(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】成膜装置、製造システム、有機ELパネルの製造システム
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20220808BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20220808BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
C23C14/04 A
H05B33/10
H05B33/14 A
(21)【出願番号】P 2018210047
(22)【出願日】2018-11-07
【審査請求日】2021-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】特許業務法人近島国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100158388
【氏名又は名称】鱸 英俊
(72)【発明者】
【氏名】姫路 俊明
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-112655(JP,A)
【文献】特開2012-033468(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0258142(US,A1)
【文献】国際公開第2007/023553(WO,A1)
【文献】特開2004-176124(JP,A)
【文献】特開2018-003141(JP,A)
【文献】特開2011-119657(JP,A)
【文献】特開平08-274065(JP,A)
【文献】特開2015-218554(JP,A)
【文献】特開2010-248583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
H01L 51/50-51/56
H01L 27/32
H05B 33/00-33/28
H01L 21/67-21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバと、
前記真空チャンバの外に配置され、前記真空チャンバの中に配置されたマスクと基板の相対位置を調整するアライメント駆動部と、
前記真空チャンバの側壁の上に配置された脚部を介して前記真空チャンバの上に固定された枠体と、を備え、
前記枠体は、前記真空チャンバの側壁と平行な複数の梁を有し、
前記複数の梁に固定されて前記真空チャンバの天板から間隔をおいて支持された支持板に、前記アライメント駆動部は固定されている、
ことを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記枠体は、前記真空チャンバの側壁と平行な複数の梁が接続された梯子形の枠体である、
ことを特徴とする請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記枠体が有する複数の梁は、長手方向と直交する方向で切った断面がH字形もしくはI字形の梁である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記アライメント駆動部と前記支持板と前記枠体よりなる組が、前記真空チャンバの上に2組配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記アライメント駆動部は、前記マスクを支持するマスク支持部と前記基板を支持する基板支持部の相対位置を調整する、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記支持板には、前記マスクと前記基板のアライメントマークを撮像するためのアライメントカメラが固定されている、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記支持板には、前記アライメントカメラが前記マスクと前記基板のアライメントマークを撮像するための窓が設けられている、
ことを特徴とする請求項6に記載の成膜装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の中のいずれか1項に記載の成膜装置を複数台備える、
ことを特徴とする製造システム。
【請求項9】
