(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】化粧板印刷紙の製造方法、化粧板の製造方法、化粧板印刷紙の製造装置、印刷媒体の製造方法、積層構造体の製造方法、および積層構造体の製造装置
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20220809BHJP
B32B 27/04 20060101ALI20220809BHJP
D21H 27/18 20060101ALI20220809BHJP
B41M 5/50 20060101ALI20220809BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B41M5/00 100
B32B27/04 A
D21H27/18
B41M5/00 132
B41M5/00 120
B41M5/50 120
B41M5/00 110
B41J2/01 123
B41J2/01 125
B41J2/01 501
(21)【出願番号】P 2018150974
(22)【出願日】2018-08-10
【審査請求日】2021-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2017173417
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】森屋 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】森田 竜也
(72)【発明者】
【氏名】上月 しず香
【審査官】立澤 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-179072(JP,A)
【文献】特開2017-088658(JP,A)
【文献】特開昭52-152463(JP,A)
【文献】特開平04-272299(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02574476(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02865531(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02894044(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00-5/52
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂および前記樹脂の前駆体の少なくともいずれか一方を含有する樹脂含有液を化粧板原紙に付与する工程と、
前記樹脂含有液を前記化粧板原紙に浸透させた後、浸透させた前記樹脂含有液を乾燥させる工程を経ていない前記化粧板原紙に
、色材を含有するインクを付与して印刷層を形成する工程と、
前記印刷
層が形成された前記化粧板原紙に含まれる液体を固化する工程と、
を有する化粧板印刷紙の製造方法。
【請求項2】
前記固化する工程は、前記樹脂含有液に含まれる前記樹脂および前記前駆体の少なくともいずれか一方が架橋する工程を有する請求項1に記載の化粧板印刷紙の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂は、アミノ樹脂である請求項1又は2に記載の化粧板印刷紙の製造方法。
【請求項4】
前記印刷
層を形成する工程は、インクジェット方式により
前記インクを吐出する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の化粧板印刷紙の製造方法。
【請求項5】
前記インクは、前記樹脂含有液に含まれる前記樹脂および前記前駆体の少なくともいずれか一方と反応して共有結合を形成する官能基を有する成分を含有し、
前記固化する工程は、前記成分と、前記樹脂含有液に含まれる前記樹脂および前記前駆体の少なくともいずれか一方と、が反応して共有結合を形成する工程を有する請求項
1から4のいずれかに記載の化粧板印刷紙の製造方法。
【請求項6】
前記成分は、アルコール系溶剤を含有し、
前記アルコール系溶剤は
、インク全量に対して60質量%以上含有される請求項5に記載の化粧板印刷紙の製造方法。
【請求項7】
前記アルコール系溶剤は、沸点が250℃以上である請求項6に記載の化粧板印刷紙の製造方法。
【請求項8】
少なくとも請求項1乃至7のいずれか一項に記載の化粧板印刷紙の製造方法により製造された化粧板印刷紙、および基材を積層した積層物を加熱および加圧する工程を有する化粧板の製造方法。
【請求項9】
樹脂および前記樹脂の前駆体の少なくともいずれか一方を含有する樹脂含有液を化粧板原紙に付与する手段と、
前記樹脂含有液
が浸透した前記化粧板原紙に
、色材を含有するインクを付与して印刷層を形成する手段と、
前記印刷
層を形成された前記化粧板原紙に含まれる液体を固化する手段と、を有し、
前記樹脂含有液を前記化粧板原紙に付与する手段、および前記印刷
層を形成する手段の間の前記化粧板原紙の搬送経路において、乾燥手段を有さない化粧板印刷紙の製造装置。
【請求項10】
少なくとも、前記樹脂含有液を前記化粧板原紙に付与する手段、および前記印刷
層を形成する手段は、同一の装置に設けられ、且つ前記化粧板原紙の搬送経路において連続して設けられている請求項9に記載の化粧板印刷紙の製造装置。
【請求項11】
樹脂および前記樹脂の前駆体の少なくともいずれか一方を含有する樹脂含有液を化粧板原紙に付与する手段と、
前記樹脂含有液
が浸透した前記化粧板原紙に
、色材を含有するインクを付与して印刷層を形成する手段と、
前記印刷
層を形成された前記化粧板原紙を加熱する手段と、を有し、
前記樹脂含有液を前記化粧板原紙に付与する手段、および前記印刷
層を形成する手段の間の前記化粧板原紙の搬送経路において、前記化粧板原紙を加熱する手段を有さない化粧板印刷紙の製造装置。
【請求項12】
少なくとも、前記樹脂含有液を前記化粧板原紙に付与する手段、および前記印刷
