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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】加熱装置、定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20220809BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20220809BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
G03G15/20 515
G03G15/20 555
H05B3/00 310D
H05B3/00 335
H05B3/00 320Z
H05B3/10 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018184421
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020052353
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】足立 知哉
(72)【発明者】
【氏名】古市 祐介
(72)【発明者】
【氏名】染矢 幸通
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-197866(JP,A)
【文献】特開2008-123709(JP,A)
【文献】特開2018-032631(JP,A)
【文献】特開2017-227866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
H05B 3/00
H05B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するベルトの幅方向で接触して当該ベルトを加熱する電気ヒータを有する加熱装置であって、前記電気ヒータが、基材と、当該基材上に形成された抵抗発熱体を有し、前記抵抗発熱体が、前記基材の長手方向に直線状に形成された抵抗線又は前記基材の短手方向に蛇行状に形成された抵抗線を有し、前記電気ヒータの長手方向端部に、前記抵抗線の一部が鋭角に屈曲した屈曲部を形成し、当該屈曲部によって所定の温度上昇により通電が遮断する遮断部を形成したことを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記遮断部が、前記ベルトの定常走行時に前記ベルトに接触し、かつ、前記ベルトがその幅方向片側に寄り移動する寄り移動時に前記ベルトに接触しない位置に形成されていることを特徴とする請求項1の加熱装置。
【請求項3】
前記遮断部は、電流が流れる方向を横断する方向の断面積が、前記電気ヒータの他の部分よりも小さいことを特徴とする請求項1又は2の加熱装置。
【請求項4】
前記遮断部は、比抵抗が、前記電気ヒータの他の部分の比抵抗よりも、大きいことを特徴とする請求項1又は2の加熱装置。
【請求項5】
前記遮断部が、前記ベルトの走行方向に対して傾斜状に形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項の加熱装置。
【請求項6】
前記電気ヒータが、前記基材と、当該基材上に形成された前記抵抗発熱体と、当該抵抗発熱体を覆う保護層を有し、前記遮断部において前記抵抗発熱体の線幅が他の部分よりも幅狭に形成されていることを特徴とする請求項3又は5の加熱装置。
【請求項7】
前記電気ヒータが、前記基材と、当該基材上に形成された前記抵抗発熱体と、当該抵抗発熱体を覆う保護層を有し、前記遮断部において前記抵抗発熱体の線厚が他の部分よりも薄厚に形成されていることを特徴とする請求項3又は5の加熱装置。
【請求項8】
前記蛇行状に形成された前記抵抗線による発熱パターンが、前記基材の長手方向で複数形成されると共に、当該複数の発熱パターンが並列接続された請求項の加熱装置。
【請求項9】
前記複数の発熱部のうち、前記基材の長手方向の中間のいずれか1つの発熱部に対応する位置に第1温度センサを配設すると共に、前記基材の長手方向端部の発熱部に対応する位置に第2温度センサを配置し、当該第1温度センサと第2温度センサの検知結果に基づいて、前記ヒータの供給電流を制御するようにしたことを特徴とする請求項の加熱装置。
【請求項10】
前記電気ヒータの前記抵抗発熱体が、個別に給電可能な複数の抵抗発熱体で構成されていることを特徴とする請求項の加熱装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1の加熱装置と、当該加熱装置で加熱する定着ベルトと、当該定着ベルトを間に挟んで前記加熱装置と対向配置された加圧部材とを有することを特徴とする定着装置。
【請求項12】
請求項11の定着装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気ヒータを使用した加熱装置、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置で使用される定着装置は種々の型式が知られている。その1つに、低熱容量の薄肉定着ベルトを電気ヒータで加熱する型式がある。この電気ヒータは、定着ベルトの幅方向に配置された基材上に抵抗発熱体を配設したものが使用される(例えば特許文献1、2参照)。
【0003】
定着ベルトは省エネ、低コスト化及び高速化のためますます薄肉化の傾向にあるが、薄肉化するとベルト端部で亀裂や丸まりなどの破損が発生しやすくなる。ベルトが破損すると当該破損側にベルトが寄り移動し、この寄り移動とは反対側で電気ヒータの端部が露出し、電気ヒータの端部温度が急増する。
【0004】
電気ヒータの基材裏面には温度センサが配設され、この温度センサからの信号に基づいて、電気ヒータに供給される電流が電力制御部によって制御されるようになっている。前述のような電気ヒータの端部温度急増が生じると、この電力制御部によって電気ヒータへの通電が遮断され、安全性が担保される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、温度センサや電力制御部が万一故障すると、電気ヒータへの通電を遮断できない。本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、電気ヒータの端部温度急増が生じたときに、当該端部温度急増部分で電気ヒータ自体が自己破壊する加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の加熱装置は、回転するベルトの幅方向で接触して当該ベルトを加熱する電気ヒータを有する加熱装置であって、前記電気ヒータの長手方向端部に、所定の温度上昇により通電が遮断する遮断部を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電気ヒータの端部温度急増が生じたときに、当該端部温度急増部分で電気ヒータを自己破壊により断線させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図1B】本発明の実施形態に係る画像形成装置の原理図である。
図2A】本発明の実施形態に係る第1の定着装置の断面図である。
図2B】本発明の実施形態に係る第2の定着装置の断面図である。
図2C】本発明の実施形態に係る第3の定着装置の断面図である。
図2D】本発明の実施形態に係る第4の定着装置の断面図である。
図2E】本発明の実施形態に係る第5の定着装置の断面図である。
図3A】両端に幅狭部を設けた抵抗発熱体の(a)平面図と(b)断面図である。
図3B】両端に薄厚部を設けた抵抗発熱体の(a)平面図と(b)断面図である。
図3C】両端に幅狭部を設けた抵抗発熱体の(a)平面図と(b)断面図である。
図3D】両端に薄厚部を設けた抵抗発熱体の(a)平面図と(b)断面図である。
図4A】両端に幅狭部を設けた抵抗発熱体の平面図である。
図4B】両端に薄厚部を設けた抵抗発熱体の(a)平面図、(b)F-F’線断面図、(c)G-G’線断面図である。
図4C】両端に幅狭部を設けた抵抗発熱体の(a)平面図と(b)断面図である。
図4D】両端に薄厚部を設けた抵抗発熱体の(a)平面図、(b)F-F’線断面図、(c)G-G’線断面図である。
図5A】遮断部を傾斜させた抵抗発熱体の(a)平面図、(b)同図のF-F’線断面図、(c)傾斜遮断部の電流が流れる領域を示す図である。
図5B】遮断部を傾斜させた抵抗発熱体の平面図である。
図6】個別に給電される2つの抵抗発熱体の(a)平面図と(b)同図のF-F’線断面図である。
