(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 33/06 20060101AFI20220808BHJP
C08L 47/00 20060101ALI20220808BHJP
C08L 51/00 20060101ALI20220808BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20220808BHJP
C08F 220/12 20060101ALI20220808BHJP
C08F 279/02 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
C08L33/06
C08L47/00
C08L51/00
C08L67/02
C08F220/12
C08F279/02
(21)【出願番号】P 2020556909
(86)(22)【出願日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 KR2019011449
(87)【国際公開番号】W WO2020050639
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2020-10-15
(31)【優先権主張番号】10-2018-0106052
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0108784
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ス・チェ
(72)【発明者】
【氏名】クン・フン・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・ソク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ロ・ダ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ジュ・イ
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-070646(JP,A)
【文献】特表2011-521068(JP,A)
【文献】特開2008-169239(JP,A)
【文献】特表2013-518947(JP,A)
【文献】特開平08-259909(JP,A)
【文献】特開2013-173867(JP,A)
【文献】特開2015-132661(JP,A)
【文献】特表2002-510349(JP,A)
【文献】特開2000-198902(JP,A)
【文献】国際公開第2017/061472(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/098885(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/045991(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 33/06
C08L 47/00
C08L 51/00
C08L 67/02
C08F 220/12
C08F 279/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
A-1)第1共役ジエン系重合体、アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位及び芳香族ビニル系単量体単位を含み、前記第1共役ジエン系重合体は、平均粒径が0.05から0.2μmである第1共重合体
5から40重量%;A-2)第2共役ジエン系重合体、アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位及び芳香族ビニル系単量体単位を含み、前記第2共役ジエン系重合体は、平均粒径が0.23から0.5μmである第2共重合体
10から40重量%;
B)アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位及び芳香族ビニル系単量体単位を含む第3共重合体
20から75重量%;及び
C)粘度が700から10,000cPである可塑剤
0.3から5重量%を
含む、熱可塑性樹脂組成物であって、
前記A-1)第1共重合体は、グラフト率が40から80%であり、
前記A-2)第2共重合体は、グラフト率が35から70%であり、
前記C)可塑剤は、脂肪族ジカルボン酸系単量体単位及び脂肪族ジヒドロキシ系単量体単位を含み、
前記第1共重合体から第3共重合体は、それぞれ屈折率の差が0.01以下である、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記C)可塑剤は、屈折率が1.45以上である、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記C)可塑剤は、脂肪族エステル系単量体単位及びアセテート系単量体単位からなる群から選択される1種以上をさらに含む、請求項
1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記第1共重合体から第3共重合体は、それぞれビニルシアン系単量体単位をさらに含む、請求項1~
3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記第1共役ジエン系重合体3から20重量%;
前記第2共役ジエン系重合体3から20重量%;
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位45から65重量%;
前記芳香族ビニル系単量体単位10から30重量%;及び
前記可塑剤0.3から5重量%で含むものである、請求項1~
4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂組成物は、グラフト率が35から65%である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
流動指数が220℃で、15から45g/10分である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物で製造され、
衝撃補強領域とマトリックス領域を含み、
前記衝撃補強領域は、前記第1共役ジエン系重合体及び第2共役ジエン系重合体からなる群から選択される1種以上を含み、
前記マトリックス領域は、前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位及び芳香族ビニル系単量体単位を含み、
