(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-04
(45)【発行日】2022-08-15
(54)【発明の名称】インク組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/36 20140101AFI20220805BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220805BHJP
H05B 33/04 20060101ALI20220805BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20220805BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20220805BHJP
【FI】
C09D11/36
H05B33/14 A
H05B33/04
H05B33/10
C09D163/00
(21)【出願番号】P 2020522027
(86)(22)【出願日】2018-10-19
(86)【国際出願番号】 KR2018012395
(87)【国際公開番号】W WO2019078666
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-04-17
(31)【優先権主張番号】10-2017-0136447
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】クク・ヒョン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ヒョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ジン・ウ
(72)【発明者】
【氏名】ミ・リム・ユ
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-298956(JP,A)
【文献】特開2010-111713(JP,A)
【文献】特開2011-006660(JP,A)
【文献】国際公開第2008/053985(WO,A1)
【文献】特開2005-120141(JP,A)
【文献】特開2006-282875(JP,A)
【文献】特開昭64-054442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-13/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体組成物内で7~38wt%の範囲内
のグリシジルエーテル化合物と、
2官能以上の
脂環式エポキシ化合物と、
オキセタン基を有する化合物と、を含み、
前記グリシジルエーテル化合物は、アリファティックグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、n-ブチルグリシジルエーテル、または2-エチルヘキシルグリシジルエーテルを含み、
UV照射でヘイズが調節され
、
有機電子素子の封止層または有機電子素子の光抽出層に適用される、インク組成物。
【請求項2】
任意のi時点での前記インク組成物に対するヘイズ値より、前記i時点から7600mJ/cm
2以上のUV光量でUVを照射した後であるf時点での前記インク組成物に対するヘイズ値が、より大きい、請求項1に記載のインク組成物。
【請求項3】
300mJ/cm
2の光量で照射時のヘイズ値H
300が8000mJ/cm
2の光量で照射時のヘイズ値H
8000より小さい、請求項1または2に記載のインク組成物。
【請求項4】
前記エポキシ化合物は、分子構造内の環構成原子数が3~10の範囲内である、請求項1から3のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項5】
前記エポキシ化合物は、前記グリシジルエーテル化合物100重量部に対して40~150重量部で含まれる、請求項1から4のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項6】
オキセタン基を有する前記化合物は、重量平均分子量が150~1,000g/molの範囲内にある、請求項1から5のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項7】
オキセタン基を有する前記化合物は、前記グリシジルエーテル化合物100重量部に対して150~300重量部で含まれる、請求項1から6のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項8】
光開始剤をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項9】
無溶剤形態である、請求項1から8のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項10】
硬化した状態で、JIS K7105の規格に沿って測定されたヘイズ値が0.1~50%の範囲内である、請求項1から9のいずれか一項に記載のインク組成物。