請求項1乃至7の中のいずれか1項に記載の成膜装置を複数台備え、少なくとも一台の前記成膜装置は有機材料の蒸着源を備える、
ことを特徴とする有機ELパネルの製造システム。
【請求項10】
請求項9に記載の有機ELパネルの製造システムを用いて有機ELパネルを製造する、
ことを特徴とする有機ELパネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜装置、製造システム、有機ELパネルの製造システムに関する。特に、真空チャンバと、基板とマスクのアライメント機構とを備えた成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自発光型で、視野角、コントラスト、応答速度に優れた有機EL素子は、壁掛けテレビをはじめとする種々の表示装置に盛んに応用されている。
有機EL素子の製造は、減圧されたチャンバ内に基板を搬入し、基板とマスクを高精度に位置合わせ(アライメント)し、所定パターンの有機膜をマスク越しに基板上に成膜する方法で行われることが多い。
【0003】
図9は、従来の成膜に用いられていた成膜装置の構成を示す模式的な断面図である。減圧可能な気密容器である成膜室が、外壁110と、外壁の一部である110aに接合された天板110bとにより構成され、成膜室内には、基板111、成膜用マスク113、有機材料の蒸着源116が配置されている。基板111は、基板支持体112により両側(又は、4辺)から支持され、成膜用マスク113は、マスク支持体114により両側(又は、4辺)から支持されている。基板支持体112およびマスク支持体114の各軸は、不図示の金属ベローズを介して気密性が確保された状態で上下動が可能に大気側に連通している。
【0004】
天板110b上の大気側には、アライメント機構115とアライメントカメラ132が設置されている。アライメントカメラ132は、天板110bに設けられた気密窓133を通して真空チャンバ内の基板111と成膜用マスク113のアライメントマークを撮影する。アライメント機構115は、アライメントカメラ132の撮影結果に基づいて、基板111と成膜用マスク113の位置合わせ(アライメント)を行うための機構である。
【0005】
最近では、有機EL素子を用いた表示装置が大画面化や高精細化しているため、大面積の基板に高いパターニング精度で有機膜を成膜することが可能な成膜装置が求められている。大面積の基板を扱う成膜装置においては、従来よりも成膜室の容積を大きくする必要があるが、内外の圧力差によって成膜室の天井や壁面が変形しやすくなる。この変形により、アライメント機構115やアライメントカメラ132の位置に変位が生じると、基板111と成膜用マスク113は相対位置ずれを引き起こし易くなる。例えば、アライメントカメラ132の光軸のずれや、アライメント機構115の動作の再現性の低下が生じ、基板111と成膜用マスク113の位置合わせ精度が低下するのである。
基板111と成膜用マスク113の位置合わせ精度が低下すると、有機膜のパターニング精度が低下し、所望の画質の有機EL素子を高い歩留まりで量産できない可能性がある。
【0006】
そこで、成膜室の外壁と天板の厚さを大きくすれば圧力差による変形を抑制できる可能性があるが、装置重量が大きくなってしまい、装置の製造コストや輸送費が増大し、更には成膜装置を設置する建屋の床面荷重が大きくなってしまう。これは、有機EL素子の製造設備のトータルコストの増大を招くことになる。
【0007】
特許文献1には、成膜室の天板の上に、天板とは離間した支持板を設け、支持板の少なくとも一部に振動を熱エネルギーに変換する制振材料を用いた成膜装置が開示されている。この装置では、アライメント機構はこの支持板に載置されている。
この構成により、成膜装置内外の圧力差により天板が変形したとしても支持板は天板と離間しており、振動が熱エネルギーに変換されるようになり、変形や振動がアライメント機構の動作に及ぼす影響を軽減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、成膜装置のアライメント機構には、圧力差による天板の変形や振動だけでなく種々の原因による振動が伝わる可能性があるが、特許文献1に記載された装置では、アライメント機構の動作への影響を十分に抑制しきれない可能性がある。支持板の材料の制振性のみでは、チャンバ内外から伝達される振動の影響を吸収しきれない場合が有り得るからである。振動を熱エネルギーに変換する支持板の厚みを大きくして制震性を向上させようとすると、装置重量が大きくなってしまい、装置の製造コストや輸送費が増大し、さらには成膜装置を設置する建屋の床面荷重も大きくなってしまう。これは、有機EL素子の製造設備のトータルコストの増大を招くことになる。
