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特許7118049安定な1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩、およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】安定な1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 333/04 20060101AFI20220805BHJP
   A01N 47/12 20060101ALN20220805BHJP
   A01P 7/04 20060101ALN20220805BHJP
【FI】
C07C333/04
A01N47/12 Z
A01P7/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019510108
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2018013133
(87)【国際公開番号】W WO2018181672
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-01-21
(31)【優先権主張番号】P 2017067358
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特公昭49-1532(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第101302179(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101103725(CN,A)
【文献】特公昭49-27857(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 333/04
A01N 47/12
A01P 7/04
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程(A)を含む安定な1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩の製造方法であって、
前記強酸性の無機酸塩が、硫酸塩であり、前記強酸性の有機酸が、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、酒石酸、またはクエン酸である、製造方法:
工程(A):1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩を強酸性の無機酸塩の水溶液または強酸性の有機酸の水溶液で洗浄する工程。
【請求項2】
工程(A)が、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩を強酸性の無機酸塩の水溶液で洗浄する工程である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
得られる1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩の1%水溶液のpHが3.0~4.5の範囲である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
工程(A)に供される1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩が、
メタノールおよびメタノールと二層系を形成する有機溶媒中で2-(N,N-ジメチルアミノ)-1,3-ジチオシアナート-プロパン塩酸塩と塩化水素ガスとを反応させるか、あるいは、
水および水と二層系を形成する有機溶媒中で2-(N,N-ジメチルアミノ)-1,3-ジチオシアナート-プロパン塩酸塩と塩酸とを反応させる、
ことにより得られる1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
メタノールと二層系を形成する有機溶媒が、トルエン、キシレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、塩化メチレンおよびクロロベンゼンからなる群より選ばれる一種または二種以上の混合物であり、
水と二層系を形成する有機溶媒が、トルエン、キシレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、塩化メチレンおよびクロロベンゼンからなる群より選ばれる一種または二種以上の混合物である、請求項に記載の製造方法。
【請求項6】
工程(A)に供される1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩が、2-N,N-ジメチルアミノ-1,3-プロパンジチオールとシアン酸塩とを塩酸の存在下で反応させることにより得られる1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩である、請求項1~のいずれか1つに記載の製造方法。
【請求項7】
強酸性の無機酸塩が硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、または硫酸水素アンモニウムであり、強酸性の有機酸が、シュウ酸またはクエン酸である、請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
下記(a)および(b)を満たす、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩の強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸の付加物であって、
前記強酸性の無機酸塩が、硫酸塩であり、前記強酸性の有機酸が、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、酒石酸、またはクエン酸である、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩の強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸の付加物:
(a)強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸の含量が、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩の強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸の付加物の重量に対して、0.05~10重量%の範囲である、
(b)1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩の無機酸塩または有機酸の付加物の水溶液のpHが3.7以下である。
【請求項9】
強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸の含量が、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩の強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸の付加物の重量に対して、0.1~2重量%の範囲である、請求項記載の1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩の無機酸塩または有機酸の付加物。
【請求項10】