図7A】抵抗発熱体と定着ベルトの表面温度を示す(a)定常走行時の図と(b)寄り移動時の図である。
図7B】抵抗発熱体の温度を測定する方法を示す図である。
図8A】温度センサ1個付き抵抗発熱体の断面図である。
図8B】温度センサ3個付き抵抗発熱体の断面図である。
図8C】温度センサ3個付き抵抗発熱体の断面図である。
図8D】温度センサ3個付き抵抗発熱体の断面図である。
図9】加熱装置、電力供給回路及び電力制御部を示す図である。
図10】温度センサによる加熱装置の制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態に係る加熱装置と、当該加熱装置を使用した定着装置及び画像形成装置(レーザプリンタ)について図面を参照して説明する。レーザプリンタは画像形成装置の一例であり、当該画像形成装置はレーザプリンタに限定されないことは勿論である。すなわち、画像形成装置は複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機、及びインクジェット記録装置のいずれか一つ、またはこれらの少なくとも2つ以上を組み合わせた複合機として構成することも可能である。
【0010】
なお、各図中の同一または相当する部分には同一の符号を付し、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。また各構成部品の説明にある寸法、材質、形状、その相対配置などは例示であって、特に特定的な記載がない限りこの発明の範囲をそれらに限定する趣旨ではない。
【0011】
以下の実施形態では「記録媒体」を「用紙」として説明するが、「記録媒体」は紙(用紙)に限定されない。「記録媒体」は紙(用紙)だけでなくOHPシートや布帛、金属シート、プラスチックフィルム、或いは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグシートなども含む。
【0012】
現像剤やインクを付着させることができる媒体、記録紙、記録シートと称されるものも、すべて「記録媒体」に含まれる。また「用紙」には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ等も含まれる。
【0013】
また、以下の説明で使用する「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与することも意味する。
【0014】
(レーザプリンタの構成)
図1Aは、本発明の加熱装置ないし定着装置300を備えた画像形成装置100の一実施形態としてのカラーレーザプリンタの構成を概略的に示す構成図である。また図1Bは当該カラーレーザプリンタの原理を単純化して図示する。
【0015】
画像形成装置100は、画像形成手段としての4つのプロセスユニット1K、1Y、1M、1Cを備える。これらプロセスユニットは、カラー画像の色分解成分に対応するブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色の現像剤によって画像を形成する。
【0016】
各プロセスユニット1K、1Y、1M、1Cは、互いに異なる色の未使用トナーを収容したトナーボトル6K、6Y、6M、6Cを有する以外は、同様の構成となっている。このため、1つのプロセスユニット1Kの構成を以下に説明し、他のプロセスユニット1Y、1M、1Cの説明を省略する。
【0017】
プロセスユニット1Kは、像担持体2K(例えば感光体ドラム)と、ドラムクリーニング装置3Kと、除電装置を有している。プロセスユニット1Kはさらに、像担持体の表面を一様帯電する帯電手段としての帯電装置4Kと、像担持体上に形成された静電潜像の可視像処理を行う現像手段としての現像装置5K等を有している。そして、プロセスユニット1Kは、画像形成装置100の本体に対して着脱自在に装着され、消耗部品を同時に交換可能となっている。
【0018】
露光器7は、この画像形成装置100に設置された各プロセスユニット1K、1Y、1M、1Cの上方に配設されている。そして、この露光器7は、画像情報に応じた書き込み走査、すなわち、画像データに基づいてレーザダイオードからレーザ光Lをミラー7aで反射して像担持体2Kに照射するように構成されている。
【0019】
転写装置15は、この実施形態では各プロセスユニット1K、1Y、1M、1Cの下方に配設されている。この転写装置15は図1Bの転写手段TMに対応する。一次転写ローラ19K、19Y、19M、19Cは、各像担持体2K、2Y、2M、2Cに対向して中間転写ベルト16に当接して配置されている。
【0020】
中間転写ベルト16は、各一次転写ローラ19K、19Y、19M、19C、駆動ローラ18、従動ローラ17に掛け渡された状態で循環走行するようになっている。二次転写ローラ20は、駆動ローラ18に対向し中間転写ベルト16に当接して配置されている。なお、像担持体2K、2Y、2M、2Cが各色の第1の像担持体とすれば、中間転写ベルト16はそれらの像を合成した第2の像担持体である。
【0021】
ベルトクリーニング装置21は、中間転写ベルト16の走行方向において、二次転写ローラ20より下流側に設置されている。また、クリーニングバックアップローラが中間転写ベルト16に対してベルトクリーニング装置21と反対側に設置されている。
【0022】
用紙Pを積載するトレイを有する用紙給送装置200は、画像形成装置100の下方に設置されている。この用紙給送装置200は記録媒体供給部を構成するもので、記録媒体としての多数枚の用紙Pを束状で収容可能であり、用紙Pの搬送手段としての給紙ローラ60やローラ対210と共にユニット化されている。
【0023】
用紙給送装置200は用紙の補給等のために、画像形成装置100の本体に対して挿脱可能とされている。給紙ローラ60とローラ対210は用紙給送装置200の上方に配置され、用紙給送装置200の最上位の用紙Pを給紙路32に向けて搬送するようになっている。
【0024】
分離搬送手段としてのレジストローラ対250は、二次転写ローラ20の搬送方向直近上流側に配置され、用紙給送装置200から給紙された用紙Pを一旦停止させることができる。この一旦停止により用紙Pの先端側に弛みが形成されて用紙Pの斜行(スキュー)が修正される。
【0025】
レジストローラ対250の搬送方向直近上流側にはレジストセンサ31が配設され、このレジストセンサ31によって用紙先端部分の通過が検知されるようになっている。レジストセンサ31が用紙先端部分の通過を検知した後、所定時間が経過すると、当該用紙はレジストローラ対250に突き当てられて一旦停止する。
【0026】
用紙給送装置200の下流端には、ローラ対210から右側に搬送された用紙を上方に向けて搬送するための搬送ローラ240が配設されている。図1Aに示すように、搬送ローラ240は用紙を上方のレジストローラ対250へ向けて搬送する。
【0027】
ローラ対210は上下一対のローラで構成されている。当該ローラ対210はFRR分離方式またはFR分離方式とすることができる。FRR分離方式は、駆動軸によりトルクリミッタを介して反給紙方向に一定量のトルクを印加された分離ローラ(戻しローラ)を給送ローラに圧接させてローラ間のニップで用紙を分離する。FR分離方式は、トルクリミッタを介して固定軸に支持された分離ローラ(摩擦ローラ)を給送ローラに圧接させてローラ間のニップで用紙を分離する。
【0028】
この実施形態ではローラ対210をFRR分離方式で構成している。すなわち、ローラ対210は、用紙をマシン内部に搬送する上側の給送ローラ220と、この給送ローラ220と逆方向にトルクリミッタを介して駆動軸により駆動力を与えられる下側の分離ローラ230で構成されている。
【0029】
分離ローラ230は給送ローラ220に向けてバネ等の付勢手段で付勢されている。なお、前記給紙ローラ60は、給送ローラ220の駆動力をクラッチ手段を介して伝達することで図1Aで左回転するようになっている。
【0030】
レジストローラ対250に突き当てられて先端部に弛みが形成された用紙Pは、中間転写ベルト16上に形成されたトナー像が好適に転写されるタイミングに合わせ、二次転写ローラ20と駆動ローラ18との二次転写ニップ(図1Bでは転写ニップN)に送り出される。そして、送り出された用紙Pは、二次転写ニップにおいて印加されたバイアスによって、中間転写ベルト16上に形成されたトナー像が所望の転写位置に高精度に静電的に転写されるようになっている。
【0031】
