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特許7119421識別マーク付きガラス板、およびガラス板の識別マーク形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】識別マーク付きガラス板、およびガラス板の識別マーク形成方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/22 20060101AFI20220809BHJP
   C03C 17/42 20060101ALI20220809BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20220809BHJP
【FI】
C03C17/22 Z
C03C17/42
B23K26/00 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018033409
(22)【出願日】2018-02-27
(65)【公開番号】P2019147714
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2020-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】野津 啓司
(72)【発明者】
【氏名】大場 義晃
【審査官】大塚 晴彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-164118(JP,A)
【文献】特許第5959663(JP,B1)
【文献】特開2017-070989(JP,A)
【文献】特開2006-061430(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0044582(US,A1)
【文献】特開平10-099978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 17/00 -17/42
C03C 23/00
B23K 26/00
B60J 1/00
B32B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板と、前記ガラス板の少なくとも一方の主面の周縁部に沿って形成された遮蔽層とを備えるとともに、前記遮蔽層が形成されている領域内に識別マークが形成されている、識別マーク付きガラス板であって、
前記識別マークは、複数の開口部から構成されており、
前記開口部は、前記開口部よりも面積が小さい複数の孔が重複しつながり合った一まとまりの開口部であり、
前記孔は、半径が0.05mm以上0.3mm以下の略円形状であり、
前記識別マークは、暗色材料で隠蔽されており、
前記暗色材料は、暗色顔料を含有する有機材料であることを特徴とする、識別マーク付きガラス板。
【請求項2】
ガラス板と、前記ガラス板の少なくとも一方の主面の周縁部に沿って形成された遮蔽層とを備えるとともに、前記遮蔽層が形成されている領域内に識別マークが形成されている、識別マーク付きガラス板であって、
前記識別マークは、複数の開口部から構成されており、
前記開口部は、前記開口部よりも面積が小さい複数の孔が重複しつながり合った一まとまりの開口部であり、
前記孔は、半径が0.05mm以上0.3mm以下の略円形状であり、
前記ガラス板の前記遮蔽層が形成されている主面とは反対側の主面には、中間膜を介して別のガラス板が貼り合わせられており、
前記別のガラス板を自動車用の開口部に適用した場合の車内側に位置する方の主面の周縁部に沿って遮蔽層が配置されており、
前記別のガラス板の前記遮蔽層が前記識別マークを隠蔽する位置に設けられていることを特徴とする、識別マーク付きガラス板。
【請求項3】
前記孔は、前記ガラス板まで達している、請求項1または2に記載の識別マーク付きガラス板。
【請求項4】
前記開口部同士が最も近接する距離は、0.2mm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の識別マーク付きガラス板。
【請求項5】
前記識別マークは、面積、および/または形状が異なる複数の前記開口部からなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の識別マーク付きガラス板。
【請求項6】
前記識別マークは、前記ガラス板の端部近傍に形成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の識別マーク付きガラス板。
【請求項7】
前記識別マークが形成されている前記遮蔽層の厚みは、3μm以上15μm以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の識別マーク付きガラス板。
【請求項8】
前記識別マークは、一次元コード、もしくは二次元コードである、請求項1~7のいずれか一項に記載の識別マーク付きガラス板。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の識別マーク付きガラス板を備える自動車であって、
自動車の車体に対して前記ガラス板の周縁部がウレタンシーラントで接着保持されており、
少なくとも前記識別マークが形成されている前記遮蔽層で前記ウレタンシーラントを外界の紫外線から遮蔽していることを特徴とする自動車。
【請求項10】
少なくとも一方の主面の周縁部に沿って形成された遮蔽層が形成されたガラス板の、前記遮蔽層にレーザー光を照射して識別マークを形成する、ガラス板の識別マーク形成方法であって、
