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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】画像形成装置、インク
(51)【国際特許分類】
   F26B 13/18 20060101AFI20220809BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
F26B13/18 A
B41J2/01 125
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2018113732
(22)【出願日】2018-06-14
(65)【公開番号】P2019052834
(43)【公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2017178258
(32)【優先日】2017-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 亮太
(72)【発明者】
【氏名】坂口 裕美
(72)【発明者】
【氏名】梁川 宜輝
(72)【発明者】
【氏名】遠山 郁
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聡
(72)【発明者】
【氏名】吉沼 利浩
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 健
(72)【発明者】
【氏名】澤畑 昌
(72)【発明者】
【氏名】中井 順二
(72)【発明者】
【氏名】加藤 泰久
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-205813(JP,A)
【文献】特開2017-019972(JP,A)
【文献】特開2017-039579(JP,A)
【文献】特開2017-088846(JP,A)
【文献】特開2016-186342(JP,A)
【文献】特開2017-114951(JP,A)
【文献】特表2008-503792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 13/18
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクと、
前記インクを収容するインク収容手段と、
連帳紙に前記インクを付与するインク付与手段と、
乾燥装置と、を備えている画像形成装置において、
前記乾燥装置は、前記連帳紙を乾燥する乾燥装置であって、
前記連帳紙に接触して前記連帳紙を加熱する、前記連帳紙の搬送方向に並べて配置された複数の加熱部材と、
前記連帳紙が前記複数の加熱部材に接触しながら搬送される搬送経路と、を有し、
前記搬送経路は、
前記連帳紙が、前記複数の加熱部材に接触しながら搬送される第1経路と、
前記連帳紙が、前記第1経路で接触した少なくとも1つの前記加熱部材に再度接触しながら搬送される第2経路と、
前記連帳紙が前記第2経路を搬送されるときに、前記連帳紙を前記加熱部材に接触するように案内する接触案内部材を備え、
前記接触案内部材は、前記連帳紙の前記インクが付与された領域と接触し、
前記インクが付与された領域は、前記接触案内部材と接触する際の温度が60℃以上120℃以下である乾燥装置であり、
前記インクは、前記インクから下記作成方法により作成される乾燥膜の120℃におけるマルテンス硬度は、30N/mm 以上であるインクである画像形成装置。
[作成方法]
前記インクをガラスプレート上に塗膜し、塗膜された前記インクを100℃で3時間減圧乾燥し、平均の厚さが5μmである乾燥膜を得る。
【請求項2】
前記複数の加熱部材は、湾曲状又は弧状に並べて配置され、
前記第1経路は、前記湾曲状又は弧状に並ぶ前記複数の加熱部材の外側の経路であり、
前記第2経路は、前記湾曲状又は弧状に並ぶ前記複数の加熱部材の内側の経路である請求項1に記載の画像形成装置
【請求項3】
前記接触案内部材は、隣り合う前記加熱部材間に配置されている請求項1又は2に記載の画像形成装置
【請求項4】
隣り合う前記接触案内部材間には、複数の前記加熱部材が配置されている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像形成装置
【請求項5】
前記接触案内部材は、前記連帳紙を前記加熱部材に押し付ける第1位置と、前記連帳紙を前記加熱部材に押し付けない第2位置との間で移動可能である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像形成装置
【請求項6】
前記接触案内部材は、表面に凹凸構造を有する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像形成装置
【請求項7】
前記接触案内部材は、表面に直径20μm以上200μm以下の略球状体を有する請求項1乃至6のいずれか一項に記載の画像形成装置
【請求項8】
前記インクは、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂を含有し、
前記インク中における前記ウレタン樹脂の含有量と前記アクリル樹脂の含有量との質量比(ウレタン樹脂の含有量/アクリル樹脂の含有量)が0.1以上0.5以下である請求項1乃至7いずれか一項に記載の画像形成装置
【請求項9】
前記マルテンス硬度は、35N/mm以上120N/mm以下である請求項1乃至8のいずれか一項に記載の画像形成装置
【請求項10】
前記第1経路において搬送方向の最も下流に配置された前記加熱部材の直径は、前記複数の加熱部材の直径の中で最大である請求項1乃至9のいずれか一項に記載の画像形成装置
【請求項11】
インクと、
前記インクを収容するインク収容手段と、
連帳紙の第一面に前記インクを付与する第1インク付与手段と、
前記第1インク付与手段の搬送方向下流側に配置された第1乾燥装置と、
前記第1乾燥装置の搬送方向下流側に配置され、前記連帳紙の前記第一面とは反対側の面である第二面にインクを付与する第2インク付与手段と、
前記第2インク付与手段の搬送方向下流側に配置された第2乾燥装置と、を備えている画像形成装置において
前記第1の乾燥装置及び前記第2の乾燥装置は、前記連帳紙を乾燥する乾燥装置であって、
前記連帳紙に接触して前記連帳紙を加熱する、前記連帳紙の搬送方向に並べて配置された複数の加熱部材と、
前記連帳紙が前記複数の加熱部材に接触しながら搬送される搬送経路と、を有し、
前記搬送経路は、
前記連帳紙が、前記複数の加熱部材に接触しながら搬送される第1経路と、
前記連帳紙が、前記第1経路で接触した少なくとも1つの前記加熱部材に再度接触しながら搬送される第2経路と、
前記連帳紙が前記第2経路を搬送されるときに、前記連帳紙を前記加熱部材に接触するように案内する接触案内部材を備え、
前記接触案内部材は、前記連帳紙の前記インクが付与された領域と接触し、
前記インクが付与された領域は、前記接触案内部材と接触する際の温度が60℃以上120℃以下である乾燥装置であり、
前記第1乾燥装置は、前記第1経路では、前記連帳紙の前記第二面が前記複数の加熱部材に接触し、
前記第2乾燥装置は、前記第1経路では、前記連帳紙の前記第一面が前記複数の加熱部材に接触し、
前記インクは、前記インクから下記作成方法により作成される乾燥膜の120℃におけるマルテンス硬度は、30N/mm以上であるインクである画像形成装置。
[作成方法]
前記インクをガラスプレート上に塗膜し、塗膜された前記インクを100℃で3時間減圧乾燥し、平均の厚さが5μmである乾燥膜を得る。
【請求項12】
前記複数の加熱部材は、湾曲状又は弧状に並べて配置され、
前記第1経路は、前記湾曲状又は弧状に並ぶ前記複数の加熱部材の外側の経路であり、
前記第2経路は、前記湾曲状又は弧状に並ぶ前記複数の加熱部材の内側の経路である請求項11に記載の画像形成装置
