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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】無塩手延べ乾麺及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20220808BHJP
【FI】
A23L7/109 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018230756
(22)【出願日】2018-12-10
(65)【公開番号】P2020092609
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100084663
【氏名又は名称】箱田 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100156982
【弁理士】
【氏名又は名称】秋澤 慈
(72)【発明者】
【氏名】桐沢 和恒
(72)【発明者】
【氏名】趙 家慧
【審査官】飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-112721(JP,A)
【文献】特開平06-014733(JP,A)
【文献】特開平04-299946(JP,A)
【文献】特開2018-023285(JP,A)
【文献】国際公開第2016/132752(WO,A1)
【文献】特開2009-225736(JP,A)
【文献】特開2019-103451(JP,A)
【文献】地田美香,乳化剤が麺の物性に及ぼす影響,日本家政学会誌,日本家政学会,1991年01月01日,Vol.42,No.1,p7-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスコルビン酸、トランスグルタミナーゼ及びアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群から選択される1以上の成分、小麦粉、食用油脂並びに乳化剤を含む手延べ乾麺であって、小麦粉100質量部に対して、食用油脂の含有量が0.4~8.5質量部、乳化剤の含有量が0.04~2.1質量部、アスコルビン酸の含有量が0.00004~0.0006質量部、アルギン酸プロピレングリコールエステルの含有量が0.75~1.2質量部であり、小麦粉100gに対して、トランスグルタミナーゼの含有量が0.4~55mUである、手延べ乾麺。
【請求項2】
アスコルビン酸、トランスグルタミナーゼ及びアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群から選択される1以上の成分、小麦粉、食用油脂並びに乳化剤を含む手延べ乾麺用ミックス粉であって、小麦粉100質量部に対して、食用油脂の含有量が0.4~8.5質量部、乳化剤の含有量が0.04~2.1質量部、アスコルビン酸の含有量が0.00004~0.0006質量部、アルギン酸プロピレングリコールエステルの含有量が0.75~1.2質量部であり、小麦粉100gに対して、トランスグルタミナーゼの含有量が0.4~55mUである、前記ミックス粉。
【請求項3】
小麦粉に、アスコルビン酸、トランスグルタミナーゼ及びアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群から選択される1以上の成分、食用油脂並びに乳化剤を添加して生地を得る工程を含む、手延べ乾麺の製造方法であって、小麦粉100質量部に対して、食用油脂の含有量が0.4~8.5質量部、乳化剤の含有量が0.04~2.1質量部、アスコルビン酸の含有量が0.00004~0.0006質量部、アルギン酸プロピレングリコールエステルの含有量が0.75~1.2質量部であり、小麦粉100gに対して、トランスグルタミナーゼの含有量が0.4~55mUである、前記製造方法。
【請求項4】
小麦粉に、アスコルビン酸、トランスグルタミナーゼ及びアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群から選択される1以上の成分、食用油脂並びに乳化剤の全量を含む練り水を添加して生地を得る工程を含む、請求項3に記載の手延べ乾麺の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は無塩手延べ乾麺及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
