(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】電磁誘導式位置検出装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20220808BHJP
G01D 5/245 20060101ALI20220808BHJP
G01D 5/244 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
G01D5/20 110Q
G01D5/245 110B
G01D5/20 110E
G01D5/244 G
(21)【出願番号】P 2017231577
(22)【出願日】2017-12-01
【審査請求日】2020-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】田原 智弘
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-117998(JP,A)
【文献】特開平9-210611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/252
G01B 7/00-7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に沿って配置される複数の目盛コイルを有する板状の目盛基板と、前記目盛コイルに対向して設けられる送信手段および受信手段を有する検出器と、前記送信手段を駆動することで前記目盛コイルを経由して前記受信手段にて検出される信号の変化から前記目盛基板に対する前記検出器の前記所定方向の位置を算出する制御手段と、を備える電磁誘導式位置検出装置であって、
前記目盛コイルは、
前記所定方向に沿って所定のピッチにて配置されるとともに前記送信手段と対向する送信目盛と、
前記所定方向に沿って前記送信目盛とは異なるピッチにて配置されるとともに前記受信手段と対向する受信目盛と、
前記送信目盛および前記受信目盛を接続する接続部と、を備え、
前記送信手段は、
前記所定方向に沿って所定の位相差でずらして配置される複数の送信コイル群と、
前記所定方向に沿って前記送信目盛におけるピッチの整数倍のピッチにて配置されることによって前記送信コイル群を構成する複数の送信コイルと、を備え、
前記受信手段は、
前記所定方向に沿って前記複数の送信コイル群と同じ位相差でずらして配置される複数の受信コイル群と、
前記所定方向に沿って前記受信目盛におけるピッチの整数倍のピッチにて配置されることによって前記受信コイル群を構成する複数の受信コイルと、を備え、
前記制御手段は、
前記複数の送信コイル群を独立して順番に駆動し前記複数の送信コイル群の駆動順ごとに前記複数の受信コイル群にて検出される複数の信号に基づいて、前記目盛基板に対する前記検出器の絶対位置を算出するための絶対位置信号と、前記目盛基板に対する前記検出器の相対位置を算出するための相対位置信号と、を生成し、前記絶対位置信号と前記相対位置信号とに基づいて前記目盛基板に対する前記検出器の前記所定方向の位置を算出することを特徴とする電磁誘導式位置検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載された電磁誘導式位置検出装置において、
前記複数の送信コイルは、
前記所定方向に沿って前記送信目盛におけるピッチと同じピッチにて配置され、
前記複数の受信コイルは、
前記所定方向に沿って前記受信目盛におけるピッチと同じピッチにて配置されることを特徴とする電磁誘導式位置検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載された電磁誘導式位置検出装置において、
前記複数の送信コイルは、
前記所定方向に沿って前記送信目盛におけるピッチの2倍のピッチにて配置され、
前記複数の受信コイルは、
前記所定方向に沿って前記受信目盛におけるピッチの2倍のピッチにて配置されることを特徴とする電磁誘導式位置検出装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された電磁誘導式位置検出装置において、
前記制御手段は、
前記複数の送信コイル群を独立して順番に駆動する駆動部と、
前記複数の送信コイル群の駆動順ごとに前記複数の受信コイル群にて複数の信号を検出する検出部と、
前記複数の信号に基づいて前記目盛基板に対する前記検出器の絶対位置を算出するための絶対位置信号を生成する絶対位置信号生成部と、
前記複数の信号に基づいて前記目盛基板に対する前記検出器の相対位置を算出するための相対位置信号を生成する相対位置信号生成部と、
前記絶対位置信号と前記相対位置信号とに基づいて前記目盛基板に対する前記検出器の前記所定方向の位置を算出する算出部と、を備えることを特徴とする電磁誘導式位置検出装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載された電磁誘導式位置検出装置を備える電磁誘導式エンコーダであって、
所定方向に沿って配置される前記目盛コイルを有する板状のスケールと、
前記目盛コイルに対向して設けられる前記送信手段および前記受信手段を有するヘッドと、を備え、
前記制御手段は、
前記絶対位置信号と前記相対位置信号とに基づいて前記スケールに対する前記ヘッドの前記所定方向の位置を算出することを特徴とする電磁誘導式エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導式位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定方向に沿って所定のピッチで配置される目盛コイルを有する板状の目盛基板と、目盛コイルに対向して設けられる送信コイルおよび受信コイルを有する検出器と、を備える電磁誘導式検出装置が知られている。電磁誘導式検出装置は、例えばノギスやインジケータ、リニアスケール、マイクロメータ等に用いられる。電磁誘導式検出装置は、送信コイルを駆動(励磁)することで目盛コイルを経由して、受信コイルにて目盛コイルのピッチと同じ周期の正弦波信号(信号)を検出する。電磁誘導式検出装置は、検出された信号から目盛基板に対する検出器の所定方向の位置を算出する。
