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特許7119548医療用長尺体の拭取試験装置及び拭取試験方法
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  • 特許-医療用長尺体の拭取試験装置及び拭取試験方法 図1
  • 特許-医療用長尺体の拭取試験装置及び拭取試験方法 図2
  • 特許-医療用長尺体の拭取試験装置及び拭取試験方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】医療用長尺体の拭取試験装置及び拭取試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/56 20060101AFI20220809BHJP
【FI】
G01N3/56 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018090092
(22)【出願日】2018-05-08
(65)【公開番号】P2019196940
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樫村 誠一
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0081031(US,A1)
【文献】特開2018-023758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用途に用いられる医療用長尺体の外表面の拭き取りに対する耐久性を試験するための装置であって、
前記医療用長尺体の外表面を拭き取るための拭取布、及び、前記拭取布を前記医療用長尺体の外表面に押し付けた状態で保持する保持機構を有する拭取セルと、
前記拭取セルに対して前記医療用長尺体を移動させる移動機構と、を備え
前記保持機構は、
前記医療用長尺体の外表面を覆うように設けられた拭取布の周囲に螺旋状に巻き付けられ、一方の端部が封止されたゴムチューブと、
前記ゴムチューブの他方の端部からエアーを導入して前記ゴムチューブを膨らませるエアーポンプと、
前記ゴムチューブを巻き付けた部分の前記医療用長尺体、前記拭取布、及び前記ゴムチューブの外周を覆うように設けられ、前記ゴムチューブを膨らませた際の前記ゴムチューブの径方向外方への拡がりを規制することで、膨らんだ前記ゴムチューブにより前記拭取布を前記医療用長尺体の外表面へ押し付ける筒状体と、を有する、
医療用長尺体の拭取試験装置。
【請求項2】
前記医療用長尺体は、環状に連結され、
前記移動機構は、前記医療用長尺体を長手方向に回転させるローラを有する、
請求項1に記載の医療用長尺体の拭取試験装置。
【請求項3】
前記医療用長尺体に取り付けられたマーカ、及び、前記医療用長尺体に臨むように設けられ、前記マーカの通過を検知するセンサを有する拭取回数計数部を備えた、
請求項に記載の医療用長尺体の拭取試験装置。
【請求項4】
前記拭取布には、消毒液が含浸されており、
前記医療用長尺体の外表面に付着した消毒液を乾燥させる乾燥セルをさらに備えた、
請求項1乃至の何れか1項に記載の医療用長尺体の拭取試験装置。
【請求項5】
医療用途に用いられる医療用長尺体の外表面の拭き取りに対する耐久性を試験するための装置であって、
前記医療用長尺体の外表面を拭き取るための拭取布、及び、前記拭取布を前記医療用長尺体の外表面に押し付けた状態で保持する保持機構を有する拭取セルと、
前記拭取セルに対して前記医療用長尺体を移動させる移動機構と、を備え
前記医療用長尺体は、環状に連結され、
前記移動機構は、前記医療用長尺体を長手方向に回転させるローラを有する、
医療用長尺体の拭取試験装置。
【請求項6】
医療用途に用いられる医療用長尺体の外表面の拭き取りに対する耐久性を試験するための装置であって、
前記医療用長尺体の外表面を拭き取るための拭取布、及び、前記拭取布を前記医療用長尺体の外表面に押し付けた状態で保持する保持機構を有する拭取セルと、
前記拭取セルに対して前記医療用長尺体を移動させる移動機構と、を備え
前記拭取布には、消毒液が含浸されており、
前記医療用長尺体の外表面に付着した消毒液を乾燥させる乾燥セルをさらに備えた、
医療用長尺体の拭取試験装置。
【請求項7】
医療用途に用いられる医療用長尺体の外表面の拭き取りに対する耐久性を試験するための方法であって、
前記医療用長尺体の外表面を拭き取るための拭取布を前記医療用長尺体の外表面を覆うように設け、前記拭取布の周囲に、一方の端部が封止されたゴムチューブを螺旋状に巻き付け、前記ゴムチューブの他方の端部からエアーを導入して前記ゴムチューブを膨らませ、前記ゴムチューブを膨らませた際の前記ゴムチューブの径方向外方への拡がりを規制することで、膨らんだ前記ゴムチューブにより前記拭取布を前記医療用長尺体の外表面に押し付けた状態で保持し、