転写後搬送路33は、二次転写ローラ20と駆動ローラ18の二次転写ニップの上方に配設されている。定着装置300は、転写後搬送路33の上端近傍に設置されている。定着装置300は、加熱装置を内包する定着ベルト310と、この定着ベルト310に対して所定の圧力で当接しながら回転する加圧部材としての加圧ローラ320を備えている。なお、定着装置300としては後述する図2B図2Dのように他の構成も可能である。
【0032】
定着後搬送路35は、定着装置300の上方に配設され、定着後搬送路35の上端で、排紙路36と反転搬送路41に分岐している。この分岐部に切り替え部材42が配置され、切り替え部材42はその揺動軸42aを軸として揺動するようになっている。また排紙路36の開口端近傍には排紙ローラ対37が配設されている。
【0033】
反転搬送路41は、分岐部と反対側の他端で給紙路32に合流している。そして、反転搬送路41の途中には、反転搬送ローラ対43が配設されている。排紙トレイ44は、画像形成装置100の上部に、画像形成装置100の内側方向に凹形状を形成して、設置されている。
【0034】
粉体収容器10(例えばトナー収容器)は、転写装置15と用紙給送装置200の間に配置されている。そして、粉体収容器10は、画像形成装置100の本体に対して着脱自在に装着されている。
【0035】
本実施形態の画像形成装置100は、転写紙搬送の関係により、給紙ローラ60から二次転写ローラ20までの所定の距離が必要である。そして、この距離に生じたデッドスペースに粉体収容器10を設置し、レーザプリンタ全体の小型化を図っている。
【0036】
転写カバー8は、用紙給送装置200の上部で、用紙給送装置200の引出方向正面に設置されている。そして、この転写カバー8を開くことで、画像形成装置100の内部を点検可能にしている。転写カバー8には、手差し給紙用の手差し給紙ローラ45、及び手差し給紙用の手差しトレイ46が設置されている。
【0037】
(レーザプリンタの作動)
次に、本実施形態に係るレーザプリンタの基本的動作について図1Aを参照して以下に説明する。最初に、片面印刷を行う場合について説明する。
【0038】
給紙ローラ60は、図1Aに示すように、画像形成装置100の制御部からの給紙信号によって回転する。そして、給紙ローラ60は、用紙給送装置200に積載された束状用紙Pの最上位の用紙のみを分離し、給紙路32へ送り出す。
【0039】
給紙ローラ60およびローラ対210によって送り出された用紙Pは、その先端がレジストローラ対250のニップに到達すると、弛みを形成し、その状態で待機する。そして、中間転写ベルト16上に形成されたトナー画像をこの用紙Pに転写する最適なタイミング(同期)を図ると共に、用紙Pの先端スキューを補正する。
【0040】
手差しによる給紙の場合は、手差しトレイ46に積載された束状用紙が、最上位の用紙から一枚ずつ手差し給紙ローラ45によって反転搬送路41の一部を通り、レジストローラ対250のニップまで搬送される。以後の動作は用紙給送装置200からの給紙と同一である。
【0041】
ここで、作像動作については、1つのプロセスユニット1Kを説明し、他のプロセスユニット1Y、1M、1Cについてのその説明を省略する。まず、帯電装置4Kは、像担持体2Kの表面を高電位に均一に帯電する。そして、露光器7は、画像データに基づいたレーザ光Lを像担持体2Kの表面に照射する。
【0042】
レーザ光Lが照射された像担持体2Kの表面は、照射された部分の電位が低下して、静電潜像を形成する。現像装置5Kは、トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体を有し、トナーボトル6Kから供給された未使用のブラックトナーを、現像剤担持体を介して、静電潜像が形成された像担持体2Kの表面部分に転移させる。
【0043】
トナーが転移した像担持体2Kは、その表面にブラックトナー画像を形成(現像)する。そして、像担持体2K上に形成されたトナー画像を中間転写ベルト16に転写する。
【0044】
ドラムクリーニング装置3Kは、中間転写行程を経た後の像担持体2Kの表面に付着している残留トナーを除去する。除去された残留トナーは、廃トナー搬送手段によって、プロセスユニット1K内にある廃トナー収容部へ送られ回収される。また、除電装置は、クリーニング装置3Kによって残留トナーが除去された像担持体2Kの残留電荷を除電する。
【0045】
各色のプロセスユニット1Y、1M、1Cにおいても、同様にして像担持体2Y、2M、2C上にトナー画像を形成し、各色トナー画像が重なり合うように中間転写ベルト16に転写する。各色トナー画像が重なり合うように転写された中間転写ベルト16は、二次転写ローラ20と駆動ローラ18の二次転写ニップまで走行する。
【0046】
一方、レジストローラ対250は、それに突き当てられた用紙を所定のタイミングで挟み込んで回転し、中間転写ベルト16上に重畳転写して形成されたトナー像が好適に転写されるタイミングに合わせて、二次転写ローラ20の二次転写ニップまで搬送する。このようにして、中間転写ベルト16上のトナー画像をレジストローラ対250によって送り出された用紙Pに転写する。
【0047】
トナー画像が転写された用紙Pは、転写後搬送路33を通って定着装置300へと搬送される。そして、定着装置300に搬送された用紙Pは、定着ベルト310と加圧ローラ320によって挟まれ、加熱・加圧することで未定着トナー画像が用紙Pに定着される。トナー画像が定着された用紙Pは、定着装置300から定着後搬送路35へ送り出される。
【0048】
切り替え部材42は、定着装置300から用紙Pが送り出されたタイミングでは、図1Aの実線で示すように定着後搬送路35の上端近傍を開放している位置にある。そして、定着装置300から送り出された用紙Pは、定着後搬送路35を経由して排紙路36へ送り出される。排紙ローラ対37は、排紙路36へ送り出された用紙Pを挟み込み、回転駆動することで排紙トレイ44に排出することで片面印刷を終了する。
【0049】
次に、両面印刷を行う場合について説明する。片面印刷の場合と同様に、定着装置300は用紙Pを排紙路36へ送り出す。そして、両面印刷を行う場合、排紙ローラ対37は、回転駆動によって用紙Pの一部を画像形成装置100外に搬送する。
【0050】
そして、用紙Pの後端が、排紙路36を通過すると、切り替え部材42は、図1Aの点線で示すように揺動軸42aを軸として揺動し、定着後搬送路35の上端を閉鎖する。この定着後搬送路35の上端の閉鎖とほぼ同時に、排紙ローラ対37は、用紙Pを画像形成装置100外へ搬送する方向と逆の方向に回転し、反転搬送路41へ用紙Pを送り出す。
【0051】
反転搬送路41へ送り出された用紙Pは、反転搬送ローラ対43を経て、レジストローラ対250に至る。そして、レジストローラ対250は、中間転写ベルト16上に形成されたトナー画像を用紙Pのトナー画像未転写面に転写する最適なタイミング(同期)を図り、用紙Pを二次転写ニップへ送り出す。
【0052】
そして、二次転写ローラ20と駆動ローラ18は、用紙Pが二次転写ニップを通過する際に用紙Pのトナー画像未転写面(裏面)にトナー画像を転写する。そして、トナー画像が転写された用紙Pは、転写後搬送路33を通って定着装置300へと搬送される。
【0053】
定着装置300は、定着ベルト310と加圧ローラ320によって、搬送された用紙Pを挟み、加熱・加圧することで未定着トナー画像を用紙Pの裏面に定着する。このようにして、表裏両面にトナー画像が定着された用紙Pは、定着装置300から定着後搬送路35へ送り出される。
【0054】
切り替え部材42は、定着装置300から用紙Pが送り出されたタイミングでは、図1Aの実線で示すように定着後搬送路35の上端近傍を開放している位置にある。そして、定着装置300から送り出された用紙Pは、定着搬送路を経由して排紙路36へ送り出される。排紙ローラ対37は、排紙路36へ送り出された用紙Pを挟み、回転駆動し排紙トレイ44に排出することで両面印刷を終了する。
【0055】
中間転写ベルト16上のトナー画像を用紙Pに転写した後、中間転写ベルト16上には残留トナーが付着している。ベルトクリーニング装置21は、この残留トナーを中間転写ベルト16から除去する。また、中間転写ベルト16から除去されたトナーは、廃トナー搬送手段によって、粉体収容器10へと搬送され、粉体収容器10内に回収される。
【0056】
(定着装置)
次に、本発明の実施形態に係る加熱装置と定着装置300について、以下さらに説明する。本実施形態の加熱装置は、定着装置300の定着ベルト310を加熱するためのものである。
【0057】
定着装置300は各種の定着装置を使用可能である。ここでは図2A図2Eに示す5種類の定着装置300のみを示すが、これら定着装置に限定されないことは勿論である。
