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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220809BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B41J2/01 123
B41J2/01 401
B41M5/00 134
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018067243
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019177537
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】津田 直明
(72)【発明者】
【氏名】松本 博好
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-225695(JP,A)
【文献】特開2008-149615(JP,A)
【文献】特開2008-161837(JP,A)
【文献】特開2017-132123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データに応じて記録媒体に対して耐候性の異なる複数のインクを吐出し、前記記録媒体上に画像を形成する第1ヘッドと、
前記複数のインクの各インクによる前記画像における各ドットを被覆して、前記各ドットの耐候性を向上させるための、樹脂と紫外線遮蔽材とを含有する耐候性向上液を、全ての前記ドット上に吐出する第2ヘッドと、
前記画像データに基づいて、耐候性が低いドットよりも耐候性が高いドットの方が前記耐候性向上液による耐候性向上の効果が小さくなるように、前記画像における各ドットに対する、前記第2ヘッドによる前記耐候性向上液の吐出を制御する制御手段と、
を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記耐候性向上液が、1種類であり、
前記第2ヘッドによる前記耐候性向上液の吐出における前記制御手段による制御が、耐候性が低いドット上に形成される前記耐候性向上液による被膜よりも、耐候性が高いドット上に形成される前記耐候性向上液の被膜の方が薄くなるように、行われる、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記耐候性向上液が、耐候性向上効果の異なる複数種類であり、
前記第2ヘッドによる前記耐候性向上液の吐出における前記制御手段による制御が、耐候性が低いドット上に付与される耐候性向上液の耐候性向上効果よりも、耐候性が高いドット上に形成される耐候性向上液の耐候性向上効果が低くなるように、行われる、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
耐候性向上効果の異なる複数種類の前記耐候性向上液は、前記紫外線遮蔽材の含有量により耐候性向上効果が異なる請求項3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記耐候性向上液が、無色透明である請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記紫外線遮蔽材が、金属酸化物微粒子である請求項1から5のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、主として液体のインクを吐出し、インクを印刷媒体へ付着させる、又はインクにより印刷媒体を染色させる。そのインクの主成分は、例えば、水、有機溶剤、樹脂又はその元となるオリゴマー、染料や顔料等の着色剤である。印刷媒体は紙に限らず、最近は、フィルムやプラスチックなども用いられている。さらに、インクジェット方式では、印刷媒体として不織布や布地が用いられることもある。印刷品は壁紙や街頭の広告、のぼり旗等にも採用されている。
【0003】
インクは、含有する着色剤の違いにより、耐候性が異なる。そして、耐候性の高いインクは褪色の度合いが小さい一方で、耐候性の低いインクは褪色の度合いが大きい。そのため、耐候性の高いインクと、耐候性の低いインクとを用いたインクジェット方式では、経時で各インクの褪色の度合いの違いによる画像の品質のバランスが悪くなるという問題がある。
【0004】