手延べ素麺などの手延べ干しめんは、強い弾力感があって、喉越し及び歯応えに優れる独特の食感を有している。手延べ干しめんの日本農林規格第2条では「手延べ干しめん」とは、小麦粉に食塩水を加えて練り合わせた後、食用植物油又はでん粉を塗布して、より(縒り/撚り)をかけながら順次引き延ばしてめんとし、乾燥したものであって、手延べ干しめんの日本農林規格の第3条を満たす加水量、手作業の工程及び熟成期間について定められた基準を満たす方法により生産されたものであると定義されている。このような手延べ干しめんは、一般的にはa)小麦粉100質量部に対して4質量部以上7質量部以下の食塩と40質量部以上50質量部以下の水(手延べ干しめんの日本農林規格においては食塩水として45質量部以上)を混合する工程(混合工程)、b)円盤状に延ばした生地に渦巻き状に切れ目を入れ帯状にする工程(板切工程)、c)よりをかけながら表面に食用油を塗る工程(油返し)、d)よりをかけて細く引き延ばす工程(細目工程)、e)さらに細く引き延ばす工程(小均工程)、f)油を塗りながら生地を引き延ばすことを繰り返し、めんの太さが7~8ミリ程度になったら、2本の棒の間に八の字の形に巻きつける工程(かけば工程)、g)棒に巻きつけたものをねかした後で、一方の棒を固定してもう片方を引っ張り、更に細長く引き延ばす工程(小引き工程)、h)乾燥用ハタ(織)と呼ばれる専用の道具にめんをかけて引き延ばしたまま、乾燥させる工程(門干し工程)、i)裁断する工程(裁断工程)を含む工程によって製造され、混合工程とかけば工程の間の工程における熟成については、6時間以上(長径を1.7mm以上に成形するものは3時間以上)、かけば工程と小引き工程の間の工程における熟成については、1時間以上、小引き工程と門干し工程の間の工程及び門干し工程における熟成については、合計12時間以上行うことによって製造される。
【0003】
食塩はグルテンの収斂作用(小麦粉と水だけで捏ねたときに比べ、グルテンの網目構造の展開には時間がかかるが、グルテン組織をより強力且つしっかりと形成させること)を有しており、また、食塩の吸水性により生地の乾燥を防止する作用も合わせ持つ。手延べ干しめんでは、引き延ばし工程を何度も繰返して次第に細い麺線に仕上げていくため、圧延装置を使用して生地を圧延し、伸ばした帯状の生地を種類に応じた麺の太さに切り出して仕上げる一般的な製造方法による干し麺(いわゆる「機械めん」)と比較して強靭なグルテン形成と乾燥耐性が要求され、そのために食塩を多く使用するのが一般的である。
なお生地に一方向の撚りをかけつつ引き延して得られる手延べ干しめんは、グルテンの網目構造が麺の長手方向に配列して密な束になるので、強い弾力感が生まれ、喉越し及び歯応えに優れる食感になる。それに対して、圧延装置により生地に圧力をかけて延して製造される麺は、グルテンの網目構造がばらついている(非特許文献2:新・大きな目小さな目2014年春号8~9頁)。前者の麺表面は極めて滑らかであるために喉越し良好であるのに対し、後者では麺表面に微細な空隙があり、前者に比べて喉越しに劣る。
【0004】
手延べ干しめんは、多量の食塩を使用して製造されるため、鍋物等に直接手延べ干しめんを投入して調理するとスープや出汁等の煮汁の塩味が強くなり過ぎ、喫食するには不適なものとなる。それ故、喫食する場合には、あらかじめ茹でることによって塩抜きする作業及び任意に麺を洗う作業(いわゆる「茹でこぼし」)をしなければならないという手間が必要であった。茹でこぼす煩わしさを解消することが望まれているが、手延べ干しめんを製造する際の食塩の使用量を低減させると、グルテンの収斂及び生地の熟成が不十分になり、また製造工程中に生地が乾燥しやすくなるため、目的とする細さまで引き延ばすことができなくなること、麺表面の擦り切れ等の損傷を受けること、更には茹で調理すると弾力感、喉越し及び歯応えが損なわれること等の問題があった。
【0005】
上記の様な問題を解決するために様々な試みが提案されている。
特開平01-300862(特許文献1)では、極めて短時間で美味なる(減塩した)そうめんを製作することを可能とする減塩そうめんを製造するために、強力小麦粉と食塩を混合して熟成させた原料塊を30~38℃程度の温度で食用油を塗布しながら紐状に成形した後、常温以下にて細く小撚状に延ばし、引き続いて低温下で乾燥・切断することを特徴とする減塩そうめんの製造方法が開示されている。特開2002-112721(特許文献2)では、煮汁を捨てることの無い手延べ麺を提供するために、小麦粉とかんすいと食塩を含み、前記食塩の量は前記小麦粉に対して2.0重量%未満であること(かんすいは小麦粉に対して0.1重量%未満)を特徴とする、手延べ麺が開示されている。特開2007-189942(特許文献3)では、延ばしが容易に行える塩分の低い即席麺に好適な手延べ素麺を提供するために、小麦粉100重量部に対して塩1.5~3重量部・小麦タンパク13~18重量部・かん水0.075~0.125重量部を含有している原料を用いた手延べ素麺が開示されている。しかしながら、何れの発明においても、減塩によるグルテン収斂作用の低下を補うには十分ではなく、また茹でこぼし不要とするには塩分含有率が高いものであった。
