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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】被加工物の切削加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/02 20060101AFI20220808BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20220808BHJP
   B23D 5/02 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
B23Q11/02
B23Q11/00 N
B23D5/02
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018117135
(22)【出願日】2018-06-20
(65)【公開番号】P2019217599
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(72)【発明者】
【氏名】小池 和裕
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-036300(JP,A)
【文献】特開2015-223794(JP,A)
【文献】特開2013-035073(JP,A)
【文献】特開2011-109067(JP,A)
【文献】特開2018-060905(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0339555(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 1/00-25/06
B23D 1/00-13/06
B23D 37/00-43/08
B23D 67/00-81/00
B23Q 11/00-13/00
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤモンドからなる切刃を有するバイト工具が装着されたバイト切削装置において、表面に金属層を有する被加工物の該金属層を該バイト工具によってバイト切削する被加工物の切削加工方法であって、
該切刃に付着した切削屑を除去する除去部材を準備する準備工程と、
該被加工物の表面を該バイト工具でバイト切削するバイト切削工程と、
該バイト切削工程の前または後に、該バイト工具で該除去部材をバイト切削することにより該バイト工具の該切刃に付着した切削屑を除去する切削屑除去工程と、
を備え
該除去部材は、支持部材と、該支持部材の表面に形成された樹脂被膜と、を備えることを特徴とする被加工物の切削加工方法。
【請求項2】
ダイヤモンドからなる切刃を有するバイト工具が装着されたバイト切削装置において、表面に金属層を有する被加工物の該金属層を該バイト工具によってバイト切削する被加工物の切削加工方法であって、
該切刃に付着した切削屑を除去する除去部材を準備する準備工程と、
該被加工物の表面を該バイト工具でバイト切削するバイト切削工程と、を備え、
該バイト切削工程では、該被加工物の表面を該バイト工具でバイト切削すると同時に該除去部材を該バイト工具でバイト切削することにより該バイト工具の該切刃に付着した切削屑を除去し、
該除去部材は、支持部材と、該支持部材の表面に形成された樹脂被膜と、を備えることを特徴とする被加工物の切削加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイト工具が装着されたバイト切削装置において、表面に金属層を有する被加工物の該金属層を該バイト工具によってバイト切削する被加工物の切削加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に搭載されるデバイスチップでは、近年、所定の実装対象へ該デバイスチップを実装する際の実装面積の省面積化や、SoC(System-on-a-chip)における低消費電力化等の目的のため、複数のチップが積層されて1つのパッケージに収められている。従来、積層された複数のチップはワイヤボンディングにより互いに接続されていたが、結線のための領域が必要となる分パッケージを大きくしなければならなかった。
【0003】
