(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20220808BHJP
B23K 26/364 20140101ALI20220808BHJP
【FI】
H01L21/78 B
H01L21/78 C
B23K26/364
(21)【出願番号】P 2017178723
(22)【出願日】2017-09-19
【審査請求日】2020-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】伴 祐人
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-003274(JP,A)
【文献】特開2006-052279(JP,A)
【文献】特開2003-327666(JP,A)
【文献】特開2015-023078(JP,A)
【文献】特開2015-028980(JP,A)
【文献】特開2016-197702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/364
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に交差して形成された複数の分割予定ラインによって区画されたチップ領域にそれぞれデバイスが形成されたデバイスウェーハの表面が封止材で封止され、該封止材の該チップ領域にそれぞれ複数のバンプが形成されたウェーハの加工方法であって、
該デバイスウェーハの表面側から可視光撮像手段によって該封止材を透過して該デバイスウェーハの表面側を撮像してアライメントマークを検出し、該アライメントマークに基づいてレーザー加工すべき該分割予定ラインを検出するアライメント工程と、
該アライメント工程を実施した後、該デバイスウェーハの表面側から該分割予定ラインに沿って該封止材及び該デバイスウェーハに対して吸収性を有する波長のレーザービームを照射して、アブレーション加工により表面が該封止材によって封止された個々のデバイスチップに分割する分割工程と、を備え、
該アライメント工程は、該可視光撮像手段によって撮像する領域に斜光手段によって斜めから光を照射しながら実施し、
該封止材は、カーボンブラックを含み、
該カーボンブラックの含有率は、0.1質量%以上0.2質量%以下で
あり、
該アライメント工程では、該可視光撮像手段の垂直照明と該斜光手段からの該光とを、該可視光撮像手段によって撮像する領域に照射することを特徴とするウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、WL-CSPウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
WL-CSP(Wafer-level Chip Size Package)ウェーハとは、ウェーハの状態で再配線層や電極(金属ポスト)を形成後、表面側を樹脂封止し、切削ブレード等で各パッケージに分割する技術であり、ウェーハを個片化したパッケージの大きさが半導体デバイスチップの大きさになるため、小型化及び軽量化の観点からも広く採用されている。
【0003】
WL-CSPウェーハの製造プロセスでは、複数のデバイスが形成されたデバイスウェーハのデバイス面側に再配線層を形成し、更に再配線層を介してデバイス中の電極に接続する金属ポストを形成した後、金属ポスト及びデバイスを樹脂で封止する。
【0004】
次いで、封止材を薄化するとともに金属ポストを封止材表面に露出させた後、金属ポストの端面に電極バンプと呼ばれる外部端子を形成する。その後、切削装置等でWL-CSPウェーハを切削して個々のCSPへと分割する。
【0005】
半導体デバイスを衝撃や湿気等から保護するために、封止材で封止することが重要である。通常、封止材として、エポキシ樹脂中にSiCからなるフィラーを混入した封止材を使用することで、封止材の熱膨張率を半導体デバイスチップの熱膨張率に近づけ、熱膨張率の差によって生じる加熱時のパッケージの破損を防止している。
【0006】
WL-CSPウェーハは、一般的に切削装置を使用して個々のCSPに分割される。この場合、WL-CSPウェーハは、分割予定ラインを検出するために利用するデバイスが樹脂で覆われているため、表面側からデバイスのターゲットパターンを検出することができない。
【0007】
その為、WL-CSPウェーハの樹脂上に形成された電極バンプをターゲットにして分割予定ラインを割り出したり、樹脂の上面にアライメント用のターゲットを印刷する等して分割予定ラインと切削ブレードとのアライメントをおこなっていた。
【0008】
しかし、電極バンプや樹脂上に印刷されたターゲットはデバイスのように高精度には形成されていないため、アライメント用のターゲットとしては精度が低いという問題がある。従って、電極バンプや印刷されたターゲットに基づいて分割予定ラインを割り出した場合、分割予定ラインから外れてデバイス部分を切削してしまうという恐れがあった。
【0009】
そこで、例えば特開2013-74021号公報では、ウェーハの外周で露出するデバイスウェーハのパターンを基にアライメントする方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2013-074021号公報