移動機構により、前記拭取布に対して前記医療用長尺体を移動させる、
医療用長尺体の拭取試験方法。
【請求項8】
医療用途に用いられる医療用長尺体の外表面の拭き取りに対する耐久性を試験するための方法であって、
環状に連結された前記医療用長尺体の外表面を拭き取るための拭取布、及び、前記拭取布を前記医療用長尺体の外表面に押し付けた状態で保持する保持機構を有する拭取セルを用いて、前記拭取布を前記医療用長尺体の外表面に押し付けた状態で保持し、
移動機構の有するローラにより前記環状に連結された医療用長尺体を回転させることにより、前記拭取セルに対して前記医療用長尺体を移動させる、
医療用長尺体の拭取試験方法。
【請求項9】
医療用途に用いられる医療用長尺体の外表面の拭き取りに対する耐久性を試験するための方法であって、
前記医療用長尺体の外表面を拭き取るために消毒液が含浸された拭取布、及び、前記拭取布を前記医療用長尺体の外表面に押し付けた状態で保持する保持機構を有する拭取セルを用いて、前記拭取布を前記医療用長尺体の外表面に押し付けた状態で保持し、
移動機構により、前記拭取セルに対して前記医療用長尺体を移動させ
乾燥セルにより、前記医療用長尺体の外表面に付着した前記消毒液を乾燥させる、
医療用長尺体の拭取試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用長尺体の拭取試験装置及び拭取試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用途に使用されるケーブルやチューブ等の長尺体(以下、医療用長尺体という)では、その清浄性を保持するため、使用前、使用後に消毒液を含浸したガーゼ等を使い、手拭で表面の汚れを除去する拭き取り作業が行われる。このため、使用される医療用長尺体は、拭き取り作業を重ねても、表面に削れ、変色などの劣化が生じないことが求められる。
【0003】
近年では、医療用長尺体として、シリコーンゴムからなるシースの外表面に、べたつきを押えるための凹凸層を設けるなど、最外層にコーティング層を有するものが用いられてきている(例えば特許文献1参照)。そのため、このコーティング層の拭き取り作業に対する耐性を評価することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-195023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、消毒液による拭き取り作業を的確に模擬できる試験方法は確立されておらず、例えば、消毒液を含浸した不織布等を用いて所望の回数実際に手拭をして、その後の変色や削れ状態を評価するしかなかった。しかしながら、この方法では、拭き取りの際の力が一定とならないため、医療用長尺体の拭き取りに対する耐久性を精度よく評価することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、医療用長尺体の拭き取りに対する耐久性を精度よく評価可能な医療用長尺体の拭取試験装置及び拭取試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、医療用途に用いられる医療用長尺体の外表面の拭き取りに対する耐久性を試験するための装置であって、前記医療用長尺体の外表面を拭き取るための拭取布、及び、前記拭取布を前記医療用長尺体の外表面に押し付けた状態で保持する保持機構を有する拭取セルと、前記拭取セルに対して前記医療用長尺体を移動させる移動機構と、を備えた、医療用長尺体の拭取試験装置を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、医療用途に用いられる医療用長尺体の外表面の拭き取りに対する耐久性を試験するための方法であって、前記医療用長尺体の外表面を拭き取るための拭取布、及び、前記拭取布を前記医療用長尺体の外表面に押し付けた状態で保持する保持機構を有する拭取セルを用いて、前記拭取布を前記医療用長尺体の外表面に押し付けた状態で保持し、移動機構により、前記拭取セルに対して前記医療用長尺体を移動させる、医療用長尺体の拭取試験方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、医療用長尺体の拭き取りに対する耐久性を精度よく評価可能な医療用長尺体の拭取試験装置及び拭取試験方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係る医療用長尺体の拭取試験装置を示す図であり、(a)は概略構成図、(b)はエアー導入前の拭取セルを示す説明図、(c)はエアー導入後の拭取セルを示す説明図である。
