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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】樹脂組成物及びこれよりなる積層体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20060101AFI20220809BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20220809BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20220809BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20220809BHJP
   C09J 123/08 20060101ALI20220809BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20220809BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220809BHJP
   B32B 27/28 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C08L23/08
C08L23/06
C08L29/04 S
C08J3/24 Z CES
C09J123/08
C09J11/08
C09J11/06
B32B27/28
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2017233563
(22)【出願日】2017-12-05
(65)【公開番号】P2019099717
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川戸 大輔
(72)【発明者】
【氏名】角谷 みどり
(72)【発明者】
【氏名】大嶽 真都
(72)【発明者】
【氏名】幸田 真吾
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-111215(JP,A)
【文献】特開2017-210608(JP,A)
【文献】特開昭62-174246(JP,A)
【文献】特開2017-031337(JP,A)
【文献】特開昭61-270155(JP,A)
【文献】特開昭62-158043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/16
C09J 1/00 - 5/10
C09J 9/00 - 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(C)を含み、成分(C)を1~50重量部((A)及び(B)及び(C)の合計は100重量部)含むことを特徴とする樹脂組成物。
(A)ビニルエステル含量が20重量%以下のエチレンとビニルエステルとの共重合体
(B)ビニルエステル含量が25重量%以上であり、前記(A)とのビニルエステル含量差が10重量%以上であるエチレンとビニルエステルとの共重合体
(C)ビニルエステル含量が成分(A)よりも高く、成分(B)よりも低いエチレンとビニルエステルとの共重合体を少なくとも1種含む相溶化剤
【請求項2】
(C)相溶化剤が成分(A)又は成分(B)とのビニルエステル含量差が1~40重量%以内であるエチレンとビニルエステルとの共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(C)相溶化剤が2種以上のエチレンとビニルエステルとの共重合体によって構成されており、構成される各々のエチレンとビニルエステルとの共重合体のビニルエステル含量差が1~20重量%であることを特徴とする請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物の加水分解物を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項5】
加水分解物がケン化度10重量%以上であることを特徴とする請求項4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(D)架橋剤を含有することを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物を含むことを特徴とする接着剤。
【請求項8】
請求項7に記載の接着剤からなる層及び当該接着剤以外の素材からなる少なくとも1つの層を含む積層体。
【請求項9】
前記接着剤以外の素材からなる少なくとも1つの層がエチレン・ビニルアルコール共重合体を含む層であることを特徴とする請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
前記接着剤以外の素材からなる少なくとも1つの層がポリエチレンを含む層であることを特徴とする請求項8又は9に記載の積層体。
【請求項11】
エチレン・ビニルアルコール共重合体を含む層、請求項7に記載の接着剤からなる層、ポリエチレンを含む層が順次積層された積層体。
【請求項12】
下記成分(A)~(C)並びに(A)~(C)の架橋体を含む樹脂組成物の加水分解物。
(A)ポリエチレン又はビニルエステル含量が20重量%以下のエチレンとビニルエステルとの共重合体
(B)ビニルエステル含量が25重量%以上であり、前記(A)とのビニルエステル含量差が10重量%以上であるエチレンとビニルエステルとの共重合体
