(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】析出によりポリアミド粉末を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/14 20060101AFI20220805BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220805BHJP
B33Y 40/00 20200101ALI20220805BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20220805BHJP
B29C 64/314 20170101ALI20220805BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20220805BHJP
C08G 69/14 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
C08J3/14 CFG
B33Y10/00
B33Y40/00
B29C64/153
B29C64/314
B33Y70/00
C08G69/14
(21)【出願番号】P 2019541729
(86)(22)【出願日】2018-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2018051860
(87)【国際公開番号】W WO2018141631
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2021-01-22
(32)【優先日】2017-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】グラムリヒ,ジモン
(72)【発明者】
【氏名】マイアー,トマス
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエル,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】エルレ,ナタリー ベアトリス ジャニーヌ
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-048186(JP,A)
【文献】特開2004-175102(JP,A)
【文献】特開2005-048187(JP,A)
【文献】特公昭45-034710(JP,B1)
【文献】特公昭43-018618(JP,B1)
【文献】特公昭48-025056(JP,B1)
【文献】特開2004-137503(JP,A)
【文献】特開2013-091316(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104140(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105694068(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00-3/28;99/00
B29C 64/00-64/40
C08G 69/00-69/50
B33Y 10/00
B33Y 40/00
B33Y 70/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)、及び無機顔料及び安定剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド粉末(PP)を製造する方法であって、以下の工程、
a)前記少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び前記少なくとも1種の添加剤(A)を押出機内で配合して、前記少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び前記少なくとも1種の添加剤(A)を含む配合混合物(cM)を得る工程
であって、
工程a)は、240℃~300℃の範囲の温度で行われ、
b)工程a)で得られた前記配合混合物(cM)を前記押出機から押出して、前記少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び前記少なくとも1種の添加剤(A)を含む押出混合物(eM)を得る工程、
c)工程b)で得られた前記押出混合物(eM)を溶媒(SV)中に導入して、前記押出混合物(eM)及び前記溶媒(SV)を含む第一の懸濁液(S1)を得、前記溶媒(SV)がラクタム及び水を含む工程
であって、
溶媒(SV)は、100~500W/m
3
の範囲のスターラーの比出力量で撹拌され、且つ、溶媒(SV)は、前記混合物の総質量に対して、30質量%~60質量%の範囲のラクタム及び40質量%~70質量%の範囲の水を含み、
d)工程c)で得られた前記第一の懸濁液(S1)を第一の温度(T1)に加熱し、前記押出混合物(eM)に存在する前記少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)を前記溶媒(SV)中に溶解させて、前記溶媒(SV)中に溶解した前記少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び前記少なくとも1種の添加剤(A)を含む混合物(G)を得る工程、
e)工程d)で得られた前記混合物(G)を第二の温度(T2)に冷却し、前記少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)を結晶化させて、前記溶媒(SV)中に懸濁した前記ポリアミド粉末(PP)を含む第二の懸濁液(S2)を得る工程、
f)工程e)で得られた前記第二の懸濁液(S2)から前記ポリアミド粉末(PP)を分離する工程、
を含む方法。
【請求項2】
工程d)において、工程c)で得られた前記第一の懸濁液(S1)を140℃~200℃の範囲の第一の温度(T1)に加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程e)において、工程d)で得られた前記混合物(G)を100℃~140℃の範囲の第二の温度(T2)に冷却する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程c)で得られた前記第一の懸濁液(S1)が、前記第一の懸濁液(S1)の総質量に対して、1質量%~25質量%の範囲の前記押出混合物(eM)、及び75質量%~99質量%の範囲の前記溶媒(SV)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程b)で得られた前記押出混合物(eM)が、前記押出混合物(eM)の総質量に対して、0.05質量%~5質量%の範囲の前記少なくとも1種の添加剤(A)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程b)で得られた前記押出混合物(eM)が、前記押出混合物(eM)の全質量に対して、>5質量%~50質量%の範囲の前記少なくとも1種の添加剤(A)を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種のポリアミド(P)が、PA4、PA6、PA7、PA8、PA9、PA11、PA12、PA46、PA66、PA69、PA610、PA612、PA613、PA1212、PA1313、PA6T、PA MXD6、PA6/6T、PA6/6I、PA6/6I6T、PA6.36、PA6/66、PA6/12、PA66/6/610、PA PACM12、PA6I/6T/PACM、及び上述のポリアミドの2種以上のコポリアミドからなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記安定剤が、立体障害フェノール、立体障害アミン、ホスファイト及び銅安定剤からなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも前記混合物(G)をスターラーで工程e)の間に撹拌し、前記混合物(G)へのスターラーの比出力量が100~500W/m
3の範囲である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程b)の間の押出しにおいて、前記配合混合物(cM)を0.5~6mmの範囲の粒度にペレット化する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
無機顔料がカーボンブラック及び金属酸化物からなる群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法
。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法によって得ることができるポリアミド粉末(PP)を、焼結粉末(SP)として使用する方法。
【請求項13】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法によって得ることができるポリアミド粉末(PP)の選択的レーザー焼結による成形体を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド粉末(PP)を製造する方法に関する。半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)は、最初に押出機中で互いに配合され、その後続いて溶媒(SV)中に導入され、それからその中で少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)が結晶化し、ポリアミド粉末(PP)が得られる。本発明はさらに、このようにして得ることができるポリアミド粉末(PP)、及びポリアミド粉末(PP)の焼結粉末(SP)としての使用方法、並びにポリアミド粉末(PP)の選択的レーザー焼結によって成形体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロトタイプの迅速な提供は、ごく最近しばしば対処される課題である。このいわゆる「ラピッドプロトタイピング(rapid prototyping)」に特に適している1つの方法は、選択的レーザー焼結(SLS)である。これは、チャンバ内でプラスチック粉末にレーザービームを選択的に照射することを伴う。粉末が融解し、融解した粒子が融合して再凝固する。プラスチック粉末を繰り返し施与し、その後続いてレーザー照射することで、三次元成形体がモデル化できる。
【0003】
粉体ポリマーから成形体を製造するための選択的レーザー焼結の方法は、特許明細書US6,136,948及びWO96/06881に詳細に記載されている。
【0004】
ポリアミド粉末は特に、選択的レーザー焼結(SLS)における焼結粉末として適している。先行技術は、焼結粉末として用いられ得る種々のポリアミド粉末を記載している。先行技術に記載されているポリアミド粉末は、通常無着色であるか、又はその後の着色により着色される。
【0005】
無着色の焼結粉末の欠点は特に、それらが変色及び/又は黄変の影響を、特に選択的レーザー焼結プロセスの間に受けやすいことである。その後続いて着色された焼結粉末は完全には着色されず、これらの焼結粉末から製造された構成部品の特にその後の処置において、不均一な色印象をもたらす。
【0006】
さらに、先行技術に記載されている選択的レーザー焼結用の焼結粉末は、しばしばほんのわずかな耐老化性しかなく、再利用特性が不十分である。特に、それらの熱酸化安定性は低いため、繰り返し使用すると黄変及びポリマー鎖の分解及び/又は成長が起こることで、焼結粉末の粘度及びそれから製造される構成部品の機械的特性の変化が現れる。
【0007】
さらに、焼結粉末の焼結窓(sintering window)は、選択的レーザー焼結において特に重要である。これは、レーザー焼結操作における構成要素の反りを減少させるために、できるだけ広くするべきである。特に、先行技術に記載されているその後続いて着色される焼結粉末は、純粋な焼結粉末の焼結窓と比較して、しばしば狭い焼結窓を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】US6,136,948
