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特許7118604映像符号化装置、映像復号装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】映像符号化装置、映像復号装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 19/86 20140101AFI20220808BHJP
   H04N 19/70 20140101ALI20220808BHJP
   H04N 19/82 20140101ALI20220808BHJP
【FI】
H04N19/86
H04N19/70
H04N19/82
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017137117
(22)【出願日】2017-07-13
(65)【公開番号】P2019022015
(43)【公開日】2019-02-07
【審査請求日】2020-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001106
【氏名又は名称】キュリーズ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】井口 和久
(72)【発明者】
【氏名】千田 和博
(72)【発明者】
【氏名】神田 菊文
(72)【発明者】
【氏名】境田 慎一
【審査官】清山 昂平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-144404(JP,A)
【文献】国際公開第2015/104891(WO,A1)
【文献】特開2016-048888(JP,A)
【文献】特開平10-051768(JP,A)
【文献】特開2008-259071(JP,A)
【文献】Yu-Lin Chang,CE8 Subset3: Controlled Clipping,Joint Collaborative Team on Video Coding (JCT-VC) of ITU-T SG16 WP3 and ISO/IEC JTC1/SC29/WG11 4th Meeting: Daegu, KR, 20-28 January, 2011,JCTVC-D123,2011年01月17日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N19/00-19/98
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
符号化ストリームから、ブロック分割された復号対象のブロックの量子化変換係数をエントロピー復号し、且つ前記ブロックに対する画素値変換処理の要否を示す情報を前記符号化ストリームから取得するエントロピー復号部と、
前記量子化変換係数を逆量子化して変換係数を出力する逆量子化部と、
前記変換係数を逆変換する逆変換部と、
前記逆変換部により逆変換された結果と、前記ブロックに対応する予測信号とを加算して復号画像ブロックを得る加算部と、
前記取得された情報により前記画素値変換処理を用いることが示された場合、前記加算部が出力する前記復号画像ブロック色成分の各画素値を入力信号として区分線形関数により変換する前記画素値変換処理を前記ブロック単位で行う画素値変換部と、
前記画素値変換処理が行われた前記復号画像ブロックに対するフィルタ処理を行うループフィルタと、を備え、
前記画素値変換部は、前記画素値変換部の入出力信号の最小値及び最大値を変換しない条件下で、
それぞれ線形関数と対応付けられた複数の入力区分の中から前記入力信号の値が属する入力区分を特定し、
当該特定された入力区分に対応する前記線形関数により前記入力信号の値を変換して出力する
ことを特徴とする映像復号装置。
【請求項2】
前記複数の入力区分のそれぞれは、前記線形関数により変換された前記入力信号の値が取り得る範囲である出力区分と対応付けられ、
前記線形関数の傾きは、当該線形関数に対応する入力区分の幅と当該線形関数に対応する出力区分の幅とにより定められることを特徴とする請求項1に記載の映像復号装置。
【請求項3】
前記エントロピー復号部は、各入力区分を定める情報を前記符号化ストリームから取得することを特徴とする請求項1又は2に記載の映像復号装置。
【請求項4】
