(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 27/11521 20170101AFI20220808BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20220808BHJP
H01L 29/788 20060101ALI20220808BHJP
H01L 29/792 20060101ALI20220808BHJP
H01L 27/11539 20170101ALI20220808BHJP
H01L 27/11536 20170101ALI20220808BHJP
【FI】
H01L27/11521
H01L29/78 371
H01L27/11539
H01L27/11536
(21)【出願番号】P 2017198624
(22)【出願日】2017-10-12
【審査請求日】2020-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】千葉 亮
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-135178(JP,A)
【文献】特開2011-040626(JP,A)
【文献】特開2004-200181(JP,A)
【文献】特開2016-096264(JP,A)
【文献】特開2005-197684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/11521
H01L 21/336
H01L 27/11539
H01L 27/11536
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に第1の絶縁膜を介して設けられ、一端側に先端が尖った尖鋭部を有するフローティングゲートと、
前記フローティングゲート上に設けられたスペーサと、
前記フローティングゲートと前記スペーサとの間に設けられ、且つ前記スペーサの前記一端側の側面を覆う第2の絶縁膜と、
前記フローティングゲートの前記一端側の側面に第3の絶縁膜を介して接し、且つ前記スペーサの前記一端側の側面に、前記第2の絶縁膜及び前記第3の絶縁膜を介して接するコントロールゲートと、
を含むメモリセルを備え、
前記スペーサの前記一端側の側面が前記半導体基板の主面に対して垂直であり、
前記第2の絶縁膜の、前記スペーサの前記一端側の側面を覆う部分の表面と、前記フローティングゲートの前記一端側の側面とが、同一平面内に延在している
半導体装置。
【請求項2】
前記第2の絶縁膜の膜厚は10nm以下である
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板の表層部に設けられた拡散層と、
前記拡散層に接続され、且つ前記フローティングゲート及び前記スペーサの他端側の側面に、第4の絶縁膜を介して接する導電部材と、
前記コントロールゲート及び前記導電部材の表面に設けられたシリサイド層と、
を更に含む
請求項1又は請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記尖鋭部の先端部分が前記第2の絶縁膜及び前記第3の絶縁膜を介して前記コントロールゲートと接している
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2の絶縁膜の膜質は、前記スペーサよりも緻密である
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記尖鋭部の先端は、前記フローティングゲートを構成する材料の結晶粒に依存しない辺を形成している
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体基板の表層部に設けられた拡散層と、
前記拡散層に接続され、且つ前記フローティングゲート及び前記スペーサの他端側の側面に、第4の絶縁膜を介して接する導電部材と、
を更に含む請求項1又は請求項2に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記メモリセルと、前記メモリセルと同一の構造を有する他のメモリセルが、前記拡散層及び前記導電部材を間に挟んで対称配置されている
請求項
3又は請求項
7に記載の半導体装置。
【請求項9】
半導体基板の表面に、第1の絶縁膜を介してゲート部材を形成する工程と、
前記ゲート部材の表面に、前記ゲート部材を部分的に露出させる開口部を有するマスク部材を形成する工程と、
前記開口部の側面及び前記開口部において露出している前記ゲート部材の表面に、第2の絶縁膜を形成する工程と、
前記開口部の側面及び前記ゲート部材の表面にそれぞれ前記第2の絶縁膜を介して接するスペーサを、前記開口部の内側に形成する工程と、
前記マスク部材をエッチングにより除去する工程と、
前記スペーサ及び前記第2の絶縁膜をマスクとして、前記ゲート部材をエッチングしてフローティングゲートを形成する工程と、
を含み、
前記第2の絶縁膜は、前記マスク部材のエッチングに用いられるエッチャントに対する耐性が、前記スペーサよりも高く、
前記スペーサの一端側の側面を、前記半導体基板の主面に対して垂直とし、
前記第2の絶縁膜の、前記スペーサの前記一端側の側面を覆う部分の表面と、前記フローティングゲートの前記一端側の側面とを、同一平面内に延在させる
半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記第2の絶縁膜の膜厚は10nm以下である
請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記第2の絶縁膜の、前記スペーサの一端側の側面を覆う部分、及び前記フローティングゲートの前記一端側の側面を覆う第3の絶縁膜を形成する工程と、
前記フローティングゲートの前記一端側の側面に第3の絶縁膜を介して接し、且つ前記スペーサの前記一端側の側面に、前記第2の絶縁膜及び前記第3の絶縁膜を介して接するコントロールゲートを形成する工程と、
前記半導体基板の表層部に拡散層を形成する工程と、
前記拡散層に接続され、且つ前記フローティングゲート及び前記スペーサの他端側の側面に、第4の絶縁膜を介して接する導電部材を形成する工程と、
前記コントロールゲート及び前記導電部材の表面にシリサイド層を形成する工程と、
を更に含む請求項9又は請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記第2の絶縁膜に熱処理を施す工程を更に含む