強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸が、硫酸水素アンモニウム、硫酸水素ナトリム、硫酸水素カリウム、シュウ酸またはクエン酸である、請求項またはのいずれか1項に記載の1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩の無機酸塩または有機酸の付加物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、日本国特許出願2017-67358号(2017年3月30日出願)に基づくパリ条約上の優先権および利益を主張するものであり、ここに引用することによって、上記出願に記載された内容の全体が、本明細書中に組み込まれるものとする。
本発明は、安定な1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩は、殺虫剤として有用であることが知られる。1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩の製造法としては、特許文献1乃至4に記載の方法が知られている。ここで、いずれの製法でも、反応生成物をろ過することにより1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩の結晶を取得する。ろ過後の当該結晶の洗浄法とは、特許文献1の実施例6および比較例2に記載されている通り当該結晶をメタノールで洗浄する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】中国特許第101519371号
【文献】中国特許出願公開第101103725号
【文献】特公昭42-10969号公報
【文献】特公昭49-27857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の製法で得られる1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩は安定性が不十分であり、例えば長期間保管された場合に、分解による品質低下が見られる場合があった。そこで、本発明は、保存安定性を有する1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決すべく検討した結果、安定な1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩を以下の方法により製造できることを見出した。
具体的には、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩を強酸性の無機酸塩の水溶液または強酸性の有機酸の水溶液で洗浄処理することにより、安定な1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩を製造できることを見出した。また、当該安定性を有する1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩は、強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸を含有し、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩の該強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸の付加物の形態であり、該強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸の含量が、前記の1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩の付加物の重量に対して、0.05~10重量%の範囲である、ことをも見出した。
【0006】
本発明は以下のとおりであるが、これらに限定されるものではない。
【0007】
(製造方法)
[1] 工程(A)を含む安定な1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩の製造方法:
工程(A):1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩を強酸性の無機酸塩の水溶液または強酸性の有機酸の水溶液で洗浄する工程。
[2] 工程(A)に供される1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩が、
メタノールおよびメタノールと二層系を形成する有機溶媒中で2-(N,N-ジメチルアミノ)-1,3-ジチオシアナート-プロパン塩酸塩と塩化水素ガスとを反応させるか、あるいは、
水および水と二層系を形成する有機溶媒中で2-(N,N-ジメチルアミノ)-1,3-ジチオシアナート-プロパン塩酸塩と塩酸とを反応させる、
ことにより得られる1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩である、前項[1]に記載の製造方法。
[3] メタノールと二層系を形成する有機溶媒が、トルエン、キシレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、塩化メチレンおよびクロロベンゼンからなる群より選ばれる一種または二種以上の混合物であり、
水と二層系を形成する有機溶媒が、トルエン、キシレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、塩化メチレンおよびクロロベンゼンからなる群より選ばれる一種または二種以上の混合物である、前項[2]に記載の製造方法。
[4] 工程(A)に供される1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩が、2-N,N-ジメチルアミノ-1,3-プロパンジチオールとシアン酸塩とを塩酸の存在下で反応させることにより得られる1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩である、前項[1]~[3]のいずれか1つに記載の製造方法。
[5] 強酸性の無機酸塩が、硫酸水素アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、または硫酸水素アンモニウムであり、強酸性の有機酸が、シュウ酸またはクエン酸である、前項[1]~[4]のいずれか1つに記載の製造方法。
【0008】
(酸付加物としての化合物(I))
[6] 下記(a)および(b)を満たす、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩の強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸の付加物:
(a)強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸の含量が、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩の強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸の付加物の重量に対して、0.05~10重量%の範囲である、
(b)1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩の無機酸塩または有機酸の付加物の水溶液のpHが3.7以下である。
[7] 強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸の含量が、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩の強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸の付加物の重量に対して、0.1~2重量%の範囲である、前項[6]記載の1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩の無機酸塩または有機酸の付加物。
[8] 強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸が、硫酸水素アンモニウム、硫酸水素ナトリム、硫酸水素カリウム、シュウ酸またはクエン酸である、前項[6]または[7]のいずれか1項に記載の1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩の無機酸塩または有機酸の付加物。