層を形成する手段は、同一の装置に設けられ、且つ前記化粧板原紙の搬送経路において連続して設けられている請求項11に記載の化粧板印刷紙の製造装置。
【請求項13】
樹脂および前記樹脂の前駆体の少なくともいずれか一方を含有する樹脂含有液を媒体に付与する工程と、
前記樹脂含有液を前記媒体に浸透させた後、浸透させた前記樹脂含有液を乾燥させる工程を経ていない前記媒体に
、色材を含有するインクを付与する工程と、
前記樹脂含有液に含まれる前記樹脂および前記前駆体の少なくともいずれか一方が架橋することで前記媒体に含まれる液体を固化する工程、又は
前記インクが前記樹脂含有液に含まれる前記樹脂および前記前駆体の少なくともいずれか一方と反応して共有結合を形成する官能基を有する成分を含有し、前記成分と、前記樹脂含有液に含まれる前記樹脂および前記前駆体の少なくともいずれか一方と、が反応して共有結合を形成することで前記媒体に含まれる前記成分を固化する工程と、
を有する印刷媒体の製造方法。
【請求項14】
樹脂および前記樹脂の前駆体の少なくともいずれか一方を含有する樹脂含有液を媒体に付与する工程と、
前記樹脂含有液を前記媒体に浸透させた後、浸透させた前記樹脂含有液を乾燥させる工程を経ていない前記媒体に
、色材を含有するインクを付与して印刷
層を形成する工程と、
前記印刷
層を形成された前記媒体に含まれる液体を固化する工程と、
前記液体が固化されて形成された印刷媒体、および基材を積層した積層物を加熱および加圧する工程と、
を有する積層構造体の製造方法。
【請求項15】
樹脂および前記樹脂の前駆体の少なくともいずれか一方を含有する樹脂含有液を媒体に付与する手段と、
前記樹脂含有液
が浸透した前記媒体に
、色材を含有するインクを付与して印刷
層を形成する手段と、
前記印刷
層を形成された前記媒体を加熱する手段と、
前記媒体が加熱されて形成された印刷媒体、および基材を積層した積層物を加熱および加圧する手段と、を有し、
前記樹脂含有液を前記媒体に付与する手段、および前記印刷
層を形成する手段の間の前記媒体の搬送経路において、前記媒体を加熱する手段を有さない積層構造体の製造装置。
【請求項16】
少なくとも、前記樹脂含有液を前記媒体に付与する手段、および前記印刷
層を形成する手段は、同一の装置に設けられ、且つ前記媒体の搬送経路において連続して設けられている請求項15に記載の積層構造体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧板印刷紙の製造方法、化粧板の製造方法、化粧板印刷紙の製造装置、印刷媒体の製造方法、積層構造体の製造方法、および積層構造体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
壁材、床材等に使用される化粧板として低圧メラミン化粧板、高圧メラミン化粧板等が知られている。低圧メラミン化粧板は、例えば、メラミン樹脂を含浸させた化粧板原紙および中密度繊維板(MDF)等の基材を積層し、熱および圧力を加えてメラミン樹脂を介して各層を接着することで製造される。高圧メラミン化粧板は、例えば、メラミン樹脂を含浸させた化粧板原紙およびフェノール樹脂を含浸させたコア原紙等を積層し、熱および圧力を加えて得られた成形体を基材上に接着剤で接着することで製造される。これらの化粧板に用いられる化粧板原紙は、グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等の方式により意匠性が調整されることが知られている。また、上記印刷方式と異なり、版を用いないインクジェット印刷の方式により、少量印刷を可能とする技術も知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、化粧板原紙にインクジェット方式で印刷を施した後、印刷物をメラミン樹脂含浸液に含浸させる工程を経て化粧板を作製することが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、化粧紙に熱硬化性樹脂を担持させ、これを加熱して水や有機溶剤を除去した後でインクジェット印刷により印刷層を形成する工程を経て化粧板を作製することが開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、メラミン樹脂を含有する化粧材原紙の表面にプライマー層を設け、インクジェット印刷でプライマー層と作用可能な重合性インクを塗布する工程を経て化粧材を作製することが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、化粧板原紙などの媒体にインクジェット方式により印刷層を形成する場合、長時間における吐出安定性が要求され、例えば、吐出されるインクの粘度、固形分含有量等は限定的となるため、化粧板などの積層構造体として求められる画像濃度が劣る課題がある。
また、インクの付着量を増やすことで画像濃度を高める場合、インク中の樹脂等の不揮発成分が化粧板原紙などの媒体の隙間を埋めることで、その後の工程におけるメラミン樹脂等の含浸が不十分となり、化粧板などの積層構造体を構成する層間の接着性が劣る課題がある。
更に、化粧板原紙などの媒体の表面にプライマー層を設ける場合、プライマー層の塗布工程や乾燥工程などの新たな追加工程が加わることになり製造効率が劣る課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、樹脂および前記樹脂の前駆体の少なくともいずれか一方を含有する樹脂含有液を化粧板原紙に付与する工程と、付与された前記樹脂含有液を乾燥させる工程を経ていない前記化粧板原紙に印刷する工程と、前記印刷された前記化粧板原紙に含まれる液体を固化する工程と、を有する化粧板印刷紙の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の化粧板印刷紙などの印刷媒体の製造方法は、化粧板などの積層構造体の画像濃度に優れ、化粧板などの積層構造体を構成する層間の接着性に優れ、新たな追加工程が加わらないことにより製造効率に優れる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る化粧板印刷紙の製造装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0011】