また麺類の品質改良を目的として、グリセリン脂肪酸エステルを使用することにより麺のほぐれが良くなること(特許文献5)、アスコルビン酸を使用することにより斑点の発生を防止し、色調の変化を抑制すること(特許文献6)、アスコルビン酸とリン酸架橋澱粉を使用することにより麺に透明感を付与し、好ましい食感を付与すること(特許文献7)、トランスグルタミナーゼと炭酸塩及びまたは還元剤を使用することによりバランスの良いコシと粘りを有する食感を付与すること(特許文献8)、トランスグルタミナーゼと酸化還元酵素を使用することによりコシ及び弾力が向上すること(特許文献9)、トランスグルタミナーゼとアスコルビン酸を使用することにより生麺類の麺線同士の決着を防止すること(特許文献10)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平01-300862
【文献】特開2002-112721
【文献】特開2007-189942
【文献】特開2010-68792
【文献】特開昭58-175461
【文献】特開平06-7100
【文献】特開2018-23285
【文献】特開平11-346689
【文献】特開2000-60431
【文献】特開2014-155463
【非特許文献】
【0007】
【文献】手延べ干しめんの日本農林規格、平成十六年六月十八日農林水産省告示第千百八十九号(改正:平成二十一年四月九日農林水産省告示第四百八十六号)
【文献】新・大きな目小さな目2014年春号No.36、8~9頁、独立行政法人 農林水産消費安全技術センター(FAMIC)広報室発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
食塩不使用でありながら、食感(弾力感、つるみ)に優れる、手延べ乾麺を提供する。更には、製造過程における作業性(生地のつながり、生地ダレ、伸展性、乾燥耐性)に優れる、手延べ乾麺を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明者等は、上記課題を解決する為鋭意研究を重ねた結果、小麦粉と、アスコルビン酸、トランスグルタミナーゼ及びアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群から選択される1以上の成分、食用油脂並びに乳化剤を使用し、小麦粉100質量部に対して、食用油脂を0.4~8.5質量部、乳化剤を0.04~2.1質量部、アスコルビン酸を0.00004~0.0006質量部、アルギン酸プロピレングリコールエステルを0.75~1.2質量部、小麦粉100gに対して、トランスグルタミナーゼを0.4~55mU使用することで、食塩不使用でありながら、食感(弾力感、つるみ)に優れる、手延べ乾麺を提供することができること、更には、製造過程における作業性(生地のつながり、生地ダレ、伸展性、乾燥耐性)に優れる、手延べ乾麺を提供することが出来ることを見いだし上記課題を解決した。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]アスコルビン酸、トランスグルタミナーゼ及びアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群から選択される1以上の成分、小麦粉、食用油脂並びに乳化剤を含む手延べ乾麺であって、小麦粉100質量部に対して、食用油脂の含有量が0.4~8.5質量部、乳化剤の含有量が0.04~2.1質量部、アスコルビン酸の含有量が0.00004~0.0006質量部、アルギン酸プロピレングリコールエステルの含有量が0.75~1.2質量部であり、小麦粉100gに対して、トランスグルタミナーゼの含有量が0.4~55mUである、手延べ乾麺。
[2]アスコルビン酸、トランスグルタミナーゼ及びアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群から選択される1以上の成分、小麦粉、食用油脂並びに乳化剤を含む手延べ乾麺用ミックス粉であって、小麦粉100質量部に対して、食用油脂の含有量が0.4~8.5質量部、乳化剤の含有量が0.04~2.1質量部、アスコルビン酸の含有量が0.00004~0.0006質量部、アルギン酸プロピレングリコールエステルの含有量が0.75~1.2質量部であり、小麦粉100gに対して、トランスグルタミナーゼの含有量が0.4~55mUである、前記ミックス粉。
[3]小麦粉に、アスコルビン酸、トランスグルタミナーゼ及びアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群から選択される1以上の成分、食用油脂並びに乳化剤を添加して生地を得る工程を含む、手延べ乾麺の製造方法であって、小麦粉100質量部に対して、食用油脂の含有量が0.4~8.5質量部、乳化剤の含有量が0.04~2.1質量部、アスコルビン酸の含有量が0.00004~0.0006質量部、アルギン酸プロピレングリコールエステルの含有量が0.75~1.2質量部であり、小麦粉100gに対して、トランスグルタミナーゼの含有量が0.4~55mUである、前記製造方法。