【0009】
本発明によれば、工業的に実施可能な方法で、安定な1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩を製造することができる。当該塩酸塩は、熱安定性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(製造方法)
本発明は、下記工程(A)を含む方法により、安定な1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)を製造する方法である。
本発明に用いる1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)は、例えば下記製法(1)乃至(3)に記載の方法に準じて製造することができる。
ここで、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)(以下、「化合物(I)」と称することがある)とは、カルタップ塩酸塩とも呼称され、下記式:
【化1】
で示される化合物のことをいう。また、該化合物は、例えばThe Pesticide Manual 17th editionの170-171ページに記載されている。
【0011】
製法(1)
メタノールおよびメタノールと二層系を形成する有機溶媒中で、2-(N,N-ジメチルアミノ)-1,3-ジチオシアナート-プロパン塩酸塩(以下、「化合物(II)」と称することがある)と塩化水素ガスとを反応させることにより、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)を得ることができる。
メタノールと二層系を形成する有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、塩化メチレンおよびクロロベンゼンからなる群より選ばれる一種または二種以上の混合物が挙げられる。
反応は、特許文献1または特許文献3に記載の方法に準じて実施することができる。
【0012】
製法(2)
水および水と二層系を形成する有機溶媒中で2-(N,N-ジメチルアミノ)-1,3-ジチオシアナート-プロパン塩酸塩(II)と塩酸とを反応させることにより、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)を得ることができる。
水と二層系を形成する有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、塩化メチレンおよびクロロベンゼンからなる群より選ばれる一種または二種以上の混合物が挙げられる。
反応は、特許文献2に記載の方法に準じて実施することができる。
【0013】
製法(3)
2-(N,N-ジメチルアミノ)-1,3-プロパンジチオール(以下、「化合物(III)」と称することがある)とシアン酸塩とを酸の存在下で反応させることにより、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)を得ることができる。
反応は、特許文献4に記載の方法に準じて実施することができる。
【0014】
本明細書中、下記工程(A)、工程(B)および工程(C)における洗浄の処理とは、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)の結晶、即ち、ろ液を含有している1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)の結晶(例えば、湿結晶)について、該結晶を例示する水溶液またはアルコールで洗浄する(例えば、例示する水溶液またはアルコールに該結晶を浸す、あるいは例示する水溶液またはアルコールを該結晶に散布する)ことをいい、結果、該結晶が含有しているろ液の一部または全部を水溶液またはアルコールで置換することである。
【0015】
工程(A)の実施後に、更に下記工程(B)および/または工程(C)を実施することにより、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)に含有される強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸の量を調整することができる。工程(B)および/または工程(C)とは、工程(B)または工程(C)のいずれか一方のみを実施してもよく、工程(B)および工程(C)の両方を実施してもよい。
【0016】
まず、工程(A)を説明する。
工程(A)では、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)を強酸性の無機酸塩の水溶液または強酸性の有機酸の水溶液で洗浄する。
工程(A)で使用する1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)は、上記製法(1)乃至(3)に記載の方法に準じて調製した生成物、あるいは下記工程(B)(下記工程(C)の後の工程(B)を含む)または下記工程(C)(下記工程(B)の後の工程(C)を含む)の処理後に調製した生成物のいずれでもあってもよい。上記製法(1)乃至(3)に記載の方法に準じて調製した生成物が好ましい。
【0017】
強酸性の無機酸塩としては、例えば、硫酸塩および硝酸塩が挙げられ、硫酸塩の具体例としては、硫酸水素アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素アンモニウムが例示される。硫酸水素ナトリウムおよび硫酸水素カリウムは、それぞれ硫酸ナトリウムまたは硫酸カリウムと濃塩酸を混合して生成したものを使用することができ、この場合、それぞれ硫酸水素ナトリウムと塩化ナトリウムとの混合物、および硫酸水素カリウムと塩化カリウムとの混合物をそのまま使用することができる。硫酸水素アンモニウムは、硫酸アンモニウムと濃塩酸を混合して調製してもよく、塩化アンモニウムを含むものを使用してもよい。
【0018】
強酸性の無機酸塩の好ましい具体例は、硫酸水素アンモニウムおよび硫酸水素ナトリウムを挙げられる。
強酸性の有機酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、酒石酸、およびクエン酸等の有機酸が挙げられる。強酸性の有機酸の好ましい具体例としては、シュウ酸およびクエン酸を挙げられる。
強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸としては、長期間保管の間(例えば、高温下で)に残留し得る揮発性の低い酸が好ましく、また強酸性の無機酸塩がより好ましい。
【0019】
強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸を含有する水溶液は、前記の強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸、あるいは、それらを調製するために用いた酸や塩を水と混合することにより水溶液を調製することができる。
硫酸水素アンモニウムの水溶液は、典型的には、濃硫酸とアンモニア水とを混合して調製される。硫酸水素アンモニウムと塩化アンモニウムとの混合物の水溶液として使用することもできる。
硫酸水素ナトリウムの水溶液は、典型的には、濃硫酸と水酸化ナトリウムとを混合して調製するか、あるいは、濃硫酸と水酸化ナトリウム水溶液とを混合して調製される。硫酸水素ナトリウムの水溶液は、硫酸水素ナトリウムと塩化ナトリウムとの混合物の水溶液として調製されるものをそのまま使用してもよい。
硫酸水素カリウムの水溶液は典型的には、濃硫酸と水酸化カリウムとを混合して調製するか、あるいは、濃硫酸と水酸化カリウム水溶液とを混合して調製される。硫酸水素カリウムの水溶液は、硫酸水素カリウムと塩化カリウムとの混合物の水溶液として調製されるものを使用してもよい。
【0020】
