(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】油脂性菓子、複合菓子及び油脂性菓子の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23G 1/32 20060101AFI20220808BHJP
A23G 1/54 20060101ALI20220808BHJP
A23G 3/42 20060101ALI20220808BHJP
【FI】
A23G1/32
A23G1/54
A23G3/42
(21)【出願番号】P 2020075865
(22)【出願日】2020-04-22
【審査請求日】2022-06-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健史
(72)【発明者】
【氏名】中本 小百合
(72)【発明者】
【氏名】武知 絢子
【審査官】吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-65466(JP,A)
【文献】特開2019-76012(JP,A)
【文献】特開2018-153148(JP,A)
【文献】特開2012-105567(JP,A)
【文献】特開2015-164405(JP,A)
【文献】特開昭62-61572(JP,A)
【文献】国際公開第2020/262454(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0286272(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質フラクトオリゴ糖を20質量%以上含有し、HLBが1~6のショ糖脂肪酸エステルを含有し、水分含量が3質量%以下である、油脂性菓子。
【請求項2】
前記ショ糖脂肪酸エステルを0.1~3質量%含有する、請求項1に記載の油脂性菓子。
【請求項3】
前記油脂性菓子を50℃で10分間融解させたもの0.2gに、分散液として2-プロパノール20ml加え、5分間超音波処理して得られる水無添加サンプルと、前記油脂性菓子を50℃で10分間融解させたもの0.2gに、水10μlを加えて混合した後、分散液として2-プロパノール20ml加え、5分間超音波処理して得られる水添加サンプルとのそれぞれについて粒子径分布測定で粒子径D50を測定したときに、前記水添加サンプルの粒子径D50を前記水無添加サンプルの粒子径D50で除した値が0.95~1.35である、請求項1又は2に記載の油脂性菓子。
【請求項4】
前記油脂性菓子を50℃で10分間融解させたもの0.2gに、分散液として2-プロパノール20ml加え、5分間超音波処理して得られる水無添加サンプルと、前記油脂性菓子を50℃で10分間融解させたもの0.2gに、水10μlを加えて混合した後、分散液として2-プロパノール20ml加え、5分間超音波処理して得られる水添加サンプルとのそれぞれについて粒子径分布測定で粒子径D90を測定したときに、前記水添加サンプルの粒子径D90を前記水無添加サンプルの粒子径D90で除した値が0.95~1.95である、請求項1~3のいずれかに記載の油脂性菓子。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の油脂性菓子と、他の食品原料とを含む、複合菓子。
【請求項6】
非晶質フラクトオリゴ糖を20質量%以上含有し、水分含量が3質量%以下である油脂性菓子の製造方法であって、
前記油脂性菓子にHLBが1~6のショ糖脂肪酸エステルを含有させることを含む、油脂性菓子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂性菓子、複合菓子及び油脂性菓子の製造方法に関する。
具体的には、本発明は、口中で滑らかに感じやすい油脂性菓子、複合菓子及び油脂性菓子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水に対する溶解性が砂糖よりも高い糖類、HLB値が3以下で主要な結合脂肪酸の炭素原子数が20~26のショ糖脂肪酸エステル及び油脂類を含有するチョコレートベースと、水性成分とを混合し、油中水型に乳化することを特徴とする含水チョコレートの製造法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、水分含量が3質量%以下である油脂性菓子(例えばチョコレート等)において、非晶質フラクトオリゴ糖を20質量%以上含有させると、これを食する際に口中で滑らかに感じにくいという特有の課題を見出した。
特許文献1の技術は、含水チョコレートに係るものであるため、油脂性菓子における上記課題を解決するものではない。
【0005】