図2】本発明の一変形例に係る医療用長尺体の拭取試験装置を示す概略構成図である。
図3】(a),(b)は、本発明の一変形例に係る医療用長尺体の拭取試験装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0012】
(医療用長尺体の拭取試験装置)
図1は、本発明の一実施の形態に係る医療用長尺体の拭取試験装置を示す図であり、(a)は概略構成図、(b)はエアー導入前の拭取セルを示す説明図、(c)はエアー導入後の拭取セルを示す説明図である。
【0013】
図1(a)~(c)に示すように、医療用長尺体の拭取試験装置1は、医療用途に用いられる医療用長尺体2の外表面の拭き取りに対する耐久性を試験するための装置であって、拭取セル3と、移動機構4と、を主に備えている。
【0014】
(医療用長尺体2)
医療用長尺体2は、医療用途に使用されるケーブルやチューブであり、例えば、超音波診断用のプローブケーブル等である。医療用長尺体2としては、シリコーンからなるシースを有し、その外表面に、べたつきを押えるための凹凸層等のコーティング層を有するものを用いてもよい。つまり、医療用長尺体の拭取試験装置1は、コーティング層の拭き取りに対する耐久性を試験するためのものであってもよい。
【0015】
(拭取セル3)
拭取セル3は、医療用長尺体2の外表面を拭き取るための拭取布31、及び、拭取布31を医療用長尺体2の外表面に押し付けた状態で保持する保持機構32を有している。
【0016】
拭取布31としては、実際に拭き取り作業に使用する布、あるいは拭き取り時に実際に使用する布と略同等の影響を医療用長尺体2に与えるものを用いればよい。本実施の形態では、拭取布31として、消毒液を含浸させた不織布を用いた。
【0017】
保持機構32は、ゴムチューブ321と、エアーポンプ322と、筒状体323と、を有している。ゴムチューブ321は、医療用長尺体2の外表面を覆うように設けられた拭取布31の周囲に螺旋状に巻き付けられている。ゴムチューブ321としては、内部にエアーを導入することにより膨らむことが可能なものを用いることができる。エアーの抜けを抑制するため、ゴムチューブ321の一方の端部は、封止されている。
【0018】
エアーを導入した際に、拭取布31の周囲に螺旋状に巻き付けた部分以外の部分でゴムチューブ321が膨らんでしまうことを抑制するため、拭取布31の周囲に螺旋状に巻き付ける部分は、他の部分と比較して薄く形成されていてもよい。また、拭取布31の周囲に螺旋状に巻き付ける部分以外の部分に、伸びの小さいテープ部材を巻き付ける等して、エアー導入時に膨らむ部分の調整を行ってもよい。
【0019】
エアーポンプ322は、ゴムチューブ321の他方の端部(封止されていない側の端部)に接続されており、ゴムチューブ321の他方の端部からゴムチューブ321内にエアーを導入して、ゴムチューブ321を膨らませるものである。エアーポンプ322は、ゴムチューブ321内の圧力が一定となるように(つまり拭取布31を医療用長尺体2に押し付ける力が一定となるように)圧力調整を行う機能を有していてもよい。
【0020】
筒状体323は、ゴムチューブ321を巻き付けた部分の医療用長尺体2、拭取布31、及びゴムチューブ321の外周を覆うように設けられている。筒状体323は、金属等の剛性を有し変形しにくい部材からなり、ゴムチューブ321を膨らませた際のゴムチューブ321の径方向外方へ拡がりを規制する。これにより、膨らんだゴムチューブ321により、拭取布31が医療用長尺体2の外表面へ所定の力で押し付けられた状態が保持されることになる。なお、図1(a),(b)では、筒状体323を破線にて示している。
【0021】
このように、本実施の形態では、拭取布31に螺旋状に巻き付けたゴムチューブ321を膨らませることで、拭取布31を医療用長尺体2に押し付けるように保持機構32を構成している。これにより、手で拭取り作業を行うことを精度よく模擬することが可能になる。指による押圧をより精度よく模擬するため、ゴムチューブ321の巻き付け回数は、3~5回程度とすることが望ましい。ゴムチューブ321の太さについても、指を想定して適宜な太さ(例えばエアー導入前(膨張前)の直径が5~10mm程度)に設定するとよい。
【0022】
なお、エアー導入により膨らむ部材はゴムチューブ321に限らず、例えば血圧計等で一般に用いられているシート状のゴムバッグを用いることもできる。つまり、ゴムバックを筒状体323内で拭取布31の周囲に配置し、このゴムバッグを膨らませることで拭取布31を医療用長尺体2に押し付けるように保持機構32を構成することも可能である。
【0023】
本実施の形態では、拭取布31に消毒液を含浸した状態で試験を行うため、試験中に拭取布31が乾いてしまわないように対策する必要がある。そのため、医療用長尺体の拭取試験装置1は、拭取布31に消毒液を供給する消毒液供給機構6をさらに備えることが望ましい。