[4]小麦粉に、アスコルビン酸、トランスグルタミナーゼ及びアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群から選択される1以上の成分、食用油脂並びに乳化剤の全量を含む練り水を添加して生地を得る工程を含む、前記[3]の手延べ乾麺の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、食塩不使用でありながら、食感(弾力感、つるみ)に優れる、手延べ乾麺を提供する。更には、製造過程における作業性(生地のつながり、生地ダレ、伸展性、乾燥耐性)に優れる、手延べ乾麺を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一般に「手延べ干しめん」は、小麦粉に練り水を加えて練り合わせた後、食用植物油又はでん粉を塗布して、より(縒り/撚り)をかけながら順次引き延ばしてめんとし、乾燥したものをいい、手延べ干しめんの日本農林規格の第3条(非特許文献1)に規定される加水量、手作業の工程、熟成期間に準じた方法により生産されたものである。
本発明において「手延べ乾麺」は原料に小麦粉と食塩水以外の成分を含む以外は「手延べ干しめんのJAS規格」の製造方法及び/又は前記JAS規格の手作業の一部又は全部を機械式延伸法に置き換えた製造方法に基づいて製造したものをいう。
本発明において「練り水」とは生地作成時に添加する水溶液であり、手延べ干しめんの日本農林規格における食塩水に代えて使用するものである。
本発明の手延べ乾麺において、加水量は小麦粉100質量部に対する練り水の配合割合が45質量部以上であり、小引き工程から門干し工程までの間において、めん線を引き延ばす行為のすべてを手作業又は一部もしくはすべてを特開2010-68792(特許文献4)に例示されるような手作業に代わる機械式延伸法により行い、かつ混合工程とかけば工程の間の工程における熟成については、6時間以上、かけば工程と小引き工程の間の工程における熟成については、1時間以上、小引き工程と門干し工程の間の工程及び門干し工程における熟成については、合計12時間以上行う。
【0012】
本発明の手延べ乾麺は、アスコルビン酸、トランスグルタミナーゼ及びアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群から選択される1以上の成分、小麦粉、食用油脂並びに乳化剤を含む手延べ乾麺であって、小麦粉100質量部に対して、食用油脂の含有量が0.4~8.5質量部、乳化剤の含有量が0.04~2.1質量部、アスコルビン酸の含有量が0.00004~0.0006質量部、アルギン酸プロピレングリコールエステルの含有量が0.75~1.2質量部であり、小麦粉100gに対して、トランスグルタミナーゼの含有量が0.4~55mUである。
【0013】
本発明の手延べ乾麺は、アスコルビン酸、トランスグルタミナーゼ及びアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群から選択される1以上の成分を含む。2種以上の成分を組み合わせても良い。この成分を添加することにより、製麺工程において生地のつながりがよく、また生地のダレが生じにくくなり、さらに良好な生地の進展性により作業性が向上する。
【0014】
アスコルビン酸は、ビタミンCとも呼ばれ、ラクトン構造を有する有機化合物の1種であり、ラクトン構造を有することから酸化還元剤として各種の食品に利用される。本発明において、アスコルビン酸としてL-アスコルビン酸、その立体異性体であるエリソルビン酸(別称:イソアスコルビン酸)、それらの塩類、それらの脂肪酸エステルのうち1種又は2種以上を併用することができる。最も好ましくはL-アスコルビン酸である。塩類又は脂肪酸エステル等を使用する場合、アスコルビン酸量に換算した使用量を設定する。例えば、L-アスコルビン酸ナトリウムを使用する場合、L-アスコルビン酸としての使用量は「L-アスコルビン酸ナトリウムの使用量×L-アスコルビン酸の分子量÷L-アスコルビン酸ナトリウムの分子量」の計算式により求めることができる。具体的には、1質量部のL-アスコルビン酸ナトリウムは、前記計算式基づいて換算すると、0.889質量部のL-アスコルビン酸に相当する。
本発明において、アスコルビン酸は、小麦粉100質量部に対して、アスコルビン酸として0.00004~0.0006質量部使用する。好ましくは0.0001~0.0004質量部使用することができる。小麦粉100質量部に対して、アスコルビン酸として0.00004~0.0006質量部使用することで、収斂作用によりグルテン強化作用が得られ、製麺工程において生地のつながりがよく、また生地のダレが生じにくくなり、さらに良好な生地の進展性により作業性が向上する。
【0015】
トランスグルタミナーゼは、タンパク質やペプチド中のグルタミン残基を供与体とし、リジン残基を受容体とするアシル転移反応を触媒する活性を有する酵素のことであり、各種生物起源のものや組換え酵素が知られている。トランスグルタミナーゼは食品用酵素として市販されており、例えば味の素(株)の「アクティバ」シリーズが挙げられる。本発明で使用するトランスグルタミナーゼは、各種生物からの精製品でもよく、市販されているものでもよい。