【0010】
そこで、成膜室の変形が生じたり、成膜室の内外で振動が生じたとしても、アライメント機構の動作が影響を受けにくく、しかも軽量な成膜装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、真空チャンバと、前記真空チャンバの外に配置され、前記真空チャンバの中に配置されたマスクと基板の相対位置を調整するアライメント駆動部と、前記真空チャンバの側壁の上に配置された脚部を介して前記真空チャンバの上に固定された枠体と、を備え、前記枠体は、前記真空チャンバの側壁と平行な複数の梁を有し、前記複数の梁に固定されて前記真空チャンバの天板から間隔をおいて支持された支持板に、前記アライメント駆動部は固定されている、ことを特徴とする成膜装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、成膜室の変形が生じたり、成膜室の内外で振動が生じたとしても、アライメント機構の動作が影響を受けにくく、しかも軽量な成膜装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態1及び実施形態2の成膜装置の模式的な概観斜視図。
【
図2】実施形態1及び実施形態2の成膜装置の模式的な上面図。
【
図4】実施形態1及び実施形態2の成膜装置の模式的な断面図。
【
図5】実施形態1及び実施形態2の枠体の模式的な上面図。
【
図6】(a)実施形態1の梁25の断面図。(b)実施形態1の梁23の断面図。(c)実施形態2の梁25の断面図。(d)実施形態2の梁23の断面図。
【
図8】実施形態3の製造システムの模式的な構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態である成膜装置及び製造システムについて、図面を参照して説明する。尚、以下の説明で参照する複数の図面では、特に但し書きがない限り、同一の機能の構成要素については同一の番号を付して示すものとする。
【0015】
[実施形態1]
(成膜装置の構成)
実施形態1の成膜装置の構成について、複数の図面を参照して説明する。成膜装置100に関し、
図1は模式的な概観斜視図、
図2は模式的な上面図、
図3および
図4は模式的な断面図である。尚、
図3は、
図1におけるYZ面と平行なC1面で装置を切った断面図、あるいは
図2のC1-C1線に沿って装置を切った断面図である。また、
図4は、
図2のC2-C2線に沿って装置を切った断面図である。
【0016】
成膜装置100は、成膜室の外囲器としての真空チャンバ1を備え、真空チャンバ1の内部は不図示の真空ポンプにより、例えば10
-3Pa以下の圧力領域まで減圧可能である。
図1に示すように、真空チャンバ1は、典型的には概略形状が六面体であり、
図3に示すように、底板1Bと4面の側壁1Sと天板1Rが接合された気密容器である。4面の側壁1Sは、XZ面に平行な2つの側壁と、YZ面に平行な2つの側壁を備えている。天板1Rは、
図3に示すように中央側と側壁側の板材を接合して構成したものでもよいし、単一の板材で構成してよい。
【0017】
図1、
図2、
図4に示すように、成膜装置100は、X方向に沿って並んで配置された2台の蒸着ステージを備えている。実施形態の成膜装置では、一方の蒸着ステージで蒸着を行う間に、他方の蒸着ステージで基板の交換とアライメントを行うことができる。
【0018】
図3を参照して、蒸着ステージの構造を説明する。蒸着ステージには、真空チャンバ1内に下から順にマスク13、基板11が配置され、基板11の上には不図示のマグネット板が配置されている。
【0019】
マスク13は、パターニングのための開口を有する薄板形状の部材で、特に大型基板向けには、インバー等で剛性の高い枠部材に囲まれた領域に薄膜のマスクを形成した形態のマスクが用いられることが多い。マスク13は、マスク支持部14の対により両側(又は、4辺)から支持されている。
【0020】
基板11としては、製造しようとする対象製品により、ガラス基板あるいはプラスチック基板等が適宜に選択して用いられる。基板11は、基板支持部12の対により両側(又は、4辺)から支持されている。
マスク支持部14の軸と基板支持部12の軸は、各々不図示の金属ベローズを介して気密性が確保された状態で上下動が可能に大気側に連通している。
