(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】熱硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20220809BHJP
C08G 59/18 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
C08G73/10
C08G59/18
(21)【出願番号】P 2018133348
(22)【出願日】2018-07-13
【審査請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2017157247
(32)【優先日】2017-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 尚樹
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-122912(JP,A)
【文献】特開2004-294882(JP,A)
【文献】特開2015-232122(JP,A)
【文献】特開2005-105264(JP,A)
【文献】特開2012-193339(JP,A)
【文献】特開2016-103010(JP,A)
【文献】特開2016-183258(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0160045(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/10
C08G 59/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性二重結合を有するポリエステルアミド酸(A)
、エポキシ化合物(B)
、溶剤および添加剤のみからなる熱硬化性組成物であって、
前記添加剤は、界面活性剤、カップリング剤、酸化防止剤およびエポキシ硬化剤のみからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、
前記ポリエステルアミド酸(A)は、Xモルのテトラカルボン酸二無水物と、Yモルのジアミンと、Zモルの多価ヒドロキシ化合物とを、下記式(1)及び式(2)の関係が成立するような比率で含む原料からの反応生成物であり、
前記原料の少なくとも1つが重合性二重結合を有する、熱硬化性組成物。
0.2≦Z/Y≦8.0 ・・・・・・・(1)
0.2≦(Y+Z)/X≦5.0 ・・・(2)
【請求項2】
重合性二重結合を有するポリエステルアミド酸(A)
、エポキシ化合物(B)
、溶剤および添加剤のみからなる熱硬化性組成物であって、
前記添加剤は、界面活性剤、カップリング剤、酸化防止剤およびエポキシ硬化剤のみからなる群より選ばれる少なくとも1つであり、
前記ポリエステルアミド酸(A)は、Xモルのテトラカルボン酸二無水物と、Yモルのジアミンと、Zモルの多価ヒドロキシ化合物と、モノヒドロキシ化合物とを、下記式(1)及び式(2)の関係が成立するような比率で含む原料からの反応生成物であり、
前記原料の少なくとも1つが重合性二重結合を有する、熱硬化性組成物。
0.2≦Z/Y≦8.0 ・・・・・・・(1)
0.2≦(Y+Z)/X≦5.0 ・・・(2)
【請求項3】
前記ポリエステルアミド酸(A)は下記式(3)で表される構成単位及び下記式(4)で表される構成単位を含む、請求項1に記載の熱硬化性組成物。
【化1】
式(3)及び式(4)において、R
1はテトラカルボン酸二無水物から2つの-CO-O-CO-を除いた残基であり、R
2はジアミンから2つの-NH
2を除いた残基であり、R
3は多価ヒドロキシ化合物から2つの-OHを除いた残基であり、R
3の少なくとも1つは重合性二重結合を有する。
【請求項4】
前記ポリエステルアミド酸(A)は下記式(3)で表される構成単位と、下記式(4)で表される構成単位と、下記式(5)で表される構成単位とを含む、請求項2に記載の熱硬化性組成物。
【化2】
式(3)、式(4)及び式(5)において、R
1はテトラカルボン酸二無水物から2つの-CO-O-CO-を除いた残基であり、R
2はジアミンから2つの-NH
2を除いた残基であり、R
3は多価ヒドロキシ化合物から2つの-OHを除いた残基であり、R
4はモノヒドロキシ化合物から1つの-OHを除いた残基であり、R
3及びR
4の少なくとも1つは重合性二重結合を有する。
【請求項5】
前記ポリエステルアミド酸(A)は下記式(3)で表される構成単位と、下記式(4)で表される構成単位と、下記式(5)で表される構成単位とを含む、請求項2に記載の熱硬化性組成物。
【化3】
式(3)、式(4)及び式(5)において、R
1はテトラカルボン酸二無水物から2つの-CO-O-CO-を除いた残基であり、R
2はジアミンから2つの-NH
2を除いた残基であり、R
3は多価ヒドロキシ化合物から2つの-OHを除いた残基であり、R
4はモノヒドロキシ化合物から1つの-OHを除いた残基であり、R
3の少なくとも1つは重合性二重結合を有する。
【請求項6】
前記ポリエステルアミド酸(A)は下記式(3)で表される構成単位と、下記式(4)で表される構成単位と、下記式(5)で表される構成単位とを含む、請求項2に記載の熱硬化性組成物。
【化4】
式(3)、式(4)及び式(5)において、R
1はテトラカルボン酸二無水物から2つの-CO-O-CO-を除いた残基であり、R
2はジアミンから2つの-NH
2を除いた残基であり、R
3は多価ヒドロキシ化合物から2つの-OHを除いた残基であり、R
4はモノヒドロキシ化合物から1つの-OHを除いた残基であり、R
4の少なくとも1つは重合性二重結合を有する。
【請求項7】
前記多価ヒドロキシ化合物は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシジシクロヘキシル、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、2-ヒドロキシベンジルアルコール、4-ヒドロキシベンジルアルコール、2-(4-ヒドロキシフェニル)エタノール、及び重合性二重結合を有する多価ヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であって、重合性二重結合を有する多価ヒドロキシ化合物を必ず含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項8】
前記多価ヒドロキシ化合物は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシジシクロヘキシル、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、2-ヒドロキシベンジルアルコール、4-ヒドロキシベンジルアルコール、及び2-(4-ヒドロキシフェニル)エタノールからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物である、請求項6に記載の熱硬化性組成物。
【請求項9】
前記重合性二重結合を有する多価ヒドロキシ化合物は、ビニル基、アリル基、又は(メタ)アクリロキシ基を有する、請求項7に記載の熱硬化性組成物。
【請求項10】
前記重合性二重結合を有する多価ヒドロキシ化合物は、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールモノ(メタ)アクリレート、ソルビトールジ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、プロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、グリセリンジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、及びエポキシ基を1分子あたり2個以上含む化合物の(メタ)アクリル酸変性物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物である、請求項7に記載の熱硬化性組成物。
【請求項11】
前記モノヒドロキシ化合物は、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、及び重合性二重結合を有するモノヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物である、請求項2、4、5、または6に記載の熱硬化性組成物。
【請求項12】
前記モノヒドロキシ化合物は、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、及び3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタンからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物である、請求項5に記載の熱硬化性組成物。
【請求項13】
前記重合性二重結合を有するモノヒドロキシ化合物は、ビニル基、アリル基、又は(メタ)アクリロキシ基を有する、請求項11に記載の熱硬化性組成物。
【請求項14】
前記重合性二重結合を有するモノヒドロキシ化合物は、フルフリルアルコール、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸 4-ヒドロキシフェニル、p-ヒドロキシ(メタ)アクリルアニリド、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸 3-(2-ヒドロキシフェニル)、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びエポキシ基を1分子あたり1個含む化合物の(メタ)アクリル酸変性物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物である、請求項11に記載の熱硬化性組成物。
【請求項15】
エポキシ化合物(B)の含有量が、重合性二重結合を有するポリエステルアミド酸(A)100重量部に対して20~400重量部である、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物の硬化膜。
【請求項17】
請求項16に記載の硬化膜を透明保護膜として有するカラーフィルター
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品における絶縁材料、半導体装置におけるパッシベーション膜、バッファーコート膜、層間絶縁膜、平坦化膜、液晶表示素子における層間絶縁膜、カラーフィルター用保護膜等の形成に用いることができる熱硬化性組成物、それによる透明膜、及びその膜を有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子等の素子の製造工程では、有機溶剤、酸、アルカリ溶液等の種々の薬品処理がなされたり、スパッタリングにより配線電極を成膜する際に、表面が局部的に高温に加熱されたりすることがある。そのため、各種の素子の表面の劣化、損傷、変質を防止する目的で表面保護膜が設けられる場合がある。これらの保護膜には、上記のような製造工程中の各種処理に耐えることができる諸特性が要求される。具体的には、耐熱性、耐溶剤性・耐酸性・耐アルカリ性等の耐薬品性、耐水性、ガラス等の下地基板への密着性、透明性、耐傷性、塗布性、平坦性、耐光性等が要求される。表示素子に求められる信頼性の要求特性が向上するに伴い、表示素子部材に求められる耐熱性が向上している中、耐熱性の良好なポリエステルアミド酸及びエポキシ化合物を含む熱硬化性組成物が提唱されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