前記衝撃補強領域とマトリックス領域は、屈折率の差が0.01以下である、熱可塑性樹脂成形品。
【請求項9】
ヘイズが1.3以下、衝撃強度が7kg・cm/cm以上である、請求項
8に記載の熱可塑性樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本発明は、2018年9月5日付で出願された韓国特許出願第10-2018-0106052号及び2019年9月3日付で出願された韓国特許出願第10-2019-0108784号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容を本明細書の一部として含む。
【0002】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関し、基本物性を維持しながら透明性が顕著に改善された熱可塑性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、産業が先進化され、生活が多様化するにつれて、製品モデルの差別化のために、素材に透明性などの高機能性を付与する研究が多く行われている。例えば、洗濯内容物が見られる洗濯機カバー、ホコリがどれくらいたまったか確認できる掃除機集塵機、おもちゃ、ゲーム機のハウジング、家電製品の透明窓、事務機器の透明窓などのように、素材の透明性を新たに付与する研究が集中的に行われている。
【0004】
しかし、このような部品に使用されているABSグラフト共重合体は、耐衝撃性、耐薬品性、加工性及び表面光沢性などの品質は優れるが、不透明な素材であるので、透明性が要求される素材には使用できない。
【0005】
一般的に使用されている透明素材としては、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン(PS)、ポリアクリロニトリル-スチレン(SAN)などがある。ポリカーボネート樹脂は、衝撃強度と透明性は優れるが、加工性が悪いため複雑な製品を作製しにくい。ポリメチルメタクリレートは透明性に優れるが、耐衝撃性と耐化学性が非常に悪い。また、ポリスチレン(PS)とポリアクリロニトリル-スチレン(SAN)は、耐衝撃性と耐化学性が非常に悪い。
【0006】
一方、米国特許第4,767,833号、特開平11-147020号公報、欧州特許第703,252号、及び特開平8-199008号公報は、耐衝撃性、耐化学性、加工性などに優れたアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系グラフト共重合体にアルキル(メタ)アクリレート系単量体を導入して透明性を付与する方法を開示している。しかし、透明性の限界があるため、殆どの製品のヘイズが2.0を超過しており、PMMA、PC、SANなどを使用していた製品、厚い射出物または高透明性を要求する製品には使用上の限界があった。
【0007】
したがって、透明性をさらに改善することで、PC、PMMA、SANなどを使用する製品水準に透明性を維持しながらも、耐衝撃性及び流動性に優れた製品の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第4,767,833号
【文献】特開平11-147020号公報
【文献】欧州特許第703,252号
【文献】特開平8-199008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、耐衝撃性及び流動性などの基本物性を維持しながらも、透明性が顕著に改善された熱可塑性樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した課題を解決するために、本発明は、A-1)第1共役ジエン系重合体、アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位及び芳香族ビニル系単量体単位を含み、前記第1共役ジエン系重合体は、平均粒径が0.05から0.2μmである第1共重合体;A-2)第2共役ジエン系重合体、アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位及び芳香族ビニル系単量体単位を含み、前記第2共役ジエン系重合体は平均粒径が0.23から0.5μmである第2共重合体;B)アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位及び芳香族ビニル系単量体単位を含む第3共重合体;及びC)粘度が700から10,000cPである可塑剤を含み、前記可塑剤を0.3から5重量%で含む熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、前述した熱可塑性樹脂組成物で製造され、衝撃補強領域とマトリックス領域を含み、前記衝撃補強領域は、前記第1共役ジエン系重合体及び第2共役ジエン系重合体からなる群から選択される1種以上を含み、前記マトリックス領域は、前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位及び芳香族ビニル系単量体単位を含み、前記衝撃補強領域とマトリックス領域は、屈折率の差が0.01以下である熱可塑性樹脂成形品を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性及び流動性などの基本物性に優れるだけでなく、透明性が顕著に改善され得る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をさらに詳しく説明する。
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0015】
本発明における屈折率は、物質の絶対屈折率を意味するものであって、屈折率は、自由空間での電磁気輻射線の速度対物質内での輻射線の速度比として認識されるが、この際の輻射線は、波長が450から680nmの可視光である。屈折率は、公知の方法、すなわち一般的にアッベ屈折計(Abbe Refractometer)を用いて測定することができる。
【0016】
また、グラフト共重合体の屈折率は、グラフト共重合体構成の各重合体の屈折率及び含量比を用いて下記式によって計算され得る:
屈折率(RI)={[アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位の含量(重量%)]×[アルキル(メタ)アクリレート系単独重合体の屈折率]}+{[芳香族ビニル系単量体単位の含量(重量%)]×[芳香族ビニル系単独重合体の屈折率]}+{[ビニルシアン系単量体単位の含量(重量%)]×[ビニルシアン系単独重合体の屈折率]}
【0017】
