(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
G03G15/20 510
(21)【出願番号】P 2018223430
(22)【出願日】2018-11-29
【審査請求日】2021-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】藤本 一平
(72)【発明者】
【氏名】島田 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】山口 嘉紀
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 隆
(72)【発明者】
【氏名】関 貴之
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-217209(JP,A)
【文献】特開2017-072711(JP,A)
【文献】特開2017-116921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な定着部材と、
前記定着部材の外周面に接触する加圧部材と、
前記定着部材を加熱する熱源と、
前記定着部材を介して前記加圧部材に押し当てられ、前記定着部材と前記加圧部材との間に定着ニップを形成するニップ形成面を有するニップ形成ユニットと、
前記定着部材の長手方向における端部に配置され、前記定着部材の内面を支持するガイド面を有するフランジと、を備え、
前記ニップ形成面は、第1領域と、前記長手方向において前記ニップ形成面の端部と前記第1領域との間に位置し、前記定着ニップを通過する記録材の搬送方向における幅が前記第1領域よりも小さい第2領域と、を有し、
前記長手方向において、前記加圧部材の端部は、前記定着部材の内側に挿入された前記ガイド面の端部と前記定着部材の端部との間に位置し、
前記長手方向において、前記ガイド面の端部は、前記第1領域および前記第2領域の境界と前記加圧部材の端部との間に位置
し、
前記ニップ形成面は、前記定着ニップよりも前記搬送方向の上流側に位置する第1角部と、前記定着ニップよりも前記搬送方向の下流側に位置する第2角部と、を有し、
前記第1角部及び前記第2角部の少なくとも一方は、前記第1領域よりも前記第2領域において曲率が小さく前記定着部材の内径方向へ変位することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記ニップ形成面の前記長手方向における端部において、前記第1角部および前記第2角部の少なくとも一方が、前記定着部材と離間していることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記第1領域において、前記第2角部は、前記定着ニップよりも前記加圧部材側に突出していることを特徴とする請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記ガイド面は、前記長手方向と交差する断面において、前記ニップ形成ユニットが配置された部分が開口する略円弧形状であり、
前記第1領域において、前記ニップ形成面は、少なくとも一部が前記ガイド面を含む仮想円柱面の外側に突出し、
前記第2領域における所定位置から前記ニップ形成面の端部までの範囲において、前記ニップ形成面は、前記仮想円柱面の内側に位置することを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
前記第1領域と前記第2領域の境界は、前記長手方向において、当該画像形成装置により画像形成が可能な最大幅の記録材の端部が前記定着ニップを通過する位置と、前記ガイド面の端部との間に位置することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置において、用紙等の記録材に転写されたトナー像は、定着装置により当該記録材に定着される。定着装置としては、定着ベルト等の定着部材と、定着部材の両端部をそれぞれ支持するガイド部を有した一対のフランジと、定着部材の外周面に接触する加圧ローラ等の加圧部材と、定着部材を加圧部材に押し当てることにより定着ニップを形成するニップ形成ユニットと、を備えるものが知られている。
【0003】
定着装置においては、記録材への定着性能に加え、定着部材からの記録材の良好な剥離性能が求められる。例えば特許文献1には、定着ニップにおける記録材の搬送方向の上流側と下流側でニップ圧力を変えることで、剥離性能を向上させる構成が開示されている。また、特許文献2には、同じく剥離性能を向上させるべく、当該文献の
図4に示されたように搬送方向の下流側のニップ形成面を突出させる構成が開示されている。
【0004】
ニップ形成ユニットの長手方向端部において、ニップ形成ユニットの角部が定着部材と接触すると、定着部材に高い負荷が加わる。上記特許文献2には、このような負荷に起因した定着部材の破損を抑制すべく、当該文献の
図9に示されたようにニップ形成面の長手方向端部において角部を除去する構成も開示されている。
【0005】