強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸を含有する水溶液における当該無機酸塩または有機酸の濃度は、水溶液の重量に対し、通常0.5~30重量%の範囲であり、好ましくは1~15重量%の範囲である。
洗浄に用いる強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸を含有する水溶液の温度は、通常0~30℃の範囲であり、好ましくは0~10℃の範囲である。
洗浄に用いる強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸を含有する水溶液の使用量は、湿結晶の重量に対し、通常5~70重量%の範囲であり、好ましくは30~50重量%の範囲である。
【0021】
1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)を含有する粗組成物(例えば、含量が低下したもの、および/または品質が低下したものを含む)を、水、塩酸、強酸性の無機酸塩の水溶液または強酸性の有機酸の水溶液でスラリー液とした後、濾過し、及び更に、水、塩酸、強酸性の無機酸塩の水溶液または強酸性の有機酸の水溶液中に加熱溶解後、冷却晶析した後濾過したものを本発明の製造方法に供することにより、安定な1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩を製造することができる。
【0022】
工程(A)で得られる1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)は、所望であれば、さらに下記の工程(B)および/または(C)に供して、含有する強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸の含有量を調整してもよい。
【0023】
工程(B)を説明する。
工程(B)では、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)を弱酸性の無機塩水溶液で洗浄する。
【0024】
弱酸性の無機塩としては、例えば、塩化アンモニウム、リン酸2水素ナトリウム、リン酸2水素カリウムが挙げられ、好ましくは塩化アンモニウムが挙げられる。
弱酸性の無機塩水溶液は、弱酸性の無機塩と水とを混合することにより調製することができ、塩化アンモニウム水溶液が挙げられる。
弱酸性の無機塩水溶液の濃度は、水溶液の重量に対し、通常0.5~30重量%の範囲であり、好ましくは1~20重量%の範囲である。
洗浄に用いる弱酸性の無機塩水溶液の温度は、通常0~30℃の範囲であり、好ましくは0~10℃の範囲である。
洗浄に用いる弱酸性の無機塩水溶液の使用量は、湿結晶の重量に対し、通常5~60重量%の範囲であり、好ましくは10~30重量%の範囲である。
【0025】
工程(C)を説明する。
工程(C)では、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩を低級アルコールで洗浄する。
工程(C)では、工程(A)または工程(B)の処理で得られた生成物に適用するのが好ましく、工程(A)の処理で得られた生成物に適用するのがより好ましい。
【0026】
低級アルコールとは、炭素数1乃至3のアルコールを意味し、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが挙げられ、メタノールが好ましい。
洗浄に用いる低級アルコールの温度は、通常0~30℃の範囲であり、好ましくは0~10℃の範囲である。
洗浄に用いる低級アルコールの使用量は、湿結晶の重量に対し、通常5~60重量%の範囲であり、好ましくは10~30重量%の範囲である。
【0027】
工程(A)、工程(B)または工程(C)のうちの最後の工程の後、乾燥工程を経ることにより、目的の1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)を得ることができる。
【0028】
本発明の製造方法の全ての操作は室温で行うことができる。ただし洗浄液への目的生成物の減少分を抑制するため、冷却した洗浄液を用いて洗浄するのが好ましい。
【0029】
本発明の工程(A)は、含量が低下した、および/または品質が低下した1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)を含む組成物にも有効であり、含量が低下した、および/または品質が低下した式(I)の塩を本発明の製造方法に付すことにより、安定な1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)を製造することもできる。含量が低下した、および/または品質が低下した式(I)の塩は、水、塩酸等でスラリーにした後、濾過し、及び更に、水、塩酸等中に加熱溶解後、冷却晶析した後濾過して得られるものを、工程(A)に供してもよい。
【0030】
(酸付加物としての化合物(I))
本発明の製造方法により製造される1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩の強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸の付加物に含有される、強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸の量は、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩の強酸性の無機酸塩または強酸性の有機酸の付加物の重量に対して、通常0.05~10重量%の範囲であり、好ましくは0.1~2重量%の範囲であり、より好ましくは0.1~1.5重量%の範囲であり、より一層好ましくは0.1~1.1重量%の範囲である。また、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩付加物の水溶液のpHは、4.5以下であって、通常3.0以上~4.5以下であり、好ましくは3.0以上~4.2以下であり、より好ましくは3.3以上~4.0以下、さらにより好ましくは、3.7以下であり、更に一層より好ましくは、3.3以上3.7以下である。ここで、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)のpHとは、当該乾燥塩酸塩1gを100mlの水に溶解させた溶液(以下、「1%水溶液」と記す。)を調製し、この水溶液のpHを測定したものである。1%水溶液におけるpHは、通常、3.0~4.5であるが、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)が分解するとアンモニアが副生し、pHが上昇する傾向があるので、pH値は、含量低下とともに、分解存否判断の重要な指標である。pHが4.5(特に、3.7)より大きい場合は好ましくない。
【0031】
本発明の製造方法により製造された安定な1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)は、従来の方法により得られる1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)と比較して、高純度かつ、安定性(例えば、熱安定性)が向上しているため、長期間の保管が可能である。
【0032】
製造された1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)は特許文献3および特許文献4に記載のように、強力な殺虫作用を有し、農業用殺虫組成物として用いることができる。
【実施例
【0033】
以下、実施例(比較例を含む)を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)の含量分析は、ヨウ素滴定法により実施した。
【0035】