【文献】WO96/06881
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
よって、本発明によって対処される課題は、ポリアミド粉末(PP)を製造する方法を提供することであり、この方法において、ポリアミド粉末(PP)は、選択的レーザー焼結プロセスにおける焼結粉末(SP)としての使用に特に適している。先行技術に記載された方法及び焼結粉末の上述の欠点は、この方法及びそれから得ることができるポリアミド粉末(PP)において存在しないか、又は大幅に減少される。この方法はさらに、できるだけ簡易で安価に行われる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)、及び無機顔料及び安定剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤(A)を含むポリアミド粉末(PP)を製造する方法であって、以下の工程、
a)少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)を押出機内で配合して、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)を含む配合混合物(cM)を得る工程、
b)工程a)で得られた配合混合物(cM)を押出機から押出して、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)を含む押出混合物(eM)を得る工程、
c)工程b)で得られた押出混合物(eM)を溶媒(SV)中に導入して、押出混合物(eM)及び溶媒(SV)を含む第一の懸濁液(S1)を得る工程、
d)工程c)で得られた第一の懸濁液(S1)を第一の温度(T1)に加熱し、押出混合物(eM)に存在する少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)を溶媒(SV)中に溶解させて、溶媒(SV)中に溶解した少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)を含む混合物(G)を得る工程、
e)工程d)で得られた混合物(G)を第二の温度(T2)に冷却し、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)を結晶化させて、溶媒(SV)中に懸濁したポリアミド粉末(PP)を含む第二の懸濁液(S2)を得る工程、
f)工程e)で得られた第二の懸濁液(S2)からポリアミド粉末(PP)を分離する工程、
を含む方法によって解決される。
【0011】
驚くべきことに、本発明の方法により製造されたポリアミド粉末(PP)は、特に狭い粒度分布を示し、その上、選択的レーザー焼結プロセスにおける使用に特に適していることが見出された。さらに、本発明により製造されたポリアミド粉末(PP)は特に貯蔵安定性があり、レーザー焼結プラントでの熱老化後でさえ高い再利用性を維持するので、成形体の製造で融解しなかったポリアミド粉末(PP)を再利用し得る。その上、複数回のレーザー焼結サイクルの後でさえ、本発明によるポリアミド粉末(PP)は、最初のサイクル時と同様に有利な焼結特性を有する。
【0012】
本発明によるポリアミド粉末(PP)はさらに、複数回の焼結サイクルの後でさえ、変色が、あったとしても非常に少なく、十分に拡大された焼結窓(WSP)を有するので、選択的レーザー焼結によってそのポリアミド粉体から製造される成形体は、反りが、あったとしても著しく減少される。
【0013】
以下に、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は示差走査熱量測定(DSC)図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
半結晶性ポリアミド(P)
本発明による方法において製造されたポリアミド粉末(PP)は、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)を含む。
【0016】
本発明において、「少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)」とは、厳密に1種の半結晶性ポリアミド(P)か、又は2種以上の半結晶性ポリアミド(P)の混合物(ブレンド)を意味する。
【0017】
本発明において、「半結晶性」とは、ポリアミドが、各場合ともISO 11357-4:2014に従った示差走査熱量測定(DSC)によって20K/分の加熱速度で測定して、>45J/g、好ましくは>50J/g、とりわけ好ましくは>55J/gの融解エンタルピーΔH2(A)を有することを意味する。
【0018】
さらに、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)は、各場合ともISO 11357-4:2014に従った示差走査熱量測定(DSC)によって20K/分の加熱速度で測定して、<200J/g、特に好ましくは<175J/g、とりわけ好ましくは<150J/gの融解エンタルピーΔH2(A)を有することが好ましい。
【0019】
少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)として適しているのは、例えば7~13環員を有するラクタムから誘導されるポリアミド(P)である。少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)として、ジカルボン酸のジアミンとの反応によって得られるポリアミド(P)も適している。
【0020】
ラクタムから誘導されるポリアミドとして、例えば、カプロラクタム、カプリロラクタム及び/又はラウロラクタムから誘導されるポリアミドが挙げられる。
【0021】
適したポリアミドとして、ω-アミノアルキルニトリルから得ることができるものがさらに挙げられる。好ましいω-アミノアルキルニトリルは、ポリアミド6をもたらすアミノカプロニトリルである。ジニトリルをジアミンと反応させてもよい。ここで、重合してポリアミド66をもたらすアジポジニトリル及びヘキサメチレンジアミンが好ましい。ニトリルの重合は、好ましくは水の存在下で行われ、直接重合としても知られている。
【0022】
少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)としてジカルボン酸及びジアミンから得ることができるポリアミドが用いられる場合、6~36個の炭素原子、好ましくは6~12個の炭素原子、特に好ましくは6~10個の炭素原子を有するジカルボン酸アルカン(脂肪族ジカルボン酸)が用いられ得る。芳香族ジカルボン酸もまた適している。
【0023】
ここでジカルボン酸の例として、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸及びテレフタル酸及び/又はイソフタル酸が挙げられる。
【0024】
適したジアミンは、例えば、4~36個の炭素原子を有するアルカンジアミン、好ましくは6~12個の炭素原子を有するアルカンジアミン、特に6~8個の炭素原子を有するアルカンジアミン、及び芳香族ジアミン、例えばm-キシリレンジアミン、ジ(4-アミノフェニル)メタン、ジ(4-アミノシクロヘキシル)メタン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)プロパン及び2,2-ジ(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、及び1,5-ジアミノ-2-メチルペンタンである。
【0025】
少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)として好ましいのは、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリヘキサメチレンセバカミド及びポリカプロラクタム、及び特に5~95質量%のカプロラクタム単位の割合を有するコポリアミド6/66である。
【0026】
上記及び下記に列挙するモノマーの2種以上の共重合により得ることができるポリアミド、又は任意の所望の混合比による複数のポリアミドの混合物も、適している。
【0027】
よって適したポリアミドは、脂肪族、半芳香族又は芳香族ポリアミドである。「脂肪族ポリアミド」という用語は、ポリアミドが専ら脂肪族モノマーから構成されていることを意味する。「半芳香族ポリアミド」という用語は、ポリアミドが脂肪族及び芳香族モノマーの両方から構成されていることを意味する。「芳香族ポリアミド」という用語は、ポリアミドが専ら芳香族モノマーから構成されていることを意味する。
【0028】
以下の非排他的なリストは、本発明による方法における少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)としての使用に好ましい半結晶性ポリアミドを含む。
【0029】
ABポリマー:
PA4 ピロリドン
PA6 ε-カプロラクタム
PA7 エナントラクタム
PA8 カプリロラクタム
AA/BBポリマー:
PA46 テトラメチレンジアミン、アジピン酸
PA66 ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸
PA69 ヘキサメチレンジアミン、アゼライン酸
PA610 ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸
PA612 ヘキサメチレンジアミン、デカンジカルボン酸
PA613 ヘキサメチレンジアミン、ウンデカンジカルボン酸
PA6T ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA MXD6 m-キシリレンジアミン、アジピン酸
PA6/6l (PA6参照)ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸
PA6/6T (PA6及びPA6T参照)
PA6/66 (PA6及びPA66参照)
PA6/12 (PA6参照)、ラウリロラクタム
PA66/6/610 (PA66、PA6及びPA610参照)
PA6I/6T/PACM PA6I/6T及びジアミノジシクロヘキシルメタンとして
PA6/6I6T (PA6及びPA6T参照)ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸
少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)は、好ましくは、PA4、PA6、PA7、PA8、PA9、PA11、PA12、PA46、PA66、PA69、PA610、PA612、PA613、PA1212、PA1313、PA6T、PA MXD6、PA6/6T、PA6/6I、PA6/6I6T、PA6.36、PA6/66、PA6/12、PA66/6/610、PA PACM12、PA6I/6T/PACM及び上述のポリアミドの2種以上のコポリアミドからなる群から選択される。
【0030】
少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)は、特に好ましくは、PA6、PA66、PA610、PA612、PA6.36、PA6/66、PA6/6I6T、PA6/6T及びPA6/6Iからなる群から選択される。
【0031】
少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)は、とりわけ好ましくは、PA6、PA66、PA610、PA6/66及びPA6/6Tからなる群から選択される。
【0032】
よって本発明はまた、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(B)が、PA4、PA6、PA7、PA8、PA9、PA11、PA12、PA46、PA66、PA69、PA610、PA612、PA613、PA1212、PA1313、PA6T、PA MXD6、PA6/6T、PA6/6I、PA6/6I6T、PA6.36、PA6/66、PA6/12、PA66/6/610、PA PACM12、PA6I/6T/PACM及び上述のポリアミドの2種以上のコポリアミドからなる群から選択される方法を提供する。
