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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】水溶性フィルム及び薬剤包装体
(51)【国際特許分類】
   C08L 29/04 20060101AFI20220809BHJP
   C08K 5/053 20060101ALI20220809BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20220809BHJP
   B65D 65/46 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C08L29/04 A
C08K5/053
C08J5/18 CEX
B65D65/46
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017567281
(86)(22)【出願日】2017-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2017046200
(87)【国際公開番号】W WO2018123894
(87)【国際公開日】2018-07-05
【審査請求日】2020-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2016253450
(32)【優先日】2016-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100207295
【弁理士】
【氏名又は名称】寺尾 茂泰
(72)【発明者】
【氏名】日裏 貴裕
【審査官】平井 裕彰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/061026(WO,A1)
【文献】特表2008-517108(JP,A)
【文献】特表2008-516016(JP,A)
【文献】特表2009-545658(JP,A)
【文献】特開2002-241797(JP,A)
【文献】特表2013-518173(JP,A)
【文献】特許第6977564(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L29/00 ~29/14
B65D65/46
C08K 5/053
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂(A)、可塑剤(B)及びフィラー(C)を含有してなる水溶性フィルムであって、上記可塑剤(B)が、融点が50℃より大きく100℃以下、1分子中の水酸基の数が4~8個、分子量が100~250である多価アルコール(b1)、融点が50℃以下、1分子中の水酸基の数が3個以下、分子量が100以下である多価アルコール(b2)及び融点が100℃より大きく、1分子中の水酸基の数が5~30個、分子量が150~800である多価アルコール(b3)を含有し、上記多価アルコール(b1)の、上記多価アルコール(b3)に対する含有割合(b1/b3)が、重量比で1~40であり、上記可塑剤(B)の含有量が、上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)100重量部に対して25~70重量部であり、上記フィラー(C)の含有量が、上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)100重量部に対して1~30重量部であることを特徴とする水溶性フィルム。
【請求項2】
上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)として、アニオン性基変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有することを特徴とする請求項1記載の水溶性フィルム。
【請求項3】
上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)として、アニオン性基変性ポリビニルアルコール系樹脂及び未変性ポリビニルアルコールを含有することを特徴とする請求項1または2記載の水溶性フィルム。
【請求項4】
上記水溶性フィルムの含水率が3~15重量%であることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の水溶性フィルム。
【請求項5】
薬剤包装に用いることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の水溶性フィルム。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の水溶性フィルムを貼り合わせてなる包装体と、上記包装体に内包された液体薬剤とを含有することを特徴とする薬剤包装体。
【請求項7】
上記液体薬剤が、水に溶解または分散させた時のpH値が6~12で、上記液体薬剤の水分量が15重量%以下であることを特徴とする請求項記載の薬剤包装体。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分として含有してなる水溶性フィルムに関し、更に詳しくは、水溶性フィルムの引張強度が高く、引張伸度が高いといった機械特性に優れるうえ、包装体形成前にブリードアウトが生じない水溶性フィルム及びそれを用いてなる薬剤包装体に関するものである。
以下、ポリビニルアルコールを「PVA」と略記することがあり、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性フィルムを「PVA系水溶性フィルム」もしくは単に「水溶性フィルム」と略記することがある。
【背景技術】
【0002】
PVA系フィルムは、熱可塑性樹脂でありながら水溶性を有するPVA系樹脂からなるフィルムであり、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリオレフィンフィルム等の包装用フィルム等にも通常よく用いられる疎水性フィルムとは、フィルムの諸物性や手触り感等が大きく異なるものである。
【0003】
そして、従来より、PVA系樹脂の水溶性を生かして、農薬や洗剤等の各種薬剤をPVA系樹脂のフィルムからなる袋に入れた薬剤の分包(ユニット包装)が提案され、幅広い用途に用いられている。
【0004】
かかる用途に用いる水溶性ユニット包装袋として、例えば、PVA100重量部に対して、可塑剤5~30重量部、澱粉1~10重量部及び界面活性剤0.01~2重量部を配合してなる水溶性フィルム(例えば、特許文献1参照。)や、20℃における4重量%水溶液粘度が10~35mPa・s、平均ケン化度80.0~99.9モル%、アニオン性基変性量1~10モル%のアニオン性基変性PVA系樹脂100重量部に対して、可塑剤20~50重量部、フィラー2~30重量部、界面活性剤0.01~2.5重量部を含有してなる樹脂組成物からなる水溶性フィルム(例えば、特許文献2参照。)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-329130号公報
【文献】特開2004-161823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1及び2に開示の水溶性フィルムは、水溶性に優れるものであり、液体洗剤等を包装した薬剤包装体として用いることができる。しかし、包装体形成前のフィルムロールの状態の時にフィルム中の可塑剤がブリードアウトしてしまい、これにより包装体形成装置が汚染されたり、フィルムが白化するといった問題が生じることがあり、可塑剤がブリードアウトしない水溶性フィルムが望まれていた。
【0007】
そこで、本発明ではこのような背景下において、水溶性フィルムの引張強度が高く、引張伸度が高いといった機械特性に優れるうえ、包装体形成前にブリードアウトが生じない水溶性フィルム、及び、前記水溶性フィルムで各種薬剤を包装してなる薬剤包装体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
しかるに、本発明者はかかる事情に鑑み鋭意研究した結果、PVA系樹脂を主体とする水溶性フィルムにおいて、可塑剤として、融点の異なる3種の可塑剤を併用することにより、フィルムの水溶性を損なうことなく、水溶性フィルムの引張強度が高く、引張伸度が高いといった機械特性に優れるうえ、包装体形成前にブリードアウトが生じない水溶性フィルムを得ることができることを見出した。
【0009】