【請求項11】
H
300ヘイズ値に対するH
8000ヘイズ値の比率(H
8000/H
300)が15~100の範囲内にある、請求項3に記載のインク組成物。
【請求項12】
請求項1から1
1のいずれか一項に記載されたインク組成物にUVを照射することを含む、有機層の形成方法。
【請求項13】
UVを照射してヘイズが調節される、請求項1
2に記載の有機層の形成方法。
【請求項14】
UV光量によりヘイズが調節される、請求項1
2または1
3に記載の有機層の形成方法。
【請求項15】
UVは20mJ/cm
2~15,000mJ/cm
2の範囲内の光量を有する、請求項1
2から1
4のいずれか一項に記載の有機層の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2017年10月20日付韓国特許出願第10-2017-0136447号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
技術分野
本発明はインク組成物およびこれを利用した有機層の形成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
最近著しい成長を見せているインクジェット印刷関連業界では、インクジェットプリンタの高性能化やインクの改良等が飛躍的に進行されている。
【0004】
前記改良されたインク組成物は多様な技術分野に適用され得る。例えば、前記インク組成物で印刷された有機層を通じて有機電子装置の封止に適用したり、有機電子装置に適用される光抽出層にすべて適用可能である。
【0005】
ただし、各用途ごとに互いに異なる組成物を製造するにおいて、工程上の効率性が低下する問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はインク組成物に関し、目的とする用途に応じて硬化過程でヘイズを調節して有機層を形成できる、インク組成物およびこれを利用した有機層の形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はインク組成物に関する。前記インク組成物は例えば、OLEDなどの有機電子装置を封止またはカプセル化することに適用される封止材であり得る。一つの例示において、本発明のインク組成物は有機電子素子の前面を封止またはカプセル化することに適用され得る。したがって、前記インク組成物がカプセル化に適用された後には、有機電子装置の前面を密封する有機層の形態で存在することができる。
【0008】
本発明のインク組成物は前記用途に限定されず、有機電子装置に適用される光抽出層の形成に適用され得る。有機電子素子は素子の屈折率の差によって基板の界面の間で光損失が発生し、特定の角度領域の光のみ外部に放出され得る。外部に放出される量は20%程度であって、光抽出効率が極めて制限的である。光抽出効率の向上がないと、有機電子素子の効率および活用度は低下する可能性がある。したがって、光抽出効率を向上させるための光抽出層が要求されるが、前記光抽出層として前記インク組成物が適用され得る。
【0009】
本明細書で、用語「有機電子装置」は、互いに対向する一対の電極の間に正孔および電子を利用して電荷の交流を発生させる有機材料層を含む構造を有する物品または装置を意味し、その例としては、光電池装置、整流器、トランスミッターおよび有機発光ダイオード(OLED)等が挙げられるが、これらに制限されるものではない。本発明の一つの例示において前記有機電子装置はOLEDであり得る。
【0010】
しかし、本発明は前記用途に制限されず、ディスプレイ装置の光抽出層またはシーリング材として広範囲に適用され得る。
【0011】
本発明の具体例で、例示的なインク組成物はグリシジルエーテル化合物を全体組成物内で7~38wt%の範囲内で含むことができる。前記グリシジルエーテルは例えば、全体組成物内で10~35wt%、13~33wt%、18~28wt%または19~26wt%範囲内で含まれ得る。前記インク組成物はUV照射でヘイズが調節される組成物であり得る。前記ヘイズの調節は前記組成物にUVを照射することによって前記組成物のヘイズが変わることを意味し得、例えば、使用者が目的とするヘイズ範囲に調節できることを意味し得る。一例示において、前記ヘイズは任意のi時点での前記インク組成物に対するヘイズ値(前記組成物に対してUVを照射しなかったか一部照射した状態)より、前記i時点から7600mJ/cm2以上または7700mJ/cm2以上のUV光量でUVを照射した後であるf時点での前記インク組成物に対するヘイズ値がより大きくてもよい。前記UV光量の上限は特に限定されないが、15,000mJ/cm2であり得、したがって、前記i時点から7600~15,000mJ/cm2のうちいずれか一つのUV光量でUVを照射した後であるf時点での前記インク組成物に対するヘイズ値の差だけヘイズが増加し得る。本発明の他の具体例で、前記インク組成物は300mJ/cm2の光量で照射時のヘイズ値H300が8000mJ/cm2の光量で照射時のヘイズ値H8000より小さくてもよい。