近年の表示素子の生産においては、生産ライン及び基板の大型化に伴い、製造工程における基板面内のムラが生じやすくなっている。例えば、大型液晶表示素子の製造における、配向膜のラビングの際に、ラビングロールのカラーフィルター基板に対する接触圧の面内ムラが生じやすくなっている。接触圧の高い箇所においては、保護膜に傷を生じることがあり、保護膜に傷が生じると表示品位が低下するため、熱硬化性組成物に対して、耐傷性向上が課題となっていた。
【0004】
又、近年の表示素子の広色域化に伴い、従来と比較してより高濃度の顔料を含む画素を有するカラーフィルターが用いられることがある。高濃度の顔料を含む画素を有するカラーフィルターでは、従来と比較して、カラーフィルターの上層である保護膜等の成膜時に顔料成分が溶出しやすい。特に赤色顔料は濃度が高く、上層成膜時に溶出しやすい。顔料成分が上層へ溶出すると表示品位が低下するため、上層を形成する材料の、顔料成分の溶出に対するバリア性向上が課題となっていた。特許文献1では耐熱性に優れた熱硬化性組成物を与えるが、耐傷性やバリア性は十分に満足できるものではなく、更なる改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、耐傷性及びバリア性に優れる硬化膜を与える熱硬化性組成物、及び該熱硬化性組成物によって形成される硬化膜を提供することであり、更には該硬化膜を有する電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、重合性二重結合を有するポリエステルアミド酸、エポキシ化合物を含む組成物を硬化して得られる硬化膜により、上記目的を達することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は以下の構成を含む。
【0008】
[1] 重合性二重結合を有するポリエステルアミド酸(A)とエポキシ化合物(B)を含む熱硬化性組成物であって、
前記ポリエステルアミド酸(A)は、Xモルのテトラカルボン酸二無水物と、Yモルのジアミンと、Zモルの多価ヒドロキシ化合物とを、下記式(1)及び式(2)の関係が成立するような比率で含む原料からの反応生成物であり、
前記原料の少なくとも1つが重合性二重結合を有する、熱硬化性組成物。
0.2≦Z/Y≦8.0 ・・・・・・・(1)
0.2≦(Y+Z)/X≦5.0 ・・・(2)
【0009】
[2] 重合性二重結合を有するポリエステルアミド酸(A)とエポキシ化合物(B)を含む熱硬化性組成物であって、
前記ポリエステルアミド酸(A)は、Xモルのテトラカルボン酸二無水物と、Yモルのジアミンと、Zモルの多価ヒドロキシ化合物と、モノヒドロキシ化合物とを、下記式(1)及び式(2)の関係が成立するような比率で含む原料からの反応生成物であり、
前記原料の少なくとも1つが重合性二重結合を有する、熱硬化性組成物。
0.2≦Z/Y≦8.0 ・・・・・・・(1)
0.2≦(Y+Z)/X≦5.0 ・・・(2)
【0010】
[3] 前記ポリエステルアミド酸(A)は下記式(3)で表される構成単位及び下記式(4)で表される構成単位を含む、[1]項に記載の熱硬化性組成物。
【化1】
式(3)及び式(4)において、R
1はテトラカルボン酸二無水物から2つの-CO-O-CO-を除いた残基であり、R
2はジアミンから2つの-NH
2を除いた残基であり、R
3は多価ヒドロキシ化合物から2つの-OHを除いた残基であり、R
3の少なくとも1つは重合性二重結合を有する。
【0011】
[4] 前記ポリエステルアミド酸(A)は下記式(3)で表される構成単位と、下記式(4)で表される構成単位と、下記式(5)で表される構成単位とを含む、[2]項に記載の熱硬化性組成物。
【化2】
式(3)、式(4)及び式(5)において、R
1はテトラカルボン酸二無水物から2つの-CO-O-CO-を除いた残基であり、R
2はジアミンから2つの-NH
2を除いた残基であり、R
3は多価ヒドロキシ化合物から2つの-OHを除いた残基であり、R
4はモノヒドロキシ化合物から1つの-OHを除いた残基であり、R
3及びR
4の少なくとも1つは重合性二重結合を有する。
【0012】
[5] 前記ポリエステルアミド酸(A)は下記式(3)で表される構成単位と、下記式(4)で表される構成単位と、下記式(5)で表される構成単位とを含む、[2]項に記載の熱硬化性組成物。
【化3】
式(3)、式(4)及び式(5)において、R
1はテトラカルボン酸二無水物から2つの-CO-O-CO-を除いた残基であり、R
2はジアミンから2つの-NH
2を除いた残基であり、R
3は多価ヒドロキシ化合物から2つの-OHを除いた残基であり、R
4はモノヒドロキシ化合物から1つの-OHを除いた残基であり、R
3の少なくとも1つは重合性二重結合を有する。
【0013】
[6] 前記ポリエステルアミド酸(A)は下記式(3)で表される構成単位と、下記式(4)で表される構成単位と、下記式(5)で表される構成単位とを含む、[2]項に記載の熱硬化性組成物。
【化4】
式(3)、式(4)及び式(5)において、R
1はテトラカルボン酸二無水物から2つの-CO-O-CO-を除いた残基であり、R
2はジアミンから2つの-NH
2を除いた残基であり、R
3は多価ヒドロキシ化合物から2つの-OHを除いた残基であり、R
4はモノヒドロキシ化合物から1つの-OHを除いた残基であり、R
4の少なくとも1つは重合性二重結合を有する。
【0014】
[7] 前記多価ヒドロキシ化合物は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシジシクロヘキシル、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、2-ヒドロキシベンジルアルコール、4-ヒドロキシベンジルアルコール、2-(4-ヒドロキシフェニル)エタノール、及び重合性二重結合を有する多価ヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であって、重合性二重結合を有する多価ヒドロキシ化合物を必ず含む、[1]~[5]のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物。
【0015】
[8] 前記多価ヒドロキシ化合物は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシジシクロヘキシル、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、2-ヒドロキシベンジルアルコール、4-ヒドロキシベンジルアルコール、及び2-(4-ヒドロキシフェニル)エタノールからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物である、[6]項に記載の熱硬化性組成物。
【0016】
[9] 前記重合性二重結合を有する多価ヒドロキシ化合物は、ビニル基、アリル基、又は(メタ)アクリロキシ基を有する、[7]項に記載の熱硬化性組成物。
【0017】
[10] 前記重合性二重結合を有する多価ヒドロキシ化合物は、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールモノ(メタ)アクリレート、ソルビトールジ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、プロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、グリセリンジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、及びエポキシ基を1分子あたり2個以上含む化合物の(メタ)アクリル酸変性物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物である、[7]項に記載の熱硬化性組成物。
【0018】
[11] 前記モノヒドロキシ化合物は、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、及び重合性二重結合を有するモノヒドロキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物である、[2]項、[4]項、[5]項、または[6]項に記載の熱硬化性組成物。
【0019】
[12] 前記モノヒドロキシ化合物は、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、及び3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタンからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物である、[5]項に記載の熱硬化性組成物。
【0020】
[13] 前記重合性二重結合を有するモノヒドロキシ化合物は、ビニル基、アリル基、又は(メタ)アクリロキシ基を有する、[11]項に記載の熱硬化性組成物。
【0021】
[14] 前記重合性二重結合を有するモノヒドロキシ化合物は、フルフリルアルコール、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸 4-ヒドロキシフェニル、p-ヒドロキシ(メタ)アクリルアニリド、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸 3-(2-ヒドロキシフェニル)、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、及びエポキシ基を1分子あたり1個含む化合物の(メタ)アクリル酸変性物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物である、[11]項に記載の熱硬化性組成物。
【0022】
[15] エポキシ化合物(B)の含有量が、重合性二重結合を有するポリエステルアミド酸(A)100重量部に対して20~400重量部である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物。
【0023】
[16] [1]~[15]のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物の硬化膜。
【0024】
[17] [16]項に記載の硬化膜を透明保護膜として有するカラーフィルター
【発明の効果】
【0025】
