(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-08
(45)【発行日】2022-08-17
(54)【発明の名称】凝集沈殿装置
(51)【国際特許分類】
B01D 21/01 20060101AFI20220809BHJP
B01D 21/02 20060101ALI20220809BHJP
B01D 21/06 20060101ALI20220809BHJP
B01D 21/08 20060101ALI20220809BHJP
B01D 21/24 20060101ALI20220809BHJP
B01D 21/26 20060101ALI20220809BHJP
C02F 1/52 20060101ALI20220809BHJP
C02F 1/56 20060101ALI20220809BHJP
【FI】
B01D21/01 H
B01D21/01 D
B01D21/02 E
B01D21/06 A
B01D21/08 A
B01D21/24 D
B01D21/24 R
B01D21/24 S
B01D21/24 G
B01D21/26
C02F1/52 Z
C02F1/56 Z
(21)【出願番号】P 2018151716
(22)【出願日】2018-08-10
【審査請求日】2021-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】田中 一平
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-205713(JP,A)
【文献】特開2005-177602(JP,A)
【文献】特開2012-115770(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/52-56
B01D 21/00-34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水に無機凝集剤を添加して凝集処理する第1凝集槽と、
該第1凝集槽内の第1凝集処理水が移流口を介して流入し、沈降促進材と高分子凝集剤の添加により凝集処理される第2凝集槽と、
該第2凝集槽から越流堰を介して第2凝集処理水が流入し、処理水とスラリーとに沈降分離する沈殿槽と、
該沈殿槽から抜き出したスラリーを汚泥と沈降促進材とに分離し、分離した沈降促進材を前記第2凝集槽に戻すサイクロンと
を備えた凝集沈殿装置において、
該凝集沈殿装置の平面視形状が長方形であり、
該凝集沈殿装置の槽体部分の外寸が、全長15m以下、幅3m以下、高さ3.3m以下であり、
該第2凝集槽に、前記越流堰と対面配置された整流板が設けられており、
前記第2凝集処理水が該越流堰と整流板との間に形成される上向流流路を通じて上昇し、越流堰を越流するよう構成されており、
該越流堰と整流板との間隔が500~1500mmであり、第2凝集処理水の上昇流速(LV)が100~300m/hであ
り、
前記第1凝集槽と第2凝集槽とは隔壁によって隔てられており、
該隔壁の下部に前記移流口が設けられており、
該第2凝集槽の底面から、該移流口に対面する高さ800mm以下の起立板が設けられている
ことを特徴とする凝集沈殿装置。
【請求項2】
前記起立板の高さが200~800mmである、請求項1に記載の凝集沈殿装置。
【請求項3】
前記第2凝集槽の通水方向に沿う側壁に、上下方向に延在するガイド板が設けられている、請求項1又は2に記載の凝集沈殿装置。
【請求項4】
前記ガイド板は、前記第2凝集槽の通水方向の中央部から上流側へ200mmの位置と下流側へ800mmの位置との間に設けられている、請求項3に記載の凝集沈殿装置。
【請求項5】
前記高分子凝集剤の添加位置が、前記移流口の近傍である、請求項1~4のいずれかに記載の凝集沈殿装置。
【請求項6】
前記沈降促進材の添加位置が、前記第2凝集槽の撹拌羽根の旋回領域内である、請求項1~5のいずれかの凝集沈殿装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸濁物質を含む原水に沈降促進材と凝集剤を添加して凝集沈殿させて汚泥と処理水とに分離する凝集沈殿装置に関し、とくに沈殿槽から抜き出したスラリーをサイクロンにより汚泥と沈降促進材とに分離し、沈降促進材を凝集槽に返送するよう構成された凝集沈殿装置に関する。
【背景技術】
【0002】