即ち、本発明の要旨は、PVA系樹脂(A)及び可塑剤(B)を含有してなる水溶性フィルムであって、上記可塑剤(B)が、融点が50℃より大きく100℃以下の多価アルコール(b1)、融点が50℃以下である多価アルコール(b2)及び融点が100℃より大きい多価アルコール(b3)を含有する水溶性フィルムに関するものである。
【0010】
更に、本発明では、上記水溶性フィルムを貼り合わせてなる包装体と、上記包装体に内包された液体薬剤とを含有する薬剤包装体も提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の水溶性フィルムは、優れた水溶性を有するとともに、水溶性フィルムの引張強度が高く、引張伸度が高いといった機械特性に優れるうえ、包装体形成前にブリードアウトが生じない水溶性フィルムであり、各種の包装用途に用いることができ、特に薬剤等のユニット包装用途に有用である。
【0012】
また、本発明の水溶性フィルムにおいて、上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)として、アニオン性基変性ポリビニルアルコール系樹脂を含有したものは、水に対する溶解性がより優れたものとなる。
【0013】
更に、本発明の水溶性フィルムとして、上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)として、アニオン性基変性ポリビニルアルコール系樹脂及び未変性ポリビニルアルコールを含有したものは、水シール性がより優れたものとなる。
【0014】
そして、本発明の水溶性フィルムにおいて、上記可塑剤(B)の含有量が、上記ポリビニルアルコール系樹脂(A)100重量部に対して25重量部以上であるものは、水溶性フィルムの成形容易性がより優れたものとなる。
【0015】
また、本発明の水溶性フィルムにおいて、融点が50℃より大きく100℃以下の多価アルコール(b1)の、融点が100℃より大きい多価アルコール(b3)に対する含有割合(b1/b3)が、重量比で1~40である場合は、耐ブリードアウト性がより優れたものとなる。
【0016】
上記水溶性フィルムの含水率が3~15重量%であるものは、フィルムの機械的強度及びシール性がより優れたものとなる。
【0017】
上記水溶性フィルムを貼り合わせてなる包装体と、上記包装体に内包された液体薬剤とを含有する薬剤包装体は、運搬や保存の際には液体薬剤を内包した形状を保持し、使用時には水にスムーズに溶解して内包された薬剤が水中に拡散するため、好適な薬剤の使用形態となる。また、薬剤を個包装する包装体としても好適である。
【0018】
そして、本発明の薬剤包装体において、上記液体薬剤が、水に溶解または分散させた時のpH値が6~12で、上記液体薬剤の水分量が15重量%以下であるものは、フィルムがゲル化したり不溶化したりすることがなく、使用時に、よりスムーズに溶解して液体薬剤の拡散が妨げられることがない。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について具体的に説明するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、本発明はこれらの内容に特定されるものではない。
なお、本発明において、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリルを、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味するものである。
【0020】
本発明の水溶性フィルムは、PVA系樹脂(A)を主成分とし、さらに可塑剤(B)を含有してなるものである。ここで主成分とは、全体の過半を示す成分のことをいい、全体が主成分のみからなる場合も含む意味である。なかでも、水溶性フィルム中にPVA系樹脂(A)を50重量%以上、特に70重量%以上含有させることがより好ましい。
【0021】
まず、本発明で用いられるPVA系樹脂(A)について説明する。
本発明で用いられるPVA系樹脂(A)としては、未変性PVAや変性PVA系樹脂があげられる。
【0022】
本発明で用いるPVA系樹脂(A)の平均ケン化度は、80モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは82~99.9モル%、更に好ましくは85~98.5モル%、殊に好ましくは90~97モル%である。また、PVA系樹脂(A)として、未変性PVAを用いる場合には、その平均ケン化度は、80モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは82~99モル%、更に好ましくは85~90モル%である。そして、PVA系樹脂(A)として、変性PVA系樹脂を用いる場合には、その平均ケン化度は、80モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは85~99.9モル%、更に好ましくは90~98モル%である。更に、PVA系樹脂(A)として、アニオン性基変性PVA系樹脂を用いる場合には、その平均ケン化度は、85モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは88~99モル%、更に好ましくは90~97モル%である。かかる平均ケン化度が小さすぎると、包装対象である薬剤のpHによっては経時的に水溶性フィルムの水への溶解性が低下する傾向がある。なお、平均ケン化度が大きすぎると製膜時の熱履歴により水への溶解性が大きく低下する傾向がある。
【0023】
上記PVA系樹脂(A)の重合度は一般的に水溶液粘度で示すことができ、20℃における4重量%水溶液粘度は、5~50mPa・sであることが好ましく、特に好ましくは13~45mPa・s、更に好ましくは17~40mPa・sである。また、PVA系樹脂(A)として、未変性PVAを用いる場合には、未変性PVAの20℃における4重量%水溶液粘度は、5~50mPa・sであることが好ましく、特に好ましくは13~45mPa・s、更に好ましくは17~40mPa・sである。そして、PVA系樹脂(A)として、変性PVA系樹脂を用いる場合には、変性PVA系樹脂の20℃における4重量%水溶液粘度は、5~50mPa・sであることが好ましく、特に好ましくは13~45mPa・s、更に好ましくは17~30mPa・sである。かかる粘度が小さすぎると、包装材料としての水溶性フィルムの機械的強度が低下する傾向があり、一方、大きすぎると製膜時の水溶液粘度が高く生産性が低下する傾向がある。
【0024】
なお、上記の平均ケン化度は、JIS K 6726 3.5に準拠して測定され、4重量%水溶液粘度は、JIS K 6726 3.11.2に準じて測定される。
【0025】
本発明で用いる変性PVA系樹脂としては、アニオン性基変性PVA系樹脂、カチオン性基変性PVA系樹脂、ノニオン性基変性PVA系樹脂等があげられる。なかでも、水に対する溶解性の点で、アニオン性基変性PVA系樹脂を用いることが好ましい。アニオン性基の種類としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等があげられるが、耐薬品性及び経時安定性の点で、カルボキシル基、スルホン酸基が好ましく、特にはカルボキシル基が好ましい。
【0026】
本発明において、上記アニオン性基変性PVA系樹脂の変性量は、1~10モル%であることが好ましく、特に好ましくは2~9モル%、更に好ましくは2~8モル%、殊に好ましくは3~7モル%である。かかる変性量が少なすぎると、水に対する溶解性が低下する傾向があり、多すぎるとPVA系樹脂(A)の生産性が低下したり、生分解性が低下したりする傾向があり、また、ブロッキングを引き起こしやすくなる傾向もあり、実用性が低下するものとなる。
【0027】
本発明において、上記のPVA系樹脂(A)は単独で用いることもできるし、未変性PVA同士を併用すること、変性PVA系樹脂同士を併用すること、未変性PVAと変性PVA系樹脂を併用すること、更に、ケン化度、粘度、変性種、変性量等が異なる2種以上を併用すること等もできる。
本発明においては、PVA系樹脂(A)として、溶解性を長く保持できる点で、変性PVA系樹脂を含有することが好ましく、特にはアニオン性基変性PVA系樹脂を含有することが好ましく、更にはカルボキシル基変性PVAを含有することが好ましい。また、フィルム強度の点からは、アニオン性基変性PVA系樹脂と未変性PVAを両方含有することが好ましく、特にはカルボキシル基変性PVA系樹脂と未変性PVAを含有することが好ましい。
【0028】
