(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】反応性アニールを使用する間隙充填
(51)【国際特許分類】
H01L 21/318 20060101AFI20220808BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20220808BHJP
H01L 21/314 20060101ALI20220808BHJP
C23C 16/56 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
H01L21/318 B
H01L21/316 X
H01L21/318 C
H01L21/314 A
C23C16/56
(21)【出願番号】P 2019554843
(86)(22)【出願日】2018-04-05
(86)【国際出願番号】 US2018026219
(87)【国際公開番号】W WO2018187546
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-29
(32)【優先日】2017-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マリック, アブヒジット バス
(72)【発明者】
【氏名】マンナ, プラミット
(72)【発明者】
【氏名】チアン, シーシー
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0298257(US,A1)
【文献】米国特許第07629227(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0099342(US,A1)
【文献】特表2013-507003(JP,A)
【文献】特表2013-513235(JP,A)
【文献】特開2013-239752(JP,A)
【文献】国際公開第2016/137606(WO,A1)
【文献】特開平08-222554(JP,A)
【文献】特開2016-096331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/318
H01L 21/316
H01L 21/314
C23C 16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理方法において、
基板表面から底面までの深さにわたって延びる少なくとも1つの特徴を有する基板表面を提供することであって、前記少なくとも1つの特徴が第1の側壁及び第2の側壁によって画成された幅を有する、
基板表面を提供すること;
ポリシリコン前駆体を含むプラズマ化学気相堆積(PECVD)によって、前記基板表面、並びに前記少なくとも1つの特徴の前記第1の側壁、第2の側壁、及び底面に流動性膜を形成することであって、前記流動性膜が実質的に継ぎ目を形成することなく前記特徴を埋める、
流動性膜を形成すること;
前記流動性膜をアニール反応物に曝露することによって、前記流動性膜をアニーリングしてアニール膜を形成すること;及び
前記アニール膜を硬化して前記膜を固化し、実質的に継ぎ目のない間隙充填を形成すること
を含
み、
前記アニール反応物は、前記流動性膜の形成に用いられる反応物とは異なるシリコン種を含む、
処理方法。
【請求項2】
プラズマがプラズマガスを含む、請求項
1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記ポリシリコン前駆体が、ジシラン、トリシラン、テトラシラン、ネオペンタシラン、又はシクロヘキサシランのうちの1つ以上を含む、請求項
2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記プラズマガスが、He、Ar、Kr、H
2、N
2、O
2、O
3、又はNH
3のうちの1つ以上を含む、請求項
2に記載の処理方法。
【請求項5】
前記プラズマ
が300W未満のパワーを有する、請求項
4に記載の処理方法。
【請求項6】
前記プラズマが直接プラズマである、請求項
4に記載の処理方法。
【請求項7】
前記流動性膜の形成
が100℃未満の温度で行われる、請求項1に記載の処理方法。
【請求項8】
前記アニール膜の硬化がUV硬化を含む、請求項1に記載の処理方法。
【請求項9】
前記UV硬化
が10℃か
ら550℃の範囲の温度で行われる、請求項
8に記載の処理方法。
【請求項10】
前記アニール膜を硬化させることが、前記アニール膜
をPECVDプラズマとは別のプラズマ及び/又は電子ビームに曝露することを含む、請求項1に記載の処理方法。