特許文献3,4には、同じく定着部材の破損抑制に関する構成が開示されている。特許文献3においては、定着部材の端部に設けられた保護部材(従動リング)との接触に起因した定着部材の破損を抑制すべく、定着部材の端部が内周側に傾いて保護部材に接触するように保護部材の面を傾斜させている。特許文献4においては、定着部材に長手方向への寄りが発生した場合の定着部材の破損を抑制すべく、定着部材とフランジとの位置関係が規定されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、定着部材は、加圧部材よりも長手方向における幅が大きい。そのため、定着部材の端部は、加圧部材から突出している。この定着部材の端部は、フランジのガイド部により支持されるので、例えば長手方向と直交する断面で見たときに当該ガイド部に近い形状となる。一方で、ニップ形成ユニットおよび加圧部材を含む断面においては、定着部材がニップ形成面の形状に応じて変形する。この形状変化が短距離で生じると、定着部材に加わる負荷が大きくなり、定着部材が破損し得る。
【0007】
そこで、本発明は、定着部材の長手方向における形状変化に起因した負荷を低減することが可能な定着装置および当該定着装置を備える画像形成装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様における定着装置は、回転可能な定着部材と、前記定着部材の外周面に接触する加圧部材と、前記定着部材を加熱する熱源と、前記定着部材を介して前記加圧部材に押し当てられ、前記定着部材と前記加圧部材との間に定着ニップを形成するニップ形成面を有するニップ形成ユニットと、前記定着部材の長手方向における端部に配置され、前記定着部材の内面を支持するガイド面を有するフランジと、を備える。前記ニップ形成面は、第1領域と、前記長手方向において前記ニップ形成面の端部と前記第1領域との間に位置し、前記定着ニップを通過する記録材の搬送方向における幅が前記第1領域よりも小さい第2領域と、を有する。前記長手方向において、前記加圧部材の端部は、前記定着部材の内側に挿入された前記ガイド面の端部と前記定着部材の端部との間に位置する。さらに、前記長手方向において、前記ガイド面の端部は、前記第1領域および前記第2領域の境界と前記加圧部材の端部との間に位置する。さらに、前記ニップ形成面は、前記定着ニップよりも前記搬送方向の上流側に位置する第1角部と、前記定着ニップよりも前記搬送方向の下流側に位置する第2角部と、を有し、前記第1角部及び前記第2角部の少なくとも一方は、前記第1領域よりも前記第2領域において曲率が小さく前記定着部材の内径方向へ変位する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、定着部材の長手方向における形状変化に起因した負荷を低減することが可能な定着装置および当該定着装置を備える画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る画像形成装置の概略的な構成を示す図。
【
図2】一実施形態に係る定着装置の概略的な平面図。
【
図3】
図2におけるF3-F3線に沿う定着装置の概略的な断面図。
【
図4】一実施形態に係るニップ形成ユニットの概略的な分解斜視図。
【
図5】一実施形態に係るフランジの構成の一例を示す斜視図。
【
図6】一実施形態に係るフランジのガイド面を示す概略的な斜視図。
【
図7】比較例に係る定着装置のフランジ近傍の概略的な断面図。
【
図8】
図7におけるF8a-F8a線、F8b-F8b線、F8c-F8c線に沿う定着装置の概略的な断面図。
【
図9】一実施形態に係る定着装置が備える補助部材の概略的な斜視図、側面図および正面図。
【
図10】一実施形態に係る定着装置のフランジ近傍の概略的な断面図。
【
図11】
図10におけるF11a-F11a線、F11b-F11b線、F11c-F11c線に沿う定着装置の概略的な断面図。
【
図12】一変形例に係る補助部材の概略的な斜視図、底面図および正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態につき、図面を参照しながら説明する。本実施形態においては、画像形成装置の一例として、タンデム方式のカラープリンタを開示する。また、定着装置の一例として、当該カラープリンタが備える定着装置を開示する。ただし、本実施形態において開示する構成は、例えば4サイクル方式のカラープリンタ、モノクロプリンタ、複写機、あるいはファクシミリ装置などの他種の画像形成装置や、これら画像形成装置が備える定着装置にも適用できる。
【0012】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置1の概略的な構成を示す図である。画像形成装置1は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびブラック(K)の各色に対応した4つの作像装置2(2Y,2C,2M,2K)と、各作像装置2に補給されるトナーを収容する4つのトナーボトル3(3Y,3C,3M,3K)とを備えている。本実施形態の参照符号において、数字に付された添字Y,C,M,Kは、それぞれイエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色に関連する部材であることを示している。各色の部材を特に区別しないときには、これらの添字を省略することがある。
【0013】
各作像装置2は、像担持体としての感光体4と、感光体4の表面を帯電させる帯電装置5と、感光体4にトナーを供給する現像装置6と、感光体4をクリーニングするクリーニング装置7とを備えている。
図1においては、代表して作像装置2Kが備える各要素に符号を付し、他の作像装置2Y,2C,2Mが備える要素の符号を省略している。
【0014】
画像形成装置1は、書込装置8と、中間転写ベルト9と、各作像装置2に対して設けられた一次転写ローラ10とをさらに備えている。書込装置8は、例えば光源としてのレーザ、各種レンズおよびミラー等を備え、感光体4上に静電潜像を書き込む。この静電潜像に現像装置6がトナーを供給し、トナー像が形成される。各一次転写ローラ10は、各作像装置2の感光体4とともに一次転写ニップを形成し、各感光体4に形成されたトナー像をそれぞれ中間転写ベルト9に転写する。