本発明における第1及び第2共役ジエン系重合体の平均粒径は、動的光散乱(dynamic light scattering)法を用いて測定することができ、詳しくはNicomp380装置(製品名、製造社:PSS)を用いて測定することができる。
【0018】
本明細書における平均粒径は、動的光散乱法によって測定される粒度分布における算術平均粒径、すなわち散乱強度の平均粒径を意味することができる。
【0019】
本発明における可塑剤の粘度は、下記条件でブルックフィールド(Brook field)を用いて測定することができる。
【0020】
スピンドル(spinde)種類-コーン(Cone)種類(CPA-52Z)、コーン角度(cone angle)=3゜、コーン半径(cone radius)=1.2cm、ギャップ(gap):13μm以下、測定せん断速度(shear rate):10~20/sec、測定温度:25℃
【0021】
本発明におけるグラフト率は、第1共重合体粉末、第2共重合体粉末または熱可塑性樹脂組成物1gをアセトン50gに24時間撹拌しながら溶かした後、遠心分離機(商品名:SUPRA 30K、製造社:Hanil Science Industrial)に投入し、16,000rpm、-10℃の条件下で4時間遠心分離して上澄液と沈殿物を分離し、沈殿物を50℃の熱風乾燥器で12時間乾燥した後、収得された乾燥物の重量を測定し、下記式に基づいて測定することができる:
グラフト率(%)={[(乾燥物の重量)-(共役ジエン系重合体の重量)]/(共役ジエン系重合体の重量)}×100
共役ジエン系重合体の重量=第1共重合体、第2共重合体または熱可塑性樹脂組成物の製造時に投入された第1及び第2共役ジエン系重合体の固形分重量;または第1共重合体、第2共重合体または熱可塑性樹脂組成物を赤外線分光法で分析して測定した第1及び第2共役ジエン系重合体の固形分重量
【0022】
本発明における第1及び第2共重合体のシェルの重量平均分子量は、共役ジエン系重合体にグラフトされたアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とビニルシアン系単量体単位とを含む共重合体の重量平均分子量を意味してよい。
【0023】
本発明における第1及び第2共重合体のシェルの重量平均分子量は、グラフト率の測定方法で記載された乾燥物を1重量%の濃度でテトラヒドロフラン(THF)溶液に溶かした後、1μmのフィルターを介して濾過した後、ゲル浸透クロマトグラフィーを介して標準PS(ポリスチレン標準:standard polystyrene)試料に対する相対値として測定することができる。
【0024】
本発明における第3共重合体の重量平均分子量は、溶出液としてテトラヒドロフラン(THF)を用い、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、waters breeze)を用いて標準PS(ポリスチレン標準:standard polystyrene)試料に対する相対値として測定することができる。
【0025】
本発明における透明性は、ASTM 1003に基づいて測定することができる。
【0026】
本発明における衝撃強度は、ASTM D256に基づいて、1/4 inchの条件下で測定することができる。
【0027】
本発明における流動指数は、ASTM D1238に基づいて、220℃、10kgの条件下で測定することができる。
【0028】
1.熱可塑性樹脂組成物
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、A-1)第1共役ジエン系重合体、アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位及び芳香族ビニル系単量体単位を含み、前記第1共役ジエン系重合体は、平均粒径が0.05から0.2μmである第1共重合体;A-2)第2共役ジエン系重合体、アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位及び芳香族ビニル系単量体単位を含み、前記第2共役ジエン系重合体は、平均粒径が0.23から0.5μmである第2共重合体;B)アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位及び芳香族ビニル系単量体単位を含む第3共重合体;及びC)粘度が700から10,000cPである可塑剤を含み、前記可塑剤を0.3から5重量%で含む。
【0029】
以下、本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物の構成要素等に対して詳しく説明する。
【0030】
A-1)第1共重合体
第1共重合体は、グラフト共重合体であって、第1共役ジエン系重合体、アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位及び芳香族ビニル系単量体単位を含む。
【0031】
前記第1共重合体は、第2共重合体とシナジー作用により熱可塑性樹脂組成物に優れた透明性及び耐衝撃性を付与することができ、特に顕著に優れた透明性を付与することができる。
【0032】
前記第1共役ジエン系重合体は、平均粒径が0.05から0.2μmであり、好ましくは0.07から0.18μmであってよい。前述した範囲未満であれば、優れた耐衝撃性を具現することができず、前述した範囲を超過すれば、優れた透明性を具現することができない。
【0033】
前記第1共役ジエン系重合体は、共役ジエン系単量体、または共役ジエン系単量体と前記共役ジエン系単量体と共重合可能な共単量体が重合されて製造されたものであって、二重結合と単結合が交互配列している構造であってよい。
【0034】
前記第1共役ジエン系重合体は、共役ジエン系重合体にアルキル(メタ)アクリレート系単量体及び芳香族ビニル系単量体がグラフト重合されることにより、変性された共役ジエン系重合体を含むことができる。
【0035】
前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、ピペリレン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン及びビニルノルボルネンからなる群から選択された1種以上であってよく、このうち1,3-ブタジエンまたはエチリデンノルボルネンが好ましい。
【0036】
前記共役ジエン系単量体と共重合可能な共単量体は、アクリロニトリル、エチレン及びプロピレンからなる群から選択される1種以上であってよい。
【0037】