【0003】
例えば特許文献1では、電磁誘導式エンコーダ(電磁誘導式位置検出装置)は、スケールコイル(目盛コイル)を有するスケール(目盛基板)と、送信コイルおよび受信コイルを有するヘッド(検出器)と、を備える。このような電磁誘導式エンコーダは、複数の基板を重ねて形成される多層基板を用いてスケールコイルや送信コイルおよび受信コイルを構成している。
【0004】
ここで、電磁誘導式エンコーダによるスケールに対するヘッドの所定方向の位置の算出方式としてインクリメンタル方式(INC方式)と、アブソリュート方式(ABS方式)と、が知られている。
INC方式は、スケールが有する一定のピッチで配置されたインクリメンタル目盛コイル(INC目盛コイル)をヘッドにて連続的に検出し、通過したINC目盛コイルにおけるコイルの数をカウントアップまたはカウントダウンすることで、相対位置を算出する方式である。しかし、INC方式は、スケールに対するヘッドの所定方向の絶対位置は取得することができないという問題がある。
【0005】
一方、ABS方式は、スケールにランダムに配置されたアブソリュート目盛コイル(ABS目盛コイル)をヘッドにて適宜なタイミングで検出し、検出した信号を解析することで、絶対位置を検出する方式である。ABS方式は、スケールに対するヘッドの所定方向の絶対位置を取得することができる。しかし、ABS方式は、絶対位置を取得することができるもののINC方式と比べて低い分解能の位置情報しか取得することができないという問題がある。
【0006】
このような問題に対して、例えば特許文献2では、INC方式およびABS方式の両方の算出方式を併用したエンコーダ(電磁誘導式位置検出装置)が提案されている。エンコーダは、INCパターン(INC目盛コイル)を含むインクリメンタルトラック(INCトラック)と、ABSパターン(ABS目盛コイル)を含むアブソリュートトラック(ABSトラック)と、が設けられたダブルトラック形式のスケールを用いる。そして、検出ヘッド(検出器)にてINCパターンおよびABSパターンを検出し、各パターンに基づいて位置情報を算出する。
【0007】
このエンコーダは、INCパターンから算出した相対位置と、ABSパターンから算出した絶対位置と、を比較する。そして、エンコーダは、相対位置と絶対位置とを組み合わせてスケールに対するヘッドの所定方向の位置を算出したり、相対位置と絶対位置とを照合して検出エラーを検証したり、絶対位置によって相対位置を補正したりしている。
【0008】
INC方式およびABS方式を用いて、さらに高分解能なスケールに対するヘッドの所定方向の位置を算出したい場合、電磁誘導式エンコーダは、検出する信号の周期を小さく構成することが考えられる。具体的には、電磁誘導式エンコーダは、例えばスケールコイルや送信コイルおよび受信コイルのピッチを小さく構成することで、信号の周期を小さく構成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2000-180209号公報
【文献】特開2013-79915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このような電磁誘導式エンコーダでは、スケールコイルや送信コイルおよび受信コイルのピッチを小さく構成すると、スケールやヘッドのデザインルールが問題となる。
ここで、デザインルールとは、例えばスケールコイルや送信コイルおよび受信コイルが構成される基板の大きさ等による製造上の物理的な制約である。
【0011】
すなわち、例えばスケールコイルや送信コイルおよび受信コイルのピッチを小さく形成すると、多層基板の基板同士を接続するスルーホール等のピッチも小さくなり、複数のスルーホール等が接触して形成されたり重なって形成されたりすることとなる。複数のスルーホール等が接触して形成されたり重なって形成されたりすると、ヘッドは、正常な信号を検出することができないという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、デザインルールによる制約を緩和するとともに絶対位置信号を検出して目盛基板に対する検出器の所定方向の位置の高分解能化を図ることができる電磁誘導式位置検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の電磁誘導式位置検出装置は、所定方向に沿って配置される複数の目盛コイルを有する板状の目盛基板と、目盛コイルに対向して設けられる送信手段および受信手段を有する検出器と、送信手段を駆動することで目盛コイルを経由して受信手段にて検出される信号の変化から目盛基板に対する検出器の所定方向の位置を算出する制御手段と、を備える電磁誘導式位置検出装置であって、目盛コイルは、所定方向に沿って所定のピッチにて配置されるとともに送信手段と対向する送信目盛と、所定方向に沿って送信目盛とは異なるピッチにて配置されるとともに受信手段と対向する受信目盛と、送信目盛および受信目盛を接続する接続部と、を備え、送信手段は、所定方向に沿って所定の位相差でずらして配置される複数の送信コイル群と、所定方向に沿って送信目盛におけるピッチの整数倍のピッチにて配置されることによって送信コイル群を構成する複数の送信コイルと、を備え、受信手段は、所定方向に沿って複数の送信コイル群と同じ位相差でずらして配置される複数の受信コイル群と、所定方向に沿って受信目盛におけるピッチの整数倍のピッチにて配置されることによって受信コイル群を構成する複数の受信コイルと、を備え、制御手段は、複数の送信コイル群を独立して順番に駆動し複数の送信コイル群の駆動順ごとに複数の受信コイル群にて検出される複数の信号に基づいて、目盛基板に対する検出器の絶対位置を算出するための絶対位置信号と、目盛基板に対する検出器の相対位置を算出するための相対位置信号と、を生成し、絶対位置信号と相対位置信号とに基づいて目盛基板に対する検出器の所定方向の位置を算出することを特徴とする。