【請求項13】
前記接触案内部材は、隣り合う前記加熱部材間に配置されている請求項11又は12に記載の画像形成装置。
【請求項14】
隣り合う前記接触案内部材間には、複数の前記加熱部材が配置されている請求項11乃至13のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記接触案内部材は、前記連帳紙を前記加熱部材に押し付ける第1位置と、前記連帳紙を前記加熱部材に押し付けない第2位置との間で移動可能である請求項11乃至14のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
前記接触案内部材は、表面に凹凸構造を有する請求項11乃至15のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項17】
前記接触案内部材は、表面に直径20μm以上200μm以下の略球状体を有する請求項11乃至16のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項18】
前記インクは、ウレタン樹脂およびアクリル樹脂を含有し、
前記インク中における前記ウレタン樹脂の含有量と前記アクリル樹脂の含有量との質量比(ウレタン樹脂の含有量/アクリル樹脂の含有量)が0.1以上0.5以下である請求項11乃至17のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項19】
前記マルテンス硬度は、35N/mm 以上120N/mm 以下である請求項11乃至18のいずれか一項に記載の画像形成装置
【請求項20】
前記第1経路において搬送方向の最も下流に配置された前記加熱部材の直径は、前記複数の加熱部材の直径の中で最大である請求項11乃至19のいずれか一項に記載の画像形成装置
【請求項21】
請求項1乃至20のいずれか一項に記載の画像形成装置に含まれるインクであって、
前記インクから下記作成方法により作成される乾燥膜の120℃におけるマルテンス硬度は、30N/mm 以上であるインク。
[作成方法]
前記インクをガラスプレート上に塗膜し、塗膜された前記インクを100℃で3時間減圧乾燥し、平均の厚さが5μmである乾燥膜を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、及びインクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式で用いるインクとして、水を含む水性インクが知られている。このような水性インクを、搬送方向に連続する連帳紙などの記録媒体に対して、高速で印刷可能なインクジェット記録装置を用いて付与する場合、記録媒体に付与された水性インクで形成される画像部を短時間で乾燥させる必要がある。乾燥させる手段としては、例えば、加熱ローラなどの接触加熱手段が知られている。
【0003】
特許文献1には、液状体が付与された長尺帯状の基材を外周面に巻回し、加熱しつつ回転することにより外周面上の搬送経路に沿って基材を搬送する加熱ローラと、加熱ローラの外周面近傍に設けられ、基材を搬送する複数の搬送ローラと、を有する乾燥装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、搬送される部材に形成された液体が付与された領域を十分に乾燥させるためには多くの加熱部材を必要とする課題がある。また、搬送される部材の乾燥が十分であったとしても、液体が付与された領域と接触する部材が設けられている場合、液体が付与された領域の一部が剥がれる課題(白抜け)がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、インクと、前記インクを収容するインク収容手段と、連帳紙に前記インクを付与するインク付与手段と、乾燥装置と、を備えている画像形成装置において、前記乾燥装置は、前記連帳紙を乾燥する乾燥装置であって、前記連帳紙に接触して前記連帳紙を加熱する、前記連帳紙の搬送方向に並べて配置された複数の加熱部材と、前記連帳紙が前記複数の加熱部材に接触しながら搬送される搬送経路と、を有し、前記搬送経路は、前記連帳紙が、前記複数の加熱部材に接触しながら搬送される第1経路と、前記連帳紙が、前記第1経路で接触した少なくとも1つの前記加熱部材に再度接触しながら搬送される第2経路と、前記連帳紙が前記第2経路を搬送されるときに、前記連帳紙を前記加熱部材に接触するように案内する接触案内部材を備え、前記接触案内部材は、前記連帳紙の前記インクが付与された領域と接触し、前記インクが付与された領域は、前記接触案内部材と接触する際の温度が60℃以上120℃以下である乾燥装置であり、前記インクは、前記インクから下記作成方法により作成される乾燥膜の120℃におけるマルテンス硬度は、30N/mm以上であるインクである画像形成装置である。
[作成方法]
前記インクをガラスプレート上に塗膜し、塗膜された前記インクを100℃で3時間減圧乾燥し、平均の厚さが5μmである乾燥膜を得る。
【発明の効果】
【0006】
本発明の乾燥装置は、搬送される部材に形成された液体が付与された領域を加熱部材で効率的に乾燥させることができ、液体が付与された領域の一部が剥がれる白抜けを抑制することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態における画像形成装置の概略説明図である。
図2】第1実施形態における乾燥装置の拡大説明図である。
図3】加熱ローラへの接触状態の説明に供する説明図である。
図4】第2実施形態における乾燥装置の拡大説明図である。
図5】第3実施形態における乾燥装置の拡大説明図である。
図6】加熱ローラ及び加熱ドラムへの接触距離及び巻き付け角の説明に供する説明図である。
図7】加熱ローラのローラ径と連帳紙のコックリングの関係の一例について示す表である。
図8】第4実施形態における乾燥装置の拡大説明図である。
図9】第5実施形態における乾燥装置の要部拡大説明図である。
図10】第6実施形態における乾燥装置の要部拡大説明図である。
図11】第7実施形態における画像形成装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る乾燥装置について説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0009】
<<乾燥装置>>
本発明は、液体が付与されて搬送される部材を乾燥する乾燥装置であって、前記搬送される部材に接触して前記搬送される部材を加熱する、前記搬送される部材の搬送方向に並べて配置された複数の加熱部材と、前記搬送される部材が前記複数の加熱部材に接触しながら搬送される搬送経路と、を有し、前記搬送経路は、前記搬送される部材が、前記複数の加熱部材に接触しながら搬送される第1経路と、前記搬送される部材が、前記第1経路で接触した少なくとも1つの前記加熱部材に再度接触しながら搬送される第2経路と、を含み、前記液体から下記作成方法により作成される乾燥膜の120℃におけるマルテンス硬度は、30N/mm以上である乾燥装置である。
[作成方法]
前記液体をガラスプレート上に塗膜し、塗膜された前記液体を100℃で3時間減圧乾燥し、平均の厚さが5μmである乾燥膜を得る。
以下、本発明の乾燥装置について、乾燥装置を有する画像形成装置とともに説明する。
【0010】
まず、本発明を有する第1実施形態に係る画像形成装置について図1を参照して説明する。図1は、第1実施形態における画像形成装置の概略説明図である。
【0011】
この画像形成装置は、インクジェット記録装置であり、搬送される部材である連帳紙110に対して、液体収容容器に収容された所要の色の液体であるインクを吐出付与する液体付与手段の一例である液体吐出ヘッドを含む液体付与部101を有している。なお、液体収容容器とは、液体収容手段の一例であって、例えば、インクカートリッジ、インクボトル等が挙げられる。