すなわち、本発明は前記インク組成物にUVを照射する場合、UVの光量によりインク組成物の硬化物のヘイズ値が変わり得、前記ヘイズ値は光量が低い時よりも高い時にさらに高い値を有し得る。本明細書で前記のような二つのヘイズ値の比較は同じ条件で測定したものであり得る。従来は前記ヘイズの調節のために無機フィラーのような無機物を添加していたが、この場合、粘度が不要に上昇してインクジェット特性が低下し、分散性が低下し、分散のための添加剤を添加する場合、不純物による素子の損傷の問題が発生していた。しかし、本発明は前記のようにUV光量によるヘイズ値を調節することによって、目的とする用途および適用位置に応じて、インク組成物の硬化物のヘイズ値を目的とする水準に変更することができる。これに伴い、目的とする用途ごとに別途のインク組成物を製造するのではなく、同じ組成物に対して硬化過程のみを変更して多様な分野に前記組成物を適用することができるため、工程の効率性を図ることができる。また、本発明は前記無機物または無機フィラーを含まないことによって、インクジェッティング特性および分散性が優秀なインク組成物を提供することができる。
【0012】
本明細書でヘイズは硬化したインク組成物に対してJIS K7105の規格に沿って測定したものであり得る。
【0013】
一つの例示において、硬化した前記インク組成物は、ヘイズ値が0.1~50%または0.1~30%の範囲内であり得る。本発明の具体例で、前記H300ヘイズ値に対するH8000ヘイズ値の比率(H8000/H300)は15~100、16~95、17~93、18~88、19~83または20~79の範囲内にあり得る。また、前述したi時点でのヘイズ値(Hi)に対するf時点でのヘイズ値(Hf)に対する比率(Hf/Hi)は前述した範囲であり得る。本出願はUV光量によるヘイズ値を前記範囲に調節することによって、ヘイズの調節で多様な分野に前記インク組成物を適用可能にすることができる。
【0014】
本発明の具体例で、インク組成物は、前述した通り、グリシジルエーテル化合物を含むことができる。本発明は前記化合物を含むことによって、インク組成物がUVの光量に応じてそのヘイズ値が目的とする範囲に調節され得るようにする。また、前記インク組成物は分子構造内に環状構造を有するエポキシ化合物をさらに含むことができる。前記エポキシ化合物は少なくとも2官能以上であり得る。すなわち、エポキシ官能基が前記化合物に2以上存在し得る。前記エポキシ化合物は、インク組成物のヘイズを調節可能にしながらも、同時にインク組成物に適切な架橋度を具現して高温高湿での優秀な耐熱耐久性を具現する。
【0015】
本発明の具体例で、前記分子構造内に環状構造を有するエポキシ化合物は、分子構造内の環構成原子数が3~10、4~8または5~7の範囲内であり得、前記化合物内に環状構造が2以上、10以下に存在し得る。前記分子構造内に環状構造を有するエポキシ化合物は、グリシジルエーテル化合物100重量部に対して40~150重量部、45~140重量部、48~138重量部、52~133重量部、55~128重量部または57~115重量部で含まれ得る。本発明は前記各化合物間の含量比率を調節することによって、光量によるヘイズの調節と共に硬化物の優秀な接着強度および硬化感度を具現することができる。
【0016】
本発明の具体例で、前記インク組成物はオキセタン基を有する化合物をさらに含むことができる。前記オキセタン基を有する化合物は、前述したグリシジルエーテル化合物100重量部に対して150~300重量部、160~290重量部、168~288重量部、172~283重量部または180~280重量部で前記組成物内に含まれ得る。また、本発明の具体例で、前記組成物が前述したオキセタン基を有する化合物および環状構造を有するエポキシ化合物を同時に含む場合、前記環状構造を有するエポキシ化合物は、前記オキセタン基を有する化合物100重量部に対して15~50重量部、17~48重量部、22~43重量部、24~39重量部または25~38重量部で含まれ得る。本発明は前記の特定の組成およびその含量範囲を制御することによって、光量によるヘイズの調節と共に有機電子素子にインクジェット方式で有機層を形成することができ、塗布されたインク組成物は短い時間内に優秀な拡がり性を有し、硬化後に優秀な硬化感度を有する有機層を提供することができる。
【0017】
一つの例示において、前述した分子構造内に環状構造を有するエポキシ化合物は50~350g/eq、73~332g/eq、94~318g/eqまたは123~298g/eqの範囲のエポキシ当量を有することができる。また、一例示において、オキセタン基を有する化合物、環状構造を有するエポキシ化合物またはグリシジルエーテル化合物は、重量平均分子量が150~1,000g/mol、173~980g/mol、188~860g/mol、210~823g/molまたは330~780g/molの範囲内にあり得る。本発明は前記エポキシ化合物のエポキシ当量を低く制御したり、前記各化合物の重量平均分子量を低く調節することによって、インクジェット印刷に適用時に優秀な印刷性を具現するとともに、水分遮断性および優秀な硬化感度を提供することができる。本明細書で重量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定した標準ポリスチレンに対する換算数値を意味し得る。また、本明細書でエポキシ当量は1グラム当量のエポキシ基を含有する樹脂のグラム数(g/eq)であり、JIS K 7236に規定された方法に沿って測定され得る。