本発明において、トランスグルタミナーゼは、小麦粉100g(質量部)に対して、0.4~55mU(mU部)使用する。好ましくは0.5~50mU(mU部)、より好ましくは5~45U(mU部)、更に好ましくは15~40U(mU部)使用することができる。トランスグルタミナーゼを、小麦粉100g(質量部)に対して、0.4~55mU(mU部)使用することで、蛋白質架橋によりグルテン強化作用が得られ、製麺工程において生地のつながりがよく、また生地のダレが生じにくくなり、さらに良好な生地の進展性により作業性が向上する。
トランスグルタミナーゼの活性は、特開2013-208109号公報の段落0027、特開平11-346689号公報の段落0014の記載と同様、ベンジルオキシカルボニル-L-グルタミニルグリシンとヒドロキシルアミンを基質として反応を行い、生成したヒドロキサム酸をトリクロロ酢酸存在下で鉄錯体を形成させた後525nmの吸光度を測定し、ヒドロキサム酸の量を検量線より求め活性を算出する。本発明においては、37℃、pH6.0で1分間に1μmolのヒドロキサム酸を生成する酵素量を1U(ユニット)と定義した。
【0016】
アルギン酸プロピレングリコールエステルは、アルギン酸エステルとも言われ、アイスクリームやジャムなど各種食品や飲料の安定剤や乳化剤として使われる食品添加物であり、海藻から得られるアルギン酸のカルボキシル基にプロピレングリコールを付与したものである。
本発明において、アルギン酸プロピレングリコールエステルは、小麦粉100質量部に対して、0.75~1.2質量部使用する。好ましくは0.2~0.7質量部、より好ましくは0.3~0.6質量部使用することができる。アルギン酸プロピレングリコールエステルは、小麦粉100質量部に対して、0.75~1.2質量部使用することで、収斂作用によるグルテン強化作用が得られ、製麺工程において生地のつながりがよく、また生地のダレが生じにくくなり、さらに良好な生地の進展性により作業性が向上する。
【0017】
本発明に使用する小麦粉は、普通系小麦を公知の方法で製粉して得られる小麦粉であれば特に限定されない。そのような小麦粉として超強力小麦粉、強力小麦粉、準強力小麦粉、中力小麦粉、薄力小麦粉及びそれら小麦粉の2種以上を混合した小麦粉が挙げられ、好ましくは蛋白質含量8.0~13.0質量%の小麦粉又は前記蛋白質含量になるように混合調製された小麦粉である。
【0018】
本発明に使用する食用油脂は、食品に使用される油脂であれば何れも使用できる。そのような食用油脂の例としては油糧種子等から得られる植物油脂;家禽類や魚類等から得られる動物油脂;それらの油脂を水素添加、分別、エステル交換した加工油脂(バター、マーガリン、ショートニング等)などがあげられる。食用油脂を糖質やたんぱく質などで包み込みパウダー状にした粉末油脂を使用することもできる。食用油脂は常温で液体であっても固体であってもよいが、好ましくは融点50℃以下の油脂である。融点が50℃を超える固体状の脂を使用すると、生地中へ均質に混合するために時間を要するが、手延べ乾麺用生地の品質にほとんど影響しないので不適とまでは言えない。
本発明において、食用油脂は、小麦粉100質量部に対して、0.4~8.5質量部使用する。好ましくは2.0~8.0質量部、より好ましくは3.0~6.0質量部使用することができる。食用油脂を、小麦粉100質量部に対して、0.4~8.5質量部使用することにより、製麺工程において生地のダレが生じにくく、さらに生地の乾燥が抑制され作業性が向上する。
なお、粉末油脂を使用する場合、粉末油脂に含有される油脂の含有率を換算係数とし、食用油脂の量を換算係数で除することにより粉末油脂の使用量を決定する。例えば、食用油脂の量が6質量部である場合、油脂含量75質量%の粉末油脂であれば8質量部を使用する。
【0019】
本発明に使用する乳化剤は、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン等の食品に使用できる乳化剤であれば特に限定なく使用できる。好ましくはグリセリン脂肪酸エステルであり、より好ましくはコハク酸モノグリセリド及び/又はジアセチル酒石酸モノグリセリドである。なお、グリセリン脂肪酸エステルとは、グリセリンのもつ3つのヒドロキシル基のうち1つ又は2つに脂肪酸がエステル結合したものである。
本発明において、乳化剤は、小麦粉100質量部に対して0.04~2.1質量部使用する。好ましくは0.05~1.5質量部であり、より好ましくは0.1~1.0質量部であり、更に好ましくは0.2~0.7質量部使用することができる。乳化剤を、小麦粉100質量部に対して0.04~2.1質量部使用することで、製麺工程において生地のダレが生じにくく、さらに良好な生地の進展性により作業性が向上する。
【0020】