本発明の目的の1つは、口中で滑らかに感じやすい油脂性菓子、複合菓子及び油脂性菓子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の油脂性菓子等を提供できる。
1.非晶質フラクトオリゴ糖を20質量%以上含有し、HLBが1~6のショ糖脂肪酸エステルを含有し、水分含量が3質量%以下である、油脂性菓子。
2.前記ショ糖脂肪酸エステルを0.1~3質量%含有する、1に記載の油脂性菓子。
3.前記油脂性菓子を50℃で10分間融解させたもの0.2gに、分散液として2-プロパノール20ml加え、5分間超音波処理して得られる水無添加サンプルと、前記油脂性菓子を50℃で10分間融解させたもの0.2gに、水10μlを加えて混合した後、分散液として2-プロパノール20ml加え、5分間超音波処理して得られる水添加サンプルとのそれぞれについて粒子径分布測定で粒子径D50を測定したときに、前記水添加サンプルの粒子径D50を前記水無添加サンプルの粒子径D50で除した値が0.95~1.35である、1又は2に記載の油脂性菓子。
4.前記油脂性菓子を50℃で10分間融解させたもの0.2gに、分散液として2-プロパノール20ml加え、5分間超音波処理して得られる水無添加サンプルと、前記油脂性菓子を50℃で10分間融解させたもの0.2gに、水10μlを加えて混合した後、分散液として2-プロパノール20ml加え、5分間超音波処理して得られる水添加サンプルとのそれぞれについて粒子径分布測定で粒子径D90を測定したときに、前記水添加サンプルの粒子径D90を前記水無添加サンプルの粒子径D90で除した値が0.95~1.95である、1~3のいずれかに記載の油脂性菓子。
5.1~4のいずれかに記載の油脂性菓子と、他の食品原料とを含む、複合菓子。
6.非晶質フラクトオリゴ糖を20質量%以上含有し、水分含量が3質量%以下である油脂性菓子の製造方法であって、
前記油脂性菓子にHLBが1~6のショ糖脂肪酸エステルを含有させることを含む、油脂性菓子の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、口中で滑らかに感じやすい油脂性菓子、複合菓子及び油脂性菓子の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の油脂性菓子、複合菓子及び油脂性菓子の製造方法について詳述する。
尚、本明細書において、「x~y」は「x以上、y以下」の数値範囲を表すものとする。数値範囲に関して記載された上限値及び下限値はそれぞれ任意に組み合わせて数値範囲とすることができる。
【0009】
1.油脂性菓子
本発明の一態様に係る油脂性菓子は、非晶質フラクトオリゴ糖を20質量%以上含有し、HLBが1~6のショ糖脂肪酸エステルを含有し、水分含量が3質量%以下である。
【0010】
かかる油脂性菓子は、口中で滑らかに感じやすい効果を奏する。
通常、油脂性菓子に非晶質フラクトオリゴ糖を20質量%以上含有させた場合は、口中で滑らかに感じにくい。これに対し、本態様では、油脂性菓子にHLBが1~6のショ糖脂肪酸エステルを含有させることによって、該油脂性菓子に非晶質フラクトオリゴ糖を20質量%以上含有させても、口中で滑らかに感じられる。
そのような効果が奏される理由は必ずしも明らかではないが、油脂性菓子が口中において唾液と混ざり合ったときに、油脂性菓子に含まれる成分が凝集しにくくなっていることが考えられる(例えば試験例4として後述するデータより)。
【0011】
油脂性菓子の形態は格別限定されず、例えばチョコレート等である。ここでいう「チョコレート」は、一般社団法人全国公正取引協議会連合会が規定する公正競争規約における「チョコレート類」である場合に限定されず、例えば、食用油脂(植物油脂、乳脂等)、糖質を主原料とし、必要によりカカオ成分(カカオマス、ココアパウダー、ココアバター等)、乳製品(粉乳等)、香料、乳化剤(レシチン等)等を加え、一般的なチョコレートの製造工程を経て製造されたものを指す。そのようなチョコレートとして、例えば、プレーンチョコレート、ミルクチョコレート、ホワイトチョコレート、ダークチョコレート、カラーチョコレート等が挙げられる。
【0012】
油脂性菓子中の水分含量は3質量%以下である。水分含量は、日本国消費者庁Webページの「別添 栄養表示関係」における「別添 栄養成分等の分析方法等」 5.炭水化物 イ 水分 (4)常圧加熱乾燥法に従って測定する(https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/pdf/food_labeling_cms101_200327_11.pdf)。具体的には、以下の手順で測定する。