【0015】
用紙Sの搬送に関わる要素として、画像形成装置1は、搬送路11と、給紙装置12と、二次転写ローラ13と、レジストローラ対14と、排出ローラ15と、排紙トレイ16と、定着装置100とを備えている。用紙Sは、本実施形態における記録材の一例である。
【0016】
給紙装置12は、給紙カセット12aと、給紙ローラ12bとを備えている。給紙カセット12aは、積層された用紙Sを収容する。給紙ローラ12bは、給紙カセット12aの用紙Sを搬送路11に供給する。
図1の例においては、給紙装置12を1つのみ示している。しかしながら、画像形成装置1は、複数の給紙装置12を備えてもよい。この場合において、各給紙装置12は、異なるサイズの用紙Sを収容可能であってもよい。
【0017】
二次転写ローラ13は、中間転写ベルト9との間に二次転写ニップを形成し、当該ニップを通過する用紙Sに対して中間転写ベルト9上のトナー像を転写する。レジストローラ対14は、二次転写ローラ13よりも搬送路11における用紙Sの搬送方向上流側に設けられ、二次転写ニップに搬送される用紙Sを一旦待機させる。定着装置100は、用紙Sに転写されたトナー像を用紙Sに定着させる。排出ローラ15は、用紙Sの搬送路の終端に配置されている。
【0018】
続いて、画像形成装置1による一連の動作について説明する。用紙Sに形成する画像を表す画像情報は、例えば外部の電子機器から画像形成装置1に送信される。この画像情報に基づく画像形成に際して、各作像装置2の感光体4が回転するとともに帯電装置5によって一様に帯電される。書込装置8が上記画像情報に基づいて感光体4に静電潜像を形成し、現像装置6がこの静電潜像を現像する。このような動作を各色(Y,C,M,K)について実行することにより、可視像としてのトナー像が中間転写ベルト9に形成される。
【0019】
給紙装置12においては、給紙ローラ12bが給紙カセット12aの用紙Sを搬送路11に供給する。用紙Sは、レジストローラ対14のニップに先端が当接した状態で待機する。そして、中間転写ベルト9上のトナー像に用紙Sを重ね合わせるタイミングでレジストローラ対14が回転を開始することにより、用紙Sが二次転写ニップに送り出される。二次転写ニップでトナー像が転写された用紙Sは、定着装置100に送られる。
【0020】
定着装置100は、用紙Sを加熱および加圧してトナー像を用紙Sに定着させる。定着装置100を通過した用紙Sは、排出ローラ15によって排紙トレイ16に排紙される。各作像装置2において、一次転写ニップを通過した感光体4の表面に残留したトナーは、クリーニング装置7によって感光体4から除去および回収される。
【0021】
図1に例示した画像形成装置1は、感光体4上のトナー像を、中間転写ベルト9を介して用紙Sに転写する中間転写方式の構成を備えている。画像形成装置1は、感光体4から用紙Sにトナー像を直接転写する直接方式など、他種の方式に対応する構成を備えてもよい。
【0022】
次に、定着装置100の詳細について説明する。
図2は、本実施形態に係る定着装置100の概略的な平面図である。定着装置100は、第1フランジ20Aと、第2フランジ20Bと、無端状の定着ベルト30と、加圧ローラ40とを備えている。定着ベルト30は、加圧ローラ40に押し当てられている。これにより、定着ベルト30と加圧ローラ40の間に、上述の用紙Sが通過する定着ニップNが形成されている。本実施形態において、定着ベルト30は定着部材の一例であり、加圧ローラ40は加圧部材の一例である。
【0023】
定着ベルト30および加圧ローラ40は、定着ニップNを通過する用紙Sの幅方向に長尺な形状を有している。本実施形態においては、定着ベルト30および加圧ローラ40の長手方向を第1方向Xと定義する。さらに、定着ベルト30と加圧ローラ40が並ぶ方向を第2方向Yと定義し、定着ニップNを通過する用紙Sの搬送方向を第3方向Zと定義する。本実施形態において、第1方向X、第2方向Yおよび第3方向Zは互いに垂直に交わるが、他の角度で交わってもよい。
【0024】
定着ベルト30の第1方向Xにおける両端部は、それぞれフランジ20A,20Bによって摺動可能に支持されている。加圧ローラ40は、中空の芯金41によって回転可能に支持されている。以下、第1フランジ20Aによって支持される定着ベルト30の端部を第1端部30aと呼び、第2フランジ20Bによって支持される定着ベルト30の端部を第2端部30bと呼ぶ。また、第1フランジ20A側の加圧ローラ40の端部を第1端部40aと呼び、第2フランジ20B側の加圧ローラ40の端部を第2端部40bと呼ぶ。
【0025】
図3は、
図2におけるF3-F3線に沿う定着装置100の概略的な断面図である。定着装置100は、定着ベルト30の内側において、ニップ形成ユニット50と、第1反射部材61と、第2反射部材62と、第1ヒータ71と、第2ヒータ72とを備えている。
【0026】
ニップ形成ユニット50は、加圧パッド51と、熱移動補助部材52(以下、単に補助部材52と呼ぶ)と、ステー53とを備えている。加圧パッド51は、定着ベルト30を介して加圧ローラ40と対向している。補助部材52は、加圧パッド51と定着ベルト30の間に配置され、加圧パッド51に取り付けられている。
図3の例においては、加圧ローラ40と対向する補助部材52の面が平坦であるが、この面は後述する
図9のように平坦でなくてもよい。
【0027】
ステー53は、
図2に示したフランジ20A,20Bにより支持されている。
