IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミツトヨの特許一覧

特許7118734振動部材の保持機構、焦点距離可変レンズおよび焦点距離可変レンズ装置
<>
  • 特許-振動部材の保持機構、焦点距離可変レンズおよび焦点距離可変レンズ装置 図1
  • 特許-振動部材の保持機構、焦点距離可変レンズおよび焦点距離可変レンズ装置 図2
  • 特許-振動部材の保持機構、焦点距離可変レンズおよび焦点距離可変レンズ装置 図3
  • 特許-振動部材の保持機構、焦点距離可変レンズおよび焦点距離可変レンズ装置 図4
  • 特許-振動部材の保持機構、焦点距離可変レンズおよび焦点距離可変レンズ装置 図5
  • 特許-振動部材の保持機構、焦点距離可変レンズおよび焦点距離可変レンズ装置 図6
  • 特許-振動部材の保持機構、焦点距離可変レンズおよび焦点距離可変レンズ装置 図7
  • 特許-振動部材の保持機構、焦点距離可変レンズおよび焦点距離可変レンズ装置 図8
  • 特許-振動部材の保持機構、焦点距離可変レンズおよび焦点距離可変レンズ装置 図9
  • 特許-振動部材の保持機構、焦点距離可変レンズおよび焦点距離可変レンズ装置 図10
  • 特許-振動部材の保持機構、焦点距離可変レンズおよび焦点距離可変レンズ装置 図11
  • 特許-振動部材の保持機構、焦点距離可変レンズおよび焦点距離可変レンズ装置 図12
  • 特許-振動部材の保持機構、焦点距離可変レンズおよび焦点距離可変レンズ装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】振動部材の保持機構、焦点距離可変レンズおよび焦点距離可変レンズ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/06 20060101AFI20220808BHJP
   G02B 3/14 20060101ALI20220808BHJP
   G02B 26/08 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
G02B1/06
G02B3/14
G02B26/08 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018096933
(22)【出願日】2018-05-21
(65)【公開番号】P2019203917
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】日高 和彦
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-249202(JP,A)
【文献】特開2015-195517(JP,A)
【文献】特開2013-061549(JP,A)
【文献】特開2017-223650(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0141782(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/06
G02B 3/14
G02B 26/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動部材を挟んで互いに反対側に配置され、前記振動部材を貫く回転軸を中心として相対的に回動される第1部材および第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材とに連結され、前記第1部材および前記第2部材の回転周方向に沿って複数配置される保持部材とを有し、
複数の前記保持部材は、円柱状の弾性部材であり、前記第1部材および前記第2部材が相対的に回動されると、傾倒して前記回転軸に近づくことで前記振動部材の外周面に当接することを特徴とする振動部材の保持機構。
【請求項2】
請求項1に記載した振動部材の保持機構と、前記振動部材を収容するケースと、前記ケースに充填されて前記振動部材が浸漬される液体とを有し、
前記振動部材は入力される駆動信号により振動する筒状の部材であり、
前記複数の保持部材は、前記ケースの内周面と前記振動部材の外周面との間に配置されることを特徴とする焦点距離可変レンズ。