変性PVA系樹脂の未変性PVAに対する含有割合(変性PVA系樹脂/未変性PVA)については、重量比で95/5~60/40であることが好ましく、特に好ましくは94/6~70/30、更に好ましくは93/7~80/20である。かかる含有重量割合が小さすぎると水への溶解性が低下する傾向があり、大きすぎるとシール性が低下する傾向がある。
【0029】
また、上記変性PVA系樹脂と未変性PVAの併用に際しては、未変性PVAは、特に20℃における4重量%水溶液粘度が、5~50mPa・sであることが好ましく、特に好ましくは8~45mPa・s、更に好ましくは12~40mPa・s、殊に好ましくは15~35mPa・sである。かかる粘度が小さすぎると、包装材料としての水溶性フィルムの機械的強度が低下する傾向があり、一方、大きすぎると製膜時の水溶液粘度が高く生産性が低下する傾向がある。
【0030】
次に、本発明の水溶性フィルムは、例えば、以下の通り製造される。
【0031】
未変性PVAは、ビニルエステル系化合物を重合して得られるビニルエステル系重合体をケン化することにより製造することができる。
【0032】
かかるビニルエステル系化合物としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、バーサティック酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等があげられ、なかでも、酢酸ビニルを用いることが好ましい。上記ビニルエステル系化合物は単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0033】
変性PVA系樹脂は、上記ビニルエステル系化合物と、ビニルエステル系化合物と共重合可能な不飽和単量体とを共重合させた後、ケン化する方法、または、未変性PVAを後変性する方法等により製造することができる。
【0034】
本発明の水溶性フィルムにおいては、上記ビニルエステル系化合物と共重合可能な以下の不飽和単量体を共重合させてもよいが、変性PVA系樹脂を得る場合は、以下の不飽和単量体のうち、変性基を有する不飽和単量体を共重合させる必要がある。不飽和単量体としては、例えば、エチレンやプロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィン類、3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類及びそのアシル化物等の誘導体、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、ウンデシレン酸等の不飽和酸類、その塩、モノエステル、あるいはジアルキルエステル、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なお、上記共重合可能な不飽和単量体の含有割合は、通常、ビニルエステル系化合物と共重合可能な不飽和単量体との合計に対して10モル%以下である。
【0035】
また、変性PVA系樹脂として、側鎖に一級水酸基を有するもので、例えば、側鎖の一級水酸基の数が、通常1~5個、好ましくは1~2個、特に好ましくは1個であるものもあげられ、更には、一級水酸基以外にも二級水酸基を有することが好ましい。かかる変性PVA系樹脂としては、例えば、側鎖にヒドロキシアルキル基を有するPVA系樹脂、側鎖に1,2-ジオール構造単位を有するPVA系樹脂等があげられる。側鎖に1,2-ジオール構造単位を有するPVA系樹脂は、例えば、(i)酢酸ビニルと3,4-ジアセトキシ-1-ブテンとの共重合体をケン化する方法、(ii)酢酸ビニルとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、(iii)酢酸ビニルと2,2-ジアルキル-4-ビニル-1,3-ジオキソランとの共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法、(iv)酢酸ビニルとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法、等により製造することができる。
【0036】
PVA系樹脂(A)の作製における重合方法としては、例えば、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法等、公知の重合方法を任意に用いることができるが、通常、メタノール、エタノールあるいはイソプロピルアルコール等の低級アルコールを溶媒とする溶液重合法により行われる。かかる溶液重合法における単量体の仕込み方法としては、変性PVA系樹脂の場合、まず、ビニルエステル系化合物の全量と、例えば前記のカルボキシル基を有する不飽和単量体の一部を仕込み、重合を開始し、残りの不飽和単量体を重合期間中に連続的にまたは分割的に添加する方法、前記のカルボキシル基を有する不飽和単量体を一括仕込みする方法等任意の方法を用いることができる。
【0037】
重合方法に応じて、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系触媒、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の過酸化物触媒等の公知の重合触媒を適宜選択し、配合することができる。また、重合の反応温度は50℃~重合触媒の沸点程度の範囲から選択される。
【0038】
ケン化にあたっては、得られた重合体をアルコールに溶解してケン化触媒の存在下に行なわれる。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール等の炭素数1~5のアルコールがあげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。また、アルコール中の共重合体の濃度は、20~50重量%の範囲から選択される。
【0039】
ケン化触媒としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート等のアルカリ金属の水酸化物やアルコラートの如きアルカリ触媒を用いることができ、また、酸触媒を用いることも可能である。ケン化触媒の使用量はビニルエステル系化合物に対して1~100ミリモル当量にすることが好ましい。これらのケン化触媒は、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0040】
上記変性PVA系樹脂におけるカルボキシル基変性PVA系樹脂は、任意の方法で製造することができ、例えば、(I)カルボキシル基を有する不飽和単量体とビニルエステル系化合物を共重合した後にケン化する方法、(II)カルボキシル基を有するアルコールやアルデヒドあるいはチオール等を連鎖移動剤として共存させてビニルエステル系化合物を重合した後にケン化する方法等があげられる。
【0041】
(I)または(II)の方法におけるビニルエステル系化合物としては、上記のものを用いることができるが、酢酸ビニルを用いることが好ましい。
【0042】
上記(I)の方法におけるカルボキシル基を有する不飽和単量体としては、例えば、エチレン性不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等)、またはエチレン性不飽和ジカルボン酸モノエステル(マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等)、またはエチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル(マレイン酸ジアルキルエステル、フマル酸ジアルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル等)〔但し、これらのジエステルは共重合体のケン化時に加水分解によりカルボキシル基に変化することが必要である。〕、またはエチレン性不飽和カルボン酸無水物(無水マレイン酸、無水イタコン酸等)、あるいはエチレン性不飽和モノカルボン酸((メタ)アクリル酸、クロトン酸等)等の単量体、及びそれらの塩があげられる。なかでもマレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、マレイン酸塩、無水マレイン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、(メタ)アクリル酸等を用いることが好ましく、特に好ましくは、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル、マレイン酸塩、無水マレイン酸、更に好ましくはマレイン酸モノアルキルエステルである。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0043】