図3の例において、ステー53は、第1部材54と、第2部材55とを含む。第1部材54は、第2方向Yに延びる水平部分54aと、第3方向Zに延びる鉛直部分54bとを有している。同様に、第2部材55は、第2方向Yに延びる水平部分55aと、第3方向Zに延びる鉛直部分55bとを有している。第1部材54と第2部材55は、水平部分54a,55aを接触させた状態で互いに固定されている。加圧パッド51および補助部材52に対する加圧ローラ40からの押圧力は、ステー53によって受け止められる。
【0028】
第1ヒータ71は、ステー53に対して図中上方(第3方向Z)に配置されている。第2ヒータ72は、ステー53に対して図中下方(第3方向Zの反対方向)に配置されている。各ヒータ71,72は、定着ベルト30を加熱するための輻射熱を発する発熱体の一例であり、例えばハロゲンヒータを用いることができる。各ヒータ71,72に代えて、あるいは各ヒータ71,72とともに、他種の発熱体を定着装置100に配置してもよい。
【0029】
第1反射部材61は、第1部材54と、第1ヒータ71との間に配置されている。第2反射部材62は、第2部材55と、第2ヒータ72との間に配置されている。第1反射部材61は、第1ヒータ71が発する輻射熱を定着ベルト30の内周面に向けて反射する。同様に、第2反射部材62は、第2ヒータ72が発する輻射熱を定着ベルト30の内周面に向けて反射する。各反射部材61,62を設けることで、各ヒータ71,72の輻射熱によるステー53の加熱や、互いのヒータ71,72同士の加熱を抑制し、効率的に定着ベルト30を加熱することをできる。各反射部材61,62を設ける代わりに、ステー53の表面に断熱または鏡面処理を施してもよい。
【0030】
図3の例においては、定着ベルト30の外側に第1センサ81および第2センサ82が配置されている。各センサ81,82は、例えば非接触で定着ベルト30の温度を検出する。各センサ81,82により検出される温度に基づいて各ヒータ71,72の点灯率を制御することにより、定着ベルト30を所望の温度に制御することができる。
【0031】
加圧ローラ40は、上述の芯金41の外周面に設けられた弾性層42を備えている。加圧ローラ40は、画像形成装置1が備えるモータ等の駆動源から伝達される駆動力により回転する。また、加圧ローラ40は、スプリング等の付勢部材により、定着ベルト30を介して補助部材52に押し付けられている。これにより、定着ベルト30に接触する弾性層42が押し潰されるように変形し、定着ベルト30と弾性層42の間に所定幅の定着ニップNが形成される。
【0032】
加圧ローラ40の回転力は、定着ニップNにおいて定着ベルト30に伝達される。これにより、定着ベルト30は、加圧ローラ40に従動回転する。用紙Sは、第3方向Zに搬送されて、定着ニップNを通過する。用紙S上のトナー像は、定着ニップNにおいて加熱および加圧され、用紙Sに定着される。
【0033】
補助部材52は、第1方向Xにおける定着ニップNの温度分布を均一化する役割を担う。したがって、補助部材52は、例えば銅、アルミニウムまたは銀等の熱伝導率に優れた材料で形成することが好ましい。
【0034】
定着ベルト30は、例えばニッケルやステンレス鋼等の金属材料や、ポリイミド等の樹脂材料で形成することができる。定着ベルト30の外周面に、例えばPFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合)やPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等で形成された離型層が設けられてもよい。この場合において、定着ベルト30の基材と離型層の間にシリコンゴム等で形成された弾性層が設けられてもよい。弾性層を設けない場合には、熱容量が小さくなり、定着性が向上するものの、トナー像の定着時に定着ベルト30の表面の微細凹凸が画像に転写されて画像に光沢むらが生じ得る。一方、弾性層を設ける場合には、その弾性により微細凹凸が吸収されるので、光沢むらを抑制することができる。一例として、弾性層は、100μm以上の厚さを有することが好ましい。
【0035】
例えば、芯金41の内部にハロゲンヒータ等の熱源を配置してもよい。また、弾性層42の外周面に、例えばPFAやPTFE等で形成された離型層を設けてもよい。弾性層42は、例えばソリッドゴムで形成することができるが、上記熱源を備えない場合にはスポンジゴムで形成してもよい。弾性層42をスポンジゴムで形成する場合には、加圧ローラ40の断熱性が高まり、定着ベルト30の熱が奪われ難くなる。
【0036】
図4は、本実施形態におけるニップ形成ユニット50の概略的な分解斜視図である。ステー53(第1部材54,第2部材55)、加圧パッド51および補助部材52は、いずれも第1方向Xに長尺な形状を有している。加圧パッド51は、第1部材54および第2部材55の鉛直部分54b,55bに取り付けられる。
【0037】
補助部材52は、加圧パッド51の図中の上面、下面および右面を囲う形状に屈曲している。補助部材52は、内側に加圧パッド51を収容した状態で、加圧パッド51に取り付けられる(
図3参照)。本実施形態において、補助部材52の外面は、ニップ形成面NSを構成する。ニップ形成面NSが定着ベルト30を介して加圧ローラ40に押し当てられることにより、上述の定着ニップNが形成される。
図4においては、定着ニップNが形成される範囲に斜線を付して例示している。
【0038】
ニップ形成面NSは、第1方向Xにおいて、第1端部52aおよび第2端部52bを有している。第1端部52aは第1フランジ20A側の端部であり、第2端部52bは第2フランジ20B側の端部である。例えば、定着ニップNは、第1端部52aと第2端部52bの間に亘って形成される。