本発明において、上記成分以外にも、通常製麺原料として使用されるものであれば特に限定なく使用することでき、そのような成分として大麦粉、ライ麦粉、デュラム小麦粉、米粉、コーンフラワー等の小麦粉以外の穀粉;タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ等の澱粉類;澱粉類をエーテル化等の化学変性、α化等の物理変性、アミラーゼ処理等の酵素変性させた変性澱粉;難消化性澱粉、難消化性デキストリン、小麦ふすま粉砕物などの繊維質;全卵、卵白粉、卵黄粉等の卵及び卵加工品;豆蛋白、乳蛋白等の蛋白類;糖類;無機塩類;乳化剤;保存料;着色料;香料;ビタミン類;栄養強化剤などがあげられる。
【0021】
本発明の手延べ乾麺用プレミックス粉は、アスコルビン酸、トランスグルタミナーゼ及びアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群から選択される1以上の成分、小麦粉、食用油脂並びに乳化剤を含み、小麦粉100質量部に対して、食用油脂の含有量が0.4~8.5質量部、乳化剤の含有量が0.04~2.1質量部、アスコルビン酸の含有量が0.00004~0.0006質量部、アルギン酸プロピレングリコールエステルの含有量が0.75~1.2質量部であり、小麦粉100gに対して、トランスグルタミナーゼの含有量が0.4~55mUである。
【0022】
ここで一般にプレミックス粉は、その使用用途に応じて、小麦粉に、小麦粉以外の穀粉、化学膨張剤、調味料、香料、色素等の粉末原料、油脂類などを混合したものをいう。本発明の手延べ乾麺用プレミックス粉は、上記成分以外にも、大麦粉、ライ麦粉、デュラム小麦粉、米粉、コーンフラワー等の小麦粉以外の穀粉;タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ等の澱粉類;澱粉類をエーテル化等の化学変性、α化等の物理変性、アミラーゼ処理等の酵素変性させた変性澱粉;難消化性澱粉、難消化性デキストリン、小麦ふすま粉砕物などの繊維質;全卵、卵白粉、卵黄粉等の卵及び卵加工品;豆蛋白、乳蛋白等の蛋白類;糖類;無機塩類;乳化剤;保存料;着色料;香料;ビタミン類;栄養強化剤などの通常製麺原料に用いられるものであれば特に限定されず配合することが出来る。
本発明の手延べ乾麺用プレミックス粉が、小麦粉以外に穀粉を含む場合、手延べ乾麺用プレミックス粉に含まれる穀粉全体の質量に対する小麦粉全量の割合は好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは75質量%以上、最も好ましくは90質量%以上である。
【0023】
本発明の手延べ乾麺の製造方法は、小麦粉に、アスコルビン酸、トランスグルタミナーゼ及びアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群から選択される1以上の成分、食用油脂並びに乳化剤を添加して生地を得る工程を含み、小麦粉100質量部に対して、食用油脂の含有量が0.4~8.5質量部、乳化剤の含有量が0.04~2.1質量部、アスコルビン酸の含有量が0.00004~0.0006質量部、アルギン酸プロピレングリコールエステルの含有量が0.75~1.2質量部であり、小麦粉100gに対して、トランスグルタミナーゼの含有量が0.4~55mUである。
好ましくは、小麦粉に、アスコルビン酸、トランスグルタミナーゼ及びアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群から選択される1以上の成分、食用油脂並びに乳化剤の全量を含む練り水を添加して生地を得る工程を含む。
【0024】
本発明の手延べ乾麺の製造方法は上記所定量のアスコルビン酸、トランスグルタミナーゼ及びアルギン酸プロピレングリコールエステルからなる群から選択される1以上の成分、小麦粉、食用油脂並びに乳化剤を使用する以外は常法に従って製造することが出来る。
例えば、a)小麦粉を含む原料に練り水を添加し混合する工程(混合工程)、b)円盤状に延ばした生地に渦巻き状に切れ目を入れ帯状にする工程(板切工程)、c)よりをかけなががら表面に食用油を塗る工程(油返し)、d)よりをかけて細く引き延ばす工程(細目工程)、e)さらに細く引き延ばす工程(小均工程)、f)油を塗りながら生地を引き延ばすことを繰り返し、めんの太さが7~8ミリ程度になったら、2本の棒の間に八の字の形に巻きつける工程(かけば工程)、g)棒に巻きつけたものをねかした後で、一方の棒を固定してもう片方を引っ張り、更に細長く引き延ばす工程(小引き工程)、h)乾燥用ハタ(織)と呼ばれる専用の道具にめんをかけて引き延ばしたまま、乾燥させる工程(門干し工程)、i)裁断する工程(裁断工程)を含む工程によって製造され、混合工程とかけば工程の間の工程における熟成については、6時間以上(長径を1.7mm以上に成形するものは3時間以上)、かけば工程と小引き工程の間の工程における熟成については、1時間以上、小引き工程と門干し工程の間の工程及び門干し工程における熟成については、合計12時間以上行うことによって製造される。
【実施例
【0025】
以下本発明を具体的に説明する為に実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0026】