【請求項11】
前記流動性膜が、SiN、SiO、SiC、SiOC、SiON、SiCONのうちの1つ以上を含む、請求項
2に記載の処理方法。
【請求項12】
前記PECVDが、プロピレン、アセチレン、アンモニア、酸素、オゾン、又は水のうちの1つ以上をさらに含む、請求項
11に記載の処理方法。
【請求項13】
前記流動性膜をアニーリングすることが、前記流動性膜をアニール温度及びアニール圧力でアニール反応物に曝露することを含む、請求項1に記載の処理方法。
【請求項14】
前記アニール反応物がシラン又はジシランのうちの1つ以上を含む、請求項
13に記載の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、薄膜を堆積する方法に関する。特に、本開示は、低水素含有量の間隙充填膜を形成するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロエレクト二クスデバイスの製造では、多くの用途で、ボイドを発生させることなく、10:1を超えるアスペクト比(AR)を有する狭いトレンチを埋めることが必要とされる。用途の1つはシャロートレンチアイソレーション(STI)のためのものである。この用途では、膜が、トレンチ全体を通じて高品質(例えば、2を下回る湿式エッチング速度比を有する)、かつ漏れが非常に少ないことを必要とする。構造の寸法が低下し、アスペクト比が増加すると、堆積されたままの流動性膜の後硬化方法が困難になる。結果的に、充填されたトレンチ全体にわたり、さまざまな組成の膜が生じる。
【0003】
アモルファスシリコンは、他の膜(例えば、酸化シリコン、アモルファスカーボン等)に対して良好なエッチング選択性をもたらすことができることから、犠牲層として半導体製造プロセスに広く使用されている。半導体製造における限界寸法(CD)の低下に伴い、高アスペクト比の間隙を埋めることは、高度なウエハ製造においてますます敏感になっている。現在の金属置換ゲートプロセスには、炉のポリシリコン又はアモルファスシリコンのダミーゲートが含まれる。プロセスの性質に起因して、Siダミーゲートの中央に継ぎ目が形成される。この継ぎ目は、後処理中に開いて、構造の破損を引き起こしてしまう可能性がある。
【0004】
継ぎ目を形成することなくトレンチを埋めるために、流動性膜を堆積させることができる。堆積されたままの流動性膜は、フィルムの密度と品質に影響を与える、高い水素組成を有する。さまざまな硬化方法により、水素組成を低下させ、膜品質を改善することができる;しかしながら、硬化させた膜にボイドが発生する。したがって、継ぎ目のない膜成長をもたらすことができる高アスペクト比構造を間隙充填する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示の1つ以上の実施態様は、少なくとも1つの特徴を有する基板表面を提供することを含む、処理方法を対象とする。少なくとも1つの特徴は、基板表面から底面までの深さにわたって延びる。少なくとも1つの特徴は、第1の側壁及び第2の側壁によって画成される幅を有する。基板表面、並びに少なくとも1つの特徴の第1の側壁、第2の側壁、及び底面の上に流動性膜が形成される。流動性膜は、実質的に継ぎ目を形成することなく、特徴を埋める。流動性膜はアニーリングされて、アニール膜を形成する。アニール膜は硬化されて膜が固化し、実質的に継ぎ目のない間隙充填を形成する。
【0006】
本開示の追加の実施態様は、少なくとも1つの特徴を有する基板表面を提供することを含む、処理方法を対象とする。少なくとも1つの特徴は、基板表面から底面までの深さにわたって延びる。少なくとも1つの特徴は、第1の側壁及び第2の側壁によって画成される幅、並びに約25:1以上のアスペクト比を有する。流動性のシリコン膜が、PECVDによって、基板表面、並びに少なくとも1つの特徴の第1の側壁、第2の側壁、及び底面の上に形成される。流動性膜は、実質的に継ぎ目を形成することなく、特徴を埋める。流動性膜は、後処理プロセスで処理されてアニール膜を形成する。アニール膜は硬化されて膜が固化し、実質的に継ぎ目のない間隙充填を形成する。
【0007】