上記(II)の方法においては、特に連鎖移動効果の大きいチオールに由来する化合物が有効であり、例えば、以下の一般式(1)~(3)で表される化合物があげられる。
【0044】
【化1】
【0045】
【化2】
【0046】
【化3】
【0047】
また、上記一般式(1)~(3)で表される化合物の塩もあげられる。具体的には、例えば、メルカプト酢酸塩、2-メルカプトプロピオン酸塩、3-メルカプトプロピオン酸塩、2-メルカプトステアリン酸塩等があげられる。これらの化合物は、単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0048】
上記カルボキシル基変性PVA系樹脂の製造方法としては、上記方法に限らず、例えば、PVA系樹脂(部分ケン化物または完全ケン化物)にジカルボン酸、アルデヒドカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸等の水酸基と反応性のある官能基をもつカルボキシル基含有化合物を後反応させる後変性方法等も実施可能である。
【0049】
また、スルホン酸基で変性されたスルホン酸変性PVA系樹脂を用いる場合は、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸またはその塩の共重合成分を、ビニルエステル系化合物と共重合した後、ケン化する方法、ビニルスルホン酸もしくはその塩、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸もしくはその塩等をPVA系樹脂にマイケル付加させる方法等により製造することができる。
【0050】
一方、上記未変性PVAを後変性する方法としては、未変性PVAをアセト酢酸エステル化、アセタール化、ウレタン化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化、オキシアルキレン化する方法等があげられる。
【0051】
なお、上記カルボキシル基を有する不飽和単量体、ビニルエステル系化合物以外に、その他の一般の単量体を、水溶性を損なわない範囲で含有させて重合を行なってもよく、これらの単量体としては、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸のアルキルエステル、飽和カルボン酸のアリルエステル、α-オレフィン、アルキルビニルエーテル、アルキルアリルエーテル、その他に(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、塩化ビニル等を用いることができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0052】
本発明において、PVA系樹脂(A)に可塑剤(B)を含有させることが、本発明の水溶性フィルムを用いて薬剤包装体とする場合に水溶性フィルムに柔軟性を持たせる点で好ましく、更には、耐ブリードアウト性の点から、可塑剤(B)として少なくとも以下の3種を併用することが重要である。
【0053】
かかる可塑剤(B)は、融点が50℃より大きく100℃以下の多価アルコール(b1)(以下、可塑剤(b1)と略記することがある。)、融点が50℃以下である多価アルコール(b2)(以下、可塑剤(b2)と略記することがある。)、融点が100℃より大きい多価アルコール(b3)(以下、可塑剤(b3)と略記することがある。)の3種であり、これらを必須成分とすることにより、耐ブリードアウト性に特に優れた効果を発揮するのである。
【0054】
上記の融点が50℃より大きく100℃以下の多価アルコール(b1)(可塑剤(b1))としては、例えば、トリメチロールプロパン(58℃)、サリチルアルコール(83℃)、トレイトール(88℃)、キシリトール(92℃)、トレハロース(97℃)、ソルビトール(95℃)等があげられ、なかでも特に糖アルコールであることが好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なお、上記( )内は、各化合物の融点を示す。
【0055】
上記の可塑剤(b1)の中でも、フィルムの強度を保つ点で、融点が99℃以下であることが好ましく、特に好ましくは97℃以下である。なお、融点の下限は好ましくは60℃、特に好ましくは70℃である。
【0056】
更に、本発明では、可塑剤(b1)の中でも1分子中の水酸基の数が3個以上であることが水溶解性の点で好ましく、特に好ましくは4~8個、更に好ましくは5~7個であり、具体的には、ソルビトール、キシリトールが好適なものとしてあげられる。
【0057】
また、本発明においては、可塑剤(b1)として、包装体の張りを保つ点で、分子量が100~250であることが好ましく、特に好ましくは130~220、更に好ましくは160~200であり、具体的には、ソルビトール、キシリトールが好適なものとしてあげられる。
【0058】
上記の融点が50℃以下である多価アルコール(b2)(可塑剤(b2))としては、脂肪族系アルコールの多くが適用可能であり、好ましくは、例えば、エチレングリコール(-13℃)、ジエチレングリコール(-11℃)、トリエチレングリコール(-7℃)、プロピレングリコール(-59℃)、テトラエチレングリコール(-5.6℃)、1,3-プロパンジオール(-27℃)、1,4-ブタンジオール(20℃)、1,6-ヘキサンジオール(40℃)、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール等の2価アルコール、分子量2000以下のポリプロピレングリコール(-31℃)、グリセリン(18℃)、ジグリセリン、トリエタノールアミン(21℃)等の3価以上のアルコールがあげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なお、上記( )内は、各化合物の融点を示す。
【0059】
上記の可塑剤(b2)の中でも、フィルムの柔軟性の点で、融点が30℃以下であることが好ましく、特に好ましくは20℃以下である。なお、融点の下限は通常-80℃であり、好ましくは-10℃、特に好ましくは0℃である。
【0060】
更に、本発明では、可塑剤(b2)の中でも1分子中の水酸基の数が4個以下であることが好ましく、特には3個以下であることが室温(25℃)近傍での柔軟性を制御しやすい点で好ましく、具体的には、グリセリンが好適である。
【0061】
また、本発明においては、可塑剤(b2)として、柔軟性を制御しやすい点で、分子量が100以下であることが好ましく、特に好ましくは50~100、更に好ましくは60~95であり、具体的には、グリセリン、プロピレングリコールが好適である。
【0062】
上記の融点が100℃より大きい多価アルコール(b3)(可塑剤(b3))としては、例えば、カテコール(105℃)、レゾルシノール(110℃)、ヒドロキノン(172℃)、ビスフェノールA(158℃)、ビスフェノールF(162℃)、ネオペンチルグリコール(127℃)等の2価アルコール、フロログルシノール(218℃)等の3価アルコール、エリスリトール(121℃)、ペンタエリスリトール(260℃)等の4価アルコール、アラビトール(103℃)、フシトール(153℃)、グルコース(146℃)、フルクトース(104℃)等の5価アルコール、マンニトール(166℃)、イノシトール(225℃)等の6価アルコール、ラクチトール(146℃)、スクロース(186℃)等の8価アルコール、マルチトール(145℃)等の9価アルコール、マルトトリイトール(186℃)等の10価以上のアルコール等があげられ、なかでも特に糖アルコールであることが好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なお、上記( )内は、各化合物の融点を示す。
【0063】
上記可塑剤(b3)の中でも、耐ブリードアウト性の点で、融点が100~400℃であることが好ましく、特に好ましくは110~300℃、更に好ましくは140~250℃、殊に好ましくは120~200℃である。
【0064】
更に、本発明では、可塑剤(b3)の中でも1分子中の水酸基の数が3個以上であることが可塑性の点で好ましく、特に好ましくは3~50個、更に好ましくは5~30個、殊に好ましくは7~20個であり、具体的には、マルチトールが好適なものとしてあげられる。
【0065】
また、本発明においては、可塑剤(b3)として、包装体の張りを保つ点で、分子量が150~800であることが好ましく、特に好ましくは200~600、更に好ましくは250~500、殊に好ましくは300~400であり、具体的には、マルチトールが好適なものとしてあげられる。