【0012】
液体付与部101は、例えば、連帳紙110の搬送方向上流側から、4色分のフルライン型ヘッド111A、111B、111C、111Dが配置されている。各ヘッド111は、それぞれ、連帳紙110に対してブラックK,シアンC、マゼンタM、イエローYの液体を付与する。なお、色の種類及び数はこれに限るものではない。
【0013】
なお、液体付与部101は、吐出ヘッドを移動させるシリアル型、吐出ヘッドを移動させないライン型のいずれであってもよい。また、液体付与部101は、インクジェット記録方式であるが、他の方式であってもよい。例えば、ブレードコート方式、グラビアコート方式、バーコート方式、ロールコート方式、ディップコート方式、カーテンコート方式、スライドコート方式、ダイコート方式、スプレーコート方式などが挙げられる。
【0014】
連帳紙110は、元巻きローラ102から繰り出され、搬送部103の搬送ローラ112によって、液体付与部101に対向して配置された搬送ガイド部材113上に送り出され、搬送ガイド部材113で案内されて搬送される。
【0015】
液体付与部101によって液体が付与された連帳紙110は、本発明に係る乾燥装置104を経て、排出ローラ114によって送られて、巻取りローラ105に巻き取られる。
【0016】
次に、第1実施形態における乾燥装置について図2及び図3も参照して説明する。図2は第1実施形態における乾燥装置の拡大説明図、図3は加熱ローラに対する連帳紙の接触箇所の説明に供する説明図である。
【0017】
乾燥装置104は、連帳紙110の液体が付与された面と反対側の面に接触して連帳紙110を加熱する接触加熱手段10を備えている。また、接触加熱手段10を通過した連帳紙110を案内する案内ローラ17A、17Bを備えている。
【0018】
接触加熱手段10は、連帳紙110と接触する周面である曲面形状の接触面11aを有する複数の加熱部材の一例である加熱ローラ11A~11Eを備えている。また、接触加熱手段10は、連帳紙110を加熱ローラ11D~11Aの接触面11aに接触するように案内する接触案内部材の一例である接触案内ローラ13A~13Dを備えている。
【0019】
ここで、複数の加熱ローラ11A~11E(以下、区別しないときは「加熱ローラ11」という。他の部材も同様。)は、湾曲状に並べて配置されている。接触案内ローラ13は隣り合う加熱ローラ11間に配置されて、連帳紙110上の液体が付与された領域(以降、「液体が付与された領域」の一例である「画像部」に置き換えて説明する)と接触する。なお、「液体が付与された領域」とは、搬送される部材の液体が付与された面における領域を示し、液体が付与されていない面における領域は含まれない。
【0020】
なお、接触案内ローラ13は、表面に微細な凹凸構造を有するローラであることが好ましい。微細な凹凸構造を有するローラは、例えば、表面に略球状体を固着するローラ、表面に略球状体を固着するフィルム、テープ等で被覆されたローラなどが挙げられる。固着されている略球状体は、ローラ、フィルム、テープ等に埋め込まれ、表面から部分的に露出することで凹凸構造を形成していることが好ましい。略球状体の直径は、20μm以上200μm以下であることが好ましい。略球状体を構成する材料としては、例えば、ガラス、セラミック等が挙げられる。表面に微細な凹凸構造を有する接触案内ローラ13を用いることで、画像部と接触案内ローラ13表面に生じる接着力により画像部の一部が剥がれる白抜けと、剥がれた画像部の成分が接触案内ローラ13に転移して形成される部材汚れを抑制することができる。
【0021】
また、接触案内ローラ13と連帳紙110上の画像部とが接触する際における画像部の温度は、60℃以上120℃以下であることが好ましい。画像部の温度が60℃以上であると、搬送と同時に画像部の乾燥を行うことができるので、画像部の乾燥不足により生じる白抜け、及び部材汚れを抑制することができる。画像部の温度が120℃以下であると、画像部が熱溶融していない状態で接触案内ローラ13と接触させることができるため、白抜け、及び部材汚れを抑制することができる。
【0022】
乾燥装置104は、これらの複数の加熱ローラ11及び接触案内ローラ13によって構成される連帳紙110の搬送経路(搬送路、搬送パス)20を有している。
【0023】
この搬送経路20は、連帳紙110が複数の加熱ローラ11A~11Eに接触しながら第1の方向(Y1方向)に搬送される第1経路(以下、「第1経路Y1」という。)と、第1経路で接触した複数の加熱ローラ11D~11Aに再度接触しながら第2の方向(Y2方向)に搬送される第2経路(以下、「第2経路Y2」という。)とを含んでいる。
【0024】
なお、本実施形態では、連帳紙110が第2経路Y2を搬送されるときに2以上の加熱ローラ11(第1加熱部材)に接触する経路を構成しているが、1つの加熱ローラ11(第1加熱部材)に接触する経路であってもよい。言い換えれば、連帳紙110が第2経路Y2を搬送されるときには、複数の加熱ローラ11A~11Eのすべてに再度接触して搬送される必要はない。
【0025】
ここでは、連帳紙110は、第1経路Y1では、湾曲状に配置された複数の加熱ローラ11A~11Eの外側(張力を受ける側)を、加熱ローラ11A~11Eに接触しながら搬送される。その後、連帳紙110は、第2経路Y2では、方向が転換されて、複数の加熱ローラ11E~11Aの内側(緩みが生じる側)を接触案内ローラ13で案内されて加熱ローラ11D~11Aに接触しながら搬送される。
【0026】
このとき、図3に示すように、連帳紙110は、同時に同じ加熱ローラ11の離間した2箇所(a部及びb部)に接触しながら第1経路Y1及び第2経路Y2を搬送されることになる。
【0027】
このように、同じ加熱部材(加熱ローラ)の異なる2箇所に同時に搬送される部材を接触させて加熱する。
【0028】
これにより、少ない加熱部材で効率的に搬送される部材を乾燥することができる。
【0029】
次に、本発明の第2実施形態について図4を参照して説明する。図4は、第2実施形態における乾燥装置の拡大説明図である。
【0030】
本実施形態において、乾燥装置104以外の画像形成装置の構成は、第1実施形態と同様である。
【0031】
また、乾燥装置104は、前記第1実施形態の乾燥装置104において、接触案内ローラ13、13間に複数(ここでは2つ)の加熱ローラ11が配置されている箇所がある。
【0032】
このような構成でも、加熱ローラ11及び接触案内ローラ13の配置位置によって、第2の方向Y2に搬送するときも加熱ローラ11に接触させるように案内することができる。
【0033】
そして、本実施形態の接触案内ローラ13の配置によって、接触案内ローラ13が配置されていない加熱ローラ11、11間における、第1経路Y1を搬送されている連帳紙110の部分と第2経路Y2を搬送されている連帳紙110の部分の間にスペース120が形成されている。
【0034】
そこで、このスペース120に、例えば加熱ローラ11の温度制御用のセンサユニットや温度を制御する温度制御ユニット121を配置することができる。
【0035】
次に、本発明の第3実施形態について図5を参照して説明する。図5は、第3実施形態における乾燥装置の拡大説明図である。
【0036】
本実施形態において、乾燥装置104以外の画像形成装置の構成は、第1実施形態と同様である。
【0037】
乾燥装置104は、第1経路Y1で複数の加熱ローラ11に対して下流側となり、第2経路Y2で複数の加熱ローラ11に対して上流側となる位置に、第2加熱部材である加熱ドラム12を配置している。加熱ドラム12は、加熱ローラ11の接触面よりも曲率が小さい曲面状の接触面(周面)を有する。
【0038】
ここで、加熱ドラム12は回転駆動され、加熱ローラ11は搬送される連帳紙110に連れ回りする。
【0039】