【0058】
第1の定着装置は図2Aに示すように、低熱容量の薄肉の定着ベルト310と加圧ローラ320で構成されている。定着ベルト310は、例えば外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド(PI)製の筒状基体を有する。
【0059】
定着ベルト310の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成される。基体と離型層の間に厚さ50~500μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。
【0060】
また、定着ベルト310の基体はポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト310の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。
【0061】
加圧ローラ320は、例えば外径が25mmであり、中実の鉄製芯金321と、この芯金321の表面に形成された弾性層322と、弾性層322の外側に形成された離型層323とで構成されている。弾性層322はシリコーンゴムで形成されており、厚みは例えば3.5mmである。
【0062】
弾性層322の表面は離型性を高めるために、厚みが例えば40μm程度のフッ素樹脂層による離型層323を形成するのが望ましい。定着ベルト310に対して加圧ローラ320が付勢手段により圧接している。
【0063】
定着ベルト310の内側に、ステー330及びフォルダ340が軸線方向に配設されている。ステー330は金属製のチャンネル材で構成され、その両端部分が加熱装置の両側板に支持されている。ステー330は加圧ローラ320の押圧力を確実に受けとめて定着ニップSNを安定的に形成する。
【0064】
フォルダ340は加熱装置の基材350を保持するためのもので、ステー330によって支持されている。フォルダ340は好ましくはLCPなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成することができ、これによりフォルダ340への熱伝達が減って効率的に定着ベルト310を加熱することができる。
【0065】
フォルダ340の形状は、基材350の高温部との接触を回避するために、基材350の短手方向両端部付近の各2箇所のみを支持する形状にしている。これにより、フォルダ340へ流れる熱量をさらに低減して効率的に定着ベルト310を加熱することができる。ただし、加熱装置の、定着ベルト310の摺動面とは逆の面の温度上昇を抑制したい場合には、敢えて基材350をフォルダ340に接触させることでフォルダ340へ流れる熱量を増やしてもよい。
【0066】
(他の定着装置)
次に、図2B図2Eを参照して第2~第5の定着装置について説明する。第2の定着装置は、図2Bに示すように、基材350の長手方向に形成した溝部350a内に抵抗発熱体360を収容したものである。その他の構成は、図2Aの第1の定着装置と同様である。抵抗発熱体360を溝部350aに収容することで、抵抗発熱体360の損傷を防止すると共に、基材350の裏面側に配設した温度センサTH1の検知精度を高めることができる。
【0067】
第3の定着装置は、図2Cに示すように、加圧ローラ320と反対側に押圧ローラ390を有し、当該押圧ローラ390と加熱装置との間で定着ベルト310を挟んで加熱する。定着ベルト310の内側に前述した加熱装置が配設されてる。
【0068】
ステー330の片側に補助ステー331が取り付けられ、反対側にニップ形成部材332が取り付けられている。加熱装置はこの補助ステー331に保持されている。ニップ形成部材332は定着ベルト310を介して加圧ローラ320と当接して定着ニップSNを形成している。
【0069】
第4の定着装置は、図2Dに示すように、定着ベルト310の内側に加熱装置が配設されている。この加熱装置は、前述した押圧ローラ390を省略する代わりに、定着ベルト310との周方向接触長さを長くするため、定着ベルト310の曲率に合わせて基材350と保護層370の横断面を円弧状に形成している。抵抗発熱体360は円弧状の基材350の中央に配置されている。その他は図2Cの第3の定着装置と同じである。
【0070】
第5の定着装置は、図2Eに示すように、加熱ニップHNと定着ニップSNに分けて構成している。すなわち、加圧ローラ320の定着ベルト310とは反対側に、ニップ形成部材332と、金属製のチャンネル材で構成されたステー333を配置し、これらニップ形成部材332とステー333を内包するように、加圧ベルト334を周回可能に配設している。そして、当該加圧ベルト334と加圧ローラ320との間の定着ニップSNに用紙Pを通紙して加熱・定着する。その他は図2Aの第1の定着装置と同じである。
【0071】
また、安全補償用の第2温度センサTH2は、図2Aの破線にて示すように配置してもよい。すなわち、温度制御用の第1温度センサTH1が検知する発熱パターン364とは異なる発熱パターン366で加熱される定着ベルト310の内周面(発熱パターン366の下流側内周面)に、第2温度センサTH2を付勢手段により圧着するように配置する。
【0072】
発熱パターンの数を増加すると温度センサの配設スペースを確保しにくくなるが、第2温度センサTH2を前記のように配設することでスペース確保の困難性を緩和することができる。また安全補償用の第2温度センサTH2は、発熱パターン366だけでなく、定着ベルト310の内周面を含む、他の発熱パターン361~363、365の加熱域毎に配置してもよい。
【0073】
(加熱装置)
【0074】
次に、加熱装置の詳細について図3A図4Dを参照して説明する。図3A図3Bは基材の長手方向に延びる抵抗発熱体360を平行二列で形成したものである。図3C図3Dも同じよう抵抗発熱体360を平行二列で形成したものであるが、基材351に金属材料を使用してその強度を高めている。
【0075】
また図4A図4Bは、抵抗発熱体360としての複数の発熱パターン361~366を基材350上に配置してこれらを並列接続したものである。図4C図4Dは同じように複数の発熱パターン361~366を並列接続したものであるが、基材351に金属材料を使用してその強度を高めている。
【0076】
(直列型の抵抗発熱体)
図3Aの抵抗発熱体360は直列形式で細長の基材350上に形成されている。基材350の材料としては一般的なセラミック以外では、低コストなアルミやステンレスなどが好ましい。銅やグラファイトやグラフェンなど高熱伝導率の材料は、熱伝導の作用によりヒータ全体の温度を均一化することで画像品位を高められるので、より好ましい。
【0077】
本実施形態ではアルミナ基材を使用する。基材350の外形は、例えば短手幅8mm、長手幅270mm、厚さ1.0mmとすることができる。厚みは1.0mmよりも0.2~0.5mmが軽量化のためより好ましい。
【0078】
図3Aの抵抗発熱体360は、詳しくは基材350の長手方向に平行二列で直列線状に形成された抵抗線で構成されている。二列の抵抗線ないし抵抗発熱体360の一端部は、基材350の一端側で長手方向に形成された小抵抗値の給電線369a、369cを介して、給電用の電極360c、360dにそれぞれ接続されている。この電極360c、360dは、図8で後述するように、交流電源410を含む電力供給手段に接続される。
【0079】
抵抗発熱体360の一方の列の抵抗線の他端部は、基材350の他端側で短手方向に形成された折返し部360lを介して、基材350の長手方向反対側に向けて折り返す形で、他方の列の抵抗線の他端部に接続されている。この折返し部360lは、抵抗発熱体360と同じ材料で、抵抗発熱体360と同じ厚さで、電極360c、360dおよび給電線369a~369cと共に、スクリーン印刷によって形成されている。
【0080】
折返し部360lには、抵抗発熱体360の線幅w1の略半分程度の幅狭部w2が形成されている。この幅狭部w2は、異常時の過熱により確実に通電が遮断する遮断部を形成するものである。
【0081】
幅狭部w2は、電流が流れる方向に対して垂直方向に狭まって形成されている。幅狭部w2は、例えば60μm以下の線幅にすることができる。折返し部360lが異常昇温したとき、60μm以下の線幅であると断線しやすく、70μm以上であると断線しにくい。
【0082】
抵抗発熱体360の線幅w1の部分の線厚と、幅狭部w2の線厚は、同じ厚さで形成されている。幅狭部w2は、折返し部360lの領域内であれば、どの部分に形成してもよい。
【0083】
