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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-05
(45)【発行日】2022-08-16
(54)【発明の名称】完全栄養食品及びその提供システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/60 20180101AFI20220808BHJP
【FI】
G16H20/60
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021156650
(22)【出願日】2021-09-27
(62)【分割の表示】P 2021544460の分割
【原出願日】2021-03-23
(65)【公開番号】P2022008561
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2020055099
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021035701
(32)【優先日】2021-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】安藤 徳隆
(72)【発明者】
【氏名】仲村 太志
(72)【発明者】
【氏名】平野 行央
(72)【発明者】
【氏名】櫻木 孝典
【審査官】渡邉 加寿磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-134650(JP,A)
【文献】特開2019-140952(JP,A)
【文献】国際公開第2015/001595(WO,A1)
【文献】特開2009-159873(JP,A)
【文献】特開2012-203834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 10/00-99/00
A23L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の属性情報を取得する情報取得部と、
利用者の前記属性情報を記憶する利用者情報記憶部と、
利用者の属性毎に第一の栄養素及び第二の栄養素の摂取基準が設けられた完全栄養食の食事摂取基準を記憶する食事摂取基準記憶部と、
前記完全栄養食を形成する基準食が、すべての利用者の第一の栄養素の摂取基準を満たせるように、基準食の第一の栄養素の摂取基準を算出する栄養計算部と、
を含み、
前記第二の栄養素は、たんぱく質、脂質、または炭水化物の少なくともいずれか一つであり、
各利用者の属する前記食摂取基準の区分の中で、推定エネルギー必要量が最も少ない区分における前記第二の栄養素の目標量上限値を、前記基準食における前記第二の栄養素の摂取上限値とする、
完全栄養食の提供システム。
【請求項2】
前記基準食における第一の栄養素の摂取基準の範囲は、前記完全栄養食の第一の栄養素の食事摂取基準の範囲よりも狭い、ことを特徴とする請求項1に記載の完全栄養食の提供システム。
【請求項3】
前記第一の栄養素は、ビタミンまたはミネラルの少なくとも一つである、請求項1または2に記載の完全栄養食の提供システム。
【請求項4】
前記完全栄養食は、前記基準食の量を調整することにより調製され、
前記完全栄養食のエネルギー量は、利用者の属する食事摂取基準の区分における推定エネルギー必要量であり、前記基準食のエネルギー量は、すべての利用者が属する食事摂取基準の区分の中で、推定エネルギー必要量が最も少ない区分における推定エネルギー必要量である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の完全栄養食の提供システム。
【請求項5】
前記利用者の属性情報は、少なくとも性別、年齢、または身体活動量の情報を含む、請求項1ないし4に記載の完全栄養食の提供システム。
【請求項6】
前記ビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB、ビタミンB、ナイアシン、ビタミンB、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンCのうち一つまたは複数を含み、
前記ミネラルは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデンのうち一つまたは複数を含む、
請求項に記載の完全栄養食の提供システム。
【請求項7】
完全栄養食の前記食事摂取基準は、日本国厚生労働省発行の「日本人の食事摂取基準」、米国における“Dietary Reference Intakes (DRIs)”、中国における“Dietary Reference Intakes for Chinese”のいずれかである、請求項1ないし6のいずれか一項に記載の完全栄養食の提供システム。
【請求項8】
メニュー選択部をさらに含み、
前記栄養計算部は、基準食の前記エネルギー量、第一の栄養素の前記摂取上限値または摂取下限値、並びに第二の栄養素の前記摂取上限値または前記摂取下限値を前記メニュー選択部へ出力する、請求項に記載の完全栄養食の提供システム。
【請求項9】
利用者の属性情報を取得する情報取得部と、
利用者の前記属性情報を記憶する利用者情報記憶部と、
利用者の属性毎に第一の栄養素及び第二の栄養素の摂取基準が設けられた完全栄養食の食事摂取基準を記憶する食事摂取基準記憶部と、
前記完全栄養食を形成する基準食について、各利用者の属性に関係なく第一の栄養素の摂取基準を満たす、基準食の第一の栄養素の摂取基準を算出する栄養計算部と、
を含み、
前記第二の栄養素は、たんぱく質、脂質、または炭水化物の少なくともいずれか一つであり、
各利用者の属する前記食摂取基準の区分の中で、推定エネルギー必要量が最も少ない区分における前記第二の栄養素の目標量上限値を、前記基準食における前記第二の栄養素の摂取上限値とする、
完全栄養食の栄養計算装置。
【請求項10】
コンピュータを、
利用者の属性情報を取得する手段と、
利用者の前記属性情報を記憶する手段と、
利用者の属性毎に第一の栄養素及び第二の栄養素の摂取基準が設けられた完全栄養食の食事摂取基準を記憶する手段と、
前記完全栄養食を形成する基準食について、各利用者の属性に関係なく第一の栄養素の摂取基準を満たす、基準食の第一の栄養素の摂取基準を算出する手段と、
して少なくとも機能させるための完全栄養食の栄養計算プログラムであり、
前記第二の栄養素は、たんぱく質、脂質、または炭水化物の少なくともいずれか一つであり、
各利用者の属する前記食摂取基準の区分の中で、推定エネルギー必要量が最も少ない区分における前記第二の栄養素の目標量上限値を、前記基準食における前記第二の栄養素の摂取上限値とする、
完全栄養食の栄養計算プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、完全栄養食品及びその提供システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化に伴う医療費や介護費の増加が問題となっており、健康上の理由で日常生活が制限されることなく過ごせる「健康寿命」を伸ばすことが、医療費抑制や豊かな老後を過ごす上で重要な課題となっている。
【0003】
日本国厚生労働省は、国民の健康の保持・増進を図る上で摂取することが望ましいエネルギー及び栄養素の量の基準を5年毎に改定しており、2019年12月24日に「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書(以下、「日本人の食事摂取基準」という)を公表している。
【0004】
「日本人の食事摂取基準」では、年齢、性別、及び身体活動レベル(低い(I)、ふつう(II)、高い(III))の区分ごとに推定エネルギー必要量(kcal/日)を計算し、推定エネルギー必要量に応じて、三大栄養素であるたんぱく質、脂質、炭水化物の目標量(各栄養素が総エネルギー摂取量に占めるべき割合)を規定するとともに、ビタミンA、ビタミンD等の脂溶性ビタミン、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン等の水溶性ビタミン、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、マンガン等のミネラルについて、推奨量、目安量、耐容上限量、目標量のいずれか、またはこれらの組み合わせを規定している。
【0005】
「日本人の食事摂取基準」に記載されている各栄養素の推奨量、目安量、耐容上限量、目標量等の基準値は、性別、年齢、身体活動レベルの区分毎に設けられている。すべての栄養素が基準値を満たすように栄養計算を行うには試行錯誤が必要で、三大栄養素と食塩量のみ、またはこれらに加えて主要ビタミン、主要ミネラルについて基準値となるように栄養計算を行うことが多い。また、毎食の栄養素が基準値になるように栄養計算を行うのではなく、例えば1週間などの所定期間内における対象者の栄養摂取量の平均値が基準値を満たすように栄養計算されることも多い。米国における“Dietary Reference Intakes (DRIs)”(以下、「米国DRIs」という)、中国における“Dietary Reference Intakes for Chinese” (以下、「中国DRIs」という)においては、各栄養素の推奨量、目安量、耐容上限量、目標量等の基準値は、性別、年齢、身体活動レベルの区分毎に設けられている。ただし年齢区分、身体活動レベルの区分設定は日本の食事摂取基準の区分設定と必ずしも同じではない。
【0006】
特許文献1には、エネルギー比率において、少なくとも、2~75%の糖質、10%以上のタンパク質、15~70%の脂質、を含み、日本国厚生労働省発行の日本人の食事摂取基準に示された推定エネルギー必要量を摂取した場合において、日本国厚生労働省発行の日本人の食事摂取基準に示されるビタミン及びミネラルの摂取量が、必要量以上且つ上限量以下に達するように設計された経口摂取用栄養調整食品に関する発明が記載されている。
【0007】
特許文献1の表2~表4には、タンパク質、脂質、炭水化物、並びにビタミン、ミネラルの100kcal当たりの含有量目標及び実施例1~10として食品への各栄養素の含有量(g)が規定されているものの、含有量の具体的な決定方法については明示されておらず、ミネラル、ビタミンについては、推奨目安に対する含有量を50%~250%に調整することで日本人の食事摂取基準を満たすようにしている。また、日本人の食事摂取基準に示されるビタミン及びミネラルの摂取量を満たすには、日本国厚生労働省発行の日本人の食事摂取基準に示された推定エネルギー必要量を摂取する必要がある。さらに、特許文献1に記載された発明は、通常の食事の代替として粉体を水に溶かして提供される栄養調整食品であるが、通常の食事の場合にはレシピによって栄養素にばらつきがでるため、属性の異なる複数の利用者へ食事を提供する場合、日本人の食事摂取基準を満たすように栄養素の含有量を都度調整する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2019-140952
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、各国において定められる食事摂取基準、例えば「日本人の食事摂取基準」では、年齢や性別、身体活動レベルに応じて異なる栄養摂取の基準が設けられているため、例えば会社の社食などにおいて、属性の異なる複数の利用者に向けて食事摂取基準を満たす食事を提供するには、食事の量の調整だけではなく、区分毎に食事の栄養成分の細かい調整が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、年齢や性別、身体活動レベルの異なる複数の利用者に対して、食事の量を調整するだけで完全栄養食の提供を可能とするものである。
【0011】
本発明に係る完全栄養食の提供システムは、利用者の属性情報を取得する情報取得部と、利用者の前記属性情報を記憶する利用者情報記憶部(利用者情報データベース)と、利用者の属性毎に第一の栄養素及び第二の栄養素の摂取基準が設けられた完全栄養食の食事摂取基準を記憶する食事摂取基準記憶部(食事摂取基準データベース)と、完全栄養食を形成する基準食が、すべての利用者の第一の栄養素の摂取基準を満たせるように、基準食の第一の栄養素の摂取基準を算出する栄養計算部を具備することを特徴とする。「第一の栄養素及び第二の栄養素の摂取基準が設けられた完全栄養食の食事摂取基準」は、例えば「日本人の食事摂取基準」が挙げられるが、利用者の属性に応じて異なる栄養素の摂取基準が設けられた食事摂取基準であれば、いかなる食事摂取基準であっても構わない。
【0012】
本発明に係る完全栄養食の提供システムは、さらに基準食における第一の栄養素の摂取基準の範囲が、完全栄養食の第一の栄養素の食事摂取基準の範囲よりも狭い、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る完全栄養食の提供システムにおいて、第一の栄養素は、ビタミンおよび/またはミネラルであることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る完全栄養食の提供システムにおいて、第二の栄養素は、たんぱく質、脂質、および/または炭水化物であることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る完全栄養食の提供システムにおいて、完全栄養食は、基準食の量を調整することにより調製され、完全栄養食のエネルギー量は、利用者の属する食事摂取基準の区分における推定エネルギー必要量であり、基準食のエネルギー量は、すべての利用者が属する食事摂取基準の区分の中で、推定エネルギー必要量が最も少ない区分における推定エネルギー必要量である、ことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る完全栄養食の提供システムにおいて、完全栄養食と基準食の量の比率は、完全栄養食と基準食のエネルギー量の比率と等しい、ことを特徴とする。すなわち、完全栄養食のエネルギー量は各利用者の推定エネルギー必要量となるため、完全栄養食の量は、基準食の量に「各利用者の推定エネルギー必要量/基準食のエネルギー量」を乗じたものとなる。
【0017】
本発明に係る完全栄養食の提供システムにおいて、食事摂取基準において第一の栄養素の耐容上限量が設けられている場合、式「正規化栄養素量=第一の栄養素の耐容上限量×(基準食のエネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)」により利用者の属する各区分において正規化栄養素量を算出し、その中で最も少ない正規化栄養素量を基準食における第一の栄養素の摂取上限値とする、ことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る完全栄養食の提供システムにおいて、食事摂取基準において第一の栄養素の目安量または推奨量が設けられている場合、食事摂取基準における各区分における第一の栄養素の目安量または推奨量の最大値を基準食における第一の栄養素の摂取下限値とする、ことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る完全栄養食の提供システムにおいて、各利用者の属する食摂取基準の区分の中で、推定エネルギー必要量が最も少ない区分におけるたんぱく質の目標量上限値を、基準食におけるたんぱく質の摂取上限値とし、各利用者の属する区分の中で最も値が大きい推奨量を利用者へ提供する基準食におけるたんぱく質の摂取下限値とする、ことを特徴とする。
【0020】
本発明に係る完全栄養食の提供システムにおいて、各利用者の属する食摂取基準の区分の中で、推定エネルギー必要量が最も少ない基準エネルギー量の区分における脂質の目標量上限値を、基準食における脂質の摂取上限値とし、基準エネルギー量の区分に属する利用者の脂質の目標量下限値を、基準食における脂質の摂取下限値とする、ことを特徴とする。