そして、加熱ローラ11Eと、加熱ドラム12と、案内ローラ17によって、連帳紙110を加熱ドラム12の周囲の70%以上、好ましくは80%以上の領域に巻き付ける経路(搬送パス)を構成している。これらの加熱ドラム12及び案内ローラ17にて連帳紙110の搬送方向を第1経路Y1の方向から第2経路Y2の方向に転換している。
【0040】
このとき、加熱ドラム12に対する連帳紙110の接触距離は,加熱ローラ11に対する連帳紙110の接触距離よりも長くしている。「接触距離」は、連帳紙110が加熱ドラム12、加熱ローラ11の周方向に沿った方向(搬送方向)で周面と接触している距離である。なお、加熱部材が接触面として曲面を有する曲面部材であるときには、当該曲面の周方向に沿った方向(搬送方向)で曲面と接触している距離である。
【0041】
ここで、接触距離及び巻き付け角について図6を参照して説明する。図6は、加熱ローラ及び加熱ドラムへの接触距離及び巻き付け角についての説明図である。
【0042】
図6に示すように、加熱ドラム12の周面である接触面12aと連帳紙110との接触距離L2が、加熱ローラ11の周面である接触面11aと連帳紙110との接触距離L1よりも長くなるように搬送パスを構成している。
【0043】
ここでは、加熱ドラム12の接触面12aに対する連帳紙110の巻き付け角θ2を、加熱ローラ11の接触面11aに対する連帳紙110の巻き付け角θ1よりも大きく(θ2>θ1)している。
【0044】
なお、巻き付け角θ2、θ1(これを「巻き付け角θ」と総称する。)は、図6に示すように、連帳紙110が接触面12a、11aに接触を開始する点Psと接触を終了する点Peとが中心Oに対してなす角度の意味である。
【0045】
したがって、巻き付け角θが大きくなると、回転体の直径が同じであれば、接触距離も長くなり、また、巻き付け角θが同じでも、回転体の直径が大きくなるほど、接触距離は長くなる。
【0046】
本実施形態では、加熱ドラム12の直径を加熱ローラ11より大きくし、かつ、巻き付け角θ2をθ1より大きくしているので、いずれにしても、加熱ドラム12の接触面12aと連帳紙110との接触距離L2が加熱ローラ11の接触面11aと連帳紙110との接触距離L1よりも長くなる。
【0047】
なお、上記のとおり、巻き付け角θが同じでも、回転体の直径が大きくなるほど、接触距離は長くなる。したがって、加熱ドラム12と加熱ローラ11とを同じ直径として、巻き付け角θ2をθ1より大きくするだけでも、加熱ドラム12の接触面12aと連帳紙110との接触距離L2が、加熱ローラ11の接触面11aと連帳紙110との接触距離L1よりも長くなる。
【0048】
これにより、第1経路Y1を搬送されて加熱ローラ11で加熱された連帳紙110に、加熱ドラム12によって大きな熱量を与えて加熱して乾燥させることができる。
【0049】
この場合、液体が付与された直後の連帳紙110は、加熱ローラ11に接触しながら第1経路Y1を搬送されることでコックリングを低減され、この状態で加熱ドラム12に巻き付けられるので、加熱ドラム12の周面に密着し、効率的な乾燥を行うことができる。
【0050】
つまり、液体付与から時間が経過していない状態では、連帳紙110の強度が低下している状態であるので、連帳紙110の裏面側を広い範囲(長い接触距離)で回転体の周面(接触面)に密着させることが難しい。
【0051】
そこで、付与された液体の乾燥が進んでいない初期状態では、連帳紙110の加熱ローラ11への巻き付け角を小さくして接触距離を短くしている。
【0052】
ここで、加熱ローラ11の曲率を大きくすることで、連帳紙110の搬送時に発生する張力が加熱ローラ11との接触部にて押付け力と変わるために加熱ローラ11への接触状態が均一になる。この状態において、連帳紙110はコックリングやシワの発生が抑制ないし矯正され、複数の加熱ローラ11を通過するときには、連帳紙110上の液体に対して均一に乾燥に必要な熱供給を行うことができる状態になる。
【0053】
このようにコックリングが抑制されて乾燥が進んでいる連帳紙110は回転体(曲面)との接触距離を長くしても接触面に密着させることができる。
【0054】
そこで、複数の加熱ローラ11の下流側に配置した加熱ドラム12では連帳紙110の接触距離を長くすることにより、連帳紙110に対して大きな熱供給を行って短時間で効率的な乾燥を行うことできる。
なお、加熱ドラム12のような大径の加熱部材は、液体が付与されて搬送される部材との接触面積が大きくなるため、乾燥性を高めることができるが、液体が付与された領域がより加熱される。そのため、例えば、液体が付与された領域および接触案内部材などが接触するときに、画像剥がれ(後述する「白抜け」)が生じやすくなるので、搬送される部材に付与される液体は下記マルテンス硬度の範囲を満たすことがより好ましい。
【0055】
さらに、本実施形態では、加熱ドラム12の下流側で連帳紙110の裏面を加熱ローラ11に再接触させる構成となっている。
【0056】
これにより、例えば、第1経路Y1における加熱ローラ11の伝熱と加熱ドラム12の伝熱とでインクの水分を蒸発させて、その後に、第2経路Y2における加熱ローラ11の伝熱によりインクの溶剤を蒸発させてインクを連帳紙110である用紙に定着させることができる。
【0057】
次に、加熱ローラ11のローラ径と連帳紙110のコックリングの関係の一例について図7を参照して説明する。図7は、加熱ローラのローラ径と連帳紙のコックリングの関係の一例について示す表である。
【0058】
図7は加熱ローラ11の直径を変化させ、連帳紙110に生じるコックリングの高さ、コックリングのピッチを測定するとともに、目視で視認できるコックリングの有無を確認した結果を示している。
【0059】
この結果から、この例では、加熱ローラ11の直径を200mmにすることで、加熱ローラ11の直径が250mmであるときに比べてコックリング高さがほぼ半減し、加熱ローラ11の直径を100mm以下にすることで、コックリングがなくなっていることが分かる。
【0060】
したがって、加熱ローラ11の直径は200mm以下にすることが好ましく、より好ましくは100mm以下である。
【0061】
次に、本発明の第4実施形態について図8を参照して説明する。図8は、第4実施形態における乾燥装置の拡大説明図である。
【0062】
本実施形態において、乾燥装置104以外の画像形成装置の構成は、第1実施形態と同様である。
【0063】
乾燥装置104は、接触加熱手段10を構成する10個の加熱ローラ11(11A~11J)、加熱ドラム12、加熱ローラ11(11A~11J)に連帳紙110が接触するように案内する接触案内ローラ13(13A~13J)を備えている。
【0064】
また、接触加熱手段10に連帳紙110を案内する案内ローラ17A~17Dと、連帳紙110を加熱ドラム12に巻き付ける案内ローラ17Eとを備えている。さらに、接触加熱手段10から出た連帳紙110を案内する案内ローラを兼ねた加熱ローラ14A、14Bを備える。
【0065】
接触加熱手段10は、10個の加熱ローラ11(11A~11J)が加熱ドラム12の周囲に円弧状に配置されている。ここでは、加熱ドラム12の中心から各加熱ローラ11の中心までの距離を同じくして配置しているが、加熱ドラム12の中心と円弧状に配置された加熱ローラ11の円弧の中心とが一致する必要はない。
【0066】
これにより、複数の加熱ローラ11に亘って接触して搬送されるときに、連帳紙110に負荷がかからず、適正な張力で搬送することができる。
【0067】
そして、案内ローラ17Dで接触加熱手段10に案内された連帳紙110は、円弧状に配置された複数の加熱ローラ11A~11Jの外側(加熱ドラム12と反対側)に接触しながら第1経路Y1を搬送される。
【0068】
その後、連帳紙110は、加熱ドラム12の周面に至って、加熱ドラム12のほぼ全周に亘って巻き付けられて接触した後、案内ローラ17E及び接触案内ローラ13Aにて、再度、加熱ローラ11Jに案内される。そして、連帳紙110は、加熱ローラ11J~11Aの内側(加熱ドラム12側)に接触案内ローラ13A~13Jで案内されて接触しながら第2経路Y2を搬送される。