1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)の該無機酸塩または有機酸の付加物に含有される、無機酸塩(例えば、NH4 とSO4 2‐などのイオン)または有機酸(例えば、シュウ酸)の含有量は、高速イオンクロマトグラフ(HIC)を用いた絶対検量線法により求められるイオンの分析結果から下記のようにして算出することができる。有機酸がクエン酸である場合には、UV波長検出による液体クロマトグラフ(LC)を用いた絶対検量線法により求めることができる。
【0036】
1)硫酸イオン(SO4 2‐)の分析方法
高速イオンクロマトグラフ(HIC)法
本体: DX-120 Ion Chromatograph
検出器: 電気伝導度検出器
サプレッサー: ASRS-ULTRA 4 mm
P/N=061561
カラム: IonPac AS4A‐SC(4×250 mm)
P/N=43174
ガードカラム: IonPac AG14A(4×50 mm)
P/N=46134
溶離液: 1.8 mmol/L-Na2CO3
1.7 mmon/L-NaHCO3 の混合液
サンプル注入量: 25 μL
カラム温度: 35 ℃
自動再生抑制器(Self Regeneration Suppressor(SRS))電流値: 50 mA
流量: 1.0 mL/min
圧: 1500 PSI程度
【0037】
2)アンモニウムイオン(NH4 )及びナトリウムイオン(Na)イオンの分析方法
本体: ICS-1000(日本ダイオネネクス)Ion Chromatograph
検出器: 電気伝導度検出器
カラム: CG16/CS16(日本ダイオネネクス)
溶離液:30 mmol メタンスルホン酸
サンプル注入量: 25μL
【0038】
硫酸水素ナトリウム塩の含有量は、硫酸イオン(SO4 2‐)の分析値およびナトリウムイオン(Na)の分析値から以下の計算式により求めた。
NaHSO4とNaCl含量の求め方
NaHSO4 (wt%) = SO4 2- (%) /96.07 × 120.06
NaCl (wt%) = (Na+ (%) /22.99 - SO4 2- (%) /96.07) × 58.44
式中、記号は以下の意味を表す。
SO4 2- (%): イオンクロマトグラフでのSO4 2- の分析結果
Na+ (%): イオンクロマトグラフでのNa+ の分析結果
カリウムの場合は、Na+の代わりに、イオンクロマトグラフでのK+を分析した。
【0039】
NH4HSO4とNH4Cl含量の求め方
NH4HSO4 (wt%) = SO4 2- (%) /96.07 × 115.11
NH4Cl (wt%) = (NH4 + (%) /18.04 - SO4 2- (%) /96.07) × 53.49
式中、記号は以下の意味を表す。
SO4 2- (%): イオンクロマトグラフでのSO4 2- の分析結果
NH4 + (%): イオンクロマトグラフでのNH4 + の分析結果
【0040】
3)シュウ酸とクエン酸の分析法
3-1)シュウ酸の分析条件
イオンクロマトグラフ法(HIC)によるSO4 2-分析条件と同じ。
シュウ酸検出保持時間(RT)=15.2分程度
【0041】
3-2)液体クロマトグラフ(LC)による、クエン酸の分析条件は、以下の通り。
LC-20A相当品を使用
LCカラム:Mightysil RP-8GP(5μm×4.6mm×250mm)
流量:1.0 mL/min
検出器:UV波長210 nm
温度:40 ℃
注入量:2 μL
移動相(3L):アセトニトリル/水=350 mL/2650 mL
1-ペンタンスルホン酸ナトリウム2.64 g/3 L
40%リン酸 0.80g/3L (pH=3.0に調整)
定量法:絶対検量線法(3点)
クエン酸検出保持時間(RT)=5.9分程度
【0042】
以下の実施例においては、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)のpHとは、当該乾燥塩酸塩の1%水溶液を調製し、この水溶液のpHを測定したものである。
【0043】
実施例において、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)の安定性試験は55℃及び60℃の恒温槽で実施した。
【0044】
実施例1
2-(N,N-ジメチルアミノ)-1,3-ジチオシアナート-プロパン塩酸塩(II)29.6g(0.147mol)の1,2-ジクロロエタン溶液138.0g(化合物IIの濃度として、21.4%)に、メタノール53.3gを加え、0~5℃に冷却下、6時間かけて、55g(1.496mol)の塩化水素ガスを吹き込んだ。この後、0~5℃で12時間撹拌した。反応液を内温65℃まで、徐々に加温していき、塩化水素ガス、メタノールを留去後、水55gを加えた。内温75℃まで加温し、1,2-ジクロロエタンを水との共沸で留去した。1,2-ジクロロエタンを留去後、5℃以下まで徐冷し、析出した結晶をろ過し、別途調製した10%NH4HSO4水溶液12.4gで洗浄した後、メタノール6.2gで洗浄した。減圧下、60℃で2時間乾燥して、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)34.6g(純度97.8%、収率83.8%)を得た。外観は白色結晶であり、1%水溶液のpHは3.30であった。
生成物のイオンクロマトグラフ分析での測定結果、NH4HSO4の含有量が0.61%、NH4Clの含有量が0%であった。
安定性確認のため、60℃の加速試験を実施し、経過を観察した。60℃加速試験の結果は以下の通りであった。
60℃加速経過後のpH測定結果:
3週目 3.46、6週目 3.46、9週目 3.63、12週目 4.31
60℃加速経過後の含量測定結果:
3週目 97.1%、6週目 98.0%、9週目 98.1%、12週目 97.9%
60℃加速経過後の外観観察結果:
3週目 アンモニア臭気なく、粉末状で固着の無い状態。
6週目 アンモニア臭気なく、粉末状で固着の無い状態。
9週目 アンモニア臭気なく、粉末状で固着の無い状態。
12週目 アンモニア臭気なく、粉末状で固着の無い状態。
12週目までpHは4.5以下で、生成物の含量低下、外観の変化も見られなかった。
【0045】
実施例2
2-(N,N-ジメチルアミノ)-1,3-ジチオシアナート-プロパン塩酸塩(II)29.6g(0.147mol)の1,2-ジクロロエタン溶液137.6g(化合物(II)の濃度として、21.5%)に、メタノール53.3gを加え、0~5℃に冷却下、7時間かけて、47g(1.358mol)の塩化水素ガスを吹き込んだ。この後、0~5℃で12時間撹拌した。反応液を内温65℃まで、徐々に加温していき、塩化水素ガス、メタノールを留去後、水55gを加えた。内温75℃まで加温し、1,2-ジクロロエタンを水との共沸で留去した。1,2-ジクロロエタンを留去後、5℃以下まで徐冷し、析出した結晶をろ過し、別途調製した10.7%NH4HSO4と5.0%NH4Clの混合物水溶液12.4gで洗浄した後、メタノール8.0gで洗浄した。ここで、10.7%NH4HSO4と5.0%NH4Clの混合物水溶液は、(NH42SO4 5gを水30.7gで溶解した後、35%塩酸3.8gを加えて調製し、洗浄用として、当該混合物水溶液を12.4g使用した。減圧下、60℃で2時間乾燥して、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)35.9g(純度97.5%、収率86.4%)を得た。外観は白色結晶であり、1%水溶液のpHは3.01であった。
生成物のイオンクロマトグラフ分析での測定結果、NH4HSO4が1.12%、NH4Clが0.28%含有されていることが分かった。
安定性確認のため、60℃の加速試験を実施し、経過を観察した。60℃加速試験の結果は以下の通りであった。
60℃加速経過後のpH測定結果:
3週目 3.41、6週目 3.28、9週目 3.34、12週目 4.07
60℃加速経過後の含量測定結果:
3週目 97.1%、6週目 98.0%、9週目 98.1%、12週目 97.5%
60℃加速経過後の外観観察結果:
3週目 アンモニア臭気なく、粉末状で固着の無い状態。
6週目 アンモニア臭気なく、粉末状で固着の無い状態。
9週目 アンモニア臭気なく、粉末状で固着の無い状態。
12週目 アンモニア臭気なく、粉末状で固着の無い状態。
12週目までpHは4.1以下で、生成物の含量低下、外観の変化も見られなかった。
【0046】
実施例3
2-(N,N-ジメチルアミノ)-1,3-ジチオシアナート-プロパン塩酸塩(II)29.6g(0.147mol)の1,2-ジクロロエタン溶液137.6g(化合物(II)の濃度として、21.5%)に、メタノール53.3gを加え、0~5℃に冷却下、7時間かけて、47g(1.358mol)の塩化水素ガスを吹き込んだ。この後、0~5℃で12時間撹拌した。反応液を内温65℃まで、徐々に加温していき、塩化水素ガス、メタノールを留去後、水46gを加えた。内温75℃まで加温し、1,2-ジクロロエタンを水との共沸で留去した。1,2-ジクロロエタンを留去後、5℃以下まで徐冷し、析出した結晶をろ過し、別途調製した5.2%NH4HSO4と2.4%NH4Clの混合物水溶液8.9gで洗浄した後、メタノール12.4gで洗浄した。5.2%NH4HSO4と2.4%NH4Clの混合物水溶液は、(NH42SO4 4.5gを水73.1gで溶解した後、35%塩酸3.8gを加えて調製し、洗浄用として、当該混合物水溶液を8.9g使用した。減圧下、60℃で2時間乾燥して、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)35.2g(純度98.9%、収率87.2%)を得た。外観は白色結晶であり、1%水溶液のpHは3.88であった。
生成物のイオンクロマトグラフ分析での測定結果、NH4HSO4が0.11%、NH4Clが0.07%含有されていることが分かった。
安定性確認のため、60℃の加速試験を実施し、経過を観察した。60℃加速試験の結果は以下の通りであった。
60℃加速経過後のpH測定結果:
3週目 4.23、6週目 4.10、9週目 4.13、12週目 4.21
60℃加速経過後の含量測定結果:
3週目 97.9%、6週目 98.5%、9週目 99.0%、12週目 99.0%
60℃加速経過後の外観観察結果:
3週目 アンモニア臭気なく、粉末状で固着の無い状態。
6週目 アンモニア臭気なく、粉末状で固着の無い状態。
9週目 アンモニア臭気なく、粉末状で固着の無い状態。
12週目 アンモニア臭気なく、粉末状で固着の無い状態。
12週目までpHは4.3以下で、生成物の含量低下、外観の変化も見られなかった。
【0047】
実施例4
実施例1と同様の反応と処理を行い、ろ過を行う前の1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)のスラリー液542.26gを5℃付近まで冷却した後、卓上小型遠心分離機で遠心分離した。得られた湿結晶を(NH42SO4と36%塩酸から調製した10.7%NH4HSO4と5.0%NH4Clの混合物水溶液37.28gで洗浄した後、メタノール84.00gで洗浄した。
得られた湿結晶226.74gを75℃で2時間減圧下で乾燥し、乾燥品として168.11g(純度97.5%)を得た。外観は白色結晶であり、1%水溶液のpHは3.51であった。生成物のイオンクロマトグラフ分析での測定結果、NH4HSO4が0.35%、NH4Clが0.19%含有されていることが分かった。
安定性確認のため、60℃の加速試験を実施し、経過を観察した。60℃加速試験の結果は以下の通りであった。
60℃加速経過後のpH測定結果:
3週目 3.59、6週目 3.81
60℃加速経過後の含量測定結果:
3週目 97.5%、6週目 97.7%
60℃加速経過後の外観観察結果:
3週目 アンモニア臭気なく、粉末状で固着の無い状態。
6週目 アンモニア臭気なく、粉末状で固着の無い状態。
6週目までpHは4.0以下で、生成物の含量低下、外観の変化も見られなかった。
【0048】
実施例5
実施例1と同様の反応と処理を行い、ろ過を行う前の1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)のスラリー液532.68gを5℃付近まで冷却した後、卓上小型遠心分離機で遠心分離した。得られた湿結晶を(NH42SO4と36%塩酸から調製した10.7%NH4HSO4と5.0%NH4Clの混合物水溶液51.31gで洗浄した後、20%NH4Cl 69.32gで洗浄した。
得られた湿結晶289.67gを75℃で2時間減圧下で乾燥し、乾燥品として183.13g(純度92.0%)を得た。外観は白色結晶であり、1%水溶液のpHは3.11であった。安定性確認のため、60℃の加速試験を実施し、経過を観察した。60℃加速試験の結果は以下の通りであった。
60℃加速経過後のpH測定結果:
3週目 3.28、6週目 3.84
60℃加速経過後の含量測定結果:
3週目 93.1%、6週目 93.5%
60℃加速経過後の外観観察結果:
3週目 アンモニア臭気なく、粉末状で固着の無い状態。
6週目 アンモニア臭気なく、粉末状で固着の無い状態。
6週目までpHは4.0以下で、生成物の含量低下、外観の変化も見られなかった。
【0049】
実施例6
品質が低下した1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)40g(0.146mol)(含量:95.8%、pH 5.20)を、11.5%希塩酸(水28.0gに濃塩酸13.1gを加えたもの)にスラリー化した後、5℃以下で冷却し、1時間撹拌後、析出した結晶をろ過し、メタノール7.5gで洗浄した後、7.1%NH4HSO4と3.3%NH4Clの混合物水溶液9.4gで洗浄した。ここで、7.1%NH4HSO4と2.4%NH4Clの混合物水溶液は、(NH42SO4 0.79gを水78.0gで溶解した後、35%塩酸0.61gを加えて調製した。60℃で2時間減圧下で乾燥して、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)37.8g(純度99.2%、回収率94.4%)を得た。外観は白色結晶であり、1%水溶液のpHは3.38であった。
生成物のイオンクロマトグラフ分析での測定結果、NH4HSO4が0.92%、NH4Clが0.47%含有されていることが分かった。
60℃加速経過後のpH測定結果:
2週目 3.50、3週目 3.56、5週目 3.67
60℃加速経過後の含量測定結果:
2週目 98.9%、3週目 98.7%、5週目 98.5%
60℃加速経過後の外観観察結果:
2週目 アンモニア臭気なく、粉末状で固着の無い状態。
3週目 アンモニア臭気なく、粉末状で固着の無い状態。
5週目まで、pHは4.0以下で、生成物の含量低下、外観の変化も見られなかった。
【0050】
実施例7
実施例1と同様の反応と処理を行い、濾過により取得した未洗浄の1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)湿結晶45.0g(含量:84.1%、0.138mol)を、11.5%希塩酸(水28.0gに濃塩酸13.1gを加えたもの)にスラリー化した後、5℃以下で冷却して1時間撹拌後、析出した結晶をろ過し、5.0%シュウ酸水溶液(シュウ酸0.68gを水12.94gに溶解)13.62gで洗浄した。60℃で2時間減圧下で乾燥して、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)33.97g(純度97.6%、回収率87.6%)を得た。生成物のイオンクロマトグラフ分析での測定結果、シュウ酸が0.24%含有されていることが分かった。外観は白色結晶であり、1%水溶液のpHは3.18であった。
55℃加速経過後のpH測定結果:
2週目 3.25、2週目 3.38、6週目 3.53、8週目 4.02
55℃加速経過後の含量測定結果:
8週目 97.3%
55℃加速経過後の外観観察結果:
8週目まで、pHは4.0以下で、アンモニア臭気なく、粉末状で固着の無い状態。含量残存率は99.7%で、不純物の増加や外観の変化も見られなかった。