【0021】
本発明に係る完全栄養食の提供システムにおいて、各利用者の属する食摂取基準の区分の中で、推定エネルギー必要量が最も少ない基準エネルギー量の区分における炭水化物の目標量上限値を、基準食における炭水化物の摂取上限値とし、基準エネルギー量の区分に属する利用者の炭水化物の目標量下限値を、基準食における炭水化物の摂取下限値とする、ことを特徴とする。
【0022】
本発明に係る完全栄養食の提供システムにおいて、利用者の属性情報は、少なくとも性別、年齢、または身体活動量の情報を含むことを特徴とする。
【0023】
本発明に係る完全栄養食の提供システムにおいて、ビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB、ビタミンB、ナイアシン、ビタミンB、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンCのうち一つまたは複数を含み、ミネラルは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデンのうち一つまたは複数を含むことを特徴とする。
【0024】
本発明に係る完全栄養食の提供システムにおいて、完全栄養食の食事摂取基準は、日本国厚生労働省発行の「日本人の食事摂取基準」、米国DRIs、中国DRIsのいずれかであることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る完全栄養食の提供システムにおいて、メニュー選択部をさらに含み、栄養計算部は、基準食のエネルギー量、第一の栄養素の摂取上限値または摂取下限値、並びに第二の栄養素の摂取上限値または摂取下限値をメニュー選択部へ出力することを特徴とする。
【0026】
本発明に係る完全栄養食は、上記完全栄養食の提供システムによって栄養計算された完全栄養食品であることを特徴とする。
【0027】
本発明の完全栄養食品が、朝食、昼食及び夕食からなる群より選択されるいずれか一つ若しくは、これらの二又は三の組み合わせにより構成される完全栄養食品であることを特徴とする。
【0028】
本発明の完全栄養食品が、加工食品、調理済食品又は特定のメニューに基づき調理された料理であることを特徴とする。
【0029】
本発明に係る完全栄養食の栄養計算装置は、利用者の属性情報を取得する情報取得部と、利用者の属性情報を記憶する利用者情報記憶部と、利用者の属性毎に第一の栄養素及び第二の栄養素の摂取基準が設けられた完全栄養食の食事摂取基準を記憶する食事摂取基準記憶部と、完全栄養食を形成する基準食について、各利用者の属性に関係なく第一の栄養素の摂取基準を満たす、基準食の第一の栄養素の摂取基準を算出する栄養計算部と、を含むことを特徴とする。
【0030】
本発明に係る完全栄養食の栄養計算プログラムは、利用者の属性情報を取得するステップと、利用者の属性情報を記憶するステップと、利用者の属性毎に第一の栄養素及び第二の栄養素の摂取基準が設けられた完全栄養食の食事摂取基準を記憶するステップと、完全栄養食を形成する基準食について、各利用者の属性に関係なく第一の栄養素の摂取基準を満たす、基準食の第一の栄養素の摂取基準を算出するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、年齢、性別及び身体活動レベルの各区分に応じた栄養素の調整を不要にし、「日本人の食事摂取基準」など、各国において定められている食事摂取基準を満たす完全栄養食の提供を可能とする完全栄養食及びその提供システム、提供装置、提供プログラムを提案するものである。これにより、食事の提供を受ける利用者は完全栄養食を気軽に摂取することが可能となり、栄養管理の煩わしさから解放され、意識することなく健康増進を図ることができる。また、栄養食を提供する事業者は、利用者の属性に変動があったとしても、「基準食」の量の調整を行うだけで、すべての利用者に完全栄養食を提供することが可能となり、栄養計算の手間やコストを削減することが可能となる。
さらに、ダイエットを目的として食事の摂取量、すなわち摂取エネルギーを減らすと必要な栄養素を摂取できないという課題があるが、本発明によれば、「基準食」の摂取を通じて、必要な量の栄養素を摂取することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本実施形態における完全栄養食の提供システムの構成を説明するブロック図である。
図2】本実施形態における食品情報提供装置の栄養計算部における処理動作を示すフロー図である。
図3】「日本人の食事摂取基準」に基づく完全栄養食の提供システムで使用するたんぱく質、脂質、飽和脂肪酸、n-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸、炭水化物、食物繊維の計算表の一例である。
図4】「日本人の食事摂取基準」に基づく完全栄養食の提供システムで使用するナトリウム、カルシウム、鉄、リン、マグネシウム、カリウム、銅の計算表の一例である。
図5】「日本人の食事摂取基準」に基づく完全栄養食の提供システムで使用するヨウ素、セレン、亜鉛、クロム、マンガン、モリブデンの計算表の一例である。
図6】「日本人の食事摂取基準」に基づく完全栄養食の提供システムで使用するビタミン(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンC)の計算表の一例である。
図7】米国DRIsに基づく完全栄養食の提供システムで使用する、たんぱく質、脂質、飽和脂肪酸、n-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸、炭水化物、食物繊維計算表の一例である。
図8】米国DRIsに基づく完全栄養食の提供システムで使用する、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅の計算表の一例である。
図9】米国DRIsに基づく完全栄養食の提供システムで使用する、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン、ニッケル、バナジウム、ホウ素、フッ化物、塩化物の計算表の一例である。
図10】米国DRIsに基づく完全栄養食の提供システムで使用する、ビタミン(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンC、コリン)の計算表の一例である。
図11】中国DRIsに基づく完全栄養食の提供システムで使用する、たんぱく質、脂質、飽和脂肪酸、α-リノレン酸、リノール酸、炭水化物、添加糖の計算表の一例である。
図12】中国DRIsに基づく完全栄養食の提供システムで使用するナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅の計算表の一例である。
図13】中国DRIsに基づく完全栄養食の提供システムで使用する、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン、フッ化物、塩化物の計算表の一例である。
図14】中国DRIsに基づく完全栄養食の提供システムで使用する、ビタミン(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンC、コリン)の計算表の一例である。
図15】本発明の実施例における調整食を一定期間継続して摂取した前後の身体計測の結果を示す表である。
図16】本発明の実施例における調整食を一定期間継続して摂取した前後の血中脂質のうちの中性脂肪の分析結果を示す表である。
図17】本発明の実施例における調整食を一定期間継続して摂取した前後の血液メタボローム解析のため、CE-TOFMS(キャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計)を利用して、被験者の血液中(血漿)の代謝物のうちの8ーOHdG(8-ヒドロキシー2´―デオキシグアノシン)の分析結果を示す表である。
図18】本発明の実施例における調整食を一定期間継続して摂取した前後の血圧を測定の結果を示す表である。
図19】本発明の実施例における調整食を一定期間継続して摂取した前後の骨密度を測定した結果を示す表である。
図20】本発明の実施例における調整食を一定期間継続して摂取した前後の腸内フローラの解析結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照しながら本発明に係る完全栄養食の提供システムを実施するための実施形態について詳しく説明する。なお、本発明は、以下の実施形態および実施例に限定されるものではない。
【0034】
図1から図14により、本実施形態における完全栄養食の提供システムの構成について説明する。図1は、本実施形態における完全栄養食の提供システムの概要を説明する図である。図2は、本実施形態における食品情報提示装置の栄養計算部の処理動作の概要を説明する図である。図3図14は、本実施形態における完全栄養食の栄養計算システムで使用する栄養計算表の一例を示す表である。
本実施形態において「完全栄養食」とは、例えば「日本人の食事摂取基準」など各国において定められている食事摂取基準において規定されている、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、パントテン酸、ビタミンC等)、ミネラル(ナトリウム、カルシウム、鉄、リン、マグネシウム、カリウム、銅、ヨウ素、セレン、亜鉛、クロム、マンガン、モリブデン等)の摂取基準を満たす栄養食をいう。
本実施形態において「基準食」とは、下記(1)及び(2)の条件を満たす栄養食をいう。
(1)事業者から栄養食を提供されるすべての利用者が、その属性(例えば、性別、年齢、及び身体活動レベルの区分)に関係なく、例えば「日本人の食事摂取基準」など各国において定められている食事摂取基準においてに規定されているビタミン、ミネラルの摂取基準を満たすことを可能とする栄養食。
(2)利用者自らが属する、例えば「日本人の食事摂取基準」など各国において定められている食事摂取基準の区分(「日本人の食事摂取基準」では、年齢、性別、及び身体活動レベル(低い(I)、ふつう(II)、高い(III)))に規定されている推定エネルギー必要量(kcal/日)に対応する量を摂取することで、上記(1)に記載のビタミン、ミネラルに加えて、食事摂取基準に規定されているPFC(たんぱく質、脂質、炭水化物)の摂取基準を満たすことを可能とする栄養食。
また、本実施形態において「栄養食」とは、食材を「生」「焼く」「煮る」「蒸す」「揚げる」などの方法により調理した食事であって、必要に応じて調味料等により味付けされたものである。
なお、米国DRIsでは、ビタミンにはコリンが含まれ、ミネラルには、ニッケル、バナジウム、ホウ素、フッ化物、および塩化物が含まれる。一方、ナトリウムはミネラルに含まれず、飽和脂肪酸は脂質に含まれない。
【0035】
図1に示すように、完全栄養食の提供システム1は、各利用者の端末装置10と、食品情報提示装置20と、食品製造管理装置30と、食品配送装置40と、を含んで構成される。
端末装置10は、情報入力部11と、センサ12と、を含む。
また、食品情報提示装置20は、処理部100と、記憶部200と、を含む。
また、食品製造管理装置30は、食品製造管理部31を含む。
また、食品配送装置40は、配送指示部41を含む。
なお、端末装置10、食品情報提示装置20、食品製造管理装置30および食品配送装置40は、それぞれCPUなどのプロセッサ、および各種プログラムを記憶する記憶装置を備える。プロセッサがそれぞれプログラムを実行することにより各種機能を実行する。
【0036】
各利用者の端末装置10は、インターネット等の通信網を介して食品情報提示装置20と相互に通信可能に接続される。また、食品製造管理装置30および食品配送装置40は、通信網Nを介して食品情報提示装置20に接続される。
端末装置10は、情報入力部11と、センサ12とを含む。端末装置10から食品情報提示装置20へ送信される情報には、ユーザの個人情報(ユーザID、性別、生年月日、身長、体重、住所)、センサ12から出力される利用者の活動情報等のバイタルデータ、ダイエット食の希望、及び喫食の希望日等の情報が含まれる。なお、各利用者の端末装置10は、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ(PC)等の通信可能ないかなる情報端末であってもよい。
センサ12は、加速度センサ、ジャイロスコープ、磁力計、GPS機等、いかなるセンサであってよく、端末装置10に内蔵、または端末装置10と通信可能なウェアラブル端末等の外部端末に内蔵されてもよい。
【0037】
食品情報提示装置20の処理部100は、情報取得部110と、栄養計算部120と、メニュー選択部130と、素材選択部140と、食品情報提供部150とを含む。
食品情報提示装置20の記憶部200は、利用者情報データベース(DB)210と、食事摂取基準データベース(DB)220と、メニューデータベース(DB)230とを含む。
食品情報提示装置20の情報取得部110は、各利用者の端末装置10から出力される情報を受け付けると共に、受け付けた各情報を利用者情報データベース(DB)210へ格納する。
栄養計算部120は、利用者情報データベース(DB)210より各利用者の個人情報及びバイタルデータを取得し、バイタルデータに基づいて各利用者の身体活動レベルを決定する。「日本人の食事摂取基準」では、3種類の身体活動レベル「低い(I)」、「ふつう(II)」、「高い(III)」を設けているが、これ以外の身体活動レベルを定義してもよい。
そして、各利用者が属する性別、年齢、及び身体活動レベルの区分を特定し、食事摂取基準データベース(DB)220に格納されている食事摂取基準(例えば、日本国厚生労働省発行の「日本人の食事摂取基準」)より、該当する区分の推定エネルギー必要量(kcal/日)、たんぱく質、脂質、炭水化物の食事摂取基準、脂溶性ビタミン及び水溶性ビタミンの食事摂取基準、多量ミネラル及び微量ミネラルの食事摂取基準を取得する。
【0038】
栄養計算部120は、後述する処理動作に沿って、抽出された区分の中で最も小さい推定エネルギー必要量を特定し、これを基準食のエネルギー量とする。自らの属する区分の推定エネルギー必要量を満たすように量を調整した基準食を喫食すれば、「日本人の食事摂取基準」を満たす完全栄養食の摂取が可能となるように、基準食の各栄養素の摂取上限値及び摂取下限値を計算する。これにより、食事の提供を受ける利用者は完全栄養食を気軽に摂取することが可能となり、栄養管理の煩わしさから解放され、意識することなく健康増進を図ることができる。また、食事を提供する事業者は、基準食の量(カロリー)を調整するだけで、各利用者に完全栄養食を提供することが可能となり、栄養計算の手間やコストを削減することが可能となる。
なお、本実施形態の食品の栄養計算には厚生労働省発行の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を使用したが、必ずしも上記基準に基づく必要はなく、例えば5年毎に改定されている最新の「日本人の食事摂取基準」や、他の栄養摂取基準やガイドラインなどに基づいて計算してもよい。
【0039】