前記第1共役ジエン系重合体は、ポリブタジエン;1,3-ブタジエン単位及びアクリロニトリル単位を含む共重合体;及びエチリデンノルボルネン単位、エチレン単位及びプロピレン単位を含む共重合体からなる群から選択される1種以上であってよく、このうちポリブタジエンが好ましい。
【0038】
前記第1共役ジエン系重合体は、前記第1共重合体の総重量に対して、35から65重量%または40から60重量%で含まれてよく、このうち40から60重量%で含まれることが好ましい。前述した範囲を満たすと、第1共重合体の透明性及び耐衝撃性をより改善させることができる。
【0039】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位は、第1共重合体に優れた透明性を付与することができる。
【0040】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート及びラウリル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上から由来した単位であってよく、このうちメチルメタクリレートから由来した単位が好ましい。
【0041】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位は、前記第1共重合体の総重量に対して、20から50重量%または25から45重量%で含まれてよく、このうち25から45重量%で含まれることが好ましい。前述した範囲を満たすと、第1共重合体の透明性をより改善させることができる。
【0042】
前記芳香族ビニル系単量体単位は、第1共重合体の加工性、剛性及び機械的特性を付与することができる。
【0043】
前記芳香族ビニル系単量体単位は、スチレン、α-メチルスチレン、α-エチルスチレン及びp-メチルスチレンからなる群から選択される1種以上から由来した単位であってよく、このうちスチレンから由来した単位が好ましい。
【0044】
前記芳香族ビニル系単量体単位は、前記第1共重合体の総重量に対して、7から30重量%または10から25重量%で含まれてよく、このうち、10から25重量%で含まれることが好ましい。前述した範囲を満たすと、第1共重合体の加工性、剛性及び機械的特性をより改善させることができる。
【0045】
前記第1共重合体は、耐化学性を改善させるためにビニルシアン系単量体単位をさらに含んでよい。
【0046】
前記ビニルシアン系単量体単位は、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル及びα-クロロアクリロニトリルからなる群から選択される1種以上から由来した単位であってよく、このうちアクリロニトリルから由来した単位が好ましい。
【0047】
前記ビニルシアン系単量体単位は、前記第1共重合体の総重量に対して、0.5から10重量%または1から7重量%で含まれてよく、このうち1から7重量%で含まれることが好ましい。前述した範囲を満たすと、第1共重合体に黄変現象が発生せず、且つ、耐化学性をより改善させることができる。また、第1共重合体の重合時に凝固物(coagulum)の生成を抑制することにより重合安定性に優れるようになる。
【0048】
前記第1共重合体は、グラフト率が40から80%であってよく、より好ましくは45から70%であってよく、最も好ましくは50から60%であってよい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の透明性がより改善され得る。グラフト率が前述した範囲未満であれば、第1から第3共重合体の屈折率が一致しても、熱可塑性樹脂組成物の透明性が低下することがある。前述した範囲を超過すれば、衝撃強度が低下することがある。
【0049】
一方、前記第1共重合体の透明性は、第1共役ジエン系重合体の屈折率とアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位及び芳香族ビニル系単量体単位を含むシェルの屈折率の差によって決定されてよい。すなわち、前記第1共重合体が優れた透明性を有するためには、前記第1共役ジエン系重合体の屈折率とシェルの屈折率との差が0.01以下であってよく、屈折率の差がないものが好ましい。
【0050】
また、熱可塑性樹脂組成物が優れた透明性を具現するために、前記第1共重合体から第3共重合体は、それぞれ屈折率の差が0.01以下であってよい。具体的には、前記第1共重合体と第2共重合体は、屈折率の差が0.01以下であり、前記第1共重合体と第3共重合体は、屈折率の差が0.01以下であり、前記第2共重合体と第3共重合体は、屈折率の差が0.01以下であってよい。そして、前記第1から第3共重合体の間には、屈折率の差のないものが好ましい。
【0051】
前記第1共重合体は、屈折率が1.5から1.525または1.51から1.52であってよく、このうち1.51から1.52が好ましい。前述した範囲を満たすと、後述する第2及び第3共重合体とのシナジー作用により熱可塑性樹脂組成物の透明性をより改善させることができる。
【0052】
前記第1共重合体は、シェルの重量平均分子量が50,000から200,000g/molまたは60,000から150,000g/molであってよく、このうち60,000から150,000g/molが好ましい。前述した範囲を満たすと、流動性と耐衝撃性がより改善され得る。
【0053】
前記第1共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対して、5から40重量%または10から35重量%で含まれてよく、このうち10から35重量%で含まれることが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の透明性がより改善され得る。
【0054】
前記第1共重合体は、第1共役ジエン系重合体にアルキル(メタ)アクリレート系単量体及び芳香族ビニル系単量体を乳化重合または塊状重合させて製造してよく、このうち第1共重合体に優れた透明性と耐衝撃性を具現できるように乳化重合で製造することが好ましい。
【0055】
A-2)第2共重合体
第2共重合体は、グラフト共重合体であって、第2共役ジエン系重合体、アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位及び芳香族ビニル系単量体単位を含む。
【0056】
前記第2共重合体は、熱可塑性樹脂組成物に優れた耐衝撃性及び透明性を付与することができ、特に顕著に優れた耐衝撃性を付与することができる。
【0057】
前記第2共役ジエン系重合体は、平均粒径が0.23から0.5μmであり、好ましくは0.25から0.48μmであってよい。前述した範囲未満であれば、優れた耐衝撃性を具現することができず、前述した範囲を超過すれば、優れた透明性を具現することができない。