そこで、複数種類のインクそれぞれが記録した画像の耐候性を向上させつつも、各色のバランスを保つことによって、画像の色相の変位を極力抑えることを目的として、記録媒体に記録された状態において耐候性能が異なる複数種類のインクを前記記録媒体に記録する工程と、前記耐候性能を向上させるための1種類以上の耐候性向上液を、前記複数種類のインクが記録される前記記録媒体の位置に付与する工程と、を有する画像記録方法であって、前記付与工程では前記複数種類のインクの耐候性能に応じて前記耐候性向上液の前記記録媒体に対する付与形態を異ならせる画像記録方法が提案されている(特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、経時の画像の色相の変位を抑えつつ、更に光沢の均一性に優れた画像が形成可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
本発明のインクジェット記録装置は、
画像データに応じて記録媒体に対して耐候性の異なる複数のインクを吐出し、前記記録媒体上に画像を形成する第1ヘッドと、
前記複数のインクの各インクによる前記画像における各ドットを被覆して、前記各ドットの耐候性を向上させるための、樹脂と紫外線遮蔽材とを含有する耐候性向上液を吐出する第2ヘッドと、
前記画像データに基づいて、耐候性が低いドットよりも耐候性が高いドットの方が前記耐候性向上液による耐候性向上の効果が小さくなるように、前記画像における各ドットに対する、前記第2ヘッドによる前記耐候性向上液の吐出を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、経時の画像の色相の変位を抑えつつ、更に光沢の均一性に優れた画像が形成可能なインクジェット記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態にかかるインクジェット記録装置の概略構成図である。
図2図2は、インクジェット記録装置の機能構成を示すブロック図である。
図3A図3Aは、第1の態様を説明するための模式図である(その1)。
図3B図3Bは、第1の態様を説明するための模式図である(その2)。
図4A図4Aは、第2の態様を説明するための模式図である(その1)。
図4B図4Bは、第2の態様を説明するための模式図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法)
本発明のインクジェット記録装置は、第1ヘッドと、第2ヘッドと、制御手段とを少なくとも有し、更に必要に応じて、その他の手段を有する。
本発明に関するインクジェット記録方法は、前記インクジェット記録装置で実行され、制御工程を含み、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0010】
特開2008-149615号公報に開示の技術の画像記録方法では、記録媒体に記録された状態において耐候性能が異なる複数種類のインクを前記記録媒体に記録する工程と、前記耐候性能を向上させるための1種類以上の耐候性向上液を、前記複数種類のインクが記録される前記記録媒体の位置に付与する工程と、を有し、前記付与工程では前記複数種類のインクの耐候性能に応じて前記耐候性向上液の前記記録媒体に対する付与形態を異ならせる。この提案の技術では、全てのインクによるドット上に耐候性向上液が付与されるわけではない。即ち、耐候性に優れるインクによるドット上には、耐候性向上液が付与されない。その場合、耐候性向上液が付与されたインクのドットの光沢は高くなる一方で、耐候性向上液が付与されないドットの光沢は高くならないため、記録媒体上に形成された画像に光沢の不均一が生じやすいという問題がある。
【0011】
そこで、本発明者らは、耐候性向上液を、各ドットの耐候性に応じて吐出する際に、耐候性が低いドットよりも耐候性が高いドットの方が前記耐候性向上液による耐候性向上の効果が小さくなるように制御して、耐候性が高いドットにも耐候性向上液を付与することで、経時の画像の色相の変位を抑えつつ、更に光沢の均一性に優れた画像が形成可能なことを見出し、本発明の完成に至った。
【0012】
<第1ヘッド>
前記第1ヘッドは、画像データに応じて記録媒体に対して耐候性の異なる複数のインクを吐出するヘッドである。
前記第1ヘッドは、前記記録媒体上に画像を形成するためのヘッドである。
【0013】
<第2ヘッド>
前記第2ヘッドは、前記複数のインクの各インクによる前記画像における各ドットを被覆して、前記各ドットの耐候性を向上させるための耐候性向上液を吐出するヘッドである。
前記耐候性向上液は、例えば、樹脂と紫外線遮蔽材とを少なくとも含有し、更に必要に応じて、有機溶媒、水などを含有する。
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記紫外線遮蔽材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、耐候性に優れ、かつ透明性に優れ、無色透明の耐候性向上液を作製しやすい点で、金属酸化物微粒子が好ましく、酸化チタン微粒子がより好ましい。