他の栄養摂取基準として、米国では“Dietary Reference Intakes (DRIs)”,Food and Nutrition Board of the Institute of Medicine, 欧州では“Dietary Reference Values for nutrients” ,European Food Safety Authority, 2017、中国では“Dietary Reference Intakes for Chinese” ,Chinese Nutrition Society,2013、韓国では“Dietary Reference Intakes for Koreans” ,Ministry of Health and Welfare and The Korean Nutrition Society,2015、インドでは”Dietary Guidelines for Indians” ,National Institute of Nutrition, India,2011、宇宙飛行士向けには“Nutritional Requirements during Spaceflight and on Earth” ,宇宙航空環境医学, Vol. 45, No. 3, 75-97, 2008等を挙げることができる。他の栄養摂取基準やガイドラインを用いる場合、日本人の食事摂取基準には基準が示されていない栄養素の量を計算する必要があるが、本実施形態における基準食の栄養計算を適用可能である。
【0040】
メニュー選択部130は、メニューデータベース(DB)230に格納されたメニュー及び調理手順を参照し、栄養計算部120より取得した基準食の各栄養素の摂取上限値及び摂取下限値を満たすメニューを選択する。なお、基準食の各栄養素の上限値及び下限値を満たさないメニューであっても、足りない栄養素を補うための食品を事前に数種類用意することで、これを選択することも可能である。素材選択部140は、選択されたメニューの栄養食を調理するのに必要な素材(肉、野菜、調味料等)を選択する。
食品情報提供部150は、栄養計算部120より各利用者の推定エネルギー必要量及び基準食の基準エネルギー量を、また素材選択部140より調理の手順及び素材に関する情報を取得し、これらの情報を食品製造管理装置30の食品製造管理部31へ送信する。
食品製造管理装置30は、食品情報提示装置20からの指示に基づいて、完全栄養食である食品の製造を図示しない食品製造部に指示する。
食品配送装置40は、食品情報提示装置20および食品製造管理装置30からの指示に基づいて、完全栄養食の配送を図示しない配送部に指示する。なお、例えば社員食堂のように、利用者へ完全栄養食の配送が不要な場合には、利用者の端末装置10に完全栄養食の完成を通知したり、社員食堂に設置された図示しないモニターに完全栄養食の完成を表示したりしてもよい。
【0041】
ここで、図2により、食品情報提示装置20の栄養計算部120の処理動作の概要を説明する。
<ユーザ情報及び食摂取基準の取得>
ST101では、利用者情報データベース(DB)210より、各利用者の個人情報及びバイタルデータを取得し、バイタルデータに基づいて各利用者の身体活動レベルを決定する。「日本人の食事摂取基準」では、3種類の身体活動レベル「低い(I)」、「ふつう(II)」、「高い(III)」を設けているが、これ以外の身体活動レベルを用いてもよい。そして、ST102では、各利用者の性別、年齢、及び身体活動レベルに基づいて、食事摂取基準データベース(DB)220に格納されている食事摂取基準より、各利用者が属する性別、年齢、及び身体活動レベルの区分を特定し、該当する区分の推定エネルギー必要量(kcal/日)、たんぱく質、脂質、炭水化物の食事摂取基準、脂溶性ビタミン及び水溶性ビタミンの食事摂取基準、多量ミネラル及び微量ミネラルの食事摂取基準を取得する。食事摂取基準には、「日本人の食事摂取基準」における「推奨量」、「目安値」、「目標量」、及び「耐容上限量」等が含まれる。なお、「目標値」は、米国DRIsにおけるCDRR(Chronic Disease Risk Reduction Intake)に相当する。
【0042】
<食事摂取基準>
日本国厚生労働省は、国民の健康の保持・増進、生活習慣病の予防のために参照するエネルギー及び栄養素の摂取量の基準として「日本人の食事摂取基準」を5年毎に策定している。
日本人の食事摂取基準(2020年版)では、エネルギーの指標と栄養素の指標を定めている。栄養素の指標は、摂取不足の回避を目的として、半数の人が必要量を満たす量である「推定平均必要量」、及びほとんどの人(97%~98%)が充足している量である「推奨量」、十分な科学的根拠が得られず、推定平均必要量と推奨量が設定できない場合は、一定の栄養状態を維持するのに十分な量として「目安値」を、過剰摂取による健康障害の回避を目的とした「耐容上限量」を、生活習慣病の発症予防を目的とした「目標量」を設定している。
【0043】
本実施形態では、性別、年齢、及び身体活動レベルの異なる利用者すべてが喫食可能な完全栄養食を提供するため、各国の食事摂取基準の各栄養素において設定されている、「推奨量」、「目安値」、「目標量」、及び「耐容上限量」に基づいて、基準食の各栄養素の摂取上限値及び摂取下限値を後述の通り計算する。これにより、各利用者の推定エネルギー必要量に応じて基準食の量を調整することで、各国の食事摂取基準を満たした完全栄養食を利用者へ提供することが可能となる。なお、すべての利用者のビタミン・ミネラルに関する食事摂取基準を満たすために、基準食におけるミネラル、ビタミンの栄養素の摂取上限値及び摂取下限値により規定される摂取基準の範囲は、「日本人の食事摂取基準」など各国の食事摂取基準において規定されているミネラル、ビタミンの上限値(耐容上限量)及び下限値(推奨量、目安値、または目標量)により規定される摂取基準の範囲よりも狭くなる。
また、上記概念は、米国DRIsおよび中国DRIs等、各国の食事摂取基準へも適用可能である。
【0044】
<基準エネルギー量の決定>
ST103では、以下に示すように基準食の基準エネルギー量を決定する。
日本国厚生労働省発行の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、18歳~64歳の男女における推定エネルギー必要量(kcal/日)は、図3に示す通り1650kcal/日~3050kcal/日とされている。本実施形態では、図3に示す年齢、性別、身体活動レベルにより規定される各区分に属する利用者に完全栄養食を提供することを前提とする。
推定エネルギー必要量が最も少ないのは、50歳~64歳の身体活動レベルがI(低い)である女性の1650kcal/日であり、最も多いのは18~29歳・30歳~49歳の身体活動レベルがIII(高い)である男性の3050kcal/日である。図3に示す年齢、性別、身体活動レベルにより規定される各区分に属する利用者に完全栄養食を提供する場合、推定エネルギー必要量が最も少ない区分における推定エネルギー必要量1650kcal/日を基準食のエネルギー量(以下、「基準エネルギー量」という)とする。基準食は、図3に示すすべての利用者のミネラル及びビタミンの栄養摂取基準を満たし、かつ各利用者の推定エネルギー必要量に応じて基準食の量を調整することで、各利用者に「日本人の食事摂取基準」を満たす完全栄養食を提供することを可能とする。
米国DRIsでは、年齢、性別、身長、体重、身体活動レベルにより推定エネルギー必要量を計算する式が設けられているが、日本の食事摂取基準のように、年齢、性別、身体活動レベルの区分の推定エネルギー必要量は規定されていない。そこで、本実施形態では、米国保健福祉省(HHS)が規定する米国人の参照体位毎の推定エネルギー必要量(EER)を米国DRIsへ適用し、これを「米国食事摂取基準」と呼ぶ。図7に示す通り、21~65歳の男女における推定エネルギー必要量(kcal/日)は1600kcal/日~3000kcal/日となり、基準食のエネルギー量は1600kcal/日となる。基準食は、図8図10に示すすべての利用者のミネラル及びビタミンの栄養摂取基準を満たし、かつ各利用者の推定エネルギー必要量に応じて基準食の量を調整することで、各利用者に米国食事摂取基準を満たす完全栄養食を提供することが可能となる。なお、図7図10において、身体活動レベルSは「Sedentary(座りがち)」、Mは「Moderately active(適度に活動的)」、Aは「Active(活動的)」を意味する。
中国栄養学会が発行する中国DRIs(中国栄養学会)では、18歳~65歳の男女における推定エネルギー必要量(kcal/日)は、図11に示す通り1750kcal/日~3000kcal/日となり、基準食のエネルギー量は1750kcal/日となる。基準食は、図12図14に示すすべての利用者のミネラル及びビタミンの栄養摂取基準を満たし、かつ各利用者の推定エネルギー必要量に応じて基準食の量を調整することで、各利用者に中国DRIsを満たす完全栄養食を提供することが可能となる。
なお、上記基準エネルギー量の設定は一例であり、日本国農水省の食事バランスガイド、米国保健福祉省の食事ガイドライン、中国栄養学会の中国人の食事についての指針等、他の食事摂取基準を用いても、同様に完全栄養を提供することが可能である。また、異なる食事摂取基準を組み合わせて利用してもよい。上記では、日本、米国、中国の食事摂取基準を例として挙げたが、他の国や地域、または世界保健機構(WHO)のような国際機関が定める食事摂取基準に基づいて基準食および完全栄養食の提供を行うことができる。また、宇宙食の食事摂取基準のように、特殊な環境向けの完全栄養食の提供も可能である。さらに、「高齢者向けの基準」、「男性または女性を対象としたダイエット向けの基準」、「男女共通の基準」といった、特定の年齢や目的等に限定した食事摂取基準を策定し、これに基づいて完全栄養食を提供することも可能である。
【0045】
<各栄養素の上限値/下限値の決定・メニュー選択・素材の選択・食品製造の指示>
ST104では、本実施形態における基準食の各栄養素の摂取上限値及び摂取下限値を計算し、ST105では、基準食の各栄養素の摂取上限値及び摂取下限値を満たすメニューを選択し、ST106では、各利用者の推定エネルギー必要量及び基準食の基準エネルギー量に基づいて、選択されたメニューの栄養食を調理するのに必要な素材(肉、野菜、調味料等)を選択する。さらに、ST107では、各利用者の推定エネルギー必要量及び基準食の基準エネルギー量、調理の手順及び素材に関する情報を、食品製造管理装置30の食品製造管理部31へ送信し、食品製造管理装置30は、食品情報提示装置20からの指示に基づいて、完全栄養食である食品の製造を食品製造部に指示する。
ここで、ST104では基準食における各栄養素の摂取上限値及び摂取下限値を下記のように決定する。
【0046】
1.たんぱく質
本実施形態の基準食におけるたんぱく質の摂取上限値及び摂取下限値は、下記の通り算出する。
「日本人の食事摂取基準」では、18歳~64歳男女のたんぱく質の食事摂取基準(目標量)は、13~20%または14%~20%エネルギー/日に設定されている。また、推奨量は男性65g/日、女性は50g/日に設定されている。さらに、必要エネルギー摂取量が低い者では、下限が推奨量を下回る場合もあり得るが、この場合でも下限は推奨量以上とすることが望ましい、とされている。
性別、年齢、身体活動レベルの区分毎に推定エネルギー必要量が異なるため、図3に示すように、たんぱく質目標量の上限値及び下限値をg/日で計算した場合、食事摂取基準の区分によって上限値及び下限値が異なる。そこで、性別、年齢、および身体活動レベルの異なる利用者が日本人の食事摂取基準を満たす完全栄養食を喫食できるように、推定エネルギー必要量が最も少ない「基準エネルギー量」の区分におけるたんぱく質の目標量上限値を、基準食におけるたんぱく質の摂取上限値とする。また、各利用者が属する区分の中で最も値が大きい推奨量を基準食におけるたんぱく質の摂取下限値とする。
図3の例では、推定エネルギー必要量が最も少ない区分(女性、50歳~64歳、身体活動レベルI(低い))におけるたんぱく質の目標量上限値が基準食におけるたんぱく質の摂取上限値となる。この場合、たんぱく質1gは体の中で4kcalのエネルギーとなるため、基準食におけるたんぱく質の摂取上限値は82.5g/日となる(=1650kcal/4kcal×20%)。一方、たんぱく質の摂取下限値は、すべての区分の中で推奨量の値が最も大きい65gとする。
上記「米国食事摂取基準」を食事摂取基準とする場合、図7に示すように推定エネルギー必要量が最も少ない区分(女性、60歳~65歳、Sedentary)におけるたんぱく質の主栄養素分布範囲の上限値が基準食におけるたんぱく質の摂取上限値となる。この場合、たんぱく質1gは体の中で4kcalのエネルギーとなるため、基準食におけるたんぱく質の摂取上限値は140g/日となる(=1600kcal/4kcal×35%)。一方、たんぱく質の摂取下限値は、すべての区分の中で推奨量の値が最も大きい56gとする。
中国DRIsでは図11に記載の通り、たんぱく質の摂取下限値のみ推奨量として設定されており、すべての区分の中で推奨量の値が最も大きい65gを摂取下限値とする。
【0047】
2.脂質
本実施形態の基準食における脂質、ならびに脂質に含まれる飽和脂肪酸、n-6系脂肪酸、及びn-3脂肪酸等の摂取上限値及び摂取下限値は、下記の通り算出する。
<脂質>
「日本人の食事摂取基準」では、18歳~64歳男女の脂質の食事摂取基準(目標量)は、20%~30%エネルギー/日に設定されている。性別、年齢、身体活動レベルの区分毎に推定エネルギー必要量が異なるため、図3に示すように脂質の目標量上限値と目標量下限値は区分によって異なる。そこで、性別、年齢、および身体活動レベルの異なる利用者が日本人の食事摂取基準を満たす完全栄養食を喫食できるように、推定エネルギー必要量が最も少ない「基準エネルギー量」の区分における脂質の目標量上限値を、基準食における脂質の摂取上限値とする。
一方、「日本人の食事摂取基準」において脂質の推奨量は設定されていないため、「基準エネルギー量」の区分に属する利用者の脂質の目標量下限値を、基準食における脂質の摂取下限値とする。図3の例では、推定エネルギー必要量が最も少ない区分(女性、50歳~64歳、身体活動レベルI(低い)の区分)の脂質の目標量上限値及び目標量下限値が、基準食における脂質の摂取上限値及び摂取下限値となる。この場合、脂質1gは体の中で9kcalのエネルギーとなるため、基準食における脂質の摂取上限値は55.0g/日(=1650kcal/9kcal×30%)、脂質の摂取下限値は36.7g/日(=1650kcal/9kcal×20%)となる。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女の脂質の食事摂取基準(許容可能な主栄養素分布範囲(Acceptable Macronutrient Distribution Ranges))は、20%~35%エネルギー/日に設定されている。性別、年齢、身体活動レベルの区分毎に推定エネルギー必要量が異なるため、図7に示すように、脂質の主栄養素分布範囲上限値と主栄養素分布範囲下限値は区分によって異なる。そこで、性別、年齢、および身体活動レベルの異なる利用者が「米国食事摂取基準」を満たす完全栄養食を喫食できるように、推定エネルギー必要量が最も少ない「基準エネルギー量」の区分における脂質の主栄養素分布範囲上限値を、基準食における脂質の摂取上限値とする。
また、米国DRIsでは脂質の推奨量は設定されていないため、「基準エネルギー量」の区分に属する利用者の脂質の主栄養素分布範囲の下限値を、基準食における脂質の摂取下限値とする。図7の例では、推定エネルギー必要量が最も少ない区分(女性、61歳~65歳、身体活動レベルS(Sedentary)の区分)の脂質の主栄養素分布範囲上限値及び主栄養素分布範囲下限値が、基準食における脂質の摂取上限値及び摂取下限値となる。この場合、脂質1gは体の中で9kcalのエネルギーとなるため、基準食における脂質の摂取上限値は62.2g/日(=1600kcal/9kcal×35%)、脂質の摂取下限値は35.6/日(=1600kcal/9kcal×20%)となる。
