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特許7118374複合負極活物質、それを含む負極及びリチウム二次電池、並びに該複合負極活物質の製造方法
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  • 特許-複合負極活物質、それを含む負極及びリチウム二次電池、並びに該複合負極活物質の製造方法 図1
  • 特許-複合負極活物質、それを含む負極及びリチウム二次電池、並びに該複合負極活物質の製造方法 図2A
  • 特許-複合負極活物質、それを含む負極及びリチウム二次電池、並びに該複合負極活物質の製造方法 図2B
  • 特許-複合負極活物質、それを含む負極及びリチウム二次電池、並びに該複合負極活物質の製造方法 図3
  • 特許-複合負極活物質、それを含む負極及びリチウム二次電池、並びに該複合負極活物質の製造方法 図4A
  • 特許-複合負極活物質、それを含む負極及びリチウム二次電池、並びに該複合負極活物質の製造方法 図4B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】複合負極活物質、それを含む負極及びリチウム二次電池、並びに該複合負極活物質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/38 20060101AFI20220808BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20220808BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20220808BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20220808BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20220808BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20220808BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220808BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/587
H01M4/36 E
H01M4/36 B
H01M4/134
H01M4/133
H01M4/62 Z
H01M10/052
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2016180185
(22)【出願日】2016-09-15
(65)【公開番号】P2017063026
(43)【公開日】2017-03-30
【審査請求日】2019-08-02
(31)【優先権主張番号】10-2015-0135549
(32)【優先日】2015-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100210480
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100210170
【弁理士】
【氏名又は名称】光末 竜太
(72)【発明者】
【氏名】金 圭成
(72)【発明者】
【氏名】文 珍守
(72)【発明者】
【氏名】鄭 熙▲チュル▼
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-121255(JP,A)
【文献】特開2014-103052(JP,A)
【文献】国際公開第2015/017418(WO,A1)
【文献】特表2016-507142(JP,A)
【文献】国際公開第2014/123910(WO,A1)
【文献】特開平05-067465(JP,A)
【文献】特開昭49-004135(JP,A)
【文献】特開平11-126605(JP,A)
【文献】特開2015-018788(JP,A)
【文献】特開2010-073651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン系材料コアと、
前記コア上に配置されたコーティング層と、を含み、
前記コーティング層は、水溶性高分子に、F、PO 3-、PF 、及びBF から選択された1種以上の陰イオン成分が塩の一部として化学結合された非水溶性高分子複合体を含む、リチウム二次電池用の複合負極活物質。
【請求項2】
前記水溶性高分子は、ポリビニルアルコール重合体またはポリビニルアルコール共重合体を含むことを特徴とする請求項1に記載の複合負極活物質。
【請求項3】
前記水溶性高分子は、ポリビニルアルコール共重合体を含み、前記ポリビニルアルコール共重合体は、ポリ(ビニルアルコール-co-エチレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)、ポリ(ビニルアルコール-co-ニトリル)、ポリアクリロニトリルがグラフトされたポリビニルアルコール(PAN-g-PVA)、ポリ(ビニルアルコール-co-メチルメタクリレート)及びポリ(ビニルアルコール-co-アクリル酸)から選択された1種以上を含むことを特徴とする請求項2に記載の複合負極活物質。
【請求項4】
前記塩は、NHF、NHPO、NHPF 、及びNHBFから選択された1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の複合負極活物質。
【請求項5】
前記コーティング層は、非炭化であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の複合負極活物質。
【請求項6】
シリコン系材料コアは、シリコン、シリコンと炭素とのブレンド、シリコンと炭素との複合体、及びシリコン合金から選択された1種以上を含むことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の複合負極活物質。
【請求項7】
前記シリコンと炭素との複合体は、シリコンと炭素ナノチューブとの複合体、またはシリコンと炭素ナノファイバとの複合体を含むことを特徴とする請求項6に記載の複合負極活物質。
【請求項8】
前記コーティング層の含量は、前記複合負極活物質全体100重量部を基準にして、0.01重量部以上5重量部以下であることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の複合負極活物質。
【請求項9】
前記水溶性高分子の含量は、前記複合負極活物質全体100重量部を基準にして、0.01重量部以上5重量部以下であることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の複合負極活物質。
【請求項10】
前記陰イオン成分の含量は、前記複合負極活物質全体100重量部を基準にして、0.01重量部以上5重量部以下であることを特徴とする請求項1から9の何れか1項に記載の複合負極活物質。
【請求項11】
前記水溶性高分子対前記陰イオン成分のモル比は、1:0.2ないし3であることを特徴とする請求項1から10の何れか1項に記載の複合負極活物質。
【請求項12】
前記シリコン系材料コアと反応しない無機物をさらに含むことを特徴とする請求項1から11の何れか1項に記載の複合負極活物質。
【請求項13】
前記無機物は、MgF、Mg(PO、AlF、Al(PO、Al及びMgOから選択された1種以上を含むことを特徴とする請求項12に記載の複合負極活物質。
【請求項14】
前記無機物の含量は、前記複合負極活物質全体100重量部を基準にして、0.01重量部以上5重量部以下であることを特徴とする請求項12または13に記載の複合負極活物質。
【請求項15】
請求項1ないし14のうちいずれか1項に記載の複合負極活物質を含む負極。
【請求項16】
バインダをさらに含むことを特徴とする請求項15に記載の負極。
【請求項17】
請求項15または16に記載の負極を含むリチウム二次電池。
【請求項18】
シリコン系材料コアを水溶性高分子含有溶液に添加して撹拌し、中間生成物を得る段階と、
前記中間生成物に、F、PO 3-、PF 、及びBF から選択された1種以上の陰イオン成分含有溶液を添加した後で乾燥させ、シリコン系材料コア、及び前記コア上に配置されたコーティング層を含み、前記コーティング層は、水溶性高分子に、F、PO 3-、PF 、及びBF から選択された1種以上の陰イオン成分が塩の一部として化学結合された非水溶性高分子複合体を含む複合負極活物質を製造する段階と、を含むリチウム二次電池用の複合負極活物質の製造方法。
【請求項19】