<<化粧板印刷紙などの印刷媒体の製造方法>>
本発明の化粧板印刷紙などの印刷媒体の製造方法は、樹脂および前記樹脂の前駆体の少なくともいずれか一方を含有する樹脂含有液を化粧板原紙などの媒体に付与する工程と、付与された前記樹脂含有液を乾燥させる工程を経ていない前記化粧板原紙などの媒体に印刷する工程と、前記印刷された前記化粧板原紙などの媒体に含まれる液体を固化する工程と、を有する。以下、化粧板印刷紙の製造方法を例に説明する。
【0012】
<樹脂含有液を化粧板原紙に付与する工程>
本発明の化粧板印刷紙の製造方法は、樹脂および前記樹脂の前駆体の少なくともいずれか一方を含有する樹脂含有液を化粧板原紙に付与する工程を有する。
樹脂含有液を付与する方法としては、例えば、樹脂含有液に化粧板原紙を浸漬させる方法、樹脂含有液を化粧板原紙にスプレー塗工する方法などが挙げられるが、樹脂含有液に化粧板原紙を浸漬させる方法が好ましい。浸漬させることで化粧板原紙に対する樹脂含有液の付与が均一に行われ、後述の樹脂含有液中の成分と、インク中の成分の相互作用が良好になるためである。また、浸漬させることで化粧板原紙内部まで十分に樹脂含有液が浸透し、化粧板用途として適当な強度を有する化粧板印刷物を得ることができるためである。
【0013】
(化粧板原紙)
化粧板原紙は、上記の樹脂含有液を保持できる構造のものであればよく、例えば、繊維状の構造物、多孔質の構造物のように内部に樹脂含有液を保持できる構造物などが挙げられる。具体的には、従来のグラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷等のプロセスにおいて用いられている一般的な化粧板原紙を用いることができる。
化粧板原紙は、公知の通り、パルプ、合成繊維等を含有し、酸化チタン、タルク、クレイ、カオリン、炭酸カルシウム、着色剤、湿潤紙力増強剤、凝結剤、pH調整剤等の添加剤を適宜含有する紙料であって、長網抄紙機等の抄紙機で抄造されることが好ましい。また、化粧板原紙の灰分は、一般的に20質量%以上40質量%以下の範囲が好ましい。また、化粧板原紙の坪量は、特に限定しないが、50g/m2以上150g/m2以下であることが好ましい。なお、化粧板原紙は、上記の通り樹脂含有液を保持できるものであればよいので、繊維状の構造、多孔質の構造などを有するフィルム等であってもよい。
【0014】
(樹脂含有液)
樹脂含有液は、樹脂および樹脂の前駆体の少なくともいずれか一方を含有し、必要に応じて他の成分を含有してもよい。なお、本発明において「樹脂含有液」とは、樹脂を含む場合だけでなく、樹脂の前駆体を含むが樹脂を含まない場合も表す。また、本発明において「樹脂の前駆体」とは、重合反応により樹脂となる成分であり、樹脂に対応するモノマー、オリゴマー(ダイマー、トリマー等を含む)、プレポリマー等である。例えば、メラミン樹脂の前駆体は、下記一般式(1)に記載のメラミン化合物と、ホルムアルデヒド等の分子内にアルデヒド基(-CHO)を有するアルデヒド化合物と、を含む組成物などが挙げられる。
【0015】
【化1】
一般式(1)中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数が1以上4以下の炭化水素基であり、R
1、R
2およびR
3がいずれも水素原子であることが好ましい。
【0016】
樹脂および樹脂の前駆体は、水系の樹脂および水系の樹脂の前駆体であることが好ましい。水系とは、樹脂が水に溶解している状態、樹脂の前駆体が水に溶解している状態、樹脂が水に分散または懸濁している状態、樹脂の前駆体が水に分散または懸濁している状態をいう。
樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂などが挙げられる。
また、樹脂の前駆体としては、例えば、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン等の水溶性樹脂などの前駆体が挙げられる。これらの樹脂および樹脂の前駆体は、一種を単独で用いても、二種類以上を併用してもよい。
また、樹脂および樹脂の前駆体は、後述の加熱および加圧して化粧板を作製する際において、化粧板原紙と化粧板原紙に隣接して設けられる部材(例えば、後述する基材、オーバーコートなど)とを接着する役割を担うことが好ましい。そのため、架橋性を有する樹脂および樹脂の前駆体が好ましく、アミノ樹脂の前駆体がより好ましく、メラミン樹脂の前駆体が更に好ましい。なお、本発明において架橋性を有するとは、樹脂自体または樹脂の前駆体自体が架橋する場合と、樹脂自体または樹脂の前駆体自体が架橋性を有していなくても架橋剤を含有させることで架橋する場合と、を含むが、樹脂自体または樹脂の前駆体自体が架橋する場合が好ましい。
【0017】
なお、樹脂含有液は、溶媒または分散媒を含む。溶媒は、樹脂含有液に含まれる樹脂および樹脂の前駆体の少なくともいずれか一方を溶解する液体溶媒である。また、分散媒は、樹脂含有液に含まれる樹脂および樹脂の前駆体の少なくともいずれか一方を分散する液体分散媒である。溶媒および分散媒としては、例えば、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤等の有機溶剤、水などが挙げられるが、水が好ましい。
【0018】
樹脂含有液における、樹脂および樹脂の前駆体の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5.0質量%以上60.0質量%以下が好ましい。また、樹脂含有液における、溶媒または分散媒の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、30.0質量%以上98.0質量%以下が好ましい。
【0019】