【0033】
少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)は、例えば70~350ml/gの範囲の、好ましくは70~240ml/gの粘度数(VZ(P))を有する。本発明によれば、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)の粘度数(VZ(P))の決定は、ISO 307:2013-08に従って、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)の0.5質量%溶液中及び96質量%の硫酸中25℃で行われる。
【0034】
少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)は、好ましくは、500~2000000g/モルの範囲の、特に好ましくは5000~500000g/モルの範囲の、とりわけ好ましくは10000~100000g/モルの範囲の質量平均分子量(MW)を有する。質量平均分子量(Mw)は、ASTM-D4001に従って決定される。
【0035】
少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)は通常、融解温度(TM(P))を有する。少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)の融解温度(TM(P))は、例えば、70℃~300℃の範囲であり、好ましくは180℃~295℃の範囲である。
【0036】
少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)の融解温度(T
M(P))は、示差走査熱量測定によって決定される。示差走査熱量測定(DSC)によって融解温度(T
M(P))を決定するために、加熱ラン(H)と冷却ラン(C)を通常測定する。これは
図1に例として示すようなDSC図をもたらす。そして融解温度(T
M(P))は、DSC図の加熱ラン(H)の融解ピークが最大点を有する温度を意味すると理解されるべきである。よって、融解温度(T
M(P))は、以下に記載する融解の開始温度(T
M
開始)とは異なる。融解温度(T
M(P))は通常、融解の開始温度(T
M
開始)より高い。
【0037】
少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)は通常、ガラス転移温度(TG(P))も有する。少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)のガラス転移温度(TG(P))は例えば、乾燥状態で測定して、0℃~110℃の範囲であり、好ましくは40℃~105℃の範囲である。
【0038】
本発明において、「乾燥状態で」とは、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)が、各場合とも少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)の総質量に対して、3質量%未満、好ましくは1質量%未満、とりわけ好ましくは0.5質量%未満の溶媒(SV)、好ましくは水、を含むことを意味する。
【0039】
溶媒(SV)については、工程c)で用いられる溶媒(SV)に関する説明及び選好が対応して適用される。
【0040】
少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)のガラス転移温度(TG(P))は、示差走査熱量測定によって決定される。本発明によれば、決定は、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)の試料について、最初に第一の加熱ラン(H1)、次いで冷却ラン(C)、その後続いて第二の加熱ラン(H2)を測定することによって達成される(出発質量約8.5g)。第一の加熱ラン(H1)及び第二の加熱ラン(H2)における加熱速度は20K/分である。冷却ラン(C)における冷却速度も同様に20K/分である。DSC図の第二の加熱ラン(H2)において、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)のガラス転移の領域で、段が得られる。少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)のガラス転移温度(TG(P))は、DSC図の段高さの半分での温度に対応する。ガラス転移温度(TG)を決定するこの方法は、当業者に既知である。
【0041】
半結晶性ポリアミド(P)は通常、130℃~250℃の範囲の結晶化温度(TC(P))も有する。半結晶性ポリアミド(P)の結晶化温度(TC(P))は、好ましくは145℃~245℃の範囲であり、とりわけ好ましくは160℃~235℃の範囲である。
【0042】
よって本発明はまた、ポリアミド粉末(PP)が135℃~260℃の範囲の結晶化温度(TC(P))を有する方法を提供する。
【0043】
本発明において、結晶化温度(T
C(P))は、示差走査熱量測定(DSC)によって同様に決定される。上記で記載したように、これは通常、加熱ラン(H)と冷却ラン(C)の測定を伴う。これは
図1にポリアミド粉末の例として示すようなDSC図をもたらす。そして結晶化温度(T
C(P))は、DSC曲線の結晶化ピークの最小点での温度である。よって、結晶化温度(T
C(PP))は、以下に記載する結晶化の開始温度(T
C
開始)とは異なる。結晶化温度(T
C(P))は通常、結晶化の開始温度(T
C
開始)未満である。
【0044】
添加剤(A)
本発明によれば、少なくとも1種の添加剤(A)は、無機顔料及び安定剤からなる群から選択される。
【0045】
本発明において、「少なくとも1種の添加剤(A)」とは、厳密に1種の添加剤(A)か、又は2種以上の添加剤の混合物(A)を意味する。
【0046】
少なくとも1種の添加剤(A)として、2種以上の添加剤(A)を用いることが好ましく、添加剤(A)のうち少なくとも1種は無機顔料からなる群から選択され、添加剤(A)のうち少なくとも1種は安定剤からなる群から選択される。
【0047】
よって本発明はまた、少なくとも1種の添加剤(A)として2種以上の添加剤(A)が用いられ、2種以上の添加剤(A)のうち少なくとも1種が無機顔料からなる群から選択され、2種以上の添加剤(A)のうちさらなる少なくとも1種が安定剤からなる群から選択される方法を提供する。
【0048】
本発明において、「安定剤」とは、遊離ラジカル捕捉剤として使用され得る化合物を意味すると理解されるべきである。
【0049】
好ましい安定剤は、立体障害フェノール、立体障害アミン、ホスファイト及び銅安定剤からなる群から選択される。
【0050】
よって本発明はまた、安定剤が立体障害フェノール、立体障害アミン、ホスファイト及び銅安定剤からなる群から選択される方法を提供する。
【0051】
適した立体障害フェノールは、例えば、N,N’-ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオンアミド]、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド]、ペンタエリスリトールテトラキス(3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)及びオクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートからなる群から選択される。
【0052】
適した立体障害アミンは、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)スクシネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-n-ブチル-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジルマロネート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン及びコハク酸の縮合生成物、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン及び4-tert-オクチルアミノ-2,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジンの直鎖又は環状縮合物、トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ニトリロトリアセテート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、1,1’-(1,2-エタンジイル)ビス(3,3,5,5-テトラメチルピペラジノン)、4-ベンゾイル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ステアリルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、ビス(12,2,6,6-ペンタメチルピペリジル)-2-n-ブチル-2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルベンジル)マロネート、3-n-オクチル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ[4.5]デカン-2,4-ジオン、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)スクシネート、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン及び4-モルホリノ-2,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジンの直鎖又は環状縮合物、2-クロロ-4,6-ビス(4-n-ブチルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジル)-1,3,5-トリアジン及び1,2-ビス(3-アミノプロピルアミノ)エタンの縮合物、2-クロロ-4,6-ジ-(4-n-ブチルアミノ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジル)-1,3,5-トリアジン及び1,2-ビス(3-アミノプロピルアミノ)エタンの縮合物、8-アセチル-3-ドデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1,3,8-トリアザスピロ[4.5]デカン-2,4-ジオン、3-ドデシル-1-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ピロリジン-2,5-ジオン、3-ドデシル-1-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)ピロリジン-2,5-ジオン、4-ヘキサデシルオキシ-及び4-ステアリルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンの混合物、N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン及び4-シクロヘキシルアミノ-2,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジンの縮合物、1,2-ビス(3-アミノプロピルアミノ)エタン及び2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン及び4-ブチルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(CAS登録番号[136504-96-6])の縮合物、1,6-ヘキサンジアミン及び2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン及びN,N-ジブチルアミン及び4-ブチルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(CAS登録番号[192268-64