前記シリコン系材料コアは、シリコン、シリコンと炭素とのブレンド、シリコンと炭素との複合体、及びシリコン合金から選択された1種以上を含むことを特徴とする請求項18に記載の複合負極活物質の製造方法。
【請求項20】
前記シリコンと炭素との複合体は、機械的ミリングによって製造された、シリコンと炭素との複合体を含むことを特徴とする請求項19に記載の複合負極活物質の製造方法。
【請求項21】
前記水溶性高分子含有溶液は、ポリビニルアルコール重合体またはポリビニルアルコール共重合体を含むことを特徴とする請求項18から20の何れか1項に記載の複合負極活物質の製造方法。
【請求項22】
前記陰イオン成分含有溶液は、NHF、NHPO、NHPF 、及びNHBFから選択された1種以上を含むことを特徴とする請求項18から21の何れか1項に記載の複合負極活物質の製造方法。
【請求項23】
前記水溶性高分子含有溶液の水溶性高分子固形分対前記陰イオン成分含有溶液の陰イオン成分固形分のモル比は、1:0.2ないし3であることを特徴とする請求項18から22の何れか1項に記載の複合負極活物質の製造方法。
【請求項24】
前記乾燥は、100℃ないし400℃以下の温度で熱処理する工程を含むことを特徴とする請求項18から23の何れか1項に記載の複合負極活物質の製造方法。
【請求項25】
前記複合負極活物質を製造する段階において、前記シリコン系材料コアと反応しない無機物を添加する段階をさらに含むことを特徴とする請求項18から24の何れか1項に記載の複合負極活物質の製造方法。
【請求項26】
前記無機物は、MgF、Mg(PO、AlF、Al(PO及びAlから選択された1種以上を含むことを特徴とする請求項25に記載の複合負極活物質の製造方法。
【請求項27】
前記無機物の含量は、複合負極活物質全体100重量部を基準にして、0.01重量部以上5重量部以下であることを特徴とする請求項25または26に記載の複合負極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合負極活物質、それを含む負極及びリチウム二次電池、並びに前記複合負極活物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン系材料は、高容量(常温で約3,570mAh/g)のリチウム二次電池の負極活物質として脚光を浴びている。しかし、シリコン系材料は、リチウムイオンの吸蔵及び放出の過程時、常温で約300%以上の体積膨脹が起こる。
【0003】
このような体積膨脹は、シリコン系材料の粉砕、及びSEI(solid electrolyte interphase)層制御の困難さなどの原因になる機械的変形(mechanical strain)をもたらす。それにより、シリコン材料を含む負極活物質は、寿命特性が急激に低下するという問題が発生する。
【0004】
充放電時に急激な体積膨脹にも安定しているSEI層形成のために、電解質添加剤が一般的に幅広く研究されてきた。このような電解質添加剤を使用すれば、初期充電時、負極活物質の表面に被膜が形成され、電解質と負極活物質との直接的な接触を防ぎ、電解質の分解が防止される。
【0005】
しかし、電解質添加剤を使用して、初期充電時、負極活物質の表面に被膜を形成する代わりに、シリコン系材料負極活物質自体の構造、または/及び他の素材との複合体を形成し、高容量の特性を維持しながら、寿命特性を改善するための新規負極活物質、それを含む負極及びリチウム二次電池、並びに前記負極活物質の製造方法に対する要求も依然としてある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、寿命特性が改善された複合負極活物質を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとする課題はまた、前記複合負極活物質を含む負極を提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとする課題はまた、前記負極を含むリチウム二次電池を提供することである。
【0009】
本発明が解決しようとする課題はまた、前記複合負極活物質の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一側面によって、シリコン系材料コアと、前記コア上に配置されたコーティング層と、を含み、前記コーティング層は、水溶性高分子に、F、PO 3-、PF 、BO 3-及びBF から選択された1種以上の陰イオン成分が化学結合された非水溶性高分子複合体を含む複合負極活物質が提供される。
【0011】
前記水溶性高分子は、ポリビニルアルコール重合体またはポリビニルアルコール共重合体を含んでよい。
【0012】
前記ポリビニルアルコール共重合体は、ポリ(ビニルアルコール-co-エチレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)、ポリ(ビニルアルコール-co-ニトリル)、ポリアクリロニトリルがグラフトされたポリビニルアルコール(PAN-g-PVA)、ポリ(ビニルアルコール-co-メチルメタクリレート)及びポリ(ビニルアルコール-co-アクリル酸)から選択された1種以上を含んでよい。
【0013】
前記コーティング層は、前記水溶性高分子に、前記陰イオン成分が塩の一部として化学結合された非水溶性高分子複合体を含んでよい。
【0014】
前記塩は、NHF、NHPO、NHPF、(NHBO、NHBF及びHBOから選択された1種以上を含んでよい。
【0015】
前記コーティング層は、非炭化であってよい。
【0016】
シリコン系材料コアは、シリコン、シリコンと炭素とのブレンド、シリコンと炭素との複合体、及びシリコン合金から選択された1種以上を含んでよい。
【0017】
前記シリコンと炭素との複合体は、シリコンと炭素ナノチューブとの複合体、またはシリコンと炭素ナノファイバとの複合体を含んでよい。
【0018】
前記コーティング層の含量は、前記複合負極活物質全体100重量部を基準にして、5重量部以下であってよい。
【0019】
前記水溶性高分子の含量は、前記複合負極活物質全体100重量部を基準にして、5重量部以下であってよい。
【0020】
前記陰イオン成分の含量は、前記複合負極活物質全体100重量部を基準にして、5重量部以下であってよい。
【0021】
前記水溶性高分子対前記陰イオン成分のモル比は、1:0.2ないし3であってよい。
【0022】
前記シリコン系材料コアと反応しない無機物をさらに含んでよい。
【0023】
前記無機物は、MgF、Mg(PO、AlF、Al(PO、Al及びMgOから選択された1種以上を含んでよい。
【0024】
前記無機物の含量は、前記複合負極活物質全体100重量部を基準にして、5重量部以下であってよい。
【0025】
他の側面によって、前述の複合負極活物質を含む負極が提供される。
【0026】
他の側面によって、バインダをさらに含む負極が提供される。
【0027】
さらに他の側面によって、前記負極を含むリチウム二次電池が提供される。
【0028】
さらに他の側面によって、シリコン系材料コアを水溶性高分子含有溶液に添加して撹拌し、中間生成物を得る段階と、前記中間生成物に、F、PO 3-、PF 、BO 3-及びBF から選択された1種以上の陰イオン成分含有溶液を添加した後で乾燥させ、シリコン系材料コア、及び前記コア上に配置されたコーティング層を含み、前記コーティング層は、水溶性高分子に、F、PO -、PF 、BO 3-及びBF から選択された1種以上の陰イオン成分が化学結合された非水溶性高分子複合体を含む複合負極活物質を製造する段階と、を含む複合負極活物質の製造方法が提供される。
【0029】
前記シリコン系材料コアは、シリコン、シリコンと炭素とのブレンド、シリコンと炭素との複合体、及びシリコン合金から選択された1種以上を含んでよい。
【0030】
前記シリコンと炭素との複合体は、機械的ミリングによって製造された、シリコンと炭素との複合体を含んでよい。
【0031】
前記水溶性高分子含有溶液は、ポリビニルアルコール重合体またはポリビニルアルコール共重合体を含んでよい。
【0032】
前記陰イオン成分含有溶液は、NHF、NHPO、NHPF、(NHBO、NHBF及びHBOから選択された1種以上を含んでよい。
【0033】
前記水溶性高分子含有溶液の水溶性高分子固形分対前記陰イオン成分含有溶液の陰イオン成分固形分のモル比は、1:0.2ないし3であってよい。
【0034】
前記乾燥は、400℃以下の温度で熱処理する工程を含んでよい。
【0035】
前記複合負極活物質を製造する段階において、前記シリコン系材料コアと反応しない無機物を添加する段階をさらに含んでよい。
【0036】
前記無機物は、MgF、Mg(PO、AlF、Al(PO及びAlから選択された1種以上を含んでよい。
【0037】
前記無機物の含量は、複合負極活物質全体100重量部を基準にして、5重量部以下であってよい。