【0021】
15は、真空チャンバ上に設けられたアライメント駆動部である。本実施形態では、基板11とマスク13をアライメントする時には、アライメント駆動部15が基板支持部12を移動させ、基板11をX軸方向移動、Y軸方向移動、およびθ回転させて、マスク13との相対位置合わせを行う。
【0022】
真空チャンバ上には、アライメントカメラ32が設けられている。アライメントカメラ32は、基板11とマスク13の各々に設けられたアライメントマークを、天板1Rに設けられた気密窓33及び支持板21に設けられた窓(開口穴)を通じて撮像可能である。アライメント駆動部15は、アライメントカメラ32の撮像結果に基づき基板11とマスク13の位置合わせを行う。すなわち、
図3に示すように、基板11とマスク13が離間している状態で基板11とマスク13にそれぞれ形成されたアライメントマークの相対的な位置関係を調整する。
【0023】
真空チャンバ内には蒸着源装置16が配置されており、蒸着源装置16の内部には成膜材料である有機材料が貯留され、有機材料は制御されたヒータによって加熱されて所定のレートで蒸発あるいは昇華する。蒸着源装置16の上面には、気化した有機材料を基板に向けて放出するための開口部と、必要に応じて開口部を遮蔽するためのシャッターが設けられている。
【0024】
蒸着源装置16は、不図示のX軸スライド機構とY軸スライド機構によってX方向及びY方向に移動可能である。蒸着源装置16はX軸スライド機構により、二つの蒸着ステージのどちらの側にも移動できる。
また、蒸着源装置16は、各蒸着ステージにおいて、Y軸スライド機構により基板11に沿ってY方向に往復走査が可能で、基板11上に均一性の高い膜を成膜することができる。
【0025】
(アライメント駆動部の支持構造)
次に、実施形態1の成膜装置の特徴的部分として、アライメント駆動部15を支持している支持構造について説明する。
図5は、支持構造を抽出して示した模式的な平面図である。
【0026】
図3に示すように、本実施形態では、アライメント駆動部15とアライメントカメラ32は、真空チャンバの天板1Rに直接支持されるのではなく、天板1Rと間隔をおいて設置された支持板21に固定されている。
図5に示すように、支持板21は、X方向に伸びる梁23およびY方向に伸びる梁25に囲まれ、これらに固定されている。すなわち、支持板21は、真空チャンバの各側壁と平行な2本の梁23および2本の梁25に固定されている。梁23の両端は梁25に接続されており、梁23と梁25は梯子形の枠体を構成して支持板21を囲んで固定している。枠体は、強度を大きくするためにX方向に伸びる一対の梁24を更に備え、梁24の端部と梁25の端部は接合されている。すなわち、梁23、梁24、梁25は接合され、支持板21を固定する枠体を構成している。各梁には剛性が高い部材が用いられ、具体的には、長手方向と直交する方向で切った断面形状がH字形のH型鋼や、I字形のI型鋼など、断面係数の大きな金属部材が好適に用いられる。梯子形の枠体を構成する梁25及び梁23を、
図5のC3-C3線及びC4-C4線で切った断面形状を、
図6(a)及び
図6(b)に示す。本実施形態では、梁25及び梁23には、断面形状がI字形のI型鋼を用いている。また、梁24にも、同様のI型鋼を用いている。
【0027】
図1に示すように、枠体の外縁のうちの3辺、すなわち2本の梁24と1本の梁25は、真空チャンバ1の側壁1Sの上に位置するよう配置されている。
図1、
図3に示すように、枠体は、真空チャンバ1の側壁1Sの上に配置された脚部22を介して、真空チャンバ1の上に固定されている。枠体は、少なくとも四隅の端部を脚部22により真空チャンバ1の側壁1Sに固定するが、本実施形態では固定強度を高めるため、更に梁24の中央部も脚部22を介して真空チャンバ1の側壁1Sの上に固定している。脚部の形状や個数、配置位置は、適宜変更することができる。
【0028】
真空チャンバ1は、内部を減圧した際に内外圧力差により変形や振動を生じる場合があり、特に天板は、大気圧に押されて中央部が鉛直下向きに凹む。本実施形態では、アライメント駆動部15とアライメントカメラ32は、真空チャンバの天板1Rの中央部に直接支持されるのではなく、天板1Rと間隔をおいて設置された支持板21に固定されている。このため、アライメント駆動部15やアライメントカメラ32の位置や姿勢が、天板の変形による影響を直接受けることはない。
【0029】