また、給電線369cに接続する抵抗発熱体360の端部にも、同様の幅狭部w2が形成されている。この幅狭部w2は、給電線369aに接続する抵抗発熱体360の端部に形成してもよい。
【0084】
抵抗発熱体360の材料は、銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等により塗工し、その後の焼成によって形成することができる。抵抗発熱体360の抵抗値は例えば常温で10Ωとすることができる。
【0085】
抵抗発熱体360の抵抗材料はこの他に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO2)などを使用することもできる。抵抗発熱体360は一回のスクリーン印刷によって形成することができるので、焼成回数の増加やマスキングによる製造工程の複雑化、異材料による膜厚の均一化などの対応が必要なく、低コストで構成することができる。
【0086】
抵抗発熱体360と給電線369a~369cの表面は、絶縁性の薄いオーバーコート層ないし保護層370で覆われている。本実施形態では厚さ75μmの耐熱性ガラスで保護層370が形成されている。当該保護層370によって、定着ベルト310の摺動性が確保されると共に、定着ベルト310と抵抗発熱体360、給電線369a~369cとの間の絶縁性が確保される。
【0087】
この保護層370の材料は、例えば厚さ75μmの耐熱性ガラスを用いることができる。抵抗発熱体360は保護層370側に接触する定着ベルト310を伝熱により加熱してその温度を上昇させ、定着ニップSNに搬送される用紙Pの未定着画像を加熱して定着する。
【0088】
前記幅狭部w2によって局所的に抵抗発熱体360の通電幅が絞られるので、定着ベルト310の定常走行時でも当該幅狭部w2での発熱密度が上昇する。そして何らかの異常で定着ベルト310端部に破損が生じ、定着ベルト310が幅方向片側に寄り移動する寄り移動時に、当該移動と反対側で抵抗発熱体360の長手方向端部が剥き出しとなる。
【0089】
抵抗発熱体360の長手方向端部が剥き出しになると、その部分だけが異常昇温する結果、幅狭部w2ないし遮断部の抵抗値上昇が加速される。そして幅狭部w2を覆う保護層370の温度がその融点を超えた時に当該保護層370が溶融し、幅狭部w2を中心とする領域の抵抗発熱体360の材料成分と、保護層370のガラス成分とが混ざって絶縁状態となり、通電が遮断される。
【0090】
すなわち、幅狭部w2によって、異常時の過熱により確実に断線する遮断部が構成される。これによって、何らかの異常による定着ベルト310の破損時でも加熱装置の安全性が担保される。なお、保護層370が溶融する前に、幅狭部w2ないし遮断部における局所的な温度上昇によって基材350の内部応力が大きくなり、基材350の応力集中による破損で断線して通電が遮断される可能性もある。また保護層370の溶融・絶縁と同時に、基材350の応力集中による破損・断線が生じる可能性もある。
【0091】
ここで前記定着ベルト310の「定常走行時」とは、定着ベルト310が幅方向にまったく寄り移動しない場合と、殆ど寄り移動しない場合の両方を含む。「殆ど寄り移動しない」とは、定着ベルト310の移動により抵抗発熱体360の端部過熱が生じず、後述する定着動作に実質的な問題が生じないことをいう。また定着ベルト310の「寄り移動時」とは、定着ベルト310が幅方向片側に寄り移動して抵抗発熱体360の端部過熱が生じたり、後述する定着動作に何らかの支障が生じる場合をいう。
【0092】
図3Bの抵抗発熱体360は、折返し部360lと、抵抗発熱体360の給電線接続端部に、図3Aの幅狭部w2に代えて薄厚部d2を形成したものである。当該薄厚部d2は、抵抗発熱体360の本体部の厚みd1の、例えば略半分程度の厚さで形成することができる。その他の構成は図3Aと同様である。
【0093】
図3Cの抵抗発熱体360は、基材351に金属材料を使用したものである。基材351の表裏には絶縁層352を配設し、底面と表面を保護層353、370で覆っている。この抵抗発熱体360は、図3Aと同様に、抵抗発熱体360の折返し部360lと、抵抗発熱体360の給電線接続端部に幅狭部w2を形成したものである。その他の構成は図3Aと同様である。
【0094】
図3Dの抵抗発熱体360も、基材351に金属材料を使用したものである。基材351の表裏に絶縁層352を配設し、底面と表面を保護層353、370で覆っている。そして抵抗発熱体360の折返し部360lと、抵抗発熱体360の給電線369cへの接続端部に、薄厚部d2が形成されている。当該薄厚部d2は、図3Bで説明したものと同様であり、抵抗発熱体360の本体部の厚みd1の、例えば略半分程度で形成することができる。その他の構成は図3Aと同様である。
【0095】
図3C図3Dのように基材351に金属材料を用いた抵抗発熱体360は、セラミック基材を使用したものと比較して、局所的な温度上昇による熱衝撃に強い。しかし、抵抗発熱体360の端部異常昇温時に当該端部の絶縁層352が溶融すると、抵抗発熱体360が短絡する可能性がある。
【0096】
そこで、保護層370のガラスを絶縁層352のガラスよりも低融点の材料で構成することにした。これにより、何らかの異常により定着ベルト310が破損し、抵抗発熱体360の端部で局所的な温度上昇が生じた時に、絶縁層352よりも先に保護層370が溶融する。
【0097】
当該溶融により、保護層370のガラス成分と、幅狭部w2ないし薄厚部d2の抵抗発熱体360の材料成分とが混ざることで、幅狭部w2ないし薄厚部d2の遮断部が絶縁状態となり通電が遮断される。これとは反対に、仮に絶縁層352の方の融点を保護層370の融点と同じか低く構成した場合、前述した局所的な温度上昇時に絶縁層352の溶融により抵抗発熱体360と基材351との間で絶縁性を確保することができない。
【0098】
(並列型の抵抗発熱体)
図4Aの抵抗発熱体360は並列形式で、複数(6個)の発熱パターン361~366を基材350の長手方向に並べて形成したものである。各発熱パターン361~366は給電線360a、360bによって並列接続されている。給電線360a、360bの端部は、基材350の両端部に配設された電極360c、360dに接続されている。
【0099】
電極360c、360dは発熱パターン361~366の両端に配置する他、発熱パターン361~366の片側に配置することも可能である。電極360c、360dを片側配置にすることで長手方向の省スペース化を図ることができる。
【0100】
各発熱パターン361~366の抵抗線は、線幅を細くして基材350の短手方向に蛇行状に形成されている。両端に形成された発熱パターン361、366の抵抗線は、部分拡大図に示すように、蛇行状の折返し部361a、366aにおいて、発熱パターン361、366の線幅w1の略半分程度の幅狭部w2を有する。この幅狭部w2は、折返し部361a、366aの領域内であれば、どの部分に形成してもよい。
【0101】
発熱パターン361~366と給電線360a、360bも、前述した直列の抵抗発熱体360(図3A図3D)と同様に、薄い保護層370で覆われている。この保護層370は例えば厚さ75μmの耐熱性ガラスで構成することができる。保護層370によって発熱パターン361~366と給電線360a、360bを絶縁・保護すると共に、定着ベルト310との摺動性を維持する。
【0102】
図4Bの抵抗発熱体360も、図4Aと同様に並列接続の発熱パターン361~366を有する。発熱パターン361、366の蛇行状の折返し部361a、366aに、図4Aの幅狭部w2に代えて薄厚部d2が形成されている。当該薄厚部d2は、発熱パターン361、366の抵抗線の厚みd1の、例えば略半分程度の厚みで形成することができる。その他の構成は図4Aと同様である。
【0103】
図4Cの抵抗発熱体360は、基材351に金属材料を使用したものである。基材351の表裏に絶縁層352を配設し、底面と表面を保護層353、370で覆っている。その他の構成は図4Aと同様である。すなわち、図4Aと同様に、両端の発熱パターンの361、366の蛇行状の折返し部361a、366aに、発熱パターン361、366の線幅の略半分程度の幅狭部w2が形成されている。
【0104】
図4Dの抵抗発熱体360も基材351に金属材料を使用したもので、基材351の表裏に絶縁層352を配設し、底面と表面を保護層353、370で覆っている。その他の構成は図4Bと同様である。すなわち、図4Bと同様に、発熱パターン361、366の蛇行状の折返し部361a、366aに薄厚部d2が形成されている。
【0105】