【0039】
ニップ形成面NSは、定着ニップNよりも搬送方向(第3方向Z)の上流側の第1角部52cと、定着ニップNよりも搬送方向の下流側の第2角部52dとを有している。第1角部52cおよび第2角部52dは、いずれも補助部材52がステー53側に折り曲げられることにより形成された角部である。
図4の例においては、これら角部52c,52dがいずれも第1端部52aから第2端部52bまで直線状に延びている。本実施形態に適用し得る角部52c,52dの形状については、
図9の説明にて後述する。
【0040】
図4の例においては、加圧パッド51の第1方向Xにおける両端部にヒータ56,57が配置されている。ヒータ56,57としては、例えばセラミックヒータのような接触伝熱型ヒータを用いることができる。ヒータ56,57を設けることで、定着ニップNの端部の温度を好適に制御することが可能となる。ヒータ56,57が発する熱は、補助部材52によって第1方向Xに均一化される。なお、他の例として、加圧パッド51にヒータ56,57が設けられていなくてもよい。
【0041】
図5は、フランジ20A,20Bに適用可能な構成の一例を示す斜視図である。ここでは代表して第1フランジ20Aを例示するが、第2フランジ20Bについても同様の構成を適用できる。
図5の例において、第1フランジ20Aは、取付部21と、鍔部22と、ガイド部23とを有している。
【0042】
取付部21は、画像形成装置1内部の部材に第1フランジ20Aをボルトによって固定するための複数の貫通孔を有している。鍔部22は、取付部21とガイド部23の間に配置され、ガイド部23よりも大きい外径を有している。
【0043】
ガイド部23は、鍔部22から第1方向Xに突出しており、定着ベルト30の内面をガイドするためのガイド面23aを有している。ガイド面23aは、ガイド部23の外周面に相当する。さらに、ガイド部23は、ニップ形成ユニット50を配置するための開口部23bを有している。すなわち、第1方向Xと交差する断面(YZ平面における断面)において、ガイド面23aは、ニップ形成ユニット50が配置される部分が開口する略円弧形状である。ここで、略円弧形状とは、ガイド面23aの断面形状が全体的に正円の一部に相当する円弧である場合だけでなく、当該断面形状が曲率の異なる複数の部分や平坦部を有するが全体的に見て円弧に近い形状である場合を含むことを意味する。
【0044】
図5に示すように、ガイド部23の先端に傾斜部24を設けてもよい。傾斜部24の外面は、ガイド面23aから離れるに連れて、ガイド部23の中心軸に近づく形状に傾斜している。このような傾斜部24を設けることにより、定着ベルト30の内側にガイド部23を容易に挿入することができる。
【0045】
図6は、フランジ20A,20Bの各ガイド面23aを示す概略的な斜視図である。本実施形態においては、フランジ20A,20Bの各ガイド面23aを含む仮想円柱面VSを定義する。
【0046】
仮想円柱面VSは、YZ平面における断面形状が第1方向Xのいずれの位置においても円形となる曲面である。例えばガイド面23aのYZ平面における断面形状が全体的に正円の一部に相当する円弧である場合、仮想円柱面VSの断面形状は、当該正円と一致する。ただし、上述のようにガイド面23aの断面形状が曲率の異なる部分等を含む場合、仮想円柱面VSの断面形状は、ガイド面23aの断面形状を正円または楕円に近似した形状であってもよい。
【0047】
以上説明した構成の定着装置100においては、定着ベルト30の第1端部30aおよび第2端部30bの近傍で、定着ベルト30に形状変化が生じ得る。この形状変化につき、本実施形態との比較例を参照して、以下に説明する。
【0048】
図7は、比較例に係る定着装置100Cの第1フランジ20A近傍における概略的な断面図である。この断面図は、定着ニップNを含む領域のXY平面における断面に相当し、第1フランジ20Aの鍔部22とガイド部23、定着ベルト30、加圧ローラ40、芯金41および補助部材52以外の要素を省略している。
【0049】
ここで、画像形成装置1により画像形成が可能な複数種類の用紙Sのうち、第1方向Xにおいて最大幅を有する用紙Sの端部が定着ニップNを通過する位置を最大通紙位置Aと定義する。一例として、上記最大幅は、A3縦サイズ(297mm)に相当する。
【0050】
また、第1方向Xにおいて、定着ベルト30の内側に挿入されたガイド面の端部23c(ガイド部23の端部)に相当する位置をB、加圧ローラ40の第1端部40aに相当する位置をC、ニップ形成面NSの第1端部52aに相当する位置をD、定着ベルト30の第1端部30aに相当する位置をEと定義する。
【0051】
図7の比較例において、これら位置A~Eは、位置E,B,D,C,Aの順で第1方向Xに並んでいる。この場合、位置Cは、定着ニップNの端部にも相当する。すなわち、最大通紙位置Aよりも定着ベルト30の第1端部30a側にまで定着ニップNが形成されている。これにより、最大幅の用紙Sに画像を形成する場合であっても、当該用紙Sの端部に良好な搬送力が与えられるので、当該用紙Sのスリップを抑制できる。また、ニップ形成面NSの第1端部52aにおいて加圧ローラ40が定着ベルト30を押圧しないので、定着ベルト30が第1端部52aに押し付けられて破損することを抑制できる。
【0052】
図8(a)(b)および(c)は、それぞれ
図7におけるF8a-F8a線、F8b-F8b線およびF8c-F8c線に沿う定着装置100Cの概略的な断面図である。