【発明の効果】
【0038】
本発明による複合負極活物質は、シリコン材料コア上に配置されたコーティング層を含み、前記コーティング層は、水溶性高分子に、F、PO 3-、PF 、BO 3-及びBF から選択された1種以上の陰イオン成分が化学結合された非水溶性高分子複合体を含み、それを含む負極及びリチウム二次電池は、寿命特性が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】一具現例による複合負極活物質の形態を示した模式図である。
図2A】前記図1のコーティング層に含まれたポリビニルアルコール重合体またはポリビニルアルコール共重合体に化学結合された塩を化学式構造で示した図面である。
図2B】前記図1のコーティング層に含まれたポリビニルアルコール重合体またはポリビニルアルコール共重合体に化学結合された塩の一部としてF成分が含まれている非水溶性高分子複合体を化学式構造で示した図面である。
図3】一具現例によるリチウム二次電池の構造を示した概略図である。
図4A】実施例1及び比較例2によって製造された複合負極活物質に対するH NMR(nuclear magnetic resonance)スペクトルである。
図4B】前記図4Aの実施例1によって製造された複合負極活物質に対するH NMRスペクトルを拡大した図面である。
図4C】前記図4Aの比較例2によって製造された複合負極活物質に対するH NMRスペクトルを拡大した図面である。
図4D】実施例1によって製造された複合負極活物質及びNHFに対する19F NMRスペクトルである。
図5】実施例11~13、及び比較例3,4によって製作されたリチウム二次電池のサイクル回数に容量維持率を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、添付された図面を参照しながら、本発明の一具現例による複合負極活物質、それを含む負極及びリチウム二次電池、並びに前記複合負極活物質の製造方法について詳細に説明する。以下、例示として提示されるものであり、それによって、本発明が制限されるものではなく、本発明は、特許請求の範囲の範疇によってのみ定義されるのである。
【0041】
本明細書において「シリコン系材料」という用語は、少なくとも50%のシリコン(Si)を含むものを示すように使用される。例えば、「シリコン系材料」は、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%のシリコン(Si)を含む。
【0042】
本明細書において「配置された」という用語は、1つの構成要素を他の構成要素(に付着させたり、その上に置いたりするものを含む)の横及び/または隣接して置く任意の方法を示すように使用される。
【0043】
本明細書において「非水溶性」という用語は、難水溶性(poorly water-soluble)または不水溶性(water-insoluble)を含むものを示すように使用される。
【0044】
一般的に、シリコン系材料は、リチウムイオンの吸蔵及び放出の過程において、約300%の体積膨脹が起こる。それにより、シリコン系材料間の結着力が弱くなり、シリコン系材料を含むリチウム二次電池は、寿命特性のような電気化学的特性が低下する。
【0045】
一具現例による複合負極活物質は、シリコン系材料コア、及び前記コア上に配置されたコーティング層を含み、前記コーティング層は、水溶性高分子に、F、PO 3-、PF 、BO 3-及びBF から選択された1種以上の陰イオン成分が化学結合された非水溶性高分子複合体を含む。
【0046】
図1は、一具現例による複合負極活物質の形態を示した模式図である。
【0047】
図1を参照すれば、複合負極活物質は、シリコン系材料コア1上に、非水溶性高分子複合体を含む有機物コーティング層2を含んでいる。
【0048】
このような有機物コーティング層2を含む複合負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵及び放出の過程において、非可逆反応を抑制することができ、複合負極活物質間の結着力が向上するのである。それにより、前記複合負極活物質を含むリチウム二次電池は、寿命特性のような電気化学的特性が向上するのである。
【0049】
水溶性高分子は、ポリビニルアルコール重合体またはポリビニルアルコール共重合体を含んでもよい。
【0050】
ポリビニルアルコール共重合体は、ポリ(ビニルアルコール-co-エチレングリコール)、ポリ(ビニルアルコール-co-エチレン)、ポリ(ビニルアルコール-co-ニトリル)、ポリアクリロニトリルがグラフトされたポリビニルアルコール(PAN-g-PVA)、ポリ(ビニルアルコール-co-メチルメタクリレート)及びポリ(ビニルアルコール-co-アクリル酸)から選択された1種以上を含んでもよい。
【0051】
ポリビニルアルコール重合体は、メタン炭素に結合されているヒドロキシ基を有する炭素主鎖を有する重合体である。ヒドロキシ基は、水素結合の供給源にもなり、水素結合によって、電極活物質表面にコーティング層を形成するのに一助となる。従って、ポリビニルアルコール重合体またはポリビニルアルコール共重合体を含むコーティング層は、高い引張強度及び優秀な耐磨耗性(abrasion resistance)を有することができる。
【0052】
一具現例による複合負極活物質は、ポリビニルアルコール重合体またはポリビニルアルコール共重合体に、F、PO 3-、PF 、BO 3-及びBF から選択された1種以上の陰イオン成分が化学結合された非水溶性高分子複合体をコーティング層として含む。
【0053】
コーティング層は、ポリビニルアルコール重合体またはポリビニルアルコール共重合体を含み、リチウムイオンの吸蔵及び放出の過程において、シリコン系材料コアのはなはだしい体積変化にもかかわらず、高い引張強度及び柔軟性を有し、安定して維持される。
【0054】
また、コーティング層は、ポリビニルアルコール重合体またはポリビニルアルコール共重合体に、陰イオン成分が化学結合されることにより、水溶性高分子から非水溶性高分子複合体に特性が変化する。
【0055】
それにより、コーティング層を含む複合負極活物質と、水系バインダとを混合して負極活物質スラリーを製造し、負極を製作しても負極構造が崩壊されない。従って、複合負極活物質を含むリチウム二次電池は、寿命特性が改善される。
【0056】
ポリビニルアルコール重合体またはポリビニルアルコール共重合体の重量平均分子量は、500ないし5,000,000でもある。例えば、ポリビニルアルコール重合体またはポリビニルアルコール共重合体の重量平均分子量は、500ないし1,000,000でもある。例えば、ポリビニルアルコール重合体またはポリビニルアルコール共重合体の重量平均分子量は、1,000ないし500,000でもある。
【0057】
コーティング層は、水溶性高分子に、陰イオン成分が塩の一部として化学結合された非水溶性高分子複合体を含んでもよい。
【0058】
塩は、NHF、NHPO、NHPF、(NHBO、NHBF及びHBOから選択された1種以上を含んでもよい。例えば、塩は、NHF、NHPO、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0059】
図2A及び図2Bは、図1のコーティング層に含まれたポリビニルアルコール重合体またはポリビニルアルコール共重合体に化学結合された塩、及び塩の一部としてF成分が含まれている非水溶性高分子複合体を化学式構造でそれぞれ示したものである。
【0060】
図2Aを参照すれば、ポリビニルアルコール重合体のヒドロキシ基は、NHF塩の陽イオン(NH )のHと水素結合を形成しており、陽イオン(NH )は、陰イオン(F)成分とイオン結合を形成している。
【0061】
図2Bを参照すれば、ポリビニルアルコール共重合体、すなわち、ポリ(ビニルアルコール-co-メチルメタクリレート)は、その-C=O及びOが、NHF塩の陽イオン(NH )のHと水素結合を形成しており、陽イオン(NH )は、陰イオン(F)成分とイオン結合を形成している。
【0062】
ポリビニルアルコール重合体または/及びポリビニルアルコール共重合体に対して、NHF塩の一部に結合された陰イオン(F)は、ポリビニルアルコール重合体または/及びポリビニルアルコール共重合体と強く結合する水素結合及びイオン結合を形成し、シリコン材料コア上に、高い引張強度及び柔軟な特性を有するコーティング層を形成することができる。
【0063】
コーティング層は、非水溶性高分子複合体以外に、塩に由来した一部のF、PO 3-、PF 、BO 3-及びBF から選択された1種以上の陰イオン成分を単独でさらに含んでもよい。
【0064】
コーティング層は、非炭化された(uncarbonized)ものでもある。非炭化されたコーティング層は、リチウムイオンの吸蔵及び放出の過程において、さらに柔軟な特性を有することができる。