前記エントロピー復号部は、各出力区分を定める情報を前記符号化ストリームから取得することを特徴とする請求項2に記載の映像復号装置。
【請求項5】
コンピュータを請求項1乃至のいずれか一項に記載の映像復号装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像符号化装置、映像復号装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、AVC(Advanced Video Coding)/H.264方式や、HEVC(High Efficiency Video Coding)/H.265方式による一般的な映像符号化装置9の構成を示す図である。入力映像のフレームは、ブロック分割部100において符号化ブロックに分割される。符号化対象フレームに対する以降の処理は、符号化ブロックごとに行われる。符号化対象フレームは、減算部101において予測信号との差分がとられた後、直交変換部102においてDCT(離散コサイン変換)やDST(離散サイン変換)などの直交変換が適用され、量子化部103において量子化される。量子化後の係数は、エントロピー符号化部104においてエントロピー符号化される。
【0003】
また、量子化後の係数は、逆量子化部105において逆量子化された後に、逆直交変換部106において逆DCTや逆DSTなどの逆直交変換が適用される。その後、加算部107で予測信号が加算され、局所復号画像が得られる。フレーム内予測部110は、符号化対象フレームと同一フレーム内の局所復号画像を用いて画素値の予測を行う。フレーム間予測部111は、ループフィルタ108が適用された後の局所復号画像を格納した参照メモリ109を参照して、画素値の予測を行う。
【0004】
フレーム内予測部110で作成された予測信号、又は、フレーム間予測部111で作成された予測信号が、フレーム内予測・フレーム間予測切替部112により選択される。予測信号は、減算部101で、次の符号化処理の際に減算されるとともに、加算部107での加算にも用いられる。なお図示していないが、フレーム内予測部110で用いるモードや、フレーム間予測部111で用いる動きベクトルや、フレーム内予測・フレーム間予測切替部112で用いる切替信号も、エントロピー符号化部104でエントロピー符号化され送出される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】大久保榮監修、「インプレス標準教科書シリーズ H.265/HEVC教科書」、株式会社インプレスジャパン、2013年
【文献】"Recommendation ITU-T H.265"、International Telecommunication Union、2013年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、水面がきらめいている川や、波立っている海などの映像などのように、細かいテクスチャを持ちほぼ一様な色を有する領域を、AVC/H.264やHEVC/H.265などを用いて符号化すると、本来は一様である色が変化し、符号化ブロックの境界が目立つ場合がある。
【0007】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、符号化ブロックの境界を目立たせないようにすることができる映像符号化装置、映像復号装置及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、フレーム間予測またはフレーム内予測により符号化ブロック毎に映像の信号を符号化する映像符号化装置であって、前記フレーム間予測またはフレーム内予測に用いられる前記符号化ブロックの局所復号画像が持つ色差信号に対し、所定の画素値を中心とした第一の範囲内の画素値を、前記所定の画素値を中心とし、かつ、前記第一の範囲よりも狭い第二の範囲内の画素値に変換する色差変換処理を行う色差変換部、を備えることを特徴とする映像符号化装置である。
【0009】