【0051】
実施例8
実施例1と同様の反応と処理を行い、濾過により取得した未洗浄の1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)湿結晶45.0g(含量:84.1%、0.138mol)を、11.5%希塩酸(水28.0gに濃塩酸13.1gを加えたもの)にスラリー化した後、5℃以下で冷却して1時間撹拌後、析出した結晶をろ過し、5.0%クエン酸水溶液(クエン酸0.68gを水12.94gに溶解)13.62gで洗浄した。60℃で2時間減圧下で乾燥して、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)35.24g(純度98.2%、回収率91.4%)を得た。生成物の分析の測定結果、クエン酸が0.32%含有されていることが分かった。外観は白色結晶であり、1%水溶液のpHは3.50であった。
55℃加速経過後のpH測定結果:
2週目 3.51、2週目 3.61、6週目 3.66、8週目 3.80
55℃加速経過後の含量測定結果:
8週目 98.1%
55℃加速経過後の外観観察結果:
8週目まで、pHは4.0以下で、アンモニア臭気なく、粉末状で固着の無い状態。不純物の増加や外観の変化も見られなかった。
【0052】
実施例9
品質が低下した1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)30g(0.102mol)(含量:93.1%、pH 5.00)を、2.0%希塩酸(水33.0gに濃塩酸1.9gを加えたもの)にスラリー化した後、70℃に加温し、完全に溶解させた。同温度で36%塩酸9.0gを加えた後、55℃まで冷却し、メタノール12.0を加えた。10℃以下まで、徐冷し、1時間撹拌後、析出した結晶をろ過し、7.5gのメタノールで洗浄後、3.0%NH4HSO4水/メタノール混合溶液で洗浄した。ここで、3.0%NH4HSO4水/メタノール混合溶液はNH4HSO4 0.30gを水5.1gで溶解した後、メタノール4.50gを加えて調製した。60℃で2時間減圧下で乾燥して、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)25.3g(純度98.6%、回収率90.7%)を得た。生成物のイオンクロマトグラフ分析での測定結果、NH4HSO4が0.54%、NH4Clの含有量が0%であることが分かった。外観は白色結晶であり、1%水溶液のpHは3.33であった。
60℃加速経過後のpH測定結果:
2週目 3.38、3週目 3.37、5週目 3.28、7週目 3.46、
10週目 3.60
60℃加速経過後の外観観察結果:
10週目までpHは3.6以下で、アンモニア臭気なく、粉末状で固着の無い状態。比較例6と比べ、pH上昇はなく、安定性が向上していた。10週目の含量残存率は99.5%であった。
【0053】
実施例10
実施例1と同様の反応と処理を行って得られたスラリー液を遠心分離機にかけ、濾取した1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)湿結晶約35重量部を、遠心分離機上でメタノール約7重量部により振り掛け洗浄した後、更に約4%w/wのNH4HSO4-水-メタノール混合溶液 約8.5重量部(NH4HSO4 0.35重量部、水 2.8重量部、メタノール 5.3重量部)で振り掛け洗浄した。この操作を十数回バスケットを用いて実施し、得られた湿結晶を気流乾燥して、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)(純度98.1%)を得た。生成物のイオンクロマトグラフ分析での測定結果、NH4HSO4の含有量が、0.31%、NH4Clが0%であることが分かった。外観は白色結晶であり、1%水溶液のpHは3.50であった。
安定性確認のため、60℃の加速試験を実施し、経過を観察した。60℃加速試験の結果は以下の通りであった。
60℃加速経過後のpH測定結果:
1週目 3.51、2週目 3.48、4週目 3.50、7週目 3.57、
8週目 3.54
60℃加速経過後の含量測定結果:
8週目 98.0%(含量残存率 99.8%)
60℃加速経過後の外観観察結果:
8週目までアンモニア臭気なく、粉末状で固着の無い状態で外観の変化も見られなかった。
メタノールのみで洗浄した比較例7と比べ、安定性が大幅に向上した。
【0054】
実施例11
実施例1と同様の反応と処理を行い、濾過により取得した未洗浄の1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)湿結晶45.0g(含量:84.1%、0.138mol)を、11.5%希塩酸(水28.0gに濃塩酸13.1gを加えたもの)にスラリー化した後、5℃以下で冷却して1時間撹拌後、析出した結晶をろ過し、10.0%NaHSO4水溶液(98%硫酸1.28gを水12.2gで希釈後、27%NaOH 1.90gで中和して調製、pH 0.52)15.42gで振りかけ洗浄した後、10% NaH2PO4 7.7g(pH 4.13)で振りかけ洗浄した。60℃で2時間減圧下で乾燥して、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)38.07g(純度98.3%、回収率98.9%)を得た。生成物のイオンクロマトグラフ分析での測定結果、NH4HSO4の含有量が、0.41%、NH4Clが0%であることが分かった。外観は白色結晶であり、1%水溶液のpHは3.20であった。
55℃加速経過後のpH測定結果:
2週目 3.28、2週目 3.29、6週目 3.44、8週目 4.06
55℃加速経過後の含量測定結果:
8週目 97.8%
55℃加速経過後の外観観察結果:
8週目までpHは4.0以下で、アンモニア臭気なく、粉末状で固着の無い状態。含量残存率は99.5%で、不純物の増加や外観の変化も見られなかった。
【0055】
比較例1
2-(N,N-ジメチルアミノ)-1,3-ジチオシアナート-プロパン塩酸塩(II)29.6g(0.147mol)の1,2-ジクロロエタン溶液133.4g(化合物IIの濃度として、22.2%)に、メタノール53.4gを加え、0~5℃に冷却下、8時間かけて、49.5g(1.358mol)の塩化水素ガスを吹き込んだ。この後、0~5℃で12時間撹拌した。反応液を内温65℃まで、徐々に加温していき、塩化水素ガス、メタノールを留去後、水55gを加えた。内温75℃まで加温し、1,2-ジクロロエタンを水との共沸で留去した。1,2-ジクロロエタンを留去後、5℃以下まで徐冷し、析出した結晶をろ過し、メタノール12.5gで洗浄した。減圧下、60℃で2時間乾燥して、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)33.6g(純度98.7%、収率83.2%)を得た。生成物のイオンクロマトグラフ分析での測定結果、NH4HSO4およびNH4Clは、検出されなかった。外観は白色結晶で、わずかな生成物の特異臭を発し、1%水溶液のpHは4.03であった。安定性確認のため、60℃の加速試験を実施し、経過を観察した。60℃加速試験の結果は以下の通りであった。
60℃加速経過後のpH測定結果:
3週目 4.51、6週目 4.71、9週目 5.48、12週目 5.86
60℃加速経過後の含量測定結果:
3週目 98.0%、6週目 98.5%、9週目 98.4%、12週目 94.5%
60℃加速経過後の外観観察結果:
3週目 わずかなアンモニア臭気あり。
6週目 わずかなアンモニア臭気あり。
9週目 わずかなアンモニア臭気あり。
12週目 わずかなアンモニア臭気あり。
3週目以降 pHが徐々に上昇し、アンモニア臭を発するようになった。
3週目以降でpHが4.5超と、異常値を示した。
【0056】
比較例2