【文献】特開2016-015438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、一般にウェーハの外周ではデバイス精度が悪く、ウェーハの外周で露出するパターンを基にアライメントを実施すると、分割予定ラインとは外れた位置でウェーハを分割してしまう恐れがある上、ウェーハによってはデバイスウェーハのパターンが外周で露出していないものもある。
【0012】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ウェーハ表面に被覆されたカーボンブラックを含む封止材を通してアライメント工程を実施可能なウェーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によると、表面に交差して形成された複数の分割予定ラインによって区画されたチップ領域にそれぞれデバイスが形成されたデバイスウェーハの表面が封止材で封止され、該封止材の該チップ領域にそれぞれ複数のバンプが形成されたウェーハの加工方法であって、該デバイスウェーハの表面側から可視光撮像手段によって該封止材を透過して該デバイスウェーハの表面側を撮像してアライメントマークを検出し、該アライメントマークに基づいてレーザー加工すべき該分割予定ラインを検出するアライメント工程と、該アライメント工程を実施した後、該デバイスウェーハの表面側から該分割予定ラインに沿って該封止材及び該デバイスウェーハに対して吸収性を有する波長のレーザービームを照射して、アブレーション加工により表面が該封止材によって封止された個々のデバイスチップに分割する分割工程と、を備え、該アライメント工程は、該可視光撮像手段によって撮像する領域に斜光手段によって斜めから光を照射しながら実施し、該封止材は、カーボンブラックを含み、該カーボンブラックの含有率は、0.1質量%以上0.2質量%以下であり、該アライメント工程では、該可視光撮像手段の垂直照明と該斜光手段からの該光とを、該可視光撮像手段によって撮像する領域に照射することを特徴とするウェーハの加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明のウェーハの加工方法によると、斜光手段で斜めから光を照射しながら可視光撮像手段によって封止材を透過してデバイスウェーハに形成されたアライメントマークを検出し、アライメントマークに基づいてアライメントを実施できるようにしたので、従来のようにウェーハの表面の外周部分の封止材を除去することなく簡単にアライメント工程を実施できる。
【0015】
よって、ウェーハの表面側から封止材及びデバイスウェーハに対して吸収性を有する波長のレーザービームを分割予定ラインに沿って照射して、アブレーション加工によりウェーハを個々のデバイスチップに分割することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1(A)はWL-CSPウェーハの分解斜視図、
図1(B)はWL-CSPウェーハの斜視図である。
【
図3】WL-CSPウェーハを外周部が環状フレームに装着されたダイシングテープに貼着する様子を示す斜視図である。
【
図5】
図5(A)は分割工程を示す断面図、
図5(B)は分割工程を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1(A)を参照すると、WL-CSPウェーハ27の分解斜視図が示されている。
図1(B)はWL-CSPウェーハ27の斜視図である。
【0018】
図1(A)に示されているように、デバイスウェーハ11の表面11aには格子状に形成された複数の分割予定ライン(ストリート)13によって区画された各領域にLSI等のデバイス15が形成されている。
【0019】
デバイスウェーハ、(以下、単にウェーハと略称することがある)11は予め裏面11bが研削されて所定の厚さ(100~200μm程度)に薄化された後、
図2に示すように、デバイス15中の電極17に電気的に接続された複数の金属ポスト21を形成した後、ウェーハ11の表面11a側を金属ポスト21が埋設するように封止材23で封止する。
【0020】
封止材23としては、質量%でエポキシ樹脂又はエポキシ樹脂+フェノール樹脂10.3%、シリカフィラー8.53%、カーボンブラック0.1~0.2%、その他の成分4.2~4.3%を含む組成とした。その他の成分としては、例えば、金属水酸化物、三酸化アンチモン、二酸化ケイ素等を含む。
【0021】
このような組成の封止材23でウェーハ11の表面11aを被覆してウェーハ11の表面11aを封止すると、封止材23中にごく少量含まれているカーボンブラックにより封止材23が黒色となるため、封止材23を通してウェーハ11の表面11aを見ることは通常困難である。
【0022】
ここで封止材23中にカーボンブラックを混入させるのは、主にデバイス15の静電破壊を防止するためであり、現在のところカーボンブラックを含有しない封止材は市販されていない。
【0023】