【請求項3】
請求項2に記載の焦点距離可変レンズにおいて、
前記第1部材および前記第2部材の少なくとも一方と前記ケースとを螺合させる螺合機構を有することを特徴とする焦点距離可変レンズ。
【請求項4】
請求項3に記載の焦点距離可変レンズにおいて、
前記螺合機構により前記第1部材と前記第2部材とを相対的に回動させることで、前記第1部材と前記第2部材とが前記回転軸方向に相対移動することを特徴とする焦点距離可変レンズ。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の焦点距離可変レンズにおいて、
前記第1部材および前記第2部材は、前記回転軸方向に貫通する貫通孔をそれぞれ有することを特徴とする焦点距離可変レンズ。
【請求項6】
請求項2から請求項5のいずれか一項に記載した焦点距離可変レンズと、前記焦点距離可変レンズと同じ光軸上に配置された対物レンズと、前記焦点距離可変レンズおよび前記対物レンズを通して測定対象物の画像を検出する画像検出部と、入力される発光信号に基づいて前記測定対象物をパルス照明するパルス照明部とを有することを特徴とする焦点距離可変レンズ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は振動部材の保持機構、焦点距離可変レンズおよび焦点距離可変レンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電材料で形成された振動部材を利用した焦点距離可変レンズとして、例えば特許文献1に記載された原理の液体レンズシステム(以下単にレンズシステムと呼ぶ)が開発されている。
レンズシステムは、透明な液体が充填されたケースの中に、圧電材料で形成された円筒状の振動部材を収容することで形成される。レンズシステムにおいて、振動部材の内周面と外周面とに交流電圧を印加すると、振動部材が厚み方向に伸縮し、振動部材の内側の液体を振動させる。液体の固有振動数に応じて印加電圧の周波数を調整することで、液体には同心円状の定在波が形成され、振動部材の中心軸線を中心として屈折率が異なる同心円状の領域が形成される。このため、レンズシステムにおいて、振動部材の中心軸線に沿って光を通せば、この光は同心円状の領域ごとの屈折率に従って、拡大または縮小する経路を辿ることになる。
【0003】
焦点距離可変レンズ装置は、前述したレンズシステムと、例えば通常の凸レンズを用いた対物レンズとを、同じ光軸上に配置して構成される。
通常の凸レンズに平行光を入射させると、レンズを通過した光は所定の焦点距離にある焦点位置に焦点を結ぶ。これに対し、凸レンズと同軸に配置されたレンズシステムに平行光を入射させると、この光はレンズシステムで拡大または縮小され、凸レンズを通過した光は元の(レンズシステムがなかった状態の)焦点位置よりも遠くまたは近くにずれた位置に焦点を結ぶ。
従って、焦点距離可変レンズ装置においては、レンズシステムに入力される駆動信号(内部の液体に定在波を発生させる周波数の交流電圧)を印加し、この駆動信号の振幅を増減させることで、焦点距離可変レンズ装置としての焦点位置を一定の範囲内(対物レンズの焦点距離を基準としてレンズシステムにより増減できる所定の変化幅)で任意に制御することができる。
【0004】
焦点距離可変レンズ装置において、レンズシステムに入力される駆動信号としては、例えば正弦波状の交流信号が用いられる。このような駆動信号が入力されると、焦点距離可変レンズ装置の焦点距離(焦点位置)は正弦波状に変化する。この際、駆動信号の振幅が0のとき、レンズシステムを通る光は屈折されず、焦点距離可変レンズ装置の焦点距離は対物レンズの焦点距離となる。駆動信号の振幅が正負のピークにあるとき、レンズシステムを通る光は最も大きく屈折され、焦点距離可変レンズ装置の焦点距離は対物レンズの焦点距離から最も変化した状態となる。