品質が低下した1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)80g(0.292mol)(含量:95.8%、pH 5.20)を、11.5%希塩酸(水56.0gに濃塩酸26.3gを加えたもの)にスラリー化した後、5℃以下で冷却し、1時間撹拌後、析出した結晶をろ過し、メタノール26.9gで洗浄した。60℃で2時間乾燥して、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)74.3g(純度99.2%、回収率93.6%)を得た。生成物のイオンクロマトグラフ分析での測定結果、NH4HSO4およびNH4Clは、検出されなかった。外観は白色結晶であり、1%水溶液のpHは4.36であった。安定性確認のため、60℃の加速試験を実施し、経過を観察した。60℃加速試験の結果は以下の通りであった。
60℃加速経過後のpH測定結果:
3週目 5.28、6週目 5.62
60℃加速経過後の含量測定結果:
3週目 99.0%、6週目 98.4%
60℃加速経過後の外観観察結果:
3週目 ややアンモニア臭気あり。固着はなかった。
6週間目 ややアンモニア臭気あり。やや固着していたが、ほぐれやすかった。
わずか3週間で、pHが5.2超となり、異常値を示した。
【0057】
比較例3
メタノール洗浄を行わないこと以外、比較例1と同様の方法で製造した1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)の未洗浄の湿結晶224.96gを、75℃で2時間、減圧下で乾燥し、乾燥品として197.99g(純度98.0%)を得た。生成物のイオンクロマトグラフ分析での測定結果、NH4HSO4およびNH4Clは、検出されなかった。外観は白色結晶であり、1%水溶液のpHは3.95であった。
60℃加速経過後のpH測定結果:
2週目 4.20、3週目 4.45、6週目 4.65、9週目 5.02
60℃加速経過後の含量測定結果:
2週目 98.0%、3週目 98.1%、6週目 97.4%、9週目 96.3%
60℃加速経過後の外観観察結果:
2週目 ややアンモニア臭気あり。粉末状で固着はなかった。
3週目 ややアンモニア臭気あり。粉末状で固着はなかった。
6週目 アンモニア臭気あり。やや固着していた。
9週目 アンモニア臭気あり。固着していた。
わずか2週間からpH上昇が始まり、3週目にはアンモニア臭が発生するとともに、含量低下が見られた。
【0058】
比較例4
メタノール洗浄を行わないこと以外、比較例1と同様の方法で製造した1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)の未洗浄品湿結晶233.00gとそのろ液233.00gを混合し、再スラリー化した溶液を5℃付近まで冷却した後、卓上小型遠心分離機で遠心分離した。得られた湿結晶をメタノール64.0gで遠心分離しながら、洗浄を実施した。得られた湿結晶217.20gを75℃で2時間、減圧下で乾燥し、乾燥品として190.00g(純度98.0%)を得た。生成物のイオンクロマトグラフ分析での測定結果、NH4HSO4およびNH4Clは、検出されなかった。外観は白色結晶であり、1%水溶液のpHは4.27であった。
60℃加速経過後のpH測定結果:
3週目 4.46、6週目 5.08、9週目 5.12
60℃加速経過後の含量測定結果:
3週目 98.1%、6週目 96.2%、9週目 96.0%
60℃加速経過後の外観観察結果:
3週目 ややアンモニア臭気あり。粉末状で固着はなかった。
6週目 アンモニア臭気あり。やや固着していた。
9週目 アンモニア臭気あり。固着していた。
わずか3週間からpH上昇とともにアンモニア臭が発生し、6週目でpHが5.0以上と異常値となった。
【0059】
比較例5
実施例1と同様の反応と処理を行い、濾過により取得した未洗浄の1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)湿結晶45.0g(含量:84.1%、0.138mol)を、11.5%希塩酸(水28.0gに濃塩酸13.1gを加えたもの)にスラリー化した後、5℃以下で冷却して1時間撹拌後、析出した結晶をろ過し、メタノール12.87gで洗浄した。60℃で2時間減圧下で乾燥して、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)34.53g(純度99.2%、回収率91.3%)を得た。生成物のイオンクロマトグラフ分析での測定結果、NH4HSO4およびNH4Clは、検出されなかった。外観は白色結晶であり、1%水溶液のpHは4.14であった。
55℃加速経過後のpH測定結果:
2週目 4.24、4週目 4.37、6週目 4.51、8週目 4.93
55℃加速経過後の外観観察結果:
pH6は2週目から徐々に上昇し、6週目以降、黄色斑点異物が見られ、臭気を発するようになった。8週目では臭気が強く分解が進行していた。
【0060】
比較例6
品質が低下した1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)30g(0.102mol)(含量:93.1%、pH 5.00)を、1.0%希塩酸(水30.0gに濃塩酸 0.9gを加えたもの)にスラリー化した後、70℃に加温し、完全に溶解させた。同温度で36%塩酸10.5gを加えた後、55℃まで冷却し、メタノール12.0を加えた。10℃以下まで、徐冷し、1時間撹拌後、析出した結晶をろ過し、7.5gのメタノールで洗浄した。60℃で2時間減圧下で乾燥して、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)26.9g(純度98.6%、回収率90.8%)を得た。生成物のイオンクロマトグラフ分析での測定結果、NH4HSO4およびNH4Clは、検出されなかった。外観は白色結晶であり、1%水溶液のpHは4.10であった。
60℃加速経過後のpH測定結果:
2週目 4.18、3週目 4.30、5週目 4.35、7週目 4.40
10週目 4.58
60℃加速経過後の外観観察結果:
3週目くらいからpHの上昇が見られ、5週目以降臭気発生が見られた。10週目では臭気も強くなり、含量残存率は97.5%であった。劣化1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)を再結晶化で精製することで通常品(パダン(登録商標))と比較して、安定性が向上しているが、実施例9のようにNH4HSO4含水メタノール液で洗浄したものと比較して安定性が悪かった。
【0061】
比較例7
実施例1と同様の反応と処理を行い、遠心分離機により濾取した1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)湿結晶約35重量部を、遠心分離機上でメタノール約7重量部により振り掛け洗浄した。この操作を十数回バスケットを用いて実施し、得られた湿結晶を気流乾燥して、1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)(純度98.3%)を得た。生成物のイオンクロマトグラフ分析での測定結果、NH4HSO4およびNH4Clは、検出されなかった。外観は白色結晶であり、1%水溶液のpHは3.94であった。
安定性確認のため、60℃の加速試験を実施し、経過を観察した。60℃加速試験の結果は以下の通りであった。
60℃加速経過後のpH測定結果:
1週目 4.08、2週目 4.83、4週目 5.50、7週目 5.15、
8週目 5.32
60℃加速経過後の含量測定結果:
8週目 96.0%(含量残存率 97.7%)
60℃加速経過後の外観観察結果:
2週目から強いアンモニア臭気を発し、8週目では完全に固結した。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の製造方法によれば、優れた殺虫作用を有する1,3-ジカルバモイルチオ-2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロパン塩酸塩(I)を、安定性が良好なものとして、良好な純度および収率で製造することができる。