【0065】
シリコン系材料コアは、シリコン、シリコンと炭素とのブレンド、シリコンと炭素との複合体、及びシリコン合金から選択された1種以上を含んでもよい。
【0066】
シリコンは、シリコン粒子、シリコンナノワイヤ、シリコンナノロッド、シリコンナノチューブ、シリコンナノリボン、またはそれらの組み合わせから選択されたものを含んでもよい。
【0067】
シリコン粒子は、例えば、0.1nmないし1μmの平均粒径を有することができる。シリコン粒子は、例えば、0.1nmないし500nmの平均粒径を有することができる。
【0068】
平均粒径は、粒子サイズが最小である粒子から最大である粒子の順序に累積させた分布曲線において、全体粒子個数を100%にしたとき、最小粒子から50%に該当する粒径である「D50」を意味する。D50は、当業者に周知の方法で測定され、例えば、粒度分析機(particle size analyzer)で測定したり、TEM(transmission electron microscope)写真またはSEM(scanning electron microscope)写真から測定することもできる。他の方法の例を挙げれば、動的光散乱法(dynamic light-scattering)を利用した測定装置でもって測定した後、データ分析を実施し、それぞれのサイズ範囲に対して粒子数が計数され、そこから計算を介して平均粒径を容易に得ることができる。
【0069】
シリコンナノワイヤは、例えば、約10nmないし100nmの平均径を有することができ、約10,000:1ないし1:1の縦横比(平均長:平均径)を有することができる。
【0070】
シリコンナノロッドは、シリコンナノワイヤに類似した平均径を有することができるが、シリコンナノワイヤの縦横比より小さい縦横比を有することができる。シリコンナノチューブは、約500nmの平均径を有し、シリコンナノリボンは、約100nmの幅を有することができ、約10以上の縦横比を有することができる。
【0071】
シリコンと炭素とのブレンドにおいて、該炭素は、天然黒鉛、人造黒鉛、またはそれらの混合物から選択されたものを含んでもよい。炭素は、気孔を含んでもよく、含まなくともよい。炭素は、一次粒子、または一次粒子が塊になった二次粒子でもある。
【0072】
シリコンと炭素との複合体は、シリコンと炭素ナノチューブとの複合体、またはシリコンと炭素ナノファイバとの複合体を含んでもよい。シリコンと炭素との複合体は、シリコン表面に、炭素ナノチューブまたは炭素ナノファイバによってコーティングされたコーティング層を含んでもよい。炭素ナノチューブまたは炭素ナノファイバによってコーティングされたコーティング層の厚みは、ナノ厚でもあるが、それに制限されるものではない。
【0073】
シリコンと炭素ナノチューブとの複合体において、炭素ナノチューブは、単一壁、二重壁または多重壁の炭素ナノチューブでもある。炭素ナノチューブの平均径は、約80nm以下、例えば、約60nm以下でもある。炭素ナノチューブの縦横比は、10以上の縦横比を有することができる。
【0074】
シリコンと炭素ナノファイバとの複合体において、炭素ナノファイバは、炭素ナノワイヤのファイバ形態でもある。炭素ナノワイヤの平均径は、約10nmないし約500nmでもあり、例えば、約20nmないし約400nmでもある。炭素ナノワイヤの縦横比(平均長:平均径)は、例えば、最大2,000:1でもあり、例えば、1,000:1である。
【0075】
炭素ナノチューブ及び炭素ナノファイバが、前記範囲内の平均径及び縦横比を有する場合、それを含む複合負極活物質は、優秀な機械的強度を有することができ、電気伝導度が改善される。
【0076】
シリコン合金は、Si-Y’合金でもある。Y’は、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Ga、Sn、In、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0077】
コーティング層の含量は、複合負極活物質全体100重量部を基準にして、5重量部以下でもある。例えば、コーティング層の含量は、複合負極活物質全体100重量部を基準にして、4重量部以下でもあり、例えば、複合負極活物質全体100重量部を基準にして、0.01重量部ないし4重量部でもある。
【0078】
コーティング層は、単層、または2層以上の複数の層でもある。例えば、コーティング層は、単層である。
【0079】
水溶性高分子の含量は、複合負極活物質全体100重量部を基準にして、5重量部以下でもある。例えば、水溶性高分子の含量は、複合負極活物質全体100重量部を基準にして、4重量部以下、例えば、3重量部以下、例えば、0.01重量部ないし2重量部でもある。
【0080】
陰イオン成分の含量は、複合負極活物質全体100重量部を基準にして、5重量部以下でもある。例えば、陰イオン成分の含量は、複合負極活物質全体100重量部を基準にして、4重量部以下、例えば、3重量部以下、例えば、0.01重量部ないし2重量部でもある。
【0081】
水溶性高分子対陰イオン成分のモル比は、1:0.2ないし3でもある。水溶性高分子対陰イオン成分のモル比は、例えば、1:0.5ないし3でもあり、例えば、1:1ないし2でもある。
【0082】
水溶性高分子の含量、陰イオン成分の含量、及び水溶性高分子対陰イオン成分のモル比が、それぞれ前記範囲内である場合、それを含んだコーティング層を含む複合負極活物質は、シリコン系材料コアのはなはだしい体積変化にもかかわらず、高い引っ張り強度及び柔軟性を有し、複合負極活物質の構造を安定して維持することができる。また、リチウムイオンの伝達が容易である。従って、複合負極活物質は、寿命特性のような電気化学的特性が改善される。
【0083】
シリコン系材料コアと反応しない無機物をさらに含んでもよい。
【0084】
無機物の平均粒径は、1μm以上でもある。無機物が1μm未満であるナノサイズの平均粒径を有するならば、シリコン系材料コアと反応し、望ましくない。
【0085】
平均粒径は、前述のように、「D50」を意味し、平均粒径の測定方法は、前述のところと同一であるので、説明を省略する。
【0086】
無機物は、MgF、Mg(PO、AlF、Al(PO、Al及びMgOから選択された1種以上を含んでもよい。例えば、無機物は、AlF、Al(PO、Al、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0087】
無機物は、リチウム二次電池の充放電過程の間、SEI(solid electrolyte interphase)層形成を最小化し、寿命特性のような充放電特性を向上させることができる。
【0088】
無機物の含量は、複合負極活物質全体100重量部を基準にして、5重量部以下でもある。例えば、無機物の含量は、複合負極活物質全体100重量部を基準にして、4重量部以下、例えば、3重量部以下、例えば、0.01重量部ないし2重量部でもある。
【0089】
コーティング層に含まれた無機物の含量が100重量部を基準にして、5重量部を超えれば、コーティング層が抵抗層として作用し、電池性能を低下させてしまう。コーティング層に含まれた無機物の含量が100重量部を基準にして、0.01重量部未満であるならば、コーティング層形成による効果が不十分である。
【0090】
他の側面による負極は、前述の複合負極活物質を含んでもよい。
【0091】
負極は、バインダをさらに含んでもよい。
【0092】
バインダとしては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、前述の高分子の混合物またはスチレンブタジエンゴム系ポリマーなどが使用され、溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトンまたは水などが使用されるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で使用されるものであるならば、いずれも可能である。
【0093】
また該負極は、必要によっては、導電剤をさらに含んでもよい。該導電剤としては、カーボンブラック、黒鉛微粒子、天然黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック;炭素ファイバ;炭素ナノチューブ;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末・金属ファイバ・金属チューブ;ポリフェニレン誘導体のような伝導性高分子などが使用されるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において導電剤として使用されるものであるならば、いずれも使用可能である。