中国DRIsでは、18歳~64歳男女の脂質の食事摂取基準(主栄養素分布範囲)は、20%~30%エネルギー/日に設定されている。性別、年齢、身体活動レベルの区分毎に推定エネルギー必要量が異なるため、図11に示すように脂質の主栄養素分布範囲上限値と主栄養素分布範囲下限値は区分によって異なる。そこで、性別、年齢、および身体活動レベルの異なる利用者が中国DRIsを満たす完全栄養食を喫食できるように、推定エネルギー必要量が最も少ない「基準エネルギー量」の区分における脂質の主栄養素分布範囲上限値を、基準食における脂質の摂取上限値とする。一方、中国DRIsにおいて脂質の推奨量は設定されていないため、「基準エネルギー量」の区分に属する利用者の脂質の主栄養素分布範囲下限値を、基準食における脂質の摂取下限値とする。図11の例では、推定エネルギー必要量が最も少ない区分(女性、50歳~64歳、身体活動レベルI(低い)の区分)の脂質の主栄養素分布範囲上限値及び主栄養素分布範囲下限値が、基準食における脂質の摂取上限値及び摂取下限値となる。この場合、脂質1gは体の中で9kcalのエネルギーとなるため、基準食における脂質の摂取上限値は58.3g/日(=1750kcal/9kcal×35%)、脂質の摂取下限値は38.9/日(=1750kcal/9kcal×20%)となる。
【0048】
<飽和脂肪酸>
「日本人の食事摂取基準」では、18歳以上の男女の飽和脂肪酸の食事摂取基準(目標量)は、7%エネルギー/日に設定されている。性別、年齢、身体活動レベルの区分毎に推定エネルギー必要量が異なるため、図3に示すように、飽和脂肪酸の上限値をg/日で計算した場合、区分によって上限値異なる。
そこで、性別、年齢、および身体活動レベルの異なる利用者が日本人の食事摂取基準を満たす完全栄養食を喫食できるように、推定エネルギー必要量が最も少ない「基準エネルギー量」の区分における飽和脂肪酸の目標量上限値を、基準食における飽和脂肪酸の摂取上限値とする。図3の例では、推定エネルギー必要量が最も少ない区分(女性、50歳~64歳、身体活動レベルI(低い)の区分)における飽和脂肪酸の目標量上限値が、基準食における飽和脂肪酸の摂取上限値となる。この場合、飽和脂肪酸1gは体の中で9kcalのエネルギーとなるため、基準食における飽和脂肪酸の摂取上限値は12.8g/日となる(=1650/9×0.07)。
米国DRIsでは飽和脂肪酸量について基準値が定められておらず、米国DRIsに基づく基準食においては摂取上限値を設定しない。
中国DRIsでは、飽和脂肪酸について18~64歳の男女では摂取エネルギーの10%未満の主栄養素分布範囲が設定されており、図11の例では推定エネルギー必要量が最も少ない区分(女性、50歳~64歳、身体活動レベルI(低い)の区分)における飽和脂肪酸の主栄養素分布範囲上限値が、基準食における飽和脂肪酸の摂取上限値となる。この場合、飽和脂肪酸1gは体の中で9kcalのエネルギーとなるため、基準食における飽和脂肪酸の摂取上限値は19.4g/日となる(=1750/9×0.1)。
【0049】
<n-3系脂肪酸及びn-6系脂肪酸>
「日本人の食事摂取基準」では、n-3系脂肪酸及びn-6系脂肪酸の食事摂取基準は目安量として定められており、n-3系脂肪酸は18~29歳で男性が2.0g/日、女性が1.6g/日、30~49歳で男性2.0g/日、女性1.6g/日、50~64歳で男性2.2g/日、女性1.9g/日、n-6系脂肪酸は18~29歳で男性11g/日、女性8g/日、30~49歳では男性10g/日、女性8g/日、50~64歳で男性が10g/日、女性8g/日に設定されている。
本実施形態では、すべての利用者が基準食を摂取すればn-3系脂肪酸及びn-6脂肪酸の目安量を摂取できるように、各区分におけるn-3脂肪酸及びn-6系脂肪酸の目安量の最大値(n-3脂肪酸は2.2g/日、n-6系脂肪酸は11g/日)を本実施形態の基準食の摂取下限値としている。
米国DRIsでは、n-6系脂肪酸を代表するリノール酸量として目安量が、n-3系脂肪酸を代表するα-リノレン酸量として目安量が設定されている。米国DRIsを食事摂取基準とする場合、図7に示すように、すべての利用者が基準食を摂取すればn-6系脂肪酸及びn-3系脂肪酸の目安量を摂取できるように、各区分におけるリノール酸及びα-リノレン酸の目安量の最大値(リノール酸は17g/日、α-リノレン酸は1.6g/日)を基準食の摂取下限値とする。
中国DRIsでは、n-6系脂肪酸を代表するリノール酸量として、摂取エネルギーに対する比率が推奨量として設定されている。またn-3系脂肪酸を代表するα-リノレン酸量として、摂取エネルギーに対する比率が推奨量として設定されている。中国DRIsを食事摂取基準とする場合、すべての利用者が基準食を摂取すればn-6系脂肪酸の推奨量及びn-3脂肪酸の推奨量を摂取できるように、各区分におけるリノール酸及びα-リノレン酸の推奨量の最大値(リノール酸は13.3g/日、α-リノレン酸は2.0g/日)を基準食の摂取下限値とする。
【0050】
3.炭水化物
本実施形態の基準食における炭水化物、及び炭水化物に含まれる食物繊維の摂取上限値及び摂取下限値は、下記の通り算出する。
<炭水化物>
「日本人の食事摂取基準」では、18歳~64歳男女の炭水化物の食事摂取基準(目標量)は、50%~65%エネルギー/日に設定されている。性別、年齢、身体活動レベルの区分毎に推定エネルギー必要量が異なるため、図3に示すように炭水化物の目標量上限値と目標量下限値は区分によって異なる。
そこで、性別、年齢、および身体活動レベルの異なる利用者が日本人の食事摂取基準を満たす完全栄養食を喫食できるように、推定エネルギー必要量が最も少ない「基準エネルギー量」の区分における炭水化物の目標量上限値を、基準食における炭水化物の摂取上限値とする。
一方、炭水化物では「推奨量」が設定されていないため、「基準エネルギー量」の区分に属する利用者の炭水化物の目標量下限値を、基準食における炭水化物の摂取下限値とする。図3の例では、推定エネルギー必要量が最も少ない区分(女性、50歳~64歳、身体活動レベルI(低い)の区分)に属する利用者の炭水化物の目標量上限値及び目標量下限値が、基準食における炭水化物の摂取上限値及び摂取下限値となる。この場合、炭水化物1gは体の中で4kcalのエネルギーとなるため、炭水化物の摂取上限値は268.1g/日(=1650/4×0.65)、炭水化物の摂取下限値は206.3g/日(=1650/4×0.5)となる。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女の炭水化物の推奨量は130g/日に設定されており、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、図7に示すように推奨量130g/日を摂取下限値とする。一方、米国DRIsでは主栄養素分布範囲の上限は65%エネルギー/日に設定されている。性別、年齢、身体活動レベルの区分毎に推定エネルギー必要量が異なるため、図7に示すように炭水化物の主栄養素分布範囲上限値は区分によって異なる。そこで、性別、年齢、および身体活動レベルの異なる利用者が「米国食事摂取基準」を満たす完全栄養食を摂取できるように、推定エネルギー必要量が最も少ない「基準エネルギー量」の区分における炭水化物の主栄養素分布範囲上限値を、基準食における炭水化物の摂取上限値とする。図7の例では、推定エネルギー必要量が最も少ない区分(女性、61歳~65歳、身体活動レベルS(Sedentary)の区分)に属する利用者の炭水化物の主栄養素分布範囲上限値が、基準食における炭水化物の摂取上限値となる。この場合、炭水化物1gは体の中で4kcalのエネルギーとなるため、炭水化物の摂取上限値は260g/日(=1600/4×0.65)となる。
中国DRIsでは、18歳~64歳男女の炭水化物の主栄養素分布範囲は、50%~65%エネルギー/日に設定されている。性別、年齢、身体活動レベルの区分毎に推定エネルギー必要量が異なるため、図11に示すように炭水化物の主栄養素分布範囲上限値と主栄養素分布範囲下限値は区分によって異なる。そこで、性別、年齢、および身体活動レベルの異なる利用者が中国DRIsを満たす完全栄養食を喫食できるように、推定エネルギー必要量が最も少ない「基準エネルギー量」の区分における炭水化物の主栄養素分布範囲上限値を、基準食における炭水化物の摂取上限値とする。一方、中国DRIsにおいて炭水化物の推奨量は設定されていないため、「基準エネルギー量」の区分に属する利用者の炭水化物の主栄養素分布範囲下限値を、基準食における炭水化物の摂取下限値とする。図11の例では、推定エネルギー必要量が最も少ない区分(女性、50歳~64歳、身体活動レベルI(低い)の区分)の炭水化物の主栄養素分布範囲上限値及び主栄養素分布範囲下限値が、基準食における炭水化物の摂取上限値及び摂取下限値となる。この場合、炭水化物1gは体の中で4kcalのエネルギーとなるため、基準食における炭水化物の摂取上限値は284.4g/日(=1750kcal/4kcal×65%)、炭水化物の摂取下限値は218.8/日(=1750kcal/4kcal×50%)となる。
<食物繊維>
「日本人の食事摂取基準」では、食物繊維の食事摂取基準は目標量として定められており、18歳~64歳の男性は21g/日以上、女性は18g/日以上が目標量に設定されている。本実施形態では、すべての利用者が量を調整した基準食を摂取すれば食物繊維の目標量を摂取できるように、各区分における食物繊維の目標量の最大値(21g/日)を本実施形態の基準食の摂取下限値としている。
米国DRIsでは、食物繊維の食事摂取基準が目安量として定められている。そのため、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、21歳~65歳の男女、すべての利用者が量を調整した基準食を摂取すれば食物繊維の目安量を摂取できるように、各区分における食物繊維の目安量の最大値(38g/日)を基準食の摂取下限値とする。
中国DRIsでは食物繊維について基準値が定められておらず、当該発明においても中国向け基準を設定しない。
<添加糖>
中国DRIsでは添加糖について、18~64歳の男女では摂取エネルギーの10%未満の主栄養素分布範囲が設定されている。そのため、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、図11の例では推定エネルギー必要量が最も少ない区分(女性、50歳~64歳、身体活動レベルI(低い)の区分)における添加糖の主栄養素分布範囲上限値を基準食における添加糖の摂取上限値とする。この場合、添加糖1gは体の中で9kcalのエネルギーとなるため、基準食における添加糖の摂取上限値は43.8g/日となる(=1750/4×0.1)。
【0051】
4.ナトリウム(食塩相当量)
本実施形態の基準食におけるナトリウム(食塩相当量)の摂取上限値及び摂取下限値は、下記の通り算出する。
「日本人の食事摂取基準」では、18歳~64歳男女のナトリウム(食塩相当量)の食事摂取基準(目標量)は、食塩相当量として男性は7.5g未満/日、女性は6.5g未満/日に設定されている。
ここで、本実施形態の基準食は、各利用者の属性に応じてその量が調整される。そのため、量の調整が行われた基準食に含まれる食塩相当量は、推定エネルギー必要量の多い区分の食事摂取基準を下回る必要がある。そこで、各区分において下記の式により正規化食塩相当量を算出し、その中で最も少ない正規化食塩相当量を基準食にける食塩相当量の摂取上限値とする。
正規化食塩相当量=食塩相当量の目標量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
図4の例では、男性、18歳~29歳、身体活動レベルIII(高い)の区分における推定エネルギー必要量が他の区分と比べて多いため、基準食に入れることができる食塩相当量は4.06g/日(7.5g×1650kcal/3050kcal)と最も少ない。そこで、基準食におけるナトリウムは、食塩相当量で摂取上限値4.06g/日未満とする。
なお、基準食におけるナトリウムについては、食事の味にも影響するものであるため、この量について柔軟に考えることも可能である。例えば、日本栄養改善学会 日本給食経営管理学会 日本高血圧学会等のコンソーシアムにより審査・認証されるスマートミール基準においては、ナトリウム(食塩相当量)は「ちゃんと」3.0g未満、「しっかり」3.5g未満とされており、本基準に従ってもよい。すなわち、一日における朝食、昼食、夕食において450~650kcalの場合は、食塩相当量を3.0g未満、650~850kcalの場合は食塩相当量を3.5g未満と定め、当該食塩相当量を当該上限値未満となるように調整する方法が可能である。また、他の独自の基準を設定してもよい。例えば、450kcal未満の場合は、食塩相当量を2.5g未満としてもよい。また、850kcal以上の場合は4.0g未満としてもよい。
また、別の独自基準として、一日における朝食、昼食、夕食において、食塩の摂取を朝食1.7g以下、昼食3.0g未満、夕食3.5g未満と定め当該食塩相当量を上限値になるように調整する方法も可能である。このようにナトリウム(食塩相当量)の摂取上限を設けることも可能である。
また、上述した設定方法以外の他の基準に従っても良いし、美味しく食べられて無理な
く減塩できる基準を設定しても良い。
上記のような範囲で、本実施形態における「基準食」におけるナトリウム(食塩相当量)の摂取上限値及び摂取下限値としてもよい。
【0052】
米国DRIsでは、21歳~65歳男女のナトリウムの目安量は1500mg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、目安量1500mg/日を基準食の摂取下限値とする。
中国DRIsでは、18歳~64歳男女のナトリウムの推奨量は1400mg/日または1500mg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、推奨量1500mg/日を基準食の摂取下限値とする。
【0053】
5.カルシウム
本実施形態の基準食におけるカルシウムの摂取上限値及び摂取下限値は、下記の通り算出する。
「日本人の食事摂取基準」では、カルシウムの食事摂取基準として18歳~64歳では推奨量、及び耐容上限量が設けられている。ここで、本実施形態の基準食は、各利用者の属性に応じてその量が調整される。そのため、量の調整が行われた基準食に含まれるカルシウムは、推定エネルギー必要量の多い区分の食事摂取基準を下回る必要がある。そこで、各区分において下記の式により正規化カルシウム量を算出し、その中で最も少ない正規化カルシウム量を基準食におけるカルシウムの摂取上限値とする。
正規化カルシウム量=カルシウムの耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
また、基準食のカルシウムの摂取下限値は、すべての利用者がカルシウムを推奨量以上摂取できるように、各区分におけるカルシウム推奨量の最大値(800mg/日)を基準食の摂取下限値としている。図4の例では、男性、18歳~29歳、身体活動レベルIII(高い)の区分における推定エネルギー必要量が他の区分と比べて多いため、基準食に入れることができるカルシウムは1352.5mg/日(=2500mg×1650kcal/3050kcal)と最も少ない。そこで、この値を基準食におけるカルシウムの摂取上限値とする。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女のカルシウムの推奨量は1000~1200mg/日に設定されている。しかしながら、最大値の1200mg/日を基準食の摂取下限値とすると、図8に示すように、上記正規化カルシウム量の式により算出した男性、51歳~65歳、身体活動レベルA(Active)の区分に属する利用者のカルシウム上限値が1143mgと摂取下限値より低くなるため、カルシウムの摂取量について摂取上限値および摂取下限値を設定しないこととした。なお、年齢や性別を限定することで、摂取下限値および摂取上限値を設けることは可能である。