【0058】
前記第2共役ジエン系重合体は、前記第2共重合体の総重量に対して、35から65重量%または40から60重量%で含まれてよく、このうち40から60重量%で含まれることが好ましい。前述した範囲を満たすと、第2共重合体の耐衝撃性及び透明性をより改善させることができる。
【0059】
その他、前記第2共役ジエン系重合体に対する説明は、前記第1共役ジエン系重合体に対する説明で詳述した通りである。
【0060】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位は、第2共重合体に優れた透明性を付与することができる。
【0061】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位の種類は、前述した通りである。
【0062】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位は、前記第2共重合体の総重量に対して、20から50重量%または25から45重量%で含まれてよく、このうち25から45重量%で含まれることが好ましい。前述した範囲を満たすと、第2共重合体の透明性をより改善させることができる。
【0063】
前記芳香族ビニル系単量体単位は、第2共重合体の加工性、剛性及び機械的特性を付与することができる。
【0064】
前記芳香族ビニル系単量体単位の種類は、前述した通りである。
【0065】
前記芳香族ビニル系単量体単位は、前記第2共重合体の総重量に対して、7から30重量%または10から25重量%で含まれてよく、このうち10から25重量%で含まれることが好ましい。前述した範囲を満たすと、第2共重合体の加工性、剛性及び機械的特性をより改善させることができる。
【0066】
前記第2共重合体は、耐化学性を改善させるためにビニルシアン系単量体単位をさらに含んでよい。
【0067】
前記ビニルシアン系単量体単位の種類は、前述した通りである。
【0068】
前記ビニルシアン系単量体単位は、前記第2共重合体の総重量に対して、0.5から10重量%または1から7重量%で含まれてよく、このうち1から7重量%で含まれることが好ましい。前述した範囲を満たすと、第2共重合体に黄変現象が発生せず、且つ、耐化学性をより改善させることができる。また、第2共重合体の重合時に凝固物(coagulum)の生成を抑制することにより重合安定性に優れるようになる。
【0069】
前記第2共重合体は、グラフト率が35から70%であってよく、より好ましくは38から60%であってよく、最も好ましくは40から50%であってよい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の透明性がより改善され得る。グラフト率が前述した範囲未満であれば、第1から第3共重合体の屈折率が一致しても、熱可塑性樹脂組成物の透明性が低下することがある。前述した範囲を超過すれば、衝撃強度が低下することがある。
【0070】
一方、前記第2共重合体の透明性は、前記第1共重合体に対する説明で記載した通りであり、第2共役ジエン系重合体の屈折率とアルキル(メタ)アクリレート系単量体単位及び芳香族ビニル系単量体単位を含むシェルの屈折率の差によって決定されてよい。すなわち、前記第2共重合体が優れた透明性を有するためには、前記第2共役ジエン系重合体の屈折率とシェルの屈折率との差が0.01以下であってよく、屈折率の差がないものが好ましい。
【0071】
前記第2共重合体は、屈折率が1.5から1.525または1.51から1.52であってよく、このうち1.51から1.52が好ましい。前述した範囲を満たすと、第1及び第3共重合体とのシナジー作用により熱可塑性樹脂組成物の透明性をより改善させることができる。
【0072】
前記第2共重合体は、シェルの重量平均分子量が50,000から200,000g/molまたは70,000から150,000g/molであってよく、このうち70,000から150,000g/molが好ましい。前述した範囲を満たすと、流動性と耐衝撃性がより改善され得る。
【0073】
前記第2共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対して、10から40重量%または13から35重量%で含まれてよく、このうち13から35重量%で含まれることが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性がより改善され得る。
【0074】
前記第2共重合体は、第2共役ジエン系重合体にアルキル(メタ)アクリレート系単量体及び芳香族ビニル系単量体を乳化重合または塊状重合させて製造することができ、このうち第2共重合体に優れた耐衝撃性と透明性を具現できるように乳化重合で製造することが好ましい。
【0075】
B)第3共重合体
第3共重合体は、マトリックス共重合体であって、アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を含む。
【0076】
前記第3共重合体は、熱可塑性樹脂組成物に優れた透明性と加工性を付与する。
【0077】
前記第3共重合体は、前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位を30:70から80:20または40:60から75:25の重量比で含んでよく、このうち40:60から75:25の重量比で含むことが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の透明性と加工性をより改善させることができる。
【0078】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位の種類と芳香族ビニル系単量体単位の種類は、前述した通りである。
【0079】
前記第3共重合体は、耐化学性を改善させるためにビニルシアン系単量体単位をさらに含んでよい。
【0080】
前記ビニルシアン系単量体単位の種類は、前述した通りである。
【0081】
前記第3共重合体がビニルシアン系単量体単位をさらに含む場合、前記第3共重合体は、前記第3共重合体の総重量に対して、前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位60から80重量%;前記芳香族ビニル系単量体単位15から35重量%;及び前記ビニルシアン系単量体単位0.5から10重量%で含んでよく、好ましくは前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位65から75重量%;前記芳香族ビニル系単量体単位20から30重量%;及び前記ビニルシアン系単量体単位1から10重量%で含んでよい。前述した範囲を満たすと、第3共重合体に黄変現象が発生せず、且つ、耐化学性をより改善させることができる。