【0014】
このような本発明によれば、電磁誘導式位置検出装置は、例えば送信コイル群および受信コイル群を3つずつ所定の位相差でずらして配置する場合、3つの送信コイル群を独立して順番に駆動すると、3つの送信コイル群の駆動順ごとに3つの受信コイル群にて合計9つの信号を検出することができる。
ここで、この9つの信号は、絶対位置信号および相対位置信号を合成した信号となっている。このため、電磁誘導式位置検出装置は、検出された9つの信号を所定の演算にて解析することにより、絶対位置信号および相対位置信号を生成することができる。制御手段は、生成された絶対位置信号と相対位置信号とに基づいて目盛基板に対する検出器の所定方向の位置を算出することができる。
【0015】
また、検出された9つの信号から生成される相対位置信号は、送信コイル群および受信コイル群を1つずつ有する電磁誘導式位置検出装置から検出される相対位置信号と比べて高分解能の相対位置信号である。
すなわち、電磁誘導式位置検出装置の目盛コイルは、所定のピッチの送信目盛と、送信目盛と異なるピッチの受信目盛と、を備え、検出器は、複数の送信コイル群および複数の受信コイル群を所定の位相差でずらして配置するとともに送信目盛におけるピッチの整数倍のピッチにて配置される送信コイルおよび受信目盛におけるピッチの整数倍のピッチにて配置される受信コイルにて構成されることで、送信コイルおよび受信コイルのピッチより小さな周期の相対位置信号を生成することができる。そして、電磁誘導式検出装置は、送信コイルおよび受信コイルのピッチを変更することなく、高分解能の相対位置信号を生成することができる。
【0016】
したがって、電磁誘導式位置検出装置は、目盛コイルや送信コイルおよび受信コイルのピッチを小さく構成することなく絶対位置信号を検出するとともに高分解能の相対位置信号を検出できるため、デザインルールによる制約を緩和するとともに絶対位置信号を検出して目盛基板に対する検出器の所定方向の位置の高分解能化を図ることができる。
【0017】
この際、複数の送信コイルは、所定方向に沿って送信目盛におけるピッチと同じピッチにて配置され、複数の受信コイルは、所定方向に沿って受信目盛におけるピッチと同じピッチにて配置されることが好ましい。
【0018】
ここで、電磁誘導式検出装置は、送信コイルを駆動することで目盛コイル(送信目盛、受信目盛および接続部)を経由して、受信コイルにて目盛コイルのピッチと同じ周期の信号を検出するが、例えば送信コイルを送信目盛におけるピッチの3倍のピッチにて配置するとともに受信コイルを受信目盛におけるピッチの3倍のピッチにて配置する場合、電磁誘導式検出装置の検出効率は低下する場合があるという問題がある。
【0019】
具体的には、送信コイルおよび受信コイルは、磁界の向きがプラス極となるコイルとマイナス極となるコイルとを所定方向に沿って交互に配置しているため、例えば送信目盛および受信目盛におけるピッチの3倍のピッチにて送信コイルおよび受信コイルを配置した場合、プラス極のコイルとマイナス極のコイルとの2つのコイルに対向して3つの目盛コイル(送信目盛、受信目盛および接続部)が配置されることになる。
【0020】
3つの目盛コイルは、例えば一方の目盛コイルがプラス極のコイルと対向し、他方の目盛コイルがマイナス極のコイルと対向することとなるが、中央の目盛コイルは、プラス極のコイルとマイナス極のコイルとの両方と対向することになる。このため、中央の目盛コイルは、プラス極のコイルとマイナス極のコイルとの両方の影響を受け、信号が打ち消し合うことから信号を検出することができない。
したがって、電磁誘導式検出装置は、送信コイルを送信目盛におけるピッチの整数倍のピッチにて配置するとともに受信コイルを受信目盛におけるピッチの整数倍のピッチにて配置する場合、検出効率が低下する場合がある。
【0021】
しかしながら、本発明によれば、複数の送信コイルは、送信目盛におけるピッチと同じピッチにて配置され、複数の受信コイルは、受信目盛におけるピッチと同じピッチにて配置されるため、信号が打ち消し合うことで検出効率が低下する目盛コイルの発生を抑制することができる。したがって、電磁誘導式検出装置は、例えば送信コイルを送信目盛におけるピッチの3倍のピッチにて配置するとともに受信コイルを受信目盛におけるピッチの3倍のピッチにて配置する場合と比較して、検出効率の低下を抑制することができる。
【0022】
この際、複数の送信コイルは、所定方向に沿って送信目盛におけるピッチの2倍のピッチにて配置され、複数の受信コイルは、所定方向に沿って受信目盛におけるピッチの2倍のピッチにて配置されることが好ましい。
【0023】
このような構成によれば、複数の送信コイルおよび複数の受信コイルは、送信目盛および受信目盛におけるピッチの2倍のピッチにて配置されることで、同じピッチにて配置される場合と比較して、複数の送信コイルおよび複数の受信コイルに対向して目盛コイルが2倍に配置されることとなる。したがって、電磁誘導式検出装置は、複数の送信コイルおよび複数の受信コイルが送信目盛および受信目盛におけるピッチと同じピッチにて配置される場合の電磁誘導式位置検出装置と比べて2倍程度大きい信号強度で信号を取得することができるため、効率的に信号を検出することができる。
