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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】液体吐出装置および液体吐出方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
B41J2/01 129
B41J2/01 401
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018068467
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019177601
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】山澤 亞也
(72)【発明者】
【氏名】有田 学
(72)【発明者】
【氏名】亀井 稔人
(72)【発明者】
【氏名】畑中 伸一
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-124548(JP,A)
【文献】特表2016-533929(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0176202(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101607470(CN,A)
【文献】特開2012-232529(JP,A)
【文献】特開2009-208348(JP,A)
【文献】特開2004-187131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に対して相対移動しながら刺激量により硬化の度合が可変な液体を吐出する液体吐出部と、
前記記録媒体上に形成される形成物の光沢性を表す表面粗さ情報を取得する取得部と、
前記表面粗さ情報を基に、前記液体に対する刺激量を設定する刺激量設定部と、
前記液体吐出部に隣接して設けられ、前記液体吐出部によって吐出された液体を、前記刺激量設定部により設定された刺激量に基づいて刺激して硬化させる硬化部と、
を備え、
前記刺激量設定部は、前記表面粗さ情報に基づいて前記形成物の同一面内における前記硬化部によって刺激可能な領域毎に刺激量を設定するものであって、
前記取得部は、前記液体吐出部からの前記液体の吐出および前記硬化部からの刺激による硬化交互に繰り返して立体形成物を形成する際に、前記表面粗さ情報における表面粗さの大きい領域の境界部分を抽出し、
前記刺激量設定部は、抽出した前記境界部分に対して、前記表面粗さの大きい領域に比べて表面粗さの小さい領域が前記境界部分の上に重なるように、前記境界部分の上に前記液体吐出部から吐出された前記液体に対する刺激量を設定する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記液体は、紫外線の照射光量によって硬化の度合が可変であって、
前記硬化部は、紫外線の照射によって前記液体吐出部によって吐出された液体を硬化させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記液体吐出部によって吐出された前記液体は、紫外線の照射光量に応じて硬度が増加する、
ことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記取得部は、画像データから前記表面粗さ情報を作成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
液体吐出装置で実行される液体吐出方法であって、
記録媒体に対して相対移動しながら刺激量により硬化の度合が可変な液体を液体吐出部から吐出する液体吐出工程と、
前記記録媒体上に形成される形成物の光沢性を表す表面粗さ情報を取得する取得工程と、
前記表面粗さ情報を基に、前記液体に対する刺激量を設定する刺激量設定工程と、
前記液体吐出部に隣接して設けられる硬化部により、前記液体吐出工程によって吐出された液体を、前記刺激量設定工程により設定された刺激量に基づいて刺激して硬化させる硬化工程と、
を含み、
前記刺激量設定工程は、前記表面粗さ情報に基づいて同一面内における前記硬化工程によって刺激可能な領域毎に刺激量を設定するものであって、
前記取得工程は、前記液体吐出工程の前記液体の前記液体吐出部からの吐出および前記硬化部からの刺激による硬化交互に繰り返して立体形成物を形成する際に、前記表面粗さ情報における表面粗さの大きい領域の境界部分を抽出し、
前記刺激量設定工程は、抽出した前記境界部分に対して、前記表面粗さの大きい領域に比べて表面粗さの小さい領域が前記境界部分の上に重なるように、前記境界部分の上に前記液体吐出部から吐出された前記液体に対する刺激量を設定する、