【0082】
前記第3共重合体は、前記第1共重合体及び第2共重合体それぞれと屈折率の差が0.01以下であってよく、これらと屈折率の差がないものが好ましい。
【0083】
前記第3共重合体は、屈折率が1.5から1.525または1.51から1.52であってよく、このうち1.5から1.52が好ましい。前述した範囲を満たすと、第1及び第2共重合体とのシナジー作用により熱可塑性樹脂組成物の透明性をより改善させることができる。
【0084】
前記第3共重合体は、重量平均分子量が50,000から200,000g/molまたは60,000から150,000g/molであってよく、このうち60,000から150,000g/molが好ましい。前述した範囲を満たすと、流動性と耐衝撃性がより優れるようになる。
【0085】
前記第3共重合体は、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対して、20から75重量%または30から70重量%で含まれてよく、このうち30から70重量%で含まれることが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の透明性及び加工性がより改善され得る。
【0086】
前記第3共重合体は、アルキル(メタ)アクリレート系単量体及び芳香族ビニル系単量体を懸濁重合または塊状重合させて製造することができ、このうち、高純度で共重合体を製造できるとともに、原価節減が可能な塊状重合、特に連続塊状重合で製造することが好ましい。
【0087】
C)可塑剤
可塑剤は、粘度が700から10,000cPであり、前記可塑剤は、熱可塑性樹脂組成物に優れた加工性を付与することができる。
【0088】
前記可塑剤は、粘度が好ましくは1,000から90,000cP、より好ましくは1,200から5,000cPであってよい。前述した範囲未満であれば、熱可塑性樹脂組成物で可塑剤の移行現象が発生する。そして、射出成形時にガス及びモールドデポジット(mold deposit)が発生し得る。前述した範囲を超過すれば、熱可塑性樹脂組成物の加工性が低下する。
【0089】
前記可塑剤は、熱可塑性樹脂組成物の総重量に対して、0.3から5重量%で含まれ、好ましくは0.5から4重量%で含まれてよく、より好ましくは1から4重量%で含まれてよい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の透明性及び加工性をより改善させることができ、可塑剤の移行現象を防止することができる。前述した範囲未満で含まれると、熱可塑性樹脂組成物の透明性及び加工性が低下する。前述した範囲を超過して含まれると、熱可塑性樹脂組成物の透明性及び衝撃強度が低下する。また、可塑剤の移行現象も発生する。
【0090】
前記可塑剤は、屈折率が1.45以上、1.45から1.6または1.45から1.52であってよく、このうち1.45から1.52が好ましい。前述した条件を満足すれば、製造された熱可塑性樹脂成形品の透明性がより優れるようになる。
【0091】
前記可塑剤は、脂肪族ジカルボン酸系単量体単位及び脂肪族ジヒドロキシ系単量体単位を含んでよい。
【0092】
前記脂肪族ジカルボン酸系単量体単位は、アジピン酸、コハク酸及びグルタル酸からなる群から選択される1種以上から由来した単位であってよく、このうちアジピン酸から由来した単位が好ましい。
【0093】
前記脂肪族ジヒドロキシ系単量体単位は、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2-2-ジメチル-1,3-プロパンジオールからなる群から選択される1種以上から由来した単位であってよく、このうち1,3-ブタンジオール、1,2-プロパンジオール、及び2-2-ジメチル-1,3-プロパンジオールからなる群から選択される1種以上から由来した単位が好ましい。
【0094】
前記可塑剤は、脂肪族エステル系単量体単位及びアセテート系単量体単位をさらに含んでよく、前記脂肪族エステル系単量体単位は、2-エチルヘキシルエステル、オクチルエステル及びイソノニルエステルからなる群から選択される1種以上から由来した単位であってよい。アセテート系単量体単位は、アセテートから由来した単位であってよい。
【0095】
前記可塑剤は、ポリジ(2-エチルヘキシル)グリコールアジペート(CAS NO.73018-26-5);2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール](CAS NO.103597-45-1);ヘキサン二酸、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール及び1,2-プロパンジオールを有するポリマー、イソノニルエステル(Hexanedioic acid,polymer with 2,2-dimethyl-1,3-propanediol and 1,2-propanediol,isononyl ester,CAS NO.208945-13-5);ヘキサン二酸、1,2-プロパンジオールを有するポリマー、n-オクチルエステル(Hexanedioic acid,polymer with 1,2-propanediol,n-octyl ester,CAS NO.82904-80-1);及びヘキサン二酸、1,2-プロパンジオールを有するポリマー、アセテート(Hexanedioic acid,polymer with1,2-propanediol,acetate,CAS NO.55799-38-7)からなる群から選択される1種以上であってよく、このうちポリジ(2-エチルヘキシル)グリコールアジペート;2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール];及びヘキサン二酸、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール及び1,2-プロパンジオールを有するポリマー、イソノニルエステルからなる群から選択される1種以上が好ましい。
【0096】
