(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】乾燥ポテト及び加工澱粉を使用した乳化ソースの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 23/00 20160101AFI20220808BHJP
【FI】
A23L23/00
(21)【出願番号】P 2019017530
(22)【出願日】2019-02-02
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100130661
【氏名又は名称】田所 義嗣
(72)【発明者】
【氏名】小川 美絵
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-007142(JP,A)
【文献】特開2009-060812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)乾燥ポテトを
ベースソース100質量部中
1.4質量部以上
2.0質量部以下、及び(B)加工澱粉を
ベースソース100質量部中0.8質量部以上2.0質量部以下、並びに(C)乾燥ポテトと加工澱粉の合計が
ベースソース100質量部中
2.4質量部以上3.8質量部以下、となるように配合した
ベースソースを使用することを特徴とする乳化ソース
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥ポテト及び加工澱粉を使用した乳化ソースに関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍後、加熱解凍して使用する乳化ソースには、安定した乳化状態を維持するため、乳化剤以外に増粘剤(澱粉、加工澱粉、増粘多糖類等)が使用されている。
例えば、電子レンジで加熱する冷凍食品に用いる、トマトおよび増粘剤を配合した冷凍食品用冷凍食品用トマト風味ソースであって、パイナップル、オレンジ、ベリー類、グレープフルーツ、ライム、りんご、レモン、マンゴー、桃から選ばれる一種又は二種以上の果汁と、トマト酢酸発酵液および酢酸を配合し、粘度が30~600Pa・sである、冷凍食品用トマト風ソースが知られている。
増粘剤のうち、澱粉として、例えば、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、及び、これらの澱粉をアルファ化、架橋等の処理を施した加工澱粉、並びに湿熱処理澱粉が挙げられている。
また、加工澱粉として、例えば、アセチル化リン酸架橋澱粉、アセチル化酸化澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、酢酸澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、リン酸化澱粉、リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉等が挙げらている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加工澱粉には特有の、水あめや納豆などに見られる様な長く糸状に伸びる曵糸性のある粘りがあり使用量が増すにつれて食味が低下するため使用量に制限があった。
また、使用量を制限した場合は、乳化ソースがスパゲッティ等と十分に絡みにくく喫食時に食味低下が起こるという問題があった。
【0005】
従って、本発明の目的は、冷凍後、加熱解凍して使用する乳化ソースの乳化安定性を加工澱粉の使用量を抑えながらも高め、また、スパゲッティ等と十分に絡み喫食時に食味低下が起こり難い乳化ソースの製造方法を提供することである。
本発明者は・・・・・・・である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は前記の目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、乾燥ポテトと加工澱粉を、特定の割合で乳化ソースに配合することにより、加工澱粉に特有の曵糸性のある粘りを押さえて、スパゲッティ等と十分に絡み喫食時に食味低下が起こり難い乳化ソースを得ることが出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
従って、本発明は、(A)乾燥ポテトをベースソース100質量部中1.4質量部以上2.0質量部以下、及び(B)加工澱粉をベースソース100質量部中0.8質量部以上2.0質量部以下、並びに(C)乾燥ポテトと加工澱粉の合計がベースソース100質量部中2.4質量部以上3.8質量部以下、となるように配合したベースソースを使用することを特徴とする乳化ソースの製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の乳化ソースの製造方法により得られる乳化ソースは乳化安定性が高く、スパゲッティ等と十分に絡み喫食時に食味低下が起こり難い。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の乳化ソースとは、ベースソースに油脂を加え乳化したソースをいう。
本発明の乳化ソースを得るためのベースソースには、野菜、野菜加工品、野菜ソース、胡椒、唐辛子、食塩、上白糖、醤油、味噌、蛋白加水分解物、畜肉エキス、酵母エキス、チーズ、クリーム、食酢、植物油脂(コーン油、大豆油、菜種油、パーム油、アマニ油等)、動物油脂(ラード、ビーフオイル、チキンオイル等)、グルタミン酸ナトリウム、核酸、香料、着色料、酸化防止剤、乳化剤、加工澱粉(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸架橋澱粉等)、増粘多糖類(キサンタンガム、タマリンドガム、グァーガム等)等、従来から乳化ソースのベースソースとして使用されている原料を限定なく使用できる。
本発明の乳化ソースを得るために使用する油脂として、従来から乳化ソースを得るために使用されている植物油脂(コーン油、大豆油、菜種油、パーム油、アマニ油等)や動物油脂(ラード、ビーフオイル、チキンオイル等)を限定なく使用できる。