ことを特徴とする液体吐出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置および液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクを吐出させて乾燥あるいは硬化させて形成した層を積層させることによって立体的な画像や立体物を形成する画像形成方法(立体物形成方法)が知られている。以下、「形成物」には、立体的な画像や立体物を含むものとする。
【0003】
この方式は、例えば、媒体(被画像形成物)上に紫外線(UV)などの光を照射することによって硬化する光硬化型インク(例えば、UVインク)を吐出し、媒体に形成されたUVインクドットに光を照射して硬化させることにより、UVインクドットを媒体に定着させて形成物を生成するものである。
【0004】
また、特許文献1には、モード選択により照射装置の副走査方向の位置を変えてインク吐出から硬化までの時間を制御することで、形成物の表面粗さを制御してマット印刷とグロス印刷とを選択的に実行する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術によれば、液滴が着弾してから硬化するまでの時間を制御するため、印刷速度に制限がかかってしまい生産性が落ちてしまう、という問題があった。
【0006】
また、従来の技術によれば、硬化性の異なる複数のインクを用いるため、装置が大型化してしまう、という問題があった。
【0007】
さらに、従来の技術によれば、マット印刷とグロス印刷とはモードを選択して別々のジョブとして印刷する必要があり、単一ジョブ内で形成物の同一面内に異なる表面粗さの領域を配置した画像を形成することができない、という問題があった。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、装置の大型化や生産性の低下を必要とせずに、簡易な構成で立体形成物の同一面内における硬化部によって刺激可能な領域毎の表面粗さを適切に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、記録媒体に対して相対移動しながら刺激量により硬化の度合が可変な液体を吐出する液体吐出部と、前記記録媒体上に形成される形成物の光沢性を表す表面粗さ情報を取得する取得部と、前記表面粗さ情報を基に、前記液体に対する刺激量を設定する刺激量設定部と、前記液体吐出部に隣接して設けられ、前記液体吐出部によって吐出された液体を、前記刺激量設定部により設定された刺激量に基づいて刺激して硬化させる硬化部と、を備え、前記刺激量設定部は、前記表面粗さ情報に基づいて同一面内における前記硬化部によって刺激可能な領域毎に刺激量を設定するものであって、前記取得部は、前記液体吐出部からの前記液体の吐出および前記硬化部からの刺激による硬化交互に繰り返して立体形成物を形成する際に、前記表面粗さ情報における表面粗さの大きい領域の境界部分を抽出し、前記刺激量設定部は、抽出した前記境界部分に対して、前記表面粗さの大きい領域に比べて表面粗さの小さい領域が前記境界部分の上に重なるように、前記境界部分の上に前記液体吐出部から吐出された前記液体に対する刺激量を設定する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表面粗さ情報に基づいて、硬化部によって刺激可能な領域毎に刺激量を設定することで、より簡易な構成で立体形成物の同一面内における硬化部によって刺激可能な領域毎の表面粗さを適切に制御できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態にかかる画像処理システムの一例を示す概略構成図である。
図2図2は、第一層目の照射光量と第二層目の表面粗さとの関係例を示すグラフである。
図3図3は、照射光量に応じた積層状態の違いを示す図である。
図4図4は、画像処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図5図5は、画像処理装置の機能構成を示すブロック図である。
図6図6は、画像形成装置の液体吐出部の一例を示す模式図である。
図7図7は、画像形成処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、液体吐出装置および液体吐出方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0013】
ここで、図1は実施の形態にかかる画像処理システム10の一例を示す概略構成図である。画像処理システム10は、画像処理装置12と、画像形成装置30と、を備える。画像処理装置12と画像形成装置30とは、通信可能に接続されている。なお、広義の「液体吐出装置」には、画像処理装置12と画像形成装置30からなる画像処理システム10、画像処理装置12単体、画像形成装置30単体、のいずれも含まれる。
【0014】