【0094】
さらに他の側面によるリチウム二次電池は、前述の負極を含んでもよい。
【0095】
リチウム二次電池は、前述の複合負極活物質を含む負極と、負極に対向して配置される正極と、負極及び正極の間に配置される電解質と、を含む。
【0096】
該正極は、正極活物質、導電剤、バインダ及び溶媒を混合し、正極スラリー組成物を準備する。正極スラリー組成物を、正極集電体上に直接コーティングして乾燥させ、正極活物質層が形成された正極を製造することができる。代案としては、正極スラリー組成物を、別途の支持体上にキャスティングした後、該支持体から剥離して得たフィルムを正極集電体上にラミネーションし、正極活物質層が形成された正極を製造することができる。
【0097】
該正極活物質の使用可能な材料としては、リチウム含有金属酸化物であって、当業界において一般的に使用されるものであるならば、制限なしにいずれも使用される。該正極活物質の具体的な例としては、Li1-bB’D’(前記化学式で、0.90≦a≦1及び0≦b≦0.5である);Li1-bB’2-cD’(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiE2-bB’4-cD’(前記化学式で、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiNi1-b-cCoB’D’α(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiNi1-b-cCoB’2-αF’α(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1-b-cCoB’2-αF’(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1-b-cMnB’D’α(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiNi1-b-cMnB’2-αF’α(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1-b-cMnB’2-αF’(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である);LiNiCoMn(前記化学式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である);LiNiG(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiCoG(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiMnG(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiMn(前記化学式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiI’O;LiNiVO;Li3-f(PO(0≦f≦2);Li3-fFe(PO(0≦f≦2);またはLiFePOの化学式のうちいずれか一つによって表現される化合物を使用することができる(前記化学式において、Aは、Ni、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、B’は、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素、またはそれらの組み合わせであり、D’は、O、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Eは、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、F’は、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはそれらの組み合わせであり、Qは、Ti、Mo、Mn、またはそれらの組み合わせであり、I’は、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはそれらの組み合わせであり、Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはそれらの組み合わせである)。該正極活物質のとしては、例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、及びそれらの組み合わせから選択される金属と、リチウムとの複合酸化物のうち1種以上のものを使用することができる。
【0098】
また、化合物表面にコーティング層を有するものも使用することができ、または化合物と、コーティング層を有する化合物とを混合して使用することもできるということは言うまでもない。コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zr、またはそれらの混合物を使用することができる。該コーティング層は、コーティング元素のオキシド、コーティング元素のヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシカーボネートの化合物を含んでもよい。これらコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質でもある。該コーティング層の形成工程は、化合物にこのような元素を使用して、正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えば、スプレーコーティング法、浸漬法など)によってコーティングすることができれば、いかなるコーティング方法を使用してもよく、それについては、当該分野の当業者に周知されている内容であるので、詳細な説明は省略する。
【0099】
該導電剤としては、カーボンブラック、黒鉛微粒子、天然黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック;炭素ファイバ;炭素ナノチューブ;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末・金属ファイバ・金属チューブ;ポリフェニレン誘導体のような伝導性高分子などが使用されるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、導電剤として使用されるものであるならば、いずれも可能である。
【0100】
該バインダとしては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、前述の高分子の混合物またはスチレンブタジエンゴム系ポリマーなどが使用され、該溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトンまたは水などが使用されるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で使用されるものであるならば、いずれも可能である。
【0101】
場合によっては、正極スラリー組成物に可塑剤をさらに付加し、正極板内部に気孔を形成することも可能である。
【0102】
正極活物質、導電剤、バインダ及び溶媒の含量は、リチウム二次電池において一般的に使用するレベルである。リチウム二次電池の用途及び構成によって、導電剤、バインダ及び溶媒のうち一つ以上が省略される。
【0103】
該正極集電体は、一般的に、3ないし500μmの厚みに作られる。正極集電体としては、当該電池に化学的変化を誘発せずに、導電性を有するものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン・ニッケル・チタン・銀などで表面処理したもの、またはアルミニウム-カドミウム合金などが使用される。また、表面に微細な凹凸を形成し、正極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体または不織布体など多様な形態で使用される。
【0104】
正極の合剤密度は、少なくとも2.0g/ccでもある。
【0105】
一方、該負極は、次のように製造される。該負極は、正極活物質の代わりに、負極活物質を使用することを除いては、正極と同一方法で製造される。また、負極スラリー組成物として、導電剤、バインダ及び溶媒は、正極の場合に言及されたものと同一のものを使用することができる。
【0106】
例えば、該負極活物質、バインダ及び溶媒、選択的に導電剤を混合し、負極スラリー組成物を製造し、それを負極集電体に直接コーティングして負極を製造することができる。代案として、負極スラリー組成物を、別途の支持体上にキャスティングし、該支持体から剥離させた負極活物質フィルムを、負極集電体にラミネーションして負極を製造することができる。