光源より、前記ガラス板の前記遮蔽層に向けて出力が2W以上25W以下の前記レーザー光を照射し、前記レーザー光が照射された前記遮蔽層に、半径が0.05mm以上0.3mm以下の略円形状であって、前記ガラス板の表面まで達する孔を形成する工程と、
前記孔を形成しながら、前記レーザー光の照射位置を移動させて開口部を形成する工程と、
前記開口部を複数形成し、前記識別マークを形成する工程と、
前記識別マークの前記開口部を、暗色顔料を含有する有機材料で覆う工程と、
を有することを特徴とする、ガラス板の識別マーク形成方法。
【請求項11】
前記レーザー光が照射されると同時に、前記遮蔽層にレーザー光が照射されている領域近傍において、換気、排気、吸引、吹き飛ばし、および集塵から選ばれる少なくとも1以上の処理を行う、請求項10に記載のガラス板の識別マーク形成方法。
【請求項12】
一方の主面の周縁部に沿って形成された第1の遮蔽層が形成されたガラス板の、前記第1の遮蔽層にレーザー光を照射して識別マークを形成する、ガラス板の識別マーク形成方法であって、
ここで前記ガラス板の前記第1の遮蔽層が形成されている主面とは反対側の主面には、中間膜を介して別のガラス板が接合されており、前記別のガラス板を自動車用の開口部に適用した場合の車内側に位置する方の主面の周縁部に沿って第2の遮蔽層が配置されており、
光源より、前記ガラス板の前記第1の遮蔽層に向けて出力が2W以上25W以下の前記レーザー光を照射し、前記レーザー光が照射された前記第1の遮蔽層中の前記第2の遮蔽層で隠蔽される位置に、半径が0.05mm以上0.3mm以下の略円形状であって、前記ガラス板の表面まで達する孔を形成する工程と、
前記孔を形成しながら、前記レーザー光の照射位置を移動させて開口部を形成する工程と、
前記開口部を複数形成し、前記識別マークを形成する工程と、
を有することを特徴とする、ガラス板の識別マーク形成方法。
【請求項13】
前記レーザー光が照射されると同時に、前記第1の遮蔽層にレーザー光が照射されている領域近傍において、換気、排気、吸引、吹き飛ばし、および集塵から選ばれる少なくとも1以上の処理を行う、請求項12に記載のガラス板の識別マーク形成方法。
【請求項14】
前記開口部を形成する工程において、前記レーザー光の照射位置の移動速度が200mm/s以上3000mm/sである、請求項10~13のいずれか一項に記載のガラス板の識別マーク形成方法。
【請求項15】
前記レーザー光の波長が、1064nmである、請求項10~14のいずれか一項に記載のガラス板の識別マーク形成方法。
【請求項16】
前記孔を形成する工程、前記開口部を形成する工程、および前記識別マークを形成するする工程が、暗室内で行われる、請求項10~15のいずれか一項に記載のガラス板の識別マーク形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、識別マーク付きガラス板、およびガラス板の識別マーク形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用の開口部に適用されるガラス板において、メーカーコード、品番、認証印、製造日、およびJISなどの識別マークを、ガラス板の表面に形成することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ショットブラスト法などにより、ガラスの表面に粗面部を形成することによって識別マークを形成することが開示されている。また、特許文献2には、暗色の樹脂枠体が形成されたプラスチックガラスにおいて、樹脂枠体が形成されている面とは反対方向からレーザー光を照射し、プラスチックガラスと樹脂枠体との境界部に明色化部を設けて識別マークを形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6067529号公報
【文献】特許第5959663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されている方法では、ガラス板の表面を粗面化させるため、ガラス板の強度が低下する恐れがある。また、特許文献2に開示されている方法では、プラスチック(樹脂)は傷つきやすく、また経年劣化しやすいため、読み取り性を長期間保証することが難しいという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の識別マーク付きガラス板は、
ガラス板と、前記ガラス板の少なくとも一方の主面の周縁部に沿って形成された第1の遮蔽層と、前記第1の遮蔽層が形成されている領域内に識別マークが形成されている、識別マーク付きガラス板であって、
前記識別マークは、複数の第1開口部から構成されており、前記第1開口部は、前記第1開口部よりも面積が小さい複数の第2開口部から形成されており、前記第2開口部は、半径が0.05mm以上0.3mm以下の略円形状であることを特徴とする。
【0008】
また、上記課題を解決するために本発明のガラス板の識別マーク形成方法は、
少なくとも一方の主面の周縁部に沿って形成された遮蔽層が形成されたガラス板の、前記遮蔽層にレーザー光を照射して識別マークを形成する、ガラス板の識別マーク形成方法であって、
光源より、前記ガラス板の前記遮蔽層に向けて出力が2W以上25W以下の前記レーザー光を照射し、前記レーザー光が照射された前記遮蔽層に、半径が0.05mm以上0.3mm以下の略円形状であって、前記ガラス板10の表面まで達する第2開口部を形成する工程と、