図4C図4Dの実施形態も基材351に金属材料を使用しているので、前述した理由により保護層370のガラスを絶縁層352のガラスより低融点の材料で構成している。これにより、何らかの異常により定着ベルト310が破損し、抵抗発熱体360の端部で局所的な温度上昇が生じた時に、絶縁層352よりも先に保護層370が溶融し、幅狭部w2ないし薄厚部d2の抵抗発熱体360の材料と混ざることで幅狭部w2ないし薄厚部d2の遮断部が絶縁状態となり通電が遮断される。すなわち、薄厚部d2によって、異常時の過熱により確実に断線する遮断部が構成される。
【0106】
(PTC素子による発熱パターン)
各発熱パターン361~366はPTC素子で構成することができる。PTC素子は、正の抵抗温度係数(TCR=Temperature Coefficient of Resistance)を有する材料で構成され、温度Tが上昇すると抵抗値が上昇(電流Iが低下してヒータ出力が低下)する特徴がある。
【0107】
抵抗温度係数は、例えば300PPM(parts per million)とすることができる。当該抵抗温度係数は、マシン出荷時に後述の電力制御部400のメモリ(不揮発性メモリ)に格納することができる。
【0108】
ここで、抵抗発熱体360の総抵抗値を例えば10Ωとすると、各発熱パターン361~366の抵抗値は60Ωと大きくなる。したがって、発熱パターン361~366の配線を密にしたり線幅を極細にしたりする必要があり、精密なスクリーン印刷が必要でなる。
【0109】
発熱パターン361~366を使用することで、小サイズ通紙などで非通紙領域のPTC素子の温度が上昇した際に、当該PTC素子の発熱量が低下し、温度上昇を抑制することができる。この特徴により、例えば発熱パターン361~366の全幅よりも狭い紙(例えば発熱パターン362~365の幅内)を印刷した場合、紙幅より外側の発熱パターン361、366は紙に熱を奪われないため温度が上昇する。するとそれら発熱パターン361、366の抵抗値が上昇する。
【0110】
発熱パターン361~366にかかる電圧は一定なので、用紙幅より外側の発熱パターン361、366の出力が相対的に低下し、端部温度上昇が抑制される。発熱パターン361~366を電気的に直列に接続した場合、連続印刷において紙幅よりも外側の抵抗発熱体の温度上昇を抑制するには、印刷スピードを低下させる以外に方法がない。発熱パターン361~366を電気的に並列接続することで、印刷スピードを維持したまま非通紙部温度上昇を抑制することができる。
【0111】
(鋭角の折返し部による遮断部の形成)
次に、図5A図5Bにより、抵抗発熱体360の折返し部360l、366aに鋭角に曲がった部分を形成した実施形態を説明する。図5A図5Bでは、最大通紙幅L3の抵抗線の線幅w1と、折返し部360lの抵抗線の線幅w4が等しくなるように形成されている(w1=w4)。
【0112】
また、最大通紙幅L3の抵抗発熱体360の線厚をd1とし、抵抗発熱体360の長手方向に対して傾斜した部分の線厚をd2とすると、d1=d2となるように構成されている。つまり、抵抗発熱体360は電流が流れる方向で断面積が一定で変わらない。
【0113】
折返し部360l、366aの抵抗線の線幅w4部分は、最大通紙幅L3に直角な方向(ベルト走行方向ないし通紙方向)に対して傾斜状に形成されている。当該傾斜角度はこの実施形態では図5A図5Bで約30°であるが、隣接する二列の抵抗発熱体360、366の間隔によって傾斜角度を変えてもよい。
【0114】
ここで、折返し部360l、366aを傾斜させないで図3A図3B図4A図4Bのように他の部分よりも幅狭又は薄厚に形成すると、当該折返し部において単位面積当たりの定着ベルト310に対する入熱量が増大する。そうすると定着ベルト310が過熱損傷する可能性が高まる。そこで、折返し部360lを前述のように傾斜させることで、定着ベルト310に対する熱移動量をベルト幅方向で分散させ、定着ベルト310の過熱損傷を防止するのが望ましい。
【0115】
一方、このように鋭角に曲がった折返し部360lを有する抵抗発熱体360の電極360c、360dにAC電圧を印加して電流を流した場合、以下の現象が生じることが知られている。すなわち、図5A(c)に示すように鋭角部分の領域A(外側を回る部分)の抵抗部分は、内側を回る部分に比べて相対的に抵抗が高くなる。
【0116】
つまり、領域Aには殆ど電流が流れないのである。このため、図5A(c)に図示するように、鋭角部分で実質的に電流が流れる抵抗発熱体360の幅w3は、w1、w4よりも小さくなる(w3<w1、w4)。図5Bの発熱パターン361、366でも同様のことがいえる。
【0117】
このように、鋭角部分では抵抗発熱体360の形成上は同じ断面積であっても、電流を流した場合には実質的な断面積の縮小により発熱密度が上昇する。この現象を利用して、最端部の鋭角部分に異常時の過熱により確実に断線する遮断部を形成することができる。
【0118】
(分割型の抵抗発熱体)
抵抗発熱体360は、前述した直列型や並列型の他に分割型で構成することもできる。図6の抵抗発熱体360は、複数の発熱体(図示例では2つ)、すなわち抵抗発熱体367と抵抗発熱体368を基材351の短手方向に並べて形成したものである。
【0119】
一方(図の上側)の抵抗発熱体367は、長手方向端部から中央部にかけて線幅が狭くなるように形成されている。線厚は長手方向で一定である。したがって、通電方向と直角方向の抵抗発熱体367の断面積の大小関係により、長手方向端部に対して長手方向中央部の発熱密度が相対的に高くなる。
【0120】
他方(図の下側)の抵抗発熱体368は、逆に長手方向端部から長手方向中央部にかけて線幅が広くなるように形成されている。厚みは長手方向で一定である。
【0121】
したがって、通電方向と直角方向の抵抗発熱体367の断面積の大小関係により、長手方向端部に対して長手方向中央部の発熱密度が相対的に低くなる。そして両方の抵抗発熱体367、368の通紙方向の発熱量は、互いに合計すると長手方向において一定になるように構成されている。これにより、後述する図7Aの(a)のようなフラットなベルト表面温度が得られる。
【0122】
抵抗発熱体367と抵抗発熱体368は、電極360i(コモン電極)、360j、360kから、それぞれ独立的に給電制御可能に構成されている。このように複数の抵抗発熱体367、368への電力量を独立に制御することで、多様なサイズの用紙が通紙されても非通紙部の温度上昇を抑制し、高い生産性を確保することができる。
【0123】
このような複数の抵抗発熱体367、368の最端部に、前述した遮断部が形成されている。すなわち、一方の抵抗発熱体367の両端部に、電流が流れる方向に対して垂直方向の幅(通紙方向幅)が局所的に狭くなる幅狭部w2が、最大通紙幅L3の長手方向外側に形成されている。最大通紙幅L3の最端部の線幅をw1とすると、両端部の幅狭部w2は線幅w1よりも小さい(w2<w1)。
【0124】
これにより、局所的に抵抗発熱体367の幅が狭い遮断部ないし幅狭部w2では、断面積が小さくなることで発熱密度が上昇する。さらに、この幅狭部w2は他方の抵抗発熱体368の両端部よりもやや外側位置に配置されている。これにより、何らかの異常で定着ベルト310端部に破損が生じ、定着ベルト310の寄り移動で抵抗発熱体367の長手方向端部のみが剥き出しになると、幅狭部w2が異常昇温する。
【0125】
この結果、幅狭部w2の抵抗値上昇が加速され、異常昇温が幅狭部w2を覆う保護層370のガラスの融点を超えた時、前述したように抵抗発熱体367の両端が絶縁状態となり通電が遮断される。この時、抵抗発熱体367の断線(絶縁)を検知することで、他方の抵抗発熱体368への通電も遮断される。従って、何らかの異常による定着ベルト310の破損時でも抵抗発熱体360の安全性を確保することができる。
【0126】
(金属基材対応)
図6の抵抗発熱体360の基材351に金属材料を用いる場合は、基材351上に絶縁層352を設け、その上に抵抗発熱体367、368、給電線360e~360h、電極360i~360kを形成する。これにより金属基材351との絶縁性を確保する。また、抵抗発熱体367、368と給電線360e~360hの上に絶縁性の保護層370を設け、定着ベルト310との摺動性および絶縁性を確保する。
【0127】
金属基材351を用いた抵抗発熱体360の場合、セラミック基材と比較して局所的な温度上昇による熱衝撃に強い。このため、図3C図3D図4C図4Dで前述したように、保護層370のガラスを絶縁層352のガラスより低融点の材料で構成することで通電を遮断する。これにより、何らかの異常により定着ベルト310が破損し、抵抗発熱体367の端部で局所的な温度上昇が生じた時に、絶縁層352よりも先に保護層370が溶融する。