画像形成装置30は、液体吐出部14と、可動ステージ16と、駆動部25と、を備える。液体吐出部14は、複数のノズルが設けられた複数のヘッド18(記録ヘッド)を備えたインクジェット方式のキャリッジであり、液滴をヘッド18のノズルから吐出することによってドットを記録する。ノズルは、液体吐出部14における、可動ステージ16との対向面に設けられている。
【0015】
液滴は、インク滴および追加液滴である。インク滴は、画像形成に用いる色材を含むインクの液滴(カラーインク)である。
【0016】
追加液滴は、画像に影響を与えない色の液滴である。追加液滴は、例えば、白色または透明(クリアインク)である。また、追加液滴は、被画像形成物である支持体Pと同系色であってもよい。支持体Pは、インク滴による画像の被画像形成物である。支持体Pは、例えば、記録媒体である。また、インクジェット方式等を用いて液滴を吐出することにより、可動ステージ16上に支持体Pそのものを形成してもよい。
【0017】
インク滴および追加液滴は、刺激硬化性を有する。刺激は、例えば、光(紫外線、赤外線など)、熱、電気などである。本実施形態では、インク滴および追加液滴は、一例として、紫外線硬化性を有する場合を説明する。なお、インク滴および追加液滴は、紫外線硬化性を有する形態に限定されない。
【0018】
液体吐出部14における、可動ステージ16との対向面には、照射部22が設けられている。硬化部である照射部22は、ノズルから吐出されたインク滴や追加液滴を硬化させる波長の光を支持体Pに照射する。照射部22は、例えばUV-LEDで構成されており、紫外線を照射する。
【0019】
本実施形態の照射部22は、例えばPWM(Pulse Width Modulation)方式を用いてLEDの光量(刺激量)を可変とする。
【0020】
可動ステージ16は、支持体Pを保持する。駆動部25は、液体吐出部14および可動ステージ16を、鉛直方向(図1中、矢印Z方向)、鉛直方向Zに垂直な主走査方向X、および鉛直方向Zおよび主走査方向Xに垂直な副走査方向Yに、相対的に移動させる。本実施形態では、主走査方向Xおよび副走査方向Yからなる平面は、可動ステージ16における液体吐出部14との対向面に沿ったXY平面に相当する。
【0021】
駆動部25は、第1駆動部23および第2駆動部24を含む。第1駆動部23は、液体吐出部14を、鉛直方向Z、主走査方向X、および副走査方向Yに移動させる。第2駆動部24は、可動ステージ16を、鉛直方向Z、主走査方向X、および副走査方向Yに移動させる。なお、画像形成装置30は、第1駆動部23および第2駆動部24のいずれか一方を備えた構成であってもよい。
【0022】
このような構成により、画像形成装置30は、紫外線硬化性を有する液滴を画像データに応じた所定領域に吐出し、紫外線を照射して硬化させたものを順次積層して立体造形を行う。より具体的には、画像形成装置30は、例えば、支持体P上に、ヘッド18のノズルから紫外線硬化性を有する液滴を画像データに応じた所定領域に吐出し、隣接した照射部22から紫外線を照射して硬化させて第一層を形成した後、ヘッド18のノズルから紫外線硬化性を有する液滴を画像データに応じた所定領域に吐出し、隣接した照射部22から紫外線を照射して硬化させて第二層を形成する工程を、積層回数に合わせて、可動ステージ16を下げながら繰り返すことで、立体形成物(凸部)を形成する。
【0023】
ここで、紫外線硬化性を有するインクを構成する紫外線硬化型組成物について例示的に説明する。本実施形態の紫外線硬化型組成物は、少なくとも2種のモノマー、重合開始剤、及び紫外線吸収剤を含有する紫外線硬化型組成物である。少なくとも2種のモノマーは、単官能モノマー、及び多官能モノマーを含む。多官能モノマーの含有量は、モノマー全量に対して40質量%以上である。なお、紫外線硬化型組成物は、更に必要に応じて、色材、有機溶媒、その他の成分を含む。
【0024】
例えば、支持体P上に、紫外線硬化型組成物を付与し、波長395nm、照度2.5W/cm、照射量1,000mJ/cmの紫外線を照射して硬化させる。このようにして形成された平均膜厚が40μmの形成物について、微小硬度計を用いたマルテンス硬度の5.0μmまでの深さの測定における最小値と最大値との比(最小値/最大値)は、0.55より大きい。
【0025】
上述のような紫外線硬化型組成物においては、照射部22の照射光量により、形成物の表面の硬度が異なる。例えば、波長395nm、照度2.5W/cm、照射量1,000mJ/cmの紫外線を照射した場合に比べて照射量300mJ/cmの紫外線を照射した場合には、形成物の表面の硬度が低くなる。すなわち、本実施の形態の紫外線硬化型組成物であるインクは、紫外線の光量(刺激量)により硬化の度合が可変な液体である。
【0026】
ここで、図2は第一層目の照射光量と第二層目の表面粗さとの関係例を示すグラフ、図3は照射光量に応じた積層状態の違いを示す図である。図3(a)は照射部22の紫外線の照射光量が多い場合、図3(b)は照射部22の紫外線の照射光量が少ない場合を示す。