-7])の縮合物;N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-n-ドデシルスクシンイミド、N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-n-ドデシルスクシンイミド、2-ウンデシル-7,7,9,9-テトラメチル-1-オキサ-3,8-ジアザ-4-オキソ-スピロ[4,5]デカン、7,7,9,9-テトラメチル-2-シクロウンデシル-1-オキサ-3,8-ジアザ-4-オキソスピロ-[4,5]デカン及びエピクロルヒドリンの反応生成物、1,1-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルオキシカルボニル)-2-(4-メトキシフェニル)エテン、Ν,Ν’-ビス-ホルミル-N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン、ポリ[メチルプロピル-3-オキシ-4-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)]シロキサン、2,4-ビス[N-(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)-N-ブチルアミノ]-6-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-1,3,5-トリアジン、1-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロポキシ)-4-オクタデカノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、5-(2-エチルヘキサノイル)オキシメチル-3,3,5-トリメチル-2-モルホリノン、Sanduvor(Clariant社;CAS登録番号106917-31-1]、5-(2-エチルヘキサノイル)オキシメチル-3,3,5-トリメチル-2-モルホリノン、2,4-ビス[(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-ピペリジン-4-イル)ブチルアミノ]-6-クロロ-s-トリアジンのN,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン)との反応生成物、1,3,5-トリス(N-シクロヘキシル-N-(2,2,6,6-テトラメチルピペラジン-3-オン-4-イル)アミノ)-s-トリアジン、1,3,5-トリス(N-シクロヘキシル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチルピペラジン-3-オン-4-イル)アミノ)-s-トリアジンからなる群から選択される。
【0053】
好ましい銅安定剤は、一価又は二価の銅の化合物である。一価又は二価の銅の化合物は、例えば、一価又は二価の銅の無機又は有機酸又は一価又は二価のフェノールとの塩、一価又は二価の銅の酸化物、又は銅塩のアンモニア、アミン、アミド、ラクタム、シアン化物又はホスフィンとの錯体である。ハロゲン化水素酸の、シアン化水素酸のCu(I)又はCu(II)塩、又は脂肪族カルボン酸の銅塩も適している。銅安定剤が、CuCl、CuBr、CuI、CuCN、Cu2O、CuCl2、CuSO4、CuO、酢酸銅(II)及びステアリン酸銅(II)からなる群から選択される場合が特に好ましい。
【0054】
適したホスファイトは、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-クミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジイソデシルオキシペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリス(tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)メチルホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)エチルホスファイト及び2,2’,2”-ニトリロ[トリエチル-トリス-3,3’,5,5’-テトラ-tert-ブチル-1,1’-ビフェニル-2,2’-ジイル)ホスファイト]からなる群から選択される。
【0055】
安定剤は、好ましくは、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド]及びトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトからなる群から選択される。
【0056】
「無機顔料」とは、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)中に不溶の無機着色剤を意味すると理解されるべきである。
【0057】
無機顔料は、好ましくは、カーボンブラック及び金属酸化物からなる群から選択される。
【0058】
よって本発明はまた、有機顔料がカーボンブラック及び金属酸化物からなる群から選択される方法を提供する。
【0059】
DIN 53601に従って少なくとも30ml/100g、好ましくは少なくとも50ml/100gの細孔容積(DBP、ジブチルフタレート吸収量)を有するカーボンブラックが適している。
【0060】
DBP吸収量は、一般にDIN 53601又はASTM-D 2414に従って決定され、それぞれのカーボンブラックの構造の尺度を表す。ここで構造とは、一次カーボンブラック粒子の連結が凝集体をもたらすことである。このパラメータを決定するために、測定可能な力伝達(プラストグラフ(plastograph))を備えたニーダーに最初に投入された10gのカーボンブラックを、最大トルク(カーボンブラックの湿潤点)を超えるまでジブチルフタレートと滴下して混合する。
【0061】
カーボンブラックは、好ましくは、少なくとも20~1000m2/g、好ましくは30~300m2/gの、ISO 4652に従ったBET比表面積を有する。
【0062】
そのようなカーボンブラックは、例えば、Spezialschwarz4の商品名でEvonik社から、Printex Uの商品名でEvonik社から、Printex140の商品名でEvonik社から、Spezialschwarz350の商品名でEvonik社から、及びSpezialschwarz100商品名でEvonik社から、入手できる。
【0063】
適した金属酸化物は、例えば、鉄コバルトオキシド、ビスマスバナデート、ZnO及びTiO2からなる群から選択される。
【0064】
適した金属酸化物は、例えば、Sicopal Black K 0090の商品名でBASF SE社から、及びSicopal Black K 0095の商品名でBASF SE社から、得ることができる。
【0065】
工程a)
工程a)において、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(a)が押出機内で配合されて、配合混合物(cM)が得られる。配合混合物(cM)は、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)を含む。
【0066】
本発明において、「配合」とは、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)の少なくとも1種の添加剤(A)との混合を意味すると理解されるべきである。
【0067】
少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)は通常、工程a)で得られる配合混合物(cM)及び工程b)で得られる押出混合物(eM)中に存在すべき量で、互いに配合される。
【0068】
従って通常、いずれの場合も少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)の総質量に対して、90質量%~99.95質量%の範囲の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)、及び0.05質量%~10質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)が、配合される。
【0069】
好ましくは、いずれの場合も少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)の総質量に対して、95質量%~99.95質量%の範囲の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)、及び0.05質量%~5質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)が、配合される。
【0070】
特に好ましくは、いずれの場合も少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)の総質量に対して、98質量%~99.95質量%の範囲の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)、及び0.05質量%~2質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)が、配合される。
【0071】
本発明のさらなる実施形態では、工程a)において、いずれの場合も少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)の総質量に対して、60質量%~<95質量%の範囲の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)、及び>5質量%~40質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)が、配合される。
【0072】
少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)の質量パーセンテージの合計は、通常100%である。
【0073】
少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)は、工程a)における配合の間に互いに反応し得る。少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)が、工程a)における配合の間に互いに反応しない場合が好ましい。
【0074】
少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)の質量パーセンテージは、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)の間に任意の反応が起こる前の質量パーセンテージに関することが理解されよう。
【0075】
工程a)は任意の所望の温度で行われ得、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)は工程a)が行われる温度で融解した形態で存在することが好ましい。
【0076】
「融解した形態で」とは、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)が、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)の融解温度(TM(P))より高い温度を有することを意味する。よって本発明において、「融解した形態」とは、工程a)が、少なくとも1種の半結晶性ポリアミドの融解温度(TM(P))より高い温度で行われることを意味する。少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)が融解した形態で存在する場合には、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)は流動性である。
【0077】
「流動性」とは、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)を押出機内で運ぶことができ、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)を押出機から押出すことができることを意味する。