前記第2開口部を形成しながら、前記レーザー光の照射位置を移動させて第1開口部を形成する工程と、
前記第1開口部を複数形成し、前記識別マークを形成する工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガラス板の強度が低下することなく、また、読み取り性を長期間保証することができる識別マーク付きガラス板、およびガラス板の識別マーク形成方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る識別マーク付きガラス板の正面図である。
図2図1に示す識別マーク付きガラス板のA-A部の断面図である。
図3図1に示す識別マーク付きガラス板の一部拡大概略図である。
図4図1に示す識別マーク付きガラス板の一部拡大図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る識別マーク付きガラス板のA-A部の断面図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係る識別マーク付きガラス板のA-A部の断面図である。
図7】本発明のガラス板の識別マーク形成方法の概略図である。
図8】本発明のガラス板の識別マーク形成方法を示すフローチャートである。
図9】本発明のガラス板の識別マーク形成方法の別の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
[第1の実施形態]
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る識別マーク付きガラス板100は、ガラス板10の少なくとも一方の主面の周縁部に沿って形成された第1の遮蔽層21と、第1の遮蔽層21が形成されている領域内に識別マーク30を有する。
【0013】
ガラス板10としては、例えば、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラスなどが特に制限なく用いられる。これらのうちでもソーダライムガラスが特に好ましい。ガラス板10は、未強化ガラス、強化ガラスのいずれでもよい。未強化ガラスは、溶融ガラスを板状に成形し、徐冷したものである。強化ガラスは、未強化ガラスの表面に圧縮応力層を形成したものである。強化ガラスは、物理強化ガラス(例えば風冷強化ガラス)、化学強化ガラスのいずれでもよい。物理強化ガラスである場合は、均一に加熱したガラス板を軟化点付近の温度から急冷し、ガラス表面とガラス内部との温度差によってガラス表面に圧縮応力を生じさせることで、ガラス表面を強化してもよい。化学強化ガラスである場合は、イオン交換法などによってガラス表面に圧縮応力を生じさせることでガラス表面を強化してもよい。また、ガラス板10は、透明であることが好ましいが、透明性を損なわない程度に着色されたガラス板であってもよい。ガラス板10の板厚は特に限定されないが、0.5mm以上5.0mm以下であれば、自動車の開口部に用いる窓ガラスに適用でき、好ましい。
【0014】
ガラス板10は、少なくとも一方の主面の周縁部に沿って帯状に形成された、黒色などの暗色不透明の第1の遮蔽層(暗色セラミック層)21を備える。第1の遮蔽層21はガラス板10を車体に接着保持するウレタンシーラントなどを紫外線による劣化から保護する機能を有している。第1の遮蔽層21は、セラミックペーストをガラス板10の主面上に塗布した後に焼成することにより形成される。第1の遮蔽層21の厚みは3μm以上15μm以下であることが好ましい。また、第1の遮蔽層21の幅は識別マーク30が形成できる幅であれば特に限定されないが、20mm以上300mm以下であれば本発明の識別マーク30を形成することができ、好ましい。また、後述するように、ガラス板10は、第1の遮蔽層21が形成された主面とは反対側の主面に第2の遮蔽層22を形成してもよい。
【0015】
本発明の第1の実施形態に係る識別マーク付きガラス板100は、さらに第1の遮蔽層21が形成されている領域内に識別マーク30が形成されている。識別マーク30は、後述するように、レーザー光などにより第1の遮蔽層21が研削されて形成される。識別マーク30は、メーカーコード、品番、認証印、製造日、およびJISなどを識別するものであってもよいが、ガラス板10の加工条件や検査条件、光学特性などの個々のガラス板の生産情報を付与されることが好ましい。すなわち、本発明の第1の実施形態に係る識別マーク付きガラス板100に形成される識別マーク30のパターンは、ガラス板ごとに異なっていてもよい。識別マーク30のパターンがガラス板ごとに異なっていると、個々のガラス板10の加工条件や検査条件、光学特性などの生産情報を付与することができるため、個々のガラス板と社内に蓄積された情報とを照合することができる。さらに、識別マーク30のパターンがガラス板ごとに異なっていると、仮に最終製品で不具合が発生したとしても、どの工程で不具合が発生したのかを追跡することが容易になる。
【0016】
識別マーク30としては、生産情報を付与することが出来れば、一次元コードでもよく、二次元コードでもよい。一次元コードとしては、公知のバーコードなどが挙げられる。二次元コードとしては、例えばマトリックス型二次元コードなどが挙げられる。
【0017】
識別マーク30の寸法は上述の生産情報を付与できれば特に限定されないが、5mm以上20mm以下×5mm以上50mm以下であれば識別マーク30に上述の生産情報を付与できる。
【0018】