【0066】
本発明の水溶性フィルムにおいては、上記の可塑剤(b1)~(b3)以外のその他可塑剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で併用することもできる。かかるその他可塑剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、カルビトール等のアルコール類、ジブチルエーテル等のエーテル類、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ソルビン酸、クエン酸、アジピン酸等のカルボン酸類、シクロヘキサノン等のケトン類、モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、イミダゾール化合物等のアミン類、アラニン、グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン、リシン、システイン等のアミノ酸類等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0067】
本発明では、可塑剤(B)の含有量は、PVA系樹脂(A)100重量部に対して、25重量部以上であることが好ましく、特に好ましくは27~70重量部、更に好ましくは30~60重量部、殊に好ましくは35~50重量部である。かかる可塑剤(B)の含有量が少なすぎると液体洗剤等の液体を包装して包装体とした場合に経時で水溶性フィルムの張りが損なわれる傾向がある。なお、多すぎると機械的強度が低下する傾向がある。
【0068】
上記の可塑剤(b1)の含有量は、PVA系樹脂(A)100重量部に対して、5~50重量部であることが好ましく、特に好ましくは10~45重量部、更に好ましくは15~40重量部である。
かかる可塑剤(b1)が多すぎると水溶性フィルムが硬くなりすぎて、低湿環境下でもろくなる傾向があり、少なすぎると水溶性フィルムが柔らかくなりすぎて、ブロッキングが生じやすくなる傾向がある。
【0069】
上記の可塑剤(b2)の含有量は、PVA系樹脂(A)100重量部に対して、3.5~50重量部であることが好ましく、特に好ましくは4~40重量部、更に好ましくは4.5~30重量部である。
かかる可塑剤(b2)が多すぎると水溶性フィルムが柔らかくなりすぎて、ブロッキングが生じやすくなる傾向があり、少なすぎると水溶性フィルムが硬くなりすぎる傾向があり、低湿環境下でもろくなる傾向がある。
【0070】
上記の可塑剤(b3)の含有量は、PVA系樹脂(A)100重量部に対して、0.5~10重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.7~9.5重量部、更に好ましくは0.8~9重量部、殊に好ましくは1~8重量部である。
かかる可塑剤(b3)が少なすぎると可塑剤(b2)のブリードアウトが生じる傾向があり、多すぎると可塑剤(b3)自身のブリードアウトが生じる傾向がある。
【0071】
上記の可塑剤(b1)に対する可塑剤(b2)の含有割合(b2/b1)は、重量比で0.13~20であることが好ましく、特に好ましくは0.15~17、更に好ましくは0.2~15である。
可塑剤(b1)に対する可塑剤(b2)の含有割合が小さすぎるとブリードアウトを起こしやすい傾向があり、可塑剤(b1)に対する可塑剤(b2)の含有割合が大きすぎるとフィルムが柔らかくなりすぎる傾向がある。
【0072】
上記の可塑剤(b3)に対する可塑剤(b1)の含有割合(b1/b3)は、重量比で1~40であることが好ましく、特に好ましくは2~35、更に好ましくは3~30である。
可塑剤(b3)に対する可塑剤(b1)の含有割合が小さすぎると可塑剤(b3)のブリードアウトが生じやすい傾向があり、可塑剤(b3)に対する可塑剤(b1)の含有割合が大きすぎると可塑剤(b1)のブリードアウトが生じやすい傾向がある。
【0073】
上記の可塑剤(b2)に対する可塑剤(b3)の含有割合(b3/b2)は、重量比で0.1~4であることが好ましく、特に好ましくは0.15~3、更に好ましくは0.2~2である。
可塑剤(b2)に対する可塑剤(b3)の含有割合が小さすぎると包装体の張りを保てない傾向があり、可塑剤(b2)に対する可塑剤(b3)の含有割合が大きすぎるとフィルムが硬くなりすぎる傾向がある。
【0074】
更に、可塑剤(B)全体に対して、可塑剤(b1)、可塑剤(b2)及び可塑剤(b3)の合計量が70重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは80重量%以上、更に好ましくは90重量%以上、殊には可塑剤(B)全体が上記可塑剤(b1)~(b3)の3種のみからなることが好ましい。かかる可塑剤(b1)~(b3)の合計量が少なすぎると機械的強度が低下する傾向がある。
【0075】
本発明の水溶性フィルムにおいては、必要に応じて、更に、フィラー(C)や界面活性剤(D)等を含有させることができる。
【0076】
本発明で用いられるフィラー(C)は、耐ブロッキング性の目的で含有されるものであり、具体例としては、無機フィラーや有機フィラーがあげられ、なかでも有機フィラーが好ましい。また、平均粒子径としては、0.1~50μmであることが好ましく、特に好ましくは0.5~40μmである。なお、上記平均粒子径は、例えば、レーザ回折式粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0077】
かかる無機フィラーとしては、その平均粒子径が1~10μmであることが好ましく、かかる平均粒子径が小さすぎると水溶性フィルムの水中への分散性の効果が少ない傾向があり、大きすぎると水溶性フィルムが成形加工で引き伸ばされた際にピンホールとなったり、外観が低下する傾向がある。
【0078】
無機フィラーの具体例としては、例えば、タルク、クレー、二酸化ケイ素、ケイ藻土、カオリン、雲母、アスベスト、石膏、グラファイト、ガラスバルーン、ガラスビーズ、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸アンモニウム、亜硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、ウィスカー状炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドーソナイト、ドロマイト、チタン酸カリウム、カーボンブラック、ガラス繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、加工鉱物繊維、炭素繊維、炭素中空球、ベントナイト、モンモリロナイト、銅粉、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸鉄、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、硝酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アルミニウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、リン酸ナトリウム、クロム酸カリウム等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0079】
有機フィラーとしては、その平均粒子径が0.5~50μmであることが好ましく、特に好ましくは1~40μm、更に好ましくは2~30μm、殊に好ましくは3~25μmである。かかる平均粒子径が小さすぎるとコストが高くなる傾向があり、大きすぎると水溶性フィルムが成形加工で引き伸ばされた際にピンホールとなる傾向がある。
【0080】
かかる有機フィラーとしては、例えば、澱粉、メラミン系樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂の他、ポリ乳酸等の生分解性樹脂等があげられる。有機フィラーとして、特にはポリメチル(メタ)アクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、澱粉等の生分解性樹脂が好適に用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0081】