本発明の一態様は、上述の映像符号化装置であって、前記所定の画素値と、前記第一の範囲と、前記第二の範囲とのうち一以上を示す情報を、符号化された前記信号を送出する符号化ストリームに設定する第一設定部をさらに備える、ことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様は、上述の映像符号化装置であって、前記符号化ブロックに対する前記色差変換処理の有無を示す情報を、符号化された前記信号を送出する符号化ストリームに設定する第二設定部をさらに備える、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様は、フレーム間予測またはフレーム内予測により復号ブロック毎に、符号化された映像の信号を復号する映像復号装置であって、前記フレーム間予測またはフレーム内予測に用いられる前記復号ブロックの局所復号画像が持つ色差信号に対し、所定の画素値を中心とした第一の範囲内の画素値を、前記所定の画素値を中心とし、かつ、前記第一の範囲よりも狭い第二の範囲内の画素値に変換する色差変換処理を行う色差変換部、を備えることを特徴とする映像復号装置である。
【0012】
本発明の一態様は、上述の映像復号装置であって、前記所定の画素値と、前記第一の範囲と、前記第二の範囲とのうち一以上を示す情報を、符号化された前記信号が設定された符号化ストリームから取得する第一情報取得部をさらに備える、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様は、上述の映像復号装置であって、前記復号ブロックに対する前記色差変換処理の有無を示す情報を、符号化された前記信号が設定された符号化ストリームから取得する第二情報取得部をさらに備える、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様は、フレーム間予測またはフレーム内予測により符号化ブロック毎に映像の信号を符号化する映像符号化装置として用いられるコンピュータに、前記フレーム間予測またはフレーム内予測に用いられる前記符号化ブロックの局所復号画像が持つ色差信号に対し、所定の画素値を中心とした第一の範囲内の画素値を、前記所定の画素値を中心とし、かつ、前記第一の範囲よりも狭い第二の範囲内の画素値に変換する色差変換ステップ、を実行させるプログラムである。
【0015】
本発明の一態様は、フレーム間予測またはフレーム内予測により復号ブロック毎に、符号化された映像の信号を復号する映像復号装置として用いられるコンピュータに、前記フレーム間予測またはフレーム内予測に用いられる前記復号ブロックの局所復号画像が持つ色差信号に対し、所定の画素値を中心とした第一の範囲内の画素値を、前記所定の画素値を中心とし、かつ、前記第一の範囲よりも狭い第二の範囲内の画素値に変換する色差変換ステップ、を実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、符号化ブロックの境界を目立たせないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態の第1の実施形態による映像符号化装置の構成を示すブロック図である。
図2】同実施形態による色差変換処理に用いられる関数を示す図である。
図3】第2の実施形態による色差変換処理に用いられる関数を示す図である。
図4】第3の実施形態による色差変換処理に用いられる関数を示す図である。
図5】第8の実施形態による映像復号装置の構成を示すブロック図である。
図6】従来技術による映像符号化装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の実施形態による映像符号化装置1の構成を示すブロック図である。同図において、図6に示す従来技術による映像符号化装置9と同一の部分には同一の符号を付している。同図に示す映像符号化装置1は、ブロック分割部100、減算部101、直交変換部102、量子化部103、エントロピー符号化部202、逆量子化部105、逆直交変換部106、加算部107、色差変換部201、ループフィルタ108、参照メモリ109、フレーム内予測部110、フレーム間予測部111、及び、フレーム内予測・フレーム間予測切替部112を備えて構成される。このように、本実施形態の映像符号化装置1が従来技術の映像符号化装置9と異なる点は、色差変換部201をさらに備える点、及び、エントロピー符号化部104に代えてエントロピー符号化部202を備える点である。
【0020】
ブロック分割部100は、入力映像のフレームを符号化ブロックに分割する。符号化ブロックは、例えば、AVC/H.264方式ではマクロブロックであり、HEVC/H.265方式ではコーディングユニット(CU)やプレディクションユニット(PU)である。映像符号化装置1は、符号化対象フレームに対する以降の処理を符号化ブロックごとに行う。