(C)相溶化剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(A)ポリエチレン又はビニルエステル含量が20重量%以下のエチレンとビニルエステルとの共重合体、(B)ビニルエステル含量が25重量%以上であり、前記(A)とのビニルエステル含量差が10重量%以上であるエチレンとビニルエステルとの共重合体、および(C)相溶化剤を含むことを特徴する樹脂組成物に関するものである。またこれらの樹脂組成物からなる層を少なくとも1層以上含む積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品や飲料、医薬品などの熱可塑性樹脂を素材とした包装材料は、内容物劣化の防止を目的として、ガスバリア性、保香性、耐溶剤性などに優れるエチレン・ビニルアルコール系共重合体(以下、EVOHと略記することがある)が、種々の用途で使用されている。しかしながらEVOHは親水性であり、吸湿によりガスバリア性等の低下が起こることから、一般的にポリエチレンやポリプロピレンなどの耐水性に優れたポリオレフィン等との積層体の中間層に使用されることが知られている。
【0003】
EVOHは分子内に多くの水酸基を有するため、ポリエチレンやポリプロピレンなどの極性基をもたない熱可塑性樹脂等との親和性は極めて低く、両者は一般に接着しない。そのためポリオレフィンと接着困難なEVOHに対し、不飽和カルボン酸またはその誘導体によってグラフトされたグラフト変性エチレン系樹脂組成物(例えば、特許文献1~2)やエチレン・酢酸ビニル共重合体加水分解物(例えば、特許文献3)を接着剤として用いることは既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭61-270155号公報
【文献】特開昭62-158043号公報
【文献】特開平7-108655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、不飽和カルボン酸またはその誘導体によってグラフトされたグラフト変性エチレン系樹脂組成物は優れた接着性を備えているが、EVOHとの反応性が高いため、繰り返し混錬すると、押出機やダイ内に滞留した樹脂が粘度上昇するとともに着色してゲル化し、その結果として製品中に多数のフィッシュアイやゲル状物質が混在することとなり、商品価値が低下する問題がある。
【0006】
一方、エチレン・酢酸ビニル共重合体加水分解物は繰り返し混錬による着色やゲル化は発生せず、エチレン・酢酸ビニル共重合体加水分解物に粘着性樹脂を加えることでEVOHに対する接着性が向上するものの、その効果は小さく、運搬中や使用中に小さい衝撃や摩擦を受けると剥離することが多く、十分な接着力が得られなかった。
【0007】
このような背景から、従来より接着性に優れ、且つ繰り返し再利用可能な接着剤が望まれていた。
【0008】
本発明は、上記のような状況を鑑みなされたものであって、ポリエチレンおよびEVOHとの接着性に優れた樹脂組成物およびこれよりなる積層体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、(A)ポリエチレン又はビニルエステル含量が20重量%以下のエチレンとビニルエステルとの共重合体(以下、成分(A)と略すことがある)、(B)ビニルエステル含量が25重量%以上であり、前記(A)とのビニルエステル含量差が10重量%以上であるエチレンとビニルエステルとの共重合体(以下、成分(B)と略すことがある)、および(C)相溶化剤(以下、成分(C)と略すことがある)を含むことを特徴とする樹脂組成物によって解決される。
【0010】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0011】
本発明で用いる成分(A)はポリエチレン又はビニルエステル含量が20重量%以下のエチレンとビニルエステルとの共重合体である。
【0012】
成分(A)のポリエチレンとしては、例えば、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-へキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体等が挙げられる。
【0013】
成分(A)のエチレンとビニルエステルとの共重合体に用いられるビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等が挙げられる。
【0014】
これらは、1種単独又は2種以上の組み合わせで用いてもよい。なかでも高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-へキセン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体を、後述する成分(B)および成分(C)とともに併用することにより、本発明における樹脂組成物のポリエチレンに対する接着性が良好となる。成分(A)のビニルエステル含量が20重量%を超える場合は、本発明における樹脂組成物のポリエチレンに対する接着性が悪化する。
【0015】
成分(A)の高圧法低密度ポリエチレンの製造方法は、高圧ラジカル重合を例示することができ、このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができ、例えば東ソー株式会社からペトロセンの商品名で市販されている。高密度ポリエチレン、エチレン・1-ブテン共重合体およびエチレン・1-へキセン共重合体の製造方法は特に限定するものではないが、チーグラー・ナッタ触媒やフィリップス触媒、メタロセン触媒を用いた高・中・低圧イオン重合法などを例示することができ、このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができる。例えば東ソー株式会社からニポロンハード、ニポロン-L、ニポロン-Zの商品名で各々市販されている。
【0016】