【0078】
工程a)が行われる温度では、少なくとも1種の添加剤(A)が、同様に融解した形態で存在し得る。少なくとも1種の添加剤(A)が、工程a)が行われる温度で固体の形態で存在することも、同様に可能である。
【0079】
「融解した形態で」とは、少なくとも1種の添加剤(A)が、少なくとも1種の添加剤(A)の融解温度(TM(A))より高い温度を有することを意味する。よって「融解した形態で」とは、工程a)がまた、少なくとも1種の添加剤(A)の融解温度(TM(A))より高い温度で行われることを意味する。
【0080】
そして「固体の形態で」とは、少なくとも1種の添加剤(A)が、少なくとも1種の添加剤(A)の融解温度(TM(A))未満の温度を有することを意味する。よって「固体の形態で」とは、工程a)が、少なくとも1種の添加剤(A)の融解温度(TM(A))未満の温度で行われることを意味する。
【0081】
工程a)は、例えば、220℃~320℃の範囲の、好ましくは240℃~300℃の範囲の、とりわけ好ましくは270℃~290℃の範囲の温度で行われる。
【0082】
本発明において、工程a)が行われる温度は、押出機のジャケット(jacket)温度を意味すると理解されるべきである。
【0083】
よって本発明はまた、工程a)における配合の間に押出機の加熱筺体のジャケット温度が、220℃~320℃の範囲、好ましくは240℃~300℃の範囲、とりわけ好ましくは270℃~290℃の範囲である方法を提供する。
【0084】
「押出機のジャケット温度」とは、押出機のジャケットの温度を意味すると理解されるべきである。よって押出機のジャケット温度は、押出機の筺体の外壁の温度である。
【0085】
押出機のジャケット温度は、押出機内に存在する構成要素の(少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)の)温度よりも高くてもよく、押出機のジャケット温度が、押出機内の構成要素の温度よりも低いことも、同様に可能である。例えば、押出機のジャケット温度は、構成要素が加熱される場合、最初は押出機内の構成要素の温度よりも高いことが可能である。押出機内の構成要素が冷却される場合、押出機のジャケット温度が押出機内の構成要素温度よりも低いことが可能である。
【0086】
押出機における少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)の配合のために、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)は、当業者に既知の方式で押出機に供給され得る。例えば、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)は、融解した又は固体の形態で押出機に供給され得る。同様に、少なくとも1種の添加剤(A)は、融解した又は固体の形態で押出機に供給され得る。
【0087】
少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)が固体の形態で押出機に供給される場合、それは、例えばペレット及び/又は粉末として押出機に供給され得る。次いで、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)は、押出機内で融解され得る。この実施形態が好ましい。
【0088】
同様に、少なくとも1種の添加剤(A)は固体の形態で、例えばペレットとして又は粉末として、好ましくは粉末として押出機に供給され、次いで押出機内で任意に融解され得る。
【0089】
さらに、最初に少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)を押出機内で直接製造し、次いで少なくとも1種の添加剤(A)を押出機に供給し、最後に前記添加剤を押出機内で製造した半結晶性ポリアミド(P)と配合することも可能である。
【0090】
適した押出機は、当業者に既知のすべての押出機である。
【0091】
工程a)において、添加される物質が、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)とさらに配合され得る。適した添加される物質は当業者に既知であり、例えば、タルク、アルカリ土類金属シリケート、アルカリ土類金属グリセロホスフェート、充填剤、例えばガラス球、ガラス繊維、炭素繊維、ナノチューブ及びチョーク、及び衝撃改質ポリマー(例えば、エチレン-プロピレン(EPM)系又はエチレン-プロピレン-ジエン(EPDM)系)、ゴム又は熱可塑性ポリウレタン、難燃剤、可塑剤及び/又は接着促進剤である。
【0092】
例えば、各場合とも少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)、少なくとも1種の添加剤(A)及び添加された物質の総質量に対して、0.1質量%~50質量%の範囲の添加される物質、好ましくは0.1質量%~40質量%の範囲の、とりわけ好ましくは0.1質量%~20質量%の範囲の添加される物質が、さらに配合される。
【0093】
そして添加される物質がさらに配合される場合、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び/又は少なくとも1種の添加剤(A)の質量パーセンテージも、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)、少なくとも1種の添加剤(A)及び添加される物質の総質量に対することが理解されよう。
【0094】
そして、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)、少なくとも1種の添加剤(A)及び添加された物質の質量パーセンテージの合計は、通常100質量%である。
【0095】
工程a)において、配合混合物(cM)が得られる。
【0096】
工程a)で得られた配合混合物(cM)は、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)中に通常は分散した少なくとも1種の添加剤(A)を含有する。
【0097】
そして、少なくとも1種の添加剤(A)は分散相(内相)を形成し、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)は分散媒(連続相)を形成する。配合混合物(cM)は、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)を、通常、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)が互いに配合された量と同じ量で含む。
【0098】
従って配合混合物(cM)は、通常、各場合とも少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)の質量パーセンテージの合計に対して、好ましくは配合混合物(cM)の総質量に対して、95質量%~99.95質量%の範囲の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)、及び0.05質量%~5質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)を含む。
【0099】
配合混合物(cM)は、好ましくは、各場合とも少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)の質量パーセンテージの合計に対して、好ましくは配合混合物(cM)の総質量に対して、95質量%~99.95質量%の範囲の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)、及び0.05質量%~5質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)を含む。
【0100】
配合混合物(cM)は、特に好ましくは、各場合とも少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)の質量パーセンテージの合計に対して、好ましくは配合混合物(cM)の総質量に対して、98質量%~99.95質量%の範囲の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)、及び0.05質量%~2質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)を含む。
【0101】
さらなる実施形態では、配合混合物(cM)は、各場合とも少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)の質量パーセンテージの合計に対して、好ましくは配合混合物(cM)の総質量に対して、60質量%~<95質量%の範囲の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)、及び>5質量%~40質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)を含む。
【0102】
工程a)において、添加される物質がさらに配合される場合、配合混合物(cM)は、添加される物質も含むことが理解されよう。
【0103】
工程b)
本発明によれば、工程b)において、工程a)で得られた配合混合物(cM)が押出機から押出され、押出混合物(eM)が得られる。押出混合物(eM)は、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)を含む。
【0104】
工程a)で得られた配合混合物(cM)の押出しは、当業者に既知の任意の方式で行われ得る。配合混合物(cM)は通常、押出され、その過程でペレット化される。ペレット化の方法は、当業者に既知である。例えば、配合混合物(cM)を押出し、水浴で冷却し、その後続いてストランドペレット化し得る。水ペレット化(water pelletization)も可能である。これ自体は当業者に既知である。本発明によれば、水浴で冷却し、その後続いてストランドペレット化することが好ましい。
【0105】
よって本発明はまた、工程a)で得られた配合混合物(cM)を、工程b)で押出し、水浴中で冷却し、その後続いてストランドペレット化する方法を提供する。
【0106】
配合混合物(cM)の押出しの間、配合混合物(cM)は、通常は冷えて、従って固化する。従って押出混合物(eM)は、好ましくは固体の形態で、とりわけ好ましくはペレットとして存在する。
【0107】
「固体の形態で」とは、配合混合物(cM)が、配合混合物(cM)中に存在する少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)の融解温度(TM(P))未満、好ましくはガラス転移温度(TG(P))未満の温度を有することを意味する。
【0108】
例えば、工程b)の間の押出しにおいて、配合混合物(cM)は、0.5~6mmの範囲の、好ましくは3~5mmの範囲の、とりわけ好ましくは4~5mmの範囲の粒度にペレット化される。
【0109】
よって本発明はまた、工程b)の間の押出しにおいて、配合混合物(cM)を0.5~5mmの範囲の粒度にペレット化する方法を提供する。
【0110】
工程b)で得られた押出混合物(eM)は通常、工程a)で得られた配合混合物(cM)と同じ量の、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)を含む。
【0111】
従って、押出混合物(eM)中の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)、及び任意に添加された物質の質量パーセンテージに関して、前述した、配合混合物(cM)中の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド及び少なくとも1種の添加剤(A)、及び任意に添加された物質の質量についての説明及び選好が、対応して適用される。
【0112】