【0021】
減算部101は、符号化対象フレームと、フレーム内予測・フレーム間予測切替部112が選択した予測信号との差分である予測残差信号を直交変換部102に出力する。直交変換部102は、減算部101から入力した予測残差信号に直交変換を行う。量子化部103は、直交変換部102による直交変換の結果得られた変換係数を量子化し、エントロピー符号化部202及び逆量子化部105に出力する。
【0022】
逆量子化部105は、量子化部103により量子化された変換係数を逆量子化する。逆直交変換部106は、逆量子化部105により逆量子化された変換係数を逆直交変換する。加算部107は、逆直交変換部106により逆直交変換された結果と、フレーム内予測・フレーム間予測切替部112が選択した予測信号とを加算して、局所復号画像を得る。色差変換部201は、局所復号画像の色差信号に対して、色差変換処理を行う。色差変換処理では、色差信号が任意に定めた値を中心とした所定範囲以内にある時に、その色差信号の値が予め定めた画素値に近づくような変換を行う。
【0023】
ループフィルタ108は、色差変換処理が行われた局所復号画像からブロック境界の歪みの低減や隣接画素値の値に基づいた画素値の補正などのフィルタ処理を行う。参照メモリ109は、ループフィルタ108が適用された後の局所復号画像を記憶する。フレーム内予測部110は、符号化対象フレームと同一フレーム内の局所復号画像を用いて画素値の予測を行う。フレーム間予測部111は、ループフィルタ108が適用された後の局所復号画像を格納した参照メモリ109を参照して、画素値の予測を行う。フレーム内予測・フレーム間予測切替部112は、フレーム内予測部110による予測結果と、フレーム間予測部111による予測結果とのいずれかを選択し、予測画像として減算部101及び加算部107に出力する。
【0024】
エントロピー符号化部202は、量子化部103により量子化された変換係数や、フレーム内予測部110で用いるモード、フレーム間予測部111で用いる動きベクトル、フレーム内予測・フレーム間予測切替部112で用いる切替信号を、エントロピー符号化して送出する。エントロピー符号化部202は、後述する第8の実施形態に記載の映像復号装置3において色差変換部201と同様の色差変換処理を行うためのパラメータをさらにエントロピー符号化して送出してもよい。
【0025】
AVC/H.264やHEVC/H.265などを用いて、細かいテクスチャを持ち、かつ、ほぼ一様な色を有する領域を符号化したときに、本来は一様である色が変化し、符号化ブロックの境界が目立つという現象が発生することがある。この現象は、例えば原画像ではほぼ無彩色の領域が、符号化により薄い緑色や紫色等に変化し、その変化が符号化ブロックにより異なることが原因で発生する。そこで、映像符号化装置1は、色差信号を逆直交変換し、予測信号の加算を行った局所復号画像の色差信号に対して色差変換処理を行う。映像符号化装置1は、この色差変換処理を色差信号のみに適用し、輝度信号には適用しない。つまり、映像符号化装置1は、局所復号画像の輝度信号であるy信号については、色差変換部201による色差変換処理を適用せず、従来と同じ動作を行う。一方、映像符号化装置1は、局所復号画像の色差信号であるu信号及びv信号については、色差変換部201による色差変換処理を適用して色差の値を変更する。
【0026】
色差変換部201が行う色差変換処理により、予め定められた色差値付近の値を持つ色差信号が、予測処理や量子化処理により色が大きく変化することが抑制される。これにより、ほぼ一様な色を有し細かいテクスチャを持つ領域を符号化する際に、色が変化することにより符号化ブロックの境界が目立つ現象が抑制される。
【0027】
図2は、本実施形態の色差変換処理に用いられる関数を示す図である。本実施形態の色差変換部201は、色差変換処理において同図に示す関数を用いる。同図に示す関数は、横軸が入力信号を、縦軸が出力信号を表わしている。色差信号の値をM、色差信号の値の幅をw(w>0)としたときに、色差変換部201は、入力信号の値sが(M-w,M+w)の範囲のときは画素値としてMを出力し、この範囲以外の値のときには、入力信号の値sのまま出力する。
【0028】