前記酸化チタン微粒子の一次平均粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5nm~100nmが好ましい。
【0014】
前記耐候性向上液における前記樹脂と前記紫外線遮蔽材との質量割合(樹脂:紫外線遮蔽材)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1:1~5:1が好ましい。
【0015】
前記耐候性向上液は、無色透明であることが、画像の色相を変化させない点で好ましい。
【0016】
<制御手段、及び制御工程>
前記制御手段としては、前記画像データに基づいて、耐候性が低いドットよりも耐候性が高いドットの方が前記耐候性向上液による耐候性向上効果が小さくなるように、前記画像における各ドットに対する、前記第2ヘッドによる前記耐候性向上液の吐出を制御する手段であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記制御工程としては、前記画像データに基づいて、耐候性が低いドットよりも耐候性が高いドットの方が前記耐候性向上液による耐候性向上効果が小さくなるように、前記画像における各ドットに対する、前記第2ヘッドによる前記耐候性向上液の吐出を制御する工程であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0017】
前記インクジェット記録装置においては、前記耐候性向上液が、1種類であり、前記第2ヘッドによる前記耐候性向上液の吐出における前記制御手段又は前記制御工程による制御が、耐候性が低いドット上に形成される前記耐候性向上液による被膜よりも、耐候性が高いドット上に形成される前記耐候性向上液の被膜の方が薄くなるように、行われることが好ましい。そうすることにより、耐候性向上液の使用量を抑えることができる。
【0018】
前記インクジェット記録装置においては、耐候性向上効果の異なる複数種類であり、
前記第2ヘッドによる前記耐候性向上液の吐出における前記制御手段又は前記制御工程による制御が、耐候性が低いドット上に付与される耐候性向上液の耐候性向上効果よりも、耐候性が高いドット上に形成される耐候性向上液の耐候性向上効果が低くなるように、行われることが好ましい。更に、耐候性向上効果の異なる複数種類の前記耐候性向上液は、前記紫外線遮蔽材の含有量により耐候性向上効果が異なることが好ましい。そうすることにより、前記耐候性向上液により形成される被膜の厚みの均一性が、前記画像全体において良好になる。その結果、画像の光沢の均一性がより優れる。
【0019】
ここで、本発明の効果を確認する一例を説明する。
下記表1は、耐候性向上液の一例である。耐候性向上液A~Dは、樹脂と、紫外線遮蔽材と、有機溶媒と、水とを含有する。樹脂の含有量は、5~20質量%であり、紫外線遮蔽材の含有量は5質量%である。液Eは、紫外線遮蔽材を含有しない液(オーバーコート液)である。
【0020】
【表1】
【0021】
表1中の酸化チタン(TTO-55、TTO-51、TTO-S、TTO-V)は、石原産業株式会社製の微粒子酸化チタンであって、紫外線遮蔽効果を有する。
エマルゲンLS-106は、花王ケミカル社製の高級アルコール系エーテル型非イオン性界面活性剤である。
プロキセルLVは、アビシア社製の防腐剤である。
【0022】
表1の各液を、以下の耐候性試験に供した結果を表2に示す。
Yellowのベタ画像に対して、表1の各液を膜厚10μmとなる塗布量で塗布して試験体を得た。
試験体についてJISに規定された促進耐候性(キセノンランプ法) JIS K5600-7-7:2008の退色試験を実施した。スーパーキセノンウェザーメーターSX75を用い、500時間キセノンランプを露光(1年間屋外暴露相当)させた後の画像と元の画像の濃度を測定し、色差ΔEを求めて、以下の評価基準で評価した。
〔評価基準〕
○:ΔEが25未満
×:ΔEが25以上
【0023】
【表2】
【0024】
紫外線遮蔽材を含有した耐候性向上液は、耐候性の向上効果が良好であった。
【0025】
次に、一般的なインクの耐候性を表3に示す。表3において100%階調とは、ベタ画像を示し、40%階調とはベタ画像に対してインク量が40質量%であることを示す。
表3の結果は、耐候性の促進試験(前述のキセノンランプ法:JIS K5600-7-7:2008)の結果を経過年数に換算したものである。
【0026】
【表3】
【0027】
表3中の数値は、経過年数0年(初期)からの色差(ΔE)を表す。
「3C」は、Cyan、Magenta、及びYellowを混合したコンポジットBlackを表す。
【0028】
次に、表4-1及び表4-2に、表3のインクの一部に対して、耐候性向上液Aを一定の厚みでオーバーコートした際の耐候性の評価結果(3年経過相当)を示す。なお、評価は、表3のインクの耐候性の評価と同様にして行った。