本開示のさらなる実施態様は、少なくとも1つの特徴を有する基板表面を提供することを含む処理方法を対象とし、該少なくとも1つの特徴は基板表面から底面までの深さにわたって延びる。少なくとも1つの特徴は、第1の側壁及び第2の側壁によって画成される幅、並びに約25:1以上のアスペクト比を有する。流動性のシリコン膜は、PECVDプロセスによって、基板表面、並びに少なくとも1つの特徴の第1の側壁、第2の側壁、及び底面の上に形成される。流動性膜は、実質的に継ぎ目を形成することなく、特徴を埋める。PECVDプロセスは、ポリシリコン前駆体と、プラズマガスを含むプラズマとを含む。ポリシリコン前駆体は、ジシラン、トリシラン、テトラシラン、ネオペンタシラン、又はシクロヘキサシランのうちの1つ以上を含む。プラズマガスは、He、Ar、Kr、H2、N2、O2、O3又はNH3のうちの1つ以上を含む。プラズマは約200W以下のパワーを有する。PECVDプロセスは約100℃以下の温度で行われる。流動性膜は、アニール温度及びアニール圧力でアニール反応物に曝露することを含む、後処理プロセスに曝露される。アニール反応物は、シラン又はジシランのうちの1つ以上を含む。アニール温度は約100℃から約400℃の範囲にある。アニール圧力は約100Tから約500Tの範囲にある。アニール膜はUV硬化に曝露されて膜が固化し、実質的に継ぎ目のない間隙充填を形成する。
【0008】
本発明の上記の特徴を詳細に理解できるように、先に簡単に要約した本発明のより具体的な説明は、その一部が添付の図面に示されている実施態様を参照することにより、得ることができる。しかしながら、添付の図面は、本発明の典型的な実施態様のみを示しており、したがって、本発明は他の同等に有効な実施態様を認めうることから、その範囲を限定するものとみなされるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の1つ以上の実施態様による基板特徴の断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の幾つかの例示的な実施態様について説明する前に、本発明は、以下の説明に記載されている構造物又はプロセス工程の詳細に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施態様が可能であり、さまざまな方法で実施又は実行することができる。
【0011】
本書で用いられる「基板」とは、製造プロセス中にその上に膜処理が行われる、任意の基板又は基板上に形成された材料表面のことを指す。例えば、処理を行うことができる基板表面としては、用途に応じて、シリコン、酸化シリコン、ストレインドシリコン、シリコンオンインシュレータ(SOI)、炭素がドープされた酸化シリコン、アモルファスシリコン、ドープされたシリコン、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ガラス、サファイアなどの材料、並びに、金属、金属窒化物、金属合金、及び他の導電材料など、他の任意の材料が挙げられる。基板には半導体ウエハが含まれるが、これに限定されない。基板は、基板表面を研磨、エッチング、還元、酸化、ヒドロキシル化、アニール、UV硬化、電子ビーム硬化、及び/又はベーキングするために前処理プロセスに曝露されてもよい。基板自体の表面上での直接的な膜処理に加えて、本発明では、開示された膜処理工程のいずれかを、以下により詳細に開示されるように基板上に形成された下層にも行うことができ、「基板表面」という用語は、文脈が示すように、このような下層を含むことが意図されている。したがって、例えば、膜/層又は部分的な膜/層が基板表面上に堆積されている場合には、新たに堆積される膜/層の露出面が基板表面となる。
【0012】
本開示の実施態様は、小さい寸法を有する高アスペクト比(AR)構造の膜(例えば、アモルファスシリコン)を堆積させる方法を提供する。幾つかの実施態様は、クラスタツール環境で実行できる周期的な堆積処理プロセスを含む方法を有利に提供する。幾つかの実施態様は、小さい寸法を有する高ARトレンチを埋めるために、継ぎ目のない高品質のアモルファスシリコン膜を有利に提供する。
【0013】
本開示の1つ以上の実施態様は、20nm未満の限界寸法(CD)を有する高アスペクト比構造(例えば、AR>8:1)を埋めることができる、流動性のアモルファスシリコン膜を堆積するプロセスを対象とする。膜は、低温(例えば、<100℃)でプラズマ化学気相堆積(PECVD)によって、ポリシラン前駆体を使用して堆積することができる。処理のためのプラズマパワーが約200W未満又は300W未満に維持されると、反応速度が低下し、ヘイズのない膜を得ることができる。チャンバ本体温度は、熱交換器の温度を制御することによっても制御することができる。ジシラン、トリシラン、テトラシラン、ネオペンタシラン、シクロヘキサシランは、使用することができる典型的なポリシランである。膜を安定させるために、UV硬化などの堆積後処理を行うことができる。プロセスの実施態様は、炭化水素源及び窒素源を流動性Siプロセスに追加することにより、流動性のSiC膜及びSiCN膜の調製を可能にする。さらに、適切な金属前駆体を流動性シリコンプロセスに追加することにより、流動性金属シリサイド(WSi、TaSi、NiSi)を堆積させることもできる。