【0018】
また、オキセタン基を有する化合物は沸点が90~300℃、98~270℃、110~258℃または138~237℃の範囲内にあり得る。本発明は前記化合物の沸点を前記範囲に制御することによって、インクジェット工程において高温でも優秀な印刷性を具現しつつ、外部からの水分遮断性が優秀であり、アウトガスが抑制されて素子に加えられる損傷を防止できる密封材の提供が可能である。本明細書で沸点は特に別途に規定しない限り、1気圧で測定したものであり得る。
【0019】
一つの例示において、分子構造内に環状構造を有するエポキシ化合物は脂環族エポキシ化合物が例示され得る。例えば、前記化合物は、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(EEC)およびその誘導体、ジシクロペンタジエンジオキシドおよびその誘導体、ビニルシクロヘキセンジオキシドおよびその誘導体、1,4-シクロヘキサンジメタノールビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)およびその誘導体を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
一つの例示において、前記オキセタン基を含む化合物は前記オキセタン官能基を有する限りその構造は制限されず、例えば、TOAGOSEI社のOXT-221、CHOX、OX-SC、OXT101、OXT121、OXT221またはOXT212、またはETERNACOLL社のEHO、OXBP、OXTPまたはOXMAが例示され得る。
【0021】
また、グリシジルエーテル化合物は、アリファティックグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、n-ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテルまたはネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルを含むことができるが、これに制限されない。
【0022】
本発明の具体例で、インク組成物は光開始剤をさらに含むことができる。前記光開始剤は陽イオン光重合開始剤であり得る。また、前記光開始剤は200nm~400nm範囲の波長を吸収する化合物であり得る。
【0023】
陽イオン光重合開始剤の場合、当業界の公知の素材を使うことができ、例えば、芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウムまたは芳香族アンモニウムを含む陽イオン部とAsF6
-、SbF6
-、PF6
-、またはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを含む陰イオン部を有する化合物を含むことができる。また、陽イオン光重合開始剤としては、オニウム塩(onium salt)または有機金属塩(organometallic salt)系列のイオン化陽イオン開始剤または有機シランまたは潜在性硫酸(latent sulfonic acid)系列や非イオン化陽イオン光重合開始剤を使うことができる。オニウム塩系列の開始剤としては、ジアリールヨードニウム塩(diaryliodonium salt)、トリアリールスルホニウム塩(triarylsulfonium salt)またはアリールジアゾニウム塩(aryldiazonium salt)等が例示され得、有機金属塩系列の開始剤としては、鉄アレーン(iron arene)等が例示され得、有機シラン系列の開始剤としては、o-ニトリルベンジルトリアリールシリルエーテル(o-nitrobenzyl triaryl silyl ether)、トリアリールシリルペルオキシド(triaryl silyl peroxide)またはアシルシラン(acyl silane)等が例示され得、潜在性硫酸系列の開始剤としてはα-スルホニルオキシケトンまたはα-ヒドロキシメチルベンゾインスルホネートなどが例示され得るが、これらに制限されるものではない。
【0024】
一つの例示において、本発明のインク組成物は、インクジェット方式で有機電子素子を密封する用途に適合するように、前述した特定の組成に光開始剤としてヨードニウム塩またはスルホニウム塩を含む光開始剤を含むことができる。前記組成に係るインク組成物は有機電子素子上に直接密封されるにもかかわらず、アウトガスの発生量が少ないため、素子に化学的損傷が加えられることを防止することができる。また、前記光開始剤は溶解度も優秀であるため、インクジェット工程に適合に適用され得る。
【0025】