<印刷する工程>
本発明の化粧板印刷紙の製造方法は、付与された前記樹脂含有液を乾燥させる工程を経ていない前記化粧板原紙に印刷する工程を有する。即ち、印刷する際において、化粧板原紙は樹脂含有液により湿潤状態にある。通常、樹脂含有液を化粧板原紙に付与する工程の後であって印刷する工程の前に、化粧板原紙を加熱等により乾燥させる工程を行うのが一般的だが、本発明ではこのような乾燥させる工程を行わない。これにより、乾燥する工程を省略することができるので、追加工程が発生せず製造効率を向上させることができる。なお、本発明において「樹脂含有液を乾燥させる工程を経ていない」とは、樹脂含有液を化粧板原紙に付与する工程と印刷する工程との間に樹脂含有液を乾燥させる手段を用いた工程を有していないことをいう。
乾燥させる手段は、公知の手段であれば特に制限されないが、例えば、温風加熱を行う加熱送風手段、赤外ランプを用いて行う赤外乾燥手段、加熱されたロール上を通過させる加熱ロール手段、および誘電加熱を利用した誘電加熱手段などが挙げられる。また、上記のように乾燥させる手段を用いた工程を有していない場合においても、樹脂含有液を化粧板原紙に付与する工程の終了時から印刷する工程の開始時までの間の時間は、30分間以下であることが好ましい。また、下記式(1)で表される樹脂含有液の質量変化率Xは、0.7以上であることが好ましい。なお、下記式(1)における質量は、化粧板原紙の単位面積あたりにおける質量を表す。
【0020】
【0021】
印刷する工程によって形成される印刷層は、化粧板原紙上または化粧板原紙内部に設けられる層であって、色材、水、アルコール系溶剤等の印刷層を形成する際に用いられる成分を含む。
【0022】
色材は、顔料や染料を用いることができ、化粧板原紙上において良好な発色性を有する機能、後工程の加熱加圧工程を経ても良好な発色性を有する機能等が要求されることを考慮すると公知の無機顔料および有機顔料が好ましい。
無機顔料および有機顔料としては、例えば、ファーネス法又はチャネル法で製造されたカーボンブラック等や、硫酸バリウム等のアルカリ土類金属の硫酸塩、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属の炭酸塩、微粉ケイ酸、合成ケイ酸塩等のシリカ類、ケイ酸カルシウム、アルミナ、アルミナ水和物、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、クレイ等の無機顔料や、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ニトロソ系顔料、ニトロ系顔料、イソインドリノン系有機顔料、ピランスロン系有機顔料、チオインジゴ系有機顔料、ベンズイミダゾロン系有機顔料、キノフタロン系顔料、イソインドリン系顔料、建染染料系顔料、媒染染料系顔料、塩基性染料系顔料、酸性染料系顔料、天然染料系顔料等の有機顔料が挙げられる。また、化粧板原紙に付与された色材は、化粧板原紙が樹脂含有液を乾燥させる工程を経ておらず湿潤状態にあるため、化粧板原紙が乾燥している状態に比べて表面で広がる。そのため、画像濃度の高い印刷層を有する化粧板印刷紙、および化粧板を得ることができる。
【0023】
印刷層を形成する方法としては、例えば、グラビア方式、フレキソ方式、オフセット方式、インクジェット方式などの公知の方法を用いることができ、これらの方法により色材を含有するインクを化粧板原紙に付与する。また、化粧板原紙が樹脂含有液を乾燥させる工程を経ていない湿潤状態にあるため、印刷層を形成する方法としては、非接触型の印刷方式であるインクジェット方式が好ましい。
【0024】
(インクジェット方式による印刷層の形成)
インクジェット方式で吐出されるインクにより印刷層が形成される場合、インクは、上記色材を含み、必要に応じて有機溶剤、水、添加剤等を含む。
【0025】
-有機溶剤-
有機溶剤としては、特に制限されないが、樹脂含有液に含まれる上記の樹脂および樹脂の前駆体の少なくともいずれか一方と反応する官能基を有することが好ましい。反応とは、樹脂含有液に含まれる樹脂および樹脂の前駆体の少なくともいずれか一方と有機溶剤が共有結合を形成することをいう。このような有機溶剤を用いることで、後述する化粧板原紙に含まれる液体を固化する工程において、有機溶剤を化粧板原紙において固化することができる。
このような有機溶剤としては、例えば、樹脂含有液にメラミン樹脂、グアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のアミノ樹脂の前駆体を含有させた場合、官能基としてヒドロキシル基を有する有機溶剤を用いることが好ましい。官能基としてヒドロキシル基を有する有機溶剤としては、例えば、アルコール系溶剤が好ましい。アルコール系溶剤は、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール;モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の分岐鎖アルコール等の高級アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、テトラメチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、2-ブテン-1,4-ジオール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、1,3-ブタンジオール等の2価のアルコール;グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール等の3価のアルコール;ペンタエリスリトール等の4価アルコール;キシリトール等の5価アルコール;ソルビトール、マンニトール等の6価アルコール;ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ジグリセリン、ポリエチレングリコール、トリグリセリン、テトラグリセリン、ポリグリセリン、