工程b)で得られた押出混合物(eM)は例えば、押出混合物(eM)の総質量に対して、0.05質量%~5質量%の範囲の、好ましくは0.05質量%~2質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)を含む。
【0113】
よって本発明はまた、工程b)で得られた押出混合物(eM)が、押出混合物(eM)の総質量に対して、0.05質量%~6質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)を含む方法を提供する。
【0114】
さらなる実施形態において、工程b)で得られた押出混合物(eM)は、押出混合物(eM)の総質量に対して、>5質量%~50質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)を、好ましくは10質量%~40質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)を、とりわけ好ましくは10質量%~30質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)を含む。
【0115】
よって本発明はまた、工程b)で得られた押出混合物(eM)が、押出混合物(eM)の全質量に対して、>5質量%~50質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)を含む方法を提供する。
【0116】
工程a)で得られた配合混合物(cM)が添加された物質をさらに含む場合には、押出混合物(eM)もこの添加された物質を含むことが理解されよう。
【0117】
工程c)
工程c)において、工程b)で得られた押出混合物(eM)を溶媒(SV)中に導入し、第一の懸濁液(S1)を得る。第一の懸濁液(S1)は、押出混合物(eM)及び溶媒(SV)を含む。
【0118】
工程(b)で得られた押出混合物(eM)の溶媒(SV)への導入は、当業者に既知の任意の方式で行い得る。工程b)で得られた押出混合物(eM)は、例えばそのペレット化後に直接溶媒(SV)中に導入し得る。
【0119】
工程c)の間の溶媒(SV)の温度は、例えば5℃~100℃の範囲であり、好ましくは10℃~70℃の範囲であり、とりわけ好ましくは15℃~50℃の範囲である。
【0120】
溶媒(SV)は、押出混合物(eM)の導入の間にスターラーで攪拌し得る。
【0121】
適したスターラーとして、バッフル付き又はなしの、プロペラスターラー、アンカースターラー、クロスビームスターラーなど、当業者に既知のあらゆるスターラーが挙げられる。
【0122】
溶媒(SV)は、例えば100~500W/m3の範囲のスターラーの比出力量で撹拌され得る。溶媒(SV)は、好ましくは、150~450W/m3の範囲の比出力量で、とりわけ好ましくは200~400W/m3の比出力量で攪拌される。比出力量は次の関係に従い計算される:p=P/V(式中、出力Pは、P=k2*n^3*d^5*rhoで計算され得、式中k2は、スターラー固有の定数であり(出典参照)、nはスターラー速度、dはスターラー直径、rhoは媒体の密度で、Vは撹拌された体積である)。出典:Ullmanns Encyclopedia of Industrial Chemistry、Marko Zlokarnik、2012 Wiley-VCH Verlag GmbH&Co.KGaA、Weinheim、DOI:10.1002/14356007.b02_25。
【0123】
適した溶媒(SV)は、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)が可溶である当業者に既知の任意の溶媒である。溶媒(SV)は、好ましくはラクタム、水、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0124】
よって本発明はまた、溶媒(SV)がラクタム、水及びそれらの混合物からなる群から選択される方法を提供する。
【0125】
本発明によれば、「ラクタム」とは、環に4~12個の炭素原子、好ましくは6~12個の炭素原子を有する環状アミドを意味すると理解されるべきである。
【0126】
適したラクタムは、例えば、4-アミノブタノラクタム(γ-ラクタム;γ-ブチロラクタム;ピロリドン)、5-アミノペンタノラクタム(δ-ラクタム;δ-バレロラクタム;ピペリドン)、6-アミノヘキサノラクタム(ε-ラクタム;ε-カプロラクタム)、7-アミノヘプタノラクタム(ζ-ラクタム;ζ-ヘプタノラクタム)、8-アミノオクタノラクタム(η-ラクタム;η-オクタノラクタム;カプリロラクタム)、9-ノナノラクタム(θ-ラクタム;θ-ノナノラクタム)、10-デカノラクタム(ω-デカノラクタム;カプリンラクタム)、11-ウンデカノラクタム(ω-ウンデカノラクタム)、及び12-ドデカノラクタム(ω-ドデカノラクタム;ラウロラクタム)からなる群から選択される。
【0127】
ラクタムは非置換又は少なくとも一置換であり得る。少なくとも一置換のラクタムが用いられる場合、これらは環の炭素原子に1個、2個又はそれ以上の置換基を有し得る。
【0128】
ラクタムは好ましくは非置換である。
【0129】
12-ドデカノラクタム(ω-ドデカノラクタム)及び/又はε-ラクタム(ε-カプロラクタム)が特に好ましく、ε-ラクタム(ε-カプロラクタム)が最も好ましい。
【0130】
ε-カプロラクタムは、カプロン酸の環状アミドであり、6-アミノヘキサノラクタム、6-ヘキサノラクタム又はカプロラクタムとも呼ばれ、そのIUPAC名は、「アセパン-2-オン(Acepan-2-one)」である。カプロラクタムはCAS番号105-60-2及び一般式C6H11NOを有する。カプロラクタムを製造するための方法は、当業者に既知である。
【0131】
用いられる溶媒(SV)は、好ましくはラクタム及び水の混合物である。用いられる溶媒(SV)は、好ましくはラクタム及び水を含む混合物である。溶媒(SV)として使用されるのは、例えば、混合物の総質量に対して、30質量%~60質量%の範囲のラクタム及び40質量%~70質量%の範囲の水を含む混合物である。
【0132】
好ましくは、溶媒(SV)として使用されるのは、各場合とも混合物の総質量に対して、30質量%~50質量%の範囲のラクタム及び50質量%~70質量%の範囲の水の混合物である。
【0133】
最も好ましくは、溶媒(SV)として使用されるのは、各場合とも混合物の総質量に対して、35質量%~45質量%の範囲のラクタム及び65質量%~75質量%の範囲の水の混合物である。
【0134】
よって本発明はまた、溶媒(SV)が、各場合とも混合物の総質量に対して、30質量%~60質量%の範囲のラクタム及び40質量%~70質量%の範囲の水の混合物である方法を提供する。
【0135】
よって本発明はまた、溶媒(SV)が、各場合とも混合物の総質量に対して、30質量%~60質量%の範囲のラクタム及び40質量%~70質量%の範囲の水の混合物からなる方法を提供する。
【0136】
工程c)において、第一の懸濁液(S1)が得られる。第一の懸濁液(S1)は、溶媒(SV)を分散媒(外相)として含み、押出混合物(eM)を分散相(内相)として含む。
【0137】
第一の懸濁液(S1)は例えば、第一の懸濁液(S1)の総質量に対して、1質量%~25質量%の範囲の押出混合物(eM)、及び75質量%~99質量%の範囲の溶媒(SV)を含む。
【0138】
第一の懸濁液(S1)は、好ましくは、第一の懸濁液(S1)の総質量に対して、4質量%~20質量%の範囲の押出混合物(eM)、及び80質量%~96質量%の範囲の溶媒(SV)を含む。
【0139】
第一の懸濁液(S1)は、最も好ましくは、第一の懸濁液(S1)の総質量に対して、7質量%~15質量%の範囲の押出混合物(eM)、及び85質量%~93質量%の範囲の溶媒(SV)を含む。
【0140】
よって本発明はまた、工程c)で得られた第一の懸濁液(S1)が、第一の懸濁液(S1)の総質量に対して、1質量%~25質量%の範囲の押出混合物(eM)、及び75質量%~99質量%の範囲の溶媒(SV)を含む方法を提供する。
【0141】
工程d)
工程d)において、工程c)で得られた第一の懸濁液(S1)が第一の温度(T1)まで加熱される。この過程で、押出混合物(eM)中に存在する少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)が溶媒(SV)中に溶解して、混合物(G)が得られる。混合物(G)は、溶媒(SV)中に溶解した少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)を含む。
【0142】
工程c)で得られた第一の懸濁液(S1)が工程d)で加熱される第一の温度(T1)は、使用される溶媒(SV)の種類、用いられる少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)、及び溶媒(SV)中の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)の濃度に依存する。
【0143】
例えば、第一の懸濁液(S1)は工程d)で、140℃~200℃の範囲の、好ましくは150℃~195℃の範囲の、とりわけ好ましくは170℃~190℃の範囲の第一の温度(T1)に加熱される。
【0144】
よって本発明はまた、工程d)において、工程c)で得られた第一の懸濁液(S1)を140℃~200℃の範囲の第一の温度(T1)に加熱する方法を提供する。
【0145】
工程d)における加熱は、例えば0.5~5K/分の範囲の加熱速度で、好ましくは1~4K/分の範囲の加熱速度で、とりわけ好ましくは2~3K/分の加熱速度で行われ得る。
【0146】
さらに、第一の懸濁液(S1)及び/又は混合物(G)が、0.1~10時間の範囲の、好ましくは0.1~5時間の範囲の期間、第一の温度(T1)に保持されることが可能である。
【0147】
工程c)で得られた第一の懸濁液(S1)は、少なくとも2段階で第一の温度(T1)に加熱されることがさらに好ましい。例えば、得られた第一の懸濁液(S1)は、最初に140℃~<170℃の範囲の第一の温度(T1-1)に加熱され、この温度で1~5時間保持される。その後続いて、第一の懸濁液(S1)は、例えば170℃~190℃の範囲の二番目の第一の温度(T1-2)までさらに加熱され、そこで0.1~2時間保持される。
【0148】
よって本発明はまた、工程c)で得られた第一の懸濁液が、工程d)で最初に140℃~<170℃の範囲の一番目の第一の温度(T1-1)に加熱され、その後続いて170℃~190℃の範囲の二番目の第一の温度(T1-2)まで加熱される方法を提供する。
【0149】
工程d)における加熱は、当業者に既知の任意の方式で行われ得る。
【0150】
第一の懸濁液(S1)は、工程d)での加熱の間にスターラーで攪拌されることが好ましい。適したスターラーとして、例えばバッフル付き又はなしの、プロペラスターラー、アンカースターラー、クロスビームスターラーなど、当業者に既知のあらゆるスターラーが挙げられる。
【0151】
工程d)で第一の懸濁液(S1)を攪拌する場合、スターラーの第一の懸濁液(S1)への比出力量が、100~500W/m3の範囲にある場合が好ましく、150~450W/m3の範囲にある場合が特に好ましく、200~400W/m3の範囲にある場合がとりわけ好ましい。比出力量は、上記のように定義される。
【0152】
よって本発明はまた、工程d)において、第一の懸濁液(S1)を加熱の間にスターラーで撹拌し、第一の懸濁液(S1)へのスターラーの比出力量が100~500W/m3の範囲である方法を提供する。
【0153】
加熱の間、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)は、溶媒(SV)中に溶解する。第一の温度(T1)では、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)は、溶媒(SV)中に完全に溶解して存在する。これは、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)の分子が、溶媒(SV)中に均質及び無作為に分布しており、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)の分子は、ろ過で分離できないことを意味する。