図8(a)においては、定着ベルト30と加圧ローラ40の間に定着ニップNが形成されている。定着ニップNおよび定着ニップNよりも用紙Sの搬送方向上流側において、補助部材52のニップ形成面NSは、第3方向Zと平行である。
【0053】
一方、定着ニップNよりも搬送方向下流側において、ニップ形成面NSは、加圧ローラ40側(第2方向Y)に突出するように傾斜している。これにより、ニップ形成面NSの第2角部52dは、第1角部52cや定着ニップNよりも加圧ローラ40側に突出している。定着ベルト30は、このようなニップ形成面NSの形状に応じて曲がっている。用紙Sは、定着ベルト30の形状に応じて、第3方向Zに対し加圧ローラ40側に傾いた角度で定着ニップNから排出される。これにより、定着ベルト30と用紙Sとの剥離性が向上し、定着装置100Cにおけるジャムの発生を抑制できる。
【0054】
図8(a)においては、定着ニップNが仮想円柱面VSの内側に位置し、角部52c,52dが仮想円柱面VSの外側に突出している。したがって、定着ベルト30は、定着ニップN近傍において仮想円柱面VSの内側に入り込み、角部52c,52d近傍において仮想円柱面VSの外側に突出するように曲がっている。また、この断面においてはガイド部23が存在せず、かつガイド部23からある程度離れているので、定着ベルト30がガイド面23aに拘束されない。したがって、第2方向Yにおいて定着ニップNの反対側の領域では、定着ベルト30が仮想円柱面VSの内側に入り込んでいる。
【0055】
図8(b)の断面においては、加圧ローラ40が定着ベルト30と接触していない。補助部材52の形状は、
図8(a)と同様である。すなわち、この比較例においては、補助部材52が第1方向Xにおいて一様な断面を有している。
【0056】
図8(b)の断面の位置は、ガイド部23に近いため、
図8(a)の断面の位置に比べて定着ベルト30がガイド面23aの影響を受ける。そのため、第2方向Yにおいて定着ニップNの反対側の領域では、定着ベルト30が仮想円柱面VSに近い形状となる。一方、ニップ形成面NS側においては、角部52c,52dの影響により、定着ベルト30が仮想円柱面VSの外側に位置する。その結果、定着ベルト30は、全体的に見て第2方向Yに横長の形状となる。
【0057】
図8(c)の断面においては、ガイド部23が存在し、補助部材52が存在しない。開口部23bの領域を除き、定着ベルト30が仮想円柱面VSに一致している。開口部23bの領域では、定着ベルト30が仮想円柱面VSのやや内側に入り込む。その結果、定着ベルト30は、
図8(b)の断面に比べて、仮想円柱面VSに近い形状となる。
【0058】
ここで、
図7に示すように、位置Bと位置Cの間の距離をLと定義する。この距離Lが小さい場合や、距離Lが無い場合(位置B,Cが入れ替わる場合を含む)には、第1方向Xにおいて定着ベルト30が
図8(b)の断面形状から
図8(c)の断面形状へと急激に変化する。このような急激な形状変化をもたらす力が定着ベルト30に作用すると、
図8(b)におけるニップ形成面NSと定着ベルト30との接触部分での摺動摩擦、
図8(c)におけるガイド面23aと定着ベルト30の接触部分での摺動摩擦、さらには定着ベルト30に作用するねじり応力等に起因して、定着ベルト30が破損し得る。
【0059】
一方、距離Lを大きくすれば、第1方向Xにおける定着ベルト30の形状変化が緩やかになるため、定着ベルト30の破損を抑制できる。しかしながら、この場合には定着装置100Cの第1方向Xにおけるサイズが大きくなってしまう。
【0060】
続いて、本実施形態に係る定着装置100の構成を説明する。
図9(a)(b)および(c)は、それぞれ定着装置100が備える補助部材52の概略的な斜視図、側面図および正面図である。ここでは第1端部52aの近傍を示すが、第2端部52bの近傍にも同様の形状を適用できる。
【0061】
図9の例においては、上述の比較例と異なり、補助部材52が第1方向Xにおいて一様な形状を有していない。すなわち、ニップ形成面NSは、第1領域R1と、第2領域R2とを有している。図中の破線は、第1領域R1と第2領域R2の境界BLを表している。第2領域R2は、第1方向Xにおいて第1端部52aと第1領域R1の間に位置している。第1領域R1における補助部材52およびニップ形成面NSの形状は、
図8(a)(b)と同様であり、第1方向Xにおいて一様である。
【0062】
図9(a)(b)に示すように、第2領域R2においては、第1角部52cおよび第2角部52dが第1領域R1におけるこれら角部52c,52dよりも小さい曲率を有するように丸められている。
【0063】
図9(c)に示すように、第3方向Zにおけるニップ形成面NSの幅は、第1領域R1においてW1であり、第2領域R2においてW1よりも小さいW2である(W1>W2)。
図9(c)の例においては、ニップ形成面NSの第3方向Zにおける両縁部が第1方向Xに対して傾斜することにより、幅W2が境界BLから第1端部52aに向かうに連れて漸次減少している。
【0064】
ニップ形成面NSがこのような形状を有しているため、
図9(b)において矢印Q1で示すように、第1角部52cの位置が境界BLから第1端部52aに向かうに連れて第2方向Yの反対方向かつ第3方向Zに変位している。さらに、矢印Q2で示すように、第2角部52dの位置が境界BLから第1端部52aに向かうに連れて第2方向Yの反対方向かつ第3方向Zの反対方向に変位している。ここで、第2方向Yの反対方向は、上述の加圧ローラ40から離れる方向に相当する。
【0065】
図10は、本実施形態に係る定着装置100の第1フランジ20A近傍における概略的な断面図である。この断面図は、