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール重合体;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2-メチルヘキシルエーテル、エチレングリコールイソアミルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル等の2価のアルコールアルキルエーテル類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル等の2価アルコールアルキルエーテル類;キシルアルコール、セラキルアルコール、バチルアルコール等のグリセリンモノアルキルエーテル;ソルビトール、マルチトール、マルトトリオース、マンニトール、ショ糖、エリトリトール、グルコース、フルクトース、デンプン分解糖、マルトース、キシリトール、デンプン分解糖還元アルコール等の糖アルコール;グリセリド、テトラハイドロフルフリルアルコール、POE-テトラハイドロフルフリルアルコール、POP-ブチルエーテル、POP・POE-ブチルエーテル、トリポリオキシプロピレングリセリンエーテル、POP-グリセリンエーテル、POP-グリセリンエーテルリン酸、POP・POE-ペンタエリスリトールエーテル等の多価アルコール等が挙げられる。また、上記アルコール系溶剤としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、1,3-ブタンジオール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルが好ましく、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルが特に好ましい。上記アルコール系溶剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合における組み合わせ、および組み合わせの比率は目的に応じて適宜選択できる。
【0026】
上記アルコール系溶剤は、インク全量に対して60質量%以上含有されることが好ましく、65質量%以上含有されることがより好ましく、80質量%以上含有されることが更に好ましく、90質量%以上含有されることが特に好ましい。アルコール系溶剤を60質量%以上含有させることで、後述する化粧板原紙に含まれる液体を固化する工程において、固化することができるインク中の成分の割合を増やすことができる。これにより、後述の加熱および加圧して化粧板を作製する工程において、固化されなかった液体が気化することによって生じる気泡発生を抑制することができ、結果として化粧板における接着性の低下を抑制することができる。従って、インクに含まれる有機溶剤成分の全てがアルコール系溶剤であってもよい。
【0027】
また、アルコール系溶剤としては、沸点が250℃以上であることが好ましく、280℃以上であることがより好ましく、290℃以上であることが更に好ましい。沸点が250℃以上であるアルコール系溶剤をインク中に含有することで、長時間の吐出を行ったとしても、インクジェットヘッドのノズル近傍における急激な乾燥と、それに伴うノズル詰まりを抑制することができ、良好な吐出安定性と画像品質を実現することができる。加えて、沸点が250℃以上であるアルコール系溶剤であれば、後述の加熱および加圧して化粧板を作製する工程において、気化による気泡発生を抑制することができる。そのため、化粧板における接着性の低下を抑制することができる。
【0028】
また、沸点が250℃以上であるアルコール系溶剤がインク全量に対して60質量%以上含有されることがより好ましい。
【0029】
また、本発明のインクに含有されるアルコール系溶剤としては、室温(25℃)における粘度が40mPa・s以下であることが好ましく、15mPa・s以下であることがより好ましい。粘度が15mPa・s以下である場合、調合したインクの粘度がインクジェットヘッドにおける吐出に適した粘度帯に属し、良好な吐出安定性と画像品質を実現することができる。
【0030】
有機溶剤のインク中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%以上95質量%以下が好ましく、20質量%以上95質量%以下がより好ましい。
【0031】
-水-
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0質量%以上90質量%以下にすることができる。また、インクにおける水の含有量は、0質量%以上40質量%以下が好ましく、0質量%以上30質量%以下がより好ましく、0質量%以上25質量%以下が更に好ましい。水の含有量を少量にすることで、アルコール系溶剤の含有量を増加させることができるため、長時間の吐出を行ったとしても、インクジェットヘッドのノズル近傍における急激な乾燥と、それに伴うノズル詰まりを抑制することができ、良好な吐出安定性と画像品質を実現することができる。また、水の含有量を少量にすることで、後述する化粧板原紙に含まれる液体を固化する工程において、固化されない液体の量を減少させることができる。これにより、後述の加熱および加圧して化粧板を作製する工程において、固化されなかった水が気化することによって生じる気泡発生を抑制することができ、結果として化粧板における接着性の低下を抑制することができる。従って、水の含有量は上記範囲であることが好ましいが、インクに含有されてなくてもよい。
【0032】
-添加剤-
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えてもよい。
【0033】
<化粧板原紙に含まれる液体を固化する工程>