【0107】
負極活物質としては、前述の複合負極活物質を使用することができる。また、負極活物質は、前述の複合負極活物質以外に、当該技術分野において、リチウム二次電池の負極活物質として使用される全ての負極活物質を含んでもよい。例えば、リチウム金属、リチウムと合金可能な金属、遷移金属酸化物、非遷移金属酸化物及び炭素系材料からなる群から選択された一つ以上を含んでもよい。
【0108】
例えば、リチウムと合金可能な金属は、Sn、Al、Ge、Pb、Bi、Sb、Sn-Y合金(Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素、またはそれらの組み合わせ元素であり、Snではない)などでもある。元素Yとしては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、またはそれらの組み合わせでもある。
【0109】
例えば、遷移金属酸化物は、リチウムチタン酸化物、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などでもある。
【0110】
例えば、非遷移金属酸化物は、SnO、SiO(0<x<2)などでもある。
【0111】
炭素系材料としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはそれらの混合物でもある。結晶質炭素は、無定形、板状、麟片状(flake)、球形、あるいはファイバ型の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛でもあり、非晶質炭素は、ソフトカーボン(低温焼成炭素)、ハードカーボン(hard carbon)、メゾ相ピッチ(mesophase pitch)炭化物、または焼成されたコークスなどでもある。
【0112】
負極活物質、導電剤、バインダ及び溶媒の含量は、リチウム二次電池で一般的に使用するレベルである。
【0113】
該負極集電体は、一般的に、3ないし500μmの厚みに作られる。該負極集電体としては、当該電池に化学的変化を誘発せずに、導電性を有したものであるならば、特別に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン・ニッケル・チタン・銀などで表面処理したもの、またはアルミニウム-カドミウム合金などが使用される。また、表面に微細な凹凸を形成し、負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体または不織布体など多様な形態で使用される。
【0114】
正極と負極は、セパレータによって分離され、セパレータとしては、リチウム二次電池で一般的に使用されるものであるならば、いずれも使用される。特に、電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら、電解液含湿能にすぐれたものが適する。例えば、ガラスファイバ、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、その組み合わせ物のうち選択された材質であり、不織布の形態でも織布の形態でもよい。セパレータは、気孔径が0.01~10μmであり、厚みは、一般的に5~300μmであるものを使用する。
【0115】
リチウム塩含有非水系電解質は、非水電解液とリチウム塩とからなる。非水電解質としては、非水電解液、有機固体電解質または無機固体電解質などが使用される。
【0116】
非水電解液としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ホルム酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチルまたはプロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用される。
【0117】
有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、またはイオン性解離基を含む重合体などが使用される。
【0118】
無機固体電解質としては、例えば、LiN、LiI、LiNI、LiN-LiI-LiOH、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiSiS、LiSiO、LiSiO-LiI-LiOH、LiPO-LiS-SiSのようなLiの窒化物、ハロゲン化物または硫酸塩などが使用される。
【0119】
リチウム塩は、リチウム二次電池で一般的に使用されるものであるならば、全て使用可能であり、非水系電解質に溶解されやすい物質として、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、(CFSONLi、リチウムクロロボレート、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウムまたはイミドなどの物質を1以上使用することができる。
【0120】
リチウム二次電池は、使用するセパレータと電解質との種類によって、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンポリマー二次電池及びリチウムポリマー二次電池に分類され、形態によって、円筒状、角形、コイン型、ポーチ型などに分類され、サイズによって、バルクタイプと薄膜タイプとに分けられる。
【0121】
それら電池の製造方法は、当該分野に周知されているので、詳細な説明は省略する。
【0122】
図3は、一具現例によるリチウム二次電池の構造を示した概略図である。
【0123】
図3から分かるように、リチウム二次電池200は、正極214、セパレータ213及び負極212を含む。前述のリチウム二次電池の正極214、セパレータ213及び負極212が巻き取られるか、あるいは折り畳まれ、電池容器220に収容される。次に、電池容器220に有機電解液が注入され、封入部材240によって密封され、リチウム二次電池200が完成する。電池容器220は、円筒状、角形または薄膜型などでもある。リチウム二次電池は、例えば、リチウムイオン二次電池でもある。リチウム二次電池は、例えば、移動電話、個人携帯用情報端末機(PDA)または携帯型マルチメディアプレーヤ(PMP)などの携帯用ポータブル機器の電源;電動工具、高出力用ハイブリッド車両、または電気車両などのモータ駆動用の電源、電子インク(e-ink)、電子紙(e-paper)、フレキシブル液晶表示素子(LCD)またはフレキシブル有機ダイオード(OLED)などのディスプレイ素子用電源、または印刷回路基板(PCB)上の集積回路素子電源用マイクロバッテリとして応用可能性が高い薄型リチウム二次電池が使用される。
【0124】
一方、正極及び負極の間にセパレータが配置され、電池構造体が形成される。電池構造体がバイセル構造に積層された後、有機電解液に含浸され、得られた結果物がポーチに収容されて密封されれば、リチウムイオンポリマー二次電池が完成する。
【0125】
また、電池構造体は、複数個積層されて電池パックを形成し、このような電池パックが、高容量及び高出力が要求される全ての機器に使用される。
【0126】
他の側面による複合負極活物質の製造方法は、シリコン系材料コアを、水溶性高分子含有溶液に添加して撹拌し、中間生成物を得る段階、及び中間生成物に、F、PO 3-、PF 、BO 3-及びBF から選択された1種以上の陰イオン成分含有溶液を添加した後で乾燥させ、シリコン系材料コア、及びコア上に配置されたコーティング層を含み、コーティング層は、水溶性高分子に、F、PO 3-、PF 、BO 3-及びBF から選択された1種以上の陰イオン成分が化学結合された非水溶性高分子複合体を含む複合負極活物質を製造する段階を含む。
【0127】
まず、シリコン系材料コアを水溶性高分子含有溶液に添加して撹拌し、中間生成物を得る。
【0128】
シリコン系材料コアは、シリコン、シリコンと炭素とのブレンド、シリコンと炭素との複合体、及びシリコン合金から選択された1種以上を含んでもよい。例えば、シリコン系材料コアは、シリコンと炭素との複合体でもある。
【0129】
シリコンと炭素との複合体は、機械的ミリングによって製造された、シリコンと炭素との複合体を含んでもよい。機械的ミリングに使用される機器としては、ボールミル、遊星ボールミル(planetary ball mill)、高エネルギーボールミル、ノビルタまたはメカノフュージョン(Mechano Fusion、Hosokawha/NOB-130、Hosokawha/AMS型)装置などを利用することができるが、それらに制限されるものではなく、当該技術分野で使用することができる全ての機械的ミリングに使用される機器の利用が可能である。シリコンと炭素との複合体は、機械的ミリングに使用される機器の回転数、投入されるシリコンと炭素との含量、及び反応器サイズの因子を適切に調節して製造される。