識別マーク30は、読取装置により、光学的に識別マーク30に付与された情報を読み取る。そのため、識別マーク30は、黒色部と白色部(透明部)からなる二値表示(白黒表示)であることが好ましい。黒色部については、第1の遮蔽層21が黒色(暗色)に相当する。一方、白色部については、図2に示すように、第1の遮蔽層21にガラス板10の表面まで達する開口部(孔)を設けることで白色部を形成することができる。
【0019】
図1に示すように、識別マーク30は、第1の遮蔽層21にガラス板10の表面まで達する開口部を設けることで形成される第1開口部31を、複数(31a、31bなど)形成して構成される。
【0020】
図4は、図3で示している識別マーク30の一部拡大概略図において、第1開口部31aをさらに詳細に示した、識別マーク30の一部拡大図である。図4で示すように、第1開口部31aは、複数の第1開口部32、33から形成されていてもよいし、第1開口部32、33は一体に形成されていてもよい。一方、第1開口部32、32はそれぞれ形状や面積が異なる場合がある。そこで、第1開口部32、33は、第1開口部32、33よりも面積が小さい第2開口部40を複数設けることで形成される。
【0021】
図4を参照して、第1開口部32を構成する第2開口部40について説明する。
第1開口部32は、レーザー光を照射して第1の遮蔽層21にガラス板10の表面まで達する開口部、すなわち第2開口部40aを形成し、レーザー光の照射位置を移動させて、別の第2開口部40bを形成する。同様に、さらに別の第2開口部42cを形成する。第2開口部40は、レーザー光が第1の遮蔽層21に照射される面積と略等しい。図4に示すように、最初のレーザー光の照射では、第2開口部40aが形成され、照射位置を移動させて第2開口部40bを形成し、さらに第2開口部40cを形成していく。ここで、第2開口部40a、40b、40cは、それぞれ少なくとも一部が重複して形成されることが好ましい。第2開口部40a、40b、40cが、それぞれ少なくとも一部が重複して形成されると、第1開口部32の輪郭(第1の遮蔽層21とガラス板10との境界部)がより直線に近似するため、読取装置が光学的に識別マーク30を読み取りやすくなり、好ましい。
【0022】
第2開口部40は、略円形状であるが、略楕円形状であってもよい。第2開口部40が略円形状である場合、半径Aが0.05mm以上0.3mm以下であることが好ましい。第2開口部40が略楕円形状である場合、図4中のAは短軸半径をさす。第2開口部40の半径Aが0.05mm以上であれば、識別マーク30として複雑な二次元コードを形成するにあたり、レーザー光の照射位置の移動回数を減らすことが出来る。第2開口部40の半径Aが0.3mm以下であれば、微細な識別マーク30を形成することが出来る。
【0023】
第1開口部31は、読取装置が識別マーク30を二値表示のコードとして認識させるために、少なくとも2個以上の第2開口部40により形成されていることが好ましい。また、識別マーク30を二値表示のコードとして形成するために、識別マーク30は、面積、および/または形状が異なる複数の第1開口部32、33からなることが好ましい。複数の第1開口部32、33は、読取装置が識別マーク30を二値表示のコードとして認識させるために、第1開口部32、33が最も近接する距離Bは、0.2mm以下であることが好ましい。より好ましくは0.05mm以下である。
【0024】
複数の第2開口部40を一部重複するようにして第1開口部31を形成し、さらに第1開口部31を複数形成することにより、より複雑な識別マーク30を形成することが出来る。そのため、本発明の識別マーク30を、情報量が多い生産情報などを付与することが出来る二次元コードにすることができる。さらに、第2開口部40、第1開口部31は第1の遮蔽層21にガラス板10の表面まで達する開口部を設けて形成されるが、後述するレーザーで遮蔽層21を研削する場合、研削されるのは第1の遮蔽層21だけであるため、ガラス板10には傷がつかない。したがって、本発明の識別マーク付きガラス板100は、ガラス板の強度が低下することなく、また、読み取り性を長期間保証することができる。
【0025】
なお、図1では、識別マーク30はガラス板10の上辺側の端部の(車両に取り付けた時のルーフ側)の中央近辺に形成されている場合が例示されているが、識別マーク30は第1の遮蔽層21が形成されている領域内であればこれに限定されない。ただし、外観の意匠上の観点から、ガラス板10の端部近傍に形成されていることが好ましい。
【0026】
また、図2では一枚のガラス板について例示されているが、ガラス板10の第1の遮蔽層21が形成されている主面とは反対側の主面に中間膜を介して別のガラス板を備える合わせガラスとしてもよい。中間膜としては、ポリビニルブチラール(PVB)からなる中間膜のほか、特に耐水性が要求される場合には、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましく用いることができ、さらに、アクリル系光重合型プレポリマー、アクリル系触媒重合型プレポリマー、アクリル酸エステル・酢酸ビニルの光重合型プレポリマー、ポリビニルクロライド等も使用可能である。第1の遮蔽層21が形成されているガラス板10と接合されるガラス板については、特に限定はない。ガラス板10と接合されるガラス板は、ガラス板10と同じ組成、形状、厚みであってもよいし、異なっていてもよい。合わせガラスを自動車用の開口部に適用する場合は、第1の遮蔽層21が形成されているガラス板10が車内側に位置するように配置されることが好ましい。また、ガラス板10と接合されるガラス板も、ガラス板10同様に、一方の主面の周縁部に沿って遮蔽層を形成してもよい。ガラス板10と接合されるガラス板に遮蔽層を形成する場合、遮蔽層が形成される主面は、自動車用の開口部に適用した場合、車内側に位置するように形成されることが好ましい。ガラス板10と接合されるガラス板に遮蔽層を形成する場合、遮蔽層が、識別マーク30を隠蔽する位置に設けると、合わせガラスを車体に接着保持するウレタンシーラントなどを紫外線による劣化から保護する機能を備えつつ、かつ、外観の意匠性を損ねることがなく、好ましい。