本発明の化粧板印刷紙の製造方法は、前記印刷された前記化粧板原紙に含まれる液体を固化する工程を有する。なお、「化粧板原紙に含まれる液体」とは、化粧板原紙に付与された樹脂含有液の液体成分、および印刷する際に化粧板原紙に付与されたインクの液体成分などの化粧板原紙に保持される液体成分である。また、「化粧板原紙に含まれる液体を固化する」とは、例えば、化粧板原紙に付与された樹脂および樹脂の前駆体の少なくともいずれか一方が、化学的または物理的に、化粧板原紙に含まれる液体を化粧板原紙において固化すること等である。具体的には、例えば、化粧板原紙に付与されたインクの液体成分である有機溶剤を、化粧板原紙に付与された樹脂および樹脂の前駆体の少なくともいずれか一方と反応させて共有結合を形成させて固化すること、および化粧板原紙に付与された樹脂および樹脂の前駆体の少なくともいずれか一方が架橋することで形成する架橋構造内に化粧板原紙に含まれる液体を取り込ませて固化すること(ゲル化)等である。
【0034】
化粧板原紙に含まれる液体を固化する方法としては、上記の「反応」、「架橋」を促進させる方法などが適宜選択される。例えば、化粧板原紙を加熱手段により加熱する方法、紫外線照射手段により紫外線を照射する方法、電子線照射手段により電子線を照射する方法などが挙げられ、加熱手段により加熱する方法が好ましい。加熱手段により加熱する方法であれば、従来の一般的な製造工程に対して新たな追加工程が加わらないため生産性を損なわないためである。また、加熱手段により加熱する方法であれば、化粧板原紙に含まれる液体であって、固化することができない液体、および固化することが困難な液体などを気化させて除去することができ、化粧板の接着性を向上させることができる。なお、加熱手段は、公知の手段であれば特に制限されないが、例えば、温風加熱を行う加熱送風手段、赤外ランプを用いて行う赤外乾燥手段、加熱されたロール上を通過させる加熱ロール手段、および誘電加熱を利用した誘電加熱手段などが挙げられる。
【0035】
上記のように化粧板原紙に含まれる液体を固化することで、後述する基材やオーバーレイなどの化粧板原紙と接触し得る部材との界面に存在する液体を減らし、化粧板における接着性の低下を抑制することができる。また、化粧板原紙に含まれる液体を「架橋」により固化する過程で、化粧板原紙に付与されたインクに含まれる色材が同時に取り込まれる。これにより、色材の化粧板原紙中における位置が固定され、画像濃度の高い印刷層を有する化粧板印刷紙、および化粧板を得ることができる。また、化粧板原紙に含まれる液体を上記の「反応」により固化する場合、液体は、化粧板原紙に付与された樹脂および樹脂の前駆体の少なくともいずれか一方と共有結合を形成して固化されるので、後述の加熱および加圧して化粧板を作製する工程において、気化による気泡発生を抑制することができる。そのため、化粧板における接着性の低下を抑制することができる。
【0036】
<<化粧板などの積層構造体の製造方法>>
化粧板などの積層構造体の製造方法は、上記製造方法により作製された化粧板印刷紙などの印刷媒体、基材、および必要に応じて設けられるオーバーレイ等を積層した積層物に対し、加熱および加圧する工程を有する。加熱および加圧する方法としては、ホットプレスなどの加熱加圧手段を用い、70℃以上220℃以下の温度で、10kg/cm2以上180kg/cm2以下の圧力を、3分間以上60分間以下加えることが好ましい。加熱および加圧する工程を行うことにより、各層が接着して一体化した化粧板などの積層構造体を得ることができる。なお、化粧板印刷紙などの印刷媒体、基材、オーバーレイの各層の間に、従来使用されているフェノール樹脂が含浸されたコア紙を用いて成形してもよい。なお、積層構造体は、優れた画像濃度、層間の接着性、製造効率を有するので、建材用途などで用いることが好ましい。以下、化粧板の製造方法を例に説明する。
【0037】
(基材)
基材は、化粧板における機械的強度、取扱性等の機能を付与する。基材としては、例えば、木材を主とした一般的な材料が好ましく、具体的には、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピー等各種素材の突板、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)、配向性ストランドボード(OSD)などが挙げられる。これらの中でも、機械的強度、価格、入手容易性に優れるパーティクルボードやMDFが好ましい。なお、基材としては、上記機能を付与することができるものであれば、木材を主とした材料に限定されない。
【0038】
(オーバーレイ)
オーバーレイは、化粧板の表面に機械的強度、耐熱性、又は耐薬品性などを付与し、上記製造方法により作製された化粧板印刷紙の印刷層の耐久性を向上させる保護層である。
オーバーレイとしては、例えば、メラミン樹脂などの樹脂を、灰分をほとんど又は全く含まない透明な紙に含侵させたものが挙げられる。紙としては、例えば、α-セルロース成分の多い木材パルプ繊維抄造紙、リンター綿繊維紙、ポリエステルフィルムなどが挙げられる。
【0039】
<<化粧板印刷紙などの印刷媒体の製造装置>>
本発明の化粧板印刷紙などの印刷媒体の製造装置は、樹脂および前記樹脂の前駆体の少なくともいずれか一方を含有する樹脂含有液を化粧板原紙などの媒体に付与する手段と、前記樹脂含有液を付与された前記化粧板原紙などの媒体に印刷する手段と、前記印刷された前記化粧板原紙などの媒体に含まれる液体を固化する手段と、を有し、前記樹脂含有液を前記化粧板原紙などの媒体に付与する手段、および前記印刷する手段の間の前記化粧板原紙などの媒体の搬送経路において、乾燥手段を有さない。
なお、本発明において「製造装置」は、製造装置を構成する複数の手段が、一つの装置に全て存在する場合だけでなく、二つ以上の装置に各手段が独立して、又は跨って存在する場合も含むが、樹脂含有液を化粧板原紙などの媒体に付与する手段、および印刷する手段が同一の装置に設けられており、且つ化粧板原紙などの媒体の搬送経路において連続して設けられていることが好ましい。これら手段が一体として1つの装置に存在することにより、化粧板印刷紙などの印刷媒体を形成する工程を連続して実行できるため、化粧板印刷紙などの印刷媒体を形成する時間の短縮化、化粧板印刷紙などの印刷媒体を形成するために必要な空間の省スペース化を図ることができる。加えて、樹脂含有液を化粧板原紙などの媒体に付与する工程、および印刷する工程が連続して実行されることにより、樹脂含有液を付与したことによる化粧板原紙などの媒体の湿潤状態が維持されたまま、次工程の印刷する工程を実行することが容易になる。以下、化粧板印刷紙の製造装置を例に説明する。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態に係る化粧板印刷紙の製造装置を示す概略図である。