底部の直径が50mmである秤量皿(蓋付き)の恒量(W0(g))を求める。次いで、秤量皿に2gの試料を採取し、平らに広げ、蓋をし、秤量(W1(g))する。次いで、秤量皿の蓋をずらした状態で定温乾燥器に入れ、定温乾燥器が100℃に達してから4時間乾燥した後に、蓋をし、放冷する。室温に達したら直ちに秤量(W2(g))する。恒量が得られるまでこの操作を繰り返し行う。試料中の水分含量は、下記式によって求められる。
試料中の水分含量(重量%)={(W1-W2)/(W1-W0)}×100
【0013】
(非晶質フラクトオリゴ糖)
本発明の油脂性菓子は、非晶質フラクトオリゴ糖を20質量%以上含有する。
非晶質フラクトオリゴ糖は、フラクトオリゴ糖の非晶質体である。
【0014】
フラクトオリゴ糖(FOS)は、スクロース(GF)に1個以上のフラクトース残基がβ2-1結合により結合されたオリゴ糖類である。例えば、スクロースに1個のフラクトース残基が結合したものが1-ケストース(「GF2」、「GF2」と表記される場合もある。)、2個結合したものがニストース(「GF3」、「GF3」と表記される場合もある。)、3個結合したものがフラクトシルニストース(「GF4」、「GF4」と表記される場合もある。)である。一般的に、市販されているフラクトオリゴ糖製品には、主要成分として、1-ケストース、ニストース及びフラクトフラノシルニストースが含まれている。
【0015】
油脂性菓子は、いずれも非晶質体のフラクトオリゴ糖として、1-ケストース、ニストース及びフラクトフラノシルニストースからなる群から選択される1種以上、例えば1種、2種又は3種を含むことができる。
【0016】
本発明において、フラクトオリゴ糖が非晶質体であることは、示差走査熱量測定(DSC)で判定できる。具体的には、測定試料(フラクトオリゴ糖)を20℃程度から昇温させて、50~60℃付近のガラス転移点による吸熱ピークが見られる場合は、測定試料が非晶質フラクトオリゴ糖であると判定する。フラクトオリゴ糖は、特別な精製をしない限り、通常は非晶質体であることが多い。
【0017】
油脂性菓子が非晶質フラクトオリゴ糖を含むことによって、フラクトオリゴ糖が有する好ましい生理機能、例えば、難う蝕性、ビフィズス菌増殖促進作用、ミネラル吸収促進作用等を付与できる。さらに、フラクトオリゴ糖に含まれるGF2はショ糖に近い甘味を有することから、チョコレートに好ましい風味を付与できる。
【0018】
油脂性菓子における非晶質フラクトオリゴ糖の含有量は20質量%以上であればよく、例えば、21質量%以上、22質量%以上、23質量%以上又は24質量%以上であり得、また、50質量%以下、40質量%以下、38質量%以下、35質量%以下、30質量%以下又は28質量%以下であり得る。
【0019】
(ショ糖脂肪酸エステル)
本発明の油脂性菓子は、HLB(Hydrophile-Lipophile Balanceの略)が1~6のショ糖脂肪酸エステルを含有する。
HLBが1~6のショ糖脂肪酸エステルは格別限定されない。HLBが1~6のショ糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸として、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、エルカ酸等が挙げられる。
【0020】
本発明の油脂性菓子におけるHLBが1~6のショ糖脂肪酸エステルの含有量は格別限定されず、例えば、0.01質量%以上、0.03質量%以上、0.05質量%以上、0.07質量%以上又は0.1質量%以上であり得、また、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0.7質量%以下、0.6質量%以下、0.5質量%以下又は0.4質量%以下であり得る。
【0021】
一実施形態において、油脂性菓子は、水と混合された際における粒子径の増大が抑制される。かかる粒子径の増大の抑制は、以下に説明する「粒子径分布の傾き」によって確認できる。
【0022】
油脂性菓子を50℃で10分間融解させたもの0.2gに、分散液として2-プロパノール20ml加え、5分間超音波処理する。こうして得られるものを「水無添加サンプル」と称する。また、油脂性菓子を50℃で10分間融解させたもの0.2gに、水10μlを加えて混合した後、分散液として2-プロパノール20ml加え、5分間超音波処理する。こうして得られるものを「水添加サンプル」と称する。
【0023】
上記の水無添加サンプル及び水添加サンプルのそれぞれについて粒子径分布測定で粒子径D50を測定し、水添加サンプルについて測定された粒子径D50を水無添加サンプルについて測定された粒子径D50で除して得られる値(粒子径D50に係る粒子径分布の傾き(水添加/水無添加))は、0.95~1.35であることが好ましい。
【0024】