【0014】
図1は、特徴110を有する基板100の部分断面図を示している。図面は例示目的で単一の特徴を有する基板を示しているが、当業者は、1つより多くの特徴が存在しうることを理解するであろう。特徴110の形状は、限定はしないが、トレンチ及び円筒形のビアを含む、任意の適切な形状でありうる。この関連で使用する場合、「特徴」という用語は、あらゆる意図的な表面の不規則性を意味する。特徴の適切な例には、限定はしないが、頂部、2つの側壁、及び底部を有するトレンチ、並びに頂部及び2つの側壁を有するピークが含まれる。特徴は、任意の適切なアスペクト比(特徴の幅に対する特徴の深さの比)を有しうる。幾つかの実施態様では、アスペクト比は、約5:1以上、10:1以上、15:1以上、20:1以上、25:1以上、30:1以上、35:1以上、又は40:1以上である。
【0015】
基板100は基板表面120を有する。少なくとも1つの特徴110は、基板表面120に開口部を形成する。特徴110は、基板表面120から底面112へと深さDまで延びる。特徴110は、該特徴110の幅Wを画成する第1の側壁114及び第2の側壁116を有する。側壁と底部によって形成される開口領域は、間隙とも称される。
【0016】
本開示の1つ以上の実施態様は、少なくとも1つの特徴を有する基板表面が提供される処理方法を対象とする。これに関連して用いられる「提供される」という用語は、さらなる処理のために、基板がある位置又は環境に置かれることを意味する。
【0017】
図2に示されるように、流動性膜150は、基板表面120、並びに少なくとも1つの特徴110の第1の側壁114、第2の側壁116、及び底面112上に形成される。流動性膜150は、実質的に継ぎ目が形成されないように、少なくとも1つの特徴110を埋める。継ぎ目は、特徴110の側壁間の特徴に形成される間隙であるが、必ずしも側壁の中央に形成されるわけではない。これに関連して、「実質的に継ぎ目がない」という用語は、側壁間の膜に形成された間隙が側壁の断面積の約1%未満であることを意味する。
【0018】
流動性膜150は、任意の適切なプロセスによって形成することができる。幾つかの実施態様では、流動性膜の形成は、プラズマ化学気相堆積(PECVD)によって行われる。言い換えれば、流動性膜は、プラズマ化学気相堆積プロセスによって堆積させることができる。
【0019】
幾つかの実施態様のPECVDプロセスは、基板表面を反応性ガスに曝露することを含む。反応性ガスは、1つ以上の種の混合物を含みうる。例えば、反応性ガスは、シリコン前駆体とプラズマガスとを含みうる。プラズマガスは、点火してプラズマを形成することができる、及び/又は前駆体のキャリア又は希釈剤として作用することができる、任意の適切なガスでありうる。
【0020】
幾つかの実施態様では、シリコン前駆体は、ポリシリコン種とも呼ばれる高次のシランを含み、ポリシリコン前駆体と称される。幾つかの実施態様のポリシリコン前駆体は、ジシラン、トリシラン、テトラシラン、ネオペンタシラン、及び/又はシクロヘキサシランのうちの1つ以上を含む。1つ以上の実施態様では、ポリシリコン前駆体はテトラシランを含む。幾つかの実施態様では、ポリシリコン前駆体は、本質的にテトラシランからなる。これに関連して用いられる「本質的に~からなる」という用語は、モル基準で、反応性ガスのシリコン種の約95%以上が指定された種で構成されることを意味する。例えば、本質的にテトラシランからなるポリシリコン前駆体は、モル基準で、反応性ガスのシリコン種の約95%以上がテトラシランであることを意味する。
【0021】
幾つかの実施態様では、プラズマガスは、He、Ar、H2、Kr、N2、O2、O3、又はNH3のうちの1つ以上を含む。幾つかの実施態様のプラズマガスは、反応性ガス中の反応性種(例えば、ポリシリコン種)の希釈剤又はキャリアガスとして用いられる。
【0022】
プラズマは、処理チャンバ内で生成又は点火することができる(例えば、直接プラズマ)、あるいは、処理チャンバの外部で生成し、処理チャンバに流入させることができる(例えば、遠隔プラズマ)。プラズマパワーは、ポリシリコン種のシランへの還元を防ぐため、及び/又は膜におけるヘイズ形成を最小化するか防ぐために、十分に低いパワーに維持されうる。幾つかの実施態様では、プラズマパワーは約300W以下である。1つ以上の実施態様では、プラズマパワーは、約250W以下、200W以下、150W以下、100W以下、50W以下、又は25W以下である。幾つかの実施態様では、プラズマパワーは、約10Wから約200Wの範囲、又は約25Wから約175Wの範囲、又は約50Wから約150Wの範囲である。