本発明の好ましい態様に係る熱硬化性組成物は、耐傷性及びバリア性において特に優れた材料であり、カラー液晶表示素子のカラーフィルター保護膜として用いた場合、表示品位を向上させることができる。特に、染色法、顔料分散法、電着法及び印刷法により製造されたカラーフィルターの保護膜として有用である。又、各種光学材料の保護膜及び透明絶縁膜としても使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書においては、本発明に係る硬化膜の鉛筆硬度が高いほど、硬化膜及びその硬化膜を形成するための熱硬化性組成物が「耐傷性に優れる」と表現する。
【0027】
本明細書中、「アクリレート」及び「メタクリレート」の一方又は両方を示すために、「(メタ)アクリレート」のように表記することがある。同様に、「アクリロキシ」及び「メタクリロキシ」の一方又は両方を示すために、「(メタ)アクリロキシ」のように表記することがある。
【0028】
1.本発明の熱硬化性組成物
本発明の熱硬化性組成物は、重合性二重結合を有するポリエステルアミド酸、エポキシ化合物を含む組成物である。前記重合性二重結合を有するポリエステルアミド酸は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン及び多価ヒドロキシ化合物を含む原料からの反応生成物であり、前記原料の少なくとも1つが重合性二重結合を有する。本発明の熱硬化性組成物はポリエステルアミド酸100重量部に対し、エポキシ化合物を20~400重量部含有する。
【0029】
なお、本発明に係る熱硬化性組成物は、本発明の効果が得られる範囲において、上記以外の他の成分をさらに含有してもよい
【0030】
1-1.重合性二重結合を有するポリエステルアミド酸(A)
ポリエステルアミド酸(A)は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン、多価ヒドロキシ化合物、及びモノヒドロキシ化合物を必須の原料成分として反応させることにより得られる。さらに、ポリエステルアミド酸(A)は、Xモルのテトラカルボン酸二無水物、Yモルのジアミン及びZモルの多価ヒドロキシ化合物を、前記式(1)及び式(2)の関係が成立するような比率で反応させることにより得られる。
【0031】
また、ポリエステルアミド酸(A)は、式(3)で表される構成単位、式(4)で表される構成単位、及び式(5)で表される構成単位を有する。式(3)、式(4)及び式(5)において、R1はテトラカルボン酸二無水物から2つの-CO-O-CO-を除いた残基であり、R2はジアミンから2つの-NH2を除いた残基であり、R3は多価ヒドロキシ化合物から2つの-OHを除いた残基であり、R4はモノヒドロキシ化合物から1つの-OHを除いた残基である。R3及びR4の少なくとも1つは重合性二重結合を有する。
【0032】
ポリエステルアミド酸(A)の合成には、少なくとも溶剤が必要である。この溶剤をそのまま残してハンドリング性等を考慮した液状やゲル状の熱硬化性組成物としてもよく、また、この溶剤を除去して運搬性などを考慮した固形状の組成物としてもよい。
【0033】
また、ポリエステルアミド酸(A)の合成には、原料として、必要に応じてスチレン-無水マレイン酸共重合体を含んでいてもよく、また、本発明の目的を損なわない範囲で上記以外の他の化合物を含んでいてもよい。他の原料の例として、シリコン含有モノアミンが挙げられる。
【0034】
1-1-1.テトラカルボン酸二無水物
本発明では、ポリエステルアミド酸(A)を得るための材料として、テトラカルボン酸二無水物を用いる。テトラカルボン酸二無水物の具体例は、好ましくは、実施例で使用した3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(以下、ODPAと略記することがある。)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物(以下、BT-100と略記することがある。)を挙げることができる。
【0035】
なお、前記テトラカルボン酸二無水物として、前記したものの他に、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2-[ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)(商品名;TMEG-100、新日本理化株式会社)、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物及びエタンテトラカルボン酸二無水物を挙げることができ、前記したテトラカルボン酸二無水物のうち少なくとも1種を用いることができる。
【0036】
これらの中で、硬化膜に良好な透明性を与える酸無水物は、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2-[ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、及びTMEG-100がより好ましく、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物及び1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物が特に好ましい。
【0037】
1-1-2.ジアミン
本発明では、ポリエステルアミド酸(A)を得るための材料として、ジアミンを用いる。ジアミンの具体例は、好ましくは、実施例で使用した3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(以下、DDSと略記することがある。)を挙げることができる。
【0038】
なお、前記ジアミンの具体例として、前記したものの他に、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル][3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル][3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、及び2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンを挙げることができ、前記ジアミンのうち少なくとも1種を用いることができる。
【0039】
これらの中で、硬化膜に良好な透明性を与えるジアミンは、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン及びビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホンがより好ましく、3,3’-ジアミノジフェニルスルホンが特に好ましい。
【0040】
1-1-3.多価ヒドロキシ化合物
本発明は、ポリエステルアミド酸(A)を得るための材料として、重合性二重結合を有さない多価ヒドロキシ化合物、又は/及び重合性二重結合を有する多価ヒドロキシ化合物を用いる。多価ヒドロキシ化合物の具体例は、好ましくは、実施例で使用した1,4-ブタンジオール、エポキシエステル70PA(商品名;共栄社化学株式会社)、エポキシエステル80MFA(商品名;共栄社化学株式会社)、エポキシエステル3002A(N)(商品名;共栄社化学株式会社)を挙げることができる。
【0041】
なお、重合性二重結合を有さない多価ヒドロキシ化合物として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、重量平均分子量1,000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、重量平均分子量1,000以下のポリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,2,5-ペンタントリオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2-ヘプタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,2,7-ヘプタントリオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、3,6-オクタンジオール、1,2,8-オクタントリオール、1,2-ノナンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2,9-ノナントリオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、1,2,10-デカントリオール、1,2-ドデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)、ビスフェノールS(ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン)、ビスフェノールF(ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン)、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシジシクロヘキシル、2-ヒドロキシベンジルアルコール、4-ヒドロキシベンジルアルコール、2-(4-ヒドロキシフェニル)エタノール、ジエタノールアミン、及びトリエタノールアミンを挙げることができる。
【0042】
これらの中で、反応溶剤への溶解性が良好な化合物は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシジシクロヘキシル、2-ヒドロキシベンジルアルコール、4-ヒドロキシベンジルアルコール、及び2-(4-ヒドロキシフェニル)エタノールがより好ましい。また、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-ヒドロキシベンジルアルコール、4-ヒドロキシベンジルアルコール、及び2-(4-ヒドロキシフェニル)エタノールが特に好ましい。
【0043】
一方、重合性二重結合を有する多価ヒドロキシ化合物の具体例として、好ましくは、グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ジペンタエリスリトールモノアリルエーテル、ジペンタエリスリトールジアリルエーテル、ジペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ジペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ソルビトールモノアリルエーテル、ソルビトールジアリルエーテル、ソルビトールトリアリルエーテル、ソルビトールテトラアリルエーテル、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールモノ(メタ)アクリレート、ソルビトールジ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、プロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、グリセリンジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、ビスフェノールSジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、プロピレンオキシド変性ビスフェノールSジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、ビスフェノールFジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、プロピレンオキシド変性ビスフェノールFジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、ビキシレノールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、ビフェノールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、フルオレンジフェノールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、トリシクロデカンジメタノールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、及びエポキシ基を1分子あたり2個以上含む他の化合物の(メタ)アクリル酸変性物を挙げることができ、これらのうち少なくとも1種を用いることができる。