さらに、乳化時に、野菜や野菜加工品、野菜ソース、胡椒、唐辛子、食塩、上白糖、醤油、味噌、蛋白加水分解物、畜肉エキス、酵母エキス、チーズ、クリーム、食酢、グルタミン酸ナトリウム、核酸、香料、着色料、酸化防止剤、乳化剤、加工澱粉(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸架橋澱粉等)、増粘多糖類(キサンタンガム、タマリンドガム、グァーガム等)等を加えることも出来る。
ただし、乾燥ポテトと加工澱粉は、前記(A)~(C)に記載した配合割合となるように使用する。
乳化ソースの製造方法は、従来の乳化ソースの製造方法と同様でよい。
【0009】
本発明のベースソースは、(A)乾燥ポテトをベースソース100質量部中1.4質量部以上2.0質量部以下、及び(B)加工澱粉をベースソース100質量部中0.8質量部以上2.0質量部以下、並びに(C)乾燥ポテトと加工澱粉の合計がベースソース100質量部中2.4質量部以上3.8質量部以下、となるように配合している。
【0010】
本発明で使用する乾燥ポテトとは、ジャガイモを乾燥したもので、成分は文部科学省の食品成分データベースに記載されている乾燥マッシュポテトと同様である。
発明で使用する乾燥ポテトは市販品も使用することが出来る。
形状は粉状の他、顆粒状、フレーク状等が使用できる。
乾燥ポテトの配合量がベースソース100質量部中0.8質量部未満では、乳化ソースとスパゲッティとの絡みが悪く好ましくない。
また、乾燥ポテトの配合量がベースソース100質量部中2.4質量部を超えると乾燥ポテトの風味が出すぎてしまい好ましくない。
【0011】
本発明で使用する加工澱粉は、物理的又は化学的処理を施した澱粉であり、処理の方法としては、エステル化、エーテル化、α化、油脂加工等を挙げることができる。
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉が滑らかな舌触りが得られる点で好ましい。
加工澱粉の配合量がベースソース100質量部中0.8質量部未満では、乳化状態が安定せず好ましくない。
また、加工澱粉の配合量がベースソース100質量部中2.0質量部を超えると曵糸性のある粘りが出て滑らかな舌触りが得られず好ましくない。
【0012】
さらに、乾燥ポテトと加工澱粉の合計がベースソース100質量部中2.2質量部未満では、スパゲッティ等に乳化ソースを絡ませた際に、乳化ソースがスパゲッティ等に絡み難いことから風味を感じ難くなり好ましくない。
また、ベースソース100質量部中、乾燥ポテトと加工澱粉の合計が3.8質量部を超えるとスパゲッティ等に乳化ソースを絡ませた際に、乳化ソースがスパゲッティ等に絡みつきすぎて滑らかな舌触りが得られず好ましくない。
【0013】
本発明の乳化ソースの製造方法により得られる乳化ソースは、従来の乳化ソースと同様に使用することが出来、使用方法には特に限定はない。
例えば、耐冷耐熱性の袋に詰め、冷凍して保管し、湯煎して食すことができる。
また、茹でスパゲッティの上にかけて冷凍して保管し、電子レンジで加熱し食すことができる。
【実施例】
【0014】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(1)耐熱性の鍋に、キャノーラ油1質量部とニンニク2.5質量部を収容し、3分間炒めた。
(2)これに、酵母エキス0.3質量部、チキンエキス2.0質量部、クリーム5質量部、上白糖1質量部、食塩0.6質量部、香辛料0.05質量部、調味料0.5質量部、着色料0.6質量部、ショ糖ステアリン酸エステル0.3質量部、キサンタンガム0.08質量部、表1に示す量の乾燥ポテトフレーク及び加工澱粉(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉)を加えて合計100質量部になるまで水を加えた。
(3)これを撹拌しながら85℃になるまで加熱した。
(4)これを20℃になるまで冷却し、ベースソースを得た。
(5)得られたベースソース68質量部と香料0.05質量部、乾燥パセリ0.25質量部、チーズパウダー2.5質量部を容器に収容し3分間高速撹拌した。
(6)さらにバジルペースト10質量部とパーム油9.7質量部とキャノーラ油9.7質量部を徐々に加えて、3分間高速撹拌し乳化ソースを獲た。
(7)得られた乳化ソース80gを、茹でスパゲッティ150gの上に載置し-35℃の冷凍庫で1時間冷凍し冷凍スパゲッティを得た。
これを-18℃の冷凍庫で3日間保管した。
(8)保管した前記冷凍スパゲッティを電子レンジ600Wで3分間加熱し以下の評価基準で10名のパネラーにより評価を行った。
・食味
5点 滑らかな舌触りと風味のバランスが非常によい
4点 滑らかな舌触りと風味のバランスが良い
3点 普通
2点 滑らかな舌触りと風味のバランスが悪い
1点 滑らかな舌触りと風味のバランスが非常に悪い
・絡み
5点 絡みが非常によい
4点 絡みが良い
3点 普通
2点 絡みが悪い
1点 絡みが非常に悪い
【0015】
得られた評価結果を表2~3に示す。
食味の平均点が3.3点以上及び絡みの平均点が3.3点以上であるものを合格とした。
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
実施例1のヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉に代えて、アセチル化アジピン酸架橋澱粉を使用した以外は、実施例1と同様にして冷凍スパゲッティを得て、実施例1と同様に評価を行った。
評価結果は、食味の平均点が3.8点、絡みの平均点が3.7点であった。
【0020】
実施例1のヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉に代えて、リン酸架橋澱粉を使用した以外は、実施例1と同様にして冷凍スパゲッティを得て、実施例1と同様に評価を行った。
評価結果は、食味の平均点が3.6点、絡みの平均点が3.7点であった。