【0027】
[第2の実施形態]
図5は、図1に示す第1の実施形態の識別マーク付きガラス板100における、外周縁に直交する断面(図1のA-A)図である。図5に示すように、第2の実施形態の識別マーク付きガラス板101は、識別マーク30が、暗色材料50で隠蔽されていることが第1の実施形態と異なる。なお、その他の構成要素については、第1の実施形態に係る識別マーク付きガラス板100と同様であるので、対応する構成要素に同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0028】
第1の実施形態の識別マーク付きガラス板100は、第1の遮蔽層21をガラス板10の表面まで達する開口部を設けることで第1開口部31a、31bを形成しているため、第1の遮蔽層21が有しているガラス板10を車体に接着保持するウレタンシーラントなどを紫外線による劣化から保護する機能の一部を損なってしまう。さらに、識別マーク30が露出していると、外観の意匠性を損ねる恐れがある。
【0029】
第2の実施形態の識別マーク付きガラス板101では、識別マーク30を暗色材料50で隠蔽させることで、ガラス板10を車体に接着保持するウレタンシーラントなどを紫外線による劣化から保護する機能を備えつつ、かつ、外観の意匠性を損ねることがなく、好ましい。暗色材料50としては、暗色の顔料を含有する塗料や接着剤、ガラス板10の周縁部に配置される樹脂枠体であってもよい。なお、第2の実施形態の識別マーク付きガラス板101では、例えば溶剤などで暗色材料50のみを除去することで、第1開口部31a、31bガラス板10の表面を再び露出させることで識別マーク30を読み取ることができる。
【0030】
[第3の実施形態]
図6は、図1に示す第1の実施形態の識別マーク付きガラス板100における、外周縁に直交する断面(図1のA-A)図である。図6に示すように、第3の実施形態の識別マーク付きガラス板102は、識別マーク30が形成されている面とは反対側の主面に第2の遮蔽層22が形成されていることが第1の実施形態と異なる。なお、その他の構成要素については、第1の実施形態に係る識別マーク付きガラス板100と同様であるので、対応する構成要素に同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0031】
第1の実施形態の識別マーク付きガラス板100は、第1の遮蔽層21をガラス板10の表面まで達する開口部を設けることで第1開口部31a、31bを形成しているため、第1の遮蔽層21が有しているガラス板10を車体に接着保持するウレタンシーラントなどを紫外線による劣化から保護する機能の一部を損なってしまう。さらに、識別マーク30が露出していると、外観の意匠性を損ねる恐れがある。
【0032】
第3の実施形態の識別マーク付きガラス板102では、識別マーク30が形成されている面とは反対側の主面に第2の遮蔽層22が形成されているため、ガラス板10を車体に接着保持するウレタンシーラントなどを紫外線による劣化から保護する機能を備えつつ、かつ、外観の意匠性を損ねることがなく、好ましい。第2の遮蔽層22は、第1の遮蔽層21と同じ厚み、材料であってもよいし、異なっていてもよい。第2の遮蔽層22の幅は、識別マーク30が隠蔽できる幅であればよい。
【0033】
[ガラス板の識別マーク形成方法]
図7は、本発明のガラス板の識別マーク形成方法を例示的に示している斜視図である。図7に示すように、本発明の第1の実施形態に係るガラス板の識別マーク形成方法は、少なくとも一方の主面の周縁部に沿って形成された遮蔽層21が形成されたガラス板21の、遮蔽層21にレーザー光70を照射して識別マーク30を形成する。
【0034】
ガラス板10としては、例えば、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、石英ガラスなどが特に制限なく用いられる。これらのうちでもソーダライムガラスが特に好ましい。ガラス板10は、未強化ガラス、強化ガラスのいずれでもよい。未強化ガラスは、溶融ガラスを板状に成形し、徐冷したものである。強化ガラスは、未強化ガラスの表面に圧縮応力層を形成したものである。強化ガラスは、物理強化ガラス(例えば風冷強化ガラス)、化学強化ガラスのいずれでもよい。物理強化ガラスである場合は、均一に加熱したガラス板を軟化点付近の温度から急冷し、ガラス表面とガラス内部との温度差によってガラス表面に圧縮応力を生じさせることで、ガラス表面を強化してもよい。化学強化ガラスである場合は、イオン交換法などによってガラス表面に圧縮応力を生じさせることでガラス表面を強化してもよい。また、ガラス板10は、透明であることが好ましいが、透明性を損なわない程度に着色されたガラス板であってもよい。ガラス板10の板厚は、特に限定されないが、0.5mm以上5.0mm以下であれば、自動車の開口部に用いる窓ガラスに適用でき、好ましい。
【0035】