【0044】
これらの中で、反応溶剤への溶解性が良好な化合物は、エチレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、プロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、グリセリンジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、ビスフェノールSジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、プロピレンオキシド変性ビスフェノールSジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、ビスフェノールFジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、及びプロピレンオキシド変性ビスフェノールFジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物がより好ましい。また、エチレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、プロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、グリセリンジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、及びプロピレンオキシド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物が特に好ましい。
【0045】
エチレングリコールジグリシジルエーテルのメタクリル酸変性物、プロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸変性物、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸変性物、グリセリンジグリシジルエーテルのアクリル酸変性物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのメタクリル酸変性物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸変性物、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテルのメタクリル酸変性物、及びプロピレンオキシド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸変性物として、下記市販品を用いることができる。
【0046】
エチレングリコールジグリシジルエーテルのメタクリル酸変性物の具体例は、エポキシエステル40EM(商品名;共栄社化学株式会社)である。プロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸変性物の具体例は、エポキシエステル70PA(商品名;共栄社化学株式会社)である。トリプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸変性物の具体例は、エポキシエステル200PA(商品名;共栄社化学株式会社)である。グリセリンジグリシジルエーテルのアクリル酸変性物の具体例は、エポキシエステル80MFA(商品名;共栄社化学株式会社)である。ビスフェノールAジグリシジルエーテルのメタクリル酸変性物の具体例は、エポキシエステル3000MK(商品名;共栄社化学株式会社)である。ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸変性物の具体例は、エポキシエステル3000A(商品名;共栄社化学株式会社)である。プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテルのメタクリル酸変性物の具体例は、エポキシエステル3002M(N)(商品名;共栄社化学株式会社)である。プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸変性物の具体例は、エポキシエステル3002A(N)(商品名;共栄社化学株式会社)である。
【0047】
1-1-4.モノヒドロキシ化合物
本発明では、ポリエステルアミド酸(A)を得るための材料として、重合性二重結合を有さないモノヒドロキシ化合物、及び/又は重合性二重結合を有するモノヒドロキシ化合物を用いてもよい。
【0048】
モノヒドロキシ化合物の具体例として、好ましくは、実施例で使用したベンジルアルコール、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、メタクリル酸 4-ヒドロキシフェニル、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(以下、CHDMMAと略記することがある。)(商品名;日本化成株式会社)を挙げることができる。
【0049】
モノヒドロキシ化合物を用いると、熱硬化性組成物の保存安定性が向上する。
【0050】
重合性二重結合を有さないモノヒドロキシ化合物の具体例は、好ましくは、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、テルピネオール、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、及びジメチルベンジルカルビノールを挙げることができる。
【0051】
これらの中で、ベンジルアルコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタンは、より好ましい。これらを使用してできるポリエステルアミド酸(A)と、エポキシ基含有ポリマー、エポキシ化合物(B)及びエポキシ硬化剤を混合した場合の相溶性や、熱硬化性組成物のカラーフィルター上への塗布性を考慮すると、重合性二重結合を有さないモノヒドロキシ化合物には、ベンジルアルコールの使用が特に好ましい。
【0052】
重合性二重結合を有するモノヒドロキシ化合物の具体例は、好ましくは、フルフリルアルコール、アリルアルコール、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸 4-ヒドロキシフェニル、p-ヒドロキシ(メタ)アクリルアニリド、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸 3-(2-ヒドロキシフェニル)、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、t-ブチルフェニルグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、及びエポキシ基を1分子あたり1個含む他の化合物の(メタ)アクリル酸変性物を挙げることができ、これらのうち少なくとも1種を用いることができる。
【0053】
これらの中で、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸=4-ヒドロキシフェニル、p-ヒドロキシ(メタ)アクリルアニリド、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸=3-(2-ヒドロキシフェニル)は、より好ましい。これらを使用してできるポリエステルアミド酸(A)と、エポキシ基含有ポリマー、エポキシ化合物(B)及びエポキシ硬化剤を混合した場合の相溶性や、熱硬化性組成物のカラーフィルター上への塗布性を考慮すると、重合性二重結合を有するモノヒドロキシ化合物には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸=4-ヒドロキシフェニル、p-ヒドロキシ(メタ)アクリルアニリド、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートの使用が特に好ましい。
【0054】
メタクリル酸=4-ヒドロキシフェニル、p-ヒドロキシメタアクリルアニリド、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートとして、下記市販品を用いることができる。メタクリル酸=4-ヒドロキシフェニルの具体例は、HQMA(商品名;大阪有機化学工業株式会社)である。p-ヒドロキシメタアクリルアニリドの具体例は、HMAd(商品名;大阪有機化学工業株式会社)である。1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートの具体例は、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(CHDMMA)(商品名;日本化成株式会社)である。
【0055】
モノヒドロキシ化合物は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン、及び多価ヒドロキシ化合物の総量100重量部に対し、0~300重量部含有して反応させることが好ましい。より好ましくは5~200重量部である。
【0056】
1-1-5.スチレン-無水マレイン酸共重合体
本発明に用いられるポリエステルアミド酸は、上記の原料に酸無水物基を3個以上有する化合物を用いて合成してもよい。これにより硬化膜の透明性が向上するので、好ましい。酸無水物基を3個以上有する化合物の例として、スチレン-無水マレイン酸共重合体を挙げることができる。スチレン-無水マレイン酸共重合体を原料に用いてポリエステルアミド酸を合成する場合、前記のテトラカルボン酸二無水物のモル数及びスチレン-無水マレイン酸共重合体のモル数の合計を式(2)における「X」として換算する。スチレン-無水マレイン酸共重合体を構成する各成分の比率は、スチレン/無水マレイン酸のモル比が0.5~4であり、好ましくは1~3である。さらに、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
【0057】