本発明の具体例で、前記光開始剤は組成物内の硬化性化合物100重量部に対して1~15重量部、2~13重量部、または3~11重量部で含まれ得る。前記硬化性化合物は、組成物内に含まれる前述したグリシジルエーテル化合物、分子構造内に環状構造を有するエポキシ化合物および/またはオキセタン基を有する化合物を意味し得る。
【0026】
本発明の具体例で、前記インク組成物は界面活性剤をさらに含むことができる。前記インク組成物は界面活性剤を含むことによって、拡がり性が向上した液状のインクとして提供され得る。一つの例示において、前記界面活性剤は極性作用基を含むことができる。前記極性作用基は例えば、カルボキシ基、ヒドロキシ基、リン酸塩、アンモニウム塩、カルボキシレート基、硫酸塩またはスルホン酸塩を含むことができる。また、本発明の具体例で、前記界面活性剤は非シリコーン系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤であり得る。前記非シリコーン系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤は、前述したエポキシ化合物およびオキセタン基を有する化合物と共に適用され、有機電子素子上に優秀なコーティング性を提供する。一方、極性反応基を含む界面活性剤の場合、インク組成物の他の成分との親和性が高いため、硬化反応に参与することが可能であり、これに伴い、付着力の側面で優秀な効果を具現することができる。本出願の具体例で、基材に対するコーティング性を向上させるために、親水性(hydrophilic)フッ素系界面活性剤または非シリコーン系界面活性剤を使うことができる。
【0027】
具体的には、前記界面活性剤は高分子型またはオリゴマー型フッ素系界面活性剤であり得る。前記界面活性剤は市販品を使うことができ、例えばTEGO社のGlide 100、Glide110、Glide 130、Glide 460、Glide 440、Glide450またはRAD2500、DIC(DaiNippon Ink & Chemicals)社のMegaface F-251、F-281、F-552、F554、F-560、F-561、F-562、F-563、F-565、F-568、F-570およびF-571または旭硝子社のSurflon S-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141およびS-145または住友スリーエム社のFluorad FC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430およびFC-4430またはデュポン社のZonyl FS-300、FSN、FSN-100およびFSOおよびBYK社のBYK-350、BYK-354、BYK-355、BYK-356、BYK-358N、BYK-359、BYK-361N、BYK-381、BYK-388、BYK-392、BYK-394、BYK-399、BYK-3440、BYK-3441、BYKETOL-AQ、BYK-DYNWET 800などからなる群から選択されるものを使うことができる。
【0028】
前記界面活性剤は、組成物内に硬化性化合物100重量部に対して0.1重量部~10重量部、0.05重量部~10重量部、0.1重量部~10重量部、0.5重量部~8重量部または1重量部~4重量部で含まれ得る。前記含量範囲内で、本発明はインク組成物がインクジェット方式に適用されて薄膜の有機層を形成できるようにする。
【0029】
本発明の具体例で、前記インク組成物は300nm以上の長波長活性エネルギー線での硬化性を補完するために、光増感剤をさらに含むことができる。前記光増感剤は200nm~400nm範囲の波長を吸収する化合物であり得る。
【0030】
前記光増感剤は、アントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセンなどのアントラセン系化合物;ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルアミノベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、3,3,4,4-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;アセトフェノン;ジメトキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、プロパノンなどのケトン系化合物;ペリレン;9-フルオレノン、2-クロロ-9-フルオレノン、2-メチル-9-フルオレノンなどのフルオレノン系化合物;チオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロピルオキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン(ITX)、ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン系化合物;キサントン、2-メチルキサントンなどのキサントン系化合物;アントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、t-ブチルアントラキノン、2,6-ジクロロ-9,10-アントラキノンなどのアントラキノン系化合物;9-フェニルアクリジン、1,7-ビス(9-アクリジニル)ヘプタン、1,5-ビス(9-アクリジニルペンタン)、1,3-ビス(9-アクリジニル)プロパンなどのアクリジン系化合物;ベンジル、1,7,7-トリメチル-ビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2,3-ジオン、9,10-フェナントレンキノンなどのジカルボニル化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドなどのホスフィンオキシド系化合物;メチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、エチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-n-ブトキシエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエートなどのベンゾエート系化合物;2,5-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)シクロヘキサノン、2,6-ビス(4-ジエチルアミノベンザル)-4-メチル-シクロペンタノンなどのアミノシナジスト;3,3-カルボニルビニル-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-(2-ベンゾチアゾリール)-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-ベンゾイル-7-(ジエチルアミノ)クマリン、3-ベンゾイル-7-メトキシ-クマリン、10,10-カルボニルビス[1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H,11H-C1]-ベンゾピラノ[6,7,8-ij]-キノリジン-11-オンなどのクマリン系化合物;4-ジエチルアミノカルコン、4-アジドベンザルアセトフェノンなどのカルコン化合物;2-ベンゾイルメチレン;および3-メチル-b-ナフトチアゾリンからなる群から選択される1種以上であり得る。
【0031】
前記光増感剤は光開始剤100重量部に対して、28重量部~40重量部、31重量部~38重量部または32重量部~36重量部の範囲内で含まれ得る。本発明は前記光増感剤の含量を調節することによって、望む波長での硬化感度の上昇作用を具現しつつも、光増感剤が溶解できないため付着力を低下させることを防止することができる。
【0032】
本発明のインク組成物はカップリング剤をさらに含むことができる。本発明はインク組成物の硬化物の被着体との密着性や硬化物の耐透湿性を向上させることができる。前記カップリング剤は、例えば、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、シランカップリング剤を含むことができる。
【0033】
本発明の具体例で、前記シランカップリング剤としては、具体的には,3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシランおよび2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランおよび11-メルカプトウンデシルトリメトキシシランなどのメルカプト系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランおよびN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシメチルシランなどのアミノ系シランカップリング剤;3-ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのウレイド系シランカップリング剤、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランおよびビニルメチルジエトキシシランなどのビニル系シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシランなどのスチリル系シランカップリング剤;3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよび3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリレート系シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート系シランカップリング剤、ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのスルフィド系シランカップリング剤;フェニルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシランなどが挙げられる。