【0027】
上述したように、本実施形態の紫外線硬化型組成物においては、照射部22の紫外線の照射光量が少ないと、形成物の表面の硬度が低くなる。そのため、図3(b)に示すように、第一層目のインク滴や追加液滴に対する照射部22の紫外線の照射光量が少ない場合、第一層目のインク滴や追加液滴の形成物の表面張力が小さくなるので、第二層目のインク滴や追加液滴が濡れ広がることになる。すなわち、図3(a)に示すように照射部22の紫外線の照射光量が多い場合には、立体形成物の高さが高くなるので表面粗さが増加し、立体形成物の表面はマット調になる。一方、図3(b)に示すように照射部22の紫外線の照射光量が少ない場合には、立体形成物の高さが低くなり光沢度が増すので表面粗さが減少し、立体形成物の表面はグロス調になる。
【0028】
すなわち、図2に示すように、第二層目の照射領域の単位面積あたりの表面粗さ(=高さ)は、第一層目における照射部22の紫外線の照射光量が多いほど大きくなる。図2に示すように、上述した傾向は、インク滴や追加液滴の着弾から照射されるまでの時間が短いほど顕著である。
【0029】
次に、画像処理装置12のハードウェア構成について説明する。
【0030】
図4は、画像処理装置12のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。画像処理装置12は、データを入力するための入力部130と、ディスプレイなどの表示部131と、データ通信を行うための通信部132と、装置全体の制御を司る制御手段としてのCPU133と、CPU133のワークエリアとして使用されるRAM(Random Access Memory)134と、CPU133を動作させるための各種プログラム等を記憶した記憶部135とを備えている。
【0031】
入力部130は、カーソルキー、数字入力キーおよび各種機能キー等を備えたキーボード等が挙げられ、表示部131の表示画面上でキーの選択等を行うためのマウスやスライスパット等が挙げられる。入力部130は、ユーザがCPU133に操作指示を与えるためや、データを入力するためのユーザインターフェースである。
【0032】
表示部131は、CRTやLCD等が挙げられ、CPU133から入力される表示データに応じた表示が行われる。通信部132は、外部とデータ通信するためのものであり、所定の通信インターフェースにて画像形成装置30とデータ通信を行うためのものである。
【0033】
CPU133は、記憶部135に格納されているプログラムに従って、装置全体を制御する中央制御ユニットである。CPU133には、入力部130、表示部131、通信部132、RAM134、記憶部135が接続されており、データ通信、メモリへのアクセスによるアプリケーションプログラムの読み出しや各種データのリード/ライト、データ/コマンド入力、表示等を制御する。
【0034】
また、CPU133は、入力部130から入力された画像データや記憶部135に記憶された画像データに基づいて、画像を形成するための画像データを、通信部132を介して画像形成装置30に送出する。
【0035】
RAM134は、指定されたプログラム、入力指示、入力データおよび処理結果等を格納するワークメモリと、表示部131の表示画面に表示する表示データを一時的に格納する表示メモリとを備えている。
【0036】
記憶部135は、CPU133が実行可能なOSプログラム(例えば、Microsoft社のオペレーティングシステムWindows(登録商標)等)、画像形成装置30に対応したプリンタドライバ等の各種プログラムやデータを格納する。なお、記憶部135としては、例えば、ハードディスク、CD-ROM、DVD-ROM等の光学的、磁気的、電気的な記録媒体を用いることができる。
【0037】
各種プログラムは、CPU133が読み取り可能なデータ形態で記憶部135に格納されている。また、各種プログラムは、あらかじめ記憶部135に記録されている場合やインターネット等の通信回線を介してダウンロードされて記憶部135に格納される場合等がある。
【0038】
本実施の形態の画像処理装置12で実行されるプログラムは、下記に示す各機能を含むモジュール構成となっている。画像処理装置12のCPU133は、記憶部135などからプログラムを読み出して実行することにより各モジュールがRAM134上にロードされ、各機能を発揮する。
【0039】
図5は、画像処理装置12の機能構成を示すブロック図である。
【0040】
画像処理装置12は、主制御部13と、記録制御部28と、を含む。主制御部13は、データ取得部12Aと、データ作成部12Bと、データ出力部12Cと、を含む。
【0041】
なお、本実施の形態においては、データ取得部12A、データ作成部12B、データ出力部12C、記録制御部28をソフトウェアにより実現したが、これに限るものではなく、データ取得部12A、データ作成部12B、データ出力部12C、記録制御部28の一部または全てを、IC(Integrated Circuit)などのハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。