上記の澱粉としては、例えば、生澱粉(トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、コムギ澱粉、キッサバ澱粉、サゴ澱粉、タピオカ澱粉、モロコシ澱粉、コメ澱粉、マメ澱粉、クズ澱粉、ワラビ澱粉、ハス澱粉、ヒシ澱粉等)、物理的変性澱粉(α-澱粉、分別アミロース、湿熱処理澱粉等)、酵素変性澱粉(加水分解デキストリン、酵素分解デキストリン、アミロース等)、化学分解変性澱粉(酸処理澱粉、次亜塩素酸酸化澱粉、ジアルデヒド澱粉等)、化学変性澱粉誘導体(エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン化澱粉、架橋澱粉等)等があげられる。なかでも入手の容易さや経済性の点から、生澱粉、とりわけトウモロコシ澱粉、コメ澱粉を用いることが好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0082】
上記フィラー(C)の含有量については、PVA系樹脂(A)100重量部に対して1~30重量部であることが好ましく、特に好ましくは2~25重量部、更に好ましくは2.5~20重量部である。かかる含有量が少なすぎると耐ブロッキング性が低下する傾向があり、多すぎると水溶性フィルムが成形加工で引き伸ばされた際にピンホールとなる傾向がある。
【0083】
本発明で用いられる界面活性剤(D)としては、水溶性フィルム製造時のキャスト面からの剥離性改善の目的で含有されるものであり、通常、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤があげられる。ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルノニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル等があげられる。なかでも、製造安定性の点でポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテルが好適である。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0084】
かかる界面活性剤(D)の含有量については、PVA系樹脂(A)100重量部に対して0.01~3重量部であることが好ましく、特に好ましくは0.1~2.5重量部、更に好ましくは0.5~2重量部である。かかる含有量が少なすぎると製膜装置のキャスト面と製膜した水溶性フィルムとの剥離性が低下して生産性が低下する傾向があり、多すぎると水溶性フィルムを包装体とする場合に実施するシール時の接着強度が低下する等の不都合を生じる傾向がある。
【0085】
なお、本発明の水溶性フィルムにおいては、発明の目的を阻害しない範囲で、更に他の水溶性高分子(例えば、ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、デキストリン、キトサン、キチン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等)や、香料、防錆剤、着色剤、増量剤、消泡剤、紫外線吸収剤、流動パラフィン類、蛍光増白剤、苦味成分(例えば、安息香酸デナトニウム等)等を含有させることも可能である。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0086】
また、本発明の水溶性フィルムにおいては、黄変抑制の点で酸化防止剤を配合することが好ましい。かかる酸化防止剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸アンモニウム等の亜硫酸塩、酒石酸、アスコルビン酸、チオ硫酸ナトリウム、カテコール、ロンガリット等があげられ、なかでも亜硫酸塩、特には亜硫酸ナトリウムが好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。かかる配合量はPVA系樹脂(A)100重量部に対して0.1~10重量部が好ましく、特に好ましくは0.2~5重量部、更に好ましくは0.3~3重量部である。
【0087】
本発明の水溶性フィルムは、例えば、つぎのようにして得ることができる。すなわち、上記PVA系樹脂(A)および可塑剤(B)、必要に応じて更に、フィラー(C)および界面活性剤(D)等を含有してなる樹脂組成物を、水を用いて溶解または分散して製膜原料とする。そして、この製膜原料を製膜することにより、目的とする水溶性フィルムを得る。かかる製膜の方法としては、例えば、溶融押出法や流延法等の方法を採用することができ、膜厚の精度の点で流延法が好ましい。
【0088】
上記流延法による製膜は、例えば、以下のようにして行われる。まず、PVA系樹脂(A)(粉末)に水を加えてPVA系樹脂水溶液とし、更に可塑剤(B)および必要に応じてフィラー(C)、界面活性剤(D)等の配合物を加え、樹脂組成物の水分散液または水溶液を得る。あるいは、PVA系樹脂(A)、更に可塑剤(B)および各種配合物を含有した樹脂組成物に水を加えて樹脂組成物の水分散液または水溶液を得る。
【0089】
かかる樹脂組成物の水分散液または水溶液の固形分濃度は、10~50重量%であることが好ましく、特に好ましくは15~40重量%、更に好ましくは20~35重量%である。かかる濃度が低すぎると水溶性フィルムの生産性が低下する傾向があり、高すぎると粘度が高くなりすぎ、ドープの脱泡に時間を要したり、水溶性フィルム製膜時にダイラインが発生したりする傾向がある。更に、エンドレスベルトやドラムロールの金属表面の温度が低すぎると乾燥に時間がかかる傾向があり、高すぎると製膜時に発泡する傾向がある。
【0090】
上記樹脂組成物の溶解方法としては、通常、常温溶解、高温溶解、加圧溶解等が採用され、なかでも、未溶解物が少なく、生産性に優れる点から高温溶解、加圧溶解が好ましい。溶解温度は、高温溶解の場合、通常80~100℃、好ましくは90~100℃であり、加圧溶解の場合、通常80~130℃、好ましくは90~120℃である。溶解時間としては、通常1~20時間、好ましくは2~15時間、特に好ましくは3~10時間である。溶解時間が短すぎると未溶解物が残る傾向にあり、長すぎると生産性が低下する傾向にある。
【0091】
また、溶解工程において、撹拌翼としては、例えば、パドル、フルゾーン、マックスブレンド、ツイスター、アンカー、リボン、プロペラ等があげられる。
更に、溶解した後、得られたPVA系樹脂水溶液に対して脱泡処理が行われるが、かかる脱泡方法としては、例えば、静置脱泡、真空脱泡、二軸押出脱泡等があげられる。なかでも静置脱泡、二軸押出脱泡が好ましい。
静置脱泡の温度としては、通常50~100℃、好ましくは70~95℃であり、脱泡時間は、通常2~30時間、好ましくは5~20時間である。
【0092】
上記水分散液または水溶液からなる製膜原料を、T-ダイ等のスリットを通過させ、エンドレスベルトやドラムロールの金属表面やポリエチレンテレフタレートフィルム等のプラスチック基材表面等のキャスト面に流延し、乾燥し、必要に応じて更に熱処理して本発明のPVA系水溶性フィルムを得ることができる。
例えば、下記の製膜条件にて行うことができる。
【0093】
PVA系樹脂組成物の水分散液または水溶液における吐出部の温度は、60~98℃であることが好ましく、特に好ましくは70~95℃である。かかる温度が低すぎると乾燥時間が長くなり生産性が低下する傾向があり、高すぎると発泡等が生じる傾向がある。
【0094】
製膜に際して、製膜速度は3~80m/分であることが好ましく、特に好ましくは5~60m/分、更に好ましくは8~50m/分である。
また、熱処理においては、熱ロールにて行うこともできるが、その他、フローティングや遠赤外線処理等もあげられる。とりわけ、熱ロールにて行うことが生産性の点で好ましい。熱処理温度としては、50~150℃であることが好ましく、特に好ましくは70~130℃であり、熱処理時間としては、1~60秒間であることが好ましく、特に好ましくは3~50秒間、更に好ましくは5~40秒間である。
【0095】
また、アプリケーターを用いて、樹脂組成物の水分散液または水溶液をポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンフィルム等のプラスチック基材あるいは金属基材上にキャストして、乾燥させてPVA系フィルムを得ることもできる。
【0096】
PVA系水溶性フィルムの厚みとしては、用途等により適宜選択されるものであるが、好ましくは10~120μm、特に好ましくは30~110μm、更に好ましくは45~100μmである。かかる厚みが薄すぎるとPVA系フィルムの機械的強度が低下する傾向があり、厚すぎると水への溶解速度が遅くなる傾向があり、製膜効率も低下する傾向がある。
【0097】