【0069】
これにより、加熱部材の数を多くしても装置の小型化を図れる。そして、加熱部材の数を多くすることで乾燥速度を高めることができる。
【0070】
次に、本発明の第5実施形態について図9を参照して説明する。図9は、第5実施形態における乾燥装置の要部拡大説明図である。
【0071】
本実施形態では、隣り合う加熱ローラ11、11の間に配置した接触案内ローラ13は、搬送される連帳紙110を加熱ローラ11に押し付ける図9(b)に示す第1位置と、連帳紙110を加熱ローラ11に押し付けない図9(a)に示す第2位置との間で、矢印方向に移動可能に配置している。これにより、接触案内ローラ13は、加熱ローラ11群の外側の搬送経路に対して位置を変えることができる。
【0072】
なお、接触案内ローラ13の移動は、例えばハンドル操作などによって手動で行うことも、或いは、駆動源を備えてアクチュエータによって行うこともできる。
【0073】
このように構成したので、連帳紙110を初期装填するときの作業性を向上するため、装填作業時には、接触案内ローラ13は、加熱ローラ11群の外側の搬送経路に対して所定距離N1だけ離した退避位置とすることができる。
【0074】
そして、連帳紙110を装填した後は、接触案内ローラ13を加熱ローラ11群の外側の搬送経路に対して所定距離N2(N2<N1)になる押圧位置まで移動させ、連帳紙110を隣り合う加熱ローラ11、11の共通外接線より内側に押圧する。これにより、連帳紙110の加熱ローラ11に対する接触領域を大きくすることができる。
【0075】
一方で、上記のように接触案内ローラ13で連帳紙110を押圧する構成にした場合、連帳紙110に形成された画像部に対して接触案内ローラ13が直接接触しながら押圧することになる。そこで、後述のマルテンス硬度を有する液体を用いて画像部を形成することにより、白抜け、及び部材汚れを抑制することができる。
【0076】
次に、本発明の第6実施形態について図10を参照して説明する。図10は、第6実施形態における乾燥装置の要部拡大説明図である。
【0077】
本実施形態では、第1の加熱ローラ11A~11Kと接触案内ローラ13A~13Hをそれぞれ並べて配置している。
【0078】
ここで、湾曲状に配置された第1の加熱ローラ11A~11Eの群及び第1加熱ローラ11G~11Kの群の間に、それぞれ加熱ローラ11E,11F、11Gを直線状に並べた経路を介在させることで、搬送経路の一部を折り曲げて、湾曲状経路内に直線経路部分を含ませている。
【0079】
つまり、搬送経路(搬送パス)の形状は、曲線形状に限らず、直線形状(ストレートパス)を一部に含む(本実施形態)ものであってもよい。
【0080】
なお、上記実施形態では、複数の第1加熱部材及び第2加熱部材が回転体である例で説明しているが、その一部又は全部が回転体でないものでもよい。
【0081】
また、上記各実施形態では、搬送経路が円弧状、弧状ないし湾曲状の経路である例で説明しているが、これに限るものではない。例えば、前記Y1方向(又はY2方向)の途中で折れ曲がっている経路、クランク状の経路などとすることもできる。
【0082】
また、上記各実施形態では、複数の第1加熱部材が連続して並んでいる構成で説明している、途中に加熱部材以外の単なるローラ(回転体)が配置されていてもよい。
【0083】
また、画像形成装置によって、搬送される部材には、インク等の液体で文字や図形等の画像を記録する以外にも、加飾・装飾などを目的として、パターン等の意味を持たない画像をインク等の液体で付与してよい。
【0084】
また、上記各実施形態においては、第2方向は第1方向と反対方向である例で説明しているが、反対方向に限定されるものではなく、第1方向に対して角度を有する方向でもよい。
【0085】
次に、本発明を有する第7実施形態に係る画像形成装置について図11を参照して説明する。図11は、第7実施形態における画像形成装置の概略説明図である。
【0086】
この画像形成装置は、元巻きローラ102と巻取りローラ105との間に、連帳紙110の一面に印刷して乾燥する第1印刷ユニット1001と、第1印刷ユニット1001で片面に印刷された連帳紙110の表裏を反転する反転ユニット1003と、連帳紙110の他面に印刷して乾燥する第2印刷ユニット1002とが配置されている。
【0087】
第1印刷ユニット1001及び第2印刷ユニット1002の液体付与部101、搬送部103、乾燥装置104の構成は、前記第1実施形態とほぼ同様(同じでもよい。)としているが、前記第2ないし第6実施形態と同じ、あるいは、ほぼ同様にすることができる。
【0088】
ここで、第1印刷ユニット1001の液体付与部101は、搬送される部材である連帳紙110の第1面に液体を付与する第1液体付与手段となる。第2印刷ユニット1002の液体付与部101は、搬送される部材である連帳紙110の第1面とは反対側の第2面に液体を付与する第2液体付与手段となる。
【0089】
また、第1印刷ユニット1001の乾燥装置104は、第1経路Y1では、連帳紙110の第1面が加熱ローラ11に接触する第1乾燥装置となる。第2印刷ユニット1002の乾燥装置104は、第1経路Y1では、連帳紙110の第2面が加熱ローラ11に接触する第2乾燥装置となる。
【0090】
ここで、第1印刷ユニット1001の乾燥装置104においては、連帳紙110の第一面にのみ画像部が形成されているため、画像部と直接接触する部材としては接触案内ローラ13が該当する。一方で、第2印刷ユニット1002の乾燥装置104においては、連帳紙110の第一面および第二面の両方に画像部が形成されているため、画像部と接触する部材としては接触案内ローラ13に加えて、加熱ローラ11も該当する。言い換えると、白抜けおよび部材汚れが生じる機会が増えるため、後述のマルテンス硬度を有する液体を用いて画像部を形成して白抜けおよび部材汚れを抑制する必要性がより増すことになる。
【0091】
なお、上記の第1~6の実施形態に係る画像形成装置において、搬送される部材は、複数の加熱部材に対して液体が付与されていない面で接触するが、これに限定されず、複数の加熱部材に対して液体が付与されている面で接触してもよい。例えば、第1経路においては複数の加熱部材に対して液体が付与されていない面で接触し、第2経路においては複数の加熱部材に対して液体が付与されている面で接触する実施形態などが挙げられる。第1経路で液体が付与されていない面から乾燥することで、未乾燥の画像部と加熱部材が接触することによる画像剥がれを抑制し、第2経路で液体が付与された面を直接加熱することでより高い乾燥性を得ることができる。
なお、上記の第1~7の実施形態に係る画像形成装置においては、搬送される部材の一例として連帳紙を用いた場合について説明したが、これに限定されず、カット紙などを用いることもできる。搬送される部材としてカット紙を用いる場合、カット紙の搬送方法としては適宜公知の方法を用いることができるが、例えば、カット紙の両面をベルトで挟持して搬送する方法等が好ましい。ベルトで挟持することで、搬送方向への張力をかけることができ、加熱ローラに記録媒体をより密着させることが可能となり、乾燥の効率化が可能となる。
【0092】
<<液体>>
本発明の乾燥装置を有する画像形成装置で用いられる液体は、液体から下記作成方法により作成される乾燥膜の120℃におけるマルテンス硬度が30N/mm以上である
[作成方法]
液体をガラスプレート上に塗膜し、塗膜された液体を100℃で3時間減圧乾燥し、平均の厚さが5μmである乾燥膜を得る。
以下、液体の一態様であるインクについて説明する。
【0093】
[マルテンス硬度]
マルテンス硬度とは、押し込み深さ試験において得られる材料の硬さを表す指標である。この試験では、材料にビッカース圧子を押し込み、その際の負荷試験力と押し込み深さを連続的に測定して「押し込み深さ-試験力」の関係を得る。そして、この曲線の最大負荷試験力の50%値と90%値までの押し込み深さが負荷試験力の平方根に比例する傾きを基に、マルテンス硬度を求める。
