の合計の0.8倍以上である。また、第1の基板10と第2の基板20との相対位置は、保持部材40により位置決めされている。なお、粒子捕捉デバイス400では、保持部材40ではなく、基板10の下部にピラー等を追加することにより、基板20上に基板10を保持する構成としてもよい。
【0072】
図4に示す粒子捕捉デバイスでは、第1の基板10の平面形状は円形である。また第2の基板20の平面形状も円形である。このため、図4に示す粒子捕捉デバイスは2層になったシャーレのような形状をしている。
【0073】
図4に示す粒子捕捉デバイスの場合、第1の基板10の一方側11の端部11aは、円形の第1の基板10の円周である。このため、図4に示す粒子捕捉デバイスでは、流出口の面積は、第1の基板10の円周11aにおける流路30の断面積である。
【0074】
《変形例2》
図5(a)及び(b)は、本実施形態の粒子捕捉デバイスの一例を示す概略図である。図5(a)は正面断面図であり、図5(b)は上面図である。
【0075】
粒子捕捉デバイス500は、第1の基板10と、第1の基板10の一方側11に平行に対向するように配置された第2の基板20とを備えている。また、第1の基板10は、第1の基板10の他方側12に開口し、粒子1個を捕捉可能な大きさを有する凹部13を複数有している。また、凹部13は、一方側11と他方側12とを連通し、前記粒子の分散媒が移動可能な大きさを有する連通孔14を有している。また、第1の基板10と第2の基板20との間は、第1の基板10の連通孔14を分散媒の流入口とし、第1の基板10の一方側11の端部11a、11b、11c、11dを前記分散媒の流出口とする流路30を形成している。また、流出口11a、11b、11c、11dの面積の合計は、凹部13の開口面積の合計の0.8倍以上である。また、第1の基板10と第2の基板20との相対位置は、保持部材40により位置決めされている。なお、粒子捕捉デバイス500では、保持部材40ではなく、基板10の下部にピラー等を追加することにより、基板20上に基板10を保持する構成としてもよい。
【0076】
図5に示す粒子捕捉デバイスでは、第1の基板10の平面形状は矩形である。また第2の基板20の平面形状は円形である。
【0077】
図5に示す粒子捕捉デバイスの場合、第1の基板10の一方側11の端部11a、11b、11c、11dは、それぞれ矩形の第1の基板10の外周の一辺である。このため、図5に示す粒子捕捉デバイスでは、流出口の面積は、第1の基板10の外周の辺11a、11b、11c、11dにおける流路30の断面積の合計である。
【0078】
《変形例3》
上述した粒子捕捉デバイスは、複数連結されていてもよい。例えば、上述した粒子捕捉デバイス400又は500は、複数連結されて、6ウェルプレート型、12ウェルプレート型、24ウェルプレート型、48ウェルプレート型、96ウェルプレート型、384ウェルプレート型、1536ウェルプレート型等の形状に形成されていてもよい。特に、粒子として細胞を捕捉する場合、粒子捕捉デバイスのサイズは、実用上の観点から、広く細胞培養等に利用されている、SBS規格に準拠したサイズ、スライドグラスサイズ、又は、シャーレのサイズで作製することが好ましい。
【0079】
[粒子捕捉デバイスの製造方法]
1実施形態において、本発明は、上述した粒子捕捉デバイスの製造方法を提供する。本実施形態の製造方法は、第1の支持体上に、溶解可能な下地膜を形成し、該下地膜上に第1の硬化性樹脂組成物を塗布して第1の硬化性樹脂膜を形成し、該第1の硬化性樹脂膜に連通孔をパターニングして、連通孔がパターニングされた支持層を得る工程1と、前記支持層上に、第2の硬化性樹脂組成物を塗布して第2の硬化性樹脂膜を形成し、該第2の硬化性樹脂膜に凹部をパターニングして、凹部がパターニングされた第1の基板を得る工程2と、前記下地膜を溶解して、前記第1の支持体から前記第1の基板を剥離する工程3と、前記第1の基板と第2の基板とを接合させる工程4と、を含み、前記第1の基板と第2の基板との接合物が粒子捕捉デバイスである。
【0080】
本実施形態の製造方法において、第2の基板はピラーを有していてもよい。この場合、本実施形態の製造方法は、工程4の前に、第2の基板上に、第3の硬化性樹脂組成物を塗布して第3の硬化性樹脂膜を形成し、該第3の硬化性樹脂膜にピラーをパターニングして、ピラーがパターニングされた第2の基板を得る工程aを更に備えていてもよい。
【0081】
(工程1)