【0024】
この際、制御手段は、複数の送信コイル群を独立して順番に駆動する駆動部と、複数の送信コイル群の駆動順ごとに複数の受信コイル群にて複数の信号を検出する検出部と、複数の信号に基づいて目盛基板に対する検出器の絶対位置を算出するための絶対位置信号を生成する絶対位置信号生成部と、複数の信号に基づいて目盛基板に対する検出器の相対位置を算出するための相対位置信号を生成する相対位置信号生成部と、絶対位置信号と相対位置信号とに基づいて目盛基板に対する検出器の所定方向の位置を算出する算出部と、を備えることが好ましい。
【0025】
このような構成によれば、例えば送信コイル群および受信コイル群を3つずつ所定の位相差でずらして配置する場合、制御手段は、3つの送信コイル群を独立して順番に駆動させる駆動部と、3つの送信コイル群の駆動順ごとに3つの受信コイル群にて9つの信号を検出する検出部と、を備える。
【0026】
そして、制御手段は、検出部にて検出された9つの信号から所定の演算により絶対位置信号を生成する絶対位置信号生成部と、検出部にて検出された9つの信号から所定の演算により相対位置信号を生成する相対位置信号生成部と、を備える。この9つの信号は、絶対位置信号および相対位置信号を合成した信号となっている。このため、絶対位置信号生成部は、9つの信号に対して所定の演算をすることで、絶対位置信号を生成することができ、相対位置信号生成部は、9つの信号に対して所定の演算をすることで、相対位置信号を生成することができる。また、相対位置信号生成部は、送信コイルおよび受信コイルのピッチより小さな周期の相対位置信号を生成することができる。
【0027】
したがって、電磁誘導式位置検出装置は、目盛コイルや送信コイルおよび受信コイルのピッチを小さく構成することなく絶対位置信号を検出するとともに高分解能の相対位置信号を検出できるため、デザインルールによる制約を緩和するとともに絶対位置信号を検出して目盛基板に対する検出器の所定方向の位置の高分解能化を図ることができる。
【0028】
本発明の電磁誘導式エンコーダは、本発明の電磁誘導式位置検出装置を備える電磁誘導式エンコーダであって、所定方向に沿って配置される目盛コイルを有する板状のスケールと、目盛コイルに対向して設けられる送信手段および受信手段を有するヘッドと、を備え、制御手段は、絶対位置信号と相対位置信号とに基づいてスケールに対するヘッドの所定方向の位置を算出することを特徴とする。
【0029】
このような構成によれば、電磁誘導式エンコーダは、本発明の電磁誘導式位置検出装置を備えるため、デザインルールによる制約を緩和するとともに絶対位置信号を検出してスケールに対するヘッドの所定方向の位置の高分解能化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電磁誘導式位置検出装置を示す斜視図
【
図2】前記電磁誘導式位置検出装置のスケールを示す上面図
【
図3】前記電磁誘導式位置検出装置のヘッドを示す底面図
【
図4】前記電磁誘導式位置検出装置の目盛コイル、送信手段、および受信手段を示す模式図
【
図5】前記電磁誘導式位置検出装置の制御手段を示すブロック図
【
図6】前記電磁誘導式位置検出装置の検出方法を示すフローチャート
【
図7】前記電磁誘導式位置検出装置の検出部により検出される信号を示すグラフ
【
図8】前記電磁誘導式位置検出装置の相対位置信号および絶対位置信号を示すグラフ
【
図9】本発明の第2実施形態に係る電磁誘導式位置検出装置の目盛コイル、送信手段、および受信手段を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0031】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る電磁誘導式位置検出装置を示す斜視図である。
電磁誘導式位置検出装置1は、電磁誘導式リニアエンコーダに用いられるとともに電磁誘導式リニアエンコーダの内部に設けられている。電磁誘導式位置検出装置1は、
図1に示すように、板状の目盛基板であるスケール2と、スケール2に対向して設けられる検出器であるヘッド3と、を備える。
なお、以下の説明および各図面において、スケール2の長手方向でありヘッド3の移動(測定)方向(所定方向)をX方向と記し、X方向に直交するスケール2の幅方向をY方向と記す場合がある。
【0032】
スケール2は、X方向(所定方向)に沿って配置される複数の目盛コイル4を有する。ヘッド3は、目盛コイル4と対向する送信手段5および受信手段6を有する。なお、ヘッド3は、
図1では説明の便宜上、透明な板状の部材から形成されているものとして記載している。
電磁誘導式位置検出装置1は、スケール2とヘッド3とをX方向に沿って相対移動させるとともに送信手段5を駆動することで目盛コイル4を経由して受信手段6にて検出される信号の変化からスケール2に対するヘッド3のX方向の位置を算出する。
【0033】
図2は、前記電磁誘導式位置検出装置のスケールを示す上面図である。
スケール2は、
図2に示すように、長尺状のガラスエポキシ樹脂からなる絶縁基板20により形成されている。複数の目盛コイル4は、X方向に沿って絶縁基板20におけるヘッド3と対向する一面に設けられている。
なお、絶縁基板20は、ガラスエポキシ樹脂ではなく、ガラスやシリコン等の材料から構成されていてもよい。
【0034】
目盛コイル4は、X方向に沿って所定のピッチにて配置されるとともに送信手段5(
図1参照)と対向する送信目盛40と、X方向に沿って送信目盛40とは異なるピッチにて配置されるとともに受信手段6(
図1参照)と対向する受信目盛41と、送信目盛40および受信目盛41を接続する接続部42と、を備える。目盛コイル4は、アルミニウム、銅、金などの電気抵抗が小さい材料である線状導体から構成されている。