【0024】
消毒液供給機構6は、例えば、消毒液を貯留するタンク(不図示)と、タンクと拭取セル3とを連結する消毒液供給ライン61と、消毒液供給ライン61に設けられ、タンクからの消毒液を拭取セル3に供給するポンプ(不図示)と、を有している。消毒液供給ライン61は、筒状体323に設けられた貫通孔(不図示)を介して筒状態内に先端部が挿し込まれ、当該先端部から供給された消毒液が拭取布31に付着するように、先端部を拭取布31に臨ませた状態で配置されるとよい。なお、タンクやポンプを省略し、実験時に手作業で消毒液供給ライン61から消毒液を適宜注入するようにしてもよい。
【0025】
(移動機構4)
移動機構4は、拭取セル3に対して医療用長尺体2を移動させるものである。移動機構4により拭取セル3に対して医療用長尺体2を移動させることで、拭取布31で医療用長尺体2の外表面を拭き取る動作が模擬される。なお、拭取セル3は、医療用長尺体2の移動に伴って移動しないよう周囲の部材に固定される。
【0026】
本実施の形態では、医療用長尺体2は、試験用に環状に連結されており、移動機構4は、環状に連結された医療用長尺体2を長手方向に回転させる2つのローラ41を有している。これらローラ41を回転させることで、環状に連結された医療用長尺体2が連続して拭取セル3を通過し、拭取布31による拭き取り作業が連続して行われることになる。
【0027】
医療用長尺体の拭取試験装置1は、拭取回数、すなわち医療用長尺体2の回転回数を計数する拭取回数計数部5をさらに備えている。本実施の形態では、拭取回数計数部5は、医療用長尺体2に取り付けられたマーカ51と、医療用長尺体2に臨むように設けられ、マーカ51の通過を検知するセンサ52と、を有している。
【0028】
マーカ51は、例えば磁性体テープや永久磁石であり、センサ52は、例えばホール素子や磁気抵抗素子等を有する磁気センサである。なお、拭取回数計数部5の具体的構成はこれに限定されず、例えば、ローラ41にロータリエンコーダを設ける等して、ローラ41の回転数から、拭取回数、すなわち医療用長尺体2の回転回数を演算するようにしてもよい。
【0029】
(医療用長尺体の拭取試験方法)
本実施の形態に係る医療用長尺体の拭取試験方法では、上述の医療用長尺体の拭取試験装置1を用い、医療用長尺体2の外表面の拭き取りに対する耐久性を試験する。つまり、本実施の形態に係る医療用長尺体の拭取試験方法では、医療用長尺体2の外表面を拭き取るための拭取布31、及び、拭取布31を医療用長尺体2の外表面に押し付けた状態で保持する保持機構32を有する拭取セル3を用いて、拭取布31を医療用長尺体2の外表面に押し付けた状態で保持し、移動機構4により、拭取セル3に対して医療用長尺体2を移動させる。
【0030】
拭取回数計数部5により拭取回数を計数しつつ、所定の拭取回数(例えば1万回)となるまで試験を継続する。試験終了後、医療用長尺体2の外表面を観察することにより、医療用長尺体2の拭き取りに対する耐久性を評価することができる。
【0031】
(変形例)
本実施の形態では、移動機構4として、ローラ41により環状に連結した医療用長尺体2を回転させるものを用いたが、これに限らず、例えば図2に示すように、直線状に保持された医療用長尺体2を長手方向の一方及び他方に往復移動させるように移動機構4を用いてもよい。図2の例では、医療用長尺体2の両端部を保持する保持器42にラック42aを設け、このラック42aに図示しないモータからの駆動力を受けて回転するピニオン43を歯合させたラックアンドピニオン方式の移動機構4を用いる場合を示している。ただし、移動機構4の具体的な構成は図示のものに限定されない。
【0032】
また、例えば、医療用長尺体2が、シリコーンゴムからなるシースの外表面に、べたつきを押えるための凹凸層等のコーティング層を設けたものである場合、コーティング層が剥がれるとべたつきが生じ、拭取セル3を通過する際の摩擦抵抗が大きくなると共に、医療用長尺体2を移動させるための力も大きくなると考えられる。そこで、例えば図1(a)の医療用長尺体の拭取試験装置1において、ローラ41の回転トルクを検出するトルクセンサを設け、トルクセンサで検出された回転トルクが予め設定した閾値以上となった際の拭取回数から、コーティング層が剥がれた拭取回数を検出可能としてもよい。
【0033】