ガラス板10は、少なくとも一方の主面の周縁部に沿って帯状に形成された、黒色などの暗色不透明の遮蔽層(暗色セラミック層)21を備える。遮蔽層21はガラス板10を車体に接着保持するウレタンシーラントなどを紫外線による劣化から保護する機能を有している。遮蔽層21は、セラミックペーストをガラス板10の主面上に塗布した後に焼成することにより形成される。遮蔽層21の厚みは3μm以上15μm以下であることが好ましい。また、遮蔽層21の幅は識別マーク30が形成できる幅であれば特に限定されないが、20mm以上300mm以下であれば本発明の識別マーク30を形成することができ、好ましい。ガラス板10は、遮蔽層21が形成された主面とは反対側の主面に別の遮蔽層を形成してもよい。
【0036】
本発明のガラス板の識別マーク形成方法は、さらに遮蔽層21が形成されている領域内にレーザー光70を照射して識別マーク30を形成する。識別マーク30は、メーカーコード、品番、認証印、製造日、およびJISなどを識別するものであってもよいが、ガラス板10の加工条件や検査条件、光学特性などの個々のガラス板の生産情報を付与されることが好ましい。すなわち、本発明の第1の実施形態に係る識別マーク付きガラス板100に形成される識別マーク30のパターンは、ガラス板ごとに異なっていてもよい。識別マーク30のパターンがガラス板ごとに異なっていると、個々のガラス板10の加工条件や検査条件、光学特性などの生産情報を付与することができるため、個々のガラス板と社内に蓄積された情報とを照合することができる。さらに、識別マーク30のパターンがガラス板ごとに異なっていると、仮に最終製品で不具合が発生したとしても、どの工程で不具合が発生したのかを追跡することが容易になる。
【0037】
識別マーク30としては、生産情報を付与することが出来れば、一次元コードでもよく、二次元コードでもよい。一次元コードとしては、公知のバーコードなどが挙げられる。二次元コードとしては、例えばマトリックス型二次元コードなどが挙げられる。
【0038】
識別マーク30の寸法は上述の生産情報を付与できれば特に限定されないが、5mm以上20mm以下×5mm以上50mm以下であれば識別マーク30に上述の生産情報を付与できる。
【0039】
識別マーク30は、読取装置により、光学的に識別マーク30に付与された情報を読み取る。そのため、識別マーク30は、黒色部と白色部(透明部)からなる二値表示(白黒表示)であることが好ましい。黒色部については、遮蔽層21が黒色(暗色)に相当する。一方、白色部については、レーザー光70により、遮蔽層21をガラス板10の表面まで達する開口部(孔)を設けることで白色部を形成することができる。
【0040】
本発明のガラス板の識別マーク形成方法は、図8に示すように、(1)光源60より、ガラス板10の遮蔽層21に向けて出力が2W以上25W以下のレーザー光70を照射し、レーザー光70が照射された遮蔽層21に、半径が0.05mm以上0.3mm以下の略円形状であって、ガラス板10の表面まで達する第2開口部40を形成する工程と、(2)第2開口部40を形成しながら、レーザー光70の照射位置を移動させて第1開口部31を形成する工程と、(3)第1開口部31を複数形成し、識別マーク30を形成するする工程とを有する。各工程について、以下に説明する。
【0041】
(1)第2開口部を形成する工程
少なくとも一方の主面の周縁部に沿って形成された遮蔽層21が形成されたガラス板21を準備し、図示しないステージに載置して位置決めする。ステージやステージへの載置方法、位置決め方法は公知のステージや方法でよく、特に限定されない。
【0042】
遮蔽層21が形成されたガラス板21が位置決めされた後に、光源60より、レーザー光70を遮蔽層21に向けて照射する。レーザー光70の照射は、図示しない対物レンズを用いて、遮蔽層21とガラス板10との界面(ガラス板10の表面)に焦点が合わせられている。対物レンズの焦点距離は、190mm程度であることが好ましい。レーザー光70としては、励起固体レーザーが好ましく、Nd元素をドーピングしたYVOレーザーが好ましく用いられる。レーザー光70の発光波長は、900nm以上1200nm以下が好ましく、特に1064nm程度であることが好ましい。レーザー光70の出力は、2W以上25W以下であることが好ましい。レーザー光70の連続発振周波数は1kHz以上400kHz以下であることが好ましい。これらの条件のレーザー光70を用いれば、レーザー光70のエネルギーは、遮蔽層21のみに吸収され、ガラス板10にダメージを与えられるほどのエネルギー吸収が起きない。そのため、レーザー光70は遮蔽層21のみを研削することができ、かつ、ガラス板10の表面に傷がつきにくく、好ましい。レーザー光70のビーム通路には、図示しないミラーが配置されていてもよい。ミラーの移動により、レーザー光70の照射の焦点を遮蔽層21とガラス板10との界面(ガラス板10の表面)に合わせたまま、照射位置を移動させることが出来る。なお、遮蔽層21をガラス板10の表面まで研削し、かつ、ガラス板10の表面に傷がつかないレーザー光70を用いれば、レーザー光70発光波長や出力などはこれらに限られない。
【0043】
レーザー光70が遮蔽層21に照射されると、遮蔽層21のみを研削してガラス板10の表面が露出し、第2開口部が形成される。この時、第2開口部40は、レーザー光が遮蔽層21に照射される面積と略等しい。第2開口部40は、略円形状であるが、略楕円形状であってもよい。第2開口部40が略円形状である場合、半径Aが0.05mm以上0.3mm以下であることが好ましい。第2開口部40が略楕円形状である場合、図4中のAは短軸半径をさす。第2開口部40の半径Aが0.05mm以上であれば、識別マーク30として複雑な二次元コードを形成するにあたり、レーザー光の照射位置の移動回数を減らすことが出来る。第2開口部40の半径Aが0.3mm以下であれば、微細な識別マーク30を形成することが出来る。