請求項
9から請求項
11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記第2の絶縁膜は、CVD法により形成されるシリコン酸化膜である
請求項
9から請求項
12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記第2の絶縁膜を形成する前に、前記開口部において露出している前記ゲート部材の表面に、端部に傾斜面を有する凹部を形成する工程を更に含み、
前記傾斜面が前記第2の絶縁膜によって覆われる
請求項
9から請求項
13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記ゲート部材のエッチングにより、前記フローティングゲートの一端側に、前記傾斜面を含む尖鋭部を形成する
請求項
14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記第2の絶縁膜の、前記スペーサの一端側の側面を覆う部分、及び前記フローティングゲートの前記一端側の側面を覆う第3の絶縁膜を形成する工程と、
前記フローティングゲートの前記一端側の側面に第3の絶縁膜を介して接し、且つ前記スペーサの前記一端側の側面に、前記第2の絶縁膜及び前記第3の絶縁膜を介して接するコントロールゲートを形成する工程と、を
を更に含む
請求項
9又は請求項
10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気的に書き込み及び消去可能な読み出し専用メモリ(EEPROM: Electrically Programmable Read-Only Memory)として、スプリットゲート型の半導体メモリが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、半導体層上にゲート絶縁膜を介してフローティングゲート用の導電体層を形成する工程と、導電体層上に第1のシリコン酸化膜から構成される第1のスペーサ及び該第1のスペーサと隣接し第1のシリコン酸化膜よりもエッチングレートが低い第2のシリコン酸化膜から構成される第2のスペーサを形成する工程と、第1及び第2のスペーサをマスクにして導電体層を選択的に除去する工程と、第1のスペーサを除去して導電体層の一部を露出させる工程と、トンネル絶縁膜を介して露出した導電体層の一部に対向するようにコントロールゲートを形成する工程と、を含む半導体装置の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スプリットゲート型のメモリセルは、ワード線として機能するコントロールゲートをフローティングゲートに対して自己整合的に形成するために絶縁体からなるスペーサが用いられる。スペーサは、フローティングゲート上に積層され、フローティングゲートのパターニングにも用いられる。スプリットゲート型のメモリセルの製造工程は、例えば、以下の工程を含む。
【0006】
ゲート絶縁膜を介してフローティングゲートを構成するポリシリコン膜を半導体基板上に形成する。次に、ポリシリコン膜の表面に、窒化膜を形成する。次に、窒化膜の、フローティングゲート及びスペーサの形成予定位置に開口部を形成し、開口部においてポリシリコン膜を露出させる。次に、ポリシリコン膜の露出部分の表面をエッチングする。これによりポリシリコン膜の表面に凹部が形成される。次に、窒化膜の開口部の側面及びポリシリコン膜の露出部分を覆うように、スペーサを構成するSiO2等の絶縁膜を形成する。その後、この絶縁膜をエッチバックすることによりスペーサを形成する。ソース及びソース配線をスペーサに対して自己整合的に形成した後、エッチングにより窒化膜を除去する。その後、スペーサをマスクとしてポリシリコン膜をエッチングすることで、ポリシリコン膜のパターニングを行う。これにより、フローティングゲートが形成される。フローティングゲートの端部には、先の工程においてポリシリコン膜に凹部を形成したことにより、尖鋭部が形成される。次に、フローティングゲート及びスペーサの露出部分を覆うトンネル絶縁膜を形成する。次に、トンネル絶縁膜の表面に、コントロールゲートを構成するポリシリコン膜を形成する。その後、このポリシリコン膜のパターニングを行うことでコントロールゲートが形成される。
【0007】
上記のメモリセルにおいては、フローティングゲート及びコントロールゲートは、トンネル絶縁膜によって絶縁される。上記のメモリセルにデータ“0”を書き込む場合、フローティングゲートに電子を注入してフローティングゲートに電子を蓄積させる。一方、上記のメモリセルに書き込まれたデータ“0”を、データ“1”に書き換える場合、フローティングゲートに蓄積された電子を、コントロールゲートに引き抜く。フローティングゲートが尖鋭部を有することで、尖鋭部において電界集中が生じるので、比較的低い電圧でデータ“1”への書き替えを行うことが可能である。なお、フローティングゲートに電子が蓄積されている状態をデータ“1”とし、フローティングゲートに電子が蓄積されていない状態をデータ“0”としてもよい。
【0008】
上記の半導体メモリの製造工程においては、窒化膜を除去するためのエッチングにより、スペーサの側面がエッチングされることに起因して、トンネル絶縁膜の、フローティングゲートの尖鋭部を覆う部分において、膜厚が小さくなる、または膜質が劣化するおそれがある。これにより、フローティングゲートに蓄積された電子が、コントロールゲートに抜けてしまうおそれがある。このことは、メモリセルに記憶したデータが、書き換わることを意味する。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、スペーサの側面のエッチングを抑制することにより、メモリセルにおけるデータ劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る半導体装置は、半導体基板上に第1の絶縁膜を介して設けられ、一端側に先端が尖った尖鋭部を有するフローティングゲートと、前記フローティングゲート上に設けられたスペーサと、前記フローティングゲートと前記スペーサとの間に設けられ、且つ前記スペーサの前記一端側の側面を覆う第2の絶縁膜と、前記フローティングゲートの前記一端側の側面に第3の絶縁膜を介して接し、且つ前記スペーサの前記一端側の側面に、前記第2の絶縁膜及び前記第3の絶縁膜を介して接するコントロールゲートと、を含むメモリセルを備えている。