M及びwはそれぞれ、予め定められた値でもよく、ユーザーが設定した値でもよく、符号化対象のフレーム又は符号化対象のフレームを含む複数のフレームから得られる所定の1以上の特徴量やその特徴量に対して所定の演算を行った結果などに応じて決められる値でもよい。また、映像符号化装置1は、符号化対象のフレームに適用されるM及びwの少なくとも一方をパラメータとして、映像復号装置3(後述する第8の実施形態の図5参照)に通知してもよい。この場合、エントロピー符号化部202は、エントロピー符号化結果を送信する符号化ストリーム中にパラメータを埋め込む。
【0029】
後述する映像復号装置3の色差変換部302(後述する第8の実施形態の図5参照)は、予め定められた、又は、ユーザーが設定した映像符号化装置1と同じM及びwを用いて、色差変換部201と同様の色差変換処理を行う。映像復号装置3の色差変換部302は、符号化ストリームからM及びwのうち一以上が設定されたパラメータを読み取った場合は、読み取ったパラメータを用いて、本実施形態の色差変換部201と同様の色差変換処理を行う。
【0030】
[第2の実施形態]
第2の実施形態による映像符号化装置の構成は、図1に示す第1の実施形態の映像符号化装置1と同様である。ただし、本実施形態では、色差変換部201は、図3に示す関数を用いて色差変換処理を行う。
【0031】
図3は、本実施形態の色差変換処理に用いられる関数を示す図である。同図に示す関数は、図2と同様に、横軸が入力信号を、縦軸が出力信号を表わしている。なお、色差信号がとり得る最大の値をsmaxとする。
【0032】
(1)入力信号の値sが(M-w)以下の場合、s×((M-k)/(M-w))を出力。
(2)入力信号の値sが(M-w,M+w)の範囲の場合、M+(s-M)×(k/w)を出力。
(3)入力信号の値sが(M+w)以上の場合、(M+k)+(s-(M+w))×(smax-(M+k))/(smax-(M+w))を出力。
【0033】
このように、入力信号の(M-w,M+w)の範囲の値を、(M-k,M+k)の範囲の値に変換する。なお、0<k<wである。
【0034】
M、w及びkはそれぞれ、予め定められた値でもよく、ユーザーが設定した値でもよく符号化対象のフレーム又は符号化対象のフレームを含む複数のフレームから得られる所定の1以上の特徴量やその特徴量に対して所定の演算を行った結果などに応じて決められる値でもよい。M及びwについては、第1の実施形態と同様に得られる値でもよい。映像符号化装置1のエントロピー符号化部202は、M、w及びkの値のうち一以上をパラメータとして、符号化ストリーム中に埋め込んで伝送してもよい。
【0035】
後述する映像復号装置3の色差変換部302は、予め定められた、又は、ユーザーが設定した映像符号化装置1と同じM、w及びkを用いて、本実施形態の色差変換部201と同様の色差変換処理を行う。映像復号装置3の色差変換部302は、符号化ストリームからM、w及びkのうち一以上が設定されたパラメータを読み取った場合は、読み取ったパラメータを用いて、本実施形態の色差変換部201と同様の色差変換処理を行う。
【0036】
第1の実施形態では、色差信号の値がM付近の値以外であるときには元の値が維持されるが、色差変換部201の出力値が不連続となる。そのため、グラデーションなどで色差信号がなだらかに変化している領域があるフレームに適用すると、不連続が目立つ場合がある。本実施形態では、全ての色差信号が元の値から変化するが、色差変換部201からの出力される値が不連続にならないため、このような領域への適用に好適である。
【0037】
[第3の実施形態]
第3の実施形態による映像符号化装置の構成は、図1に示す第1の実施形態の映像符号化装置1と同様である。ただし、本実施形態では、色差変換部201は、図4に示す関数を用いて色差変換処理を行う。
【0038】
図4は、本実施形態の色差変換処理に用いられる関数を示す図である。同図に示す関数は、図2図3と同様に、横軸が入力信号を、縦軸が出力信号を表わしている。色差変換部201は、以下の値を出力する。ただし、0<k<w<dである。
【0039】
(1)入力信号の値sが(M-d)以下の場合及び(M+d)以上の場合、sを出力。
(2)入力信号の値sが(M-d,M-w)の範囲の場合、(M-d)+(s-(M-d))×(d-k)/(d-w)を出力。
(3)入力信号の値sが(M-w,M+w)の範囲の場合、M+(s-M)×(k/w)を出力。
(4)入力信号の値sが(M+w,M+d)の範囲の場合、(M+k)+(s-(M+w))×(d-k)/(d-w)を出力。
【0040】