【0154】
少なくとも1種の添加剤(A)も同様に溶媒(SV)中に溶解し得る。少なくとも1種の添加剤(A)が溶媒(SV)中に溶解しないこともさらに可能である。
【0155】
少なくとも1種の添加剤(A)が溶媒(SV)に溶解しない場合には、少なくとも1種の添加剤(A)は、溶解した形態の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)を含む溶媒(SV)中に、懸濁して存在する。そして、少なくとも1種の添加剤(A)は分散相(内相)を形成し、それから溶解した形態の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)を含む溶媒(SV)は分散媒(外相)を形成する。
【0156】
任意に存在する添加された物質も同様に、溶媒(SV)中に溶解して存在し得る。添加された物質が溶媒(SV)に溶解せず、溶解した形態の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)を含む溶媒(SV)中に、懸濁して存在することも、同様に可能である。
【0157】
工程e)
工程e)では、工程d)で得られた混合物(G)は、第二の温度(T2)まで冷却される。この過程で、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)が結晶化して、溶媒(SV)中に懸濁したポリアミド粉末(PP)を含む第二の懸濁液(S2)が得られる。
【0158】
工程d)で得られた混合物(G)が工程e)で冷却される第二の温度(T2)は、使用する溶媒(SV)の種類、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)、及び少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)の濃度に依存する。例えば、工程e)において、工程d)で得られた混合物(G)は、100℃~140℃の範囲の、好ましくは105℃~135℃の範囲の、とりわけ好ましくは110℃~125℃の範囲の第二の温度(T2)に冷却される。
【0159】
よって本発明はまた、工程e)において、工程d)で得られた混合物(G)を、100℃~140℃の範囲の第二の温度(T2)に冷却する方法を提供する。
【0160】
工程e)において混合物(G)が冷却される第二の温度(T2)は、工程d)で第一の懸濁液(S1)が加熱される第一の温度(T1)未満であることが理解されよう。
【0161】
工程e)における冷却速度は、例えば、0.5~10℃/分の範囲であり、好ましくは1~6℃/分の範囲であり、とりわけ好ましくは2~4℃/分の範囲である。
【0162】
工程e)において、混合物(G)を、0.1~2時間の範囲の、好ましくは0.2~1.5時間の範囲の、特に0.3~1時間の範囲の期間、第二の温度(T2)に保持することが可能である。
【0163】
冷却は、当業者に既知の方式で行われ得る。
【0164】
混合物(G)は、工程e)における冷却の間にスターラーで攪拌されることが好ましい。混合物(G)へのスターラーの比出力量は、好ましくは100~500W/m3の範囲であり、特に好ましくは150~450W/m3の範囲であり、とりわけ好ましくは200~400W/m3の範囲である。スターラーの比出力量は、上記のように定義される。
【0165】
よって本発明はまた、少なくとも混合物(G)をスターラーで工程e)の間に撹拌し、混合物(G)へのスターラーの比出力量が100~500W/m3の範囲である方法を提供する。
【0166】
冷却の間に、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)が結晶化し、ポリアミド粉末(PP)及び溶媒(SV)を含む第二の懸濁液(S2)が得られる。
【0167】
ポリアミド粉末(PP)を、以下により詳細に記載する。
【0168】
第二の懸濁液(S2)では、ポリアミド粉末(PP)は分散相(内相)を形成し、溶媒(SV)は分散媒(連続相;外相)を形成する。第二の懸濁液(S2)は通常、各場合とも第二の懸濁液(S2)の総質量に対して、1質量%~25質量%の範囲のポリアミド粉末(PP)、及び75質量%~99質量%の範囲の溶媒(SV)を含む。
【0169】
第二の懸濁液は、好ましくは、第二の懸濁液(S2)の総質量に対して、4質量%~20質量%の範囲のポリアミド粉末(PP)、及び80質量%~90質量%の範囲の溶媒(SV)を含む。
【0170】
第二の懸濁液(S2)は、最も好ましくは、第二の懸濁液(S2)の総質量に対して、7質量%~15質量%の範囲のポリアミド粉末(PP)、及び85質量%~93質量%の範囲の溶媒(SV)を含む。
【0171】
工程f)
工程f)において、ポリアミド粉末(PP)は、工程e)で得られた第二の懸濁液(S2)から分離される。
【0172】
ポリアミド粉末(PP)の除去は、例えば濾過及び/又は遠心分離など、当業者に既知の任意の方法によって行われ得る。工程f)において、ポリアミド粉末(PP)は、このように第二の懸濁液(S2)の溶媒(SV)から分離される。
【0173】
このようにして得られたポリアミド粉末(PP)は、任意にさらなる後処理に付され得る。好ましい実施形態では、ポリアミド粉末(PP)を水で洗浄して、存在する任意の残留溶媒(SV)をポリアミド粉末(PP)から除去する。
【0174】
さらに好ましい実施形態では、ポリアミド粉末(PP)を水で洗浄し、次いで工程f)における分離後に乾燥させる。
【0175】
この乾燥は熱乾燥であり得る。好ましい熱乾燥の方法は、例えば、熱気が供給される流動床での乾燥、又は窒素雰囲気下及び/又は減圧下高温(例えば50℃~80℃の範囲)での乾燥である。
【0176】
ポリアミド粉末(PP)
本発明の方法により得ることができるポリアミド粉末(PP)は、特に低い微粉画分を有し、この微粉画分は、<20μmの寸法を有する粒子を意味すると理解されるべきである。
【0177】
例えば、本発明により製造されたポリアミド粉末(PP)中の微粉画分は、各場合ともポリアミド粉末(PP)の総質量に対して、<10質量%、好ましくは<8質量%、とりわけ好ましくは<5質量%である。
【0178】
さらに、本発明に従って製造されたポリアミド粉末(PP)は、特に狭い粒度分布を有する。
【0179】
例えば、ポリアミド粉末(PP)は、
10~30μmの範囲のD10、
25~70μmの範囲のD50及び
50~150μmの範囲のD90を有する。
【0180】
本発明によるポリアミド粉末(PP)は、好ましくは、
20~30μmの範囲のD10、
40~60μmの範囲のD50及び
80~110μmの範囲のD90を有する。
【0181】
よって本発明はまた、ポリアミド粉末(PP)が、
10~30μmの範囲のD10、
25~70μmの範囲のD50及び
50~150μmの範囲のD90を有する方法を提供する。
【0182】
本発明において、「D10」は、粒子の総体積に対して粒子の10体積%がD10よりも小さい又は同等であり、粒子の総体積に対して粒子の90体積%がD10よりも大きい粒度を意味すると理解されるべきである。類推によって、「D50」は、粒子の総体積に対して粒子の50体積%がD50よりも小さい又は同等であり、粒子の総体積に対して粒子の50体積%がD50よりも大きい粒度を意味すると理解されるべきである。対応して、「D90」は、粒子の総体積に対して粒子の90体積%がD90よりも小さい又は同等であり、粒子の総体積に対して粒子の10体積%がD90よりも大きい又は同等である粒度を意味すると理解されるべきである。
【0183】
粒度を決定するために、ポリアミド粉末(PP)を乾燥状態で圧縮空気によって、又は例えば水やエタノールなどの溶媒に懸濁させ、この懸濁液を分析する。D10、D50、及びD90は、Malvern Mastersizer 3000を使用したレーザー回折によって決定される。評価はフラウンホーファー回折による。
【0184】
本発明によるポリアミド粉末(PP)は、特に高いかさ密度、例えば0.3~0.7g/cm3の範囲の、好ましくは0.4~0.65g/cm3の範囲の、とりわけ好ましくは0.45~0.6g/cm3の範囲のかさ密度をさらに有する。
【0185】
ポリアミド粉末(PP)は、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)を、任意の所望の量で含み得る。
【0186】
ポリアミド粉末(PP)は通常、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)を、工程a)で少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)及び少なくとも1種の添加剤(A)が配合された量で含む。
【0187】
ポリアミド粉末(PP)は、例えば、ポリアミド粉末(PP)の総質量に対して、95質量%~99.95質量%の範囲の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド、及び0.05質量%~5質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)を含む。
【0188】
ポリアミド粉末(PP)は、各場合ともポリアミド粉末(PP)の総質量に対して、98質量%~99.95質量%の範囲の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)、及び0.05質量%~2質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)を含むことが好ましい。
【0189】
さらなる実施形態では、ポリアミド粉末(PP)は、各場合ともポリアミド粉末(PP)の総質量に対して、60質量%~<95質量%の範囲の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)、及び>5質量%~40質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)を含む。
【0190】
この実施形態では、ポリアミド粉末(PP)は好ましくは、各場合ともポリアミド粉末(PP)の総質量に対して、95質量%~99.95質量%の範囲の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)、及び0.05質量%~5質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)を含む。
【0191】
この実施形態では、ポリアミド粉末(PP)は最も好ましくは、各場合ともポリアミド粉末(PP)の総質量に対して、98質量%~99.95質量%の範囲の少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)、及び0.05質量%~2質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)を含む。
【0192】
工程a)において添加された物質がさらに配合された場合には、工程f)で得られるポリアミド粉末(PP)もこの添加された物質を含有することが理解されよう。そしてポリアミド粉末(PP)は通常、この添加された物質を、添加された物質が工程a)で配合された量で含む。
【0193】
ポリアミド粉末(PP)は、さらに、残留溶媒(SV)を含有し得る。
【0194】
「残留」溶媒(SV)は、例えば、各場合ともポリアミド粉末(PP)の総質量に対して、0.01質量%~5質量%の範囲の溶媒、好ましくは0.1質量%~3質量%の範囲の、とりわけ好ましくは0.1質量%~1質量%の範囲の溶媒(SV)を意味すると理解されるべきである。
【0195】
ポリアミド粉末(PP)が、各場合ともポリアミド粉末(PP)の総質量に対して、>5質量%~50質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)、好ましくは10質量%~40質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)、及びとりわけ好ましくは10質量%~30質量%の範囲の少なくとも1種の添加剤(A)を含む場合には、ポリアミド粉末(PP)は、いわゆるマスターバッチである。そのようなマスターバッチは通常、例えば選択的レーザー焼結プロセス及び/又は成形体の製造に使用される前に、さらなる半結晶性ポリアミド(P)で希釈される。そのようなプロセスは、当業者に既知である。