【0042】
データ取得部12Aは、画像データおよび表面粗さ情報を取得する取得部である。画像データは、形成する画像の形状や色などの情報である。表面粗さ情報は、液滴(インク)により支持体P上に形成される形成物の単位面積(照射部22からの紫外線の照射領域)あたりの表面の粗さ(=高さ)を示す情報である。表面粗さ情報は、光沢性や平滑度で表される情報であってもよい。
【0043】
なお、データ取得部12Aは、通信部132を介して、外部装置から画像データおよび表面粗さ情報を取得してもよいし、画像処理装置12に設けられた記憶部135から画像データおよび表面粗さ情報を取得してもよい。
【0044】
データ作成部12Bは、データ取得部12Aで取得した画像データおよび表面粗さ情報について、マスク処理などの所定のデータ処理を行う。
【0045】
データ出力部12Cは、データ作成部12Bにて作成された画像データおよび表面粗さ情報を画像形成装置30に出力する。
【0046】
記録制御部28は、データ出力部12Cで作成された画像データに基づいて、ヘッド18から各画素に対応する液滴32(図6参照)を吐出するように、画像形成装置30の液体吐出部14、駆動部25を制御する。
【0047】
また、刺激量設定部として機能する記録制御部28は、表面粗さ情報に基づいて、照射部22を制御する。より詳細には、記録制御部28は、表面粗さ情報に基づいて、照射部22の照射領域(支持体P上に形成される形成物の単位面積)ごとに照射する紫外線の光量を設定する。記録制御部28は、例えば、表面粗さ情報と紫外線の光量とを対応付けたテーブルを有している。
【0048】
なお、本実施形態では、画像処理システム10は、通信可能に接続された画像処理装置12と、画像形成装置30と、を備えるが、画像処理装置12は、画像形成装置30が備えるものであってもよい。
【0049】
また、画像処理システム10が画像処理装置12と、画像形成装置30と、を備える構成において、画像形成装置30が記録制御部28を備え、記録制御部28が画像処理装置12のデータ出力部12Cから画像データを受け付けるものであってもよい。
【0050】
次に、画像形成装置30の詳細を説明する。画像形成装置30は、紫外線硬化型組成物であるインクを吐出し、光を照射して紫外線硬化型組成物を硬化させる光造形法により画像を形成する。
【0051】
図6は、画像形成装置30の液体吐出部14の一例を示す模式図である。図6に示すように、画像形成装置30における液体吐出部14は、所定方向に複数のノズル19を配列させたキャリッジである。各ノズル19は、液滴32として、インク滴、追加液滴、またはインク滴と追加液滴との混合液を吐出する。ノズル19および液滴を吐出する構成は、公知のインクジェット方式と同様である。
【0052】
本実施形態では、ヘッド18K,18C,18M,18Y,18W,18T(区別しないときはヘッド18とする)が所定方向に配列されている。各ヘッド18は、インク滴を吐出するノズル19K,19C,19M,19Y,19W,19T(区別しないときはノズル19とする)を有している。ノズル19Kはブラックのインク滴、ノズル19Cはシアンのインク滴、ノズル19Mはマゼンタのインク滴、ノズル19Yはイエローのインク滴、ノズル19Wは白色の追加液滴、ノズル19Tは透明な追加液滴を吐出する。
【0053】
ノズル19から液滴32が吐出されることで、液滴32に応じたドット34が支持体P上に形成され、画像17が形成される。また、液滴32を積層させて吐出することで、ドット34を積層させ、形成物である立体の画像17を形成する。
【0054】
本実施形態では、ヘッド18K、18C、18M、18Y、18W、18Tの配列方向の両端部に、照射部22が設けられている。各ノズル19から吐出された液滴32に、照射部22から紫外光が照射されることで、液滴32が硬化する。
【0055】
照射部22は、ノズル19の近傍に配置することが好ましい。照射部22をノズル19の近傍に配置することで、ノズル19から吐出された液滴32が支持体P側に付着してから硬化するまでの硬化時間の短縮を図ることができる。このため、より高精細な画像を形成することができる。なお、照射部22の数や照射部22の設置位置は、図6に示す形態に限定されない。
【0056】
また、図6には、各ヘッド18の各々が1色(1種類)の液滴32を吐出する場合を示したが、これに限られるものではなく、例えば、各ヘッド18が2以上のノズル19を備えていてもよい。また、ノズル19は、複数種類の液滴32の混合液滴を吐出してもよい。また、液体吐出部14から吐出するインクの色は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローに限定されない。また、液体吐出部14から吐出する液滴32の種類は、6種類(ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、白色、透明)に限定されない。