【0128】
当該溶融により、保護層370のガラス成分と、幅狭部w2の抵抗発熱体367の材料成分とが混ざることで、幅狭部w2による遮断部が絶縁状態となり通電が遮断される。これとは反対に、仮に絶縁層352の方の融点を保護層370の融点と同じか低く構成した場合、前述した局所的な温度上昇時に絶縁層352の溶融により抵抗発熱体360と基材351との間で絶縁性を確保することができない。
【0129】
(抵抗発熱体と定着ベルトの表面温度分布)
定着ベルト310の表面温度分布は、図7A(a)に示すように、最大通紙幅L3の全幅にわたって一定になるように設定されている。抵抗発熱体360の長手方向幅L2は、最大通紙幅L3と等しいかそれよりも大きく、定着ベルトの幅L1はL2よりもさらに大きい(L3≦L2<L1)。
【0130】
これにより、抵抗発熱体360長手方向幅L2全面で、保護層370を介して定着ベルト310の温度を上昇させ、定着ニップSNに搬送される最大通紙幅の用紙P上の未定着画像を加熱して定着することができる。
【0131】
定着ベルト310の両端には、長手方向の移動を規制するため一般にフランジが配設されている。そして定着ベルト310と当該フランジとの間に、定着ベルト310の摩擦低減のために僅かなクリアランスが設けられている。
【0132】
したがって、定着ベルト幅L1と発熱体幅L2を同じにすると、定着ベルト310がどちらか一方のフランジ端部に突き当たった時、反対側では抵抗発熱体360が定着ベルト310と接触せずに剥き出しになる。そうすると抵抗発熱体360が端部過熱するから、これを防ぐように、前記クリアランス分を考慮して、定着ベルト幅L1>発熱体幅L2の寸法関係に設定している。
【0133】
また、通紙される用紙Pは定着装置12に搬送される過程において、スキュー(斜行)により狙いの位置に対して長手方向に移動する場合がある。また、抵抗発熱体360の長手方向端部は、図7Aのように最端部で外側に熱が逃げ易く、定着ベルト310の表面温度が低下する傾向がある。
【0134】
これらの現象による長手方向端部の画像不良を対策するため、発熱体幅L2≧最大通紙幅L3の関係で構成している。本実施形態では、それぞれL1(236mm)>L2(222mm)>L3(216mm)とした。
【0135】
このような長手方向の関係で構成した場合、通常使用時には抵抗発熱体360が定着ベルト310と接触せずに剥き出しになることは無い。しかしながら、何らかの異常で定着ベルト310端部に亀裂や丸まりなどの破損が発生した場合、想定以上に定着ベルト310が長手方向に移動することで抵抗発熱体360の長手方向端部が定着ベルト310と接触せずに剥き出しになることがある。
【0136】
図7A(b)は定着ベルト310の幅L1が右側に寄り移動したときの定着ベルト310と抵抗発熱体360の温度分布を示している。この寄り移動の時、低熱容量の抵抗発熱体360は対向する加圧ローラ320とも安定して接触できず、抵抗発熱体360は剥き出しの部分(図7A(b)の左端部分)で異常昇温ΔTし、ヒータフォルダ53や加圧ローラ320表層の溶融/発煙につながる。
【0137】
そこで本実施形態では、前述のように抵抗発熱体360の両端部に遮断部を形成した。抵抗発熱体360の表面温度は、長手方向両端の遮断部における発熱量が前述したように局部的に大きくされているため、定着ベルト310の定常走行時でも、長手方向中央部に比べて両端部が高温になっている。
【0138】
この高温の両端部は、定着ベルト310の定常走行時は定着ベルト310に常に接触しているので、図7A(a)の安定端部温度Tが維持される。この状態では保護層370のガラスが溶融せず、遮断部の通電状態も維持される。
【0139】
しかし、定着ベルト310の端部の亀裂や丸まりなどの破損で定着ベルト310が幅方向に寄り移動すると、図7A(b)のように、抵抗発熱体360の露出した側(図7A(b)の左端部分)の遮断部の温度が急増する(異常昇温ΔT)。この結果、保護層370のガラス成分が溶融して遮断部の材料成分と反応して遮断部が絶縁体となる。
【0140】
保護層370のガラスが溶融して絶縁体になるように、当該保護層370のガラスは、Pb系及び/又はBi系の非晶質ガラスとするのがよい。Pb系のガラスとしてはPbO-B系ガラス等を使用可能であり、またBi系のガラスとしてはBi-ZnO-B系ガラスを使用可能である。
【0141】
このほか、Ag系の非晶質ガラス(例えばAgO-P系)、P-SnO-ZnO系ガラス、ZnO-B系ガラス等も使用可能である。ガラスは結晶化ガラスでも非晶質ガラスでもよい。
【0142】
電気ヒータの発熱パターン自体が高温部分で自己破壊する技術は、例えば特許文献3~5の発明のように複数知られている。したがって、これら公知技術を適宜使用して遮断部を構成してもよい。
【0143】
(抵抗発熱体の表面温度の測定方法)
図7Aに示す抵抗発熱体360の表面温度の測定は、例えば図7Bに示す方法で行うことができる。すなわち、支持梁500に対して加熱装置の両端を吊り部材600を介して支持し、抵抗発熱体360の正面にサーモビューワ(例えばフリアーシステムズ社のFLIR T620)を配置する。そして電極360c、360dに交流電源又は直流電源を接続して抵抗発熱体360を通電・加熱する。
【0144】
AC100Vで1000Wの発熱量を有するヒータの場合、直流電源としてはDC30Vを使用することができる。図7Aの上側の曲線がサーモビューワで測定した抵抗発熱体360の温度である。一方、図7Aの下側に示す定着ベルト310の温度曲線は、後述する図8A図8Dに示す温度センサによって測定することができる。
【0145】
(発熱密度の大小の測定方法)
抵抗発熱体360の発熱密度[W/mm]と温度[℃]の関係は、次式(1)で表現することができる。
温度=(発熱密度/熱伝達率)+部品周囲の空気温度・・・・(1)
したがって、抵抗発熱体360の熱伝達率及びヒータ周囲の空気温度は、ほぼ一定で測定することが可能である。発熱密度[W/mm]の大小は、通電時のヒータ温度[℃]の大小で測定することができる。
【0146】
DC30Vの通電をした時のヒータ表面の温度分布をサーモビューワ(例えばフリアーシステムズ社のFLIR T620)で測定し、通電後一定時間経過時(例えば10sec後)の抵抗発熱体360の最端部の温度と、最大通紙幅の最端部の温度を比較することで、発熱密度[W/mm]の大小を間接的に計測することができる。
【0147】
(電力供給回路)
図9は、加熱装置に電力を供給するための電力供給回路を示している。加熱装置の抵抗発熱体360は、ここでは図4A図4DのPTC素子による発熱パターン361~366を使用している。加熱装置の下方に、抵抗発熱体360ないし発熱パターン361~366に電力を供給するための電力供給回路を示している。
【0148】
この電力供給回路は、電力制御手段としての電力制御部400、AC電圧100Vの交流電源410、トライアック420、電流検出手段430、ヒータリレー440、電圧検知手段450、コントローラ部470で構成されている。交流電源410と、電流検出手段430のカレントトランスCTと、トライアック420と、ヒータリレー440が、電極360c、360dの間に直列に配置されている。
【0149】
(温度センサ)
本実施形態の加熱装置は、抵抗発熱体360の温度を検知する温度検知手段として、図9のように第1温度センサTH1と第2温度センサTH2を有する。温度センサTH1、TH2は例えばサーミスタで構成することができる。
【0150】
第1温度センサTH1と第2温度センサTH2は、図2Aのように、基材350の裏側に対してバネ380により圧着する形で配設されている。第1温度センサTH1は温度制御用で、第2温度センサTH2が安全補償用である。2つの温度センサTH1、TH2は、ともに熱時定数が1秒未満の接触式のサーミスタで構成することができる。
【0151】
温度制御用の第1温度センサTH1は図9に示すように、最小通紙幅内である長手方向中央領域の左端から4番目の発熱パターン364の加熱領域に配置されている。安全補償用の第2温度センサTH2は、長手方向最端部である発熱パターン366(左端から6番目)(または発熱パターン361(左端から1番目))の加熱領域に配置されている。
【0152】
2つの温度センサTH1、TH2は、共に、発熱量低下が発生する抵抗発熱体間の隙間を回避した発熱パターン364、366の領域内に配置されている。これにより温度制御性が良くなり、また一部の抵抗発熱体で断線が生じた場合の断線検知もしやすくなる。
【0153】