【0094】
本願における乾燥膜のマルテンス硬度は、液体をガラスプレート上に塗膜し、100℃で3時間減圧乾燥して得た乾燥膜を用いて測定する。なお、液体は、乾燥後の乾燥膜の厚さが平均5μmとなるように塗膜する。なお、平均とは、乾燥膜の任意の点10点での厚さの平均をいう。この乾燥膜を室温まで冷やした後、120℃に加熱した状態でフィシャー・インストルメンツ社製、微小硬度計HM-2000を用いて、ビッカース圧子を0.5[mN]の力で10秒かけて押し込み、5秒間保持し、10秒間かけて圧子を引き抜いて測定することができる。
【0095】
この方法で測定した乾燥膜のマルテンス硬度は30N/mm以上であり、35N/mm以上であることが好ましく、50N/mm以上であることがより好ましい。30N/mm以上であれば、搬送される部材上の液体が付与された領域におけるタック力が低くなり、且つ力学的強度も高くなる。そのため、接触案内部材等の液体が付与された領域と接触する部材が、液体が付与された領域と接触することに起因する白抜けを抑制することができる。また、上記の通り、接触案内部材等が、液体が付与された領域に接触する際は、液体が付与された領域が加熱された状態にある。そこで、本願では実態に合わせて乾燥膜のマルテンス硬度を、乾燥膜が120℃の状態において測定する。なお、乾燥膜のマルテンス硬度は120N/mm以下であることが好ましく、117N/mm以下であることがより好ましく、89N/mm以下であることが更に好ましい。120N/mm以下であれば、耐擦過性が向上し、部材汚れを抑制することができる。
また、本実施形態では、搬送される部材を効率的に加熱するために、搬送経路中に複数の加熱部材を有し、且つ搬送経路中の隣接する加熱部材同士の間に設けられた接触案内部材を複数有することが好ましい。このとき、接触案内部材は、搬送される部材上の液体が付与された領域と複数回接触することになるため、接触回数が1回である場合に比べて白抜けが生じやすくなる。従って、このような乾燥装置を用いる場合、白抜けを抑制するために、搬送される部材に付与される液体は上記マルテンス硬度の範囲を満たすことがより好ましい。
【0096】
次に、上記のマルテンス硬度を有するインクについて説明する。マルテンス硬度は、特に、インク中の樹脂の種類、樹脂の含有量等の影響を受ける。以下、上記のマルテンス硬度を実現可能なインクの組成物について例示する。
【0097】
<有機溶剤>
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0098】
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物も好適に使用される。炭素数8以上のポリオール化合物の具体例としては、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールなどが挙げられる。
グリコールエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類などが挙げられる。
炭素数8以上のポリオール化合物、及びグリコールエーテル化合物は、記録媒体として紙を用いた場合に、インクの浸透性を向上させることができる。
【0099】
特に、インクに樹脂を包含させる場合には、N,N-ジメチル-β-ブトキシプロピオンアミド、N,N-ジメチル-β-エトキシプロピオンアミド、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらを樹脂とともに用いることにより樹脂の造膜性が促進され、乾燥膜のマルテンス硬度を30N/mm以上とすることが容易になるが、マルテンス硬度を30N/mm以上にする手段としては、この溶剤種に限られるわけではない。インク中における樹脂の含有量と、インク中におけるN,N-ジメチル-β-ブトキシプロピオンアミド、N,N-ジメチル-β-エトキシプロピオンアミド、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルの合計含有量と、の質量比(樹脂の含有量/上記有機溶剤の含有量)が、0.86以上1.60以下であると、乾燥膜のマルテンス硬度を30N/mm以上とすることが容易になるが、マルテンス硬度を30N/mm以上にする手段としては、この質量比に限られるわけではない。
【0100】
有機溶剤の沸点としては、180℃以上260℃以下が好ましい。沸点が180℃以上であると、乾燥時の蒸発速度を適切に調節でき、レベリングが十分に行われ、耐擦過性を向上できる。また、260℃以下であると、乾燥性が低下せず、乾燥時間が長時間にならない。近年の印刷技術の高速化に伴って、インクの乾燥にかかる時間が律速になっており、乾燥時間を短縮する必要があるため、長時間の乾燥は好ましくない。
【0101】
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0102】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましい。
【0103】
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0104】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0105】
顔料を分散してインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0106】
<顔料分散体>
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0107】
<樹脂>
インク中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0108】
これらの中でも、ウレタン樹脂粒子が好ましい。ウレタン樹脂粒子は、タック力が大きく、乾燥膜を強固に形成させ、耐擦過性を向上させることができるため、白抜けの課題を抑制することができる。さらに、ガラス転移温度(Tg)が-20℃以上70℃以下のウレタン樹脂粒子は、耐擦過性をより向上させることができる。
【0109】
また、上記の樹脂粒子の中でも、アクリル樹脂粒子は、耐擦過性、及び吐出安定性に優れるため、ウレタン樹脂粒子と併用することが好ましい。
【0110】
インク中における、インク全量に対するウレタン樹脂粒子の含有量(質量%)と、インク全量に対するアクリル樹脂粒子の含有量(質量%)との質量比(ウレタン樹脂粒子/アクリル樹脂粒子)としては、0.1以上0.5以下が好ましい。質量比(ウレタン樹脂粒子/アクリル樹脂粒子)が、0.1以上0.5以下であると、インクを用いて形成された乾燥膜のマルテンス硬度を30N/mm以上とすることが容易になるが、マルテンス硬度を30N/mm以上にする手段としては、この樹脂の質量比に限られるわけではない。
【0111】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0112】
樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0113】
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0114】
<フィラー>
インクにはフィラーが含まれてもよい。インク中の他の成分に比べて硬度の高いフィラーが、液体が付与された領域に含まれることにより、乾燥膜のマルテンス硬度を30N/mm以上とすることが容易になるが、マルテンス硬度を30N/mm以上にする手段としては、フィラーに限られるわけではない。また、液体が付与された領域にフィラーが含まれることにより、接触案内部材等の液体が付与された領域と接触する部材との接触面積を減らし、白抜け、及び部材汚れを抑制することができる。