スチレン-無水マレイン酸共重合体の具体例として、SMA3000P、SMA2000P、SMA1000P(いずれも商品名;川原油化株式会社)を挙げることができる。これらのなかで、硬化膜の耐熱性及び耐アルカリ性が良好であるSMA1000Pが特に好ましい。
【0058】
1-1-6.シリコン含有モノアミン
ポリエステルアミド酸の合成には、原料として、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて上記以外の他の原料を含んでいてもよく、他の原料の例として、シリコン含有モノアミンが挙げられる。
【0059】
本発明で用いられるシリコン含有モノアミンの具体例は、好ましくは、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、4-アミノブチルメチルジエトキシシラン、p-アミノフェニルトリメトキシシラン、p-アミノフェニルトリエトキシシラン、p-アミノフェニルメチルジメトキシシラン、p-アミノフェニルメチルジエトキシシラン、m-アミノフェニルトリメトキシシラン、及びm-アミノフェニルメチルジエトキシシランを挙げることができる。これらのうち少なくとも1種を用いることができる。
【0060】
これらの中で、硬化膜の耐酸性が良好である3-アミノプロピルトリエトキシシラン及びp-アミノフェニルトリメトキシシランがより好ましく、3-アミノプロピルトリエトキシシランが耐酸性、相溶性の観点から特に好ましい。
【0061】
シリコン含有モノアミンは、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン、及び多価ヒドロキシ化合物の総量100重量部に対し、0~300重量部含有することが好ましく、より好ましくは5~200重量部である。
【0062】
1-1-7.ポリエステルアミド酸(A)の合成反応に用いる溶剤
重合性二重結合を有するポリエステルアミド酸(A)を得るための合成反応に用いる溶剤の具体例として、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、シクロヘキサノンを挙げることができる。これらのなかでもプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピオン酸メチル、又はジエチレングリコールメチルエチルエーテルが好ましい。
【0063】
1-1-8.ポリエステルアミド酸(A)の合成方法
本発明で用いられる重合性二重結合を有するポリエステルアミド酸(A)の合成方法は、Xモルのテトラカルボン酸二無水物、Yモルのジアミン、Zモルの多価ヒドロキシ化合物、及びモノヒドロキシ化合物を上記溶剤中で反応させる。このとき、X、Y及びZはそれらの間に下記式(1)及び式(2)の関係が成立するような割合に定めることが好ましい。この範囲であれば、ポリエステルアミド酸の溶剤への溶解性が高く、組成物の塗布性が向上する。
0.2≦Z/Y≦8.0 ・・・・・・・(1)
0.2≦(Y+Z)/X≦5.0 ・・・(2)
【0064】
式(1)において、好ましくは0.7≦Z/Y≦7.0であり、より好ましくは1.0≦Z/Y≦5.0である。また、式(2)において、好ましくは0.5≦(Y+Z)/X≦4.0であり、より好ましくは0.6≦(Y+Z)/X≦2.0である。
【0065】
ポリエステルアミド酸(A)の合成において、モノヒドロキシ化合物を用いず、上記式(2)の範囲内でY+Zに対してXを過剰に用いた条件下では、末端に酸無水物基(-CO-O-CO-)を有する分子が、末端にアミノ基や水酸基を有する分子より過剰に生成すると考えられる。一方、そのようなモノマーの構成で反応させる場合に、モノヒドロキシ化合物を添加すると、分子末端の酸無水物基と反応し、末端をエステル化することができる。本発明で用いるポリエステルアミド酸(A)は、モノヒドロキシ化合物を添加して反応することにより得られるため、エポキシ化合物(B)との相溶性を改善するとともに、熱硬化性組成物の塗布性を改善する。
【0066】
また、上述したモノマーの構成で反応させる場合には、分子末端の酸無水物基と反応させて末端にシリル基を導入するために、シリコン含有モノアミンを添加することができる。シリコン含有モノアミンを添加して反応することにより得られたポリエステルアミド酸を含有する熱硬化性組成物を用いると、硬化膜の耐酸性が改善する。
【0067】
反応溶剤は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン、及び多価ヒドロキシ化合物の総量100重量部に対し、100重量部以上使用すると、反応がスムーズに進行するので好ましい。反応は40℃~200℃で、0.2~20時間反応させるのがよい。
【0068】
原料の反応系への添加順序は、特に限定されない。すなわち、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン及び多価ヒドロキシ化合物を同時に反応溶剤に加える手法、ジアミン及び多価ヒドロキシ化合物を反応溶剤に溶解させた後、テトラカルボン酸二無水物を添加する手法、テトラカルボン酸二無水物及び多価ヒドロキシ化合物をあらかじめ反応させた後、その反応生成物にジアミンを添加する手法、或いはテトラカルボン酸二無水物とジアミンをあらかじめ反応させた後、その反応生成物に多価ヒドロキシ化合物を添加する手法など、いずれの手法も用いることができる。モノヒドロキシ化合物は、反応のどの時点で添加してもよい。
【0069】
前記のシリコン含有モノアミンを反応させる場合、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミン及び多価ヒドロキシ化合物の反応後、反応液を40℃以下まで冷却した後、シリコン含有モノアミンを添加し、10~40℃で0.1~6時間反応させるとよい。また、モノヒドロキシ化合物は反応のどの時点で添加してもよい。
【0070】
このようにして合成されたポリエステルアミド酸(A)は、式(3)で表される構成単位、式(4)で表される構成単位、及び式(5)で表される構成単位を含み、その末端は、原料であるテトラカルボン酸二無水物、ジアミン、多価ヒドロキシ化合物、若しくはモノヒドロキシ化合物に由来する酸無水物基、アミノ基、ヒドロキシ基、若しくは1価の有機基、又はこれらの化合物以外の添加物によって構成される。このような構成を含むことで、硬化性が良好となる。
【0071】
得られたポリエステルアミド酸の重量平均分子量は、好ましくは、1,000~1,000,000であり、3,000~500,000がより好ましい。これらの範囲にあれば、耐傷性及び平坦性が良好である。
【0072】
本明細書中の重量平均分子量は、GPC法(カラム温度:35℃、流速:1ml/min)により求めたポリスチレン換算での値である。標準のポリスチレンには、分子量が645~132,900のポリスチレン(例えば、アジレント・テクノロジー株式会社のポリスチレンキャリブレーションキットPL2010-0102)、カラムにはPLgel MIXED-D(アジレント・テクノロジー株式会社)を用い、移動相としてTHFを使用して測定することができる。本明細書中の市販品の重量平均分子量はカタログ掲載値である。
【0073】
1-2.エポキシ化合物(B)
本発明に用いられるエポキシ化合物(B)は、1分子当たり2つ以上のエポキシ基を有する化合物である。エポキシ化合物(B)は、1種でも2種以上でもよい。
【0074】
エポキシ化合物(B)の例は、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、脂肪族ポリグリシジルエーテル化合物、環式脂肪族エポキシ化合物、エポキシ基を有するモノマーの重合体、エポキシ基を有するモノマーと他のモノマーとの共重合体、及びシロキサン結合部位を有するエポキシ化合物である。
【0075】
ビスフェノールA型エポキシ化合物の市販品の具体例は、jER 828、1004、1009(いずれも商品名;三菱ケミカル株式会社)であり;ビスフェノールF型エポキシ化合物の市販品の具体例は、jER 806、4005P(いずれも商品名;三菱ケミカル株式会社)であり;グリシジルエーテル型エポキシ化合物の市販品の具体例は、TECHMORE VG3101L(商品名;株式会社プリンテック)、EHPE-3150(商品名;株式会社ダイセル)、EPPN-501H、502H(いずれも商品名;日本化薬株式会社)、及びjER 1032H60(商品名;三菱ケミカル株式会社)であり;グリシジルエステル型エポキシ化合物の市販品の具体例は、デナコール EX-721(商品名;ナガセケムテックス株式会社)、及び1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル(商品名;東京化成工業株式会社)であり;ビフェニル型エポキシ化合物の市販品の具体例は、jER YX4000、YX4000H、YL6121H(いずれも商品名;三菱ケミカル株式会社)、及びNC-3000、NC-3000-L、NC-3000-H、NC-3100(いずれも商品名;日本化薬株式会社)であり;フェノールノボラック型エポキシ化合物の市販品の具体例は、EPPN-201(商品名;日本化薬株式会社)、及びjER 152、154(いずれも商品名;三菱ケミカル株式会社)等であり;クレゾールノボラック型エポキシ化合物の市販品の具体例は、EOCN-102S、103S、104S、1020(いずれも商品名;日本化薬株式会社)等であり;ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物の市販品の具体例は、jER 157S65、157S70(いずれも商品名;三菱ケミカル株式会社)であり;環式脂肪族エポキシ化合物の市販品の具体例は、セロキサイド2021P、3000(いずれも商品名;株式会社ダイセル)であり;シロキサン結合部位を有するエポキシ化合物の市販品の具体例は、1,3-ビス[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]テトラメチルジシロキサン(商品名;ジェレストインコーポレイテッド)、TSL9906(商品名;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社)、COATOSIL MP-200(商品名;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社)、コンポセラン SQ506(商品名;荒川化学株式会社)、ES-1023(商品名;信越化学工業株式会社)である。
【0076】
尚、TECHMORE VG3101L(商品名;株式会社プリンテック)は2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、及び1,3-ビス[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]-2-プロパノールの混合物であり;EHPE-3150(商品名;株式会社ダイセル)は2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物であり;セロキサイド2021P(商品名;株式会社ダイセル)は3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートであり;セロキサイド3000(商品名;株式会社ダイセル)は1-メチル-4-(2-メチルオキシラニル)-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンであり;COATOSIL MP-200(商品名;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社)は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランを原料成分とする重合体である。