本発明の第1の態様に係る半導体装置において、前記第2の絶縁膜の膜厚が10nm以下である。
本発明の第2の態様に係る半導体装置は、前記半導体基板の表層部に設けられた拡散層と、前記拡散層に接続され、且つ前記フローティングゲート及び前記スペーサの他端側の側面に、第4の絶縁膜を介して接する導電部材と、前記コントロールゲート及び前記導電部材の表面に設けられたシリサイド層とを更に含む。
本発明の第3の態様に係る半導体装置において、前記スペーサの前記一端側の側面が前記半導体基板の主面に対して垂直であり、前記第2の絶縁膜の、前記スペーサの前記一端側の側面を覆う部分の表面と、前記フローティングゲートの前記一端側の側面とが、同一平面内に延在している。
【0011】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板の表面に、第1の絶縁膜を介してゲート部材を形成する工程と、前記ゲート部材の表面に、前記ゲート部材を部分的に露出させる開口部を有するマスク部材を形成する工程と、前記開口部の側面及び前記開口部において露出している前記ゲート部材の表面に、第2の絶縁膜を形成する工程と、前記開口部の側面及び前記ゲート部材の表面にそれぞれ前記第2の絶縁膜を介して接するスペーサを、前記開口部の内側に形成する工程と、前記マスク部材をエッチングにより除去する工程と、前記スペーサ及び前記第2の絶縁膜をマスクとして、前記ゲート部材をエッチングしてフローティングゲートを形成する工程と、を含み、前記第2の絶縁膜は、前記マスク部材のエッチングに用いられるエッチャントに対する耐性が、前記スペーサよりも高い。
本発明の第4の態様に係る半導体装置の製造方法において、前記第2の絶縁膜の膜厚は10nm以下である
本発明の第5の態様に係る半導体装置の製造方法は、前記第2の絶縁膜の、前記スペーサの一端側の側面を覆う部分、及び前記フローティングゲートの前記一端側の側面を覆う第3の絶縁膜を形成する工程と、前記フローティングゲートの前記一端側の側面に第3の絶縁膜を介して接し、且つ前記スペーサの前記一端側の側面に、前記第2の絶縁膜及び前記第3の絶縁膜を介して接するコントロールゲートを形成する工程と、 前記半導体基板の表層部に拡散層を形成する工程と、前記拡散層に接続され、且つ前記フローティングゲート及び前記スペーサの他端側の側面に、第4の絶縁膜を介して接する導電部材を形成する工程と、前記コントロールゲート及び前記導電部材の表面にシリサイド層を形成する工程と、を更に含む。
本発明の第6の態様に係る半導体装置の製造方法において、前記スペーサの一端側の側面を、前記半導体基板の主面に対して垂直とし、前記第2の絶縁膜の、前記スペーサの前記一端側の側面を覆う部分の表面と、前記フローティングゲートの前記一端側の側面とを、同一平面内に延在させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スペーサの側面のエッチングが抑制され、これによってメモリセルにおけるデータ劣化を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る尖鋭部の近傍領域Aの拡大図である。
【
図3A】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図3B】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図3C】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図3D】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図3E】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図3F】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図3G】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図3H】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図3I】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図3J】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図3K】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図3L】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図3M】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図3N】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図3O】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図3P】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図3Q】本発明の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図4A】比較例に係るメモリセルの製造工程の一例を示す部分的な断面図である。
【
図4B】比較例に係るメモリセルの製造工程の一例を示す部分的な断面図である。
【
図4C】比較例に係るメモリセルの製造工程の一例を示す部分的な断面図である。
【
図4D】比較例に係るメモリセルの製造工程の一例を示す部分的な断面図である。
【
図5】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
【
図6A】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図6B】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図6C】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図6D】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図6E】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図6F】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図6G】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図6H】本発明の他の実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図7A】比較例に係るメモリセルの製造工程の一例を示す部分的な断面図である。