このような焦点距離可変レンズ装置を用いて画像を取得する際には、駆動信号の正弦波の位相に同期して発光信号を出力してパルス照明を行う。これにより、正弦波状に変化する焦点距離のうち、所定の焦点距離にある状態でパルス照明を行うことで、この焦点距離にある対象物の画像が検出される。一周期のうち複数の位相でパルス照明を行い、各位相に対応して画像検出を行えば、同時に複数の焦点距離の画像を得ることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2010/0177376号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したレンズシステムでは、ケースの内周面と振動部材の外周面との間にOリング等のスペーサを介挿させて、ケースに振動部材を保持させている。
ここで、振動部材をケースに収容する際に、このスペーサの位置が変化したり、スペーサが捻れたりする場合がある。この場合、スペーサを介して振動部材がケースから受ける押圧力が変化して、振動部材の振動特性が変化してしまうといった問題がある。例えば、スペーサが捻れることによって振動部材が受ける押圧力が強くなると、振動部材は強く押さえつけられている状態となるので振動し難くなる。そうすると、印加電圧の周波数が同一の場合でも振動部材の振動が一定とならず、ケースの中に充填された液体に発生する定在波が変化してしまうので、焦点距離が描く波形も変化してしまう。その結果、パルス照明のタイミングが同一であっても、異なる焦点距離の画像が検出されてしまうという問題がある。
また、このようなスペーサによる振動部材の保持では、振動部材をケース内に収容した後に、振動部材がケースから受ける押圧力を調整できないので、振動部材の振動特性を調整できないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、所望の振動特性が得られる振動部材の保持機構、焦点距離可変レンズおよび焦点距離可変レンズ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の振動部材の保持機構は、振動部材を挟んで互いに反対側に配置され、前記振動部材を貫く回転軸を中心として相対的に回動される第1部材および第2部材と、前記第1部材と前記第2部材とに連結され、前記第1部材および前記第2部材の回転周方向に沿って複数配置される保持部材とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明では、第1部材と第2部材とを相対的に回動させると、これらに連結された複数の振動部材は回転軸に対して相対的に移動する。つまり、第1部材と第2部材との相対的な回動に伴い、複数の保持部材は回転軸に近づいたり、回転軸から離れたりする。そうすると、例えば、複数の保持部材が回転軸から離れている状態で、第1部材と第2部材との間に振動部材を配置し、その後、第1部材と第2部材とを相対的に回動させて、複数の保持部材が回動軸に近づけることで、複数の保持部材を振動部材に当接させることができる。これにより、振動部材を保持することができる。
【0010】
この際、第1部材と第2部材との相対的な回動角度を調整することにより、複数の保持部材と振動部材との相対距離を調整することができ、振動部材に作用する押圧力を調整することができる。そのため、振動部材が所望の振動特性を示すように調整することができる。
なお、振動部材は、複数の保持部材が当接して保持できるような形状であればよく、例えば、円筒状や角筒状の部材でよく、あるいは、球状や平板状の部材であってもよい。
【0011】
本発明の焦点距離可変レンズは、上述した振動部材の保持機構と、前記振動部材を収容するケースと、前記ケースに充填されて前記振動部材が浸漬される液体とを有し、前記振動部材は入力される駆動信号により振動する筒状の部材であり、前記複数の保持部材は、前記ケースの内周面と前記振動部材の外周面との間に配置されることを特徴とする。
【0012】
本発明では、ケースの内周面と円筒状の振動部材の外周面との間に複数の保持部材が配置されるので、複数の保持部材は振動部材の外周面に当接する。そのため、保持部材が振動部材の内側の液体に形成される定在波に影響を与えることを防ぐことができ、振動部材の中心軸線に沿って通される光の経路が変化することを防ぐことができる。
【0013】
本発明の焦点距離可変レンズにおいて、前記第1部材および前記第2部材の少なくとも一方と前記ケースとを螺合させる螺合機構を有することが好ましい。
【0014】