【0023】
流動性膜150は、任意の適切な温度で形成することができる。幾つかの実施態様では、流動性膜150は、約-100℃から約50℃の範囲、又は約-75℃から約40℃の範囲、又は約-50℃から約25℃の範囲、又は約-25℃から約0℃の範囲の温度で形成される。温度は、形成されるデバイスのサーマルバジェットを維持するために、低く保たれうる。幾つかの実施態様では、流動性膜の形成は、約50℃未満、40℃未満、30℃未満、20℃未満、10℃未満、0℃未満、-10℃未満、-20℃未満、-30℃未満、-40℃未満、-50℃未満、-60℃未満、-70℃未満、-80℃未満、又は-90℃未満の温度で行われる。
【0024】
流動性膜150は、任意の適切な圧力で形成することができる。幾つかの実施態様では、流動性膜150の形成に用いられる圧力は、約0.5Tから約50Tの範囲、又は約0.75Tから約25Tの範囲、又は約1Tから約10Tの範囲、又は約2Tから約8Tの範囲、又は約3Tから約6Tの範囲である。
【0025】
流動性膜の組成は、反応性ガスの組成を変更することによって調整することができる。幾つかの実施態様では、流動性膜は、SiN、SiO、SiC、SiOC、SiON、SiCONのうちの1つ以上を含む。酸素含有膜を形成するために、反応性ガスは、例えば、酸素、オゾン、又は水のうちの1つ以上を含みうる。窒素含有膜を形成するために、反応性ガスは、例えば、アンモニア、ヒドラジン、NO2、又はN2のうちの1つ以上を含みうる。炭素含有膜を形成するために、反応性ガスは、例えば、プロピレン及びアセチレンのうちの1つ以上を含みうる。当業者は、流動性膜の組成を変更するために、反応性ガス混合物に他の種又はそれらの組合せを含めることができることを理解するであろう。
【0026】
幾つかの実施態様では、流動性膜は、金属シリサイドを含む。反応性ガス混合物は、例えば、タングステン、タンタル、又はニッケルのうちの1つ以上を含む前駆体を含みうる。流動性膜の組成を変更するために、他の金属前駆体を含めてもよい。
【0027】
図3を参照すると、流動性膜150の形成後、最終的な間隙充填膜におけるボイドの形成を防ぐために、該流動性膜150を反応性アニールプロセスによって処理することができる。流動性膜150は、アニーリング条件下で反応性ガスに曝露されて、アニール膜155を形成しうる。反応性アニールによる流動性膜150の処理は、後処理と称することもできる。この態様で用いられる場合、「後処理」という用語は、流動性膜150の形成後に行われるプロセスを指す。流動性膜150の組成がさまざまな反応物を使用して調整される場合、流動性膜の処理により、流動性膜の組成又は流動性膜中の原子の相対的なパーセンテージに変化が生じる。例えば、流動性膜150が原子基準で80%のSi、20%のNである場合、処理によって、原子基準で50%のSi、50%のNの膜を結果的にもたらすことができる。幾つかの実施態様では、反応性アニールプロセスへの曝露は、アニーリング前の流動性膜150よりも水素含量が低い膜を結果的に生じる。幾つかの実施態様では、水素含量は、流動性膜150中の含量に対して、約30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、又は90%以上低下する。
【0028】
反応性アニールプロセスは、適切なアニール温度及びアニール圧力でアニール反応物に基板を曝露することを含む。幾つかの実施態様のアニール反応物は、シリコン化合物を含む。1つ以上の実施態様では、アニール反応物は、シラン、ジシラン、トリシラン、又はより高次のシラン(すなわち、4つ以上のシリコン原子を有する)のうちの1つ以上を含む。幾つかの実施態様では、アニール反応物は、希釈剤又はキャリアガスとともに共流される。例えば、アニール反応物は、アルゴンキャリアガス中にシランを含みうる。幾つかの実施態様では、キャリアガスもまた反応性であり、ボイドを形成することなく流動性膜150を固化させるのに役立つ。幾つかの実施態様では、アニール反応物は、流動性膜150の形成に用いられる前駆体と同じシリコン種を含む。幾つかの実施態様では、アニール反応物は、流動性膜150の形成に用いられる反応物とは異なる種を含む。
【0029】