前記可塑剤は、市販される物質のうちSONGCIZERTM P-2600(商品名、製造社:ソンウォン産業)、SONGCIZERTM P-3600(商品名、製造社:ソンウォン産業)、Palamoll(登録商標)632(商品名、製造社:BASF)、Palamoll(登録商標)638(商品名、製造社:BASF)、Palamoll(登録商標)652(商品名、製造社:BASF)、AdmexTM 760 Polymeric Plasticizer(商品名、製造社:EASTMAN)及びEDENOL(登録商標)1225(商品名、製造社:EMERYOLECHEMICALS)からなる群から選択される1種以上を用いてよく、このうちSONGCIZERTM P-2600(商品名、製造社:ソンウォン産業)、Palamoll(登録商標)638(商品名、製造社:BASF)、Palamoll(登録商標)652(商品名、製造社:BASF)、及びEDENOL(登録商標)1225(商品名、製造社:EMERYOLECHEMICALS)からなる群から選択される1種以上が好ましい。
【0097】
一方、前記可塑剤は、環境的な問題を引き起こすフタレート系可塑剤ではないものが好ましい。
【0098】
一方、本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂組成物の総重量において、前記第1共役ジエン系重合体3から20重量%;前記第2共役ジエン系重合体3から20重量%;前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位45から65重量%;前記芳香族ビニル系単量体単位10から30重量%;及び前記可塑剤0.3から5重量%で含んでよく、好ましくは前記第1共役ジエン系重合体5から15重量%;前記第2共役ジエン系重合体5から15重量%;前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位50から65重量%;前記芳香族ビニル系単量体単位15から25重量%;及び前記可塑剤0.5から4重量%で含んでよい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の透明性、加工性及び耐衝撃性がより改善され得る。
【0099】
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物がビニルシアン系単量体単位をさらに含む場合、前記熱可塑性樹脂組成物の総重量に対して、0.5から10重量%または1から7重量%で含んでよく、このうち1から7重量%で含むことが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の耐化学性がより改善され、且つ、黄変現象は発生しない。
【0100】
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、グラフト率が35から65%または40から60%であり、このうち40から60%であるのが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の透明性がより改善され得る。
【0101】
本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物は、流動指数が220℃で15から45g/10分または18から30g/10分であり、このうち18から30g/10分であることが好ましい。前述した範囲を満たすと、熱可塑性樹脂組成物の加工性がより改善され得る。
【0102】
2.熱可塑性樹脂成形品
本発明の他の一実施形態による熱可塑性樹脂成形品は、本発明の一実施形態による熱可塑性樹脂組成物で製造され、前記第1共役ジエン系重合体及び第2共役ジエン系重合体を含む衝撃補強領域と;前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体単位及び芳香族ビニル系単量体単位を含むマトリックス領域の屈折率の差が0.01以下である。
【0103】
前述した条件を満足すれば、熱可塑性樹脂成形品の透明性がより改善され得る。
【0104】
前記熱可塑性樹脂成形品は、ヘイズが1.3以下、衝撃強度が7kg.cm/cm以上であってよく、透明性が1.2以下、衝撃強度が9kg.cm/cm以上であるものが好ましい。前述した条件を満足すれば、熱可塑性樹脂成形品の透明性及び耐衝撃性がより改善され得る。
【0105】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施形態に対して詳しく説明する。しかし、本発明は、いくつか異なる形態に具現されてよく、ここで説明する実施形態に限定されない。
【実施例】
【0106】
製造例1:A-1-1の製造
ポリブタジエンラテックス(重合方法:乳化重合、ゲル含量:90%、平均粒径:0.12μm)50重量部に、イオン交換水50重量部、メチルメタクリレート8.8重量部、スチレン3重量部、アクリロニトリル0.8重量部、架橋剤としてジビニルベンゼン0.1重量部、開始剤としてクメンヒドロパーオキシド0.2重量部、乳化剤としてアルキルアリールスルホン酸ナトリウム(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.5重量部を入れて5時間混合した後、メチルメタクリレート26.2重量部、スチレン9重量部、アクリロニトリル2.2重量部、分子量調節剤としてt-ドデシルメルカプタン0.5重量部、酸化-還元系触媒としてエチレンジアミン四酢酸0.05重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1重量部、硫酸第一鉄0.001重量部、開始剤としてクメンヒドロパーオキシド0.1重量部を70℃で5時間の間一定の速度で連続投入しながら重合した。連続投入が終了した後、80℃に昇温して1時間熟成した後、重合を終了してグラフト共重合体ラテックスを収得した。そして、グラフト共重合体ラテックスに凝集剤として硫酸マグネシウム2重量部を投入して凝集し、脱水、乾燥を経てグラフト共重合体粉末を収得した。収得されたグラフト共重合体粉末の屈折率は1.516であり、グラフト率は55%であった。
【0107】
製造例2:A-2-1の製造
ポリブタジエンラテックス(重合方法:乳化重合、ゲル含量:70%、平均粒径:0.3μm)50重量部に、イオン交換水50重量部、メチルメタクリレート8.8重量部、スチレン3重量部、アクリロニトリル0.8重量部、架橋剤としてジビニルベンゼン0.1重量部、開始剤としてクメンヒドロパーオキシド0.2重量部、乳化剤としてアルキルアリールスルホン酸ナトリウム(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.5重量部を投入して3時間混合した後、メチルメタクリレート26.2重量部、スチレン9重量部、アクリロニトリル2.2重量部、分子量調節剤としてt-ドデシルメルカプタン0.5重量部、酸化-還元系触媒エチレンジアミン四酢酸0.05重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1重量部、硫酸第一鉄0.001重量部、開始剤としてクメンヒドロパーオキシド0.1重量部を70℃で5時間の間一定の速度で連続投入しながら重合した。連続投入が終了した後、80℃に昇温して1時間熟成した後、重合を終了してグラフト共重合体ラテックスを収得した。そして、グラフト共重合体ラテックスに凝集剤として硫酸マグネシウム2重量部を投入して凝集し、脱水、乾燥を経てグラフト共重合体粉末を収得した。得られたグラフト共重合体粉末は、屈折率が1.516であり、グラフト率が45%であった。