成分(A)のエチレンとビニルエステルとの共重合体の製造方法は、エチレンとビニルエステルとの共重合体の製造が可能であれば特に制限されるものではないが、公知の高圧ラジカル重合法やイオン重合法を例示することができる。高圧ラジカル重合法により製造されたエチレン・酢酸ビニル共重合体として、東ソー株式会社からウルトラセンの商品名で市販されている。
【0017】
本発明の成分(B)はビニルエステル含量が25重量%以上であり、前記(A)とのビニルエステル含量差が10重量%以上であるエチレンとビニルエステルとの共重合体である。成分(B)のエチレンとビニルエステルとの共重合体に用いられるビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等が挙げられ、1種単独又は2種以上の組み合わせで用いてもよい。なかでも、経済性に優れることから、エチレン・酢酸ビニル共重合体を使用することが好ましい。
【0018】
成分(B)のビニルエステル含量は25重量%、好ましくは42重量%以上、より好ましくは60重量%以上であり、前述した成分(A)および後述する成分(C)とともに併用することにより、本発明における樹脂組成物のEVOHに対する接着性が良好となる。成分(B)の酢酸ビニル含量が25重量%を下回る場合は、本発明における樹脂組成物のEVOHに対する接着性が悪化する。
【0019】
成分(B)におけるエチレンとビニルエステルとの共重合体の製造方法は特に限定されないが、高圧法ラジカル重合、溶液重合やラテックス重合等の公知の製造方法が挙げられ、エチレン・酢酸ビニル共重合体として、東ソー株式会社からウルトラセンの商品名で、ランクセス株式会社からレバプレンの商品名で各々市販されている。
【0020】
本発明の成分(C)は、成分(A)と成分(B)の相溶化剤であり、例えばエチレンとビニルエステルとの共重合体が挙げられる。相溶化剤(C)のビニルエステル含量が成分(A)よりも高く、且つ成分(B)よりもビニルエステル含量が低い、エチレンとビニルエステルとの共重合体が好ましい。ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、ギ酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の脂肪族ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等が挙げられる。なかでも、経済性に優れることから、エチレン・酢酸ビニル共重合体を使用することが好ましく、1種単独又は2種以上の組み合わせで用いてもよい。なかでも2種以上の相溶化剤(C)を併用することで、成分(A)および成分(B)の分散性が向上し、本発明の樹脂組成物のポリエチレンおよびEVOHとの接着性が良好となるため好ましい。
【0021】
相溶化剤(C)として、エチレンとビニルエステルとの共重合体を用いる場合のビニルエステル含量は、相溶化剤(C)と成分(A)又は成分(B)とのビニルエステル含量差が1~40重量%であるエチレンとビニルエステルとの共重合体が好ましく、さらに好ましくはビニルエステル含量差が1~30重量%であるエチレンとビニルエステルとの共重合体、最も好ましくはビニルエステル含量差が1~20重量%であるエチレンとビニルエステルとの共重合体である。
【0022】
また相溶化剤(C)として2種以上のエチレンとビニルエステルとの共重合体を用いる場合、各々のビニルエステル含量差は、1~20重量%であることが好ましく、さらに好ましくは1~15重量%、最も好ましくは1~10重量%である。
【0023】
また本発明における相溶化剤(C)のエチレンとビニルエステルとの共重合体の製造方法は限定されないが、高圧法ラジカル重合、溶液重合やラテックス重合等の公知の製造方法が挙げられ、このような樹脂は市販品の中から便宜選択することができ、エチレン・酢酸ビニル共重合体として、東ソー株式会社からウルトラセンの商品名で、ランクセス株式会社からレバプレンの商品名で各々市販されている。
【0024】
該樹脂組成物の好適な配合比は、ポリエチレンおよびEVOHに対する接着性向上の観点から、成分(A)が4~95重量部、成分(B)が4~95重量部及び成分(C)が1~50重量部((A)及び(B)及び(C)の合計は100重量部)を含むものであり、さらに好ましくは成分(A)が15~90重量部及び成分(B)が5~75重量部及び成分(C)が5~45重量部((A)及び(B)及び(C)の合計は100重量部)を含むものであり、最も好ましくは成分(A)が15~80重量部及び成分(B)が15~50重量部及び成分(C)が5~40重量部((A)及び(B)及び(C)の合計は100重量部)を含むものである。
【0025】
該樹脂組成物は、分散性向上の観点から溶融混錬により製造することが好ましい。溶融混練の方法は、各成分を均一に分散しうる溶融混練装置であれば特に制限はなく、通常用いられる樹脂の混合装置により製造することができる。例えば、単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダ-、回転ロールなどの溶融混練装置が挙げられる。中でも混練度が高く連続的に運転できる二軸押出機は、分散状態を細かく均一にできるため好ましい。溶融温度は成分(A)の融点~260℃程度が好ましい。
【0026】
また該樹脂組成物の分散性をさらに高めるために、上記成分(A)、(B)、(C)に架橋剤(D)(以下、成分(D)と略すことがある)を添加してもよい。成分(D)としては、各成分を架橋できるものあればよく、特に限定されるものではないが、反応性などを考慮して有機過酸化物を使用することが好ましい。
【0027】
架橋剤(D)の有機過酸化物としては有機過酸化物であれば特に限定されず、例えば、ジクミルペルオキシド、ジt-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1、1ージ(tーブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,3-ジ-(t-ブチルペルオキシ)-ジイソプロピルベンゼン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシドなどが挙げることができる。これらは単独で或いは2種類以上を混合して使用することができる。