図7と同じく定着ニップNを含む領域のXY平面における断面に相当し、第1フランジ20Aの鍔部22とガイド部23、定着ベルト30、加圧ローラ40、芯金41および補助部材52以外の要素を省略している。図中の位置A,B,C,D,Eは、
図7と同じく最大通紙位置、ガイド面の端部23c、加圧ローラ40の第1端部40a、ニップ形成面NSの第1端部52a、および定着ベルト30の第1端部30aを表している。
【0066】
図10の例において、位置A~Eは、位置E,D,C,B,Aの順で第1方向Xに並んでいる。すなわち、加圧ローラ40の第1端部40aは、第1方向Xにおいて、ガイド面23aの端部23cと定着ベルト30の第1端部30aとの間に位置している。さらに、ガイド面23aの端部23cは、第1方向Xにおいて、第1領域R1および第2領域R2の境界BLと加圧ローラ40の第1端部40aとの間に位置している。
【0067】
このような構成においては、定着ニップNとガイド面23aとが第2方向Yにおいて重なる。これにより、定着ニップNの第1方向Xにおける幅を例えば
図7の場合と同程度に確保しつつも、定着ベルト30全体の第1方向Xにおける幅を小さくすることができる。結果として、定着装置100を小型化することができる。
【0068】
ただし、
図10の構成においては
図7に示した距離Lが存在しないため、補助部材52の形状が
図7と同様であれば、第1方向Xにおける形状変化に起因した大きな負荷が定着ベルト30に加わる。本実施形態においては、
図9に示したように補助部材52に第2領域R2を設け、さらに境界BLの位置を位置A,Bの間に定めることにより、定着ベルト30に加わる負荷を抑制する。以下、このような構成による作用について説明する。
【0069】
図11(a)(b)および(c)は、それぞれ
図10におけるF11a-F11a線、F11b-F11b線およびF11c-F11c線に沿う定着装置100の概略的な断面図である。
図11(a)は、ニップ形成面NSの第1領域R1を含む断面に相当し、定着ベルト30および補助部材52の形状は
図8(a)と同様である。また、
図11(c)は、ガイド部23を含み、かつ定着ニップNを含まない断面に相当し、定着ベルト30の形状は
図8(c)と同様である。
【0070】
図11(b)は、
図10に示す位置Pを含む断面に相当する。位置Pは、第2領域R2に含まれる。第2領域R2においては、ニップ形成面NSの幅W2が第1領域における幅W1よりも小さい。さらに、角部52c,52dが加圧ローラ40から離れる方向に変位している。位置Pにおいては、
図11(b)に示すように、角部52c,52dの双方が仮想円柱面VSと一致している。
【0071】
図11(b)においては、加圧ローラ40により定着ベルト30がニップ形成面NSに押し付けられている。そのため、定着ニップNの搬送方向上流側および下流側において、定着ベルト30は、仮想円柱面VSの外側に膨らんだ形状となる。しかも、角部52c,52dがいずれも仮想円柱面VSと一致しているので、角部52c,52dと定着ベルト30とが接触しない。これにより、定着ベルト30は、比較例における
図8(b)のように仮想円柱面VSから大きくずれることはなく、
図11(c)と近い形状になる。
【0072】
図10における位置Pと境界BLの間においては、角部52c,52dが仮想円柱面VSから突出するが、その突出量は第1領域R1よりも小さい。したがって、この範囲においては、定着ベルト30が角部52c,52dに接触しないか、あるいは接触したとしても
図11(a)ほど加圧ローラ40側に突出しない。
【0073】
また、位置Pと第1端部52aの間においては、角部52c,52dを含めニップ形成面NSが仮想円柱面VSの内側に位置する。したがって、この範囲においては定着ベルト30が角部52c,52dに接触せず、第1端部52aに近づくほど定着ベルト30が
図11(c)に示す形状に近づいていく。一例として、位置Pと第1端部52aの間において、加圧ローラ40により定着ベルト30がニップ形成面NSに押し当てられる部分を除き、定着ベルト30とニップ形成面NSとが接触しないことが好ましい。
【0074】
このように、本実施形態においては、第1端部30aの近傍において、定着ベルト30の第1方向Xにおける形状変化が低減される。
図2に示した第2端部30bの近傍においても、
図9ないし
図11と同様の構成を適用することにより、同様の効果を得ることができる。
【0075】
なお、
図11(b)における定着ニップNの幅は、少なくとも
図11(a)における定着ニップNの幅と同等であることが好ましい。これにより、最大幅の用紙Sが定着ニップNに搬送される場合であっても、当該用紙Sの端部に対して搬送に必要な摩擦力を良好に与えることができる。
【0076】
以上の本実施形態においては、定着ニップNが第1フランジ20Aと第2方向Yに重なるために、定着ベルト30、定着装置100ないしは画像形成装置1を小型化することができる。さらに、ニップ形成面NSに第1領域R1と第2領域R2を設け、これらの境界BLと加圧ローラ40の第1端部40a(定着ニップNの端部)との間にガイド面23aの端部23cを位置させている。これにより、ガイド面23aの近傍で
図11(b)のような定着ベルト30の形状を実現し、定着ベルト30の形状変化を緩和して、定着ベルト30に加わる負荷を抑制できる。
【0077】
また、本実施形態においては、少なくともニップ形成面NSの第1端部52aにおいて、角部52c,52dが定着ベルト30と離間する。仮に第1端部52aにおいて角部52c,52dと定着ベルト30が接触していれば、定着ベルト30に大きな負荷が加わる可能性があるが、本実施形態においてはこのような負荷を抑制できる。