そこで、例えば、チップとは別に基板を用意し、該基板に厚さ方向に沿う貫通電極を形成し、チップ間に該基板を配設して各チップ間を該貫通電極で接続する技術が開発されている。なお、チップ間に配設される基板はインターポーザと呼ばれ、該基板に形成された貫通電極により上下のチップを接続する技術はTSV(Through-silicon via)と呼ばれている。該基板には、例えば、シリコン基板が使用される。
【0004】
インターポーザとなるシリコン基板への貫通電極の形成は、例えば、以下に説明する方法で実施される(特許文献1及び特許文献2参照)。まず、エッチング等の方法によりシリコン基板の表面側に穴を形成し、電解めっき等の方法でシリコン基板の表面及び該穴の内部に金属層を形成する。
【0005】
その後、シリコン基板の表面に形成された金属層をCMP(Chemical Mechanical Polishing)等の方法により除去し、シリコン基板の裏面を研削して穴の底面を除去し、金属層を裏面側に露出させ、該金属層を貫通電極とする。その後、シリコン基板の表面及び裏面に露出された貫通電極に金属バンプを形成する。
【0006】
また、シリコン基板の表面に形成された金属層を除去する際、CMPを実施するのに代えて、ダイヤモンドからなる切刃を有するバイト工具を備えたバイト切削装置において、該金属層をバイト切削して除去する方法も開発されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-118645号公報
【文献】特開2013-55313号公報
【文献】特開2016-41459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
バイト切削によりシリコン基板の表面に形成された金属層を除去すると、金属を含む切削屑が発生し、バイト工具の切刃の表面に該切削屑が付着する。バイト工具を使用したバイト切削を繰り返すと切刃に付着する切削屑が多くなり、シリコン基板の表面に形成された金属層の剥離が観測されるようになった。該金属層が剥離するとシリコン基板や貫通電極に損傷が生じるため、バイト工具を取り外して交換、または、清掃等の作業が必要となるが、この場合、バイト切削装置を長期に停止しなければならず加工効率が低下する。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被加工物の表面に形成された金属層を剥離させることなく該金属層をバイト工具により除去できる被加工物の切削加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、ダイヤモンドからなる切刃を有するバイト工具が装着されたバイト切削装置において、表面に金属層を有する被加工物の該金属層を該バイト工具によってバイト切削する被加工物の切削加工方法であって、該切刃に付着した切削屑を除去する除去部材を準備する準備工程と、該被加工物の表面を該バイト工具でバイト切削するバイト切削工程と、該バイト切削工程の前または後に、該バイト工具で該除去部材をバイト切削することにより該バイト工具の該切刃に付着した切削屑を除去する切削屑除去工程と、を備え、該除去部材は、支持部材と、該支持部材の表面に形成された樹脂被膜と、を備えることを特徴とする被加工物の切削加工方法が提供される。
【0011】
また、本発明の他の一態様によれば、ダイヤモンドからなる切刃を有するバイト工具が装着されたバイト切削装置において、表面に金属層を有する被加工物の該金属層を該バイト工具によってバイト切削する被加工物の切削加工方法であって、該切刃に付着した切削屑を除去する除去部材を準備する準備工程と、該被加工物の表面を該バイト工具でバイト切削するバイト切削工程と、を備え、該バイト切削工程では、該被加工物の表面を該バイト工具でバイト切削すると同時に該除去部材を該バイト工具でバイト切削することにより該バイト工具の該切刃に付着した切削屑を除去し、該除去部材は、支持部材と、該支持部材の表面に形成された樹脂被膜と、を備えることを特徴とする被加工物の切削加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様においては、ダイヤモンドからなる切刃を有するバイト工具の該切刃に付着した切削屑を除去する除去部材を準備する。該除去部材を該バイト工具でバイト切削すると、該切刃に付着した切削屑が該除去部材に擦り付けられ、該切削屑が積極的に切刃から除去される。