【0028】
なかでも、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1、1ージ(tーブチルペルオキシ)シクロヘキサンが反応性の観点から好ましく用いられる。また、前記架橋剤(D)と共に、必要に応じて、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼンなどの架橋助剤を用いてもよい。
【0029】
また上記した成分以外に、必要に応じて酸化防止剤、滑剤、中和剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ剤、シリコンオイル、紫外線吸収剤、難燃剤、離型剤、発泡剤、香料などの一般的に使用される添加剤を1種または2種以上を含有していてもよい。
【0030】
また本発明における該樹脂組成物の分散性をさらに高めるEVOHに対する接着性を高めるために、該樹脂組成物を加水分解処理してビニルエステルをビニルアルコールに変換してもよい。
【0031】
加水分解の処理方法は特に限定されないが、生産性の観点から上記樹脂組成物のペレット又はパウダーをアルカリ中で直接加水分解処理するのが好ましい。本発明の樹脂組成物のケン化度が10重量%以上のものが好ましく、10重量%以上であればEVOHに対する接着性が十分である。
【0032】
また本発明の樹脂組成物は、ペレットやパウダーなどの任意の形態にしておいて、成形材料として使用することができる。さらに本発明の樹脂組成物は、熱可塑性を有するので、一般の熱可塑性樹脂に対して用いられている通常の成形加工装置を用いて成形加工することができる。
【0033】
本発明の樹脂組成物は、ポリエチレン及びEVOHとの接着性に優れることから接着剤として使用することができる。
【0034】
さらに本発明の樹脂組成物を接着剤として用いた場合、該接着剤からなる層と当該接着剤以外の素材からなる少なくとも1つの層からなる積層体として使用してもよい。
【0035】
本発明の積層体は、該接着剤からなる層と少なくとも1つ以上のポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ乳酸やポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、EVOH層を有するものが好ましい。また、これらの2組以上の組合せや種々の熱可塑性樹脂層の組合せをもつ積層構造を有していてもよい。特にコストや成形性の観点から、ポリオレフィン及びEVOHを有するものが好ましい。
【0036】
ポリオレフィンとしては、特に限定されるものではなく、例えば、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン・1-ブテン共重合体、エチレン・1-へキセン共重合体、エチレン・1-オクテン共重合体、エチレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体等のエチレン系重合体、ポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、ポリ1-ブテン、ポリ1-ヘキセン、ポリ4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。
【0037】
EVOHとしては、エチレン単位とビニルアルコール単位とからなる共重合体である。本発明において使用されるEVOHとしては、特に限定されることはなく、例えば、成形用途で使用されるような公知のものを挙げることができる。EVOHの製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、公知の方法に従って、エチレンとビニルエステル共重合体を製造し、次いで、これをケン化することによってEVOHを製造することができる。ただし、EVOHのエチレン単位の含有量は、気体、有機液体等に対する遮断性の高さと成形加工性の良好さの点から、55mol%以下が好ましく、10~55mol%のものがさらに好ましい。このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができ、例えば(株)クラレからエバールの商品名で、日本合成化学工業(株)からソアノールの商品名で各々市販されている。
【0038】
本発明の積層体は、通常の成形加工装置を用いて成形加工することができ、成形加工方法としては、例えば、押出成形、ブロー成形、シート成形、射出成形、圧縮成形、カレンダー成形、真空成形などの任意の方法が挙げられ、シート状、フィルム状、パイプ状、ブロック状その他任意の形状に成形することができ、他の素材との積層構造を採用することによって、積層体に、ガスバリア性、機械的特性、耐油性、耐候性など、他の素材の有する特性を付与することが可能である。
【0039】
本発明の積層体は、これらの性質が要求される食品や飲料、医薬品などの熱可塑性樹脂を素材とした包装材や容器などに広く使用することができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明の接着剤は、ポリエチレンおよびEVOHとの接着性に優れており、ポリエチレンとEVOHを接着することができる。
【実施例
【0041】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[ケン化度]
実施例より得られた各樹脂組成物を用いてJIS K7192(1999年)に準拠してビニルエステル含量を測定し、下記計算式に従いケン化度(重量%)を求めた。