本工程では、例えば図6(a)に示すように、第1の支持体31上に、溶解可能な下地膜32を形成し、該下地膜32上に、第1の硬化性樹脂組成物を塗布して第1の硬化性樹脂膜10Bを形成し、第1の硬化性樹脂膜10Bを露光した後、現像して、図6(c)に示すような連通孔14がパターニングされた層10bを形成する。
【0082】
連通孔14のパターニング方法は、露光・現像に限られず、インプリント法や誘導自己組織化(Directed Self Assembly,DSA)技術を用いた方法等も採用できる。また、第1の硬化性樹脂膜10Bの硬化方法は、露光でなくともよく、公知の方法が採用される。
【0083】
第1の支持体としては、例えば、電子部品用の基板や、これに所定の配線パターンが形成されたもの等を例示することができる。より具体的には、シリコンウェハ、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属製の基板や、ガラス基板等が挙げられる。配線パターンの材料としては、例えば銅、アルミニウム、ニッケル、金等が使用可能である。第1の硬化性樹脂組成物としては、上述した硬化性(感光性)樹脂組成物が挙げられる。
【0084】
下地膜32には、ポリビニルアルコール樹脂、デキストリン、ゼラチン、にかわ、カゼイン、セラック、アラビアゴム、澱粉、蛋白質、ポリアクリル酸アミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルメチルエーテル、スチレン系エラストマー、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との共重合体、酢酸ビニルとイタコン酸との共重合体、ポリビニルピロリドン、アセチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等を用いることができる。これらの材料は、同種の液体に可溶な複数の材料の組み合わせであってもよい。下地膜の強度や柔軟性の観点から、下地膜の材料は、例えば、マンナン、キサンタンガム、又はグアーガム等のゴム成分を含んでいてもよい。
【0085】
(工程2)
本工程では、例えば図6(d)に示すように、層10b上に、第2の硬化性樹脂組成物を塗布して第2の硬化性樹脂膜10Aを形成し、該第2の硬化性樹脂膜10Aを露光した後、現像して、層10b上に、凹部13がパターニングされた第1の基板10を得る。
【0086】
第2の硬化性樹脂組成物としては、上述した硬化性(感光性)樹脂組成物が挙げられる。凹部13のパターニング方法は、露光・現像に限られず、インプリント法や誘導自己組織化(Directed Self Assembly,DSA)技術を用いた方法等も採用できる。また、第2の硬化性樹脂組成物の硬化方法は、露光でなくともよく、公知の方法が採用される。
【0087】
(工程3)
本工程では、例えば剥離剤(例えば、1-メチル-4-イソプロピルシクロヘキサン(p-Menthane))に基板ごと浸漬することにより、下地膜32を溶解し、第1の支持体31から第1の基板10を剥離する。
【0088】
(工程4)
本工程では、上記工程で得られた図6(f)に示す第1の基板10及び図6(g)に示す第2の基板20を接合させる。接合する際には、層10bが第2の基板20と対向するように接合する。接合には、前記硬化性樹脂組成物を接着剤として用いてもよい。図6(f)に示すように、第2の基板20はピラー22を有していてもよい。
【0089】
(工程a)
本工程では、例えば図6の(i)に示すように、第2の支持体20上に、第3の硬化性樹脂組成物を塗布して、第3の硬化性樹脂膜22Aを形成し、第3の硬化性樹脂膜22Aを露光して現像することにより、図6(g)に示すようなピラーパターン22を形成する。
【0090】
ピラーパターン22の形成は任意であり、本工程は存在しなくてもよい。また、第3の硬化性樹脂組成物の硬化方法は、露光でなくともよく、公知の方法が採用される。支持体20としては、例えば、電子部品用の基板が使用できるが、捕捉した粒子を観察しやすい観点から透明な基板であることが好ましく、具体的にはガラス基板を採用することが好ましい。第3の硬化性樹脂組成物としては、上述した硬化性(感光性)樹脂組成物が挙げられる。
【0091】
[粒子の捕捉方法]
1実施形態において、本発明は、上述した粒子捕捉デバイスの流入口に粒子を供給し、流出口から分散媒を流出させる工程を備える、粒子の捕捉方法を提供する。本実施形態の捕捉方法は、粒子を均一に捕捉する方法、均一に捕捉された粒子の製造方法等といいかえることができる。