【
図7B】比較例に係るメモリセルの製造工程の一例を示す部分的な断面図である。
【
図8】比較例に係るメモリセルの構成を示す断面図である。
【
図9A】比較例に係るメモリセルの製造工程の一例を示す部分的な断面図である。
【
図9B】比較例に係るメモリセルの製造工程の一例を示す部分的な断面図である。
【
図9C】比較例に係るメモリセルの製造工程の一例を示す部分的な断面図である。
【
図9D】比較例に係るメモリセルの製造工程の一例を示す部分的な平面図である。
【
図10A】本発明の他の実施形態に係るメモリセルの製造工程の一例を示す部分的な断面図である。
【
図10B】本発明の他の実施形態に係るメモリセルの製造工程の一例を示す部分的な断面図である。
【
図10C】本発明の他の実施形態に係るメモリセルの製造工程の一例を示す部分的な断面図である。
【
図10D】本発明の他の実施形態に係るメモリセルの製造工程の一例を示す部分的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与し、重複する説明は適宜省略する。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る半導体装置1の構成の一例を示す断面図である。半導体装置1は、ソース拡散層30及びソース配線31を共有する2つのスプリットゲート型のメモリセル100が、ソース拡散層30及びソース配線31を間に挟んで対称配置されたメモリセルアレイを複数備えている。
【0016】
各メモリセル100は、例えば単結晶シリコンを含んで構成される半導体基板10の表層部において、互いに離間して設けられたソース拡散層30及びドレイン拡散層40と、半導体基板10の表面の、ソース拡散層30とドレイン拡散層40との間の領域に設けられたフローティングゲート50及びコントロールゲート60と、を備えている。
【0017】
フローティングゲート50と半導体基板10との間には、ゲート絶縁膜11が設けられている。フローティングゲート50は、例えばポリシリコンを含んで構成され、ドレイン拡散層40側の端部に、先端が尖った尖鋭部51を有する。尖鋭部51の先端は、フローティングゲート50を構成するポリシリコンの結晶粒(グレイン)に依存しない辺を、奥行方向に形成している。
【0018】
フローティングゲート50の上面には、プロテクト酸化膜14を介してスペーサ15が設けられている。スペーサ15は、コントロールゲート60をフローティングゲート50に対して自己整合的に形成するために用いられる。また、スペーサ15は、フローティングゲート50をパターニングする際のマスクとしても用いられる。プロテクト酸化膜14は、フローティングゲート50とスペーサ15との間に設けられ、且つスペーサ15の、ドレイン拡散層40側の側面を覆っている。スペーサ15は、例えば、NSG膜(None-doped Silicate Glass)等の絶縁体(SiO2)で構成されている。
【0019】
プロテクト酸化膜14はSiO
2を含むシリコン酸化膜であり、その膜厚が例えば5nm程度である。プロテクト酸化膜14の膜質は、スペーサ15よりも緻密(高密度)であり、後述する窒化膜13(
図3A参照)をエッチングするためのエッチャントに対する耐性がスペーサ15よりも高い。プロテクト酸化膜14がスペーサ15の側面を覆うことで、窒化膜13を除去するためのエッチング処理において、スペーサ15の側面のエッチングが抑制される。プロテクト酸化膜14に高い緻密性を与えるために、プロテクト酸化膜14の成膜後に熱処理を行うことが好ましい。また、プロテクト酸化膜14の全体を緻密化するために、プロテクト酸化膜14の膜厚は、10nm以下であることが好ましい。
【0020】
本実施形態において、スペーサ15のドレイン拡散層40側の側面(以下、単に、スペーサ15の側面という)は、逆テーパ形状を有しており、半導体基板10の主面に対してドレイン拡散層40側に傾斜している。このため、フローティングゲート50の尖鋭部51は、スペーサ15の側面に対して、ドレイン拡散層40側に突き出している。また、本実施形態に係るメモリセル100においては、プロテクト酸化膜14の、スペーサ15の側面を覆う部分の表面と、フローティングゲート50のドレイン拡散層40側の側面(以下、単に、フローティングゲート50の側面という)とが互いに異なる平面内に延在している。
【0021】
コントロールゲート60は、ポリシリコンを含んで構成され、フローティングゲート50の側面に、トンネル絶縁膜17を介して接し、且つスペーサ15の側面に、トンネル絶縁膜17及びプロテクト酸化膜14を介して接している。すなわち、スペーサ15の側面は、プロテクト酸化膜14及びトンネル絶縁膜17からなる2層の絶縁膜によって覆われている。また、コントロールゲート60は、半導体基板10の表面に、トンネル絶縁膜17を介して接している。コントロールゲート60のドレイン拡散層40側の側面は、NSG等の絶縁体からなるサイドウォール61によって覆われている。
【0022】
ここで、
図2は、
図1において点線で囲んだ尖鋭部51の近傍領域Aの拡大図である。
図2に示すように、尖鋭部51の、スペーサ15の側面から突き出した先端部分(尖鋭部51の傾斜面)は、プロテクト酸化膜14及びトンネル絶縁膜17からなる2層の絶縁膜によって覆われている。すなわち、尖鋭部51の先端部分が、プロテクト酸化膜14及びトンネル絶縁膜17を介してコントロールゲート60と接している。
【0023】
図1に示すように、ソース拡散層30及びドレイン拡散層40は、半導体基板10の表層部において、フローティングゲート50及びコントロールゲート60を挟むように、互いに離間して設けられている。ソース拡散層30には、例えばポリシリコンで構成されたソース配線31が接続されている。ソース配線31は、フローティングゲート50及びスペーサ15のソース拡散層30側の側面に、絶縁膜16を介して接している。ドレイン拡散層40は、比較的低濃度の導電性不純物を含む低濃度拡散層41aと、低濃度拡散層41aの内側に設けられた、比較的高濃度の導電性不純物を含む高濃度拡散層41bとを含んで構成されている。ソース配線31、コントロールゲート60及び高濃度拡散層41bの表面には、それぞれシリサイド層70が設けられている。