幾つかの実施態様の反応性アニールは、プラズマ無しで行われる。幾つかの実施態様では、反応性アニールプロセス中にプラズマを発生しうる。プラズマは、アニール反応物、又はアニール反応物とは異なる後処理プラズマ種を使用して形成することができる。例えば、アニール反応物は、プラズマの点火に用いられる希釈剤又はキャリアガス(例えばアルゴン)を用いて流すことができる。アニール反応物は、処理チャンバに連続的に流入させてもよく、あるいは処理チャンバ内へとパルスしてもよい。
【0030】
幾つかの実施態様の反応性アニール中のアニール温度は、約100℃から約500℃の範囲、又は約100℃から約400℃の範囲、又は約125℃から約375℃の範囲、又は約150℃から約350℃の範囲、又は約175℃から約325℃の範囲、又は約200℃から約300℃の範囲である。幾つかの実施態様では、アニール温度は、約100℃以上、150℃以上、200℃以上、250℃以上、300℃以上、350℃以上、400℃以上、450℃以上、又は500℃以上である。
【0031】
反応性アニールプロセス中のアニール圧力は、約100Tから約500Tの範囲、又は約150Tから約450Tの範囲、200Tから約400Tでありうる。幾つかの実施態様では、反応性アニール中のアニール圧力は、約50T以上、100T以上、150T以上、200T以上、250T以上、300T以上、又は350T以上である。
【0032】
流動性膜150又はアニール膜155の形成後、膜を硬化させて流動性膜150又はアニール膜155を固化し、実質的に継ぎ目のない間隙充填を形成する。幾つかの実施態様では、流動性膜150又はアニール膜155は、膜をUV硬化プロセスに曝露することによって硬化される。UV硬化プロセスは、約10℃から約550℃の範囲の温度で行うことができる。UV硬化プロセスは、流動性膜150又はアニール膜155を十分に固化させるのに必要な任意の適切な時間枠で行うことができる。幾つかの実施態様では、UV硬化は、約10分以下、9分以下、8分以下、7分以下、6分以下、5分以下、4分以下、3分以下、2分以下、又は1分以下で行われる。
【0033】
幾つかの実施態様では、流動性膜150又はアニール膜155を硬化することは、プラズマ又は電子ビームへの曝露を含む。膜を硬化するためのプラズマ曝露は、PECVDプラズマ又は後処理プラズマとは別のプラズマを含む。プラズマ種及び処理チャンバは同じであっても異なっていてもよく、プラズマ硬化は、PECVDプロセス又は後処理プラズマとは異なる工程でありうる。幾つかの実施態様では、後処理プラズマにより、流動性膜150を同時に処理及び硬化して、硬化したアニール膜155を形成する。
【0034】
本開示の幾つかの実施態様は、水素含有量が低い、硬化した間隙充填膜を提供する。幾つかの実施態様では、膜の硬化後、間隙充填膜は、約10原子パーセント以下の水素含量を有する。幾つかの実施態様では、硬化した膜は、約5原子パーセント以下、4原子パーセント、3原子パーセント、2原子パーセント、又は1原子パーセント以下の水素含量を有する。
【0035】
1つ以上の実施態様によれば、基板は、層の形成前及び/又は形成後に処理に供される。この処理は、同じチャンバ内、又は1つ以上の別々の処理チャンバ内で行うことができる。幾つかの実施態様では、基板は、さらなる処理のために、第1のチャンバから別個の第2のチャンバへと移される。基板は、第1のチャンバから別個の処理チャンバへと直接移されてもよく、あるいは、第1のチャンバから1つ以上の移送チャンバへと移され、その後、別個の処理チャンバへと移されてもよい。したがって、処理装置は、移送ステーションに通じている複数のチャンバを備えうる。この種の装置は、「クラスタツール」又は「クラスタシステム」などと称されうる。
【0036】
概して、クラスタツールは、基板の中心検出と方向付け、ガス抜き、アニーリング、堆積、及び/又はエッチングを含むさまざまな機能を実行する、複数のチャンバを備えたモジュラーシステムである。1つ以上の実施態様によれば、クラスタツールは、少なくとも第1のチャンバと中央移送チャンバを含む。中央移送チャンバは、処理チャンバとロードロックチャンバとの間で基板を往復させることができるロボットを収容していてもよい。移送チャンバは、通常、減圧条件に維持され、基板をあるチャンバから別のチャンバへ、及び/又はクラスタツールの前端に位置するロードロックチャンバへと往復させる中間段階を提供する。本発明に適合させることができる2つのよく知られたクラスタツールは、Centura(登録商標)及びEndura(登録商標)であり、両方とも、米国カリフォルニア州サンタクララ所在のApplied Materials,Inc.から入手可能である。しかしながら、チャンバの正確な配置及び組合せは、本明細書に記載されるプロセスの特定の工程を実行する目的で変更することができる。使用することができる他の処理チャンバとしては、限定はしないが、周期的層堆積(CLD)、原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVD)、物理的気相堆積(PVD)、エッチング、予洗浄、化学洗浄、RTPなどの熱処理、プラズマ窒化、ガス抜き、配向、ヒドロキシル化、及び他の基板処理が挙げられる。クラスタツールのチャンバ内でプロセスを実行することにより、大気中の不純物による基板の表面汚染を、後続の膜を堆積する前に酸化することなく回避することができる。