また、上記の水無添加サンプル及び水添加サンプルのそれぞれについて粒子径分布測定で粒子径D90を測定し、水添加サンプルについて測定された粒子径D90を水無添加サンプルについて測定された粒子径D90で除して得られる値(粒子径D90に係る粒子径分布の傾き(水添加/水無添加))は、0.95~1.95であることが好ましい。
【0025】
「粒子径分布の傾き」が上述した範囲であれば、油脂性菓子は、水と混合された際における粒子径の増大が抑制される。そのような油脂性菓子は、口中において唾液と混合された際における粒子径の増大が抑制され、口中で滑らかに感じやすい。
尚、粒子径分布測定は実施例(試験例)に記載の方法で行う。
【0026】
2.複合菓子
本発明の一態様に係る複合菓子は、以上に説明した本発明の一態様に係る油脂性菓子と、他の食品原料とを含む。
【0027】
複合菓子に含まれる他の食品原料は格別限定されず、例えば、油脂性菓子の表面の一部又は全部を被覆する被覆材等が挙げられる。被覆材は、例えば、粉末状、層状等の形態を有し得る。また、前記食品原料は、油脂性菓子の内部に内包される内包物であってもよい。前記食品原料は、食品であれば格別限定されず、例えばチョコレート、ホワイトチョコレート、クリーム、ソース、ナッツ(アーモンド)、果実(ラムレーズン)、焼き菓子(ビスケット)、チーズ等であり得る。
【0028】
3.油脂性菓子の製造方法
本発明の一態様に係る油脂性菓子の製造方法は、非晶質フラクトオリゴ糖を20質量%以上含有し、水分含量が3質量%以下である油脂性菓子の製造方法であって、前記油脂性菓子にHLBが1~6のショ糖脂肪酸エステルを含有させることを含む。
かかる油脂性菓子の製造方法によれば、以上に説明した本発明の一態様に係る油脂性菓子が得られる。
【実施例】
【0029】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はかかる実施例により限定されない。
以下の説明において、「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
以下の各試験例において得られた油脂性菓子はいずれも水分含量が3質量%以下である。
【0030】
(試験例1)
非晶質フラクトオリゴ糖(メイオリゴP、明治フードマテリア製)36.0%及び植物油脂64.0%をボールミルで90分間粉砕してフラクトオリゴ糖ペーストを調製した。このフラクトオリゴ糖ペースト99.0%と乳化剤1.0%とを混合して、油脂性菓子(フラクトオリゴ糖配合油脂)を得た。乳化剤としては、表1に示すように、試験区1-1~1-3ではショ糖脂肪酸エステル(HLB1、7、16)、試験区1-4ではソルビタントリステアレート(HLB3.0)、試験区1-5ではポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB2.6)を用いた。
【0031】
得られた油脂性菓子を官能評価した。官能評価は、同じサンプルに対して同評点を付けることが可能な程度に訓練された専門パネル(チョコレート専門パネル)3名にて、油脂性菓子を口中に含んで数回咀嚼しながら、口中で溶解させた後に感じられる滑らかさ及び風味の違和感について、下記の評価基準で評価した。尚、パネル全員が一致した評価結果を採用した。結果を表1に示す。
[滑らかさの評価基準]
A:滑らかさが強い
B:滑らかさが弱い
[風味の違和感の評価基準]
A:乳化剤を添加していないフラクトオリゴ糖配合油脂と比較して乳化剤に由来する風味が感じられず、違和感がない
B:乳化剤を添加していないフラクトオリゴ糖配合油脂と比較して乳化剤に由来する風味が強く感じられ、違和感がある
尚、風味の違和感の評価においてA評価の油脂性菓子であれば、チョコレートに配合した場合、より風味の強いカカオマスや粉乳、香料も含まれるため、風味に違和感は生じないと考えられる。
【0032】
【0033】
表1より、HLB1のショ糖脂肪酸エステルを加えた場合に、風味の違和感が生じず、かつ滑らかさが向上することを確認した。
【0034】
(試験例2)
非晶質フラクトオリゴ糖(試験例1と同様)64.0%、植物油脂(試験例1と同様)35.0~36.0%及び乳化剤(HLB1のショ糖脂肪酸エステル)0~1.0%をボールミルで90分間粉砕してフラクトオリゴ糖ペーストを調製した。乳化剤は、試験区2-1では0%、試験区2-2では0.25%、試験区2-3では0.5%、試験区2-4では1.0%添加し、残部を植物油脂で調整した。
カカオマス54.0%、粉乳34.0%、植物油脂8.0%、乳脂2.0%、レシチン1.0%及び香料1.0%からなる配合にて、常法を用いてチョコレートベース生地を調製した。
フラクトオリゴ糖ペースト40%とチョコレートベース生地60%とを混合し、油分42%の油脂性菓子(チョコレート)を得た。油脂性菓子の組成を表2に示す。