さらに、図3(a),(b)に示すように、医療用長尺体2の外表面に付着した消毒液を乾燥させる乾燥セル7をさらに備えてもよい。乾燥セル7としては、医療用長尺体2の外表面にエアーを吹き付けることで、消毒液を揮発させるエアーブロー式のものを用いることができる。乾燥セル7を設ける位置については、図3(a)のように拭取りセル3とローラ41の間に設けてもよいし、図3(b)のように、両ローラ41、41の間で、かつ拭取りセル3を設けていない側に、乾燥セル7を設けてもよい。乾燥セル7を設けることで、消毒液が揮発せずに付着したままの医療用長尺体2が再度拭取りセル3に導入されてしまうことを抑制でき、より再現性よく安定した拭取試験が可能となる。また、拭取試験に使用する医療用長尺体2が短くても、乾燥セル7により消毒液を確実に揮発させることができるため、コンパクトな医療用長尺体の拭取試験装置1を実現できる。
【0034】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る医療用長尺体の拭取試験装置1では、医療用長尺体2の外表面を拭き取るための拭取布31、及び、拭取布31を医療用長尺体2の外表面に押し付けた状態で保持する保持機構32を有する拭取セル3と、拭取セル3に対して医療用長尺体2を移動させる移動機構4と、を備えている。
【0035】
この医療用長尺体の拭取試験装置1を用いることで、外表面に曲率を有するケーブルやチューブ等の医療用長尺体2の外周をほぼ均一に、一定圧で、かつ経時においても変化なく押さえることが可能となり、再現性よく安定した拭取試験が可能となる。つまり、本実施の形態によれば、手作業で拭取試験を行う場合と比較して、医療用長尺体2の拭き取りに対する耐久性を精度よく評価することが可能になる。また、手作業で拭取試験を行う場合には現実的ではない例えば数万回以上の拭取試験であっても、容易に行うことが可能になる。
【0036】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0037】
[1]医療用途に用いられる医療用長尺体(2)の外表面の拭き取りに対する耐久性を試験するための装置であって、前記医療用長尺体(2)の外表面を拭き取るための拭取布(31)、及び、前記拭取布(31)を前記医療用長尺体(2)の外表面に押し付けた状態で保持する保持機構(32)を有する拭取セル(3)と、前記拭取セル(3)に対して前記医療用長尺体(2)を移動させる移動機構(4)と、を備えた、医療用長尺体の拭取試験装置(1)。
【0038】
[2]前記保持機構(32)は、前記医療用長尺体(2)の外表面を覆うように設けられた拭取布(31)の周囲に螺旋状に巻き付けられ、一方の端部が封止されたゴムチューブ(321)と、前記ゴムチューブ(321)の他方の端部からエアーを導入して前記ゴムチューブ(321)を膨らませるエアーポンプ(322)と、前記ゴムチューブ(321)を巻き付けた部分の前記医療用長尺体(2)、前記拭取布(31)、及び前記ゴムチューブ(321)の外周を覆うように設けられ、前記ゴムチューブ(321)を膨らませた際の前記ゴムチューブ(321)の径方向外方へ拡がりを規制することで、膨らんだ前記ゴムチューブ(321)により前記拭取布(31)を前記医療用長尺体(2)の外表面へ押し付ける筒状体(323)と、を有する、[1]に記載の医療用長尺体の拭取試験装置(1)。
【0039】
[3]前記医療用長尺体(2)は、環状に連結され、前記移動機構(4)は、前記医療用長尺体(2)を長手方向に回転させるローラ(41)を有する、[1]または[2]に記載の医療用長尺体の拭取試験装置(1)。
【0040】
[4]前記医療用長尺体(2)に取り付けられたマーカ(51)、及び、前記医療用長尺体(2)に臨むように設けられ、前記マーカ(51)の通過を検知するセンサ(52)を有する拭取回数計数部(5)を備えた、[3]に記載の医療用長尺体の拭取試験装置(1)。
【0041】
[5]前記拭取布には、消毒液が含浸されており、前記医療用長尺体の外表面に付着した前記消毒液を乾燥させる乾燥セルをさらに備えた、[1]乃至[4]の何れか1項に記載の医療用長尺体の拭取試験装置(1)。
【0042】
[6]医療用途に用いられる医療用長尺体(2)の外表面の拭き取りに対する耐久性を試験するための方法であって、前記医療用長尺体(2)の外表面を拭き取るための拭取布(31)、及び、前記拭取布(31)を前記医療用長尺体(2)の外表面に押し付けた状態で保持する保持機構(4)を有する拭取セル(3)を用いて、前記拭取布(31)を前記医療用長尺体(2)の外表面に押し付けた状態で保持し、移動機構(4)により、前記拭取セル(3)に対して前記医療用長尺体(2)を移動させる、医療用長尺体の拭取試験方法。
【0043】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0044】
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…拭取試験装置
2…医療用長尺体
3…拭取セル
31…拭取布
32…保持機構
321…ゴムチューブ
322…エアーポンプ
323…筒状体
4…移動機構
41…ローラ
5…拭取回数計数部
51…マーカ
52…センサ
図1
図2
図3