【0024】
上記の構成を有するメモリセル100に例えばデータ“0”を書き込む場合には、半導体基板10の電圧を例えば0Vとし、コントロールゲート60及びソース配線31にそれぞれ、所定の電圧を印加する。これにより、コントロールゲート60及びフローティングゲート50の直下のチャネル領域に電流が流れ、ゲート絶縁膜11を介してフローティングゲート50に電子が注入される。注入された電子は、フローティングゲート50に蓄積される。フローティングゲート50への電子の注入によりメモリセル100のスレッショルド電圧が高くなる。一方、メモリセル100に書き込まれたデータ“0”を、データ“1”に書き換える場合(データを消去する場合)、ドレイン拡散層40及びソース拡散層30の電圧を例えば0Vとし、コントロールゲート60に所定の電圧を印加する。これにより、トンネル絶縁膜17に、ファウラー・ノルドハイム・トンネル電流(Fowler-Nordheim Tunneling Current)が流れ、フローティングゲート50に蓄積された電子が、コントロールゲート60に引き抜かれる。これにより、フローティングゲート50に電子が蓄積されている場合と比較して、メモリセル100のスレッショルド電圧が低くなる。フローティングゲート50が尖鋭部51を有することで、尖鋭部51において電界集中が生じるので、比較的低い電圧でデータ“1”への書き替え(データ消去)を行うことが可能である。なお、フローティングゲート50に電子が蓄積されている状態をデータ“1”とし、フローティングゲートに電子が蓄積されていない状態をデータ“0”としてもよい。
【0025】
以下に、半導体装置1の製造方法について
図3A~
図3Qを参照しつつ説明する。初めに、例えば、p型のシリコンで構成される半導体基板10の表面に熱酸化法によりSiO
2等の絶縁体からなる厚さ約8nm程度のゲート絶縁膜11を形成する。次に、例えばCVD(chemical vapor deposition)法によりゲート絶縁膜11の表面に厚さ約80nm程度のポリシリコン膜12を形成する。ポリシリコン膜12は、メモリセルのフローティングゲート50を構成する。次に、例えばCVD法によりポリシリコン膜12の表面に厚さ約300nm程度の窒化膜(シリコン窒化膜 Si
3N
4膜)13を形成する。次に、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を用いて、窒化膜13の、フローティングゲート50およびソース拡散層30の形成予定位置に開口部13aを形成し、開口部13aにおいてポリシリコン膜12を露出させる(
図3A)。
【0026】
次に、窒化膜13をマスクとしてポリシリコン膜12の表面を約20nm程度エッチングし、ポリシリコン膜12の表面に凹部12aを形成する。凹部12aを形成するエッチングとして等方性エッチングを用いる。これにより、凹部12aの端部が、窒化膜13の下方に形成される。凹部12aの端部に形成される傾斜面は、フローティングゲート50の尖鋭部51の傾斜面に対応する(
図3B)。
【0027】
次に、例えばLP-CVD法(減圧CVD法)を用いて、窒化膜13の表面、開口部13aの側面、及びポリシリコン膜12の凹部12aの表面に、厚さ約5nm程度のSiO
2等の絶縁体からなるプロテクト酸化膜14を形成する。プロテクト酸化膜14は、膜質が良好なHTO膜(High Temperature Oxide膜)であることが好ましい(
図3C)。
【0028】
ここで、ポリシリコン膜12の凹部12aの表面に、熱酸化により酸化膜を形成した場合について考える。この場合、酸化膜は、ポリシリコン膜12のグレイン(結晶粒)に応じて成長し、後に形成されるフローティングゲート50の尖鋭部51の先端形状がポリシリコン膜12のグレインに応じた凹凸を含む形状となる。その結果、フローティングゲート50からの電子の引き抜きが不安定となるおそれがある。本実施形態に係る製造方法においては、プロテクト酸化膜14をCVDにより形成することで、フローティングゲート50の尖鋭部51の先端形状が、ポリシリコン膜12のグレインに依存しなくなり、尖鋭部51の先端に凹凸が発生することを抑制できる。これにより、フローティングゲート50からの電子の引き抜きが安定し、メモリセルの書込み/消去特性が向上する。
【0029】
プロテクト酸化膜14の成膜後、RTA(Rapid Thermal Anneal)処理を実施することにより、プロテクト酸化膜14を緻密化(硬化)させる。プロテクト酸化膜14を緻密化させることで、窒化膜13のエッチングに用いられるエッチャントに対するプロテクト酸化膜14のエッチング耐性が向上する。なお、RTA処理によるCVD酸化膜の緻密化は、CVD酸化膜の表面から進行する。本実施形態では、プロテクト酸化膜14が5nmという薄膜で形成されているため、プロテクト酸化膜14の厚さ方向の全体を緻密化することが可能となり、プロテクト酸化膜14の全体のエッチング耐性を高めることができる。なお、本工程において実施されるRTA処理は、ポリシリコン膜12の酸化を抑制し、尖鋭部51の先端形状を維持すると共に窒化膜13との選択比を向上させるために、アルゴン雰囲気下で実施することが好ましい。
【0030】
次に、例えばCVD法により、窒化膜13の上面、開口部13aの側面、及びポリシリコン膜12の凹部12aの表面に形成されたプロテクト酸化膜14の表面に、コンフォーマルなNSG膜(SiO
2)を形成する。続いて、このNSG膜を異方性ドライエッチングによりエッチバック処理を行うことにより、スペーサ15を形成する。スペーサ15は、窒化膜13の開口部13aの側面及びポリシリコン膜12の上面にプロテクト酸化膜14を介して接し、且つポリシリコン膜12の凹部12aの中央においてポリシリコン膜12を露出させる(
図3D)。
【0031】
次に、スペーサ15をマスクとして用いたドライエッチングによりポリシリコン膜12及びゲート絶縁膜11をエッチングして半導体基板10を露出させる。すなわち、このエッチング処理によりポリシリコン膜12のパターニングが行われる(
図3E)。
【0032】
次に、例えばCVD法により窒化膜13、スペーサ15、ポリシリコン膜12、ゲート絶縁膜11及び半導体基板10の露出部分を覆うNSGを形成したのち、異方性エッチングによりNSGをエッチバックすることで、絶縁膜16を形成する。絶縁膜16は、半導体基板10を露出させつつスペーサ15、ポリシリコン膜12及びゲート絶縁膜11の側面を覆う(