【0078】
さらに、位置Pから第1端部52aまでの範囲においてニップ形成面NSが仮想円柱面VSの内側に位置するので、少なくとも当該範囲においては定着ニップNの部分を除き、定着ベルト30とニップ形成面NSとが接触しない。これにより、第1端部52aにおける角部52c,52dだけでなく、当該範囲においても定着ベルト30に加わる負荷を抑制できる。
【0079】
また、第1領域R1においては第2角部52dが定着ニップNよりも加圧ローラ40側に突出している。これにより、第1領域R1において定着ニップNに搬送される用紙Sと定着ベルト30との剥離性が向上し、ジャムの発生を抑制できる。
【0080】
さらに、第1領域R1と第2領域R2の境界BLは、最大通紙位置Aとガイド面23aの端部23cの間に位置している。これにより、画像形成装置1により画像形成が可能な最大幅の用紙Sに形成されたトナー像を定着する際にも、当該用紙Sは全体にわたって剥離性に優れた第1領域R1を通過する。
【0081】
以上の他にも、本実施形態からは種々の好適な効果を得ることができる。また、本実施形態は、本発明の範囲を当該実施形態にて開示した構成に限定するものではない。本発明は、本実施形態に開示した構成を種々の態様に変形して実施することができる。
【0082】
例えば、本実施形態においては、位置Pと第1端部52aの間において、角部52c,52dの双方が定着ベルト30と離間する例を示した(
図11(b)参照)。しかしながら、位置Pと第1端部52aの間において、角部52c,52dの一方が定着ベルト30と離間し、他方が定着ベルト30と接触してもよい。この場合、
図9(c)に示したように、第2領域R2においてニップ形成面NSの第3方向Zにおける両縁部を第1方向Xに対して傾斜させるのではなく、一方の縁部のみを傾斜させてもよい。
【0083】
定着ニップNの搬送方向上流側においては、加圧ローラ40の摩擦力により定着ベルト30が定着ニップNに引き込まれるので、定着ベルト30が第1角部52cから強い負荷を受ける。一方、定着ニップNの搬送方向下流側においては、
図11(a)に示したように加圧ローラ40側へ突出した第2角部52dの影響により、定着ベルト30の端部近傍でも定着ベルト30が第2角部52dから強い負荷を受ける。角部52c,52dの一方のみが定着ベルト30と離間している場合でも、これら負荷の一方を低減できるので、定着ベルト30の破損抑制に寄与する。
【0084】
また、位置Pと第1端部52aの間において、角部52c,52dの少なくとも一方が定着ベルト30と接触する場合であっても、
図9に示すニップ形成面NSの形状であれば、第1端部52aに向かうに連れて定着ベルト30の形状変化を小さくできる。したがって、ニップ形成面NSが第1方向Xにおいて一様な断面形状を有する場合に比べ、定着ベルト30の負荷を抑制できる。
【0085】
補助部材52の形状は、
図9に示したものに限定されない。
図12は、一変形例に係る補助部材152の概略的な構成を示す図である。ここで、
図12(a)は補助部材152の概略的な斜視図であり、
図12(b)は補助部材152の概略的な底面図であり、
図12(c)は補助部材152の概略的な正面図である。
図9に示した補助部材52と同様の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0086】
補助部材152は、
図12(a)に示すように、第1領域R1と、第2領域R2とを有している。
図12(c)に示すように、補助部材152は、第1領域R1において厚さT1を有している。第2領域R2においては、ニップ形成面NSが円弧状に丸められている。これにより、第2領域R2における補助部材152の厚さT2は、厚さT1よりも小さく(T1>T2)、かつ第1端部52aに向かうに連れて小さくなる。
【0087】
図12(c)に示すように、ニップ形成面NSの第1領域R1における幅W1と第2領域R2における幅W2の関係は、
図9の例と同様である。ただし、第2領域R2においては、ニップ形成面NSの第3方向Zにおける両縁部が円弧状に丸められている。
【0088】
このような形状の補助部材152であっても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、第2領域R2においてはニップ形成面NSが全体的に丸められているので、定着ベルト30と接触したとしても定着ベルト30を傷つけにくい。
【0089】
なお、
図9および
図12においては、それぞれ補助部材52,152の外面がニップ形成面NSを構成する場合を例示したが、この例に限定されない。例えば、ニップ形成ユニット50が補助部材52,152を備えず、加圧パッド51が定着ベルト30の内面と摺動する場合には、加圧パッド51の外面がニップ形成面NSとなる。その他、ニップ形成面NSは、種々の態様にて実現し得る。
【符号の説明】
【0090】
1…画像形成装置、20A,20B…第1,第2フランジ、23a…ガイド面、30…定着ベルト、40…加圧ローラ、50…ニップ形成ユニット、52,152…補助部材、52c…第1角部、52d…第2角部、71,72…第1,第2ヒータ、100…定着装置、N…定着ニップ、NS…ニップ形成面、R1…第1領域、R2…第2領域、VS…仮想円柱面、S…用紙。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0091】
【文献】特許第4770453号公報
【文献】特開2017-116921号公報
【文献】特開2017-203873号公報
【文献】特開2012-252186号公報