表4-1及び表4-2において、色差(ΔE)が25未満を「○」、25以上を「×」とした。
【0029】
【表4-1】
【0030】
【表4-2】
【0031】
表3からわかるように、インクの種類によって耐候性が異なり、褪色の程度が異なる。更に、表4-1及び表4-2からわかるように、耐候性向上液による被膜の厚みが薄い場合、同じ被膜の厚みでもインクの褪色の程度が異なる。そのため、1種類の耐候性向上液を画像上に一様に塗布した場合には、各色のインクによるドットの褪色の程度が異なってしまうため、画像の褪色に不均一が生じ、画像の色相の変異が大きくなる。なお、耐候性向上液による被膜の厚みを厚く(例えば、10μm)すると、褪色の程度は各色で小さくなるが、耐候性向上液を過剰に使用することになり、経済的ではない。
【0032】
そこで、本発明では、画像データに基づいて、耐候性が低いドットよりも耐候性が高いドットの方が耐候性向上液による耐候性向上の効果が小さくなるように、画像における各ドットに対する、第2ヘッドによる耐候性向上液の吐出を制御することで、画像の各色の褪色の程度を均一化させることができ、経時の画像の色相の変位を抑えることができる。
【0033】
以下に添付図面を参照して、インクジェット記録装置およびインクジェット記録方法の実施の形態を詳細に説明する。尚、本発明は、以下で説明される実施形態により限定されるものではない。
【0034】
図1は、一実施形態にかかるインクジェット記録装置100の概略構成図である。図1に示すように、インクジェット記録装置(画像形成装置)100は、用紙搬送部2、画像形成部3を主に備えており、記録媒体である用紙P上に画像形成を行う。
【0035】
用紙搬送部2は、給紙ローラ21、給紙側搬送ローラ対22、複数の搬送ローラ23、排紙側搬送ローラ24及び巻取ローラ25等を備えている。
【0036】
給紙ローラ21は、所定長さの用紙Pが巻き付けられたロール紙束を回転可能に支持している。用紙Pの先端は、給紙ローラ21の近傍に配設されている給紙側搬送ローラ対22のローラ間に挿入されている。
【0037】
給紙側搬送ローラ対22は駆動モータによって回転駆動されることで、用紙Pを図1に矢印で示す搬送方向(図1の右から左に向かう方向)に送り出す。搬送ローラ23については、複数のローラが用紙Pの搬送方向に並んで水平に配設されている。搬送ローラ23は、給紙側搬送ローラ対22から送り出された用紙Pを、水平状態を保って搬送方向に搬送する。
【0038】
排紙側搬送ローラ24は、搬送ローラ23によって搬送されてきた用紙Pを、巻取ローラ25へガイドする。巻取ローラ25は駆動モータによって回転駆動され、給紙ローラ21から送り出された用紙Pを巻き取る。
【0039】
尚、上述では、給紙ローラ21と巻取ローラ25との間に記録媒体としてのロール紙を張架する構成例について説明したが、実施形態はこれに限定されない。その他の構成例として、給紙ローラ21および巻取ローラ25に替えて、無端状の搬送ベルトを張架する2つのローラを設けてもよい。そして、インクジェット記録装置100は当該ローラ対を駆動モータによって回転駆動し、搬送ベルトを図1に示す搬送方向に搬送することにより、搬送ベルト上のカット紙を搬送してもよい。
【0040】
画像形成部3は、有色ラインヘッドユニット31と、耐候性向上液を吐出するオーバーコートラインヘッドユニット32を主に備えている。
【0041】
有色ラインヘッドユニット31は、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色のラインヘッドユニット31Bk、31C、31M、31Yが搬送方向に順次並んで配設されている。各色のラインヘッドユニット31Bk、31C、31M、31Yの用紙P側の面には、各色のインク吐出ノズルが主走査方向に複数個並んで設けられている。各インク吐出ノズルはそれぞれ、各色のインクを、搬送ローラ23によって搬送されている用紙Pに向かって吐出する。
【0042】
各色のラインヘッドユニット31Bk、31C、31M、31Yは、用紙搬送部2による用紙Pの搬送にタイミングを合わせて、対応する色のインクを順次同じドット上に重ね合わせて吐出する。これにより、インクジェット記録装置100は、画像データに応じた色のドット画像を形成する。
【0043】
各色のラインヘッドユニット31Bk、31C、31M、31Yから吐出される各色のインクは、顔料等の色剤を溶剤に溶け込ませたものが主に用いられる。尚、インクの構成はこのような構成に限るものではなく、例えば、色剤として染料を用いたものであってもよい。
【0044】