【0077】
エポキシ化合物(B)は上記の化合物を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0078】
1-2-2.ポリエステルアミド酸(A)に対するエポキシ化合物(B)の割合
本発明の熱硬化性組成物におけるポリエステルアミド酸(A)100重量部に対するエポキシ化合物(B)の総量の割合は、20~400重量部である。エポキシ化合物(B)の総量の割合がこの範囲であると、平坦性、耐熱性、耐薬品性、密着性のバランスが良好である。エポキシ化合物(B)の総量は50~300重量部の範囲であることが好ましい。
【0079】
1-3.その他の成分
本発明の熱硬化性組成物には、塗布均一性、接着性、透明性、平坦性、及び耐薬品性を向上させるために各種の添加剤を添加することができる。添加剤には、エポキシ硬化剤、溶剤、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、フッ素系又はシリコン系のレベリング剤・界面活性剤、シランカップリング剤等の密着性向上剤、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系、イオウ系化合物等の酸化防止剤、分子量調整剤が主に挙げられる。
【0080】
1-3-1.界面活性剤
本発明の熱硬化性組成物には、塗布均一性を向上させるために、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤の具体例は、ポリフローNo.45、ポリフローKL-245、ポリフローNo.75、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95(いずれも商品名;共栄社化学株式会社)、ディスパーベイク(Disperbyk)161、ディスパーベイク162、ディスパーベイク163、ディスパーベイク164、ディスパーベイク166、ディスパーベイク170、ディスパーベイク180、ディスパーベイク181、ディスパーベイク182、BYK-300、BYK-306、BYK-310、BYK-320、BYK-330、BYK-342、BYK-346、BYK-361N、BYK-UV3500、BYK-UV3570(いずれも商品名;ビックケミー・ジャパン株式会社)、KP-341、KP-358、KP-368、KF-96-50CS、KF-50-100CS(いずれも商品名;信越化学工業株式会社)、サーフロン(Surflon)-SC-101、サーフロン-KH-40、サーフロン-S611(いずれも商品名;AGCセイミケミカル株式会社)、フタージェント222F、フタージェント208G、フタージェント251、フタージェント710FL、フタージェント710FM、フタージェント710FS、フタージェント601AD、フタージェント602A、フタージェント650A、FTX-218(いずれも商品名;株式会社ネオス)、EFTOP EF-351、EFTOP EF-352、EFTOP EF-601、EFTOP EF-801、EFTOP EF-802(いずれも商品名;三菱マテリアル株式会社)、メガファックF-171、メガファックF-177、メガファックF-410、メガファックF-430、メガファックF-444、メガファックF-472SF、メガファックF-475、メガファックF-477、メガファックF-552、メガファックF-553、メガファックF-554、メガファックF-555、メガファックF-556、メガファックF-558、メガファックF-559、メガファックR-30、メガファックR-94、メガファックRS-75、メガファックRS-72-K、メガファックRS-76-NS、メガファックDS-21(いずれも商品名;DIC株式会社)、TEGO Twin 4000、TEGO Twin 4100、TEGO Flow 370、TEGO Glide 420、TEGO Glide 440、TEGO Glide 450、TEGO Rad 2200N、TEGO Rad 2250N(いずれも商品名;エボニックジャパン株式会社)、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、及びアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩が挙げられる。これらから選ばれる少なくとも1つを用いることが好ましい。
【0081】
これらの界面活性剤の中でも、BYK-306、BYK-342、BYK-346、KP-341、KP-358、KP-368、サーフロン-S611、フタージェント710FL、フタージェント710FM、フタージェント710FS、フタージェント601AD、フタージェント650A、メガファックF-477、メガファックF-556、メガファックF-559、メガファックRS-72-K、メガファックDS-21、TEGO Twin 4000、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルスルホン酸塩、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、及びフルオロアルキルアミノスルホン酸塩の中から選ばれる少なくとも1種であると、熱硬化性組成物の塗布均一性が高くなるので好ましい。
【0082】
本発明の熱硬化性組成物における界面活性剤の含有量は、熱硬化性組成物全量に対して0.01~10重量%であることが好ましい。
【0083】
1-3-2.カップリング剤
本発明の熱硬化性組成物は、形成される硬化膜と基板との密着性をさらに向上させる観点から、カップリング剤をさらに含有してもよい。
【0084】
このようなカップリング剤として、例えば、シラン系、アルミニウム系又はチタネート系のカップリング剤を用いることができる。具体的には、3-グリシジルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(例えば、商品名;サイラエースS510、JNC株式会社)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(例えば、商品名;サイラエースS530、JNC株式会社)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(例えば、商品名;サイラエースS810、JNC株式会社)、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ株式会社)等のシラン系カップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤、及びテトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤を挙げることができる。
【0085】
これらの中でも、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが、密着性を向上させる効果が大きいため好ましい。
【0086】
カップリング剤の含有量は、熱硬化性組成物全量に対して、0.01重量%以上、かつ10重量%以下であることが、形成される硬化膜と基板との密着性が向上するので好ましい。
【0087】
1-3-3.酸化防止剤
本発明の熱硬化性組成物は、透明性の向上、硬化膜が高温に晒された場合の黄変を防止する観点から、酸化防止剤をさらに含有してもよい。
【0088】
本発明の熱硬化性組成物には、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系、イオウ系化合物などの酸化防止剤を添加してもよい。この中でもヒンダードフェノール系が耐候性の観点から好ましい。具体例としては、Irganox1010、Irganox1010FF、Irganox1035、Irganox1035FF、Irganox1076、Irganox1076FD、Irganox1076DWJ、Irganox1098、Irganox1135、Irganox1330、Irganox1726、Irganox1425 WL、Irganox1520L、Irganox245、Irganox245FF、Irganox245DWJ、Irganox259、Irganox3114、Irganox565、Irganox565DD、Irganox295(いずれも商品名;BASFジャパン株式会社)、ADK STAB AO-20、ADK STAB AO-30、ADK STAB AO-50、ADK STAB AO-60、ADK STAB AO-70、ADK STAB AO-80(いずれも商品名;株式会社ADEKA)が挙げられる。この中でもIrganox1010、ADK STAB AO-60がより好ましい。
【0089】
酸化防止剤は、熱硬化性組成物全量に対して、0.1~10重量部添加して用いられる。
【0090】
1-3-4.分子量調整剤
本発明の熱硬化性組成物は、重合により分子量が高くなることを抑制し、優れた保存安定性を発現するために、分子量調整剤をさらに含有してもよい。分子量調整剤としては、メルカプタン類、キサントゲン類、キノン類、ヒドロキノン類及び2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。
【0091】
分子量調整剤の具体例としては、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、ベンゾキノン、1,4-ナフトキノン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、t-ブチルヒドロキノン、メトキノン、p-ベンゾキノン、メチル-p-ベンゾキノン、t-ブチル-p-ベンゾキノン、アントラキノン、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、ジメチルキサントゲンスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。
【0092】
分子量調整剤は単独で用いてもよく、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。分子量調整剤の中でも、ナフトキノン系分子量調整剤であると、優れた保存安定性を発現するという点から好ましい。
【0093】
分子量調整剤の中でも、フェノール性水酸基を有する2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノンであると、保存安定性の観点からより好ましい。
【0094】
1-3-5.エポキシ硬化剤