【0035】
送信目盛40は、ピッチL1にて配置されている。受信目盛41は、送信目盛40とは異なるピッチであるピッチL0にて配置されている。この際、ピッチL1は、ピッチL0よりも大きいピッチに設定されている。
接続部42は、Y方向に沿って設けられる紙面上方向側に配置される送信目盛40と紙面下方向側に配置される受信目盛41とを接続して、一つの目盛コイル4を形成している。接続部42は、送信目盛40と受信目盛41とを切断部分のないループ状となるように接続している。
【0036】
図3は、前記電磁誘導式位置検出装置のヘッドを示す底面図である。
ヘッド3は、
図3に示すように、ガラスエポキシ樹脂からなる絶縁基板30により形成されている。絶縁基板30は、複数の基板を重ねて形成される多層基板を用いて送信手段5および受信手段6を構成している。なお、絶縁基板30は、ガラスエポキシ樹脂ではなく、ガラスやシリコン等の材料から構成されていてもよい。
【0037】
送信手段5は、X方向に沿って所定の位相差でずらして配置される複数の送信コイル群である第1の送信コイル群51と、第2の送信コイル群52と、第3の送信コイル群53と、を備える。第1の送信コイル群51~第3の送信コイル群53は、60度の位相差L1/6でずれて配置されている。
【0038】
第1の送信コイル群51は、複数の送信コイル511から構成され、第2の送信コイル群52は、複数の送信コイル522から構成され、第3の送信コイル群53は、複数の送信コイル533から構成されている。複数の送信コイル511,522,533は、複数の基板の層により構成され、絶縁基板30に形成されている。
【0039】
複数の送信コイル511,522,533は、送信目盛40におけるピッチL1と同じ(等倍の)ピッチL1にて配置されている。このため、複数の送信コイル511,522,533は、X方向に沿ってピッチL1にて配置されている。複数の送信コイル511,522,533は、アルミニウム、銅、金などの電気抵抗が小さい材料である線状導体から構成されている。
【0040】
受信手段6は、複数の受信コイル611,622,633から構成されるとともにX方向に沿って第1の送信コイル群51~第3の送信コイル群53と同じ位相差でずらして配置される複数の受信コイル群である第1の受信コイル群61と、第2の受信コイル群62と、第3の受信コイル群63と、を備える。すなわち、第1の受信コイル群61~第3の受信コイル群63は、60度の位相差L0/6でずれて配置されている。
【0041】
第1の受信コイル群61は、複数の受信コイル611から構成され、第2の受信コイル群62は、複数の受信コイル622から構成され、第3の受信コイル群63は、複数の受信コイル633から構成されている。複数の受信コイル611,622,633は、複数の基板の層により構成され、絶縁基板30に形成されている。
【0042】
複数の受信コイル611,622,633は、受信目盛41におけるピッチL0と同じ(等倍の)ピッチL0にて配置されている。このため、複数の受信コイル611,622,633は、X方向に沿ってピッチL0にて配置されている。複数の受信コイル611,622,633は、アルミニウム、銅、金などの電気抵抗が小さい材料である線状導体から構成されている。
【0043】
図4は、前記電磁誘導式位置検出装置の目盛コイル、送信手段、および受信手段を示す模式図である。具体的には、目盛コイル4に対する送信手段5および受信手段6の関係を示す図である。
図4に示すように、スケール2の送信目盛40は、ヘッド3の送信手段5と対向して設けられ、送信目盛40および複数の送信コイル511,522,533は、ともにピッチL1で配置されている。
また、スケール2の受信目盛41は、ヘッド3の受信手段6と対向して設けられ、受信目盛41および複数の受信コイル611,622,633は、ともにピッチL0で配置されている。
【0044】
図5は、前記電磁誘導式位置検出装置の制御手段を示すブロック図である。
電磁誘導式位置検出装置1は、
図5に示すように、送信手段5を駆動することで目盛コイル4を経由して受信手段6にて検出される信号の変化からスケール2に対するヘッド3のX方向の位置を算出する制御手段7と、制御手段7により算出されたスケール2に対するヘッド3のX方向の位置を電磁誘導式位置検出装置1の外部に出力する出力手段8と、をさらに備える。
【0045】
制御手段7は、第1の送信コイル群51~第3の送信コイル群53を独立して順番に駆動する駆動部71と、第1の送信コイル群51~第3の送信コイル群53の駆動順ごとに第1の受信コイル群61~第3の受信コイル群63にて複数の信号を検出する検出部72と、複数の信号に基づいてスケール2に対するヘッド3の絶対位置を算出するための絶対位置信号を生成する絶対位置信号生成部73と、複数の信号に基づいてスケール2に対するヘッド3の相対位置を算出するための相対位置信号を生成する相対位置信号生成部74と、絶対位置信号と相対位置信号とに基づいてスケール2に対するヘッド3のX方向の位置を算出する算出部75と、を備える。
【0046】
出力手段8は、例えば電磁誘導式位置検出装置1に接続するコンピュータのディスプレイ画面などに制御手段7によって算出されたスケール2に対するヘッド3のX方向の位置を出力して表示させる。なお、出力手段8は、ディスプレイ画面などでなくてもよく、制御手段7により算出されたスケール2に対するヘッド3のX方向の位置を出力することができれば、どのようなものであってもよい。
【0047】
図6は、前記電磁誘導式位置検出装置の検出方法を示すフローチャートである。また、
図7は、前記電磁誘導式位置検出装置の検出部により検出される信号を示すグラフであり、
図8は、前記電磁誘導式位置検出装置の相対位置信号および絶対位置信号を示すグラフである。