図3F)。
【0033】
次に、例えばイオン注入法により、スペーサ15及び絶縁膜16の開口部において露出している半導体基板10の表面にn型のソース拡散層30を形成する。このイオン注入処理においては、スペーサ15及び絶縁膜16がマスクとして用いられ、リンなどの5価の元素が半導体基板10に注入される(
図3G)。
【0034】
次に、例えばCVD法によりスペーサ15及び絶縁膜16の開口部を埋めるようにポリシリコン膜を形成する。続いて、このポリシリコン膜をエッチバック処理することによりソース配線31を形成する。ソース配線31の高さ位置が窒化膜13の上面、スペーサ15の頂部の高さ位置よりも低くなるようにエッチバック処理が行われる。ソース配線31は、ソース拡散層30に電気的に接続される一方、絶縁膜16によってポリシリコン膜12から絶縁される(
図3H)。
【0035】
次に、例えば熱酸化法によりソース配線31の表面にSiO
2等の絶縁体からなる厚さ約10nm程度の保護膜32を形成する。続いて、例えば150℃のリン酸(H
3PO
4)を用いたエッチングにより、窒化膜13を除去する。これにより、プロテクト酸化膜14のスペーサ15の側面を覆う部分及びポリシリコン膜12の表面が露出する(
図3I)。
【0036】
本エッチング工程では、ソース配線31の表面は熱酸化膜からなる保護膜32により保護され、スペーサ15の側面及びポリシリコン膜12の凹部12aの端部(尖鋭部51の傾斜面)はプロテクト酸化膜14により保護される。特に、プロテクト酸化膜14は、RTA処理により緻密化されたCVD酸化膜で構成されているため、リン酸に対するエッチングレートが低く、横方向及び縦方向のエッチングが生じにくい。従って、スペーサ15の側面のエッチングが抑制され、スペーサ15の形状が維持される。これにより、ポリシリコン膜12の傾斜面(尖鋭部51)の近傍に、スペーサ15のエッチングに伴う凹状空間(
図4Bの凹状空間200を参照)が形成されることを防止できる。
【0037】
ここで、例えば、膜厚が100nm以上のCVD酸化膜にRTA処理を行った場合、緻密化される部分は、CVD酸化膜の表面のみとなり、CVD酸化膜の内部は緻密化されない。従って、例えば、プロテクト酸化膜14を用いることに代えて、熱処理によりスペーサ15の表面を緻密化したとしても、プロテクト酸化膜14を用いる場合に得られるスペーサ15の側面のエッチング抑制効果は得られない。
【0038】
次に、スペーサ15及びプロテクト酸化膜14をマスクとして用いたドライエッチングによりポリシリコン膜12のパターニングを行う。これにより、ソース配線31を間に挟んで互いに分離した一対のフローティングゲート50が形成される。次に、半導体基板10上のゲート絶縁膜11を除去する(
図3J)。フローティングゲート50の端部には、先の工程においてポリシリコン膜12に凹部12aを形成したことにより、尖鋭部51が形成される。尖鋭部51の先端は、ポリシリコン膜12のグレイン(結晶粒)に依存しない辺を奥行方向に形成している。
【0039】
次に、例えばCVD法により半導体基板10の表面、フローティングゲート50の側面、プロテクト酸化膜14の表面、絶縁膜16及び保護膜32の露出部分を覆う、SiO
2等の絶縁体からなる厚さ約10nm程度のトンネル絶縁膜17を形成する(
図3K)。フローティングゲート50の尖鋭部51の、スペーサ15の側面から突き出した先端部分(尖鋭部51の傾斜面)は、プロテクト酸化膜14及びトンネル絶縁膜17からなる2層の絶縁膜によって覆われる。これにより、フローティングゲート50からコントロールゲート60への電子の抜けを抑制することが可能となる。
【0040】
次に、例えばCVD法によりトンネル絶縁膜17の表面を覆う厚さ約200nm程度のポリシリコン膜18を形成する(
図3L)。ポリシリコン膜18は、トンネル絶縁膜17によってフローティングゲート50及び半導体基板10から絶縁される。ポリシリコン膜18は、コントロールゲート60を構成する。次に、例えばCVD法によりポリシリコン膜18を覆うSiO
2等の絶縁体からなる厚さ約8nm程度の絶縁膜19を形成する。続いて、例えばCVD法により絶縁膜19を覆う厚さ約100nm程度のポリシリコン膜20を形成する(
図3L)。絶縁膜19は、半導体基板10上にメモリセル100と共に形成される周辺回路を構成するトランジスタ(図示せず)のゲート絶縁膜を構成する。ポリシリコン膜20は、周辺回路を構成するトランジスタのゲートを構成する。
【0041】
次に、フォトグラフィ技術及びエッチング技術によりポリシリコン膜20のパターニングを行い、周辺回路のゲート電極を形成する。このとき、メモリセル100の形成領域においては、ポリシリコン膜18上に形成されたポリシリコン膜20は除去される。次に、異方性ドライエッチングにより絶縁膜19を除去しつつポリシリコン膜18を後退させるエッチバック処理によりポリシリコン膜18のパターニングを行う。これにより、コントロールゲート60が形成される(
図3M)。コントロールゲート60は、トンネル絶縁膜17を介してフローティングゲート50と接し、トンネル絶縁膜17及びプロテクト酸化膜14を介してスペーサ15と接する。
【0042】
次に、例えばイオン注入法により半導体基板10の表面にn型の低濃度拡散層41aを形成する。このイオン注入工程においては、コントロールゲート60がマスクとして用いられ、リンなどの5価の元素が半導体基板10に注入される。イオン注入量は、例えば1×10
13/cm
2とされる(
図3N)。
【0043】
次に、例えばCVD法によりメモリセル100全体を覆う絶縁膜21を形成する(
図3O)。絶縁膜21は、コントロールゲート60のサイドウォール61を構成する。絶縁膜21は、例えば、厚さ10nm程度のNSG膜と厚さ90nm程度のSiN膜とを積層した積層膜によって構成されていてもよい。また、絶縁膜21は、単一の材料からなる単層膜であってもよい。
【0044】
次に、例えば異方性ドライエッチングにより絶縁膜21を後退させるエッチバック処理によりサイドウォール61を形成する。サイドウォール61は、コントロールゲート60の側面に接し且つ低濃度拡散層41aの端部を覆う。次に、例えばイオン注入法により、低濃度拡散層41a内にn型の高濃度拡散層41bを形成する。このイオン注入工程においては、コントロールゲート60およびサイドウォール61がマスクとして用いられ、リンなどの5価の元素が低濃度拡散層41aの表面に注入される。イオン注入量は、例えば1×10