製造例1 手延べ干しめんの製造
小麦粉(日本製粉社製讃岐菊)100質量部と練り水46.5質量部(水40質量部に食塩6.5質量部を溶解させたもの)とをミキサーに投入し、10rpmで30分間常圧で混捏して生地を得た。この生地をまとめ、室温で30分間熟成させた後、板状に成形した。この成形した生地に渦巻き状の切れ目を入れ、麺帯状に切り出した。その後、よりをかけながら表面に油を塗って麺紐状にし、1時間熟成を行った。間に熟成を取りながら、細目と小均工程を実施し、麺紐の直径が7~8ミリ程度になるまで細くして、更に1時間熟成を行った。熟成した麺紐を、かけば機((株)スズキ麺工)を使用して、2本の棒の間に八の字の形に巻きつけ、1時間ほど熟成をとった。熟成後、小引きを行って、目的の太さまで引き伸ばし、ハタにかけて一晩乾燥させた。十分に乾燥した麺を裁断し、手延べほしめんを得た。
【0027】
評価例1 作業性評価
製造例1の成形工程における生地のつながり、「かけば」及び「小引き」工程における生地の伸展性、「門干し」工程における生地の乾燥耐性について、熟練のパネラー10名により、下記表1の評価基準に従って評価した。なお、評価点は、パネラー10名の平均点とSD(標準偏差)で示した。
【0028】
【表1】
【0029】
評価例2 官能評価
製造例1で得られた手延べ干しめんを沸騰しているお湯に投入して2分間茹で上げ、30秒間水洗冷却した。熟練のパネラー10名により、下記表2の評価基準に従って評価した。なお、評価点は、パネラー10名の平均点とSD(標準偏差)で示した。
【0030】
【表2】
【0031】
なお、上記評価例1および2において、製造例1の標準的な手延べ干しめん(参考例1)、食塩を2.5質量部にした標準的な減塩手延べ干しめん(参考例2)及び食塩を使用しない手延べ干しめん(参考例3)の評価を各々5.0点、3.0点、1.0点とした(下記表3)。ただし、参考例3は作業性が著しく劣り、初期の生地を延ばす工程で麺線の断裂が著しく生じ、手延べ乾麺を得ることができず、乾燥耐性評価及び官能評価が不能であった。
【0032】
【表3】
【0033】
試験例1 アスコルビン酸配合量の検討
食塩を使用せず、表4記載の食用油脂(岡村製油社製の綿実サラダ油)、乳化剤(理研ビタミン製のパンマック200V:コハク酸モノグリセリド)及びアスコルビン酸(DSM Nutritional Products (UK) Ltd.社製のアスコルビン酸)を40質量部の水に溶解させた練り水を使用した以外は製造例1に従って食塩不含手延べ乾麺を製造し、評価例1及び2に従って作業性及び食感を評価した。結果を表4に示す。
実施例1~4では、アスコルビン酸量の増加に伴ってつながり、生地ダレ、弾力感の評価点が高くなり、それに対して伸展性の評価が低くなったが、何れも許容範囲内の作業性(減塩手延べ干しめんよりも良好な作業性)であり、何れの官能評価も良好であった。比較例1では、アスコルビン酸が少なかったために許容範囲をやや超えた生地ダレが確認され、弾力がやや弱いものであった。比較例2では、アスコルビン酸が多いために伸展性が著しく低下し、延ばし工程(かけばと小引き)において麺線が切れ易く、食塩不含手延べ乾麺を得ることができず、乾燥耐性評価及び官能評価をすることができなかった。
【0034】
【表4】
食塩、食用油脂、乳化剤及びアスコルビン酸は、小麦粉100質量部あたりの質量部で示した。
【0035】
試験例2 トランスグルタミナーゼ配合量の検討
アスコルビン酸に代えて表5記載のトランスグルタミナーゼ(味の素社製アクティバSTGコシキープ水溶き用;アスコルビン酸不含タイプ)を使用した以外は試験例1に従って食塩不含手延べ乾麺を製造し、評価例1及び2に従って作業性及び食感を評価した。結果を表5に示す。
実施例5~8では、トランスグルタミナーゼの増加に伴ってつながり、生地ダレ、弾力感の評価点が高くなり、それに対して伸展性の評価が低くなったが、何れも許容範囲を超える良好な手延べ乾麺であった。トランスグルタミナーゼを使用しない比較例3では、つながりが悪く、生地ダレが強く、伸展性も悪かったため、食塩不含手延べ乾麺を得ることができなかった。比較例4では、トランスグルタミナーゼが少なかったためにややつながりが悪く、やや生地ダレが強くなったために作業性が悪かった。比較例5では、トランスグルタミナーゼが多いために伸展性が著しく低下し、延ばす工程で麺線が切れ易くなり、食塩不含手延べ乾麺を得ることができなかった。
【0036】
【表5】
食塩、食用油脂及び乳化剤は、小麦粉100質量部あたりの質量部で示した。
*:TGはトランスグルタミナーゼの略であり、小麦粉100g当たりに使用したTGのmUで示した。
【0037】
試験例3 アルギン酸プロピレングリコールエステル配合量の検討
アスコルビン酸に代えて表6記載のアルギン酸プロピレングリコールエステル(太陽化学社製ネオソフトAL31)を使用した以外は試験例1に従って食塩不含手延べ乾麺を製造し、評価例1及び2に従って作業性及び食感を評価した。結果を表6に示す。