【0108】
製造例3:A-2-2の製造
ポリブタジエンラテックス(重合方法:乳化重合、ゲル含量:70%、平均粒径:0.3μm)50重量部に、イオン交換水50重量部、メチルメタクリレート7.5重量部、スチレン4.8重量部、アクリロニトリル0.8重量部、架橋剤としてジビニルベンゼン0.1重量部、開始剤としてクメンヒドロパーオキシド0.2重量部、乳化剤としてアルキルアリールスルホン酸ナトリウム(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム)0.5重量部を投入して3時間混合した後、メチルメタクリレート22.3重量部、スチレン14.4重量部、アクリロニトリル2.2重量部、分子量調節剤としてt-ドデシルメルカプタン0.5重量部、酸化-還元系触媒としてエチレンジアミン四酢酸0.05重量部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.1重量部、硫酸第一鉄0.001重量部、クメンヒドロパーオキシド0.1重量部を70℃で5時間の間一定の速度で連続投入しながら重合した。連続投入が終了した後、80℃に昇温して1時間熟成した後、重合を終了してグラフト共重合体ラテックスを収得した。そして、グラフト共重合体ラテックスに凝集剤として硫酸マグネシウム2重量部を投入して凝集し、脱水、乾燥を経てグラフト共重合体粉末を収得した。得られたグラフト共重合体粉末は、屈折率は1.53であり、グラフト率は47%であった。
【0109】
製造例4:B-1の製造
メチルメタクリレート70.4重量部、スチレン24.6重量部、アクリロニトリル5重量部に、溶媒としてトルエン30重量部と、分子量調節剤としてt-ドデシルメルカプタン0.15重量部を混合した原料を平均反応時間が3時間になるように反応槽に連続的に投入し、反応温度を148℃に維持した。反応槽から排出された重合溶液は、予備加熱槽で加熱し、揮発槽で未反応単量体は揮発させ、ポリマーの温度が210℃に維持されるようにして、ポリマー移送ポンプ押出加工機を用いてペレット状のMSAN共重合体を収得した。製造されたMSAN共重合体は屈折率が1.516であった。
【0110】
実施例及び比較例
グラフト共重合体、マトリックス共重合体及び可塑剤を下記表に記載された含量で混合して熱可塑性樹脂組成物を製造した。
【0111】
実験例1
実施例及び比較例の熱可塑性樹脂組成物100重量部、酸化防止剤(商品名:Irganox 1010、製造社:BASF)0.3重量部を均一に混合した後、220℃のシリンダー温度で2軸押出混練機に投入してペレットを製造した。前記ペレットの物性を下記の方法で測定し、下記表に記載した。
【0112】
(1)流動指数(g/10分):ASTM1238に基づいて220℃、10kg条件で行った。
【0113】
実験例2
実験例1で製造されたペレットを射出して試片を製造し、試片の物性を下記の方法で測定し、下記表に記載した。
【0114】
(2)ヘイズ(Haze Value、%):ASTM1003に基づいて透明性を測定した。
【0115】
(3)衝撃強度(Notched Izod Impact Strength、1/4 INCH、kg・cm/cm):ASTM245 D256に基づいて23℃でノッチドアイゾッド衝撃強度を測定した。
【0116】
(4)移行性(Migration):70℃のオーブンで油紙上に試片を置き、10kgの重量物を載せた後、1週間保管した後、油紙の変化を察して移行性を評価した。可塑剤が移行されると、油紙を濡らして油紙の色相が変化するようになるので、色相が変化するものは移行が発生して可塑剤が油紙に染み出るものである。よって、変化のないものはOKと表記し、変化があるものはNGと表記した。
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
粘度が2,200cPである可塑剤を0.3から4重量%で含む実施例1から5は流動指数が高く、且つ、ヘイズが低いので、加工性及び透明性が改善されることが確認できた。また、可塑剤の含量が増加するほど、流動指数が増加するので、加工性が改善されることが確認できた。一方、可塑剤を含まない比較例1は、実施例1から5に比べて流動指数が低く、且つ、ヘイズが高いので、加工性及び透明性が低下することが確認できる。粘度が2,200cPである可塑剤をそれぞれ6重量%、10重量%で含む比較例2及び3は、流動指数とヘイズが過度に高くなり、衝撃強度が低く、移行性が低下されたことが確認できた。このような結果から、粘度が2,200cPである可塑剤でも過量に使用すれば、加工性、透明性、耐衝撃性及び移行性がむしろ低下するということが確認できた。
【0121】
実施例4と6を参照すれば、グラフト共重合体の含量が増加すると、衝撃強度が改善され、相対的にマトリックス共重合体の含量が減少するため、加工性は多少低下することが確認できる。
【0122】
粘度がそれぞれ2,200cP、2,000cP、1,200cP、8,000cPである可塑剤を含む実施例6から10は、優れた流動指数、ヘイズ、衝撃強度及び移行性を具現するということが確認できる。
【0123】
一方、粘度が60cPである可塑剤を含む比較例4と、粘度が150cPである可塑剤を含む比較例5は、ヘイズが高くなるため、透明性が低下することが確認できる。
【0124】
比較例6は、ポリブタジエンの平均粒径が0.12μmであるグラフト共重合体を比較例1に比べて過量に含むことにより、ヘイズが低くなるため優れた透明性は具現できた。しかし、可塑剤を含まないので、流動指数が低くなって加工性が顕著に低下することが確認できる。
【0125】
粘度が2,200cPである可塑剤を含むが、ポリブタジエンの平均粒径が0.3μmであるグラフト共重合体を含まない比較例7は、衝撃強度が顕著に低下することが確認できる。
【0126】
可塑剤を含まず、ポリブタジエンの平均粒径が0.3μmであり、屈折率が1.53であるグラフト共重合体を含む比較例8は、ポリブタジエンの平均粒径が0.12μmであるグラフト共重合体を比較例1に比べて過量に含むことにより、ヘイズを下げることはできたが、優れた透明性の具現は困難であった。また、可塑剤を含まないので、流動指数が低くなって加工性が顕著に低下することが確認できた。