本発明では、第1部材および第2部材の少なくとも一方が振動部材を収容するケースに螺合される。この際、第1部材および第2部材の他方がケースに固定されていると、当該螺合機構により第1部材と第2部材とを相対的に回動させることができる。そのため、第1部材および第2部材の相対的な回転角度を当該螺合機構で調整できるので、振動部材に作用する押圧力を容易に調整することができ、振動部材が所望の振動特性を示すような調整を容易にすることができる。
【0015】
本発明の焦点距離可変レンズにおいて、前記螺合機構により前記第1部材と前記第2部材とを相対的に回動させることで、前記第1部材と前記第2部材とが前記回転軸方向に相対移動することが好ましい。
【0016】
本発明では、螺合機構により第1部材と第2部材とを相対的に回動させることで、第1部材と第2部材とが回転軸方向に相対的に移動する。その結果、第1部材と第2部材との間に配置された振動部材に対して、第1部材および第2部材を振動部材に当接させることができる。そのため、複数の保持部材だけでなく第1部材および第2部材によっても振動部材を挟持することができて、より確実に振動部材を保持することができる。
この際、第1部材および第2部材の振動部材が配置される側に緩衝部材をそれぞれ設ければ、第1部材および第2部材が振動部材の振動特性に与える影響を少なくすることができる。
【0017】
本発明の焦点距離可変レンズにおいて、前記第1部材および前記第2部材は、前記回転軸方向に貫通する貫通孔をそれぞれ有することが好ましい。
本発明では、第1部材および第2部材が回転軸方向に貫通する貫通孔をそれぞれ有するので、振動部材の中心軸線に沿って通される光の経路を簡易な構造で確保することができる。
【0018】
本発明の焦点距離可変レンズ装置は、上述した焦点距離可変レンズと、前記焦点距離可変レンズと同じ光軸上に配置された対物レンズと、前記焦点距離可変レンズおよび前記対物レンズを通して測定対象物の画像を検出する画像検出部と、入力される発光信号に基づいて前記測定対象物をパルス照明するパルス照明部とを有することを特徴とする。
【0019】
本発明では、駆動信号として、例えば正弦波状の交流信号(焦点距離可変レンズに定在波を発生させる周波数)を制御部から焦点距離可変レンズに入力し、焦点距離可変レンズの屈折率を変動させることで、焦点距離可変レンズ装置としての焦点位置を測定対象物の表面で変動させる。そして、制御部により、駆動信号を基準とした特定の位相で発光信号を出力し、この発光信号に基づいてパルス照明部を発光させることで、発光時点の焦点距離での測定対象物の表面の画像が対物レンズおよび焦点距離可変レンズを通して画像検出部へと導入され、画像として検出することができる。
【0020】
ここで、本発明では、焦点距離可変レンズが上述した振動部材の保持機構を有するので、第1部材と第2部材との相対的な回動角度を調整することにより、振動部材が所望の振動特性を示すように調整することができる。そのため、印加電圧の周波数に対する振動部材の振動を一定とすることができるので、駆動信号を基準とした特定の位相での発光信号に基づいてパルス照明部を発光させることにより、所望の焦点距離の画像を検出することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、所望の振動特性が得られる振動部材の保持機構、焦点距離可変レンズおよび焦点距離可変レンズ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の焦点距離可変レンズ装置の第1実施形態を示す斜視図。
図2】前記実施形態の焦点距離可変レンズ装置を示すブロック図。
図3】前記実施形態の振動部材の保持機構を示す斜視図。
図4】前記実施形態のレンズシステムの動作を示す模式図。
図5】前記実施形態のレンズシステムの焦点距離を示す模式図。
図6】前記実施形態の振動部材の保持機構の動作を示す斜視図。
図7】前記第1実施形態の振動部材の保持機構の断面を示す模式図。
図8】前記第1実施形態の振動部材の保持機構の断面を示す別の模式図。
図9】前記第1実施形態の振動部材の保持機構の断面を示すさらに別の模式図。
図10】本発明の振動部材の保持機構の第2実施形態の断面を示す模式図。
図11】前記第2実施形態の振動部材の保持機構の断面を示す別の模式図。
図12】本発明の振動部材の保持機構の第3実施形態の断面を示す模式図。