【0034】
本発明で、カップリング剤は組成物内に硬化性化合物100重量部に対し、0.1重量部~10重量部または0.5重量部~5重量部で含まれ得る。本発明は前記範囲内で、カップリング剤の添加による密着性の改善効果を具現することができる。
【0035】
本発明のインク組成物は必要に応じて、水分吸着剤を含むことができる。用語「水分吸着剤」は、物理的または化学的反応等を通して、外部から流入する水分または湿気を吸着または除去できる成分を総称する意味で使われ得る。すなわち、水分反応性吸着剤または物理的吸着剤を意味し、その混合物も使用可能である。
【0036】
本発明で使用できる水分吸着剤の具体的な種類は特に制限されず、例えば、水分反応性吸着剤の場合、金属酸化物、金属塩または五酸化リン(P2O5)等の一種または二種以上の混合物が挙げられ、物理的吸着剤の場合、ゼオライト、ジルコニアまたはモンモリロナイトなどが挙げられる。
【0037】
本発明のインク組成物は水分吸着剤を、組成物内に硬化性化合物100重量部に対し、5重量部~100重量部、5~80重量部、5重量部~70重量部または10~30重量部の量で含むことができる。本発明のインク組成物は、好ましくは、水分吸着剤の含量を5重量部以上に制御することによって、インク組成物またはその硬化物が優秀な水分および湿気遮断性を示すようにすることができる。また、本発明は水分吸着剤の含量を100重量部以下に制御して、薄膜の封止構造を提供することができる。
【0038】
ただし、前記に制限されず、前述した通り、前記水分吸着剤または無機フィラーのような粒子は固まりが発生するなどの分散性の問題および粘度上昇の要因となるため、前記組成物内に含まれなくてもよい。
【0039】
本発明のインク組成物は熱安定剤をさらに含むことができる。熱安定剤はクレゾール化合物が例示され得、具体的には、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(2,6-di-tert-Butyl-p-cresol)などが例示され、さらに他の例示として、フェノチアジン(Phenothiazine、PTZ)、メチレンキノン(Methylenequinones)、2-ジメチルアミノメタノール(2-dimethyl amino methanol)またはモノメチルエーテルヒドロキノン(Mono methyl ether hydroquinone)を含むことができる。本発明は熱安定剤を含むことによって、前述した組成で不要な熱エネルギーによる粘度の上昇、ゲル化または硬化反応を防止しつつ、長期間の流通または保管にも高い保存安定性を具現する。前記熱安定剤は光開始剤100重量部に対し、0.1重量部~300重量部、1重量部~120重量部または1.5重量部~53重量部の範囲内で含まれ得る。
【0040】
本発明に係るインク組成物には、前述した構成の他にも前述した発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、多様な添加剤が含まれ得る。例えば、インク組成物は消泡剤、粘着付与剤、紫外線安定剤または酸化防止剤などを、目的とする物性に応じて適正範囲の含量で含むことができる。
【0041】
一つの例示において、前記インク組成物は常温、例えば、15℃~35℃または約25℃で液状であり得る。本発明の具体例で、インク組成物は無溶剤形態の液状であり得る。
【0042】
前記インク組成物は有機電子素子の封止層または有機電子素子の光抽出層に適用され得る。本発明はインク組成物が常温で液状の形態を有することによって、インクジェット方式で前記用途に適用され得る。
【0043】
また、本発明の具体例で、インク組成物は25℃の温度、90%のトルクおよび100rpmのせん断速度で、ブルックフィールド社のDV-3で測定した粘度が50cPs以下、1~46cPs、3~44cPs、4~38cPs、5~33cPsまたは14~24cPsの範囲内であり得る。本発明は組成物の粘度を前記範囲に制御することによって、有機電子素子に適用される時点でのコーティング性を優秀にして薄膜の封止材を提供することができる。
【0044】
また、本発明の具体例で、前記インク組成物は硬化後可視光線領域での光透過度が90%以上、92%以上または95%以上であり得る。前記範囲内で本発明はインク組成物を前面発光型有機電子装置に適用して、高解像度、低消費電力および長寿命の有機電子装置を提供する。
【0045】
一つの例示において、本発明のインク組成物はガラスに対する接触角が30°以下、25°以下、20°以下または12°以下であり得る。下限は特に制限されないが、1°または3°以上であり得る。本発明は前記接触角を30°以下に調節することによって、インクジェットコーティングでの短い時間内に拡がり性を確保することができ、これに伴い薄い膜の有機層を形成することができる。本発明で前記接触角はSessile Drop測定方法を使って、ガラス上に前記インク組成物を一滴塗布して測定したものであり得、5回塗布後の平均値を測定したものであり得る。
【0046】