具体的には、
図7(A)は、第1の送信コイル群51を駆動した際に検出される第1信号を示すグラフであり、
図7(B)は、第2の送信コイル群52を駆動した際に検出される第2信号を示すグラフであり、
図7(C)は、第3の送信コイル群53を駆動した際に検出される第3信号を示すグラフである。また、
図8(A)は、絶対位置信号を示すグラフであり、
図8(B)は、相対位置信号を示すグラフである。
以下、制御手段7によるスケール2に対するヘッド3のX方向の位置の算出方法について、
図6~
図8を参照して説明する。
【0048】
電磁誘導式位置検出装置1の制御手段7は、
図6に示すように、先ず、駆動部71にて第1の送信コイル群51を駆動し、第1の受信コイル群61~第3の受信コイル群63を介して、検出部72にて第1信号S00,S01,S02を検出する第1信号検出工程を実行する(ステップST1)。
具体的には、
図7(A)に示すように、駆動部71が第1の送信コイル群51を駆動すると、検出部72は、第1の受信コイル群61にて受信する信号をS00とし、第2の受信コイル群62が検出する信号をS01とし、第3の受信コイル群63が検出する信号をS02として、第1信号S00,S01,S02を検出する。
【0049】
次に、制御手段7は、駆動部71にて第2の送信コイル群52を駆動し、第1の受信コイル群61~第3の受信コイル群63を介して、検出部72にて第2信号S10,S11,S12を検出する第2信号検出工程を実行する(ステップST2)。
具体的には、
図7(B)に示すように、駆動部71が第2の送信コイル群52を駆動すると、検出部72は、第1の受信コイル群61にて受信する信号をS10とし、第2の受信コイル群62が検出する信号をS11とし、第3の受信コイル群63が検出する信号をS12として、第2信号S10,S11,S12を検出する。
【0050】
続いて、制御手段7は、駆動部71にて第3の送信コイル群53を駆動し、第1の受信コイル群61~第3の受信コイル群63を介して、検出部72にて第3信号S20,S21,S22を検出する第3信号検出工程を実行する(ステップST3)。
具体的には、
図7(C)に示すように、駆動部71が第3の送信コイル群53を駆動すると、検出部72は、第1の受信コイル群61にて受信する信号をS20とし、第2の受信コイル群62が検出する信号をS21とし、第3の受信コイル群63が検出する信号をS22として、第3信号S20,S21,S22を検出する。
このように、第1の送信コイル群51~第3の送信コイル群53は、時分割で駆動される。
【0051】
駆動部71および検出部72は、ステップST1~ステップST3を実行することで、第1信号S00,S01,S02、第2信号S10,S11,S12、および第3信号S20,S21,S22の合計9つの信号を検出する。
この9つの信号は、Lcoa(式(1))の周期の絶対位置信号およびLfine(式(2))の周期の相対位置信号を合成した信号となっている。このため、制御手段7は、検出された9つの信号を演算にて解析することにより、絶対位置信号および相対位置信号を算出することができる。
【0052】
【0053】
駆動部71および検出部72がステップST1~ステップST3を実行し9つの信号を検出すると、
図6に示すように、絶対位置信号生成部73は、9つの信号から絶対位置信号を生成する絶対位置信号生成工程を実行する(ステップST4)。
具体的には、絶対位置信号生成部73は、9つの信号に対して式(3)~式(5)の演算をする。式(3)~式(5)の演算により、絶対位置信号生成部73は、
図8(A)に示すように、120度位相差の3つの信号からなる絶対位置信号SC0,SC1,SC2を生成する。
【0054】
SC0=S00+S11+S22 ・・・(3)
SC1=-S01-S12+S20 ・・・(4)
SC2=S02-S10-S21 ・・・(5)
【0055】
また、駆動部71および検出部72がステップST1~ステップST3を実行し9つの信号を検出すると、相対位置信号生成部74は、9つの信号から相対位置信号を生成する相対位置信号生成工程を実行する(ステップST5)。
具体的には、相対位置信号生成部74は、9つの信号に対して式(6)~式(8)の演算をする。式(6)~式(8)の演算により、相対位置信号生成部74は、
図8(B)に示すように、120度位相差の3つの信号からなる相対位置信号SF0,SF1,SF2を生成する。
【0056】
SF0=S00-S12-S21 ・・・(6)
SF1=-S01-S10+S22 ・・・(7)
SF2=S02+S11+S20 ・・・(8)
【0057】
絶対位置信号生成部73が絶対位置信号SC0,SC1,SC2を生成し、相対位置信号生成部74が相対位置信号SF0,SF1,SF2を生成すると、
図6に示すように、算出部75は、スケール2に対するヘッド3のX方向の位置を算出する算出工程を実行する(ステップST6)。
具体的には、算出部75は、先ず、相対位置信号SF0,SF1,SF2について式(9)の演算をすることで相対位置信号SF0,SF1,SF2内におけるスケール2に対するヘッド3のX方向の相対位置PFを算出する。
【0058】
【0059】
次に、算出部75は、絶対位置信号SC0,SC1,SC2について式(10)の演算をすることで絶対位置信号SC0,SC1,SC2内におけるスケール2に対するヘッド3のX方向の絶対位置PCを算出する。
【0060】
【0061】
相対位置PFおよび絶対位置PCを算出した後、算出部75は、絶対位置PCに対して相対位置PFを照合し、スケール2に対するヘッド3のX方向の位置Posを算出する。
具体的には、先ず、算出部75は、絶対位置PCが複数の位相を有する相対位置PFにおいて、何番目の位相であるのかを特定するために、位相の番号Nを式(11)の演算により算出する。なお、Nは整数である。