【0015】
そのため、本発明の一態様によると、バイト切削装置が備えるバイト工具の切刃の表面を清浄な状態に保つことができるため、被加工物の表面に形成された金属層をバイト切削により除去する際に、金属層の剥離が生じにくくなる。このとき、バイト工具をバイト切削装置から取り外す必要がなく、バイト切削装置の停止時間は最小限に抑えられる。
【0016】
したがって、本発明により被加工物の表面に形成された金属層を剥離させることなく該金属層をバイト工具により除去できる被加工物の切削加工方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(A)は、金属層が形成された被加工物を模式的に示す斜視図であり、図1(B)は、除去部材を模式的に示す斜視図である。
図2】切削屑除去工程を模式的に示す一部断面側面図である。
図3】バイト切削工程の一例を模式的に示す上面図である。
図4図4(A)は、被加工物の切削加工方法の一例を示すフローチャートであり、図4(B)は、被加工物の切削加工方法の他の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。まず、本実施形態に係る被加工物の切削加工方法により加工される被加工物について説明する。図1(A)は、金属層3が形成された被加工物1を模式的に示す斜視図である。被加工物1は、例えば、積層された複数のデバイスチップ間を電気的に接続するインターポーザとなる円板状のシリコン基板である。該シリコン基板が所定の大きさに切り出されると、インターポーザが形成される。
【0019】
被加工物1には、予め貫通電極が埋め込まれるための穴(不図示)が形成される。該穴を形成する際には、貫通電極を所定の箇所に形成するために、例えば、レジスト膜を被加工物1の表面1aに塗布し、レジスト膜の所定の領域を露光して現像し、被加工物1の表面1aの該箇所を露出させる。次に、露出された該箇所にエッチング等の方法により所定の深さの穴を形成する。そして、レジスト膜を除去し、該穴を埋めるために金属層3を被加工物1の表面1aに形成する。
【0020】
その後、被加工物1の表面1a側でバイト切削を実施して該穴の外部において金属層3を除去する。そして、被加工物1の裏面1b側を研削して所定の厚さに薄化すると、該穴の底部が除去されて金属層3が裏面1b側に露出される。以上により、該穴に埋め込まれた該金属層3が貫通電極として機能するインターポーザが形成される。該被加工物1の表面1a側及び裏面1b側に露出された該貫通電極の露出面には、バンプが形成される。ここで、金属層3は、例えば、銅、アルミニウム、金等の金属からなる。
【0021】
なお、本実施形態に係る被加工物1の切削加工方法における被加工物1はこれに限定されない。例えば、被加工物1は、インターポーザとなるガラス基板でもよい。または、表面に複数のデバイスが形成され、積層された金属配線層を含み、バイト切削が実施されて平坦化されるデバイスウェーハでもよい。
【0022】
被加工物1の表面1a側をバイト切削する際には、バイト工具を備えるバイト切削装置が使用される。次に、バイト切削装置2について図2を用いて説明する。図2に、バイト切削装置2を模式的に示す。
【0023】
図2に示す通り、バイト切削装置2は、チャックテーブル4を備える。チャックテーブル4は、上面側に露出する多孔質部材と、該多孔質部材に接続された吸引源(不図示)と、を備え、該多孔質部材の上面は、被加工物1を保持する保持面となる。該チャックテーブル4は、該保持面に平行な面に沿った方向に移動可能である。
【0024】
バイト切削装置2は、被加工物1をバイト切削するバイト切削ユニット6をチャックテーブル4の上方に備える。バイト切削ユニット6は、チャックテーブル4の保持面に垂直な方向に沿ったスピンドル8と、該スピンドル8の下端に固定された円板状のホイールマウント10と、を備える。ホイールマウント10の下面には、外周部にバイト工具14が装着されたバイトホイール12が固定される。バイトホイール12に装着されたバイト工具14は、ダイヤモンドからなる切刃を下端に備える。
【0025】
スピンドル8をチャックテーブル4の保持面に垂直な方向の周りに回転させると、バイトホイール12に装着されたバイト工具14が回転する。このときのバイト工具14の回転軌道の半径が被加工物1の径よりも大きくなるように、バイトホイール12の所定の位置にバイト工具14が装着される。