図1に示す化粧板印刷紙の製造装置1は、化粧板原紙供給装置10と、搬送ローラ11と、樹脂含有液浸漬槽12と、液体吐出ヘッド13と、加熱装置14と、を有する。
【0041】
化粧板原紙供給装置10は、回転駆動することにより、矢印Aの表す搬送方向に化粧板原紙を供給する。なお、化粧板原紙供給装置10は、それ自身が駆動することで搬送する方式に限らず、ほかの駆動部に追随して連れ回ることで搬送する方式であっても構わない。
【0042】
搬送ローラ11は、回転駆動することにより、化粧板印刷紙の製造装置1に供給された化粧板原紙を、化粧板印刷紙の製造装置1内の搬送経路100に沿って搬送する。なお、搬送ローラ11はいずれもそれ自身が駆動することで搬送する方式に限らず、ほかの駆動部に追随して連れ回ることで搬送する方式であっても構わない。
【0043】
樹脂含有液浸漬槽12は、内部に樹脂含有液110を保持しており、化粧板原紙が樹脂含有液110に浸漬する搬送経路100を通過する。これにより、化粧板原紙に樹脂含有液110が付与される。
【0044】
液体吐出ヘッド13は、複数のノズルが配列された複数のノズル列を有しており、ノズルからの液体の吐出方向が、化粧板原紙の搬送経路100に向くように設けられている。
これにより、各液体吐出ヘッドは、化粧板原紙に、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)、およびイエロー(Y)などの液体であるインクを順に吐出し、印刷層を形成する。
液体吐出ヘッド13は、圧力発生手段によって発生させた圧力により液体を吐出してもよい。液体吐出ヘッド13において液体を吐出させる手段としては、特に限定されないが、例えば、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子を使用するものでもよい)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどが例示される。
なお、化粧板印刷紙の製造装置1は、樹脂含有液浸漬槽12、および液体吐出ヘッド13の間の搬送経路100に、樹脂含有液が付与された化粧板原紙を乾燥させる装置を有していない。
【0045】
加熱装置14は、印刷層が形成された化粧板原紙を加熱する。これにより、化粧板原紙に含まれる液体は、化粧板原紙に固化される。
【0046】
化粧板印刷紙の製造装置1は、加熱装置14で加熱されて製造された化粧板印刷紙を排出する。なお、化粧板印刷紙の製造装置1は、排出された化粧板印刷紙、基材等を積層して加熱および加圧する加熱加圧装置を有していてもよい。
【実施例】
【0047】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0048】
<化粧板原紙>
化粧板原紙は、KSH-801P(坪量80g/m2、灰分32g%、KJ特殊紙株式会社製)を用いた。
【0049】
<樹脂含有液の製造例>
(樹脂含有液1の作製)
ポリビニルアルコール樹脂(日本酢ビ・ポバール社製、ポバールJP-03)を固形分濃度が15質量%となるように水と混合し、樹脂含有液1を作製した。
【0050】
(樹脂含有液2の作製)
水溶性メラミン(メチロールメラミン、日本カーバイド社製、ニカレジンS-176)を固形分濃度が20質量%となるように水と混合し、樹脂含有液2を作製した。
【0051】
(樹脂含有液3の作製)
水溶性レゾールフェノール樹脂(DIC社製、IG-1002)と水溶性メラミン(メチロールメラミン、日本カーバイド社製、ニカレジンS-176)がモル比で5:4の比率になるように、かつ固形分濃度が25質量%となるように水と混合し、樹脂含有液3を作製した。
【0052】
<インクの製造例>
(インク1の作製)
以下の処方混合物をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製、KDL型、メディア:直径0.3mmのジルコニアボール使用)で7時間循環分散した後、平均孔径0.2μmのポリプロピレンフィルターにて濾過し、インク1を作製した。
・Regal400R(カーボンブラック顔料、キャボット社製):6.0質量%
・パイオニンA-51-B(アニオン性界面活性剤、竹本油脂株式会社製):0.8質量%
・Zonyl FS-300(界面活性剤、DuPont社製):2.0質量%
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃):5.0質量%
・1,3-ブタンジオール(沸点203℃):23.0質量%
・イオン交換水:63.2質量%
【0053】
(インク2~5の作製)
インク1の作製において、下記表1の組成および含有量(質量%)に変更した以外は、インク1の作製と同様にして、インク2~5を作製した。
【0054】
【0055】
なお、上記表1において、成分の商品名、および製造会社名については下記の通りである。
・Regal400R(カーボンブラック顔料、キャボット社製)
・パイオニンA-51-B(アニオン性界面活性剤、竹本油脂株式会社製)
・Zonyl FS-300(界面活性剤、DuPont社製)
・Solsperse39000(顔料分散剤、ルーブリゾール社製)
・ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(商品名:ハイモールPM、粘度13mPa・s、沸点290~310℃)
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル(沸点230℃)
・1,3-ブタンジオール(沸点203℃)
・ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(商品名:ハイソルブDPM、粘度4.1mPa・s、沸点188℃)
【0056】
<化粧板印刷紙、化粧板の製造例>
(実施例1)
化粧板原紙に対し、インク1および樹脂含有液1を用いて次の処理1を行い、化粧板印刷紙1を作製した。印刷層を形成する装置は、MH5420(株式会社リコー製インクジェットヘッド)を搭載したTritek社製OnePassJETを用い、600dpi、印字速度75m/分にてベタ画像を印刷した。また、印刷の際、インクの粘度が10~12mPa・sの範囲になるようにヘッド内温、インク供給部を保温することで調整した。
【0057】
-処理1-
i)樹脂含有液に化粧板原紙を浸漬させ、目視で十分に樹脂含有液が浸透したことを確認する。ii)その後、化粧板原紙を乾燥させることなく速やかに印刷を行う。iii)印刷後、化粧板原紙を熱風乾燥(110℃、2分間)させることで化粧板印刷紙を得る。
なお、樹脂含有液に化粧板原紙を浸漬させる工程の終了時から印刷開始までの間の時間が30分間以下であり、且つ上記式(1)で表される樹脂含有液の質量変化率Xが0.7以上であるように処理を行う。
【0058】
次いで、厚さ15mmのMDF集成材、得られた化粧板印刷紙、およびオーバーレイ原紙(太田産業社製、OL-25)を順に積層させ、ホットプレスに挿入して温度180℃、圧力30kg/cm2、プレス時間60秒間で加熱加圧することで化粧板1を得た。
【0059】
(実施例2~15、比較例1~8)
実施例1において、下記表2のインク、樹脂含有液、および処理に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~15、比較例1~8の化粧板印刷紙、および化粧板を作製した。なお、処理2、処理3は以下の処理である。
【0060】
-処理2-
i)化粧板原紙に印刷した後、ii)熱風乾燥(110℃、2分間)させる。iii)その後、樹脂含有液に化粧板原紙を浸漬させ、目視で十分に樹脂含有液が浸透したことを確認する。iv)浸漬後、化粧板原紙を再度熱風乾燥(110℃、2分間)させることで化粧板印刷紙を得る。
【0061】
-処理3-
i)樹脂含有液に化粧板原紙を浸漬させ、目視で十分に樹脂含有液が浸透したことを確認する。ii)その後、化粧板原紙を熱風乾燥(110℃、2分間)させる。iii)乾燥後、印刷を行い、iv)化粧板原紙を再度熱風乾燥(110℃、2分間)させることで化粧板印刷紙を得る。
【0062】
得られた実施例1~15、比較例1~8の化粧板について、下記に示す方法、評価基準に従い、画像濃度、および接着性を評価した。結果を表2に示した。
【0063】
[画像濃度の評価]
得られた化粧板のベタ画像部における画像濃度を、反射型カラー分光測色濃度計(X-Rite社製)を用いて測定した。なお、B以上であった場合を実用可能であるとした。
(評価基準)
A:画像濃度が1.6以上
B:画像濃度が1.4以上1.6未満
C:画像濃度が1.1以上1.4未満
D:画像濃度が1.1未満
【0064】
[接着性の評価]
得られた化粧板に対し、JIS K5400の碁盤目試験(旧規格)に準じて、接着性を評価した。次の評価基準において接着性が100とは、100個にカットした碁盤目部分のうち、剥がれが一箇所もない状態を意味する。接着性が70とは、剥がれていない部分の面積が70%の状態を意味する。なお、C以上であった場合を実用可能であるとした。
(評価基準)
A:接着性が100
B:接着性が95以上100未満
C:接着性が70以上95未満
D:接着性が70未満
【0065】
また、下記に示す方法、評価基準に従い、インクジェット吐出安定性(白スジ発生)を評価した。結果を表2に示した。
【0066】
[インクジェット吐出安定性(白スジ発生)の評価]
MH5420(株式会社リコー製、インクジェットヘッド)を搭載したTritek社製OnePassJETに作製したインクを充填し、印字面積が60%となる画像チャートを入力信号として、28kHz、30分間連続で吐出を行った。その後、処理1~3におけるベタ画像の印刷を、印字面積が60%となる画像の印刷に変更した以外は、実施例1~15、比較例1~8と同様にして、化粧板印刷紙、および化粧板を作製し、目視で白スジ(非印刷部)の状態を評価した。なお、C以上であることが好ましい。
(評価基準)
A:白スジ(非印刷部)が全く認められない
B:若干の白スジ(非印刷部)が認められる
C:明らかな白スジ(非印刷部)が認められる
D:非印刷部がスジ状ではなく面状に広がっている
【0067】
【0068】
実施例1~15に記載の化粧板は、樹脂含有液の乾燥前に印刷層が形成されることにより、良好な画像濃度、接着性を有することが確認された。また、実施例1~15の処理1は、比較例1~8の処理2、3に比べて工程が少なく、製造効率に優れる。更に、インクがアルコール系溶剤を含有することで、インクジェットに求められる吐出安定性を向上させることができ、化粧板に求められる画像濃度と接着性も両立することが可能であることが確認された。一方、比較例1~8の処理方法では、いずれも画像濃度が不十分になること、接着性や吐出安定性も不十分となり得ることが確認された。
実施例において、評価結果が優れる理由としては、化粧板原紙に付与された樹脂含有液を乾燥させる工程、化粧板原紙に含まれる液体を固化する工程を経ていない化粧板原紙にインクを付与するため、ドット広がりが良好になり、画像濃度向上や目視での白スジ発生が認知されにくくなることが挙げられる。また、加熱工程等の化粧板原紙に含まれる液体を固化する工程により、加熱および加圧して形成される化粧板の層間における接着性が向上するものと推定される。
【符号の説明】
【0069】
1 化粧板印刷紙の製造装置
10 化粧板原紙供給装置
11 搬送ローラ
12 樹脂含有液浸漬槽
13 液体吐出ヘッド
14 加熱装置
100 搬送経路
110 樹脂含有液
【先行技術文献】
【特許文献】
【0070】
【文献】国際公開2014/084280号パンフレット
【文献】特開2005-1146号公報
【文献】特開2015-86373号公報