【0062】
【0063】
次に、位相の番号Nが算出された後、位相の番号Nと相対位置PFとを照合して、絶対位置PCが相対位置PF内の何番目の位相であるか相対位置PF内の絶対位置PCの位相PABSを式(12)の演算により算出する。
【0064】
PABS=PF+N ・・・(12)
【0065】
スケール2に対するヘッド3のX方向の位置Posは、式(13)のようにLfineに相対位置PF内の絶対位置PCの位相PABSを乗算することで算出することができる。
【0066】
Pos=Lfine×PABS ・・・(13)
【0067】
制御手段7は、
図6に示すように、算出部75が算出工程(ステップST5)を実行した後、再び第1信号検出工程(ステップST1)に戻り、スケール2に対するヘッド3のX方向の位置を算出する。
【0068】
ここで、相対位置信号生成部74が生成するLfine(式(2))の周期の相対位置信号は、複数の送信コイル511,522,533のピッチL1とは式(14)の関係になり、複数の受信コイル611,622,633のピッチL0とは式(15)の関係となる。
【0069】
Lfine<L1 ・・・(14)
Lfine<L0 ・・・(15)
【0070】
そして、式(2)の分子と分母について、複数の受信コイル611,622,633のピッチL0で割ると式(16)となる。
【0071】
【0072】
式(16)より、複数の送信コイル511,522,533のピッチL1と複数の受信コイル611,622,633のピッチL0が正の数値であれば、Lfine(式(2))の周期の相対位置信号は、複数の送信コイル511,522,533のピッチL1よりも小さな周期の相対位置信号となる。
【0073】
複数の受信コイル611,622,633のピッチL0についても同様に、式(2)の分子と分母を複数の送信コイル511,522,533のピッチL1で割ると、複数の送信コイル511,522,533のピッチL1と複数の受信コイル611,622,633のピッチL0が正の数値であれば、Lfine(式(2))の周期の相対位置信号は、複数の受信コイル611,622,633のピッチL0よりも小さな周期の相対位置信号となる。
【0074】
したがって、相対位置信号生成部74は、9つの信号に対して所定の演算をすることで、複数の送信コイル511,522,533のピッチL1および複数の受信コイル611,622,633のピッチL0より小さな周期の相対位置信号を生成することができる。これにより、電磁誘導式位置検出装置1は、高分解能の相対位置信号を検出することができる。
【0075】
このような本実施形態によれば、以下の作用・効果を奏することができる。
(1)絶対位置信号生成部73は、9つの信号に対して所定の演算をすることで、絶対位置信号を生成することができる。
(2)相対位置信号生成部74は、9つの信号に対して所定の演算をすることで、相対位置信号を生成することができる。
(3)相対位置信号生成部74は、9つの信号に対して所定の演算をすることで、複数の送信コイル511,522,533のピッチL1および複数の受信コイル611,622,633のピッチL0より小さな周期の相対位置信号を生成することができる。
【0076】
(4)電磁誘導式位置検出装置1は、目盛コイル4や複数の送信コイル511,522,533および複数の受信コイル611,622,633のピッチを小さく構成することなく絶対位置信号を検出するとともに高分解能の相対位置信号を検出できるため、デザインルールによる制約を緩和するとともに絶対位置信号を検出してスケール2に対するヘッド3の所定方向の位置の高分解能化を図ることができる。
【0077】
(5)複数の送信コイル511,522,533は、送信目盛40におけるピッチL1と同じピッチL1にて配置され、複数の受信コイル611,622,633は、受信目盛41におけるピッチL0と同じピッチL0にて配置されるため、信号が打ち消し合うことで検出効率が低下する目盛コイルの発生を抑制することができる。したがって、電磁誘導式検出装置1は、例えば送信コイルを送信目盛におけるピッチの3倍のピッチにて配置するとともに受信コイルを受信目盛におけるピッチの3倍のピッチにて配置する場合と比較して、検出効率の低下を抑制することができる。
【0078】
〔第2実施形態〕
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
図9は、本発明の第2実施形態に係る電磁誘導式位置検出装置の目盛コイル、送信手段、および受信手段を示す模式図である。
本実施形態の電磁誘導式位置検出装置1Aのスケール2Aは、目盛コイル4Aを除き、前記第1実施形態のスケール2と略同様の構成を備える。
【0079】
前記第1実施形態の目盛コイル4は、
図4に示すように、ピッチL1にて配置される送信目盛40と、ピッチL0にて配置される受信目盛41と、送信目盛40および受信目盛41を接続する接続部42と、を備えていた。
【0080】
本実施形態の目盛コイル4Aは、
図9に示すように、ピッチL1の半分のピッチ(L1/2)であるピッチL3にて配置される送信目盛40Aと、ピッチL0の半分のピッチ(L0/2)であるピッチL4にて配置される受信目盛41Aと、送信目盛40Aおよび受信目盛41Aを接続する接続部42Aと、を備えている点で前記第1実施形態と異なる。
すなわち、複数の送信コイル511,522,533は、X方向に沿って送信目盛40AにおけるピッチL3の2倍のピッチL1にて配置され、複数の受信コイル611,622,633は、X方向に沿って受信目盛41におけるピッチL4の2倍のピッチL0にて配置されている点で前記第1実施形態と異なる。
【0081】