この油脂性菓子を、同じサンプルに対して同評点を付けることが可能な程度に訓練されたチョコレート専門パネル8名により評価した。口中に含んで数回咀嚼しながら、口中で溶解させた後に感じられる滑らかさについて、以下の5段階で官能評価し、パネル8名の平均値を算出した。結果を表2に示す。
[滑らかさの評価基準]
1:非常に弱く感じる
2:弱く感じる
3:やや感じる
4:強く感じる
5:非常に強く感じる
【0035】
【0036】
表2より、ショ糖脂肪酸エステルを0.1%以上配合したチョコレートは滑らかさを感じやすい傾向を確認した。
【0037】
(試験例3)
フラクトオリゴ糖(試験例1と同様)64%、植物油脂(試験例1と同様)35~36%及び乳化剤0~1%をボールミルで90分間粉砕してフラクトオリゴ糖ペーストを調製した。具体的には、試験区3-1は乳化剤の配合を省略し、試験区3-2ではHLB1のショ糖脂肪酸エステル1%、試験区3-3ではHLB3のショ糖脂肪酸エステル1%、試験区3-4ではHLB5のショ糖脂肪酸エステル1%を使用した(残部を植物油脂で調整した)。
カカオマス54%、粉乳(試験例2と同様)34%、植物油脂(試験例2と同様)8%、乳脂(試験例2と同様)2%、レシチン1%、香料(試験例2と同様)1%からなる配合にて、常法によりチョコレートベース生地を調製した。
フラクトオリゴ糖ペースト40%とチョコレートベース生地60%とを混合し、油分42%の油脂性菓子(チョコレート)を得た。油脂性菓子の組成を表3に示す。
この油脂性菓子を、同じサンプルに対して同評点を付けることが可能な程度に訓練されたチョコレート専門パネル8名が評価した。口中に含んで数回咀嚼しながら、口中で溶解させた後に感じられる滑らかさについて、乳化剤を含まないものの滑らかさを基準(0)とする下記7段階の評価基準で官能評価し、パネル8名の平均値を算出した。結果を表3に示す。
[滑らかさの評価基準]
+3:非常に強く感じる
+2:強く感じる
+1:やや強く感じる
0:変わらない
-1:やや弱く感じる
-2:弱く感じる
-3:非常に弱く感じる
【0038】
【0039】
表3より、HLB1~6のショ糖脂肪酸エステルを含む試験区3-2~3-4では、これらを含まない試験区3-1と比較して、滑らかさが向上していることがわかる。また、上述した試験例1(表1)において、HLB7及び16のショ糖脂肪酸エステルは滑らかさの向上が確認できなかったが、本試験例(表3)より、HLB1~6のショ糖脂肪酸エステルについて、滑らかさの向上が可能であることがわかる。
【0040】
(試験例4)
試験例2の試験区2-1~2-4と同様にして、試験区4-1~4-4のチョコレート(油脂性菓子)を得た。油脂性菓子の組成を表4に示す。
試験区4-1~4-4の油脂性菓子を50℃で10分間融解させたもの0.2gに、分散液として2-プロパノール20mlを加え、5分間超音波処理し、「水無添加サンプル」を得た。
一方、試験区4-1~4-4の油脂性菓子を50℃で10分間融解させたもの0.2gに、水10μlを加えてよく混合した後、分散液として2-プロパノール20mlを加え、5分間超音波処理し、「水添加サンプル」を得た。水添加サンプルは、油脂性菓子を食する場合に、口中で唾液と混合された状態を想定している。
【0041】
これら水無添加サンプル及び水添加サンプルのそれぞれについて、レーザ回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所製、SALD-2200(WingSALD II:Version 3.1.0))を用いて粒子径分布を測定した。具体的には、まず、レーザ回折式粒度分布測定装置の測定用石英セル内にブランク測定用サンプル(2-プロパノール)を入れ、撹拌しながらブランク測定を実施した。次いで、前記セル内を洗浄した後、前記セル内に水無添加サンプル又は水添加サンプルを入れ、撹拌しながら粒子径分布を測定した。
【0042】
測定された粒子径分布より、体積基準の相対粒子量の積算値が50%及び90%に当たる粒子径(D50及びD90)をそれぞれ求めた。また。D50及びD90のそれぞれについて、水添加サンプルの値を水無添加サンプルの値で除して、粒子径分布の傾きを求めた。結果を表4に示す。
【0043】
【0044】
表4より、D50及びD90のそれぞれにおいて、水無添加サンプルの値に対する水添加サンプルの値の増大が、HLB1のショ糖脂肪酸エステルを0.1%以上配合した油脂性菓子において、小さくなることがわかる。
具体的には、D90に着目すると、HLB1のショ糖脂肪酸エステルを添加していない試験区4-1の油脂性菓子の粒子径分布の傾き(水添加サンプルの値を水無添加サンプルの値で除した値)は2を超える値(2.08)を示したが、HLB1のショ糖脂肪酸エステルを0.1重量%~0.4重量%添加した試験区4-2~4-4の油脂性菓子の粒子径分布の傾きは2以下(1.70以下)であった。