【0196】
ポリアミド粉末(PP)において、少なくとも1種の添加剤(A)は通常、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)中に分散して存在する。そして少なくとも1種の添加剤(A)は分散相(内相)を形成し、少なくとも1種の半結晶性ポリアミド(P)は分散媒(外相)を形成する。
【0197】
ポリアミド粉末(PP)は、通常、180℃~270℃の範囲の融解温度(TM(PP))を有する。ポリアミド粉末(PP)の融解温度(TM(PP))は、好ましくは185℃~260℃の範囲であり、とりわけ好ましくは190℃~245℃の範囲である。
【0198】
よって本発明はまた、ポリアミド粉末(PP)が180℃~270℃の範囲の融解温度(TM(PP))を有する方法を提供する。
【0199】
本発明において、ポリアミド粉末(PP)の融解温度(T
M(PP))は、示差走査熱量測定(DSC)によって決定される。加熱ラン(H)と冷却ラン(C)が通常測定される。これにより、
図1に例として示すようなDSC図が得られる。そして融解温度(T
M(PP))は、DSC図の加熱ラン(H)の融解ピークが最大点を有する温度を意味すると理解されるべきである。よって、融解温度(T
M(PP))は、以下に記載する融解の開始温度(T
M
開始)とは異なる。融解温度(T
M(PP))は通常、融解の開始温度(T
M
開始)よりも高い。
【0200】
ポリアミド粉末(PP)は通常、120℃~250℃の範囲の結晶化温度(TC(PP))も有する。ポリアミド粉末(PP)の結晶化温度(TC(PP))は、好ましくは130℃~240℃の範囲であり、とりわけ好ましくは140℃~235℃の範囲である。
【0201】
よって本発明はまた、ポリアミド粉末(PP)が120℃~250℃の範囲の結晶化温度(TC(PP))を有する方法を提供する。
【0202】
本発明において、結晶化温度(T
C(PP))は、示差走査熱量測定(DSC)によって同様に決定される。上記で記載したように、これは通常、加熱ラン(H)と冷却ラン(C)の測定を伴う。
図1に例として示すようなDSC図が得られる。そして結晶化温度(T
C(PP))は、DSC曲線の結晶化ピークの最小点での温度である。よって、結晶化温度(T
C(PP))は、以下に記載する結晶化の開始温度(T
C
開始)とは異なる。
【0203】
ポリアミド粉末(PP)は通常、ガラス転移温度(TG(P))も有する。ポリアミド粉末(PP)のガラス転移温度(TG(PP))は、通常0℃~110℃の範囲であり、好ましくは40℃~105℃の範囲であり、とりわけ好ましくは40℃~105℃の範囲である。
【0204】
ポリアミド粉末(PP)のガラス転移温度(TG(PP))は、示差走査熱量測定によって決定される。本発明によれば、決定は、ポリアミド粉末(PP)の試料について、最初に第一の加熱ラン(H1)、次いで冷却ラン(C)、その後続いて第二の加熱ラン(H2)を測定することによって達成される(出発質量約8.5g)。第一の加熱ラン(H1)及び第二の加熱ラン(H2)の加熱速度は20K/分である。冷却ラン(C)の冷却速度も同様に20K/分である。DSC図の第二の加熱ラン(H2)において、ポリアミド粉末(PP)のガラス転移の領域で、段が得られる。ポリアミド粉末(PP)のガラス転移温度(TG(PP))は、DSC図の段高さの半分での温度に対応する。ガラス転移温度を決定するこの方法は、当業者に既知である。
【0205】
ポリアミド粉末(PP)は通常、焼結窓(WPP)も有する。焼結窓(WPP)は、より詳細に以下に説明するように、融解の開始温度(TM
開始)と結晶化の開始温度(TC
開始)との間の差である。融解の開始温度(TM
開始)及び結晶化の開始温度(TC
開始)は、以下に記載するように決定される。
【0206】
ポリアミド粉末(PP)の焼結窓(WPP)は、好ましくは15~40K(ケルビン)の範囲であり、特に好ましくは20~35Kの範囲であり、とりわけ好ましくは20~30Kの範囲である。
【0207】
よって本発明はまた、ポリアミド粉末(PP)が焼結窓(WPP)を有し、焼結窓(WPP)が、融解の開始温度(TM
開始)と結晶化の開始温度(TC
開始)との間の差であり、焼結窓(WPP)が15~40Kの範囲にある方法を提供する。
【0208】
よって本発明はまた、本発明による方法によって得ることができるポリアミド粉末(PP)を提供する。
【0209】
上記で記載したポリアミド粉末(PP)の特性が理由で、本発明によるポリアミド粉末(PP)は、焼結粉末(SP)として特に適している。
【0210】
よって本発明はまた、本発明によるポリアミド粉末(PP)の焼結粉末(SP)としての使用方法を提供する。
【0211】
本発明はさらに、本発明によるポリアミド粉末(PP)の選択的レーザー焼結による成形体の製造方法を提供する。
【0212】
選択的レーザー焼結
選択的レーザー焼結というプロセスは、それ自体当業者に既知であり、例えばUS6136948及びWO96/06881に記載されている。
【0213】
レーザー焼結では、焼結可能な粉末の第一の層を粉末床に配置し、レーザービームで局所的に短時間照射する。レーザー光線を照射した焼結可能な粉末の一部分のみが選択的に融解する(選択的レーザー焼結)。融解した焼結可能な粉末は融合し、それによって照射領域で均質な融解物を形成する。その後続いてこの領域は再び冷えて、均質な融解物が再凝固する。次いで、粉末床を第一の層の層厚で低下させ、焼結可能な粉末の第二の層を施与し、レーザーで選択的に照射して融解させる。これにより、焼結可能な粉末の上の方の第二の層が低い方の第一の層と結合する。その上第二の層内の焼結可能な粉末の粒子も融解により互いに結合する。粉末床の低下、焼結可能な粉末の施与及び焼結可能な粉末の融解を繰り返すことにより、三次元の成形品を製造することが可能になる。レーザービームを或る位置に選択的に照射することにより、例えば空洞を有する成形品を製造することが可能になる。融解していない焼結可能な粉末自体が支持材料として作用するので、追加の支持材料は必要ではない。
【0214】
当業者に既知であり、レーザー照射によって融解可能なあらゆる粉末が、選択的レーザー焼結における焼結可能な粉末として適している。本発明によれば、選択的レーザー焼結において用いられる焼結可能な粉末は、焼結粉末(SP)としても知られるポリアミド粉末(PP)である。
【0215】
本発明において、「焼結可能な粉末」「ポリアミド粉末(PP)」及び「焼結粉末(SP)」という用語は、同意語として使用され得、そして同じ意味を有する。
【0216】
選択的レーザー焼結のための適したレーザーは、当業者に既知のものであり、例えばファイバレーザー、Nd:YAGレーザー(ネオジムでドープしたイットリウムアルミニウムガーネットレーザー)及び二酸化炭素レーザーが挙げられる。
【0217】
選択的レーザー焼結プロセスにおいて特に重要なのは、焼結可能な粉末の融解範囲、いわゆる「焼結窓(W)」である。焼結可能な粉末が本発明によるポリアミド粉末(PP)である場合、焼結窓(W)は本発明において、ポリアミド粉末(PP)の「焼結窓(WPP)」と称する。
【0218】
焼結可能な粉末の焼結窓(W)は、例えば示差走査熱量測定(DSC)によって決定され得る。
【0219】
示差走査熱量測定では、試料(すなわち本例では焼結可能な粉末の試料)の温度、及び標準の温度が、経時的に直線的に変化する。この目的のために、試料及び標準に熱を供給し/試料及び標準から熱を除去する。試料を標準と同じ温度に保つのに必要な熱量Qを決定する。標準に供給される/標準から除去される熱量QRが標準値となる。
【0220】
試料が吸熱相変化を受ける場合、試料を標準と同じ温度に保つために、追加の熱量Qを供給しなければならない。発熱相変化が起こる場合、試料を標準と同じ温度に保つために、熱量Qを除去しなければならない。この測定は、試料に供給される/試料から除去される熱量Qが温度Tの関数としてプロットされるDSC図をもたらす。
【0221】
測定は通常、最初に加熱ラン(H)を行うことを伴う。すなわち、試料及び標準を直線的に加熱する。試料が融解する間(固相/液相変化)に、試料を標準と同じ温度に保つために追加の熱量Qを供給しなければならない。そしてDSC図には、融解ピークとして知られるピークが観察される。
【0222】
冷却ラン(C)は通常、加熱ラン(H)の後に測定する。これは、試料及び標準を直線的に冷却する、すなわち、熱が試料及び基準から除去されることを伴う。結晶化/凝固の過程で熱が放出されるので、試料の結晶化/凝固(液体/固相変化)の間に、より大きい熱量Qを除去して試料を標準と同じ温度に保たなければならない。そして冷却ラン(C)のDSC図では、結晶化ピークとして知られるピークが融解ピークの反対の方向に観察される。
【0223】
本発明において、加熱ラン(H)の間の加熱は通常、20K/分の加熱速度で行われる。本発明において、冷却ラン(C)の間の冷却は通常、20K/分の冷却速度で行われる。
【0224】
加熱ラン(H)及び冷却ラン(C)を含むDSC図を、
図1に例として示す。DSC図は、融解の開始温度(T
M
開始)及び結晶化の開始温度(T
C
開始)を決定するために使用され得る。
【0225】
融解の開始温度(TM
開始)を決定するために、加熱ラン(H)のベースラインに対して、融解ピーク未満の温度で接線を引く。第二の接線を、融解ピークの第一の湾曲に対して、融解ピークの最大点での温度未満の温度で引く。2つの接線を、それらが交差するまで外挿する。温度軸の交点に対する垂直外挿は、融解の開始温度(TC
開始)を示す。
【0226】
結晶化の開始温度(TC
開始)を決定するために、冷却ラン(C)のベースラインに対して、結晶化ピークを超える温度で接線を引く。第二の接線を、結晶化ピークの湾曲に対して、結晶化ピークの最小点での温度より高い温度で引く。2つの接線を、それらが交差するまで外挿する。温度軸の交点に対する垂直外挿は、結晶化の開始温度(TC
開始)を示す。
【0227】
焼結窓(W)は、融解の開始温度(TM
開始)と結晶化の開始温度(TC
開始)との間の差から得られる。よって:
W= TM
開始 - TC
開始
本発明において、「焼結窓(W)」「焼結窓の寸法(W)」及び「融解の開始温度(TM
開始)と結晶化の開始温度(TC
開始)との間の差」という用語は、同じ意味を有し、同義語として使用する。
【0228】
本発明を実施例によってより詳細に説明するが、当該発明を制限するものではない。
【実施例】
【0229】
押出混合物(eM)の製造
押出機中で、ポリアミド6及びIrganox1098(N,N’-1,6-ヘキサンジイルビス[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ)を配合し、押出混合物(eM1)の総質量に対して0.4質量%のIrganox1098含有量を有するポリアミド6を含む押出混合物(eM1)を得た。
【0230】
また、第二の押出混合物(eM2)の総質量に対して0.3質量%のSpezialschwarz(カーボンブラック)含有量を有するポリアミド6を含む第二の押出混合物(eM2)を製造した。
【0231】
ポリアミド粉末(PP)の製造
押出混合物(eM1)及び(eM2)を、その後続いて溶媒(SV)中に溶解し、次いでそこから沈殿させて、ポリアミド粉末(PP)を得た。本発明の実施例E1及びE2において、第一の押出混合物(eM1)及び第二の押出混合物(eM2)を、それぞれ水中のカプロラクタムの混合物(カプロラクタム含有量42質量%)に溶解し、その後続いてそこから沈殿させた。比較例V1及びV2において、押出混合物(eM1)及び(eM2)をそれぞれエタノールに溶解した後、その後続いてそこから沈殿させた。結果を次の表1に示す。
【0232】
【0233】
本発明の実施例E1及びE2は、本発明の方法によって著しくかさ密度の高いポリアミド粒子(PP)がもたらされることを示す。さらに、ポリアミド粉末(PP)を製造するための本発明による方法は、微粉画分の含有量を著しく減少させる。さらに、本発明により製造されるポリアミド粒子は、より均一な粒子形状を有する。