そして、本実施形態では、支持板21は、断面係数の大きな梁23と梁25で構成された梯子形の枠体に支持されており、枠体の四隅の端部が、真空チャンバの側壁の上に配置された脚部を介して真空チャンバの上に固定されている。また、枠体には、断面係数の大きな金属部材よりなる梁24が更に接続されており、梁24も真空チャンバの側壁の上に脚部を介して固定されている。このように、アライメント駆動部15やアライメントカメラ32を固定した支持板21は、軽量でありながら強固で、外部の変形や振動の影響を受けにくい枠体に支持されている。
【0030】
このように、本実施形態では、枠体は脚部を介して真空チャンバの側壁の上に脚部を介して固定されているが、側壁の上部は天板1Rの外周部と連結されており、この部分は構造的に耐震性が高いと言える。枠体の少なくとも四隅の端部をこの部分に脚部で固定するため、アライメント駆動部15やアライメントカメラ32は、特に周波数の小さな振動の影響を受けにくくなる。例えば、自らの蒸着ステージの動作に起因する振動、隣接する蒸着ステージにおける蒸着動作に起因する振動、真空チャンバのドアバルブや排気装置等の各種機器類に起因する振動、装置外から伝わる振動、等の影響を受けにくくなる。そして、本実施形態では、支持板21を、断面係数の大きな梁23と梁25で構成された梯子形の枠体で支持するため、振動に対する強度が大きな構造を極めて軽量に実現することができる。
【0031】
この結果、本実施形態では、基板とマスクとの位置合わせ誤差を低減できるので、例えば、寸法精度のよい有機化合物層のパターンが形成された有機EL素子や有機EL装置を製造することが可能になる。また、カメラで認識するアライメントマークの検出精度の低下を防止でき、リトライ回数が減少し、所定の精度に達成するまでに要する時間を短縮できる。
本実施形態によれば、成膜装置の重量増を抑制しながら、成膜室の変形や成膜室の内外からの振動によるアライメント機構への影響を抑制することができる。
【0032】
[実施形態2]
実施形態2の成膜装置について説明するが、本実施形態は、アライメント駆動部の支持構造の一部が実施形態1と異なる。実施形態1と共通する部分については、説明を省略する。
図7は、実施形態2の成膜装置の模式的な断面図であり、実施形態1の説明における
図3と同様に、
図1におけるYZ面と平行なC1面で装置を切った断面図、あるいは
図2のC1-C1線に沿って装置を切った断面図である。
【0033】
実施形態1では、梁23、梁24、及び梁25に断面形状がI字形のI型鋼を用いていたが、本実施形態では、
図7に示すように各梁に断面形状がH字形のH型鋼を用いる点が異なる。
梯子形の枠体を構成する梁25及び梁23を、
図5のC3-C3線及びC4-C4線で切った断面形状を、
図6(c)及び
図6(d)に示す。本実施形態では、梁25及び梁23には、断面形状がH字形のH型鋼を用いている。また、梁24にも、同様のH型鋼を用いている。
【0034】
本実施形態においても、アライメント駆動部15とアライメントカメラ32は、真空チャンバの天板1Rの中央部に直接支持されるのではなく、天板1Rと間隔をおいて設置された支持板21に固定されている。このため、アライメント駆動部15やアライメントカメラ32の位置や姿勢が、天板の変形による影響を直接受けることはない。
【0035】
そして、本実施形態では、支持板21は、断面係数の大きなH型鋼の梁23と梁25で構成された梯子形の枠体に支持されており、枠体の端部が、真空チャンバの側壁の上に配置された脚部を介して真空チャンバの上に固定されている。また、枠体は、断面係数の大きなH型鋼よりなる梁24を更に有し、梁24も真空チャンバの側壁の上に脚部を介して固定されている。すなわち、アライメント駆動部15やアライメントカメラ32は、軽量でありながら強固で、外部の変形や振動の影響を受けにくい枠体に支持されている。
【0036】
本実施形態も、枠体は脚部を介して真空チャンバの側壁の上に脚部を介して固定されているが、側壁の上部は天板1Rの外周部と連結されており、この部分は構造的に耐震性が高いと言える。このため、アライメント駆動部15やアライメントカメラ32は、特に周波数の小さな振動の影響を受けにくくなる。例えば、自らの蒸着ステージの動作に起因する振動、隣接する蒸着ステージにおける蒸着動作に起因する振動、真空チャンバのドアバルブや排気装置等の各種機器類に起因する振動、装置外から伝わる振動、等の影響を受けにくくなる。そして、本実施形態では、支持板21を、断面係数の大きな梁23と梁25で構成された梯子形の枠体で支持するため、振動に対する強度が大きな構造を極めて軽量に実現することができる。