なお、第1温度センサTH1は発熱パターン362~365のいずれかの加熱領域に配置してもよい。また第2温度センサTH2は、長手方向端部領域であれば、左端から2番目の発熱パターン362または5番目の発熱パターン365の加熱領域に配置することも可能であり、必ずしも長手方向最端部に配置する必要はない。
【0154】
第1温度センサTH1と第2温度センサTH2で検知された温度T、Tは、電力制御部400に入力される。電力制御部400は、第1温度センサTH1から得られた温度Tに基いて、各発熱パターン361~366が所定目標温度になるように、トライアック420により電極360c、360dに対する供給電流をデューティ制御する。
【0155】
具体的には、第1温度センサTH1の現在温度Tと目標温度の温度差に応じたデューティ比で、トライアック420が抵抗発熱体360に流れる電流をデューティ制御する。デューティ比0%で電流がゼロになり、デューティ比100%で電流が最大になる。
【0156】
(定着動作)
図2A図2Eの定着装置の代表としての図2Aを参照して定着動作を説明する。図2Aにおいて、定着ニップSNに向けて矢印方向から用紙Pを通紙すると、定着ベルト310と加圧ローラ320との間で用紙Pが加熱されてトナー像が用紙Pに定着される。この際、定着ベルト310は抵抗発熱体360の保護層370と摺動しつつ抵抗発熱体360からの熱で加熱される。
【0157】
定着ベルト310を所定温度にする抵抗発熱体360の温度制御において、図8Aのように第1温度センサTH1のみ配置した場合、第1温度センサTH1を配置している発熱パターン364のみが部分的に断線して給電が遮断すると、当該発熱パターン364の温度が上昇しない。このため、当該発熱パターン364を温度制御により一定温度にしようとして、他の正常な発熱パターン361~363、365~366に必要以上の電流供給が続いて異常高温が発生する。
【0158】
図8B図8Dは、異常高温を防止するために考えられる温度センサの配設パターンを示している。図8Aのように発熱パターン364に対応する位置にのみ温度センサTH1を配設すると前述した不都合があるので、図8B図8Dのように両端部にも温度センサTH2を配設する。
【0159】
図8Bは基材の350の裏面の中央部と両端部に温度センサTH1、TH2を配設したものである。図8Cは基材の350の裏面の中央部に温度センサTH1を配設し、定着ベルト310の両端内周面に温度センサTH2を接触させている。
【0160】
図8Dは両端の温度センサTH2を加圧ローラ320の両端部外周面に接触させている。このように、定着ベルト310や加圧ローラ320を介して間接的に発熱パターン361、364の温度を検知することが可能である。しかしながら、図8B図8Dのように3つの温度センサTH1、TH2を配設するとコストアップになる。
【0161】
そこで、一端部の発熱パターン366の加熱領域にのみ第2温度センサTH2を配置し、この第2温度センサTH2で発熱パターン366の温度Tを検知する。そして温度Tが前述した異常高温になると、電極360c、360dに対する供給電流を遮断するように電力制御部400がトライアック420を制御する。また、第2温度センサTH2自体が断線により所定温度T以下(T<T)になった場合も、電極360c、360dに対する供給電流を遮断するように電力制御部400でトライアック420を制御する。
【0162】
(加熱装置の制御フローチャート)
図10は、第1温度センサTH1と第2温度センサTH2による加熱装置の前述の制御動作を示すフローチャートである。図10のステップS21において、プリンタ100に対して印刷ジョブの実行が指示される。
【0163】
すると、ステップS22において、電力制御部400により交流電源410から抵抗発熱体360の各発熱パターン361~366への給電が開始される。そしてステップS23において、第1温度センサTH1により抵抗発熱体360の中央領域に位置する発熱パターン364の温度Tが検知される。
【0164】
次に、ステップS24でトライアック420による抵抗発熱体360の温調制御が開始される。またステップS25で第2温度センサTH2によって発熱パターン366の温度Tが検知される。
【0165】
そしてステップS26で温度T≧T(T:所定温度)か否かが判定され、T<Tであれば異常低温発生(断線発生)として、ステップS27で抵抗発熱体360への給電が実質的に遮断されるように、電力制御部400によりトライアック420が制御される。そしてステップS28で、プリンタ100の操作パネルにエラー表示が示される。なお、第2温度センサTH2の温度Tが異常高温になった場合にも、同様に抵抗発熱体360への給電が遮断(OFF)されるようにトライアック420を制御してもよい。
【0166】
また、T≧Tであれば異常低温発生なしとして、ステップS29で印字動作が開始される。このように、第2温度センサTH2を使用した図10のフローチャートで電力制御部400を作動することで、前述した加熱装置の遮断部と相まって、定着装置300の安全性がより高まる。
【0167】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば前記遮断部は、比抵抗の値がヒータの他の部分よりも大きい材料を使用することで構成してもよい。
【0168】
遮断部の比抵抗を大きくすると、断面積を小さくしたのと同様に発熱量が増大するから、定着ベルト310の寄り移動時にヒータの端部温度が速やかに上昇して断線する。すなわち、比抵抗を大きくすることで、異常時の過熱により確実に断線する遮断部を形成することができる。
【0169】
また前記遮断部は、電気ヒータの長手方向一端部にのみ形成しても、最低限の安全性は担保可能である。また本発明に係る加熱装置は、画像形成装置の定着装置に使用する他、ベルトを使用した乾燥装置などにも使用可能である。
【符号の説明】
【0170】
1K,1Y,1M,1C:プロセスユニット 2K,2Y,2M,2C:像担持体
3K,3Y,3M,3C:ドラムクリーニング装置 4K,4Y,4M,4C:帯電装置
5K,5Y,5M,5C:現像装置(作像部) 6K,6Y,6M,6C:トナーボトル
7:露光器 7a:ミラー
8:転写カバー 10:粉体収容器
15:転写装置 16:中間転写ベルト
17:従動ローラ 18:駆動ローラ
19K,19Y,19M,19C:一次転写ローラ 20:二次転写ローラ
21:ベルトクリーニング装置 31:レジストセンサ
32:給紙路 33:転写後搬送路
35:定着後搬送路 36:排紙路
37:排紙ローラ対 41:反転搬送路
42:切り替え部材 42a:揺動軸
43:反転搬送ローラ対 44:排紙トレイ
45、60:給紙ローラ 46:手差しトレイ
53:ヒータフォルダ 100:画像形成装置
200:用紙給送装置 210:ローラ対
220:給送ローラ 230:分離ローラ
240:搬送ローラ 250:レジストローラ対
300:定着装置 310:定着ベルト
320:加圧ローラ 321:芯金
322:弾性層 323:離型層
330:ステー 331:補助ステー
332:ニップ形成部材 333:ステー
334:加圧ベルト 340:フォルダ
350:基材 350a:溝部
351:基材 352:絶縁層
353:保護層 360:抵抗発熱体
360a、360b:給電線 360c、360d:電極
360i、360j、360k:電極 360l、361a、366a:折返し部
360e~360h:給電線 360i~360k:電極
361~366:発熱パターン 367、368:抵抗発熱体
369a、369c:給電線 370:保護層
380:バネ 390:押圧ローラ
400:電力制御部 410:交流電源
420:トライアック 430:電流検出手段
440:ヒータリレー 450:電圧検知手段
470:コントローラ部 500:支持梁
600:吊り部材 d1:線厚
d2:薄厚部 w1:線幅
w2:幅狭部 CT:カレントトランス
HN:加熱ニップ SN:定着ニップ
L:レーザ光 L1:定着ベルト幅
L2:発熱体幅 L3:最大通紙幅
N:転写ニップ L:レーザ光
P:用紙 TM:転写手段
TH1:第1温度センサ TH2:第2温度センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0171】
【文献】特開2015-194713号公報
【文献】特開2016-18127号公報
【文献】特開平06-176850公報
【文献】特開平5-205851公報
【文献】特許第4480918号公報
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図9
図10