【0026】
被加工物1の表面1aに形成された金属層3をバイト工具14でバイト切削すると、金属層3に由来する金属を含む切削屑が発生し、バイト工具14の切刃に付着する。切刃に多量の切削屑が付着したバイト工具14を使用してバイト切削を繰り返すと、被加工物1の表面1aからの金属層3の剥離が生じやすくなる。
【0027】
該金属層3が剥離すると、被加工物1や被加工物1に形成された穴に埋め込まれた金属層3(貫通電極)に損傷が生じる。そのため、バイト工具14を取り外して交換、または、清掃等の作業が必要となるが、この場合、バイト切削装置2を長期に停止しなければならず加工効率が低下する。そこで、本発明の一態様に係る被加工物の切削加工方法では、バイト工具14に付着した切削屑を除去する除去部材を使用して、該切削屑をバイト工具14から除去する。
【0028】
次に、該除去部材5について、図1(B)を用いて説明する。図1(B)は、除去部材5を模式的に示す斜視図である。除去部材5は、例えば、被加工物1と同程度の径を有する円板状の支持部材7と、該支持部材7の上面に形成された樹脂被膜9と、を有する。
【0029】
該支持部材7は、例えば、アクリル板、ポリカーボネート板、ガラス基板等の部材で形成される。または、円板状のシリコン基板でもよい。支持部材7は、表面及び裏面が平坦であり、表面に樹脂被膜9(樹脂部材)が形成される。
【0030】
樹脂被膜9は、例えば、フォトリソグラフィー工程に使用されるレジスト膜や、ポリオレフィン(PO)膜等であり、支持部材7の表面上に印刷やスピンコート等の方法により成膜される。すなわち、該支持部材7は、樹脂被膜9を支持する機能を有する。なお、樹脂被膜9は、ポリ塩化ビニルやポリエチレンテレフタレート(PET)等の材料で形成されてもよい。
【0031】
金属を含む切削屑が付着したバイト工具14から切削屑を除去する際は、除去部材5をバイト切削装置2のチャックテーブル4に保持させ、該バイト工具14で樹脂被膜9をバイト切削させる。すると、切刃に付着した切削屑が樹脂被膜9に擦り付けられ切刃から除去される。
【0032】
なお、樹脂被膜9が過剰に硬い場合、樹脂被膜9をバイト切削する際にバイト工具14に損傷が生じる恐れがある。その一方で、樹脂被膜9が過剰に柔らかい場合、樹脂被膜9のバイト切削を実施しても切刃に付着した切削屑が十分に除去されない。そこで、樹脂被膜9に使用されるレジスト膜や、PO膜には、適切な硬さとなる材料選択される。
【0033】
ポリ塩化ビニルやPETを樹脂被膜9(樹脂部材)として除去部材5に使用する場合、該樹脂被膜9(樹脂部材)の機械的な強度が十分であれば除去部材5は支持部材7を備えなくてもよい場合がある。その一方で、樹脂被膜9の機械的な強度が十分ではない場合、支持部材7が必要となる。すなわち、支持部材7は、該支持部材7よりも柔らかく機械的な強度が低い樹脂被膜9を支持する機能を有する。
【0034】
次に、本実施形態に係る被加工物の切削加工方法について説明する。図4(A)は、該切削加工方法の各工程の流れを示すフローチャートである。図4(A)に示す通り、該切削加工方法は、バイト工具14の切刃に付着した切削屑を除去する除去部材5を準備する準備工程S1と、被加工物1の表面1aをバイト工具14でバイト切削するバイト切削工程S2と、を含む。
【0035】
そして、該バイト切削工程S2の前または後に、バイト工具14で除去部材5をバイト切削することによりバイト工具14の該切刃に付着した切削屑を除去する切削屑除去工程S3を実施する。または、バイト切削工程S2において切刃に付着した切削屑を除去してもよく、この場合における該切削加工方法の各工程の流れを図4(B)に示す。以下、該切削加工方法の各工程について詳述する。
【0036】
まず、準備工程S1について説明する。準備工程S1では、除去部材5を準備する。準備工程S1では、バイト切削工程S2によりバイト切削される被加工物1の種別や、バイト切削の内容により好ましい種別の除去部材5が選択されてもよい。
【0037】
次に、バイト切削工程S2について説明する。バイト切削工程S2では、チャックテーブル4をバイト切削ユニット6の下方から外れた位置に移動させる。そして、裏面1b側を下方に向けた状態で被加工物1をチャックテーブル4の保持面上に載せる。その後、該吸引源を作動させて被加工物1に負圧を作用させることでチャックテーブル4に被加工物1を吸引保持させる。