【0130】
水溶性高分子含有溶液は、ポリビニルアルコール重合体またはポリビニルアルコール共重合体を含んでもよい。例えば、水溶性高分子含有溶液は、ポリビニルアルコール重合体またはポリビニルアルコール共重合体が溶解された水溶液でもある。
【0131】
次に、中間生成物に、F、PO 3-、PF 、BO 3-及びBF から選択された1種以上の陰イオン成分含有溶液を添加した後で乾燥させ、シリコン系材料コア、及びコア上に配置されたコーティング層を含み、コーティング層は、水溶性高分子に、F、PO 3-、PF 、BO 3-及びBF から選択された1種以上の陰イオン成分が化学結合された非水溶性高分子複合体を含む複合負極活物質を製造する。
【0132】
陰イオン成分含有溶液は、NHF、NHPO、NHPF、(NHBO、NHBF及びHBOから選択された1種以上を含んでもよい。例えば、陰イオン成分含有溶液は、NHF、NHPO、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0133】
水溶性高分子含有溶液の水溶性高分子固形分対陰イオン成分含有溶液の陰イオン成分固形分のモル比は、1:0.2ないし3でもある。例えば、水溶性高分子含有溶液の水溶性高分子固形分対陰イオン成分含有溶液の陰イオン成分固形分のモル比は、1:0.5ないし3でもあり、例えば、1:1ないし2でもある。
【0134】
本明細書において使用された「固形分」は、水溶性高分子含有溶液または陰イオン成分含有溶液から溶媒を蒸発させて残る水溶性高分子固形物質または陰イオン成分固形物質をいう。
【0135】
乾燥は、400℃以下の温度で熱処理する工程を含んでもよい。例えば、乾燥は、100℃ないし400℃の温度で熱処理する工程を含んでもよい。約1時間ないし12時間遂行されるが、条件によって、適切に選択される。熱処理は、空気雰囲気下または酸化性雰囲気下で行われる。前述のような熱処理を介して最終的に製造される複合負極活物質に含まれたコーティング層は、非炭化のものでもある。また、コーティング層は、非水溶性でもある。その後、得られた複合負極活物質は、炉(furnace)で乾燥冷却することができる。
【0136】
複合負極活物質を製造する段階において、シリコン系材料コアと反応しない無機物を添加する段階をさらに含んでもよい。
【0137】
無機物は、MgF、Mg(PO、AlF、Al(PO及びAlから選択された1種以上を含んでもよい。例えば、無機物は、AlF、Al(PO、Al、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。
【0138】
無機物は、リチウム二次電池の充放電過程の間、SEI層形成を最小化し、寿命特性のような充放電特性を向上させることができる。
【0139】
無機物の含量は、複合負極活物質全体100重量部を基準にして、5重量部以下でもある。例えば、無機物の含量は、複合負極活物質全体100重量部を基準にして、4重量部以下、例えば、3重量部以下、例えば、0.01重量部ないし2重量部でもある。
【0140】
コーティング層に含まれた無機物の含量が100重量部を基準にして、5重量部を超えれば、コーティング層が抵抗層として作用し、電池性能を低下させてしまう。コーティング層に含まれた無機物の含量が100重量部を基準にして、0.01重量部未満であるならば、コーティング層形成による効果が十分ではない。
【0141】
以下、本発明の実施例及び比較例を記載する。しかし、下記実施例は、本発明の一実施例であるに過ぎず、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0142】
実施例1:複合負極活物質の製造
シリコン粉末(平均粒径:0.5μm)及び炭素ナノチューブ(CNT Co.Ltd製、平均径:30nm、長さ1~25μm)を7:3の重量比で混合して混合物を得た。得られた混合物をボール筒が入ったグローボックスに入れ、アルゴン雰囲気下で、遊星ボールミル(FRITSCH社製)を利用して、400rpmで2時間混合してミリングし、シリコン粉末表面に炭素ナノチューブのコーティング層が形成されたシリコンと炭素との複合体粉末を得た。
【0143】
得られたシリコンと炭素との複合体粉末10gを、5重量%のポリビニルアルコール(重量平均分子量:9,000~10,000)が溶解された水溶液0.2gに入れて混合し、中間生成物溶液を得た。中間生成物溶液に、ポリビニルアルコールとFイオンとのモル比が1:0.5になるようにNHFを添加した後、100℃で熱処理して水分を除去し、シリコンと炭素との複合体粉末上に、ポリビニルアルコールに、Fイオン成分が化学結合された非水溶性高分子複合体のコーティング層を含む複合負極活物質を製造した。
【0144】
実施例2:複合負極活物質の製造
中間生成物溶液に、ポリビニルアルコールとFイオンとのモル比が1:0.5になるように、NHFを添加する代わりに、ポリビニルアルコールとFイオンとのモル比が1:1になるように、NHFを添加した後、100℃で熱処理して水分を除去してシリコンと炭素との複合体粉末上に、ポリビニルアルコールにFイオン成分が化学結合された非水溶性高分子複合体のコーティング層を含む複合負極活物質を製造した。
【0145】
実施例3:複合負極活物質の製造
中間生成物溶液に、ポリビニルアルコールとFイオンとのモル比が1:0.5になるように、NHFを添加する代わりに、ポリビニルアルコールとPO 3-イオンとのモル比が1:0.7になるように、(NHPOを添加した後、100℃で熱処理して水分を除去し、シリコンと炭素との複合体粉末上に、ポリビニルアルコールに、PO 3-イオン成分が化学結合された非水溶性高分子複合体のコーティング層を含む複合負極活物質を製造した。
【0146】
実施例4:複合負極活物質の製造
中間生成物溶液に、ポリビニルアルコールとFイオンとのモル比が1:0.5になるように、NHFを添加する代わりに、ポリビニルアルコールとPO 3-イオンとのモル比が1:1になるように、(NHPOを添加した後、100℃で熱処理して水分を除去し、シリコンと炭素との複合体粉末上に、ポリビニルアルコールに、PO 3-イオン成分が化学結合された非水溶性高分子複合体のコーティング層を含む複合負極活物質を製造した。
【0147】
実施例5:複合負極活物質の製造
中間生成物溶液に、ポリビニルアルコールとFイオンとのモル比が1:0.5になるように、NHFを添加する代わりに、ポリビニルアルコールとPO 3-イオンとのモル比が1:1.3になるように、(NHPOを添加した後、100℃で熱処理して水分を除去し、シリコンと炭素との複合体粉末上に、ポリビニルアルコールに、PO 3-イオン成分が化学結合された非水溶性高分子複合体のコーティング層を含む複合負極活物質を製造した。
【0148】
実施例6:複合負極活物質の製造
中間生成物溶液に、ポリビニルアルコールとFイオンとのモル比が1:0.5になるように、NHFを添加する代わりに、ポリビニルアルコールと、Fイオン,PO 3-イオンとのモル比が、1:0.1:0.7になるように、NHF、(NHPOを添加した後、100℃で熱処理して水分を除去し、シリコンと炭素との複合体粉末上に、ポリビニルアルコールに、Fイオン成分、PO 3-イオン成分が化学結合された非水溶性高分子複合体のコーティング層を含む複合負極活物質を製造した。
【0149】
実施例7:複合負極活物質の製造
中間生成物溶液に、ポリビニルアルコールとFイオンとのモル比が1:0.5になるように、NHFを添加する代わりに、ポリビニルアルコールと、Fイオン,PO 3-イオンとのモル比が1:0.2:0.7になるように、NHF、(NHPOを添加した後、100℃で熱処理して水分を除去し、シリコンと炭素との複合体粉末上に、ポリビニルアルコールに、Fイオン成分、PO 3-イオン成分が化学結合された非水溶性高分子複合体のコーティング層を含む複合負極活物質を製造した。
【0150】
実施例8:複合負極活物質の製造
中間生成物溶液に、ポリビニルアルコールとFイオンとのモル比が1:0.5になるように、NHFを添加する代わりに、ポリビニルアルコールと、Fイオン,PO 3-イオン,Al3+イオンとのモル比が1:1.4:0.1になるように、(NHPO、AlNOを添加した後、100℃で熱処理して水分を除去し、シリコンと炭素との複合体粉末上に、ポリビニルアルコールに、Fイオン成分、PO 3-イオン成分が化学結合された非水溶性高分子複合体のコーティング層を含む複合負極活物質を製造した。
【0151】
実施例9:複合負極活物質の製造