ケン化度(重量%)=100×{(加水分解前の樹脂組成物のビニルエステル含量)-(加水分解の樹脂組成物のビニルエステル含量)}/(加水分解前の樹脂組成物のビニルエステル含量)
[各被着体に対する接着強度]
実施例より得られた各樹脂組成物を用いて各被着体(低密度ポリエチレン(LDPE)及びEVOH)との接着性を調査した。接着強度の評価手順は次の通りである。各樹脂組成物を神藤工業(株)製50t自動プレス機を用いてプレス成形し、厚み0.1mmのプレス成型品を作成した。続いて、テスター産業(株)製ホットタックテスターを用い、シール温度200℃、シール圧力0.1MPa、シール時間2.5秒にて上下加熱で接着剤と被着体とをヒートシールし、引張試験機(ORIENTEC製 テンシロンRTE-1210)を用い、サンプル幅15mm、300mm/分の引張速度にて、180度剥離での接着強度(N/15mm幅)を測定した。測定は同じ試料について3~5回繰り返した。なお評価に用いたLDPE、EVOHは以下に示すものを使用した。
(1)LDPE:メルトマスフローレート7g/10分、密度922kg/mの低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名ペトロセン204)
(2)EVOH:メルトマスフローレート1.7g/10分、エチレン含量44mol%のエチレン・ビニルアルコール共重合体(クラレ(株)、商品名エバールE171B)
[引張破壊応力]
実施例より得られた各樹脂組成物を用いて引張破壊応力(MPa)を求めた。各樹脂組成物を神藤工業(株)製50t自動プレス機を用いてプレス成形し、厚み0.1mmのプレス成型品を作成した。引張破壊応力はJIS-6924-2に準拠して引張試験機(ORIENTEC製 テンシロンRTE-1210)を用いて測定した。なお同じ試料について3~5回繰り返した。
【0042】
実施例1
成分(A)としてメルトマスフローレート14g/10分、密度935kg/m、酢酸ビニル含量15重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン625)(以下、成分(A-1)と略すことがある)を65重量部、成分(B)としてメルトマスフローレート5g/10分、酢酸ビニル含量80重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(ランクセス(株)製、商品名レバプレン800、以下成分(B-1)と略すことがある)を20重量部、成分(C)としてメルトマスフローレート70g/10分、密度968kg/m、酢酸ビニル含量42重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン760、以下成分(C-1)(1)と略すことがある)を15重量部、成分(D)として有機過酸化物(日油(株)製、商品名パーヘキサ25B)を0.02重量部の割合でドライブレンドし、溶融樹脂温度190℃で、二軸押出機で溶融混練しペレット状の樹脂組成物を得た。続いて、本樹脂組成物を1重量部の水酸化ナトリウムメタノール溶液中で60℃で加水分解処理を行い、本樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用いて、LDPEおよびEVOHに対する接着性を評価したところ、表1に示す通りだった。
【0043】
実施例2
成分(A)としてメルトマスフローレート7g/10分、密度922kg/m、の高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名ペトロセン204、以下、成分(A-2)と略すことがある)を用いた以外は実施例1と同様の方法で製造し本樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用いて評価したところ、表1に示す通りだった。
【0044】
実施例3
成分(B)としてメルトマスフローレート70g/10分、密度968kg/m、酢酸ビニル含量42重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン760、以下、成分(B-2)と略すことがある)、成分(C)としてメルトマスフローレート18g/10分、密度949kg/m、酢酸ビニル含量28重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン710、以下、成分(C-1)(2)と略すことがある)を用いた以外は実施例1と同様の方法で製造し本樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用いて評価したところ、表1に示す通りだった。
【0045】
実施例4
成分(C)として下記記載の成分(C-3)を用いた以外は実施例1と同様の方法で製造し本樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用いて評価したところ、表1に示す通りだった。
【0046】
[成分(C-3)の成分]
下記3種類のエチレン・酢酸ビニル共重合体を5重量部ずつドライブレンドしたもの
・メルトマスフローレート20g/10分、密度940kg/m、酢酸ビニル含量20重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン633)
・メルトマスフローレート30g/10分、密度954kg/m、酢酸ビニル含量32重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン750)
・メルトマスフローレート5g/10分、酢酸ビニル含量50重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(ランクセス(株)製、商品名レバプレン500)
実施例5