中国DRIsでは、18歳~64歳男女のカルシウムの推奨量は800~1000mg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、推奨量最大値の1000mg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記式により正規化カルシウム量を算出し、その中で最も少ない正規化カルシウム量を基準食におけるカルシウムの摂取上限値とする。図12の例では、男性、18歳~49歳、身体活動レベルIII(高い)の区分のカルシウムの上限値1167mg/日が、基準食におけるカルシウムの摂取上限値となる。
【0054】
6.鉄
本実施形態の基準食における鉄の摂取上限値及び摂取下限値は、下記の通り算出する。
「日本人の食事摂取基準」では、鉄の食事摂取基準として18歳~64歳では推奨量、及び耐容上限量が設けられている。ここで、本実施形態の基準食は、各利用者の属性に応じてその量が調整される。そのため、量の調整が行われた基準食に含まれる鉄は、推定エネルギー必要量の多い区分の食事摂取基準を下回る必要がある。そこで、各区分において下記の式により正規化鉄量を算出し、その中で最も少ない正規化鉄量を基準食における鉄の摂取上限値とする。
正規化鉄量=鉄の耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
また、基準食の鉄の摂取下限値は、すべての利用者が鉄を推奨量以上摂取できるように、各区分における鉄推奨量の最大値(10.5mg/日)を基準食の摂取下限値としている。図4の例では、男性、18歳~29歳、身体活動レベルIII(高い)の区分における推定エネルギー必要量が他の区分と比べて多いため、基準食に入れることができる鉄は27.0mg/日(=50mg×1650kcal/3050kcal)と最も少ない。そこで、この値を基準食における鉄の摂取上限値とする。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女の鉄の推奨量は8~18mg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、推奨量の最大値の18mg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化鉄量を算出し、その中で最も少ない正規化鉄量を基準食における鉄の摂取上限値とする。図8の例では、男性、26歳~35歳、身体活動レベルA(Active)の区分の鉄の上限値24mg/日が、基準食における鉄の摂取上限値となる
中国DRIsでは、18歳~64歳男女の鉄の推奨量は12~20mg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、推奨量の最大値の20mg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化鉄量を算出し、その中で最も少ない正規化鉄量を基準食における鉄の摂取上限値とする。図12の例では、男性、18歳~49歳、身体活動レベルIII(高い)の区分の鉄の上限値24.5mg/日が、基準食における鉄の摂取上限値となる。
【0055】
7.リン
本実施形態の基準食におけるリンの摂取上限値及び摂取下限値は、下記の通り算出する。
「日本人の食事摂取基準」では、リンの食事摂取基準として18歳~64歳では目安量、耐容上限量が設けられている。ここで、本実施形態の基準食は、各利用者の属性に応じてその量が調整される。そのため、量の調整が行われた基準食に含まれるリンは、推定エネルギー必要量の多い区分の食事摂取基準を下回る必要がある。そこで、各区分において下記の式により正規化リン量を算出し、その中で最も少ない正規化リン量を基準食におけるリンの摂取上限値とする。
正規化リン量=リンの耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
また、基準食のリンの摂取下限値は、すべての利用者がリンを目安量以上摂取できるように、各区分におけるリン目安量の最大値(1000mg/日)を基準食の摂取下限値としている。図4の例では、男性、18歳~29歳、身体活動レベルIII(高い)の区分における推定エネルギー必要量が他の区分と比べて多いため、基準食に入れることができるリンは1623.0mg/日(=3000mg×1650kcal/3050kcal)と最も少ない。そこで、この値を基準食におけるリンの摂取上限値とする。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女のリンの推奨量は700mg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、推奨量700mg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化リン量を算出し、その中で最も少ない正規化リン量を基準食におけるリンの摂取上限値とする。図8の例では、男性、21歳~35歳、身体活動レベルA(Active)の区分のリンの上限値1600mg/日が、基準食におけるリンの摂取上限値となる
中国DRIsでは、18歳~64歳男女のリンの推奨量は720mg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、720mg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化リン量を算出し、その中で最も少ない正規化リン量を基準食におけるリンの摂取上限値とする。図12の例では、男性、18歳~49歳、身体活動レベルIII(高い)の区分のリンの上限値2042mg/日が、基準食におけるリンの摂取上限値となる。
【0056】
8.マグネシウム
本実施形態の基準食におけるマグネシウムの摂取上限値及び摂取下限値は、下記の通り算出する。
「日本人の食事摂取基準」では、マグネシウムの食事摂取基準として18歳~64歳では推奨量、及び通常の食品以外からの摂取量について耐容上限量が設けられている。ここで、本実施形態の基準食は、各利用者の属性に応じてその量が調整される。そのため、量の調整が行われた基準食に添加されるマグネシウムは、推定エネルギー必要量の多い区分の食事摂取基準を下回る必要がある。そこで、各区分において下記の式により正規化マグネシウム量を算出し、その中で最も少ない正規化マグネシウム量を基準食におけるマグネシウムの摂取上限値とする。
正規化マグネシウム量=マグネシウムの耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
また、基準食のマグネシウムの摂取下限値は、すべての利用者がマグネシウムを推奨量以上摂取できるように、各区分におけるマグネシウム推奨量の最大値(370mg/日)を基準食の摂取下限値としている。図4の例では、男性、18歳~29歳、身体活動レベルIII(高い)の区分における推定エネルギー必要量が他の区分と比べて多いため、基準食に入れることができるマグネシウムは189.3mg/日(350mg×1650kcal/3050kcal)と最も少ない。そこで、基準食に添加されるマグネシウムの摂取上限値を189.3mg/日未満とする。なお、「日本人の食事摂取基準」では、上記の通り耐容上限量は通常の食品以外からの摂取量についてのみ設定される。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女のマグネシウムの推奨量は320~420mg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、推奨量420mg/日を基準食の摂取下限値とする。
中国DRIsでは、18歳~64歳男女のマグネシウムの推奨量は330mg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、推奨量330mg/日を基準食の摂取下限値とする。
【0057】
9.カリウム
本実施形態の基準食におけるカリウムの摂取上限値及び摂取下限値は、下記の通り算出する。
「日本人の食事摂取基準」では、カリウムの食事摂取基準として18歳~64歳では目安量が設けられている。
本実施形態では、すべての利用者がカリウムを目安量以上摂取できるように、各区分におけるカリウムの目安量の最大値(2500mg/日)を基準食の摂取下限値としている。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女のカリウムの目安量は2600~3400mg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、目安量3400mg/日を基準食の摂取下限値とする。
中国DRIsでは、18歳~64歳男女のカリウムの推奨量は2000mg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、2000mg/日を基準食の摂取下限値とする。
【0058】
10.銅
本実施形態の基準食における銅の摂取上限値及び摂取下限値は、下記の通り算出する。
「日本人の食事摂取基準」では、銅の食事摂取基準として18歳~64歳では推奨量、及び耐容上限量が設けられている。
ここで、本実施形態の基準食は、各利用者の属性に応じてその量が調整される。そのため、量の調整が行われた基準食に含まれる銅は、推定エネルギー必要量の多い区分の食事摂取基準を下回る必要がある。そこで、各区分において下記の式により正規化銅量を算出し、その中で最も少ない正規化銅量を基準食における銅の摂取上限値とする。
正規化銅量=銅の耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
また、基準食の銅の摂取下限値は、すべての利用者が銅を推奨量以上摂取できるように、各区分における銅推奨量の最大値(0.9mg/日)を基準食の摂取下限値としている。図4の例では、男性、18歳~29歳、身体活動レベルIII(高い)の区分における推定エネルギー必要量が他の区分と比べて多いため、基準食に入れることができる銅は3.79mg/日(7mg×1650kcal/3050kcal)と最も少ない。そこで、この値を基準食における銅の摂取上限値とする。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女の銅の推奨量は0.9mg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、推奨量0.9mg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化銅量を算出し、その中で最も少ない正規化銅量を基準食における銅の摂取上限値とする。図8の例では、男性、21歳~35歳、身体活動レベルA(Active)の区分の銅の上限値5.3mg/日が、基準食における銅の摂取上限値となる
中国DRIsでは、18歳~64歳男女の銅の推奨量は0.8mg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、推奨量0.8mg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化銅量を算出し、その中で最も少ない正規化銅量を基準食における銅の摂取上限値とする。図12の例では、男性、18歳~49歳、身体活動レベルIII(高い)の区分の銅の上限値4.7mg/日が、基準食における銅の摂取上限値となる。
【0059】
11.ヨウ素
本実施形態の基準食におけるヨウ素の摂取上限値及び摂取下限値は、下記の通り算出する。
「日本人の食事摂取基準」では、ヨウ素の食事摂取基準として18歳~64歳では推奨量、及び耐容上限量が設けられている。
ここで、本実施形態の基準食は、各利用者の属性に応じてその量が調整される。そのため、量の調整が行われた基準食に含まれるヨウ素は、推定エネルギー必要量の多い区分の食事摂取基準を下回る必要がある。そこで、各区分において下記の式により正規化ヨウ素量を算出し、その中で最も少ない正規化ヨウ素量を基準食におけるヨウ素の摂取上限値とする。
正規化ヨウ素量=ヨウ素の耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
また、基準食のヨウ素の摂取下限値は、すべての利用者がヨウ素を推奨量以上摂取できるように、各区分におけるヨウ素推奨量の最大値(130μg/日)を基準食の摂取下限値としている。図5の例では、男性、18歳~29歳、身体活動レベルIII(高い)の区分における推定エネルギー必要量が他の区分と比べて多いため、基準食に入れることができるヨウ素は1623μg/日(3000μg×1650kcal/3050kcal)と最も少ない。そこで、この値を基準食における銅の摂取上限値とする。
なお、「日本人の食事摂取基準」における耐容上限量は習慣的摂取に対して定められたものであり、間欠的に耐容上限量を超えることは容認されており、本実施形態においても同様である。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女のヨウ素の推奨量は150μg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、推奨量150μg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化ヨウ素量を算出し、その中で最も少ない正規化ヨウ素量を基準食におけるヨウ素の摂取上限値とする。図9の例では、男性、21歳~35歳、身体活動レベルA(Active)の区分のヨウ素の上限値586.7μg/日が、基準食におけるヨウ素の摂取上限値となる
中国DRIsでは、18歳~64歳男女のヨウ素の推奨量は120μg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、推奨量120μg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化ヨウ素量を算出し、その中で最も少ない正規化ヨウ素量を基準食におけるヨウ素の摂取上限値とする。図13の例では、男性、18歳~49歳、身体活動レベルIII(高い)の区分のヨウ素の上限値350μg/日が、基準食におけるヨウ素の摂取上限値となる。
【0060】
12.セレン
本実施形態の基準食におけるセレンの摂取上限値及び摂取下限値は、下記の通り算出する。
「日本人の食事摂取基準」では、セレンの食事摂取基準として18歳~64歳では推奨量、及び耐容上限量が設けられている。ここで、本実施形態の基準食は、各利用者の属性に応じてその量が調整される。そのため、量の調整が行われた基準食に含まれるセレンは、推定エネルギー必要量の多い区分の食事摂取基準を下回る必要がある。そこで、各区分において下記の式により正規化セレン量を算出し、その中で最も少ない正規化セレン量を基準食におけるセレンの摂取上限値とする。
正規化セレン量=セレンの耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
また、基準食のセレンの摂取下限値は、すべての利用者がセレンを推奨量以上摂取できるように、各区分におけるセレン推奨量の最大値(30μg/日)を基準食の摂取下限値としている。図5の例では、男性、18歳~29歳、身体活動レベルIII(高い)の区分における推定エネルギー必要量が他の区分と比べて多いため、基準食に入れることができるセレンは243.4μg/日(450μg×1650kcal/3050kcal)と最も少ない。そこで、この値を基準食におけるセレンの摂取上限値とする。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女のセレンの推奨量は55μg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、推奨量55μg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化セレン量を算出し、その中で最も少ない正規化セレン量を基準食におけるセレンの摂取上限値とする。図9の例では、男性、21歳~35歳、身体活動レベルA(Active)の区分のセレンの上限値213μg/日が、基準食におけるセレンの摂取上限値となる。