【0037】
この結果、本実施形態も、基板とマスクとの位置合わせ誤差を低減できるので、例えば、寸法精度のよい有機化合物層のパターンが形成された有機EL素子や有機EL装置を製造することが可能になる。また、カメラで認識するアライメントマークの検出精度の低下を防止でき、リトライ回数が減少し、所定の精度に達成するむまでに要する時間を短縮できる。
本実施形態においても、成膜装置の重量増を抑制しながら、成膜室の変形や成膜室の内外からの振動によるアライメント機構への影響を抑制することができる。
【0038】
[実施形態3]
次に、本発明を実施した製造システムについて説明する。
図8は、本発明を実施した製造システムの模式的な構成図で、有機ELパネルを製造する製造システム300を例示している。
【0039】
製造システム300は、複数台の成膜装置100、搬送室1101、搬送室1102、搬送室1103、基板供給室1105、マスクストック室1106、受渡室1107、ガラス供給室1108、貼合室1109、取出室1110等を備えている。成膜装置100は、有機ELパネルの発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電極層等の異なる機能層の成膜に用いられ得るため、成膜装置ごとに成膜材料やマスクなどが相違する場合がある。各成膜装置100は、実施形態1で説明したように2つの蒸着ステージを備える装置であってもよいし、単一の蒸着ステージを備える装置であってもよい。2つの蒸着ステージを備える場合には、一方の蒸着ステージにおける蒸着が完了するまでの間に、他方の蒸着ステージでは蒸着済の基板の搬出と未蒸着の基板の搬入を行い、基板とマスクとのアライメントを完了させ成膜ポジションにセットすることができる。
【0040】
基板供給室1105には、外部から基板が供給される。搬送室1101、搬送室1102、搬送室1103には、搬送機構であるロボット1120が配置されている。ロボット1120によって各室間の基板の搬送が行われる。本実施形態の製造システム300が複数台備える成膜装置100のうち、少なくとも一台は有機材料の蒸着源を備えている。製造システム300に含まれる複数の成膜装置100は、お互いが同一材料を成膜する装置であってもよいし、異なる材料を成膜する装置であってもよい。例えば、各成膜装置において、互いに異なる発光色の有機材料を蒸着してもよい。製造システム300では、基板供給室1105から供給された基板に有機材料を蒸着したり、あるいは金属材料等の無機材料の膜を形成し、有機ELパネルを製造する。
【0041】
マスクストック室1106には、各成膜装置100にて用いられ、膜が堆積したマスクが、ロボット1120によって搬送される。マスクストック室1106に搬送されたマスクを回収することで、マスクを洗浄することができる。また、マスクストック室1106に洗浄済みのマスクを収納しておき、ロボット1120によって成膜装置100にセットすることもできる。
【0042】
ガラス供給室1108には、外部から封止用のガラス材が供給される。貼合室1109において、成膜された基板に封止用のガラス材を貼り合わせることで、有機ELパネルが製造される。製造された有機ELパネルは、取出室1110から取り出される。
【0043】
本製造システムに含まれる成膜装置は、すでに実施形態1及び実施形態2で説明したように、真空チャンバの側壁の上に配置された脚部を介して真空チャンバの上に固定された枠体を備え、枠体は真空チャンバの側壁と平行な複数の梁を有している。そして、アライメント駆動部及びアライメントカメラが固定された支持板が、枠体の複数の梁に固定されており、支持板は真空チャンバの天板から間隔をおいて支持されている。
【0044】
このため、本製造システムに含まれる成膜装置では、内外圧力差による自身の変形や、隣接する搬送室や成膜装置等から伝達される振動から、アライメント駆動部やアライメントカメラが隔離され、アライメント動作が極めて安定し高速化する。本製造システムでは、大面積基板に高精度に成膜できるため、高画質の有機ELパネルを高い歩留まりで製造することが可能である。しかも、各成膜装置の重量増加は抑制されているため、製造システムの総重量を抑制することができる。このように、本発明は有機EL素子を製造する製造システムにおいて好適に実施され得るが、それ以外のデバイスを製造するための製造システムにおいて実施してもかまわない。