15/cm
2とされる(
図3P)。低濃度拡散層41a及び高濃度拡散層41bによりドレイン拡散層40が構成される。
【0045】
次に、ソース配線31の上面を覆う保護膜32を除去した後、例えばスパッタ法により、メモリセル100全体を覆う厚さ約10nm程度のコバルト膜を形成する。次に、約550℃程度のRTA処理を実施する。この熱処理により、コバルトとシリコンが反応し、コントロールゲート60、ソース配線31、および高濃度拡散層41bの表面にそれぞれシリサイド層70が形成される。その後、硫酸過水やアンモニア過水等を用いた洗浄により、絶縁膜16及びサイドウォール61上に堆積した未反応のコバルトが除去される(
図3Q)。このように、自己整合的に形成されるシリサイド層をサリサイドと呼ぶ。シリサイド層70を形成することで、コントロールゲート60、ソース配線31および高濃度拡散層41bの抵抗を小さくすることが可能となる。なお、コバルトに代えてモリブテン、タングステン、チタン、ニッケルなどを用いてもよい。
【0046】
上記の工程の後、半導体基板10表面をNSG膜等により被覆し、コントロールゲート60、ソース配線31、ドレイン拡散層40に接続される配線を形成することで、スプリットゲート型の不揮発性メモリのメモリセル100が形成される。
【0047】
図4A~
図4Dは、それぞれ、比較例に係るメモリセル100Xの製造工程の一例を示す部分的な断面図である。比較例に係るメモリセル100Xは、本実施形態に係るメモリセル100が備えるプロテクト酸化膜14を備えていない。すなわち、
図4Aに示すように、スペーサ15は、フローティングゲートを構成するポリシリコン膜12及び窒化膜13と直接接している。従って、
図4Bに示すように、窒化膜13を除去するためのエッチングにより、スペーサ15の側面がエッチングされ、後退する。スペーサ15のエッチングによる後退は、横方向のみならず縦方向にも生じるため、フローティングゲート50の尖鋭部51を形成するポリシリコン膜12の傾斜面の近傍に、凹状空間200が生じる。
【0048】
凹状空間200は、極めて小さいため、
図4Cに示すように、トンネル絶縁膜17の凹状空間200の内部へ充填が不十分となり、トンネル絶縁膜17は、凹状空間200の形成位置において、膜厚が薄くなる若しくは膜質が劣化する。これにより、
図4Dに示すように、フローティングゲート50に蓄積された電子がコントロールゲート60に抜け、メモリセル100Xに記憶されているデータが書き換わるおそれがある。例えば、スペーサ15のエッチングを抑制するために、熱処理によりスペーサ15の緻密化を試みたとしても、熱処理によって緻密化されるのはスペーサ15の表層部分に限られる。すなわち、尖鋭部51が存在するスペーサ15の底部まで緻密化することは困難である。従って、スペーサ15の側面がプロテクト酸化膜14によって覆われていない比較例に係るメモリセル100Xによれば、凹状空間200の形成を抑制することは困難である。
【0049】
一方、本発明の実施形態に係る半導体装置1及びその製造方法によれば、熱処理を加えることで全体が緻密化されたプロテクト酸化膜14によってスペーサ15の側面が覆われる。これにより窒化膜13を除去するためのエッチングにおいて、スペーサ15の側面の後退が抑制され、フローティングゲート50の尖鋭部51の近傍に、凹状空間が生じることを防止することができる。また、全体が緻密化されたプロテクト酸化膜14は、窒化膜13を除去するためのエッチャントに対する耐性が高く、窒化膜13のエッチングを行った場合でも、成膜時の膜厚が維持される。従って、窒化膜13のエッチングを行った場合に、フローティングゲート50の尖鋭部51を覆う絶縁膜の膜厚が薄くなることや膜質が劣化することを抑制することができる。これにより、フローティングゲート50に蓄積された電子のコントロールゲート60への抜けを防止することができ、メモリセル100に記憶されているデータが書き換わる不具合の発生が抑制される。
【0050】
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態に係る半導体装置1Aの構成の一例を示す断面図である。半導体装置1Aを構成する各メモリセル100Aは、スペーサ15の側面が、半導体基板10の主面に対して略垂直であり、プロテクト酸化膜14の、スペーサ15の側面を覆う部分の表面と、フローティングゲート50の側面とが同一平面内に延在している点が第1の実施形態に係る半導体装置1と異なる。
【0051】
以下に、半導体装置1Aの製造方法について
図6A~
図6Hを参照しつつ説明する。半導体基板10の表面に、ゲート絶縁膜11を介してフローティングゲート50を構成するポリシリコン膜12を形成する。次に、ポリシリコン膜12の表面に開口部13aを有する窒化膜13を形成する。開口部13aの側面は、半導体基板10の主面に対して垂直となるように形成する。次に、窒化膜13をマスクとしてポリシリコン膜12の表面を約20nm程度エッチングし、ポリシリコン膜12の表面に凹部12aを形成する。凹部12aを形成するエッチングとしてスパッタ成分が高い異方性エッチングを用いる。これにより、凹部12aの外縁に傾斜面が形成される。凹部12aは、窒化膜13の開口部13aに対応する領域に形成され、凹部の外縁に形成された傾斜面は、フローティングゲート50の尖鋭部51の傾斜面に対応する(
図6A)。
【0052】
次に、例えばLP-CVD法を用いて、窒化膜13の表面、開口部13aの側面、及びポリシリコン膜12の凹部12aの表面に、厚さ約5nm程度のSiO
2等の絶縁体からなるプロテクト酸化膜14を形成する(
図6B)。その後、RTA処理を実施することにより、プロテクト酸化膜14を緻密化(硬化)させる。
【0053】
次に、スペーサ15の形成、ポリシリコン膜12のエッチング、絶縁膜16の形成、ソース拡散層30の形成、ソース配線31の形成、保護膜32の形成を行う(
図6C)。
【0054】
次に、例えば150℃のリン酸(H
3PO
4)を用いたエッチングにより、窒化膜13を除去する。これにより、プロテクト酸化膜14のスペーサ15の側面を覆う部分及びポリシリコン膜12の表面が露出する(