【0038】
次に、バイト切削ユニット6のスピンドル8を回転させてバイト工具14を回転させた状態で、バイト工具14を所定の高さ位置に下降させる。その後、チャックテーブル4をバイト切削ユニット6の下方を通過するように移動させる。
【0039】
なお、バイト工具14の高さ位置は、被加工物1の表面1aに形成された金属層3を除去できる高さ位置とする。すなわち、バイト切削工程S2を実施すると、バイト切削装置2において被加工物1の表面1aがバイト切削され、被加工物1の表面1aに形成された金属層3が除去される。その後、被加工物1がチャックテーブル4から取り外される。
【0040】
被加工物1の表面1aをバイト切削すると、金属層3に由来する切削屑が発生し、徐々にバイト工具14の切刃に付着していく。そこで、本実施形態に係る被加工物1の切削加工方法では、切削屑除去工程S3を実施してバイト工具14の切刃から切削屑を除去する。
【0041】
次に、切削屑除去工程S3について説明する。図2は、切削屑除去工程S3を模式的に示す一部断面側面図である。切削屑除去工程S3では、まず、チャックテーブル4をバイト切削ユニット6の下方から外れた位置に移動させる。そして、チャックテーブル4の保持面上に樹脂被膜9側を上方に向けた状態で除去部材5を載せ、吸引源を作動させて除去部材5に負圧を作用させることでチャックテーブル4に除去部材5を吸引保持させる。
【0042】
次に、バイト切削ユニット6のスピンドル8を回転させてバイト工具14を回転させた状態で、バイト工具14を所定の高さ位置に下降させる。その後、チャックテーブル4をバイト切削ユニット6の下方を通過するように移動させる。すると、除去部材5の樹脂被膜9がバイト工具14によりバイト切削される。
【0043】
なお、バイト工具14の高さ位置は、除去部材5の樹脂被膜9をバイト切削できる高さ位置とする。例えば、バイト工具14の切刃の下端が樹脂被膜9の上面から5μm程度低い高さ位置となるようにバイト工具14が所定の高さ位置に位置付けられる。そして、除去部材5の樹脂被膜9は、切削屑除去工程S3においてバイト工具14の切刃が樹脂被膜9に切り込む深さよりも厚く形成され、例えば、30μm程度の厚さとされる。
【0044】
バイト工具14により樹脂被膜9をバイト切削すると、バイト工具14に付着している金属層3に由来する切削屑が樹脂被膜9に擦り付けられて該切刃から脱落する。したがって、バイト工具14の切刃の表面が清浄な状態となるため、その後、次の被加工物の表面に形成された金属層をバイト切削により除去する際に、金属層の剥離が生じにくくなる。
【0045】
切削屑除去工程S3は、該バイト切削工程S2の前または後に実施される。バイト切削工程S2の前に実施する場合、バイト切削工程S2でバイト切削の対象となる被加工物1よりも前にバイト切削装置2において加工された他の被加工物に由来する切削屑がバイト工具14の切刃から除去される。そのため、切削屑除去工程S3を実施することで、切削屑が除去されたバイト工具14がバイト切削工程S2で使用されて被加工物1がバイト切削される。
【0046】
また、切削屑除去工程S3をバイト切削工程S2の後に実施する場合、バイト切削工程S2で被加工物1をバイト切削した際に生じバイト工具14の切刃に付着した切削屑を該切刃から除去できる。そのため、次にバイト切削装置2で他の被加工物をバイト切削する際に、被加工物1に由来する切削屑が除去されたバイト工具14が使用される。
【0047】
いずれにしても、切削屑除去工程S3を実施すると、交換または清掃のためにバイト切削装置2からバイト工具14を取り外す必要がない。そのため、バイト切削工程S2において被加工物1からの金属層3の剥離を抑制するためにバイト切削装置2の稼働を停止させる時間を短縮化でき、バイト切削装置2における被加工物1の加工効率を向上できる。
【0048】
さらに、バイト工具14の切刃からの切削屑の除去は、バイト切削工程S2が実施される間に実施されてもよい。すなわち、バイト切削工程S2では、被加工物1の表面1aをバイト工具14でバイト切削すると同時に除去部材5をバイト工具14でバイト切削することによりバイト工具14の切刃に付着した切削屑を除去してもよい。
【0049】