中国DRIsでは、18歳~64歳男女のセレンの推奨量は60μg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、推奨量60μg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化セレン量を算出し、その中で最も少ない正規化セレン量を基準食におけるセレンの摂取上限値とする。図13の例では、男性、18歳~49歳、身体活動レベルIII(高い)の区分のセレンの上限値233.3μg/日が、基準食におけるセレンの摂取上限値となる。
【0061】
13.亜鉛
本実施形態の基準食における亜鉛の摂取上限値及び摂取下限値は、下記の通り算出する。
「日本人の食事摂取基準」では、亜鉛の食事摂取基準として18歳~64歳では推奨量、及び耐容上限量が設けられている。
ここで、本実施形態の基準食は、各利用者の属性に応じてその量が調整される。そのため、量の調整が行われた基準食に含まれる亜鉛は、推定エネルギー必要量の多い区分の食事摂取基準を下回る必要がある。そこで、各区分において下記の式により正規化亜鉛量を算出し、その中で最も少ない正規化亜鉛量を基準食における亜鉛の摂取上限値とする。
正規化亜鉛量=亜鉛の耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
また、基準食の亜鉛の摂取下限値は、すべての利用者が亜鉛を推奨量以上摂取できるように、各区分における亜鉛推奨量の最大値(11mg/日)を基準食の摂取下限値としている。図5の例では、男性、18歳~29歳、身体活動レベルIII(高い)の区分における推定エネルギー必要量が他の区分と比べて多いため、基準食に入れることができる亜鉛は21.6mg/日(40mg×1650kcal/3050kcal)と最も少ない。そこで、この値を基準食における亜鉛の摂取上限値とする。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女の亜鉛の推奨量は8~11mg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、推奨量の最大値11mg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化亜鉛量を算出し、その中で最も少ない正規化亜鉛量を基準食における亜鉛の摂取上限値とする。図8の例では、男性、21歳~25歳、身体活動レベルA(Active)の区分の亜鉛の上限値21.3mg/日が、基準食における亜鉛の摂取上限値となる
中国DRIsでは、18歳~64歳男女の亜鉛の推奨量は7.5~12.5mg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、推奨量12.5mg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化亜鉛量を算出し、その中で最も少ない正規化亜鉛量を基準食における亜鉛の摂取上限値とする。図12の例では、男性、18歳~49歳、身体活動レベルIII(高い)の区分の亜鉛の上限値23.3mg/日が、基準食における亜鉛の摂取上限値となる。
【0062】
14.クロム
本実施形態の基準食におけるクロムの摂取上限値及び摂取下限値は、下記の通り算出する。
「日本人の食事摂取基準」では、クロムの食事摂取基準として18歳~64歳では目安量、耐容上限量が設けられている。
ここで、本実施形態の基準食は、各利用者の属性に応じてその量が調整される。そのため、量の調整が行われた基準食に含まれるクロムは、推定エネルギー必要量の多い区分の食事摂取基準を下回る必要がある。そこで、各区分において下記の式により正規化クロム量を算出し、その中で最も少ない正規化クロム量を基準食におけるクロムの摂取上限値とする。
正規化クロム量=クロムの耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
また、基準食のクロムの摂取下限値は、すべての利用者がクロムを目安量以上摂取できるように、各区分におけるクロム目安量の最大値(10μg/日)を基準食の摂取下限値としている。図5の例では、男性、18歳~29歳、身体活動レベルIII(高い)の区分における推定エネルギー必要量が他の区分と比べて多いため、基準食に入れることができるクロムは270.5μg/日(500μg×1650kcal/3050kcal)と最も少ない。そこで、この値を基準食におけるクロムの摂取上限値とする。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女のクロムの目安量は25~35μg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、目安量の35μg/日を基準食の摂取下限値とする。
中国DRIsでは、18歳~64歳男女のクロムの推奨量は30μg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、30μg/日を基準食の摂取下限値とする。
【0063】
15.マンガン
本実施形態の基準食におけるマンガンの摂取上限値及び摂取下限値は、下記の通り算出する。
「日本人の食事摂取基準」では、マンガンの食事摂取基準として18歳~64歳では目安量、耐容上限量が設けられている。
ここで、本実施形態の基準食は、各利用者の属性に応じてその量が調整される。そのため、量の調整が行われた基準食に含まれるマンガンは、推定エネルギー必要量の多い区分の食事摂取基準を下回る必要がある。そこで、各区分において下記の式により正規化マンガン量を算出し、その中で最も少ない正規化マンガン量を基準食におけるマンガンの摂取上限値とする。
正規化マンガン量=マンガンの耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
また、基準食のマンガンの摂取下限値は、すべての利用者がマンガンを目安量以上摂取できるように、各区分におけるマンガン目安量の最大値(4mg/日)を基準食の摂取下限値としている。図5の例では、男性、18歳~29歳、身体活動レベルIII(高い)の区分における推定エネルギー必要量が他の区分と比べて多いため、基準食に入れることができるマンガンは6.0mg/日(11mg×1650kcal/3050kcal)と最も少ない。そこで、この値を基準食におけるマンガンの摂取上限値とする。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女のマンガンの目安量は1.8~2.3mg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、最大値の2.3mg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化マンガン量を算出し、その中で最も少ない正規化マンガン量を基準食におけるマンガンの摂取上限値とする。図9の例では、男性、21歳~35歳、身体活動レベルA(Active)の区分のマンガンの上限値5.9mg/日が、基準食におけるマンガンの摂取上限値となる
中国DRIsでは、18歳~64歳男女のマンガンの推奨量は4.5mg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、4.5mg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化マンガン量を算出し、その中で最も少ない正規化マンガン量を基準食におけるマンガンの摂取上限値とする。図13の例では、男性、18歳~49歳、身体活動レベルIII(高い)の区分のマンガンの上限値6.4mg/日が、基準食におけるマンガンの摂取上限値となる。
【0064】
16.モリブデン
本実施形態の基準食におけるモリブデンの摂取上限値及び摂取下限値は、下記の通り算出する。
「日本人の食事摂取基準」では、モリブデンの食事摂取基準として18歳~64歳では推奨量、及び耐容上限量が設けられている。ここで、本実施形態の基準食は、各利用者の属性に応じてその量が調整される。そのため、量の調整が行われた基準食に含まれるモリブデンは、推定エネルギー必要量の多い区分の食事摂取基準を下回る必要がある。そこで、各区分において下記の式により正規化モリブデン量を算出し、その中で最も少ない正規化モリブデン量を基準食におけるモリブデンの摂取上限値とする。
正規化モリブデン量=モリブデンの耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
また、基準食のモリブデンの摂取下限値は、すべての利用者がモリブデンを推奨量以上摂取できるように、各区分におけるモリブデン推奨量の最大値(30μg/日)を基準食の摂取下限値としている。図5の例では、男性、18歳~29歳、身体活動レベルIII(高い)の区分における推定エネルギー必要量が他の区分と比べて多いため、基準食に入れることができるモリブデンは324.6μg/日(600μg×1650kcal/3050kcal)と最も少ない。そこで、この値を基準食におけるモリブデンの摂取上限値とする。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女のモリブデンの推奨量は45μg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、45μg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化モリブデン量を算出し、その中で最も少ない正規化モリブデン量を基準食におけるモリブデンの摂取上限値とする。図9の例では、男性、21歳~35歳、身体活動レベルA(Active)の区分のモリブデンの上限値1067μg/日が、基準食におけるモリブデンの摂取上限値となる
中国DRIsでは、18歳~64歳男女のモリブデンの推奨量は100μg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、100μg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化モリブデン量を算出し、その中で最も少ない正規化モリブデン量を基準食におけるモリブデンの摂取上限値とする。図13の例では、男性、18歳~49歳、身体活動レベルIII(高い)の区分のモリブデンの上限値525μg/日が、基準食におけるモリブデンの摂取上限値となる。
【0065】
17.塩化物
米国DRIsでは、21歳~65歳男女の塩化物の目安量は2.3g/日に設定されている。しかしながら、目安量2.3g/日を基準食の摂取下限値とすると、図9に示すように、正規化塩化物量の式(正規化塩化物量=塩化物の耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量))により算出した男性、21歳~35歳、身体活動レベルA(Active)の区分に属する利用者の塩化物上限値が1.9gと下限値より低くなる。そのため、塩化物の摂取量について摂取上限値および摂取下限値を設定しないこととした。なお、年齢や性別を限定することで、摂取下限値および摂取上限値を設けることは可能である。
中国DRIsでは、18歳~64歳男女の塩化物の推奨量は2300mg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、2300mg/日を基準食の摂取下限値とする。
【0066】
18.ニッケル
米国DRIsでは、ニッケルの耐容上限量が設定されている。米国DRIsを食事摂取基準とする場合、耐容上限量に関し、各区分において下記の式により正規化ニッケル量を算出し、その中で最も少ない正規化ニッケル量を基準食におけるニッケルの摂取上限値とする。
正規化ニッケル量=ニッケルの耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
図9の例では、男性、21歳~35歳、身体活動レベルA(Active)の区分のニッケルの上限値0.53mg/日が、基準食におけるニッケルの摂取上限値となる。
【0067】
19.バナジウム
米国DRIsでは、バナジウムの耐容上限量が設定されている。米国DRIsを食事摂取基準とする場合、耐容上限量に関し、各区分において下記の式により正規化バナジウム量を算出し、その中で最も少ない正規化バナジウム量を基準食におけるバナジウムの摂取上限値とする。
正規化バナジウム量=バナジウムの耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
図9の例では、男性、21歳~35歳、身体活動レベルA(Active)の区分のバナジウムの上限値0.96mg/日が、基準食におけるバナジウムの摂取上限値となる。
【0068】
20.ホウ素
米国DRIsでは、ホウ素の耐容上限量が設定されている。米国DRIsを食事摂取基準とする場合、耐容上限量に関し、各区分において下記の式により正規化ホウ素量を算出し、その中で最も少ない正規化ホウ素量を基準食におけるホウ素の摂取上限値とする。
正規化ホウ素量=ホウ素の耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
図9の例では、男性、21歳~35歳、身体活動レベルA(Active)の区分のホウ素の上限値10.7mg/日が、基準食におけるホウ素の摂取上限値となる
21.フッ化物
米国DRIsでは、21歳~65歳男女のフッ化物の目安量は4mg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、4mg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において下記の式により正規化フッ化物量を算出し、その中で最も少ない正規化フッ化物量を基準食におけるフッ化物の摂取上限値とする。
正規化フッ化物量=フッ化物の耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)。
図9の例では、男性、21歳~35歳、身体活動レベルA(Active)の区分のフッ化物の上限値5.3mg/日が、基準食におけるフッ化物の摂取上限値となる。
【0069】
22.ビタミンA
本実施形態の基準食におけるビタミンAの摂取上限値及び摂取下限値は、下記の通り算出する。
「日本人の食事摂取基準」では、ビタミンAの食事摂取基準として18歳~64歳では推奨量、及び耐容上限量が設けられている。ここで、本実施形態の基準食は、各利用者の属性に応じてその量が調整される。そのため、量の調整が行われた基準食に含まれるビタミンAは、推定エネルギー必要量の多い区分の食事摂取基準を下回る必要がある。そこで、各区分において下記の式により正規化ビタミンA量を算出し、その中で最も少ない正規化ビタミンA量を基準食におけるビタミンAの摂取上限値とする。
正規化ビタミンA量=ビタミンAの耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
また、基準食のビタミンAの摂取下限値は、すべての利用者がビタミンAを推奨量以上摂取できるように、各区分におけるビタミンA推奨量の最大値(900μgRE/日)を基準食の摂取下限値としている。
図6の例では、男性、18歳~29歳、身体活動レベルIII(高い)の区分における推定エネルギー必要量が他の区分と比べて多いため、基準食に入れることができるビタミンAは1460.7μgRE/日(2700μgRE×1650kcal/3050kcal)と最も少ない。そこで、この値を基準食におけるビタミンAの摂取上限値とする。