本発明はまた、有機層の形成方法に関する。前記有機層の形成方法は、前述したインク組成物にUVを照射することを含むことができる。本発明は前記UV照射段階を通じて前記インク組成物を硬化させることができる。また、本発明は前記UVを照射することによって、前記インク組成物のヘイズを調節することができる。すなわち、前記インク組成物の硬化過程でUVを照射することができ、UVの光量によりヘイズが調節され得る。一つの例示において、本発明の有機層形成方法は、前記UVの光量によりヘイズが調節されることを含むことができる。一例示において、前記UV光量が増加するにつれて、ヘイズは増加し得る。
【0047】
前記有機層の形成方法は、前述したインク組成物を目的とする用途に応じて塗布することを含むことができる。例えば、本発明は有機電子素子が形成された基板上に前記組成物を塗布することができる。前記塗布はインクジェッティング、グラビアコーティング、スピンコーティング、スクリーンプリンティングまたはリバースオフセットコーティングを利用することができる。また、前述したUV照射段階前に前記塗布が進行され得る。
【0048】
一つの例示において、前記有機層の厚さは2μm~20μm、2.5μm~15μm、2.8μm~9μmの範囲内であり得る。本発明は有機層の厚さを薄く提供して薄膜の電子装置を提供することができ、目的とする光学物性を具現することができる。
【0049】
一つの例示において、本発明の有機層形成方法は、20mJ/cm2~15,000mJ/cm2、150mJ/cm2~10,000mJ/cm2、または300mJ/cm2~8000mJ/cm2の範囲内の光量を有するUVを照射することを含むことができる。本発明は前記範囲で光量を調節することによって、硬化を十分に進行しつつも、目的とする水準にヘイズを調節することができる。
【0050】
また、一つの例示において、前記有機層形成方法は不活性気体の雰囲気下で進行され得る。例えば、前記有機層は前述したインク組成物をN2雰囲気下で塗布することによって形成することができる。前記不活性気体の雰囲気は組成物の塗布からUVの照射時まで維持され得る。また、前記有機層形成方法は、相対湿度20%以下、15%以下、または10%以下の雰囲気で進行され得る。下限は特に限定されず、0%または3%であり得る。前記相対湿度は組成物の塗布からUVの照射時まで維持され得る。本発明は前記条件を調節することによって、耐久信頼性が高い有機層を形成することができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明はインク組成物に関し、目的とする用途に応じて硬化過程でヘイズを調節して有機層を形成できる、インク組成物およびこれを利用した有機層の形成方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明に従う実施例および本発明に従わない比較例を通じて本発明をより詳細に説明するが、本発明の範囲は下記で提示された実施例によって制限されるものではない。
【0053】
インク組成物の製造
グリシジルエーテル化合物として、ベンジルグリシジルエーテル化合物およびn-ブチルグリシジルエーテル化合物を使ったし、分子構造内に環状構造を有するエポキシ化合物として脂環族エポキシ化合物(Daicel社Celloxide 2021P)を使い、オキセタン基含有化合物としてTOAGOSEI社のOXT-221を使った。光開始剤としてトリフェニルスルホニウム塩を有する光開始剤(TETRA CHEM社のUV693)を使い、光増感剤は9,10-ジブトキシアントラセン(9,10-Dibutoxyanthracene)を使い、熱安定剤は2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(2,6-di-tert-Butyl-p-cresol)(SIGMA aldrich社のBHT)を使った。
【0054】
実施例1~3および比較例1~4
下記の表1の重量比率で各成分を混合容器に投入し、前記混合容器をPlanetary mixer(クラボウ、KK-250s)を利用して均一なインク組成物を製造した。
【0055】
【0056】
1.ヘイズ測定
前記実施例および比較例で製造されたインク組成物を50mm×50mmのLCDガラスにスピンコーティングして厚さ8μmの有機層を形成した。その後、Pheseon UV 395nm LEDを使って時間により光量を調節した。
【0057】
硬化雰囲気はN2パージされた状態および相対湿度10%に維持した状態でUVを照射した。
【0058】
光量の測定はEIT UV Power PuckIIを使い、1000mW/cm2の光強度(intensity)で固定後照射時間により300から8000mJ/cm2の光量を照射した。
【0059】
前記過程を通じて硬化した有機層に対してHM-150を利用して空気を参照として、JIS K7105の規格に沿ってヘイズを測定して下記の表2に表した。ヘイズの単位は%であり、表2には省略した。
【0060】
【0061】
比較例4の場合、硬化不良のため、ヘイズの測定が不可能であった。