フィラーとしては、例えば、無機顔料等が挙げられ、具体的には、ホワイトカーボン(微粉末ケイ酸)、酸化鉄類(ベンガラ、黄酸化鉄、鉄黒等)鉄粉、銅粉、炭酸カルシウム、タルク、アルミニウム粉等が挙げられるが、硬度の高いホワイトカーボン(微粉末ケイ酸)、酸化鉄類(ベンガラ、黄酸化鉄、鉄黒等)鉄粉、銅粉等が好ましい。また、フィラーがインクの色味に影響を与えることを考慮すると、白色顔料が好ましいが、添加後の色味を検討さえすれば酸化鉄などの有色顔料であっても構わない。フィラーの含有量は、インク全量に対して1.0質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。また、良好な吐出性の点から体積平均粒子径(D90)は80nm以上250nm以下であることが好ましい。
【0115】
<添加剤>
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
【0116】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0117】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【化1】
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0118】
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【化2】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
【化3】
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCmF2m+1でmは1~6の整数、又はCHCH(OH)CH-CmF2m+1でmは4~6の整数、又はCpH2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0119】
インク中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0120】
<消泡剤>
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0121】
<防腐防黴剤>
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0122】
<防錆剤>
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0123】
<pH調整剤>
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0124】
インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0125】
なお、上記液体はインクであることが好ましいが、これに限定されず、例えば、前処理液、後処理液などであってもよい。
前処理液とは、搬送される部材に対し、上記インクが付与される前に付与する液体であり、インク中の色材などの成分を凝集させる機能を有することが好ましい。前処理液は、有機溶剤、水、樹脂、界面活性剤等の添加剤、及び凝集剤等を含む。有機溶剤、水、樹脂、及び界面活性剤等の添加剤については、インクで用いられるものと同様であるため、その説明を省略する。凝集剤としては、適宜公知の凝集剤を用いることができ、例えば、多価金属塩、有機酸、及びカチオンポリマー等から選択することができる。
後処理液とは、上記インクが付与された後の搬送される部材に対して付与される液体であり、インクで形成される画像部を保護する機能を有することが好ましい。後処理液は、有機溶剤、水、樹脂、フィラー、及び界面活性剤等の添加剤を含む。有機溶剤、水、樹脂、フィラー、及び界面活性剤等の添加剤については、インクで用いられるものと同様であるため、その説明を省略する。
なお、本実施形態において、上記「白抜け」は、インクで形成された塗膜が剥がれることに加え、前処理液または後処理液で形成された塗膜が剥がれることを含む。
【0126】
<<搬送される部材>>
上記搬送される部材の一例である記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、普通紙、光沢紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、汎用印刷紙、カット紙、連帳紙などが挙げられる。なお、記録媒体とは、インクや各種処理液が一時的にでも付着可能なものを意味する。
記録媒体としては、一般的な記録媒体として用いられるものに限られず、壁紙、床材、タイル等の建材、Tシャツなど衣料用等の布、テキスタイル、皮革等を適宜使用することができる。また、記録媒体を搬送する経路の構成を調整することにより、セラミックスやガラス、金属などを使用することもできる。
特に、本発明において効果が得られる記録媒体としては、支持体と、該支持体の少なくとも一方の面側に設けられた塗工層と、を有してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる記録媒体などが挙げられる。
【0127】
前記支持体と前記塗工層を有する記録媒体においては、動的走査吸液計で測定した接触時間100msにおける純水の前記記録媒体への転移量は、2mL/m以上35mL/m以下であり、2mL/m以上10mL/m以下が好ましい。
前記接触時間100msでの前記インク及び純水の転移量が少なすぎると、ビーディングが発生しやすくなることがあり、多すぎると、記録後のインクドット径が所望の径よりも小さくなりすぎることがある。
動的走査吸液計にて測定した接触時間400msにおける純水の前記記録媒体への転移量は、3mL/m以上40mL/m以下であり、3mL/m以上10mL/m以下が好ましい。
前記接触時間400msでの転移量が少ないと、乾燥性が不十分であるため、白抜け、及び部材汚れが発生しやすくなることがあり、多すぎると、乾燥後の液体が付与された領域の光沢が低くなりやすくなることがある。前記接触時間100ms及び400msにおける純水の前記記録媒体への転移量は、いずれも記録媒体の塗工層を有する側の面において測定することができる。
【0128】
ここで、前記動的走査吸収液計(dynamic scanning absorptometer;DSA,紙パ技協誌、第48巻、1994年5月、第88頁~92頁、空閑重則)は、極めて短時間における吸液量を正確に測定できる装置である。前記動的走査吸液計は、吸液の速度をキャピラリー中のメニスカスの移動から直読する、試料を円盤状とし、この上で吸液ヘッドをらせん状に走査する、予め設定したパターンに従って走査速度を自動的に変化させ、1枚の試料で必要な点の数だけ測定を行う、という方法によって測定を自動化したものである。
紙試料への液体供給ヘッドはテフロン(登録商標)管を介してキャピラリーに接続され、キャピラリー中のメニスカスの位置は光学センサで自動的に読み取られる。具体的には、動的走査吸液計(K350シリーズD型、協和精工株式会社製)を用いて、純水又はインクの転移量を測定することができる。
接触時間100ms及び接触時間400msにおける転移量としては、それぞれの接触時間の近隣の接触時間における転移量の測定値から補間により求めることができる。
【0129】
<記録物>
記録物は、搬送される部材上に、上記インクを用いて形成された画像を有してなる。搬送される部材は、インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法により記録して記録物とすることができる。
【実施例
【0130】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0131】
<顔料分散体の調製例>
(シアン顔料分散体の調整)