【0037】
1つ以上の実施態様によれば、基板は連続的減圧又は「ロードロック」状態にあり、あるチャンバから次のチャンバへと移動する際に周囲空気に曝露されない。したがって、移送チャンバは減圧下にあり、減圧下で「ポンプダウン」される。処理チャンバ又は移送チャンバ内には、不活性ガスが存在していてもよい。幾つかの実施態様では、不活性ガスは、反応物の一部又は全部を除去するために、パージガスとして使用される。1つ以上の実施態様によれば、パージガスは、反応物が堆積チャンバから移送チャンバ及び/又は追加の処理チャンバに移動するのを防ぐために、堆積チャンバの出口に注入される。したがって、不活性ガスの流れは、チャンバの出口にカーテンを形成する。
【0038】
基板は、単一基板堆積チャンバ内で処理することができ、そこで、別の基板を処理する前に、単一の基板がロード、処理、及びアンロードされる。基板は、複数の基板が個々にチャンバの第1の部分にロードされ、チャンバ内を移動し、チャンバの第2の部分からアンロードされるコンベアシステムと同様に、連続的な態様で処理することもできる。チャンバ及び関連するコンベヤシステムの形状は、直線経路又は曲線経路を形成することができる。加えて、処理チャンバはカルーセルであってもよく、そこで、複数の基板が、中心軸の周りを移動し、カルーセル経路全体を通じて堆積、エッチング、アニーリング、洗浄などのプロセスに晒される。
【0039】
処理中、基板を加熱又は冷却してもよい。このような加熱又は冷却は、限定はしないが、基板支持体の温度を変化させること、及び加熱又は冷却されたガスを基板表面に流すことを含む、任意の適切な手段によって達成することができる。幾つかの実施態様では、基板支持体は、基板温度を伝導的に変化させるように制御することができる、ヒータ/クーラを含む。1つ以上の実施形態では、使用するガス(反応性ガス又は不活性ガス)は、基板温度を局所的に変化させるために加熱又は冷却される。幾つかの実施態様では、ヒータ/クーラは、基板温度を対流によって変化させるために、チャンバ内に基板表面に隣接して配置される。
【0040】
基板はまた、処理中に静止していても回転していてもよい。回転する基板は、連続的に、又は個別の工程で、回転させることができる。例えば、基板を処理の間中ずっと回転させていてもよいし、あるいは、種々の反応性ガス又はパージガスへの曝露の合間に、基板を少しずつ回転させることもできる。処理中に基板を回転させると(連続的又は段階的のいずれか)、例えば、ガス流の幾何学的形状の局所的なばらつきの影響を最小限に抑えることにより、より均一な堆積又はエッチングの実現に役立ちうる。
【0041】
本明細書を通して「一実施態様」、「ある特定の実施態様」、「1つ以上の実施態様」、又は「ある実施態様」への言及は、実施態様に関連して記載される特定の特徴、構造、材料、又は特性が本発明の少なくとも1つの実施態様に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体のさまざまな箇所での「1つ以上の実施態様」、「ある特定の実施態様」、「一実施態様」、又は「ある実施態様」などの文言の表出は、必ずしも本発明の同一の実施態様を指すものではない。さらには、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施態様において、任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0042】
本明細書では発明は特定の実施態様を参照して説明されているが、これらの実施態様は本発明の原理及び用途の単なる例示であることが理解されるべきである。本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明の方法及び装置にさまざまな修正及び変形がなされうることは、当業者にとって明らかであろう。よって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物の範囲内にある修正及び変形を含むことが意図されている。