【0092】
本実施形態の粒子の捕捉方法において、上述した粒子捕捉デバイスの流入口から供給された粒子は、第1の基板10に設けられた凹部13に捕捉される。また、粒子の分散媒は連通孔14を移動して流路30を通過し、流出口から排出される。
【0093】
本実施形態の粒子の捕捉方法では、上述した粒子捕捉デバイスを使用することにより、粒子を均一に捕捉することができる。
【0094】
本明細書において引用される全ての技術文献は、参照としてその全体が本明細書中に援用される。
【0095】
本明細書で用いられる用語は、特定の実施形態を説明するために用いられ、発明を限定する意図として理解されてはならない。異なる定義が明示されていない限り、本明細書で用いられる用語(技術用語及び科学用語を含む。)は、本発明が属する技術分野における当業者によって広く理解されるものと同じ意味を有するものとして解釈され、かつ、理想化され、又は、過度に形式的な意味において解釈されるべきではない。
【0096】
本明細書で用いられる用語「含む」は、文脈上明らかに異なる理解をすべき場合を除き、記述された事項(部材、工程、要素、数字等)が存在することを意図するものであり、それ以外の事項(部材、工程、要素、数字等)が存在することを排除しない。
【0097】
本明細書及び特許請求の範囲において、特に明示されていない場合であって、文脈において矛盾しない限り、本明細書及び特許請求の範囲に記載の各名詞が表す対象は、一又は複数存在してもよいことが意図される。
【実施例
【0098】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0099】
[実施例1]
(第1の基板の製造)
《連通孔パターニング》
シリコン基板上に、下地剤をスピンコータ―(1500rpm、20秒)で塗布し、ホットプレートにより90℃で1分間、120℃で3分間プリベークし、下地膜を形成した。
【0100】
該下地膜上に感光性樹脂組成物(特開2008-180877号公報、特開2011-111588号公報参照。)をスピンコータ―(3000rpm、20秒)で塗布し、ホットプレートにより90℃で3分間プリベークした。その後、ミラープロジェクションマスクアライナー(型式「MPA―600FA」、キャノン製)を用いてパターン露光(GHI線、150mJ)を行い、ホットプレートにより90℃で5分間露光後加熱を行った。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を用いた浸漬法により、30秒間の現像処理を行った。次いで、現像後の樹脂パターンを、基板ごと、オーブンを用いて120℃で1分間ポストベークし、円筒状の連通孔樹脂パターンを得た。
【0101】
《凹部パターニング》
上記で得られた連通孔樹脂パターン上に、上記感光性樹脂組成物をスピンコータ―(1000rpm、20秒)で塗布し、ホットプレートにより90℃で5分間プリベークした。その後、ミラープロジェクションマスクアライナー(型式「MPA―600FA」、キャノン製)を用いてパターン露光(GHI線、60mJ)を行い、ホットプレートにより90℃で5分間露光後加熱を行った。その後、PGMEAを用いた浸漬法により、2分間の現像処理を行なった。次いで、現像後の樹脂パターンを、基板ごと、オーブンを用いて120℃で1分間ポストベークし、凹部パターンを得た。凹部は直径10μmの円筒状とした。
【0102】
(第1の基板の剥離)
上記で得られた凹部がパターニングされた第1の基板を、剥離剤に浸漬し、上記下地膜を溶解することにより、シリコン基板から、連通孔樹脂パターン上に凹部パターンが形成された第1の基板を剥離した。
【0103】
(第2の基板の製造)
ガラス基板上に、上記感光性樹脂組成物をスピンコータ―(1000rpm、20秒)で塗布し、ホットプレートにより90℃で5分間プリベークした。その後、平行光露光機(伯東株式会社製、型番MAT-2501)を用いてパターン露光(ソフトコンタクト、GHI線、500mJ)を行い、ホットプレートにより90℃で5分間露光後加熱を行った。その後、PGMEAを用いた浸漬法により、2分間の現像処理を行った。次いで、現像後の樹脂パターンを基板ごと、オーブンを用いて120℃で1分間ポストベークし、第2の基板上に樹脂パターンを形成した。樹脂パターンは、後述する工程で第1の基板及び第2の基板を接合した場合に、第1の基板と第2の基板との間の距離(以下、「流路高さ」という場合がある。)を規定するものであり、第1の基板と第2の基板との間の距離が120μmとなる樹脂パターンを作製した。なお、流路高さが高い場合(例えば100μm以上)は、上記スピンコーターによる塗布工程を、目標の高さになるまで、繰り返して行った。