PVA系水溶性フィルムの幅としては、用途等により適宜選択されるものであるが、好ましくは300~5000mm、特に好ましくは500~4000mm、更に好ましくは800~3000mmである。かかる幅が狭すぎると生産効率が低下する傾向があり、広すぎると弛みや膜厚の制御が困難になる傾向がある。
【0098】
PVA系水溶性フィルムの長さとしては、用途等により適宜選択されるものであるが、好ましくは500~20000m、特に好ましくは800~15000m、更に好ましくは1000~10000mである。かかる長さが短すぎるとフィルムの切り替えに手間を要する傾向があり、長すぎると巻き締まりによる外観不良や重量が重くなりすぎる傾向がある。
【0099】
また、該PVA系水溶性フィルムの表面はプレーンであってもよいが、耐ブロッキング性、加工時の滑り性、製品同士の密着性軽減、及び外観の点から、PVA系水溶性フィルムの片面或いは両面にエンボス模様、微細凹凸模様、特殊彫刻柄、等の凹凸加工を施しておくことも好ましい。
かかる凹凸加工に際しては、加工温度は、通常60~150℃であり、好ましくは80~140℃である。加工圧力は、通常2~8MPa、好ましくは3~7MPaである。加工時間は、上記加工圧力、製膜速度にもよるが、通常0.01~5秒間であり、好ましくは0.1~3秒間である。
また、必要に応じて、凹凸加工処理の後に、熱によるフィルムの意図しない延伸を防止するために、冷却処理を施してもよい。
【0100】
また、本発明においては、得られたPVA系水溶性フィルムの含水率は、機械的強度やシール性の点で3~15重量%であることが好ましく、特には5~14重量%、更には6~13重量%であることが好ましい。かかる含水率が低すぎるとフィルムが硬くなりすぎる傾向があり、高すぎるとブロッキングが生じやすくなる傾向がある。かかる含水率に調整するに際しては、乾燥条件や調湿条件を適宜設定することにより達成することができる。
なお、上記含水率は、JIS K 6726 3.4に準拠して測定され、得られた揮発分の値を含水率とする。
【0101】
本発明において、上記製膜は、例えば、10~35℃、特には15~30℃の環境下にて行うことが好ましい。なお、湿度については、通常70%RH以下である。
【0102】
本発明において、得られたPVA系水溶性フィルムは、芯管(S1)に巻き取ることによりフィルムロールとすることができる。得られたフィルムロールは、そのまま製品として供給することもできるが、好ましくは所望サイズのフィルム幅に見合った長さの芯管(S2)に巻き取り、フィルムロールとして供給する。
【0103】
フィルムを巻き取る芯管(S1)は円筒状のもので、その材質は金属、プラスチック等、適宜選択できるが、堅牢性、強度の点で金属であることが好ましい。
芯管(S1)の内径は、3~30cmが好ましく、より好ましくは10~20cmである。
芯管(S1)の肉厚は、1~30mmが好ましく、より好ましくは2~25mmである。
芯管(S1)の長さは、フィルムの幅より長くすることが必要で、フィルムロールの端部から1~50cm突出するようにするのが好ましい。
【0104】
また、芯管(S2)は円筒状のもので、その材質は紙や金属、プラスチック等、適宜選択できるが、軽量化及び取扱いの点で紙であることが好ましい。
芯管(S2)の内径は、3~30cmが好ましく、より好ましくは10~20cmである。
芯管(S2)の肉厚は、1~30mmが好ましく、より好ましくは3~25mmである。
芯管(S2)の長さは、製品のPVA系フィルム幅と同等或いはそれ以上の長さのものであればよく、好ましくは同等~50cm長いものである。
【0105】
芯管(S2)に巻き取る際には、PVA系水溶性フィルムは所望の幅にスリットされる。
かかるスリットに当たっては、シェア刃やレザー刃等を用いてスリットされるが、好ましくはシェア刃でスリットすることがスリット断面の平滑性の点で好ましい。
【0106】
本発明においては、得られたPVA系水溶性フィルムをロール状に巻き取ったもの(この状態のものを、以下「フィルムロール」という)は、水蒸気バリア性樹脂からなるカバーフィルムで包装することが好ましい。かかるカバーフィルムとしては特に限定されないが、透湿度が10g/m2・24hr(JIS Z 0208に準じて測定)以下のものが使用可能である。具体例としては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデンコートポリプロピレン、ガラス蒸着ポリエステル等の単層フィルム、あるいはこれらの積層フィルム、または割布、紙、不織布との積層フィルム等があげられる。積層フィルムとしては、例えば、ガラス蒸着ポリエステルとポリエチレンの積層フィルム、ポリ塩化ビニリデンコートポリプロピレンとポリエチレンの積層フィルム等が例示される。
【0107】
かかるカバーフィルムは、帯電防止処理をしておくことも異物の混入を防ぐ点で好ましく、このような帯電防止剤はフィルムに練り込まれていても、表面にコーティングされていてもよい。練り込みの場合は樹脂に対して0.01~5重量%程度、表面コーティングの場合は0.01~1g/m2程度の帯電防止剤が使用される。
帯電防止剤としては、例えば、アルキルジエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、高級脂肪酸アルカノールアミド、ソルビタン脂肪酸エステル等が使用される。
【0108】
次に、上記カバーフィルムで包装されたフィルムロールを、更にアルミニウム素材からなる包装フィルムで包装することが好ましいが、かかる包装フィルムとしては、アルミニウム箔、アルミニウム箔と耐湿性プラスチックフィルムの積層フィルム(例えばアルミニウム箔とポリエチレンフィルムの積層フィルム)、アルミニウム蒸着フィルムと耐湿性プラスチックフィルムの積層フィルム(例えばアルミニウム蒸着ポリエステルフィルムとポリエチレンフィルムの積層フィルム)、アルミナ蒸着フィルムと耐湿性プラスチックフィルムの積層フィルム(例えばアルミナ蒸着ポリエステルフィルムとポリエチレンフィルムの積層フィルム)等があげられ、本発明では特に、アルミニウム箔とポリオレフィンフィルムの積層フィルム、アルミニウム蒸着フィルムとポリオレフィンフィルムの積層フィルムが有用で、特には、延伸ポリプロピレンフィルム/ポリエチレンフィルム/アルミニウム箔/ポリエチレンフィルムの構成よりなる積層フィルム、延伸ポリプロピレンフィルム/低密度ポリエチレンフィルム/アルミニウム箔の構成よりなる積層フィルム等が有用である。
【0109】
包装に当たっては、内側の水蒸気バリア性樹脂のカバーフィルム、外側のアルミニウム素材からなる包装フィルムで順次包装を行い、幅方向に余った部分を芯管に押し込めばよい。
【0110】
本発明のフィルムロールには、端部の傷付きやゴミ等の異物の付着を防止するため、フィルムロールに直接、あるいは包装フィルムで包装した上から、フィルムロールの両端部に芯管貫通孔をもつ保護パッドを装着させることができる。
保護パッドの形状は、フィルムロールにあわせて、円盤状のシート、フィルムが実用的である。保護効果を顕著にするため発泡体、織物状、不織布状等の緩衝機能を付加させるのがよい。また、湿気からフィルムロールを守るため乾燥剤を別途封入したり、前記保護パッドに積層または混入したりしておくこともできる。
保護パッドの素材はプラスチックが有利であり、その具体例としては、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル等があげられる。
【0111】
また、上記乾燥剤入りの保護パッドとしては、例えば、塩化カルシウム、シリカゲル、モレキュラーシーブス、糖類、特に浸透圧の高い糖類、吸水性樹脂等の乾燥剤または吸水剤を天然セルロース類、合成セルロース類、ガラスクロス、不織布等の成形可能な材料に分散、含浸、塗布乾燥した吸湿層としたものや、これら乾燥剤または吸水剤を上記の成形可能な材料やポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、テフロン(登録商標)フィルム等の熱可塑性樹脂フィルムでサンドイッチ状に挟んだりしたものがあげられる。
市販されているシート状乾燥剤の例としては、アイディ社製の「アイディシート」や品川化成社製の「アローシート」、「ゼオシート」、ハイシート工業社製の「ハイシートドライ」等がある。
【0112】
かかる手段によって包装されたフィルムロールは、芯管の両端突出部にブラケット(支持板)を設けたり、該両端突出部を架台に載置したりして支えられ、接地することなく、いわゆる宙に浮いた状態で保管や輸送が行われることが好ましい。フィルムの幅が比較的小さい場合はブラケットが、フィルムの幅が比較的大きい場合は架台が使用される。