成分(C)として下記成分(C-5)を用いた以外は実施例1と同様の方法で製造し本樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用いて評価したところ、表1に示す通りだった。
【0047】
[成分(C-5)の成分]
下記5種類のエチレン・酢酸ビニル共重合体を3重量部ずつドライブレンドしたもの
・メルトマスフローレート20g/10分、密度940kg/m、酢酸ビニル含量20重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン633)
・メルトマスフローレート18g/10分、密度949kg/m、酢酸ビニル含量28重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン710)
・メルトマスフローレート30g/10分、密度954kg/m、酢酸ビニル含量32重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン750)
・メルトマスフローレート70g/10分、密度968kg/m、酢酸ビニル含量42重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン760)
・メルトマスフローレート5g/10分、酢酸ビニル含量50重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(ランクセス(株)製、商品名レバプレン500)
実施例6
成分(C)として下記成分(C-7)を用いた以外は実施例1と同様の方法で製造し本樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用いて評価したところ、表1に示す通りだった。
【0048】
[成分(C-7)の成分]
下記7種類のエチレン・酢酸ビニル共重合体を3重量部ずつドライブレンドしたもの
・メルトマスフローレート20g/10分、密度940kg/m、酢酸ビニル含量20重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン633)
・メルトマスフローレート18g/10分、密度949kg/m、酢酸ビニル含量28重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン710)
・メルトマスフローレート30g/10分、密度954kg/m、酢酸ビニル含量32重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン750)
・メルトマスフローレート70g/10分、密度968kg/m、酢酸ビニル含量42重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン760)、
・メルトマスフローレート5g/10分、酢酸ビニル含量50重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(ランクセス(株)製、商品名レバプレン500)
・メルトマスフローレート5g/10分、酢酸ビニル含量60重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(ランクセス(株)製、商品名レバプレン600)
・メルトマスフローレート5g/10分、酢酸ビニル含量70重量%のエチレン・酢酸ビニル共重合体(ランクセス(株)製、商品名レバプレン700)
実施例7
成分(A-1)を70重量部、成分(B-1)を20重量部、成分(C-7)を10重量部とした以外は実施例1と同様の方法で製造し本樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用いて評価したところ、表1に示す通りだった。
【0049】
実施例8
成分(A-1)を55重量部、成分(B-1)を15重量部、成分(C-7)を30重量部とした以外は実施例1と同様の方法で製造し本樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用いて評価したところ、表1に示す通りだった。
【0050】
実施例9
加水分解処理しなかった以外は実施例6と同様の方法で製造し本樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用いて評価したところ、表1に示す通りだった。
【0051】
実施例10
成分(A-1)を40重量部、成分(B-1)を40重量部、成分(C-7)を20重量部とした以外は実施例1と同様の方法で製造し本樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用いて評価したところ、表1に示す通りだった。
【0052】
【表1】
【0053】
比較例1
成分(A-1)を85重量部、成分(C-1)を15重量部とした以外は実施例1と同様の方法で製造し本樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用いて評価したところ、EVOHに対する接着性が低かった。結果を表2に示す。
【0054】
比較例2
成分(B-1)を85重量部、成分(C-1)を15重量部とした以外は実施例1と同様の方法で製造し本樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用いて評価したところ、LDPEに対する接着性が低かった。結果を表2に示す。
【0055】
比較例3
成分(A-1)を75重量部、成分(B-1)を25重量部とした以外は実施例1と同様の方法で製造し本樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物を用いて評価したところ、EVOHに対する接着性が低かった。結果を表2に示す。
【0056】
【表2】