ピグメントブルー15:3(大日精化工業株式会社製、クロモファインブルー)20g、下記構造式(1)の化合物20mmol、及びイオン交換高純水200mLを、室温環境下、Silversonミキサー(6,000rpm)で混合し、スラリーを得た。得られたスラリーのpHが4より高い場合は、硝酸20mmolを添加した。30分後に、少量のイオン交換高純水に溶解された亜硝酸ナトリウム(20mmol)を上記混合物にゆっくりと添加した。更に、60℃で加温しながら撹拌し、1時間反応させて、ピグメントブルーに下記構造式(1)の化合物を付加した改質顔料を生成した。次いで、NaOH水溶液によりpHを10に調整し、30分後に改質顔料分散体を得た。この改質顔料分散体は、少なくとも1つのジェミナルビスホスホン酸基、又はジェミナルビスホスホン酸基のナトリウム塩を有する顔料を含む。次に、改質顔料分散体、及びイオン交換高純水を用いて透析膜を用いた限外濾過を行い、更に超音波分散を行って顔料濃度15質量%のシアン顔料分散体を得た。
【0132】
【化4】
【0133】
(マゼンタ顔料分散体の調整)
シアン顔料分散体の調製例において、ピグメントブルー15:3を、ピグメントレッド122(クラリアントジャパン株式会社製、トナーマゼンタEO02)に変更した以外は、シアン顔料分散体の調製例と同様にして顔料濃度15質量%のマゼンタ顔料分散体を得た。
【0134】
<インクの調製例>
(インク1の調整)
以下の処方で混合攪拌した後、0.2μmポリプロピレンフィルターにて濾過しインク1を調整した。なお、各成分の含有量は、固形分である旨を明記した成分は固形分量を表し、固形分である旨の明記が無い成分は全体の添加量を表す。また、インク1の全量は100質量部である。
・シアン顔料分散体 45.0質量部
・ウレタン樹脂粒子1(三井化学株式会社製、商品名:タケラックW6110、ガラス転移温度(Tg):-20℃) 2.0質量部(固形分)
・スチレンアクリル樹脂粒子(DIC社製、商品名:GRANDOL PP-1000EF) 5.0質量部(固形分)
・N,N-ジメチル-β-ブトキシプロピオンアミド 5.0質量部
・ジエチレングリコール 15.0質量部
・ゾニールFS-300 2.0質量部
・イオン交換水 残量
【0135】
[マルテンス硬度の評価]
次に、インク1をガラスプレート上に塗膜して100℃で3時間減圧乾燥し、平均の厚さが5μmとなるように乾燥膜を作成した。なお、平均とは、乾燥膜の任意の点10点での厚さの平均とした。この乾燥膜を室温まで冷やした後、120℃に加熱した状態でフィシャー・インストルメンツ社製、微小硬度計HM-2000を用いて、ビッカース圧子を0.5[mN]の力で10秒かけて押し込み、5秒間保持し、10秒間かけて圧子を引き抜いてマルテンス硬度を測定したところ66N/mmであった。
【0136】
(インク2~11の調整)
インク1の調整において、下記表1の組成及び含有量(質量%)に変更した以外は、インク1の調整と同様にして、インク2~11を調整した。なお、ウレタン樹脂粒子、及びアクリル樹脂粒子の含有量は固形分量を表し、他の成分は全体の添加量を表す。また、調整したインク2~11を用いて、インク1と同様にマルテンス硬度を測定した。結果を下記表1に示した。
【0137】
【表1】
【0138】
なお、上記表1において、成分の商品名、製造会社名、及びホワイトカーボン顔料分散体の調整方法については下記の通りである。
・ウレタン樹脂粒子1(三井化学株式会社製、商品名:タケラックW6110、ガラス転移温度(Tg):-20℃)
・ウレタン樹脂粒子2(三井化学株式会社製、商品名:タケラックW6061、ガラス転移温度(Tg):25℃)
・ウレタン樹脂粒子3(三井化学株式会社製、商品名:タケラックW6010、ガラス転移温度(Tg):90℃)
・スチレンアクリル樹脂粒子(DIC社製、商品名:GRANDOL PP-1000EF)
・アクリルシリコン樹脂粒子(東亜合成社製、商品名:サイマックUS480)
・ゾニールFS-300(Dupont社製)
・TEGO WET-270(Evonik社製)
【0139】
(ホワイトカーボン顔料分散体の調整)
シアン顔料分散体の調製例において、ピグメントブルー15:3を、ホワイトカーボン顔料(日本シリカ社製、ニプシール)に変更した以外は、シアン顔料分散体の調製例と同様にして顔料濃度15質量%のホワイトカーボン顔料分散体を得た。
【0140】
<液体が付与された領域の形成と乾燥>
(実施例1)
図8に示す乾燥装置を備えた図1に示す画像形成装置にインク1を搭載し、記録媒体の両面に対し、液体が付与された領域の一例である画像部の形成、及び画像部の乾燥を行った。画像部の形成は、1,200dpiの解像度でベタ画像を形成することにより行った。記録媒体は、ロール紙であるLumi Art Gloss 90gsm(Stora Enso社製、紙幅520.7mm)を用いた。
また、接触案内ローラが画像部と接触する際における画像部の温度、及び接触案内ローラの表面形状は以下の様にした。
・画像部の温度:98℃
・表面形状:凹凸あり
なお、画像部の温度は、接触案内ローラと接触している画像部の温度を非接触温度計(オムロン社製、ES1B)により測定した。また、接触案内ローラの表面形状の凹凸は、略球状体のガラスを固着したテープ状部材を接触案内ローラに被せて作成した。略球状体の直径は、ばらつきをもち、20~200μmの範囲内であった。
【0141】
(実施例2~12、比較例1~4)
実施例1において、下記表2のインク、画像部の温度、及び表面形状に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~12、比較例1~4の画像部の形成、及び画像部の乾燥を行った。
なお、下記表2に記載の表面形状に関し、「平面」とは、接触案内ローラに対して上記のテープ状部材を被せていない場合をいい、表面形状として凹凸を有さないものをいう。
【0142】
実施例1~12、比較例1~4における画像部の形成、及び画像部の乾燥を経て得られた画像部について、下記に示す方法、評価基準に従い、白抜け、耐擦過性を評価した。
【0143】
[白抜けの評価]
画像部の形成、及び画像部の乾燥を経て得られた画像部を光学顕微鏡(×50)及び目視にて観察し、画像剥がれの様子を下記評価基準に基づいて分類し白抜け評価した。なお、B以上であった場合を実用可能であるとした。結果を下記表2に示した。
(評価基準)
A: 画像剥がれが光学顕微鏡(×50)で確認できない
B: 画像剥がれが光学顕微鏡(×50)で確認できるが、目視では確認できない
C: 画像剥がれが目視で確認できる
【0144】
[耐擦過性の評価]
画像部の形成、及び画像部の乾燥を経て得られた画像部に対し、1.2cm四方に切った紙(Lumi Art Gloss 90gsm)を用いて画像を20回擦った。擦った紙に転写したインク付着汚れを反射型カラー分光測色濃度計(X-Rite社製)により測定し、擦った紙の地肌色を差し引いたインク付着汚れの濃度を算出した。算出したインク付着汚れの濃度を下記評価基準に基づいて分類し耐擦過性を評価した。なお、B以上であると好ましい。結果を下記表2に示した。
(評価基準)
A: インク付着汚れの濃度が0.1未満
B: インク付着汚れの濃度が0.1以上0.2未満
C: インク付着汚れの濃度が0.2以上
【0145】
【表2】
【符号の説明】
【0146】
10 接触加熱手段
11A~11J 加熱ローラ(第1加熱部材)
12 加熱ドラム(第2加熱部材)
13A~13J 接触案内ローラ
17A~17C 案内ローラ
101 液体付与部
103 搬送部
104 乾燥装置
110 連帳紙(搬送される部材)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0147】
【文献】特開2014-152964号公報
図1
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