本発明の熱硬化性組成物は、平坦性、耐薬品性を向上させるために、エポキシ硬化剤をさらに含有してもよい。エポキシ硬化剤としては、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、触媒型硬化剤、及びスルホニウム塩、ベンゾチアゾニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等の感熱性酸発生剤などがあるが、硬化膜の着色を避けること及び硬化膜の耐熱性の観点から、酸無水物系硬化剤又はイミダゾール系硬化剤が好ましい。
【0095】
前記酸無水物系硬化剤の具体例は、無水マレイン酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物等の脂肪族ジカルボン酸無水物;無水フタル酸、トリメリット酸無水物等の芳香族多価カルボン酸無水物、並びにスチレン-無水マレイン酸共重合体である。これらの中でも耐熱性と溶剤に対する溶解性のバランスの良好な、トリメリット酸無水物及びヘキサヒドロトリメリット酸無水物が好ましい。
【0096】
前記イミダゾール系硬化剤の具体例は、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイトである。これらの中でも硬化性と溶剤に対する溶解性のバランスの良好な、2-ウンデシルイミダゾールが好ましい。
【0097】
エポキシ硬化剤を使用する場合、エポキシ化合物(B)100重量部に対するエポキシ硬化剤の割合は、0.1~60重量部である。エポキシ硬化剤が酸無水物系硬化剤の場合の添加量については、より詳細には、エポキシ基に対して、エポキシ硬化剤中のカルボン酸無水物基又はカルボキシル基が0.1~1.5倍当量になるよう添加するのが好ましい。このとき、カルボン酸無水物基は2価で計算する。カルボン酸無水物基又はカルボキシル基が0.15~0.8倍当量になるよう添加すると耐薬品性が一層向上するので、より好ましい。
【0098】
1-3-6.紫外線吸収剤
本発明の熱硬化性組成物は、形成した透明膜の劣化防止能をさらに向上させる観点から紫外線吸収剤を含んでもよい。
【0099】
紫外線吸収剤の具体例は、TINUVIN P、TINUVIN 120、TINUVIN 144、TINUVIN 213、TINUVIN 234、TINUVIN 326、TINUVIN 571、TINUVIN 765(いずれも商品名;BASFジャパン株式会社)である。
【0100】
紫外線吸収剤は熱硬化性組成物全量に対して、0.01~10重量部添加して用いられる。
【0101】
1-3-7.凝集防止剤
本発明の熱硬化性組成物は、重合性二重結合を有するポリエステルアミド酸(A)やエポキシ化合物(B)を溶剤となじませ、凝集を防止させる観点から凝集防止剤を含んでもよい。
【0102】
凝集防止剤の具体例は、ディスパーベイク(Disperbyk)-145、ディスパーベイク-161、ディスパーベイク-162、ディスパーベイク-163、ディスパーベイク-164、ディスパーベイク-182、ディスパーベイク-184、ディスパーベイク-185、ディスパーベイク-2163、ディスパーベイク-2164、BYK-220S、ディスパーベイク-191、ディスパーベイク-199、ディスパーベイク-2015(いずれも商品名;ビックケミー・ジャパン株式会社)、FTX-218、フタージェント710FM、フタージェント710FS(いずれも商品名;株式会社ネオス)、フローレンG-600、フローレンG-700(いずれも商品名;共栄社化学株式会社)である。
【0103】
凝集防止剤は熱硬化性組成物全量に対して、0.01~10重量部添加して用いられる。
【0104】
1-3-8.熱架橋剤
本発明の熱硬化性組成物は、耐熱性、耐薬品性、膜面内均一性、可撓性、柔軟性、弾性をさらに向上させる観点から熱架橋剤を含んでもよい。
【0105】
熱架橋剤の具体例は、ニカラックMW-30HM、ニカラックMW-100LM、ニカラックMW-270、ニカラックMW-280、ニカラックMW-290、ニカラックMW-390、ニカラックMW-750LM、(いずれも商品名;株式会社三和ケミカル)である。
【0106】
熱架橋剤は熱硬化性組成物全量に対して、0.1~10重量部添加して用いられる。
【0107】
1-3-9.その他の添加剤
本発明の熱硬化性組成物は、下記式(6)で表されるラジカル重合性化合物(P1)、アルコキシシリルを有するラジカル重合性化合物(P2)、及びエポキシ、カルボキシル、ヒドロキシフェニルの少なくとも1つを有するラジカル重合性化合物(P3)をラジカル共重合してなるポリマー(以下、「ラジカル共重合ポリマー」と称することがある。)を更に含有してもよい。
【化5】
式(6)において、R
5は水素またはメチルであり、R
6~R
9は炭素数1~5のアルキルであり、R
10は炭素数1~10のアルキルであり、mは1~10の整数であり、nは1~150の整数である。
【0108】
1-3-9-1.式(6)で表されるラジカル重合性化合物(P1)
式(6)で表されるラジカル重合性化合物(P1)は、界面活性剤として作用するため、(P1)を原料に用いることで、ラジカル共重合ポリマーが界面活性剤として作用することになり、別途界面活性剤を添加しなくても、平坦性、下地基板への密着性、塗布性が向上する。ラジカル重合性化合物(P1)を加えることで、ラジカル共重合ポリマーが膜表面に顕在化しやすくなる。
【0109】
本発明において、式(6)で表されるラジカル重合性化合物(P1)のうち、R8が水素またはメチル、R9~R12がメチル、R13が炭素1~10のアルキル、mが1~5の整数、nが1~150の整数である化合物が好ましい。R8がメチル、R9~R12がメチル、R13がブチル、mが3、nが1~150の整数である化合物がより好ましく、また、nが30~70の整数のものがさらに好ましく、nが50~70の整数のものが特に好ましい。式(6)で表されるラジカル重合性化合物(P1)の重量平均分子量は、好ましくは500~8,000である。
【0110】
式(6)で表されるラジカル重合性化合物(P1)は公知の方法により製造することができる。また、市販のものを用いてもよい。例えば、FM-0711、FM-0721、FM-0725(いずれも商品名;JNC株式会社)等が挙げられる。
【0111】
1-3-9-2.アルコキシシリルを有するラジカル重合性化合物(P2)
本発明では、前記ラジカル共重合ポリマーを得るための原料として、アルコキシシリルを有するラジカル重合性化合物(P2)を用いる。好ましいラジカル重合性化合物(P2)は、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシランからなる群から選ばれる1種以上である。これらのなかでも、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランは平坦性が良好であり好ましい。(P2)を用いることで、透明性、耐薬品性等が向上する。また、シランカップリング効果により、基材との密着性が向上する。
【0112】
1-3-9-3.エポキシ、カルボキシル、ヒドロキシフェニルの少なくとも1つを有するラジカル重合性化合物(P3)
本発明では、前記ラジカル共重合ポリマーを得るための原料として、エポキシ、カルボキシル、ヒドロキシフェニルの少なくとも1つを有するラジカル重合性化合物(P3)を用いる。好ましいラジカル重合性化合物(P3)は、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸、4-ヒドロキシフェニルビニルケトンからなる群から選ばれる1種以上である。(P3)は、ポリマーの架橋剤として機能し、耐熱性、耐薬品性等の向上に寄与する。
【0113】
1-3-9-4.ラジカル共重合ポリマーの製造方法
前記ラジカル共重合ポリマーは、式(6)で表されるラジカル重合性化合物(P1)、アルコキシシリルを有するラジカル重合性化合物(P2)、及びエポキシ、カルボキシル、ヒドロキシフェニルの少なくとも1つを有するラジカル重合性化合物(P3)をラジカル共重合することによって得られる。ラジカル共重合ポリマーの製造方法は特に制限されないが、ラジカル共重合ポリマーは上記ラジカル重合性化合物類をラジカル開始剤の存在下に加熱して製造することが可能である。ラジカル開始剤としては、有機過酸化物、アゾ化合物などが使用できる。ラジカル共重合の反応温度は特に限定されないが、通常50℃~150℃の範囲である。反応時間も特に限定されないが、通常1~48時間の範囲である。また、当該反応は、加圧、減圧又は大気圧のいずれの圧力下でも行うことができる。
【0114】
上記のラジカル共重合反応に使用する溶剤は、生成する重合体が溶解する溶剤が好ましい。当該溶剤の具体例は、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロピオン酸ブチル、乳酸エチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3-オキシプロピオン酸メチル、3-ヒドロキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸プロピル、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、及びジエチレングリコールメチルエチルエーテルである。溶剤は、これらの1種であってもよいし、これらの2種以上の混合物であってもよい。
【0115】
本発明で用いられる前記ラジカル共重合ポリマーは、重合に用いた溶剤をそのまま残してハンドリング性等を考慮したラジカル共重合ポリマー溶液としてもよいし、この溶剤を除去して運搬性などを考慮した固形状のラジカル共重合ポリマーとしてもよい。
【0116】
ラジカル共重合ポリマーは、ポリスチレンを標準としたGPC分析で求めた重量平均分子量が1,000~50,000の範囲であると、成膜性が良好であり好ましい。さらに、重量平均分子量が2,500~20,000の範囲であると、硬化膜の平坦性が良好でありより好ましい。さらに重量平均分子量が2,500~15,000の範囲であると、硬化膜の平坦性、耐薬品性が良好であり特に好ましい。
【0117】
その他の添加剤は熱硬化性組成物全量に対して、0.1~20重量部添加して用いられる。
【0118】
1-4.溶剤
本発明の熱硬化性組成物には溶剤を用いてもよい。本発明の熱硬化性組成物に任意に添加される溶剤は、ポリエステルアミド酸(A)、エポキシ化合物(B)等を溶解できる溶剤が好ましい。当該溶剤の具体例は、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロピオン酸ブチル、乳酸エチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、酢酸3-メトキシブチル、3-オキシプロピオン酸メチル、3-ヒドロキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸プロピル、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、及びジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールである。溶剤は、これらの1種でもよく、これらの2種以上の混合物でもよい。