本実施形態によれば、成膜室の変形が生じたり、成膜室の内外で振動が生じたとしても、アライメント機構の動作が影響を受けにくく、しかも軽量な成膜装置を備えた成膜システムを提供することができる。
【0045】
[他の実施形態]
尚、本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で多くの変形が可能である。
例えば、枠体を構成する複数の梁は、どの梁も同じ断面形状を有しなければならないわけではない。実施形態1では断面がI字形の梁を用い、実施形態2では断面がH字形の梁を用いたが、一つの枠をI字形とH字形の梁を組み合わせて構成してもよい。また、断面係数の大きな部材であれば、断面形状はI字形やH字形には限らない。
【0046】
また、アライメント駆動部は、基板支持部を移動させてアライメントを行う機構には限らない。マスク支持部を移動させるものでもよく、あるいは基板支持部とマスク支持部の両方を移動させる機構でもよい。すなわち、マスク13を所定位置に静置し、基板11を移動させる構成でも良いし、基板11を所定位置に静置し、マスク13を移動させることで位置合わせを行う構成でも良いし、基板11及びマスク13の両方を移動させても良い。例えば、基板に比べてマスクの重量が大きい場合には、基板を移動させることでアライメント精度を高められる場合がある。また基板とマスクの両方を移動させて相対的な位置関係を調整することで、アライメント時間を短縮することができる場合がある。このように移動させる物体の選択は、装置の形態や目的に応じて任意に設計することが可能である。
【0047】
また、基板を支持するための基板支持部、マスクを支持するためのマスク支持部、あるいはアライメント用カメラの配置や個数は、上述した実施形態の例に限られるものではない。基板の大きさや重さ、マスクの大きさや重さ、アライメントマークの数やレイアウト位置等によって、適宜変更することが可能である。
【0048】
また、実施形態1の成膜装置は蒸着ステージを2台備え、アライメント駆動部と支持板と枠体よりなる組を真空チャンバの上に独立して2組配置したが、蒸着ステージの数は2台に限らず1台あるいは3台以上でもよい。3台以上の場合にも、アライメント駆動部と支持板と枠体からなる組を、蒸着ステージ毎に真空チャンバの上に独立して配置するのが望ましい。
【0049】
また、1つの蒸着源装置が2つの蒸着ステージ間を移動して交互に蒸着する装置でなくとも、各蒸着ステージが専用の蒸着源装置を備える成膜装置であってもよい。蒸着源装置の形態は、単一の蒸着源であっても、複数の蒸着源を配列したものでもよい。また、成膜室内には蒸着源からの蒸発レートを管理あるいは制御することを目的としたレート管理センサを配置してもよい。また、基板11に有機材料を成膜する際に、基板11と蒸着源装置16との相対位置は、実施形態のように走査する形態であってもよいし、固定した形態であってもよい。
【0050】
また、実施形態1においては、基板11の被成膜面を下向きにする目的で、マスク13を基板11の下側に配置させているが、成膜物質が基板11の被成膜面上にパターニングできる配置でありさえすれば、基板とマスクと配置はこれに限らない。例えば、基板11とマスク13とを鉛直方向に沿って縦置きにした状態で配置してもよいし、あるいは基板11の被成膜面を上向きに配置してもよい。
【0051】
また、本発明は有機EL素子を構成する有機膜を成膜する装置に好適に実施され得るが、有機EL素子のそれ以外の膜や、有機EL素子以外のデバイスの膜を成膜する装置に用いてもかまわない。
【符号の説明】
【0052】
1・・・真空チャンバ/1B・・・底板/1S・・・側壁/1R・・・天板/11・・・基板/12・・・基板支持部/13・・・マスク/14・・・マスク支持部/15・・・アライメント駆動部/16・・・蒸着源装置/21・・・支持板/22・・・脚部/23、24、25・・・梁/32・・・アライメントカメラ/33・・・気密窓/100・・・成膜装置/110・・・外壁/110a・・・外壁の一部/110b・・・天板/111・・・基板/113・・・成膜用マスク/132・・・アライメントカメラ/133・・・気密窓/300・・・有機ELパネルを製造する製造システム/1101、1102、1103・・・搬送室/1105・・・基板供給室/1106・・・マスクストック室/1107・・・受渡室/1108・・・ガラス供給室/1109・・・貼合室/1110・・・取出室/1120・・・ロボット