なお、有色ラインヘッドユニット31が有するラインヘッドユニットは、上述したように、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色のラインヘッドユニット31Bk、31C、31M、31Yに限るものではない。例えば、インクジェット記録装置100は、有色ラインヘッドユニット31として、ライトグレー、ライトシアン、ライトマゼンタ等の薄色、あるいは、その他の特色を吐出するラインヘッドユニットを備えてもよい。また、ラインヘッドユニット31Bk、31C、31M、31Yの搬送方向に対する並び順は、上記並び順に限定されない。
【0045】
インクジェット記録装置100は、有色ラインヘッドユニット31の最下流に設けられたラインヘッドユニット31Yから所定間隔を空けた搬送方向下流側において、オーバーコートラインヘッドユニット32を備えている。
【0046】
オーバーコートラインヘッドユニット32において用紙P側の面には、主走査方向に複数の吐出ノズルが設けられている。各吐出ノズルは、搬送ローラ23及び排紙側搬送ローラ24によって搬送されている用紙Pに向かって耐候性向上液を吐出する。
【0047】
尚、各色のラインヘッドユニット31Bk、31C、31M、31Y及びオーバーコートラインヘッドユニット32の駆動方式は特に限定されるものではなく、適宜、各種駆動方式を用いるとしてよい。例えば、駆動方式として、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電素子を用いた圧電方式、熱エネルギーを作用させる熱エネルギー方式等を用いることができる。あるいは、駆動方式として、静電気力を利用した静電方式等のアクチュエータを利用したオンディマンド型ヘッド、連続噴射型荷電制御ヘッド等を用いることができる。
【0048】
次に、インクジェット記録装置100の機能構成について説明する。
【0049】
図2は、インクジェット記録装置100の機能構成を示すブロック図である。インクジェット記録装置100は、主制御部101、有色インクヘッド制御部102、オーバーコートヘッド制御部103、有色ラインヘッドユニット31(図1も参照)、オーバーコートラインヘッドユニット32(図1も参照)を備えている。
【0050】
有色ラインヘッドユニット31は、画像データに応じて記録媒体に対して有色インクを吐出し、記録媒体上に画像を形成する第1ヘッドとして機能する。オーバーコートラインヘッドユニット32は、耐候性向上液を吐出して、有色ラインヘッドユニット31による画像上に耐候性向上効果を有する被膜を形成する第2ヘッドとして機能する。
【0051】
また、インクジェット記録装置100は、上記各部の他に搬送駆動部、通信部等を備えている。また、インクジェット記録装置100は、インクジェット記録装置100の周囲の環境条件、特に、温度、湿度のうち少なくともいずれか一方を検出する環境検出センサを備えている。環境検出センサとしては、例えば、温度センサ、湿度センサ等が用いられる。
【0052】
主制御部101は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を備えている。また、主制御部101は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、通信I/F(インターフェイス)等を備えている。ROMは、インクジェット記録装置100の基本プログラムと、オーバーコート液吐出制御処理を実行するためのプログラムとを格納している。CPUは、ROMが格納する各種プログラムをRAM上に展開して実行することにより、インクジェット記録装置100の各部の動作を制御する。
【0053】
主制御部101は、CPUの制御下で、通信I/Fを介して外部のコンピュータ等のホスト装置と通信して、画像データ等の画像形成情報(印刷ジョブ等)を受信する。また、主制御部101は、CPUの制御下で、ASICが、ホスト装置から受信した画像データに対して、画像形成するのに必要な画像処理を施す。また、主制御部101は、受信した画像データを画像処理して、各色のインク吐出量と吐出タイミングとを決定し、有色ヘッド駆動データとして有色インクヘッド制御部102に出力する。有色ヘッド駆動データが入力された有色インクヘッド制御部102は、有色ヘッド駆動データにしたがって有色ラインヘッドユニット31を駆動させ、記録媒体上に所望の画像を形成する。
【0054】
さらに、主制御部101は、画像データに基づいて、各色のインクによるドットのうちで、耐候性が低いドットよりも耐候性が高いドットの方が耐候性向上液による耐候性向上の効果が小さくなるようにオーバーコートラインヘッドユニット32を駆動させるオーバーコートヘッド駆動データを作成し、オーバーコートヘッド駆動データを、オーバーコートヘッド制御部103に出力する。オーバーコートヘッド駆動データが入力されたオーバーコートヘッド制御部103は、オーバーコートヘッド駆動データにしたがってオーバーコートラインヘッドユニット32を駆動させる。そして、オーバーコートラインヘッドユニット32は、耐候性が低いドットよりも耐候性が高いドットの方が耐候性向上液による耐候性向上の効果が小さくなるように耐候性向上液を吐出する。