懸濁物質(以下、SS[Suspended Solid] と称することもある。)を原水中から凝集沈殿により分離除去する凝集沈殿装置として、原水に粒径10~200μm程度の粒状物(砂など)よりなる沈降促進材と凝集剤とを添加して凝集フロックを形成させる凝集槽と、凝集槽から流出する凝集フロックを沈降分離する沈殿槽と、沈殿槽から引き抜いたスラリーを粒状物と汚泥に分離するサイクロンとを備え、粒状物を凝集槽に返送し、汚泥を排出するよう構成された装置が知られている(特許文献1,2)。
【0003】
特許文献1,2の凝集沈殿装置にあっては、凝集槽に導入された原水に無機凝集剤を添加して攪拌機で攪拌し、次いで高分子凝集剤を添加して凝集槽に導入し、攪拌機で攪拌して粒状物(砂など)とともに凝集フロックを形成させる。この凝集処理水を沈殿槽に導入して沈降分離し、沈殿槽上部から処理水を流出させる。また、沈殿槽の下部から引抜ポンプによりスラリーを抜き出し、サイクロンに送る。サイクロンでは、汚泥と粒状物とを遠心分離し、分離された汚泥が凝集沈殿装置外に排出される。サイクロンで分離された粒状物は凝集槽に返送され、再度沈殿分離に利用される。
【0004】
特許文献2の凝集沈殿装置は、第1撹拌槽、第2撹拌槽、フロック形成槽、沈殿槽の計4槽から構成されている。無機凝集剤は第1撹拌槽に添加され、高分子凝集剤とサイクロンからの濃縮スラリー(返送される沈降促進材)は第2撹拌槽に添加される。
【0005】
特に突発的に局所的に発生するヤード排水の処理や、一時的に発生するあるいは負荷が高くなる排水処理においては、処理する場所に装置を移動して処理する必要があり、そのためには装置をトレーラー等に車載可能にする、つまり運搬可能な装置に仕上げる必要があり、コンパクトな装置構成にする必要がある。その点においては上記装置では大きすぎて車載困難であった。
【0006】
省スペースな装置に仕上げるため、例えば第1撹拌槽を省略することが考えられる。特許文献1には第1撹拌槽の替わりに無機凝集剤をライン注入してラインミキサーで混合するいわゆるライン混合を用いることで第1撹拌槽が省略された形が提案されている。しかし、原水変動が大きい(特にpHや水温の変動が大きい)場合は、ライン混合では凝集反応が不良になりやすく、またSSが高濃度の場合は濁質同士で過度に粗大化が進んでしまい凝集不良になりやすく、さらには槽ほどではないにしろライン混合の機器構造により装置が大きくなる要因となってしまうので、依然として車載するには課題がある。
【0007】
一方、省スペースな装置に仕上げるために第2撹拌槽とフロック形成槽を一体化する、言い換えればフロック形成槽を省略することも考えられる。しかし従来の装置では、第2撹拌槽で高分子凝集剤と沈降促進材を添加混合して凝集反応を、フロック形成槽で沈降促進材への凝集反応の促進を、それぞれの槽で十分に行うことができたが、フロック形成槽を省略すると、第2撹拌槽内に流入するSSが沈降促進材への凝集反応が不十分な状態のままショートパスして沈殿槽に流出する割合が増えて処理水水質が悪化することが懸念される。そのため、フロック形成槽を省略する場合は、第2撹拌槽における凝集不良を防ぐべく凝集処理をより効率化する必要がある。なお、特許文献1には、高分子凝集剤が添加された被処理水が凝集槽の底部に供給され、槽上部から供給(返送)された沈降促進材と共にSSを凝集することが記載されている。しかしこの場合は槽の高さが大きくなってしまい、車載するには課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2000-317220号公報
【文献】特開2014-237122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
製鉄所やセメント工場など、敷地面積が大きいヤードの降雨排水を処理する施設に設置された凝集沈殿装置の場合、降雨時にはまず凝集沈殿装置の各槽に水を張り次にヤードからの排水(以下、ヤード排水という。)を受け入れて運転開始する。
【0010】
前述の通り、特に突発的に局所的に発生するヤード排水の処理や、一時的に発生するあるいは負荷が高くなる排水処理においては、処理する場所に装置を移動して処理する必要があり、そのためには装置をトレーラー等に車載可能にする、つまり運搬可能な装置に仕上げる必要があり、コンパクトな装置構成にする必要がある。
【0011】