バイト切削工程S2においてバイト工具14の切刃に付着した切削屑を除去する場合について図3を用いて説明する。図3は、バイト切削工程S2の一例を模式的に示す上面図である。図3には、図2に示すバイト切削装置2と同様に構成されるバイト切削装置のチャックテーブル16の上面図が示される。また、図3には、バイト切削ユニットが備えるバイトホイールに装着されたバイト工具の軌道14aが二点鎖線で示されている。
【0050】
バイト切削工程S2では、まず、チャックテーブル16の上面の保持面上に、被加工物1の大きさに相当する開口と、除去部材5の大きさに相当する開口と、が設けられた円板状の保持枠11が載せられる。ここで、保持枠11の大きさは、チャックテーブル16の保持面の大きさに合わせて選択される。
【0051】
次に、チャックテーブル16の保持面の該保持枠11の開口中に露出された領域には、それぞれ、被加工物1と、除去部材5と、が載せられる。そして、チャックテーブル16が備える吸引源(不図示)を作動させて、保持枠11と、被加工物1と、除去部材5と、を吸引保持する。
【0052】
次に、バイト工具を所定の高さに下降させ、図3に示す軌道14aに沿ってバイト工具を回転させる。そして、チャックテーブル16を保持面に平行な方向に移動させる。すると、被加工物1がバイト工具14によりバイト切削される。ここで、チャックテーブル16には、被加工物1だけでなく除去部材5が保持されており、被加工物1をバイト切削するバイト工具の軌道14aは該除去部材5にもかかる。そのため、同時に除去部材5もバイト切削される。
【0053】
したがって、図3に示すバイト切削工程S2では、被加工物1のバイト切削により生じた加工屑が直ちに除去部材5により切刃から除去される。そのため、バイト切削工程S2を実施している間においても、バイト工具の切刃が常に清浄に保たれるため、被加工物1の金属層3の剥離が抑制される。なお、図3に示す通り、上方から見たときに時計回りとなる回転方向で軌道14aに沿ってバイト工具を回転させてもよく、バイト工具を反時計回りとなる回転方向で回転させてもよい。
【0054】
さらに、バイト切削工程S2において切削屑を切刃から除去する場合、保持枠11に代えて開口を有さない円形の粘着テープを使用してもよい。この場合、チャックテーブル16の保持面の径に相当する径の円形の粘着テープが使用される。バイト切削工程S2では、該粘着テープの粘着面に被加工物1と、除去部材5と、を貼着し、該粘着面を上方に向けた状態の該粘着テープをチャックテーブル16に保持させる。そして、バイト工具により被加工物1をバイト切削する。
【0055】
この場合においても、被加工物1のバイト切削を実施している間、バイト切削により発生した加工屑が除去部材5により直ちに切刃から除去される。なお、被加工物1と、除去部材5と、を同時に該粘着テープに貼着できる範囲において、該粘着テープは様々な大きさの被加工物1及び除去部材5に使用可能である。
【0056】
バイト切削工程S2において切削屑を切刃から除去する場合、バイト切削工程S2とは別に切削屑除去工程S3を実施する必要がないため、バイト切削装置の稼働を停止させる時間が極めて少なくなる。そのため、バイト切削装置で実施される被加工物1の加工の効率が極めて高くなる。
【0057】
以上に説明する通り、本実施形態に係る被加工物の切削加工方法によると、被加工物の表面に形成された金属層を剥離させることなく該金属層をバイト工具により除去できる。
【0058】
なお、本発明は上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、被加工物1が貫通電極を備えるシリコン基板である場合を例に説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。被加工物1は、被加工面に金属を備え、バイト切削されることで該金属を含む切削屑が生じる基板であれば、インターポーザとなるシリコン基板に限られない。
【0059】
上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0060】
1 被加工物
1a 表面
1b 裏面
3 金属層
5 除去部材
7 支持部材
9 樹脂被膜
11 保持枠
2 バイト切削装置
4,16 チャックテーブル
4a 保持面
6 バイト切削ユニット
8 スピンドル
10 ホイールマウント
12 バイトホイール
14 バイト工具
図1
図2
図3
図4