【0057】
また、図1に示されるように、画像形成装置30では、液体吐出部14のノズル19から液滴32を吐出しながら、液体吐出部14および支持体Pを相対的に移動させることで、支持体P上に液滴32によるドット34を形成したり、ドット34を積層させたりすることができる。
【0058】
なお、支持体Pは、平面状であってもよいし、凹凸などを備えた立体状であってもよい。また、支持体Pは、紙、コート紙、厚紙、OHP、プラスチックフィルム、プリプレグ、銅箔、ポリカーボネイト、金属、ガラス等のいずれでもよい。
【0059】
画像形成装置30による画像形成処理の流れについて説明する。本実施形態に係る画像形成装置30は、記録制御部28による制御により、表面粗さ情報に基づいて、照射部22の照射領域ごとに照射する紫外線の光量を設定することで、より簡易な構成で立体形成物の同一面内における照射部22によって照射可能な領域毎の表面粗さを適切に制御できる。
【0060】
図7は、画像形成処理の流れを概略的に示すフローチャートである。
【0061】
図7に示すように、まず、記録制御部28は、画像処理装置12のデータ出力部12Cから出力された第一層の画像データおよび表面粗さ情報を受け取る(ステップS1)。
【0062】
次いで、記録制御部28は、第一層の画像データに基づいて、ヘッド18から各画素に対応する液滴32を吐出するように、画像形成装置30の液体吐出部14、駆動部25を制御する(ステップS2)。
【0063】
加えて、記録制御部28は、第一層の表面粗さ情報に基づいて、照射部22の照射領域(支持体P上に形成される形成物の単位面積)ごとに照射する紫外線の光量を設定して照射部22を制御する(ステップS3)。
【0064】
続いて、記録制御部28は、画像処理装置12のデータ出力部12Cから出力された第二層の画像データおよび表面粗さ情報を受け取る(ステップS4)。
【0065】
次いで、記録制御部28は、第二層の画像データに基づいて、ヘッド18から各画素に対応する液滴32を吐出するように、画像形成装置30の液体吐出部14、駆動部25を制御する(ステップS5)。
【0066】
加えて、記録制御部28は、第二層の表面粗さ情報に基づいて、照射部22の照射領域(支持体P上に形成される形成物の単位面積)ごとに照射する紫外線の光量を設定して照射部22を制御する(ステップS6)。
【0067】
なお、本実施の形態においては、第二層までの積層について図7のフローチャートで説明したが、これに限るものではなく、積層数は任意である。
【0068】
このように本実施の形態によれば、表面粗さ情報に基づいて、照射部22の照射領域ごとに照射する紫外線の光量を設定することで、より簡易な構成で立体形成物の同一面内における照射部22によって照射可能な領域毎の表面粗さを適切に制御できる。
【0069】
本実施の形態によれば、インク滴および追加液滴の吐出から硬化までの時間は同一のまま、照射する紫外線の光量によって表面粗さを制御可能なインクと、紫外線の光量を制御可能な照射部22を用いる構成のため、ヘッド18と照射部22の配置など、システムの構成を変えることなく、単一ジョブ内で同一面内に異なる表面粗さの領域(例えば、マット調とグロス調の領域)を配置した立体形成物を形成することができる。
【0070】
なお、本実施の形態においては、画像処理装置12の主制御部13(データ取得部12A)は、画像データおよび表面粗さ情報を取得するようにしたが、これに限るものではなく、画像データから表面粗さ情報を作成するようにしてもよい。
【0071】
なお、本実施の形態においては、照射部22の紫外線の照射光量に応じた第一層目の液滴の硬化状態により、第二層目の液滴の濡れ広がりが異なるものとして説明したが、インクの性質によってはこれに限るものではない。例えば、照射部22の紫外線の照射光量が少ない場合には、照射部22の紫外線の照射光量が多い場合に比べて、支持体P上における第一層目の液滴の濡れ広がりが広くなるようなこともインクの性質によっては考えられる。
【0072】
また、積層印刷で立体形成物(凸部)を形成する際に、表面粗さの大きい領域の境界部分のみを抽出し、表面粗さの小さい領域を重ね書きすることで、立体形成物(凸部)の斜面を滑らかにするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0073】
10 液体吐出装置
12A 取得部
14 液体吐出部
22 硬化部
28 刺激量設定部
P 記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0074】
【文献】特開2013-059868号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7