ブラケットはベニヤ板やプラスチック板からなるものであり、その大きさはブラケットの4辺がフィルムロールの直径より大きいものであればよい。
【0113】
そして、前記フィルムロールの両端の芯管突出部に一対のブラケットを互いに向かい合うように直立して配置、嵌合させフィルムロールに設けられる。嵌合は、ブラケットの中央部に芯管直径よりやや大きめのくりぬき穴を設けたり、芯管が挿入し易いようにブラケットの上部から中心部までU字型にくりぬかれていてもよい。
【0114】
ブラケットで支持されたフィルムロールは段ボール箱等のカートンに収納されて保管や輸送がなされるが、収納時の作業を円滑にするため矩形のブラケットを使用するときはその四隅を切り落としておくことが好ましい。
また、上記一対のブラケットがぐらつかないように、両者を結束テープで固定するのが有利であり、そのときテープの移動や弛みが起こらないようにブラケットの側面(厚み部分)にテープ幅と同程度のテープズレ防止溝を設けておくのも実用的である。
【0115】
包装したフィルムロールの保管または輸送にあたっては、極端な高温や低温、低湿度、高湿度条件を避けるのが望ましく、具体的には温度10~30℃、湿度40~75%RHであるのがよい。
【0116】
かくして得られた本発明の水溶性フィルムは、様々な形態で提供することができる。そして、その用途は、特に限定されるものではないが、なかでも、各種の包装用途等に有用であり、とりわけ薬剤等のユニット包装用途に有用である。薬剤としては、特に制限はなく、アルカリ性、中性、酸性のいずれであってもよく、薬剤の形状も顆粒、錠剤、粉体、粉末、液状等いずれの形状でもよい。特に、水に溶解または分散させて用いる、液体洗剤等の液体薬剤を包装するのに有用である。
【0117】
液体薬剤としては、水に溶解または分散させた時のpH値が6~12であることが好ましく、特に好ましくは7~11であり、また、液体薬剤の水分量が15重量%以下であることが好ましく、特に好ましくは0.1~10重量%、更に好ましくは0.1~7重量%であり、フィルムがゲル化したり不溶化することがなく水溶性に優れることとなる。
なお、上記pH値は、JIS K 3362 8.3に準拠して測定される。また、水分量は、JIS K 3362 7.21.3に準じて測定される。
【0118】
上記液体薬剤としては、衣料等の洗濯や食器等の洗浄等、各種の洗浄や殺菌、表面仕上げ等に用いられる液状の薬剤があげられる。具体的には、例えば、液体洗剤、柔軟仕上げ剤、芳香仕上げ剤、漂白・殺菌剤等があげられ、なかでも、液体洗剤に用いることが好適である。
【0119】
<薬剤包装体>
本発明の薬剤包装体は、水溶性フィルムからなる包装体内に液体薬剤が内包されてなるものである。そして、運搬や保存の際には液体薬剤を内包した形状を保持し、使用時(洗濯時等)には、水溶性フィルムからなる包装体が水と接触して溶解し、内包されている液体薬剤が水中に流出し拡散して対象物に薬剤が接触して薬効を発揮するようになっている。
【0120】
本発明の薬剤包装体の大きさは、通常長さ10~50mm、好ましくは20~40mmである。また、水溶性フィルムからなる包装体のフィルムの厚みは、通常10~120μm、好ましくは15~110μm、特に好ましくは20~100μmである。内包される液体薬剤の量は、通常5~50mL、好ましくは10~40mLである。
【0121】
また、本発明の薬剤包装体は、その表面が、耐ブロッキング性、加工時の滑り性、製品(包装体)同士の密着性軽減、及び外観の点から、包装体(水溶性フィルム)の外表面にエンボス模様や微細凹凸模様、特殊彫刻柄等の凹凸加工が施されたものであることが好ましいが、平滑であってもよい。
【0122】
本発明の水溶性フィルムを用いて、液体薬剤を包装して包装体とするに際しては、公知の方法を採用することができる。例えば、まず、水溶性フィルムを、多数の凹部が並ぶ型上に載置し、型を高温(例えば50~60℃)に加熱して水溶性フィルムを軟化させる。そして、真空成形により水溶性フィルムを各凹部に沿わせて凹凸状に成形した後、上記水溶性フィルムの各凹部内に、所定量ずつ計量された液体薬剤を充填し、その上に、もう一枚の水溶性フィルムを重ねる。そして、各凹部の開口をシールすることにより、液体薬剤が所定量ずつ密封された中間成形品を得る。そして、この中間成形品を脱型し、個別に裁断することにより、ユニット包装タイプの薬剤包装体を得ることができる。
【0123】
なお、上記水溶性フィルム同士を重ねてシールするには、少なくとも一方の水溶性フィルムを加熱して軟化させた状態でシールする熱シールの他、水を用いた水シール、糊を用いた糊シール等があげられ、なかでも水を用いた水シールによる方法が汎用的で有利である。
【実施例
【0124】
以下、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
【0125】
PVA系樹脂として、以下のものを用意した。
・カルボキシル基変性PVA(A1):20℃における4%水溶液粘度22mPa・s、平均ケン化度94モル%、マレイン酸モノメチルエステルによる変性量2.0モル%
・未変性PVA(A2):20℃における4%水溶液粘度18mPa・s、平均ケン化度88モル%
【0126】
可塑剤として、以下のものを用意した。
・ソルビトール(b1)
・グリセリン(b2)
・マルチトール(b3)
【0127】
<実施例1>
PVA系樹脂(A)として、カルボキシル基変性PVA(A1)を90部、未変性PVA(A2)を10部、可塑剤(B)として、ソルビトール(b1)を34部、グリセリン(b2)を5部、マルチトール(b3)を1部、フィラー(C)として澱粉(平均粒子径20μm)を8部、界面活性剤(D)として、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステルモノエタノールアミン塩を2部及び水を混合して、溶解処理をし、澱粉が分散したPVA水溶液(固形分濃度25%)を得た。
得られたPVA水溶液を80℃にて脱泡し、40℃まで冷やした。そのPVA水溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に流延し、3mの乾燥室(105℃)の中を0.350m/分の速度で通過させ乾燥し、厚み89μmのPVA系フィルム(水溶性フィルム)を得た。
上記で得られたPVA系フィルムについて、以下の評価を行った。評価結果を後記の表1に示す。
【0128】
〔耐ブリードアウト性〕
上記PET上に製膜されたPVA系フィルムをPETフィルムから剥がさずに、縦25cm、横20cmのフィルムを1枚として、上からPVA系フィルム、PETフィルム、PVA系フィルム、PETフィルムの順になるように8枚重ねてチャック袋(縦30cm、横25cm)に入れた。チャック袋の蓋を開封した状態で室温(20℃±15℃)、常湿(45~85%RH)条件下で4か月間保存した後の状態を目視観察し、下記の基準で評価した。
○・・・フィルムに白化は見られず、ブリードアウトは確認されなかった。
×・・・固体や液状等のブリードアウトが確認され、フィルムが白化した。
【0129】
<実施例2~3、比較例1>
実施例1において、表1に示す通りに各配合成分を変更した以外は同様に行い、PVA系フィルム(水溶性フィルム)を得た。
得られたPVA系フィルム(水溶性フィルム)について、実施例1と同様の評価を行った。
【0130】
実施例及び比較例の評価結果を下記表1に示す。
【0131】
【表1】
【0132】
上記表1の結果より、可塑剤(B)として(b1)~(b3)の融点の異なる特定の3種を併用した実施例の水溶性フィルムでは耐ブリードアウト性に優れるものであったのに対して、可塑剤(B)として(b3)を用いず2種のみを用いた比較例の水溶性フィルムでは耐ブリードアウト性に劣るものであった。かかる結果より、実施例の水溶性フィルムは、例えば、液体洗剤を包装して包装体とする場合にもブリードアウトが生じないため良好に包装体を製造することができ、得られた包装体は経時での変化も少なく、良好な包装体となることがわかる。
【0133】
上記実施例においては、本発明における具体的な形態について示したが、上記実施例は単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。当業者に明らかな様々な変形は、本発明の範囲内であることが企図されている。
【産業上の利用可能性】
【0134】
本発明の水溶性フィルムは、優れた水溶性を有するとともに、水溶性フィルムの引張強度が高く、引張伸度が高いといった機械特性に優れるうえ、包装体形成前にブリードアウトが生じない水溶性フィルムであり、各種の包装用途に用いることができ、特に薬剤等のユニット包装用途に有用である。