【0044】
(2)第1開口部を形成する工程
第1開口部31は、第2開口部40を形成しながら、レーザー光70の照射位置を移動させることで別の第2開口部を形成することで形成される。すなわち、第1開口部31は、レーザー光70を照射して第2開口部40を形成し、さらにレーザー光70の照射位置を第1開口部31が形成される予定の領域に向けて移動させていくことで形成される。第2開口部40a、40b、40cは、それぞれ少なくとも一部が重複して形成されることが好ましい。第2開口部40a、40b、40cが、それぞれ少なくとも一部が重複して形成されると、第1開口部32の輪郭(遮蔽層21とガラス板10との境界部)がより直線に近似するため、読取装置が光学的に識別マーク30を読み取りやすくなり、好ましい。
【0045】
レーザー光70の照射位置の移動速度は、200mm/s以上3000mm/s以下であることが好ましく、1500mm以上2500mm/s以下であることがより好ましい。レーザー光70の照射位置の移動速度が200mm/s以上であれば、第1開口部31を効率よく形成することができる。また、レーザー光70の照射位置の移動速度が200mm/s以上であれば、第1開口部31aを形成し、第1開口部31bを形成するために一旦レーザー光70の出力をオフしたとしても、レーザー光70が減衰しても遮蔽層21が余計に削れてしまうことがなく、好ましい。レーザー光70の照射位置の移動速度が、3000mm/s以下であれば、レーザー光70の照射位置がオーバーランしにくくなるため、読取装置が光学的に識別マーク30を読み取りやすくなり、好ましい。
【0046】
第1開口部31は、読取装置が識別マーク30を二値表示のコードとして認識させるために、少なくとも2個以上の第2開口部40により形成されていることが好ましい。また、識別マーク30を二値表示のコードとして形成するために、識別マーク30は、面積、および/または形状が異なる複数の第1開口部32、33からなることが好ましい。複数の第1開口部32、33は、読取装置が識別マーク30を二値表示のコードとして認識させるために、第1開口部32、33が最も近接する距離は、0.2mm以下であることが好ましく、0.05mm以下であることがより好ましい。
【0047】
レーザー光70の照射位置の移動方向は、図7に示している左から右へ移動に限定されない。レーザー光70の照射位置の移動方向は、右から左、上から下、下から上に移動させることができる。さらに、上述の移動方向を組み合わせることもできる。すなわち、レーザー光70の照射位置の移動方向を自由に設定することができるため、第1開口部31がより複雑な形状であったとしても、短時間で第1開口部31を形成することができる。
【0048】
(3)識別マークを形成する工程
識別マーク30は、第1開口部31を複数形成する工程を経ることで形成される。図7に示すように、第1開口部を形成する工程で第1開口部31aを形成した後に、一旦レレーザー光70の出力をオフし、レーザー光70の照射位置を第1開口部31bが形成する予定の領域に移動させ、再度レーザー光70の出力をオンさせる。そして、再び、(1)第2開口部を形成する工程、(2)第1開口部を形成する工程を繰り返すことで、複数の第1開口部31を形成し、識別マーク30を形成することができる。
【0049】
本発明のガラス板の識別マーク形成によれば、識別マーク30が複数の第1開口部31から形成されるため、より複雑な識別マーク30を形成することが出来る。また、より複雑な識別マーク30を形成することができるため、識別マーク30を情報量が多い生産情報などを付与することが出来る二次元コードにすることができる。さらに、第2開口部40、第1開口部31は遮蔽層21のみを研削して形成されるが、研削するのは遮蔽層21だけであり、ガラス板10には傷がつかない。そのため、本発明のガラス板の識別マーク形成方法によれば、ガラス板の強度が低下することなく、また、読み取り性を長期間保証することができる識別マーク付きガラス板100を提供することができる。
【0050】
第2開口部を形成する工程、前記第1開口部を形成する工程、および前記識別マークを形成するする工程は、暗室内などで行われることが好ましい。第2開口部を形成する工程、前記第1開口部を形成する工程、および前記識別マークを形成するする工程が、暗室内で行われることにより、レーザー光70が外光などの影響を受けないため、好ましい。なお、暗室の代りにレーザー光70が外に漏れないように周囲を暗幕等で遮蔽してもよい。
【0051】
図9は、本発明のガラス板の識別マーク形成方法の別の実施形態を例示的に示している斜視図である。図9に示すように、本発明のガラス板の識別マーク形成方法の別の実施形態では、レーザー光70が照射されると同時に遮蔽層21にレーザー光が照射されている領域近傍において、換気、排気、吸引、吹き飛ばし、および集塵から選ばれる少なくとも1以上の処理を行う。なお、その他の構成要素については、本発明のガラス板の識別マーク形成方法と同様であるので、対応する構成要素に同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0052】