M、w、k及びdはそれぞれ、予め定められた値でもよく、ユーザーが設定した値でもよく、符号化対象のフレーム又は符号化対象のフレームを含む複数のフレームから得られる所定の1以上の特徴量やその特徴量に対して所定の演算を行った結果などに応じて決められる値でもよい。M、w及びkは、第2の実施形態と同様に得られる値でもよい。映像符号化装置1のエントロピー符号化部202は、M、w、k及びdの値のうち一以上をパラメータとして、符号化ストリーム中に埋め込んで伝送してもよい。
【0041】
後述する映像復号装置3の色差変換部302は、予め定められた、又は、ユーザーが設定した映像符号化装置1と同じM、w、k及びdを用いて、本実施形態の色差変換部201と同様の色差変換処理を行う。映像復号装置3の色差変換部302は、符号化ストリームからM、w、k及びdのうち一以上が設定されたパラメータを読み取った場合は、読み取ったパラメータを用いて、本実施形態の色差変換部201と同様の色差変換処理を行う。
【0042】
本実施形態では、第2の実施形態と比較して、色差信号が元の値から変化する範囲が(M-d,M+d)に抑えられる効果がある。
【0043】
[第4の実施形態]
本実施形態は、上述した第1の実施形態~第3の実施形態において、u信号及びv信号のそれぞれについて独立してMの値を定める。
【0044】
[第5の実施形態]
本実施形態では、u信号についての画素値MをMu、v信号についての画素値MをMvとしたとき、色差変換部201は、u信号の値が(Mu-w,Mu+w)の範囲内であり、かつ、v信号の値が(Mv-w,Mv+w)の範囲内であるという条件を満たさない場合には、入力信号をそのまま出力する。
【0045】
例えば、u信号はMuに近い値で一様であるがv信号は位置により値が大きく変動しているような領域は、カラー画像として見た際に「ほぼ一様な色を有している」とは言えない、さまざまな色を有している領域である。第1~第3の実施形態では、u信号及びv信号の二つの色差信号をそれぞれ独立に処理するため、このような領域に対しても、色差変換処理を適用してしまい、符号化画質が低下する場合がある。本実施形態では、そのような領域に対しては信号を変化させないため、符号化画質の低下が抑制される。
【0046】
[第6の実施形態]
本実施形態は、上述した第1の実施形態~第5の実施形態において、符号化ブロック毎に、M、Mu、Mv、w、k、d等のパラメータの値を変更可能とする。映像符号化装置1は、符号化ブロックに適用するパラメータを、直前の符号化ブロックに適用したパラメータから変更する場合、パラメータの値を変更することを示すフラグと、変更後のパラメータ(M、Mu、Mv、w、k、dのうち一以上)も送出する。映像符号化装置1の色差変換部201は、例えば、符号化対象の符号化ブロック又は符号化対象の符号化ブロックを含む複数の符号化ブロックから得られた1以上の特徴量や、その特徴量に所定の演算を行った結果等に基づいて、パラメータを変更するか否かを判断してもよい。例えば、符号化対象の符号化ブロックと、符号化済みの符号化ブロックとで特徴量や、その特徴量に所定の演算を行った結果等が所定よりも変化した場合に、パラメータの値を変更すると判断するようにしてもよい。
【0047】
後述する映像復号装置3は、映像符号化装置1からパラメータの値を変更することを示すフラグを受信した復号ブロックについては、変更後のM、Mu、Mv、w、k、d等のパラメータも受信する。後述する色差変換部302は、受信したパラメータにより値を更新し、更新後のパラメータを用いて映像符号化装置1の色差変換部201と同様の色差変換処理を行う。なお、色差変換部302は、変更が通知されなかったパラメータについては、前回色差変換処理を行ったときと同じ値を用いて色差変換処理を行う。また、色差変換部302は、パラメータの値を変更することを示すフラグを受信しなかった復号ブロックについては、前回色差変換処理を行ったときと同じパラメータを用いて色差変換処理を行う。
【0048】
[第7の実施形態]
本実施形態は、上述した第3~第6の実施形態において、色差変換処理の有無を、符号化ブロック毎に切替える。映像符号化装置1の色差変換部201は、例えば、符号化対象の符号化ブロック又は符号化対象の符号化ブロックを含む複数の符号化ブロックから得られる1以上の特徴量や、その特徴量に所定の演算を行った結果等に基づいて、符号化ブロック毎に色差変換処理を行うか否かを判断する。色差変換部201は、色差変換処理の対象と判断したブロックには、第3~第6の実施形態の色差変換処理を行い、色差変換処理の対象ではないと判断したブロックには、色差変換処理を行わない。映像符号化装置1のエントロピー符号化部202は、各符号化ブロックが色差変換処理の対象であるか否かを示す情報を、符号化ストリーム中に埋め込んで伝送する。なお、色差変換処理の対象の符号化ブロックのみにフラグを設定してもよく、色差変換処理の対象ではない符号化ブロックのみにフラグを設定してもよい。