中間生成物溶液に、ポリビニルアルコールとFイオンとのモル比が1:0.5になるように、NHFを添加する代わりに、ポリビニルアルコールと、Fイオン,PO 3-イオン,Al(POモル比が1:1.4:0.1になるように、(NHPO、Al(POを添加した後、100℃で熱処理して水分を除去し、シリコンと炭素との複合体粉末上に、ポリビニルアルコールに、Fイオン成分、PO 3-イオン成分が化学結合された非水溶性高分子複合体のコーティング層を含む複合負極活物質を製造した。
【0152】
比較例1:負極活物質の製造
シリコン粉末(平均粒径:0.5μm)及び炭素ナノチューブ(CNT Co.Ltd製、平均径:30nm、長さ1~25μm)を7:3の重量比で混合して混合物を得た。得られた混合物を、ボール筒が入ったグローボックスに入れ、アルゴン雰囲気下で、遊星ボールミル(FRITSCH社製)を利用して、400rpmで2時間混合してミリングし、シリコン粉末表面に、炭素ナノチューブのコーティング層が形成されたシリコンと炭素との複合体粉末を得た。
【0153】
比較例2:複合負極活物質の製造
シリコン粉末(平均粒径:0.5μm)及び炭素ナノチューブ(CNT Co.Ltd製、平均径:30nm、長さ1~25μm)を7:3の重量比で混合して混合物を得た。得られた混合物を、ボール筒が入ったグローボックスに入れ、アルゴン雰囲気下で、遊星ボールミル(FRITSCH社製)を利用して、400rpmで2時間混合してミリングし、シリコン粉末表面に、炭素ナノチューブのコーティング層が形成されたシリコンと炭素との複合体粉末を得た。
【0154】
得られたシリコンと炭素との複合体粉末10gを、5重量%のポリビニルアルコール(重量平均分子量:9,000~10,000)が溶解された水溶液0.2gに入れて混合した後、100℃で熱処理して水分を除去し、シリコンと炭素との複合体粉末上に、ポリビニルアルコールのコーティング層を含む複合負極活物質を製造した。
【0155】
実施例10:リチウム二次電池(コインセル)の製造
実施例1で製造された複合負極活物質粉末に、リチウムが置換されたポリアクリレート(LiPAA:lithium polyacrylate)水溶液バインダ、及びカーボンブラック(ケッチェンブラック)を89:10:1の重量比で添加して混合し、負極活物質スラリーを製造した。
【0156】
負極活物質スラリーを15μm厚の銅ホイル上に、ドクターブレードを利用して、50~60μmの厚さにコーティングし、80℃条件で乾燥させた後、追加して真空の120℃条件でさらに一度乾燥させ、負極極板を製造した。負極極板をロールプレス(roll press)で圧延し、シート状のコインセル用負極を製造した。このとき、該負極の容量は、3.0mAh/cm~3.5mAh/cmほどであった。
【0157】
負極を使用して、直径12mmのコイン型ハーフセル(CR2032型)を製造した。
【0158】
コイン型ハーフセル(CR2032型)の製造時、対極(counter electrode)としては、リチウム金属を使用し、電解質としては、エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC):フルオロエチレンカーボネート(FEC)(2:6:2体積比)混合溶媒に、1.3M LiPFが溶解されたリチウム塩を使用した。
【0159】
実施例11~18:リチウム二次電池(コインセル)の製造
実施例1で製造された複合負極活物質粉末の代わりに、実施例2~9で製造された複合負極活物質粉末をそれぞれ使用して負極活物質スラリーを製造したことを除いては、実施例10と同一方法を遂行し、コイン型リチウムハーフセル(CR2032型)を製造した。
【0160】
比較例3,4:リチウム二次電池(コインセル)の製造
実施例1で製造された複合負極活物質粉末の代わりに、比較例1,2で製造された負極活物質粉末または複合負極活物質粉末を使用して、負極活物質スラリーを製造したことを除いては、実施例10と同一方法を遂行し、コイン型リチウムハーフセル(CR2032型)を製造した。
【0161】
分析例1:N NMRスペクトル分析及び19F NMRスペクトル分析:複合負極活物質表面のコーティング層に対する陰イオン成分存在の確認
実施例1及び比較例2によって製造された複合負極活物質10mgを、DO 0.75mLに溶解させた後、それらそれぞれに対して、1H NMR(nuclear magnetic resonance)スペクトル分析及び19F NMRスペクトル分析を行った。その結果をそれぞれ図4A~4C、及び図4Dに示した。
【0162】
H NMRスペクトル分析に使用された機器は、Varian社のUnity NOVA600製品であり、600MHzを使用した。19F NMRスペクトル分析に使用された機器は、Varian社のUnity NOVA600製品であり、600MHzを使用した。
【0163】
図4A図4Cを参照すれば、図4Cから分かるアセテートの末端部分に該当するCHピーク(c部分)が、図4Bでは、減少しているということを確認することができる。
【0164】
また、図4Dを参照すれば、実施例1によって製造された複合負極活物質に対して、F陰イオン成分に対するピークがはっきりと観察される。
【0165】
分析例2:X線光電子分光法(XPS:X-ray photoelectron spectroscopy)分析:複合負極活物質表面のコーティング層に対する陰イオン成分含量の分析
実施例1~3、及び比較例1によって製造された複合負極活物質及び負極活物質に対して、XPS(X-ray photoelectron spectroscopy)分光試験を行った。そこから得られたC1s、N1s、O1s、F1s、Si2p及びP2pの組成分析結果を下記表1に示した。
【0166】
XPS分析は、Quantum 2000(Physical Electronics Inc.)(加速電圧:0.5~15keV、300W、エネルギー分解能:約1.0eV、最小分析領域:10micro、sputter rate:0.1nm/min)を利用した。
【0167】
【表1】
【0168】
表1を参照すれば、実施例1,2によって製造された複合負極活物質に対してF1sピークに該当するフッ素の含量は、それぞれ0.15原子%及び0.27原子%であるということを確認することができる。また、実施例4によって製造された複合負極活物質に対してP2pピークに該当するリンの含量が1.08原子%であるということを確認することができる。
【0169】
しかし、比較例1によって製造された負極活物質に対してF1sピークに該当するフッ素の含量、及びP2pピークに該当するリンの含量は、いずれも0であるということを確認することができる。
【0170】
評価例1:充放電実験寿命の特性
実施例11~17、及び比較例3,4によって製造されたリチウム二次電池(コインセル)に対して、最初のサイクルにおいて、常温(25℃)で0.1Cの速度(C-rate)で、電圧が0.01Vになるまで充電させた後、0.1Cの速度で、電圧が1.5Vになるまで放電させた。その後、10分間休止(rest)させた。次に、2回目のサイクルにおいて、リチウム二次電池(コインセル)に対して、常温(25℃)で0.5Cの速度で、電圧が0.01Vになるまで充電させた後、0.5Cの速度で、電圧が1.5Vになるまで放電させた。その後、10分間休止させた(化成段階)。
【0171】
次に、3回目のサイクル、及びその後のサイクルにおいて、リチウム二次電池(コインセル)に対して、常温(25℃)で1.0Cの速度で、電圧が0.01Vになるまで充電させた後、1.0Cの速度で、電圧が0.01Vになるまで放電を反復し、総100回実施した。寿命特性は、下記数式1から計算して評価した。その結果の一部を図5に、その結果の全てを下記表2に示した。
【0172】
「C」は、セルの放電速度であり、セルの総容量を総放電時間で割り出して得た値を意味する。
【0173】
[数1]
容量維持率[%]=[100回目のサイクルでの放電容量/最初のサイクルでの放電容量]X100
【0174】
【表2】
【0175】
図5及び表2を参照すれば、実施例11~17によって製造されたリチウム二次電池(コインセル)の容量維持率は、比較例3,4によって製造されたリチウム二次電池(コインセル)に比べて改善されている。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明の複合負極活物質、それを含む負極及びリチウム二次電池、並びに該複合負極活物質の製造方法は、例えば、バッテリ関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0177】
1 シリコン系材料コア
2 非水溶性高分子複合体を含む有機物コーティング層
200 リチウム二次電池
212 負極
213 セパレータ
214 正極
220 電池容器
240 封入部材
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5