レーザー光70を遮蔽層21に照射し、遮蔽層21をガラス板10の表面まで達するように研削すると、遮蔽層21の削りカス、煙などが発生してしまう。発生した削りカスや煙などは、レーザー光70の焦点のズレなどを引き起こし、レーザー光70が遮蔽層21を十分に研削できなくなる恐れがある。そのため、図9に示すように、レーザー光70が照射されると同時に、遮蔽層21にレーザー光が照射されている領域近傍に処理機80を配置し、レーザー光70が遮蔽層21を研削する際に発生する遮蔽層21の削りカスや煙などを換気、排気、吸引、吹き飛ばし、および集塵から選ばれる少なくとも1以上の処理を行うことが好ましい。遮蔽層21にレーザー光が照射されている領域近傍に処理機80を配置し、レーザー光70が遮蔽層21を研削する際に発生する遮蔽層21の削りカスや煙などを換気、排気、吸引、吹き飛ばし、および集塵から選ばれる少なくとも1以上の処理を行うと、レーザー光70の焦点がズレにくくなり、読取装置が光学的に読み取りやすい識別マーク30を形成することができる。
<付記1>
ガラス板と、前記ガラス板の少なくとも一方の主面の周縁部に沿って形成された第1の遮蔽層と、前記第1の遮蔽層が形成されている領域内に識別マークが形成されている、識別マーク付きガラス板であって、
前記識別マークは、複数の第1開口部から構成されており、
前記第1開口部は、前記第1開口部よりも面積が小さい複数の第2開口部から形成されており、
前記第2開口部は、半径が0.05mm以上0.3mm以下の略円形状であることを特徴とする、識別マーク付きガラス板。
<付記2>
前記第2開口部は、前記ガラス板まで達している、<1>に記載の識別マーク付きガラス板。
<付記3>
前記第1開口部同士が最も近接する距離は、0.2mm以下である、<1>または<2>に記載の識別マーク付きガラス板。
<付記4>
前記第1開口部は、複数の前記第2開口部の少なくとも一部が重複して形成され、かつ、少なくとも2個以上の前記第2開口部により形成されている、<1>~<3>のいずれか一つに記載の識別マーク付きガラス板。
<付記5>
前記識別マークは、面積、および/または形状が異なる複数の前記第1開口部からなる、<1>~<4>のいずれか一つに記載の識別マーク付きガラス板。
<付記6>
前記識別マークは、暗色材料で隠蔽されており、
前記暗色材料は、暗色顔料を含有する有機材料である、<1>~<5>のいずれか一つに記載の識別マーク付きガラス板。
<付記7>
前記ガラス板は、前記識別マークが形成されている面とは反対側の主面に第2の遮蔽層が形成されており、
前記第2の遮蔽層が形成されている面から前記ガラス板を見たときに、前記識別マークが視認できない位置に前記第2の遮蔽層が形成されている、<1>~<6>のいずれか一つに記載の識別マーク付きガラス板。
<付記8>
前記識別マークは、前記ガラス板の端部近傍に形成されている、<1>~<7>のいずれか一つに記載の識別マーク付きガラス板。
<付記9>
前記第1の遮蔽層の厚みは、3μm以上15μm以下である、<1>~<8>のいずれか一つに記載の識別マーク付きガラス板。
<付記10>
前記識別マークは、一次元コード、もしくは二次元コードである、<1>~<9>のいずれか一つに記載の識別マーク付きガラス板。
<付記11>
少なくとも一方の主面の周縁部に沿って形成された遮蔽層が形成されたガラス板の、前記遮蔽層にレーザー光を照射して識別マークを形成する、ガラス板の識別マーク形成方法であって、
光源より、前記ガラス板の前記遮蔽層に向けて出力が2W以上25W以下の前記レーザー光を照射し、前記レーザー光が照射された前記遮蔽層に、半径が0.05mm以上0.3mm以下の略円形状であって、前記ガラス板10の表面まで達する第2開口部を形成する工程と、
前記第2開口部を形成しながら、前記レーザー光の照射位置を移動させて第1開口部を形成する工程と、
前記第1開口部を複数形成し、前記識別マークを形成する工程と、
を有することを特徴とする、ガラス板の識別マーク形成方法。
<付記12>
前記第1開口部を形成する工程において、レーザー光の照射位置の移動速度が200mm/s以上3000mm/sである、<11>に記載のガラス板の識別マーク形成方法。
<付記13>
前記レーザー光の波長が、1064nmである、<11>または<12>に記載のガラス板の識別マーク形成方法。
<付記14>
前記第2開口部を形成する工程、前記第1開口部を形成する工程、および前記識別マークを形成するする工程が、暗室内で行われる、<11>~<13>のいずれか一つに記載のガラス板の識別マーク形成方法。
<付記15>
前記レーザー光が照射されると同時に、前記遮蔽層にレーザー光が照射されている領域近傍において、換気、排気、吸引、吹き飛ばし、および集塵から選ばれる少なくとも1以上の処理を行う、<11>~<14>のいずれか一つに記載のガラス板の識別マーク形成方法。


【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の識別マーク付きガラス板、およびガラス板の識別マーク形成方法は、例えばフロントガラス、摺動窓、嵌め込み窓、リアガラスなどの車両用ガラス板に好適に用いられるが、太陽電池用ガラス板、建築用ガラス板などに用いられてもよい。
【符号の説明】
【0054】
100、101、102 識別マーク付きガラス板
10 ガラス板
21 第1の遮蔽層(遮蔽層)
22 第2の遮蔽層
30 識別マーク
31、31a、31b、32、33 第1開口部
40、40a、40b、40c 第2開口部
50 暗色材料
60 光源
70 レーザー光
80 処理機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9