送信目盛40AはピッチL3で配置され、受信目盛41AはピッチL4で配置されることで、スケール2Aには、前記第1実施形態のスケール2に配置される複数の目盛コイル4よりも倍の数の複数の目盛コイル4Aが配置される。
スケール2Aに配置される目盛コイル4Aが増加することで、電磁誘導式位置検出装置1Aは、前記第1実施形態の電磁誘導式位置検出装置1と比べて信号強度を2倍程度、大きくすることができる。
【0082】
このような本実施形態においても、前記第1実施形態における(1)~(4)と同様の作用、効果を奏することができる他、以下の作用、効果を奏することができる。
(6)複数の送信コイル511,522,533および複数の受信コイル611,622,633は、送信目盛40AにおけるピッチL3および受信目盛41AにおけるピッチL4の2倍のピッチL1,L0にて配置されることで、同じピッチにて配置される場合と比較して、複数の送信コイル511,522,533および複数の受信コイル611,622,633に対向して目盛コイル4Aが2倍に配置されることとなる。したがって、電磁誘導式検出装置1Aは、前記第1実施形態の電磁誘導式位置検出装置1と比べて2倍程度大きい信号強度で信号を取得することができるため、効率的に信号を検出することができる。
【0083】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記各実施形態では、電磁誘導式位置検出装置1,1Aは、電磁誘導式リニアエンコーダに用いられていたが、電磁誘導式ロータリーエンコーダであってもよい。また、電磁誘導式位置検出装置1,1Aは、ダイヤルゲージ(テストインジケータ)やマイクロメータ等の測定器に用いられていてもよい。すなわち、電磁誘導式位置検出装置は、用いられる測定器の形式や方式などについて特に限定されるものではなく、その他の測定器などにおいても利用可能であり、本発明の電磁誘導式位置検出装置を何に実装するかについては、特に限定されるものではない。
また、電磁誘導式位置検出装置は、センサ等の測定器以外のものに用いられていてもよい。
【0084】
前記第1実施形態では、複数の送信コイル511,522,533は、送信目盛40におけるピッチL1と同じピッチL1にて配置され、複数の受信コイル611,622,633は、受信目盛40におけるピッチL0と同じピッチL0にて配置されていた。また、前記第2実施形態では、複数の送信コイル511,522,533は、送信目盛40AにおけるピッチL3の2倍のピッチL1にて配置され、複数の受信コイル611,622,633は、受信目盛41AにおけるピッチL4の2倍のピッチL0にて配置されていた。しかしながら、複数の送信コイルは、送信目盛におけるピッチの3倍や4倍のピッチにて配置されていてもよいし、複数の受信コイルは、受信目盛におけるピッチの3倍や4倍のピッチにて配置されていてもよい。要するに、複数の送信コイルは、送信目盛におけるピッチの整数倍のピッチにて配置され、複数の受信コイルは、受信目盛におけるピッチの整数倍のピッチにて配置されていればよい。
【0085】
前記各実施形態では、送信手段5の第1の送信コイル群51~第3の送信コイル群53は、60度の位相差L1/6でずれて配置され、受信手段6の第1の受信コイル群61~第3の受信コイル群63は、60度の位相差L1/6でずれて配置されていたが、60度の位相差ではなく120度の位相差で配置されていてもよい。すなわち、送信手段は、所定方向に沿って所定の位相差でずらして配置される複数の送信コイル群を備え、受信手段は、所定方向に沿って複数の送信コイル群と同じ位相差でずらして配置される複数の受信コイル群を備えていればよい。
【0086】
また、送信手段5は3つの送信コイル群51~53を備えていたが、2つの送信コイル群を備えていてもよいし、4つの送信コイル群を備えていてもよい。また、受信手段6は、3つの受信コイル群61~63を備えていたが、2つの受信コイル群を備えていてもよいし、4つの受信コイル群を備えていてもよい。すなわち、送信手段は、所定の位相差でずらして配置される複数の送信コイル群と、送信コイル群を構成する所定のピッチにて配置される複数の送信コイルと、を備え、受信手段は、複数の送信コイル群と同じ位相差でずらして配置される複数の受信コイル群と、受信コイル群を構成する複数の送信コイルとは異なるピッチにて配置される複数の受信コイルと、を備えていればよい。
【0087】
前記第1実施形態では、送信目盛40は、ピッチL1にて配置され、受信目盛41は、ピッチL0にて配置され、ピッチL1は、ピッチL0よりも大きいピッチに設定されていたが、ピッチL1は、ピッチL0よりも小さいピッチに設定されていてもよい。すなわち、送信目盛は、所定方向に沿って所定のピッチにて配置され、受信目盛は、所定方向に沿って送信目盛とは異なるピッチにて配置されていればよい。
【0088】
前記各実施形態では、制御手段7は、式(1)~式(13)の演算によりスケール2に対するヘッド3のX方向の位置を算出していたが、制御手段は、絶対位置信号と相対位置信号とに基づいて目盛基板に対する検出器の所定方向の位置を算出することができれば、どのような演算を用いて目盛基板に対する検出器の所定方向の位置を算出してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0089】
以上のように、本発明は、電磁誘導式位置検出装置に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0090】
1,1A 電磁誘導式位置検出装置
2,2A スケール
3 ヘッド
4 目盛コイル
5 送信手段
6 受信手段
7 制御手段
40,40A 送信目盛
41,41A 受信目盛
42,42A 接続部
51~53 送信コイル群
61~63 受信コイル群
71 駆動部
72 検出部
73 絶対位置信号生成部
74 相対位置信号生成部
75 算出部