図13】本発明の振動部材の保持機構の他の実施形態の断面を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第1実施形態〕
図1から図9に、本発明の第1実施形態を示す。
図1、2において、焦点距離可変レンズ装置1は、焦点距離を可変しつつ測定対象物9の表面の画像を検出するために、当該表面に交差する同じ光軸A上に配置された対物レンズ2、焦点距離可変レンズであるレンズシステム3および画像検出部4、測定対象物9の表面をパルス照明するパルス照明部5を備えている。
さらに、焦点距離可変レンズ装置1は、レンズシステム3、画像検出部4、パルス照明部5を制御する制御装置6と、制御装置6に対して情報信号を入出力可能な制御コンピュータ7とを備えている。
【0024】
対物レンズ2は、既存の凸レンズで構成される。
レンズシステム3は、制御装置6から入力される駆動信号Cfに応じて屈折率が変化する。駆動信号Cfは、レンズシステム3に定在波を発生させる周波数の交流であって、正弦波状の交流信号である。
焦点距離可変レンズ装置1において、焦点位置Pfまでの焦点距離Dfは、対物レンズ2の焦点距離を基本としつつ、レンズシステム3の屈折率を変化させることで、任意に変化させることができる。
【0025】
画像検出部4は、既存のCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサあるいは他の形式のカメラ等で構成され、入射される画像Lgを所定の信号形式の検出画像Imとして制御装置6へ出力することができる。
パルス照明部5は、LED(Light Emitting Diode)などの発光素子で構成され、制御装置6から発光信号Ciが入力された際に、所定時間だけ照明光Liを発光させ、測定対象物9の表面に対するパルス照明を行うことができる。
【0026】
図3において、レンズシステム3は、円筒形のケース31を有し、ケース31の内部には円筒状の振動部材32が設置されている。また、ケース31の底部の中央部には、液体35を透過させる光を通すための窓部が設けられている。
振動部材32は、その外周面33をケース31に設置された保持機構10で保持されている。保持機構10の詳細については後述する。振動部材32は、圧電材料を円筒状に形成したものであり、外周面33と内周面34との間に駆動信号Cfの交流電圧が印加されることで、厚み方向に振動する。
ケース31の内部には、透過性の高い液体35が充填されており、振動部材32は全体を液体35に浸漬され、円筒状の振動部材32の内側は液体35で満たされている。駆動信号Cfの交流電圧は、振動部材32の内側にある液体35に定在波を発生させる周波数に調整されている。
また、ケース31の上面側には、ケース31を密閉するために開口部を覆うカバー36が配置される。カバー36の中央部には、液体35を透過した光を通すための窓部が設けられている。
【0027】
図4に示すように、レンズシステム3においては、振動部材32を振動させると、内部の液体35に定在波が生じ、屈折率が交替する同心円状の領域が生じる(図3(A)部および図4(B)部参照)。
このとき、レンズシステム3の中心軸線からの距離(半径)と液体35の屈折率との関係は、図4(C)部に示す屈折率分布Wのようになる。
【0028】
図5において、駆動信号Cfは正弦波状の交流信号であるため、レンズシステム3における液体35の屈折率分布Wの変動幅もこれに従って変化する。そして、液体35に生じる同心円状の領域の屈折率が正弦波状に変化し、これにより焦点位置Pfまでの焦点距離Dfが正弦波状に変動する。
図5(A)の状態では、屈折率分布Wの振れ幅が最大となり、レンズシステム3は通過する光を収束させ、焦点位置Pfは近く、焦点距離Dfは最短となっている。
図5(B)の状態では、屈折率分布Wが平坦となり、レンズシステム3は通過する光をそのまま通過させ、焦点位置Pfおよび焦点距離Dfは標準的な値となっている。
図5(C)の状態では、屈折率分布Wが図5(A)と逆極性で振れ幅が最大となり、レンズシステム3は通過する光を拡散させ、焦点位置Pfは遠く、焦点距離Dfは最大となっている。
図5(D)の状態では、再び屈折率分布Wが平坦となり、レンズシステム3は通過する光をそのまま通過させ、焦点位置Pfおよび焦点距離Dfは標準的な値となっている。
図5(E)の状態では、再び図5(A)の状態に戻っており、以下同様の変動を繰り返すことになる。
【0029】
このように、焦点距離可変レンズ装置1においては、駆動信号Cfは正弦波状の交流信号であり、焦点位置Pfおよび焦点距離Dfも図5の焦点変動波形Mfのように正弦波状に変動する。
この際、焦点変動波形Mfの任意の時点で焦点位置Pfにある測定対象物9をパルス照明すれば、照明時点での焦点距離Dfにある焦点位置Pfの画像が得られることになる。
すなわち、制御装置6から入力される発光信号Ciに基づいて、パルス照明部5からの照明光Liで測定対象物9の表面を照明することで、測定対象物9からの反射光Lrが対物レンズ2およびレンズシステム3を通して画像検出部4に送られ、画像として検出することができる。
【0030】
図3に戻って、レンズシステム3には、ケース31の内部に振動部材32を保持する保持機構10が設置されている。
図3および図6に示すように、保持機構10は、振動部材32を挟んで互いに反対側に配置される第1部材11および第2部材12と、第1部材11の下面と第2部材12の上面とに連結される保持部材13と、蓋体14とを有する。
第1部材11は円盤状の板部材であり、中央部に貫通孔111を有している。また、第1部材11の下面には振動部材32の上面と対向する位置にリング状の第1緩衝部材15が設けられている(図7参照)。
第2部材12は、第1部材11と同様に円盤状の板部材であり、中央部に貫通孔121を有している。また、第2部材12の上面には振動部材32の下面と対向する位置にリング状の第2緩衝部材16が設けられている。
保持部材13は円柱状の弾性部材であり、容易に折り曲げることができる。また、保持部材13は、内側に振動部材32が設置できる程度の間隔で、第1部材11および第2部材12の周縁部に沿って8本設けられている。
蓋体14は、第1部材11の貫通孔111を覆うように形成されており、後述するように第2螺合機構18により第1部材11に螺合される。また、蓋体14の中央部には、液体35を透過した光を通すための窓部が設けられている。
【0031】
図7にケース31の断面を表す模式図を示す。
図7に示すように、第2部材12はケース31の底面に配置されて固定されている。そして、第2部材12の第2緩衝部材16の上面に振動部材32が載置される。この時、保持部材13はケース31の内周面37と振動部材32の外周面33との間に配置される。
第1部材11の外周面112には雄ねじ部が設けられ、ケース31の開口部側の内周面37には雌ねじ部が設けられて、第1螺合機構17が形成されている。そして、当該第1螺合機構17により、第1部材11はケース31に螺合されている。
【0032】
また、第1部材11の貫通孔111側の内周面113には雌ねじ部が設けられ、蓋体14の外周面141には雄ねじ部が設けられて、第2螺合機構18が形成されている。そして、当該第2螺合機構18により、蓋体14は第1部材11の貫通孔111に螺合されている。
なお、ケース31の内部には、図示しない圧力調整機構が設置されており、ケース31内部の容積変化や温度変化によって内部圧力が変化することを防止している。
【0033】
次に、図6から図8に基づいて、保持機構10による振動部材32の保持方法について説明する。
図6(A),(B)および図7に示すように、保持部材13が垂直に立設した状態で、振動部材32を第2部材12の第2緩衝部材16の上面に載置する。この時、保持部材13は、第1部材11および第2部材12の回転軸Rから離れた状態になっている。
【0034】
次に、図6(C)および図8に示すように、第1螺合機構17により、第1部材11と第2部材12とを反時計回りに相対的に回動させる。そうすると、垂直に立設していた保持部材13が傾倒して回転軸Rに近づく。その結果、保持部材13は内部に配置された振動部材32の外周面33と接点Cで当接する。これにより、振動部材32には、第1部材11および第2部材12からの押圧力が保持部材13を介して作用するので振動部材32を保持することができる。
【0035】
この際、保持部材13を介して振動部材32に作用する押圧力は、第1部材11と第2部材12との相対的な回動角度によって調整することができる。そのため、振動部材32を任意の押圧力で保持することができ、振動部材32が所望の振動特性を示すように調整することができる。