なお、ビタミンAにはレチノール(動物性)とカロテノイド(植物性)があるが、「日本人の食事摂取基準」ではレチノールならびに添加ビタミンAにのみ上限を設け、食事由来のカロテノイドについては上限値を設けておらず、本実施形態においても同様である。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女のビタミンAの推奨量は700~900μg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、最大値の900μg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化ビタミンA量を算出し、その中で最も少ない正規化ビタミンA量を基準食におけるビタミンAの摂取上限値とする。図10の例では、男性、21歳~35歳、身体活動レベルA(Active)の区分のビタミンAの上限値1600μg/日が、基準食におけるビタミンAの摂取上限値となる
中国DRIsでは、18歳~64歳男女のビタミンAの推奨量は700~800μg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、800μg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化ビタミンA量を算出し、その中で最も少ない正規化ビタミンA量を基準食におけるビタミンAの摂取上限値とする。図14の例では、男性、18歳~49歳、身体活動レベルIII(高い)の区分のビタミンAの上限値1750μg/日が、基準食におけるビタミンAの摂取上限値となる。
【0070】
23.ビタミンD
本実施形態の基準食におけるビタミンDの摂取上限値及び摂取下限値は、下記の通り算出する。
「日本人の食事摂取基準」では、ビタミンDの食事摂取基準として18歳~64歳では目安量、耐容上限量が設けられている。ここで、本実施形態の基準食は、各利用者の属性に応じてその量が調整される。そのため、量の調整が行われた基準食に含まれるビタミンDは、推定エネルギー必要量の多い区分の食事摂取基準を下回る必要がある。そこで、各区分において下記の式により正規化ビタミンD量を算出し、その中で最も少ない正規化ビタミンD量を基準食におけるビタミンDの摂取上限値とする。
正規化ビタミンD量=ビタミンDの耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
また、基準食のビタミンDの摂取下限値は、すべての利用者がビタミンDを目安量以上摂取できるように、各区分におけるビタミンD目安量の最大値(8.5μg/日)を基準食の摂取下限値としている。図6の例では、男性、18歳~29歳、身体活動レベルIII(高い)の区分における推定エネルギー必要量が他の区分と比べて多いため、基準食に入れることができるビタミンDは54.1μg/日(100μg×1650kcal/3050kcal)と最も少ない。そこで、この値を基準食におけるビタミンDの摂取上限値とする。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女のビタミンDの推奨量は15μg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、15μg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化ビタミンD量を算出し、その中で最も少ない正規化ビタミンD量を基準食におけるビタミンDの摂取上限値とする。図10の例では、男性、21歳~35歳、身体活動レベルA(Active)の区分のビタミンDの上限値53.3μg/日が、基準食におけるビタミンDの摂取上限値となる。
中国DRIsでは、18歳~64歳男女のビタミンDの推奨量は10μg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、10μg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化ビタミンD量を算出し、その中で最も少ない正規化ビタミンD量を基準食におけるビタミンDの摂取上限値とする。図14の例では、男性、18歳~49歳、身体活動レベルIII(高い)の区分のビタミンDの上限値29.2μg/日が、基準食におけるビタミンDの摂取上限値となる。
【0071】
24.ビタミンE
本実施形態の基準食におけるビタミンEの摂取上限値及び摂取下限値は、下記の通り算出する。
「日本人の食事摂取基準」では、ビタミンEの食事摂取基準として18歳~64歳では目安量、耐容上限量が設けられている。ここで、本実施形態の基準食は、各利用者の属性に応じてその量が調整される。そのため、量の調整が行われた基準食に含まれるビタミンEは、推定エネルギー必要量の多い区分の食事摂取基準を下回る必要がある。そこで、各区分において下記の式により正規化ビタミンE量を算出し、その中で最も少ない正規化ビタミンE量を基準食におけるビタミンEの摂取上限値とする。
正規化ビタミンE量=ビタミンEの耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
また、基準食のビタミンEの摂取下限値は、すべての利用者がビタミンEを目安量以上摂取できるように、各区分におけるビタミンE目安量の最大値(7.0mg/日)を基準食の摂取下限値としている。
図6の例では、男性、18歳~29歳、身体活動レベルIII(高い)の区分における推定エネルギー必要量が他の区分と比べて多いため、基準食に入れることができるビタミンEは459.8mg/日(=850mg×1650kcal/3050kcal)と最も小さい。そこで、この値を基準食におけるビタミンEの摂取上限値とする。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女のビタミンEの推奨量は15mg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、15mg/日を基準食の摂取下限値とする。
中国DRIsでは、18歳~64歳男女のビタミンEの推奨量は14mg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、14mg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化ビタミンE量を算出し、その中で最も少ない正規化ビタミンE量を基準食におけるビタミンEの摂取上限値とする。図14の例では、男性、18歳~49歳、身体活動レベルIII(高い)の区分のビタミンEの上限値408.3mg/日が、基準食におけるビタミンEの摂取上限値となる。
【0072】
25.ビタミンK
本実施形態の基準食におけるビタミンKの下限値は、下記の通り算出する。
基準食のビタミンKの摂取下限値は、すべての利用者がビタミンKを目安量以上摂取できるように、各区分におけるビタミンK目安量の最大値(150μg/日)を基準食の摂取下限値としている。なお、「日本人の食事摂取基準」では、年齢、性別、身体活動レベルに関わらずビタミンK目安量は150μg/日に設定されているため、ビタミンK目安量が基準食の摂取下限値となる。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女のビタミンKの目安量は90~120μg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、最大値の120μg/日を基準食の摂取下限値とする。
中国DRIsでは、18歳~64歳男女のビタミンKの推奨量は80μg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、80μg/日を基準食の摂取下限値とする。
【0073】
26.ビタミンB1
本実施形態の基準食におけるビタミンB1の下限値は、下記の通り算出する。
ビタミンB1は、「日本人の食事摂取基準」において推奨量が定められており、年齢、性別、身体活動レベルに応じて1.1~1.4mg/日に設定されている。本実施形態では、すべての利用者がビタミンB1の目安量を摂取できるように、各区分におけるビタミンB1目安量の最大値(1.4mg/日)を本実施形態の基準食の摂取下限値としている。これにより、例えばダイエット等の目的で18歳~49歳の男性が食事による摂取カロリーを1650kcal/日に抑えたとしても、基準食を摂取すればビタミンB1の目安量1.4mg/日の食事摂取基準を満たすことが可能となる。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女のビタミンB1の推奨量は1.1~1.2mg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、最大値の1.2mg/日を基準食の摂取下限値とする。
中国DRIsでは、18歳~64歳男女のビタミンB1の推奨量は1.2~1.4mg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、最大値の1.4mg/日を基準食の摂取下限値とする。
【0074】
27.ビタミンB2
本実施形態の基準食におけるビタミンB2の下限値は、下記の通り算出する。
ビタミンB2は、「日本人の食事摂取基準」において推奨量が定められており、年齢、性別、身体活動レベルに応じて1.2~1.6mg/日に設定されている。本実施形態では、すべての利用者がビタミンB2の目安量を摂取できるように、各区分におけるビタミンB2の目安量の最大値(1.6mg/日)を本実施形態の基準食の摂取下限値としている。これにより、例えばダイエット等の目的で18歳~49歳の男性が食事による摂取カロリーを1650kcal/日に抑えたとしても、基準食を摂取すればビタミンBの目安量1.6mg/日の食事摂取基準を満たすことが可能となる。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女のビタミンB2の推奨量は1.1~1.3mg/日に設定されている。よって最大値の1.3mg/日を基準食の摂取下限値とする。
中国DRIsでは、18歳~64歳男女のビタミンB2の推奨量は1.2~1.4mg/日に設定されている。よって最大値の1.4mg/日を基準食の摂取下限値とする。
【0075】
28.ナイアシン
本実施形態の基準食におけるナイアシンの摂取上限値及び摂取下限値は、下記の通り算出する。
「日本人の食事摂取基準」では、ナイアシンについて18歳~64歳では推奨量、耐容上限量を設けている。ここで、耐容上限量は、強化食品並びにサプリメント由来のナイアシンについてのみ設定されている。
本実施形態の基準食は、各利用者の属性に応じてその量が調整される。そのため、量の調整が行われた基準食に含まれるナイアシンは、推定エネルギー必要量の多い区分の食事摂取基準を下回る必要がある。そこで、各区分において下記の式により正規化ナイアシン量を算出し、その中で最も少ない正規化ナイアシン量を基準食におけるナイアシンの摂取上限値とする。
正規化ナイアシン量=ナイアシンの耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
また、基準食のナイアシン当量の摂取下限値は、すべての利用者がナイアシン当量を推奨量以上摂取できるように、各区分におけるナイアシン当量推奨量の最大値(15mgNE/日)を基準食の摂取下限値としている。図6の例では、男性、18歳~29歳、身体活動レベルIII(高い)の区分における推定エネルギー必要量が他の区分と比べて多いため、基準食に入れることができるナイアシンは43.3mg/日(80mg×1650kcal/3050kcal)と最も小さい。そこで、この値を基準食におけるナイアシンの摂取上限値とする。なお、「日本人の食事摂取基準」では、強化食品ならびにサプリメント由来のナイアシンについて上限が定められており、本実施形態においても同様である。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女のナイアシンの推奨量は14~16mg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、推奨量最大値の16mg/日を基準食の摂取下限値とする。
中国DRIsでは、18歳~64歳男女のナイアシンの推奨量は12~15mg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、推奨量最大値の15mg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化ナイアシン量を算出し、その中で最も少ない正規化ナイアシン量を基準食におけるナイアシンの摂取上限値とする。図14の例では、男性、18歳~49歳、身体活動レベルIII(高い)の区分のナイアシンの上限値180.8mg/日が、基準食におけるナイアシンの摂取上限値となる。
【0076】
29.ビタミンB6
本実施形態の基準食における、ビタミンB6の摂取上限値及び摂取下限値は、下記の通り算出する。
「日本人の食事摂取基準」では、ビタミンB6の食事摂取基準として18歳~64歳では推奨量、及び耐容上限量が設けられている。ここで、本実施形態の基準食は、各利用者の属性に応じてその量が調整される。そのため、量の調整が行われた基準食に含まれるビタミンB6は、推定エネルギー必要量の多い区分の食事摂取基準を下回る必要がある。そこで、各区分において下記の式により正規化ビタミンB6量を算出し、その中で最も少ない正規化ビタミンB6量を基準食におけるビタミンB6の摂取上限値とする。
正規化ビタミンB6量=ビタミンB6の耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
また、基準食のビタミンB6の摂取下限値は、すべての利用者がビタミンB6を推奨量以上摂取できるように、各区分におけるビタミンB6推奨量の最大値(1.4mg/日)を基準食の摂取下限値としている。図6の例では、男性、18歳~29歳、身体活動レベルIII(高い)の区分における推定エネルギー必要量が他の区分と比べて多いため、基準食に入れることができるビタミンB6は29.75mg/日(55mg×1650kcal/3050kcal)と最も小さい。そこで、基準食におけるビタミンB6の摂取上限値を29.75mgとする。これにより、男性、18歳~29歳、身体活動レベルIII(高い)の区分に属する利用者が、上記摂取上限値未満(例えば29.7mg/日)のビタミンB6を含む1650kcal/日の基準食を3050kcal/日喫食したとしても、ビタミンB6の耐容上限値55mg/日を超えることはない。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女のビタミンB6の推奨量は1.3~1.7mg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、推奨量最大値の1.7mg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化ビタミンB6量を算出し、その中で最も少ない正規化ビタミンB6量を基準食におけるビタミンB6の摂取上限値とする。
図10の例では、男性、21歳~35歳、身体活動レベルA(Active)の区分のビタミンB6の上限値53.3mg/日が、基準食におけるビタミンB6の摂取上限値となる。
中国DRIsでは、18歳~64歳男女のビタミンB6の推奨量は1.4~1.6mg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、推奨量最大値の1.6mg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化ビタミンB6量を算出し、その中で最も少ない正規化ビタミンB6量を基準食におけるビタミンB6の摂取上限値とする。
図14の例では、男性、18歳~49歳、身体活動レベルIII(高い)の区分のビタミンB6の上限値35mg/日が、基準食におけるビタミンB6の摂取上限値となる。
【0077】
30.ビタミンB12、ビオチン、ビタミンC
本実施形態における基準食は、ビタミンB12、ビオチン、ビタミンCの摂取下限値を下記の通り算出する。