図6D)。本エッチング工程では、ソース配線31の表面は熱酸化膜からなる保護膜32により保護され、スペーサ15の側面及びポリシリコン膜12の凹部12aの端部(尖鋭部51の傾斜面)はプロテクト酸化膜14により保護される。特に、プロテクト酸化膜14は、RTA処理により緻密化されたCVD酸化膜で構成されているため、リン酸に対するエッチングレートが低く、横方向及び縦方向のエッチングが生じにくい。従って、スペーサ15の側面に対するエッチングが抑制され、スペーサ15の形状が維持される。これにより、ポリシリコン膜12の傾斜面(尖鋭部51)の近傍に、スペーサ15のエッチングに伴う凹状空間(
図4Bの凹状空間200を参照)が形成されることを防止できる。
【0055】
次に、スペーサ15及びプロテクト酸化膜14をマスクとして用いたドライエッチングによりポリシリコン膜12のパターニングを行う。これにより、ソース配線31を間に挟んで互いに分離した一対のフローティングゲート50が形成される。次に、半導体基板10上のゲート絶縁膜11を除去する(
図6E)。フローティングゲート50の端部には、先の工程においてポリシリコン膜12に凹部12aを形成したことにより、尖鋭部51が形成される。
【0056】
半導体基板10の主面に対して垂直な側面を有するスペーサ15及びこの側面を覆うプロテクト酸化膜14をマスクとしてポリシリコン膜12をエッチングした場合には、フローティングゲート50の、エッチングにより表出する端面(側面)は、プロテクト酸化膜14の表面形状に応じた形状となる。従って、尖鋭部51の先端には凹凸が生じることはなく、フローティングゲート50からの電子の引き抜きが安定し、メモリセル100Aの書込み/消去特性が安定する。
【0057】
次に、例えばCVD法により半導体基板10の表面、フローティングゲート50の側面、プロテクト酸化膜14の表面、絶縁膜16及び保護膜32の露出部分を覆う、SiO
2等の絶縁体からなる厚さ約10nm程度のトンネル絶縁膜17を形成する(
図6F)。
【0058】
次に、例えばCVD法により、コントロールゲート60を構成するポリシリコン膜の形成及びパターニングを行うことで、コントロールゲート60を形成する(
図6G)。コントロールゲート60は、トンネル絶縁膜17を介してフローティングゲート50と接し、トンネル絶縁膜17及びプロテクト酸化膜14を介してスペーサ15と接する。
【0059】
次に、低濃度拡散層41aの形成、サイドウォール61の形成、高濃度拡散層41bの形成、シリサイド層70の形成を行う(
図6H)。
【0060】
上記の工程の後、半導体基板10表面をNSG膜等により被覆し、コントロールゲート60、ソース配線31、ドレイン拡散層40に接続される配線を形成することで、スプリットゲート型の不揮発性メモリのメモリセル100Aが形成される。
【0061】
図7A及び
図7Bは、それぞれ、比較例に係るメモリセル100Yの製造工程の一例を示す部分的な断面図である。比較例に係るメモリセル100Yは、本実施形態に係るメモリセル100Aが備えるプロテクト酸化膜14を備えていない。
【0062】
図7Aに示すように、スペーサ15の側面は、上方に向けて広がったテーパ形状を有しており、半導体基板10の主面に対して傾斜している。
図7Bに示すように、側面が傾斜しているスペーサ15をマスクとして、フローティングゲート50を構成するポリシリコン膜12をエッチングすると、スペーサ15の頂部とポリシリコン膜12とが離間していることに起因して、エッチングによって表出するフローティングゲート50の端面S1に凹凸が生じ、尖鋭部51の端部の形状にばらつきを生じる。その結果、フローティングゲート50からの電子の引き抜きが不安定となり、メモリセル100Yの書き込み/消去特性が不安定となる。
【0063】
上記の問題を解決するために、
図8に示すように、スペーサ15の側面を半導体基板10の主面に対して垂直とし、スペーサ15とポリシリコン膜12とを密着させる方法が考えられる。ここで、
図9A~
図9Cは、
図8に示す比較例に係るメモリセル100Zの製造工程の一例を示す部分的な断面図である。
図9Dは、メモリセル100Zを、
図9Cに示す矢印方向から眺めた平面図である。
【0064】
比較例に係るメモリセル100Zによれば、
図9A及び
図9Bに示すように、窒化膜13を除去する工程において、スペーサ15の側面がエッチングされ後退する。これにより、ポリシリコン膜12の傾斜面上にスペーサ15の裾15aが残留する。スペーサ15の裾15aの形状は制御することが困難であり、
図9C、
図9Dに示すように、裾15aを伴うスペーサ15をマスクとしてポリシリコン膜12のパターニングを行うと、形成されるフローティングゲート50の端面S1は、スペーサ15の裾15aに応じた凹凸形状となる。これにより、尖鋭部51の先端の形状も裾15aに応じた凹凸形状となるためフローティングゲート50からの電子の引き抜きが不安定となる。
【0065】
【0066】
本実施形態に係るメモリセル100Aの製造方法によれば、
図10Aに示すように、スペーサ15の側面は、半導体基板10の主面に対して略垂直であり且つプロテクト酸化膜14によって覆われている。熱処理を加えることで全体が緻密化されたプロテクト酸化膜14は、窒化膜13を除去するためのエッチャントに対する耐性が高く、
図10Bに示すように、窒化膜13のエッチングを行った場合でも成膜時の膜厚が維持される。半導体基板10の主面に対して垂直な側面を有するスペーサ15及びこの側面を覆うプロテクト酸化膜14をマスクとしてポリシリコン膜12をエッチングした場合には、
図10C及び
図10Dに示すように、フローティングゲート50の、エッチングにより表出する端面S1は、プロテクト酸化膜14の表面形状に応じて平坦となる。従って、尖鋭部51の先端には凹凸が生じることはなく、フローティングゲート50からの電子の引き抜きが安定し、メモリセル100Aの書込み/消去特性が安定する。
【0067】
なお、ゲート絶縁膜11は、本発明における第1の絶縁膜の一例である。プロテクト酸化膜14は、本発明における第2の絶縁膜の一例である。トンネル絶縁膜17は、本発明における第3の絶縁膜の一例である。絶縁膜16は、本発明における第4の絶縁膜の一例である。ソース配線31は、本発明における導電部材の一例である。ポリシリコン膜12は、本発明におけるゲート部材の一例である。窒化膜13は、本発明におけるマスク部材の一例である。
【符号の説明】
【0068】
1、1A 半導体装置
10 半導体基板
11 ゲート絶縁膜
12、18 ポリシリコン膜
13 窒化膜
14 プロテクト酸化膜
15 スペーサ
16 絶縁膜
17 トンネル絶縁膜
30 ソース拡散層
31 ソース配線
40 ドレイン拡散層
50 フローティングゲート
51 尖鋭部
60 コントロールゲート