他の実施形態として、デバイスウェーハ11の表面11a上に再配線層を形成した後、再配線層上にデバイス15中の電極17に電気的に接続された金属ポスト21を形成するようにしても良い。
【0024】
次いで、単結晶ダイアモンドからなるバイト切削工具を有する平面切削装置(サーフェスプレイナー)やグラインダーと呼ばれる研削装置を使用して封止材23を薄化する。封止材23を薄化した後、例えばプラズマエッチングにより金属ポスト21の端面を露出させる。
【0025】
次いで、露出した金属ポスト21の端面によく知られた方法によりハンダ等の金属バンプ25を形成して、WL-CSPウェーハ27が完成する。本実施形態のWL-CSPウェーハ27では、封止材23の厚さは100μm程度である。
【0026】
WL-CSPウェーハ27をレーザー加工装置で加工するのに当たり、
図3に示すように、好ましくは、WL-CSPウェーハ27を外周部が環状フレームFに貼着された粘着テープとしてのダイシングテープTに貼着する。これにより、WL-CSPウェーハ27はダイシングテープTを介して環状フレームFに支持された状態となる。
【0027】
しかし、WL-CSPウェーハ27をレーザー加工装置で加工するのに当たり、環状フレームFを使用せずに、WL-CSPウェーハ27の裏面に粘着テープを貼着する形態でもよい。
【0028】
本発明のウェーハの加工方法では、まず、WL-CSPウェーハ27の表面側から可視光撮像手段によって封止材23を通してデバイスウェーハ11の表面11aを撮像し、デバイスウェーハ11の表面に形成されている少なくとも2つのターゲットパターン等のアライメントマークを検出し、これらのアライメントマークに基づいてレーザー加工すべき分割予定ライン13を検出するアライメント工程を実施する。
【0029】
このアライメント工程について、
図4を参照して詳細に説明する。アライメント工程を実施する前に、ウェーハ11の裏面11b側を外周部が環状フレームFに装着されたダイシングテープTに貼着する。
【0030】
アライメント工程では、
図4に示すように、ダイシングテープTを介してレーザー加工装置のチャックテーブル10でウェーハ11WL-CSPウェーハ27を吸引保持し、デバイスウェーハ11の表面11aを封止している封止材23を上方に露出させる。そして、クランプ12で環状フレームFをクランプして固定する。
【0031】
アライメント工程では、可視光撮像ユニット26のCCD等の撮像素子でWL-CSPウェーハ27の表面を撮像する。しかし、封止材23中にはシリカフィラー、カーボンブラック等の成分が含まれており、更に封止材23の表面には凹凸があるため、可視光撮像ユニット26の垂直照明では封止材23を透過してデバイスウェーハ11の表面11aを撮像しても、撮像画像がピンボケとなってしまい、ターゲットパターン等のアライメントマークを検出するのが困難である。
【0032】
そこで、本実施形態のアライメント工程では、可視光撮像ユニット26の垂直照明に加えて斜光手段28から撮像領域に斜めから光を照射し、撮像画像のピンボケを改善し、アライメントマークの検出を可能としている。
【0033】
斜光手段28から照射する光は白色光が好ましく、WL-CSPウェーハ27の表面に対する入射角は30°~60°の範囲内が好ましい。好ましくは、可視光撮像ユニット26は、露光時間等を調整できるエキスポージャーを備えている。
【0034】
次いで、これらのアライメントマークを結んだ直線が加工送り方向と平行となるようにチャックテーブル10をθ回転し、更にアライメントマークと分割予定ライン13の中心との距離だけ
図5に示すチャックテーブル10を加工送り方向X1と直交する方向に移動することにより、レーザー加工すべき分割予定ライン13を検出する。
【0035】
アライメント工程を実施した後、
図5(A)に示すように、WL-CSPウェーハ27の表面側から分割予定ライン13に沿ってレーザー加工装置のレーザーヘッド(集光器)16から封止材23及びデバイスウェーハ11に対して吸収性を有する波長(例えば,355nm)のレーザービームLBを照射して、アブレーション加工により、
図5(B)に示すようなレーザー加工溝29を形成し、WL-CSPウェーハ27を表面が封止材23で封止された個々のデバイスチップ(CSP)31に分割する。
【0036】
この分割工程を、第1の方向に伸長する分割予定ライン13に沿って次々と実施した後、チャックテーブル10を90°回転し、第1の方向に直交する第2の方向に伸長する分割予定ライン13に沿って次々と実施することにより、
図5(B)に示したように、WL-CSPウェーハ27を表面が封止材23によって封止された個々のCSP31に分割することができる。
【0037】
このようにして製造したデバイスチップ(CSP)31は、CSP31の表裏を反転してバンプ25をマザーボードの導電パッドに接続するフリップチップボンディングにより、マザーボードに実装することができる。
【符号の説明】
【0038】
11 デバイスウェーハ
13 分割予定ライン
15 デバイス
16 レーザーヘッド(集光器)
21 金属ポスト
23 封止材
25 バンプ
26 可視光撮像手段(可視光撮像ユニット)
27 WL-CSPウェーハ
28 斜光手段
31 デバイスチップ(CSP)