【0055】
以下に、本発明のインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法による更なる具体例を説明する。
【0056】
<第1の態様>
以下の態様は、耐候性向上液が、1種類であり、第2ヘッドによる耐候性向上液の吐出における制御手段又は制御工程による制御が、耐候性が低いドット上に形成される耐候性向上液による被膜よりも、耐候性が高いドット上に形成される耐候性向上液の被膜の方が薄くなるように、行われる態様(第1の態様)である。
【0057】
例えば、インクとして、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色を用いる。各インク及び各インクによるドットの耐候性については、予めベタ画像の耐候性試験などにより求めることができる。そして、上記4色のインクの耐候性を、例えば、以下の表5のように、耐候性指数として、数値化しておく。また、インクの耐候性に応じた、耐候性向上液による被膜の厚みについても、以下の表5のように、被膜厚指数として、数値化しておく。ここで、耐候性指数は、数値が大きい程、耐候性が高い。被膜厚指数は、数値が大きい程、被膜の厚みが厚い。
【0058】
【表5】
【0059】
第1の態様のインクジェット記録装置は、表5のようなデータテーブルを、予め備えておく。
表5のデータテーブルは、耐候性が低いドット上に形成される耐候性向上液による被膜よりも、耐候性が高いドット上に形成される耐候性向上液の被膜の方が薄くなるように作成されている。
【0060】
そして、画像データに基づいて作成された有色ヘッド駆動データにしたがって有色ラインヘッドユニット31を駆動させ、所望の画像が形成された後、オーバーコートラインヘッドユニット32は、主制御部101が表5のデータテーブルを参照して作成したオーバーオートヘッド駆動データにしたがって、耐候性が低いドット上に形成される耐候性向上液による被膜よりも、耐候性が高いドット上に形成される耐候性向上液の被膜の方が薄くなるように耐候性向上液を吐出する。
【0061】
具体的には、図3A及び図3Bに示すように、記録媒体P上の各ドット1Bk、1C、1M、1Yをそれぞれ覆うように、耐候性向上液が付与され被膜2が形成されるが、その際、耐候性が低いドット程、厚い被膜2が形成される。そして、厚い被膜2ほど、耐候性向上の効果が高い。そうすることで、被膜を含む各ドットの耐候性が均一化され、経時の画像の色相の変化が抑えられる。また、全てのドットに対して被膜2が形成されるため、被膜2が形成されないドットがある場合と比べて、光沢の均一性にも優れる。
なお、複数のドットの一部が重なっている場合については、例えば、耐候性向上液も各ドットに対応して各ドット上に付与されるため、耐候性向上液による複数の液滴が重なって一続きの被膜が形成されてもよい。
また、図3Bでは、記録媒体Pの上に各ドット1Bk、1C、1M、1Yが形成されているが、ドットは、記録媒体Pに染み込んでいてもよい。また、記録媒体Pには、各インクが付与される前に、前処理液による前処理がされていてもよい。
【0062】
<第2の態様>
以下の態様は、耐候性向上液が、耐候性向上効果の異なる複数種類であり、第2ヘッドによる耐候性向上液の吐出における制御手段又は制御工程による制御が、耐候性が低いドット上に形成される耐候性向上液の耐候性向上の効果よりも、耐候性が高いドット上に形成される耐候性向上液の耐候性向上の効果が低くなるように、行われる態様(第2の態様)である。
【0063】
例えば、インクとして、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の4色を用いる。各インク及び各インクによるドットの耐候性については、予めベタ画像の耐候性試験などにより求めることができる。そして、上記4色のインクの耐候性を、例えば、以下の表6のように、耐候性指数として、数値化しておく。また、4色のインクの耐候性に応じた、耐候性向上効果の異なる4種類の耐候性向上液を用意する。4種類の耐候性向上液の耐候性向上の程度についても、以下の表6のように、耐候性向上指数として、数値化しておいてもよい。ここで、耐候性指数は、数値が大きい程、耐候性が高い。耐候性向上指数は、数値が大きい程、耐候性向上効果が高い。なお、耐候性向上液の耐候性向上効果は、例えば、含有される紫外線遮蔽材の量により調整することができる。
【0064】
【表6】
【0065】
第2の態様のインクジェット記録装置は、表6のようなデータテーブルを、予め備えておく。
表6のデータテーブルは、耐候性が低いドット上に形成される耐候性向上液の耐候性向上の効果よりも、耐候性が高いドット上に形成される耐候性向上液の耐候性向上の効果が低くなるように作成されている。