「日本人の食事摂取基準」において、ビタミンB12、ビタミンCは推奨量が定められ、ビオチンは目安量が定められている。本実施形態では、すべての利用者がビタミンB12、ビタミンCの推奨量、またはビオチンの目安量が摂取できるように、各区分におけるビタミンB12、ビタミンCの推奨量、またはビオチンの目安量の最大値を基準食の摂取下限値とする。なお、「日本人の食事摂取基準」では、年齢、性別、身体活動レベルに関わらず、ビタミンB12、ビタミンCは推奨量をそれぞれ2.4μg/日、100mg/日、ビオチンは目安量を50μg/日に設定されているため、ビタミンB12、ビタミンCの推奨量、またはビオチンの目安量が、それぞれ基準食における摂取下限値となる。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女のビタミンB12の推奨量は2.4μg/日、ビオチンの推奨量は30μg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、ビタミンB12の推奨量2.4μg/日、ビオチンの推奨量30μg/日をそれぞれ基準食の摂取下限値とする。
中国DRIsでは、18歳~64歳男女のビタミンB12の推奨量は2.4μg/日、ビオチンの推奨量は40μg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、ビタミンB12の推奨量2.4μg/日、ビオチンの推奨量40μg/日を基準食の摂取下限値とする。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女のビタミンCの推奨量は75~90mg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、最大値の90mg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において下記の式により正規化ビタミンC量を算出し、その中で最も少ない正規化ビタミンC量を基準食におけるビタミンCの摂取上限値とする。
正規化ビタミンC量=ビタミンCの耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
図10の例では、男性、21歳~35歳、身体活動レベルA(Active)の区分のビタミンCの上限値1067mg/日が、基準食におけるビタミンCの摂取上限値となる。
中国DRIsでは、18歳~64歳男女のビタミンCの推奨量は100mg/日に設定されている。よって100mg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化ビタミンC量を算出し、その中で最も少ない正規化ビタミンC量を基準食におけるビタミンCの摂取上限値とする。図14の例では、男性、18歳~49歳、身体活動レベルIII(高い)の区分のビタミンCの上限値1167mg/日が、基準食におけるビタミンCの摂取上限値となる。
【0078】
31.コリン
米国DRIsでは、21歳~65歳男女のコリンの目安量は425~550mg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、最大値の550mg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において下記の式により正規化コリン量を算出し、その中で最も少ない正規化コリン量を基準食におけるビタミンCの摂取上限値とする。
正規化コリン量=コリンの耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
図10の例では、男性、21歳~35歳、身体活動レベルA(Active)の区分のコリンの上限値1867mg/日が、基準食におけるコリンの摂取上限値となる。
中国DRIsでは、18歳~64歳男女のコリンの推奨量は400~500mg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、最大値の500mg/日を基準食の摂取下限値とする。一方、耐容上限量は各区分において上記の式により正規化コリン量を算出し、その中で最も少ない正規化コリン量を基準食におけるコリンの摂取上限値とする。図14の例では、男性、18歳~49歳、身体活動レベルIII(高い)の区分のコリン上限値1750mg/日が、基準食におけるコリンの摂取上限値となる。
【0079】
32.パントテン酸
本実施形態における基準食は、パントテン酸の摂取下限値を下記の通り算出する。
パントテン酸は、「日本人の食事摂取基準」において目安量が定められており、年齢、性別、身体活動レベルに応じて5~6mg/日に設定されている。本実施形態では、すべての利用者がパントテン酸の目安量を摂取できるように、各区分におけるパントテン酸の目安量の最大値(6mg/日)を基準食の摂取下限値とする。これにより、すべての利用者が少なくとも基準食を喫食すれば、目安量のパントテン酸を摂取することが可能となる。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女のパントテン酸の目安量は5mg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、5mg/日を基準食の摂取下限値とする。
中国DRIsでは、18歳~64歳男女のパントテン酸の推奨量は5mg/日に設定されている。よって、中国DRIsを食事摂取基準とする場合、5mg/日を基準食の摂取下限値とする。
【0080】
33.葉酸
本実施形態の基準食における、葉酸の摂取上限値及び摂取下限値は、下記の通り算出する。
「日本人の食事摂取基準」では、葉酸の食事摂取基準として18歳~64歳では推奨量、及び耐容上限量が設けられている。
ここで、本実施形態の基準食は、各利用者の属性に応じてその量が調整される。そのため、量の調整が行われた基準食に含まれる葉酸は、推定エネルギー必要量の多い区分の食事摂取基準を下回る必要がある。そこで、各区分において下記の式により正規化葉酸量を算出し、その中で最も少ない正規化葉酸量を基準食における葉酸の摂取上限値とする。
正規化葉酸量=葉酸の耐容上限量×(基準エネルギー量/各区分の推定エネルギー必要量)
また、基準食の葉酸の摂取下限値は、すべての利用者が葉酸を推奨量以上摂取できるように、各区分における葉酸推奨量の最大値(240μg/日)を基準食の摂取下限値としている。
図6の例では、男性、18歳~29歳、身体活動レベルIII(高い)の区分における推定エネルギー必要量が他の区分と比べて多いため、基準食に入れることができる葉酸は486.9μg/日(900μg×1650kcal/3050kcal)と最も小さい。そこで、基準食における葉酸の摂取上限値を486.9μg/日とする。
これにより、男性、18歳~29歳、身体活動レベルIII(高い)の区分に属する利用者が、上記摂取上限値未満の葉酸を含む1650kcal/日の基準食を3050kcal/日喫食したとしても、葉酸の耐容上限値900μg/日を超えることはない。
なお、「日本人の摂取基準」では、添加するプテロイルモノグルタミン酸に対してのみ上限が設定されており、本実施形態においても同様である。
米国DRIsでは、21歳~65歳男女の葉酸の推奨量は400μg/日に設定されている。よって、米国DRIsを食事摂取基準とする場合、400μg/日を基準食の摂取下限値とする。耐容上限量は、日本の場合と同様、サプリメントや強化食品に添加されえる合成品に適して適用される値であり、ここでは計算を略した。
中国DRIsでは、18歳~64歳男女の葉酸の推奨量は400μg/日に設定されている。よって中国DRIsを食事摂取基準とする場合、400μg/日を基準食の摂取下限値とする。耐容上限量は、日本の場合と同様、サプリメントや強化食品に添加されえる合成品に適して適用される値であり、ここでは計算を略した。
【0081】
ここで、本発明は、上述の完全栄養食の提供システムおよび食品情報提示装置だけでなく、以下の完全栄養食の栄養計算方法および完全栄養食の栄養計算ログラムを含む。以下、完全栄養食の栄養計算方法および完全栄養食の栄養計算ログラムの一例を示す。
完全栄養食の栄養計算方法の一例は、例えば、利用者の属性情報を取得するステップと、利用者の前記属性情報を記憶するステップと、利用者の属性毎に第一の栄養素及び第二の栄養素の摂取基準が設けられた完全栄養食の食事摂取基準を記憶するステップと、前記完全栄養食を形成する基準食について、各利用者の属性に関係なく第一の栄養素の摂取基準を満たす、基準食の第一の栄養素の摂取基準を算出するステップと、を含む完全栄養食の栄養計算方法である。
完全栄養食の栄養計算プログラムの一例は、例えば、利用者の属性情報を取得するステップと、利用者の前記属性情報を記憶するステップと、利用者の属性毎に第一の栄養素及び第二の栄養素の摂取基準が設けられた完全栄養食の食事摂取基準を記憶するステップと、前記完全栄養食を形成する基準食について、各利用者の属性に関係なく第一の栄養素の摂取基準を満たす、基準食の第一の栄養素の摂取基準を算出するステップと、を含む完全栄養食の栄養計算プログラムである。
【0082】
本実施形態における完全栄養食の提供システム1によれば、以下の効果を奏する。
本実施形態によれば、食事の提供を受ける利用者は完全栄養食を気軽に摂取することが可能となり、栄養管理の煩わしさから解放され、意識することなく健康増進を図ることができる。また、本実施形態によれば、栄養食を提供する事業者は、栄養食の量(カロリー)の調整を行うだけで、各利用者にとっての完全栄養食を提供することが可能となり、栄養計算の手間やコストを削減することが可能となる。なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲内での変形、改良等は本発明に含まれる。
【0083】
本発明においては上記の完全栄養食または上記基準食は、一日のうちの三食(朝食、昼食、夕食(間食を含む))に分けて摂取することも可能である。この場合、完全栄養食または基準食に含まれる第一の栄養素及び第二の栄養素は、朝食、昼食、夕食(間食を含む)のいずれかにおいて偏って含まれて良いが、各食事の量(カロリー)に比例して含まれるのがより好ましい。また、本発明においては、上記の完全栄養食または上記基準食を、一日の朝食、昼食及び夕食のうち、一食、または二食摂取する形式を選択することも可能である。
さらに、朝食、昼食及び夕食のうちにおいて、特にエネルギー摂取量の多い食事において、本発明における完全栄養食の提供システムを利用して栄養計算された食事を摂取することが好ましい。次に、朝食、昼食及び夕食(間食を含む)の摂取エネルギー割合は、一例として、20:30:50程度の比率が選択され得るが、この比率に限定されるものではない。
【実施例
【0084】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本願発明は以下の実施例に限定されるものではない。本実施例では、完全栄養食の提供システムにより「日本人の食事摂取基準」を用いて栄養計算された基準食の効用を確認するため、一日の食事のうち、基準食を朝食及び昼食として健常な被験者に一定期間提供した。そして、被験者の健康状態の改善について、特定の健康指標について評価した。
【0085】
〈試験方法〉
基準食を朝食および昼食として健常な成人男女(年齢:37.4±8.8歳)に摂取させ、体調や健康に対する意識の変化を評価した。なお、基準食のナトリウム(食塩相当量)については、被験者が飽きることなく継続して食事を摂取できるように、朝食の場合は、食塩相当量が1.7g以下、昼食の場合は3.0g未満の範囲になるように各食事を調整した。
【0086】
被験者は83名であり、内訳は男性67名、女性16名であった。摂取期間は日数として17日から19日間(概ね4週間)とした。また、基準食(朝食および昼食)の摂取は一週間のうちの平日のみとして、土日及び休日の食事は自由に摂取させた。
本発明の完全栄養食の提供システムを用いて栄養計算された基準食を朝食及び昼食として被験者に摂取させ、その他の食事(夕食、間食)は自由に摂取させた。朝食として5種類、昼食として15種類用意し、朝食は5種類の中から1種類を被験者に選択させ、昼食は15種類の中から2種類被験者へ提示し、どちらかを選択させた。朝食については概ね280kcal~340kcal、また、昼食については概ね460kcal~540kcalの範囲内となるように調整した。
【0087】
解析対象者として、上記の摂取期間中に提供された食事を80%以上摂取した被験者のみを解析対象とした。結果として解析対象者は75名(男性62名、女性13名)となった。また、解析方法は“対応のあるt検定”、“ウィルコクソンの符号順位検定”を行い、有意水準を0.05とした。
【0088】
基準食として提供された朝食及び昼食は、野菜や穀物、畜肉、魚等及びこれらの加工品を必要に応じて、焼く、煮る、蒸す、揚げる等の方法により調理し、必要に応じて調味料により味付けされたものを提供するメニューを基本とし、これ以外に補助的に栄養補助食、食品添加物、機能性原料、各種塩類等を利用して各種の栄養成分の不足を補った。
【0089】
<結果>
(1)身体計測
上記の調整食を一定期間継続して摂取した前後の身体計測の結果を図15に示す。体重、BMI及び体脂肪率は摂取期間前と比較して有意に減少した。
【0090】
(2)血中中性脂肪
上記の調整食を一定期間継続して摂取した前後の血中脂質のうちの中性脂肪の分析結果について以下の図16に示す。
血中中性脂肪は摂取期間前と比較して有意に減少した。中性脂肪値が高い群ほどその減少幅が大きいと考えられる。なお、上記の図16における基準値は、150以上が高グリセリド血症であり、120~149が正常高値域である。
【0091】
(3)血液メタボローム解析
上記の調整食を一定期間継続して摂取した前後の血液メタボローム解析のため、CE-TOFMS(キャピラリー電気泳動-飛行時間型質量分析計)を利用して、被験者の血液中(血漿)の代謝物を分析し、検出された229の候補化合物のピーク面積を前後比較した。また、有意な変動が見られた化合物(40化合物)のうち、ヒトへの作用にエビデンスがあるものを調査した。その結果、図9に示すように8-OHdG(8-ヒドロキシ-2´-デオキシグアノシン)が摂取期間後に有意に減少した。なお、8-OHdGはDNA損傷の酸化ストレスマーカーとしてエビデンスがある化合物である。なお、図17は相対面積を表す。
【0092】
(4)血圧
上記の調整食を一定期間継続して摂取した前後の血圧を測定した。結果を図18に示す。また、高値血圧以上の群で層別解析も行った。高値血圧以上の群では、摂取期間前と比較して収縮期血圧が低下傾向、拡張期血圧が有意に低下した。
【0093】
(5)骨密度
上記の調整食を一定期間継続して摂取した前後の骨密度を測定した。結果を図19に示す。なお、骨密度の測定はAOS-100SA(株式会社日立製作所)を用いてOSI(音響的骨評価値)によって行った。骨密度は、摂取期間前と比較して、全体では増加傾向、男性で有意に増加した。
【0094】
(6)腸内フローラ解析
上記の調整食を一定期間継続して摂取した前後の腸内フローラ解析を行った。結果を図20に示す。健康への影響があると言われる腸内フローラ指標に改善が見られた。ビフィズス菌やアッカーマンシア属の占有率、多様性スコアが有意に増加した。また、フソバクテリア門の占有率が減少傾向にあった。
【符号の説明】
【0095】
1 完全栄養食の提供システム
10 端末装置
20 食品情報提示装置
30 食品製造管理装置
31 食品製造管理部
40 食品配送装置
41 配送指示部
100 処理部
110 情報取得部
120 栄養計算部
130 メニュー選択部
140 素材選択部
150 食品情報提供部
200 記憶部
210 利用者情報データベース(DB)
220 食事摂取基準データベース(DB)
230 メニューデータベース(DB)
図1
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