さらに、本実施形態では、第1部材11と第2部材12とを第1螺合機構17により相対的に回動させるので、第1部材11と第2部材12との相対的な回動角度を容易に調整できる。そのため、振動部材32に作用する押圧力を容易に調整できて、振動部材32が所望の振動特性を示すような調整が容易となる。
【0036】
ここで、図6(C)および図8に示すように、本実施形態では第1螺合機構17により第1部材11と第2部材12とを回動させるので、第1部材11と第2部材12との相対距離が変化する。つまり、第2部材12は固定された状態で、第1部材11は図8中上下方向に移動する。そのため、第1部材11の下面に設けられた第1緩衝部材15を振動部材32の上面に当接させることができる。その結果。振動部材32の上下面を第1緩衝部材15および第2緩衝部材16で挟持することができるので、振動部材32の側面だけでなく上下面も保持することができ、振動部材32をより確実に保持することができる。
【0037】
ただし、この場合、第1部材11と第2部材12との相対距離が変化して、ケース31の底面部から蓋体14の下面までの距離が短くなる。そうすると、ケース31に充填された液体35を通過する光の光路長が短くなる。
液体35を通過する光の光路長が変化すると、液体35における光の屈折率も変化するので、焦点位置Pfまでの焦点距離Dfも変化してしまう。その結果、所定の時点で測定対象物9にパルス照明しても、所望の焦点距離Dfにある焦点位置Pfの画像が得られなくなってしまうといった問題がある。
【0038】
そこで、図9に示すように、本実施形態では、第1部材11と第2部材12との相対的な回動角度を調整した後に、第2螺合機構18により蓋体14を第1部材11に対して時計回りに回動させることで、蓋体14を図9中上方向に移動させることができる。これにより、液体35を通過する光の光路長を調整することができるので、液体35における所望の光学特性を得ることができる。そのため、所望の焦点距離Dfにある焦点位置Pfの画像を得ることができる。
【0039】
第1螺合機構17により振動部材32の振動特性を調整し、その後、第2螺合機構18により光の光路長が調整できたら、ケース31の上面にカバー36を設置する。
カバー36は、図示しない第1螺合機構17および第2螺合機構18の固定機構を有するため、所望の振動特性および光学特性が得られるように調整した第1螺合機構17および第2螺合機構18がずれることを防ぐことができる。
【0040】
〔第2実施形態〕
図10図11に、本発明の第2実施形態を示す。
この第2実施形態は、前述した第1実施形態と基本構成が共通であり、説明の簡略化のため共通部分については重複する説明を省略し、以下相違する部分について説明する。
【0041】
前述した第1実施形態では、第1螺合機構17により第1部材11および第2部材12を相対的に回動させていた。
これに対して、図10および図11に示すように、第2実施形態では第1部材11の外周面112に凸部が設けられ、ケース31の開口部側の内周面37に凹部が設けられ、第1部材11の凸部がケース31の凹部に嵌合されて摺動機構19が形成されている。そして、当該摺動機構19により第1部材11および第2部材12を相対的に回動させることができる。
また、保持部材13Aは、円柱状の弾性部材であり、さらに、伸縮可能な素材で形成されている。そのため、容易に折り曲げることができるうえ、伸縮させることもできる。そのため、第1部材11と第2部材12との回転軸方向の相対距離を変化させることなく、第1部材11および第2部材12を回動させることができる。
【0042】
このような本発明の第2実施形態では、図10および図11に示すように、摺動機構19により第1部材11および第2部材12を相対的に回動させることで、第1部材11および第2部材12の回転軸方向の相対距離を変化させることなく、保持部材13Aを振動部材32に当接させて保持することができる。その結果、液体35を通過する光の光路長が変化することがないので、振動部材32の振動特性だけを調整すればよく、レンズシステム3において所望の光学特性を容易に得ることができる。
【0043】