【0066】
そして、画像データに基づいて作成された有色ヘッド駆動データにしたがって有色ラインヘッドユニット31を駆動させ、所望の画像が形成された後、オーバーコートラインヘッドユニット32は、主制御部101が表6のデータテーブルを参照して作成したオーバーコートヘッド駆動データにしたがって、耐候性が低いドット上に形成される耐候性向上液の耐候性向上の効果よりも、耐候性が高いドット上に形成される耐候性向上液の耐候性向上の効果が低くなるように、耐候性向上液を吐出する。
【0067】
具体的には、図4A及び図4Bに示すように、記録媒体P上の各ドット1Bk、1C、1M、1Yをそれぞれ覆うように、耐候性向上液I、II、III、IVがそれぞれ付与され、ほぼ同じ厚みの被膜Ia、IIa、IIIa、IVaが形成される。そうすることで、被膜を含む各ドットの耐候性が均一化され、経時の画像の色相の変化が抑えられる。また、全てのドットに対して被膜が形成されるため、被膜が形成されないドットがある場合と比べて、光沢の均一性にも優れる。更に、被膜の厚みが同程度のため、光沢の均一性は更に優れる。
なお、この態様では、4色のインクに対して、4種類の耐候性向上液を用いたが、インクセットが、耐候性が近いインクを含む場合には、例えば、4色のインクに対して、2種類乃至は3種類の耐候性向上液を用い、1種類の耐候性向上液を2色以上のインクに対応させてもよい。
【0068】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 画像データに応じて記録媒体に対して耐候性の異なる複数のインクを吐出し、前記記録媒体上に画像を形成する第1ヘッドと、
前記複数のインクの各インクによる前記画像における各ドットを被覆して、前記各ドットの耐候性を向上させるための、樹脂と紫外線遮蔽材とを含有する耐候性向上液を吐出する第2ヘッドと、
前記画像データに基づいて、耐候性が低いドットよりも耐候性が高いドットの方が前記耐候性向上液による耐候性向上の効果が小さくなるように、前記画像における各ドットに対する、前記第2ヘッドによる前記耐候性向上液の吐出を制御する制御手段と、
を有することを特徴とするインクジェット記録装置である。
<2> 前記耐候性向上液が、1種類であり、
前記第2ヘッドによる前記耐候性向上液の吐出における前記制御手段による制御が、耐候性が低いドット上に形成される前記耐候性向上液による被膜よりも、耐候性が高いドット上に形成される前記耐候性向上液の被膜の方が薄くなるように、行われる、前記<1>に記載のインクジェット記録装置である。
<3> 前記耐候性向上液が、耐候性向上効果の異なる複数種類であり、
前記第2ヘッドによる前記耐候性向上液の吐出における前記制御手段による制御が、耐候性が低いドット上に付与される耐候性向上液の耐候性向上効果よりも、耐候性が高いドット上に形成される耐候性向上液の耐候性向上効果が低くなるように、行われる、前記<1>に記載のインクジェット記録装置である。
<4> 耐候性向上効果の異なる複数種類の前記耐候性向上液は、前記紫外線遮蔽材の含有量により耐候性向上効果が異なる前記<3>に記載のインクジェット記録装置である。
<5> 前記耐候性向上液が、無色透明である前記<1>から<4>のいずれかに記載のインクジェット記録装置である。
<6> 前記紫外線遮蔽材が、金属酸化物微粒子である前記<1>から<5>のいずれかに記載のインクジェット記録装置である。
<7> インクジェット記録装置で実行されるインクジェット記録方法であって、
前記インクジェット記録装置は、画像データに応じて記録媒体に対して耐候性の異なる複数のインクを吐出し、前記記録媒体上に画像を形成する第1ヘッドと、前記複数のインクの各インクによる前記画像における各ドットを被覆して、前記各ドットの耐候性を向上させるための、樹脂と紫外線遮蔽材とを含有する耐候性向上液を吐出する第2ヘッドと、を有し、
前記画像データに基づいて、耐候性が低いドットよりも耐候性が高いドットの方が前記耐候性向上液による耐候性向上の効果が小さくなるように、前記画像における各ドットに対する、前記第2ヘッドによる前記耐候性向上液の吐出を制御する制御工程を含む、ことを特徴とするインクジェット記録方法である。
【符号の説明】
【0069】
1Bk ドット
1C ドット
1Y ドット
1M ドット
2 被膜
31 有色ラインヘッドユニット
32 オーバーコートラインヘッドユニット
100 インクジェット記録装置
101 主制御部
102 有色インクヘッド制御部
103 オーバーコートヘッド制御部
P 記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0070】
【文献】特開2008-149615号公報
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B