【0104】
(第1の基板及び第2の基板の接合)
上記で得られた第2の基板樹脂パターン上部に接着剤を塗布し、35℃で1分間プレベークした。その後、上記で得られた第1の基板を連通孔パターンが下になるように第2の基板と接合し、平行光露光機(伯東株式会社製、型番MAT-2501)を用いて露光(ソフトコンタクト、GHI線、60mJ)を行い、ホットプレートにより35℃で3分間、90℃で1分間露光後加熱を行い、接着剤を硬化させることにより第1の基板と第2の基板を接合し、図1(b)に示す形状の実施例1の粒子捕捉デバイスを得た。
【0105】
第一の基板の厚さは10μmであり、凹部間のピッチは75μmであり、円筒状の連通孔の直径は2μmであった。凹部の直径は10μmであり、第1の基板と第2の基板との間の距離は120μmであった。また、粒子捕捉デバイスの大きさは、平面図において長さが75mm、横幅が26mmの矩形型であり、厚さは15mmであった。
【0106】
実施例1の粒子捕捉デバイスにおいて、流出口の面積は、4.8mmであった。なお、流出口の面積は、図1(b)に示す11a及び11bの2ヶ所における流路30の断面積の合計である。また、連通孔の開口面積の合計は2.7mmであった。したがって、流出口の面積は連通孔の開口面積の合計の約1.78倍であった。
【0107】
[実施例2~11、比較例1~2]
デバイス形状、凹部の直径、流路高さ、凹部連通孔開口面積の合計、流出口面積を表1に示すものにした以外は、実施例1と同様にして、実施例2~8、比較例1~2の粒子捕捉デバイスを作製した。
【0108】
デバイス形状が矩形型の粒子捕捉デバイスは、平面図において長さが75mm、横幅が26mmの矩形型であり、厚さは15mmであった。また、デバイス形状が円型の粒子捕捉デバイスは、外寸の直径が5.3mmの円型であり、厚さは1.3mmであった。
【0109】
[実験例1]
実施例1~11、比較例1~2の粒子捕捉デバイスに、培地に懸濁したNamalwa細胞を導入して捕捉した。Namalwa細胞は、予めCalcein-AM(同仁化学研究所製)で染色した。粒子捕捉デバイスに導入したNamalwa細胞の数は、それぞれ、粒子捕捉デバイスの凹部の数と同数にした。
【0110】
続いて、粒子捕捉デバイスの中央部及び端部について蛍光顕微鏡観察(対物レンズ倍率4倍、型式「BZ-9000」、キーエンス社)を行い、1視野中の捕捉された細胞の数を測定した。実施例1~11、比較例1~2の粒子捕捉デバイスの測定結果を表1に示す。
【0111】
表1中、「面積比」は、粒子捕捉デバイスの連通孔の開口面積の合計に対する流出口の面積の比を示す。また、「細胞数比」は、蛍光顕微鏡で観察した場合の1視野中の、粒子捕捉デバイスの端部における細胞数に対する、中央部における細胞数の比を示す。この値は、粒子捕捉デバイスの端部における細胞の捕捉率に対する、中央部における細胞の捕捉率の比と同一である。
【0112】
【表1】
【0113】
また、図7は、一例として、比較例1の粒子捕捉デバイスでNamalwa細胞を捕捉した後、粒子捕捉デバイスの中央部及び端部について蛍光顕微鏡観察を行った結果を示す写真である。図7に示すように、比較例1の粒子捕捉デバイスでは、粒子捕捉デバイスの位置によって細胞の捕捉率がばらついていた。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明によれば、粒子を均一に捕捉する技術を提供することができる。
【符号の説明】
【0115】
10…第1の基板、10a,10b…層、10A…第2の硬化性樹脂膜、10B…第1の硬化性樹脂膜、11…一方側、12…他方側、13…凹部、14,14a,14b,14c,14d…連通孔、11a,11b…端部(流出口)、20…第2の基板、22…ピラー、22A…第3の硬化性樹脂膜、30…流路、31…第1の支持体、32…下地膜、100,400,500…粒子捕捉デバイス、B…粒子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7