実施例9~12では、アルギン酸プロピレングリコールエステルの増加に伴ってつながり、生地ダレ、弾力感の評価点が高くなり、それに対して伸展性の評価が低くなったが、何れも許容範囲を超える良好な手延べ乾麺であった。比較例6では、アルギン酸プロピレングリコールエステルが少なかったためにややつながりが悪く、やや生地ダレが強くなったために作業性が悪かった。比較例7では、アルギン酸プロピレングリコールエステルが多いために伸展性が著しく低下し、延ばす工程で麺線が切れ易くなり、食塩不含手延べ乾麺を得ることができなかった。
【0038】
【表6】
食塩、食用油脂、乳化剤及びアルギン酸エステルは、小麦粉100質量部あたりの質量部で示した。
【0039】
試験例4 食用油脂による乾燥防止効果の検討
表7記載の質量部のアスコルビン酸、乳化剤及び食用油脂を40質量部の水に溶解させた練り水を使用した以外は製造例1に従って手延べ乾麺を製造し、作業性を評価した。結果を表7に示す。
食用油脂0.5~8.0質量部を練り水に溶解させた実施例2、13~16では、つながり、生地ダレ、伸展性、乾燥耐性のいずれも許容範囲内に収まっており、良好な手延べ乾麺であった。比較例8では、食用油脂の量が少ないために生地の乾燥が生じた。比較例9では、食用油脂が多くなったためにつながりがやや悪くなり、生地ダレがやや強くなった。
【0040】
【表7】
食塩、アスコルビン酸、食用油脂及び乳化剤は、小麦粉100質量部あたりの質量部で示した。
【0041】
試験例5 乳化剤配合量の検討
表8記載の質量部のアスコルビン酸及び食用油脂、乳化剤を40質量部の水に溶解させた練り水を使用した以外は製造例1に従って手延べ乾麺を製造し、作業性を評価した。結果を表8に示す。
乳化剤0.05~2.0質量部を練り水に溶解させた実施例2、17~20では、つながり、生地ダレ、伸展性、乾燥耐性共に許容範囲内に収まっており、良好な手延べ乾麺であった。比較例10では乳化剤が少なかったために伸展性が悪く、比較例11では乳化剤が多かったために生地ダレが強くなり、いずれも作業性が悪くなった。
【0042】
【表8】
食塩、アスコルビン酸、食用油脂及び乳化剤は、小麦粉100質量部あたりの質量部で示した。
【0043】
試験例6 食用油脂の検討
表9記載の質量部のアスコルビン酸及び食用油脂、乳化剤を40質量部の水に溶解させた練り水を使用した以外は製造例1に従って手延べ乾麺を製造し、作業性を評価した。結果を表9に示す。なお、固形油脂は5mm角程度以下に小さく砕いて練り水と共に小麦粉に加えて混捏した。
固形油脂を使用した実施例21では、つながり、生地ダレ、伸展性、乾燥耐性共に許容範囲内に収まっており、良好な手延べ乾麺であった。
【0044】
【表9】
食塩、アスコルビン酸、食用油脂及び乳化剤は、小麦粉100質量部あたりの質量部で示した。
固形油脂は太陽油脂社製のシルバーVSを使用した。
【0045】
試験例7 乳化剤の検討
表10記載の質量部のアスコルビン酸及び食用油脂、乳化剤を水に溶解させた練り水を使用した以外は製造例1に従って手延べ乾麺を製造し、作業性を評価した。ただし、乳化剤Bのジアセチル酒石酸モノグリセリドは純粋品ではないため、ジアセチル酒石酸モノグリセリドの含有率に基づきその使用量を記載した。その結果、何れの乳化剤を使用しても作業性に大差はなく良好であった。
【0046】
【表10】
食塩、食用油脂、アスコルビン酸及び乳化剤は、小麦粉100質量部あたりの質量部で示した。
乳化剤Aはコハク酸モノグリセリド(理研ビタミン社製のパンマック200V)
乳化剤Bはジアセチル酒石酸モノグリセリド(理研ビタミン社製のポエムW-90VP)
【0047】
試験例8 手延べ乾麺用ミックス粉
実施例2の原料を使用してミックス粉を製造した。すなわち、小麦粉100質量部、乳化剤(理研ビタミン製のパンマック200V:コハク酸モノグリセリド)0.5質量部及びアスコルビン酸(DSM Nutritional Products (UK) Ltd.社製のアスコルビン酸)0.0001質量部をミキサーに投入し、粉体混合しながら徐々に食用油脂(岡村製油社製の綿実サラダ油)4.0質量部を滴下し、食用油脂滴下終了後から更に10分間混合して実施例24の手延べ乾麺用ミックス粉を製造した。
小麦粉100質量部、乳化剤(理研ビタミン製のパンマック200V:コハク酸モノグリセリド)0.5質量部、アスコルビン酸(DSM Nutritional Products (UK) Ltd.社製のアスコルビン酸)0.0001質量部及び4質量部の5mm角程度以下に小さく砕いた固形油脂(太陽油脂社製のシルバーVS)をミキサーに投入し、15分間混合して実施例25の手延べ乾麺用ミックス粉を得た。
実施例24又は実施例25の手延べ乾麺用ミックス粉全量と40質量部の水とをミキサーに投入し、製造例1に従って手延べ乾麺を製造し、評価例1及び2に従って作業性及び食感を評価した。表11に示したように、何れのミックス粉を使用した場合であっても実施例2とほぼ同等の作業性及び食感の手延べ乾麺が得られた。
【0048】
【表11】