〔第3実施形態〕
図12に本発明の第3実施形態を示す。
この第3実施形態は、前述した第1実施形態と基本構成が共通であり、説明の簡略化のため共通部分については重複する説明を省略し、以下相違する部分について説明する。
【0044】
前述した第1実施形態では、第1部材11は円盤状の板部材であり、保持部材13は第1部材11の下面と第2部材12の上面とに連結されていた。
これに対して、図12に示すように、第3実施形態では、第1部材11Aは有底円筒状であり、底部114Aに貫通孔111Aが設けられている。また、保持部材13Bは底部114Aの上面と蓋体14の下面とに連結され、保持部材13Cは底部114Aの下面と第2部材12の上面とに連結されている。つまり、保持部材13B,Cが第1部材11Aの底部114Aを挟んで上下に配置されている。
【0045】
このような本発明の第3実施形態では、先ず、第1螺合機構17により第1部材11Aおよび第2部材12を相対的に回動させて、保持部材13Cを振動部材32の下から略4分の1程度の高さ付近に当接させる。その後、第2螺合機構18により第1部材11Aと蓋体14とを相対的に回動させて、保持部材13Bを振動部材32の上から略4分の1程度の高さ付近に当接させる。
その結果、底部114Aの上側に配置された保持部材13Bと、下側に配置された保持部材13Cとで振動部材32を保持することができるので、振動部材32をより確実に保持することができる。
【0046】
〔他の実施形態〕
本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前述した実施形態では、保持部材13はケース31の内周面37と振動部材32の外周面33との間に配置されて、振動部材32の外周面33に当接して保持していた。
しかし、これに限らず、例えば、図13に示すように、保持部材13Dを振動部材32の内側に配置してもよい。この場合、保持部材13Dが第1部材11および第2部材12の回転軸Rに近づいた状態で、保持部材13Dの外側に振動部材32を配置する。そして、第1部材11および第2部材12を回動させて、保持部材13Dを回動軸から離れる方向に移動させることにより、保持部材13Dを振動部材32の内側に当接させて保持することができる。
【0047】
前述した実施形態では、第1螺合機構17をケース31の開口部側に設けることにより、第1部材11をケース31の外側で回動できるようにしていた。
しかし、これに限らず、例えば、第1部材11をケース31の内側に完全に収容できる位置に第1螺合機構17を設けてもよい。この場合、磁石等により第1部材11を回動させるようにしてもよい。また、第1部材11に限らず、第2部材12をケース31に螺合させるようにしてもよく、第1部材11および第2部材12の両方をケース31に螺合させるようにしてもよい。
【0048】
また、前述した実施形態では、保持機構10は、焦点距離可変レンズ装置1のレンズシステム3における振動部材32を保持していたが、これに限らず、振動部材を用いる他の光学装置等に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は振動部材の保持機構、焦点距離可変レンズおよび焦点距離可変レンズ装置に利用できる。
【符号の説明】
【0050】
1…焦点距離可変レンズ装置、2…対物レンズ、3…焦点距離可変レンズであるレンズシステム、31…ケース、32…振動部材、33…外周面、34…内周面、35…液体、36…カバー、37…内周面、4…画像検出部、5…パルス照明部、6…制御装置、7…制御コンピュータ、9…測定対象物、10…保持機構、11,11A…第1部材、111,111A…貫通孔、112…外周面、113…内周面、114A…底部、12…第2部材、121…貫通孔、13,13A,13B,13C,13D…保持部材、14…蓋体、141…外周面、15…第1緩衝部材、16…第2緩衝部材、17…第1螺合機構、18…第2螺合機構、19…摺動機構、C…接点、Cf…駆動信号、Ci…発光信号、Df…焦点距離、Im…検出画像、Lg…画像、Li…照明光、Lr…反射光、Mf…焦点変動波形、Pf…焦点位置、R…回転軸、W…屈折率分布。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13