【0049】
後述する映像復号装置3の色差変換部302は、色差変換処理有りを示すフラグが設定された、又は、色差変換処理無しを示すフラグが設定されていない復号ブロックについては色差変換処理を行う。また、色差変換部302は、色差変換処理無しを示すフラグが設定された、又は、色差変換処理有りを示すフラグが設定されていない復号ブロックについては色差変換処理を行わない。
【0050】
映像符号化装置1は、前回色差変換処理有りから無しに変わった符号化ブロック及び前回色差変換処理無しから有りに変わった符号化ブロックにフラグを設定してもよい。この場合、映像復号装置3の色差変換部302は、フラグが設定された復号ブロックを受信したときに、前回と色差変換処理の有無を切替える。
【0051】
[第8の実施形態]
本実施形態は、第1~第7の実施形態による映像符号化装置により符号化された映像の信号を復号する映像復号装置である。
【0052】
図5は、本実施形態による映像復号装置3の構成を示すブロック図である。同図において、図1に示す第1の実施形態による映像符号化装置1と同一の部分には同一の符号を付している。同図に示す映像復号装置3は、エントロピー復号部301、逆量子化部105、逆直交変換部106、加算部107、色差変換部302、ループフィルタ108、参照メモリ109、フレーム内予測部110、フレーム間予測部111、及び、フレーム内予測・フレーム間予測切替部112を備えて構成される。
【0053】
エントロピー復号部301は、第1~第7の実施形態による映像符号化装置1から受信した符号化ストリームを入力し、復号対象の符号化ブロックである復号ブロックの量子化変換係数をエントロピー復号する。さらに、エントロピー復号部301は、フレーム内予測に関する情報やフレーム間予測に関する情報、色差変換処理のパラメータやフラグを復号する。エントロピー復号部301は、エントロピー復号した結果を逆量子化部105に出力し、フレーム内予測に関する情報をフレーム内予測部110に出力し、フレーム間予測に関する情報をフレーム間予測部111に出力する。エントロピー復号部301は、復号により色差変換処理のパラメータやフラグが得られた場合は、色差変換部302に出力する。
【0054】
逆量子化部105は、量子化変換係数を逆量子化して変換係数を出力する。逆直交変換部106は、逆量子化部105により逆量子化された変換係数を逆直交変換する。加算部107は、逆直交変換部106により逆直交変換された結果と、フレーム内予測・フレーム間予測切替部112が選択した予測信号とを加算して、局所復号画像を得る。色差変換部302は、予め定められたパラメータや、ユーザーが設定したパラメータ、あるいは、エントロピー復号部301が符号化ストリームから得たパラメータやフラグを用いて、第1~第7の実施形態と同様の色差変換処理を行う。
【0055】
ループフィルタ108は、色差変換処理が行われた局所復号画像からブロック境界の歪みの低減や隣接画素値の値に基づいた画素値の補正などのフィルタ処理を行う。参照メモリ109は、ループフィルタ108が適用された後の局所復号画像を記憶する。フレーム内予測部110は、復号対象フレームと同一フレーム内の局所復号画像を用いて画素値の予測を行う。フレーム間予測部111は、ループフィルタ108が適用された後の局所復号画像を格納した参照メモリ109を参照して、画素値の予測を行う。フレーム内予測・フレーム間予測切替部112は、フレーム内予測部110による予測結果と、フレーム間予測部111による予測結果とのいずれかを選択し、予測画像として加算部107に出力する。
【0056】
以上説明した実施形態によれば、フレーム間予測またはフレーム内予測により符号化ブロック毎に映像の信号を符号化する映像符号化装置は、色差変換部を備える。例えば、映像符号化装置は、実施形態の映像符号化装置1であり、色差変換部は、色差変換部201である。色差変換部は、フレーム間予測またはフレーム内予測に用いられる符号化ブロックの局所復号画像が持つ色差信号に対し、色差変換処理を行う。色差変換処理では、色差信号の画素値のうち、所定の画素値を中心とした第一の範囲内の画素値を、その所定の画素値を中心とし、かつ、第一の範囲よりも狭い第二の範囲内の画素値に変換する。