【0119】
1-5.熱硬化性組成物の保存
本発明の熱硬化性組成物は、-30℃~25℃の範囲で保存すると、組成物の経時安定性が良好になる。保存温度が-20℃~10℃であれば、析出物もなく一層好ましい。
【0120】
2.熱硬化性組成物の硬化膜
本発明の熱硬化性組成物は、重合性二重結合を有するポリエステルアミド酸(A)、エポキシ化合物(B)を混合し、目的とする特性によっては、更にエポキシ硬化剤、溶剤、界面活性剤、密着性向上剤、酸化防止剤、及びその他の添加剤を必要により選択して添加し、それらを均一に混合溶解することにより得ることができる。
【0121】
上記のようにして調製された、熱硬化性組成物(溶剤がない固形状態の場合には溶剤に溶解させた後)を、基体表面に塗布し、例えば加熱等により溶剤を除去すると、塗膜を形成することができる。基体表面への熱硬化性組成物の塗布は、スピンコート法、ロールコート法、ディッピング法、及びスリットコート法等従来から公知の方法により塗膜を形成することができる。次いでこの塗膜はホットプレート、又はオーブン等で仮焼成される。仮焼成条件は各成分の種類及び配合割合によって異なるが、通常70~150℃で、オーブンなら5~15分間、ホットプレートなら1~5分間である。その後、塗膜を硬化させるために本焼成される。本焼成条件は、各成分の種類及び配合割合によって異なるが、通常180~250℃、好ましくは200~250℃で、オーブンなら30~90分間、ホットプレートなら5~30分間であり、加熱処理することによって硬化膜を得ることができる。
【0122】
このようにして得られた硬化膜は、加熱時においてさらに、1)ポリエステルアミド酸(A)のポリアミド酸部分が脱水環化しイミド結合を形成し、2)ポリエステルアミド酸のカルボン酸がエポキシ基含有ポリマーと反応して高分子量化しているため、非常に強靭であり、透明性、耐熱性、耐薬品性、平坦性、密着性、耐光性、及び耐スパッタ性に優れている。したがって、本発明の硬化膜はカラーフィルター用の保護膜として用いると効果的であり、カラーフィルターを用いて液晶表示素子や固体撮像素子を製造することができる。本発明の硬化膜は、カラーフィルター用の保護膜以外にも、TFTと透明電極間に形成される透明絶縁膜や透明電極と配向膜間に形成される透明絶縁膜として用いると効果的である。さらに、本発明の硬化膜は、LED発光体の保護膜として用いても効果的である。
【実施例】
【0123】
次に本発明を合成例、実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0124】
表1~4中の略称が表す成分はそれぞれ以下の通りである。
PGMEA:溶剤であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
MMP:溶剤であるメチル3-メトキシプロピオネート
ODPA:3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物
BT-100:1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物
SMA1000P:スチレン-無水マレイン酸共重合体(商品名;川原油化株式会社)
エポキシエステル70PA:プロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸変性物(商品名;共栄社化学株式会社)
DDS:3,3’-ジアミノジフェニルスルホン
M-402:重合性二重結合を有する化合物であるアロニックスM-402(商品名;東亞合成株式会社)
VG3101L:エポキシ化合物であるTECHMORE VG3101L(商品名;株式会社プリンテック)
TMA:エポキシ硬化剤であるトリメリット酸無水物、
C11Z:エポキシ硬化剤である2-ウンデシルイミダゾール
2P4MZ:エポキシ硬化剤である2-フェニル-4-メチルイミダゾール
S510:密着性向上剤であるサイラエースS510(商品名;JNC株式会社)
MP-200:エポキシ化合物であるCOATOSIL MP-200(商品名;モメンティブパフォーマンスマテリアル株式会社)
AO-60:酸化防止剤であるADEKASTAB AO-60(商品名;株式会社ADEKA)、
DS-21:界面活性剤であるメガファックDS-21(商品名;DIC株式会社)
【0125】
[合成例1]ポリエステルアミド酸(A1)溶液の合成
攪拌機付き四つ口フラスコに、脱水精製したPGMEA、BT-100、SMA1000P、ベンジルアルコール、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、1,4-ブタンジオールの順に下記の重量で仕込み、乾燥窒素気流下125℃で2時間攪拌した(合成1段階目)。
PGMEA 42.81g
BT-100 3.04g
SMA1000P 14.45g
ベンジルアルコール 3.31g
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 1.33g
1,4-ブタンジオール 0.92g
【0126】
その後、反応液を25℃まで冷却し、DDS、PGMEAを下記の重量で投入し、20~30℃で2時間攪拌した後、125℃で1時間攪拌した(合成2段階目)。
DDS 0.95g
PGMEA 7.02g
〔Z/Y=2.7、(Y+Z)/X=0.9〕
【0127】
溶液を室温まで冷却し、淡黄色透明なポリエステルアミド酸(A1)の30重量%溶液を得た。溶液の一部をサンプリングし、GPC分析(ポリスチレン標準)により重量平均分子量を測定した。その結果、得られたポリエステルアミド酸(A1)の重量平均分子量は22,100であった。
【0128】
[合成例2~6]ポリエステルアミド酸(A2)~(A6)溶液の合成
合成例1の方法に準じて、表1に記載の温度、時間、及び割合(単位:g)で各成分を反応させ、ポリエステルアミド酸溶液を得た。
【0129】
【0130】
[比較合成例1及び2]ポリエステルアミド酸溶液(a1)及び(a2)の合成
合成例1の方法に準じて、表2に記載の温度、時間、及び割合(単位:g)で各成分を反応させ、ポリエステルアミド酸溶液を得た。
【0131】
【0132】
[実施例1]
合成例1で得られたポリエステルアミド酸の30重量%溶液(A1)、VG3101L、TMA、C11Z、S510、AO-60、DS-21、PGMEA及びPGMEを表3に記載の割合(単位:g)で混合溶解し、メンブランフィルター(0.2μm)で濾過して熱硬化性組成物を得た。
【0133】
[実施例2~8及び比較例1~3]
実施例1の方法に準じて、表3、及び表4に記載の割合(単位:g)で各成分を混合溶解し、熱硬化性組成物を得た。
【0134】
【0135】
【0136】
実施例1~8及び比較例1~3で得た熱硬化性組成物を用いて、以下に記す方法で硬化膜を作製し、それぞれ耐傷性、バリア性、透明性、平坦性を評価した。実施例1~8の硬化膜の評価結果を表5に、比較例1~3の硬化膜の評価結果を表6に示した。
【0137】
[耐傷性の評価方法]
熱硬化性組成物をガラス基板上に300rpmで10秒間スピンコートし、90℃のホットプレート上で2分間プリベークした。続いてオーブン中230℃で30分間ポストベークし、膜厚1.5μmである硬化膜付きガラス基板を得た。得られた硬化膜付きガラス基板に対し、JIS K-5400-1990の8.4.1鉛筆引っかき試験を行うことで、硬化膜の鉛筆硬度を測定し、結果を表5及び6に示した。鉛筆硬度が3H以上の場合を耐傷性○、2H以下の場合を耐傷性×と評価した。
【0138】
[バリア性の評価方法]
ガラス基板上にカラーレジストを300rpmで10秒間スピンコートし、90℃のホットプレート上で2分間プリベークした。プロキシミティー露光機TME-150PRC(商品名;株式会社トプコン)を使用し、全線で70mJ/cm2を照射した。オーブン中200℃で20分間ポストベークし、カラーレジスト付きガラス基板を得た。続いてUVアッシング装置(セン特殊光源(株)社製PHOTO SURFACE PROCESSOR(PSPと略す) PL2003N-12、低圧水銀灯)を使用し、カラーレジスト付きガラス基板のUV照射洗浄を実施した。ここでのUV照射量は1000mJ/cm2。熱硬化性組成物をカラーレジスト付きガラス基板上に400rpmで10秒間スピンコートし、90℃のホットプレート上で2分間プリベークした。続いてオーブン中230℃で30分間ポストベークし、膜厚1.0μmの硬化膜とカラーレジストが積層されたガラス基板を得た。得られた積層基板を80℃のホットプレートで加温し、0.2mLのNMPを滴下した。滴下後すぐにカバーガラスを掛け、その状態で80℃のホットプレートにて40分間加熱した。積層基板を取り出し、NMPを回収した。また使用した積層基板を10mLのNMPで洗浄し、洗浄液も回収した。それぞれ回収したNMPをまとめ、紫外可視近赤外分光光度計(商品名;V-670、日本分光株式会社)により透過率の測定を行った。400nm~800nmでベースラインを引き、その範囲で極小の透過率が90%以上の場合をバリア性○、90%未満の場合をバリア性×と評価した。
【0139】
[透明性の評価方法]
熱硬化性組成物をガラス基板上に300rpmで10秒間スピンコートし、90℃のホットプレート上で2分間プリベークした。続いてオーブン中230℃で30分間ポストベークし、膜厚1.5μmである硬化膜付きガラス基板を得た。得られた硬化膜付きガラス基板において、紫外可視近赤外分光光度計(商品名;V-670、日本分光株式会社)により硬化膜のみの光の波長400nmでの透過率を測定した。透過率が95%以上の場合を透明性○、透過率が95%未満の場合を透明性×と評価した。
【0140】
[平坦性の評価方法]
R、G、Bを含む画素を有する硬化膜無しカラーフィルター基板上に、熱硬化性組成物を300rpmで10秒間スピンコートし、90℃のホットプレート上で2分間プリベークした。続いてオーブン中230℃で30分間ポストベークし、保護膜の平均膜厚1.5μmである硬化膜付きカラーフィルター基板を得た。その後、得られた硬化膜付きカラーフィルター基板に対して、微細形状測定装置を用いて表面段差を測定し、結果を表5及び6に示した。最大段差が0.2μm以下の場合を平坦性○、0.21μm以上の場合を平坦性×と評価した。尚、硬化膜無しカラーフィルター基板は、最大段差が1μmのものを用いた。
【0141】
【0142】
【0143】
表5に示した結果から明らかなように、実施例1~8の熱硬化性組成物から作製された硬化膜は、耐傷性、バリア性、透明性及び平坦性が優れていることが分かる。一方、重合性二重結合を有する化合物を含まないポリエステルアミド酸を使用した、比較例1の熱硬化性組成物から作製された硬化膜は耐傷性が不良であることが分かる。また、重合性二重結合を有する化合物を後から添加した、比較例2及び比較例3の熱硬化性組成物から作製された硬化膜は、耐傷性及びバリア性が不足していることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明の熱硬化性組成物より得られた硬化膜は、平坦性が高く、耐傷性が高い点から、カラーフィルター、LED発光素子及び受光素子等の各種光学材料等の保護膜、並びに、TFTと透明電極間及び透明電極と配向膜間に形成される絶縁膜として利用できる。