【0057】
なお、色差変換部は、局所復号画像が持つ色差信号の第一の範囲外の画素値については変換を行わないようにしてもよい。あるいは、色差変換部は、局所復号画像が持つ色差信号の第一の範囲外の画素値に対しても変換を行ってもよい。この場合、色差変換部は、例えば、図3図4に示すように、変換前の画素値が大きいほど変換後の画素値が大きくなり、かつ、色差信号がとり得る最小の画素値から最大の画素値までの変化に対し、第一の範囲外の画素値を変換した後の画素値と第一の範囲内の画素値を変換した後の画素値とが連続して変化するような変換規則により、第一の範囲外の画素値を変換する。また、第一の範囲及び第二の範囲は、色差信号のu信号とv信号のそれぞれについて独立に定められてもよい。すなわち、u信号とv信号とで、上記の所定の画素値が同じであってもよく、異なってもよい。このとき、u信号とv信号とが独立に定められたそれぞれの第一の範囲内にあるときにのみ画素値の変換を行ってもよい。
【0058】
映像符号化装置は、所定の画素値と、第一の範囲と、第二の範囲のうち一以上を示す情報を、符号化された映像の信号を送出する符号化ストリームに設定する第一設定部をさらに備えてもよい。例えば、所定の画素値を示す情報はMであり、第一の範囲を表す情報はw、又は、M及びwであり、第二の範囲を表す情報はk、又は、M及びkである。また、映像符号化装置は、符号化ブロックに対する色差変換処理の有無を示す情報を、符号化された映像の信号を送出する符号化ストリームに設定する第二設定部をさらに備えてもよい。第一設定部及び第二設定部は、例えば、上述した実施形態におけるエントロピー符号化部104である。
【0059】
また、フレーム間予測またはフレーム内予測により復号ブロック毎に、符号化された映像の信号を復号する映像復号装置は、色差変換部を備える。例えば、映像復号装置は、実施形態の映像復号装置3であり、色差変換部は、色差変換部302である。色差変換部は、フレーム間予測またはフレーム内予測に用いられる復号ブロックの局所復号画像が持つ色差信号に対し、映像符号化装置の色差変換部と同様の色差変換処理を行う。
【0060】
映像復号装置は、所定の画素値と、第一の範囲と、第二の範囲とのうち一以上を示す情報を、符号化された信号が設定された符号化ストリームから取得する第一情報取得部をさらに備えてもよい。また、映像復号装置は、復号ブロックに対する色差変換処理の有無を示す情報を、符号化された信号が設定された符号化ストリームから取得する第二情報取得部をさらに備えてもよい。第一設定部及び第二設定部は、例えば、エントロピー復号部301である。
【0061】
上述した実施形態によれば、符号化ブロックの境界を目立たせないようにすることができる。
【0062】
なお、上述の映像符号化装置1及び映像復号装置3の各機能の全て又は一部は、ハードウェアを用いて実現されてもよく、ソフトウェアを用いて実現されてもよい。映像符号化装置1及び映像復号装置3の各機能の全て又は一部をソフトウェアにより実現する場合、映像符号化装置1及び映像復号装置3は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、この機能を実現するためのプログラムを実行する。なお、このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されても良い。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えば光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、このプログラムは、電気通信回線を介して送信されても良い。
【符号の説明】
【0063】
1、9…映像符号化装置
3…映像復号装置
100…ブロック分割部
101…減算部
102…直交変換部
103…量子化部
104、202…エントロピー符号化部
105…逆量子化部
106…逆直交変換部
107…加算部
201、302…色差変換部
108…ループフィルタ
109…参照メモリ
110…フレーム内予測部
111…フレーム間予測部
112…フレーム内予測・フレーム間予測切替部
301…エントロピー復号部
図1
図2
図3
図4
図5
図6