本発明は、車載することができる程度に小型化することができ、しかも十分な凝集効果を有する凝集沈殿装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の凝集沈殿装置は、原水に無機凝集剤を添加して凝集処理する第1凝集槽と、該第1凝集槽内の第1凝集処理水が移流口を介して流入し、沈降促進材と高分子凝集剤の添加により凝集処理される第2凝集槽と、該第2凝集槽から越流堰を介して第2凝集処理水が流入し、処理水とスラリーとに沈降分離する沈殿槽と、該沈殿槽から抜き出したスラリーを汚泥と沈降促進材とに分離し、分離した沈降促進材を前記第2凝集槽に戻すサイクロンとを備えた凝集沈殿装置において、該凝集沈殿装置の平面視形状が長方形であり、該凝集沈殿装置の槽体部分の外寸が、全長15m以下、幅3m以下、高さ3.3m以下であり、該第2凝集槽に、前記越流堰と対面配置された整流板が設けられており、前記第2凝集処理水が該越流堰と整流板との間に形成される上向流流路を通じて上昇し、越流堰を越流するよう構成されており、該越流堰と整流板との間隔が500~1500mmであり、第2凝集処理水の上昇流速(LV)が100~300m/hであることを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様では、前記第1凝集槽と第2凝集槽とは隔壁によって隔てられており、該隔壁の下部に前記移流口が設けられており、該第2凝集槽の底面から、該移流口に対面する起立板が設けられている。
【0014】
本発明の一態様では、前記第2凝集槽の通水方向に沿う側壁に、上下方向に延在するガイド板が設けられている。
【0015】
本発明の一態様では、前記ガイド板は、前記第2凝集槽の通水方向の中央部から上流側へ200mmの位置と下流側へ800mmの位置との間に設けられている。
【0016】
本発明の一態様では、前記高分子凝集剤の添加位置が、前記移流口の近傍である。
【0017】
本発明の凝一態様では、前記沈降促進材の添加位置が、前記第2凝集槽の撹拌羽根の旋回領域内である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の凝集沈殿装置では、第2凝集槽内に、越流堰に対面して整流板を設け、第2凝集処理水が越流堰と整流板との間の500~1500mmの間の上向流流路をLV100~300m/hで上昇して沈殿槽に流入する。整流板を設けたことにより、第2凝集槽内の下部の、比較的凝集が進行した第2凝集処理水が沈殿槽に流入するようになる。
【0019】
本発明の一態様では、第1凝集槽と第2凝集槽とを隔てる隔壁の下部に移流口を設ける。そして、第2凝集槽の底面に、該移流口に対面するように起立壁を設ける。これにより、移流口から第2凝集槽に流入してきた第1凝集処理水が第2凝集槽の上方へ向けて分散されるようになり、第2凝集槽での凝集効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施の形態に係る凝集沈殿装置の構成を示す概略的な縦断面図である。
【
図2】実施の形態に係る凝集沈殿装置の第1凝集槽及び第2凝集槽を示す透視斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、実施の形態に係る凝集沈殿装置1を示している。この凝集沈殿装置1の槽体は、第1凝集槽2と、第2凝集槽3と、それに隣接配置された沈殿槽4を備えた、平面視形状が長方形のものとなっている。各凝集槽1,2及び沈殿槽4の平面視形状は方形である。
【0022】
第1凝集槽2と第2凝集槽3とは隔壁2aによって隔てられている。第2凝集槽3と沈殿槽4との間は越流堰12によって隔てられている。第2凝集槽3には、越流堰12に対面する整流板12aが設けられている。
隔壁2a、越流堰12、整流板12aは、それぞれ第2凝集槽3の側壁に対して直交状となっている。
【0023】
第1凝集槽2の一方の側面に沿って、隔壁2aと仕切壁2bによって区画形成された機械室11が設けられており、機械室11内に制御盤が設けられている。仕切壁2bは隔壁2aと直交状となっている。
【0024】
第1凝集槽2には、原水導入ライン5を介して原水が導入される。原水導入ライン5は、機械室11と反対側のコーナー部2fの近傍に設けられている。第1凝集槽2に対し、無機凝集剤が第1薬注装置6によって添加され、第1攪拌機7によって攪拌される。第1凝集槽2においては、無機凝集剤が懸濁物質を凝集させて微細なフロックが生成する。第1凝集槽2には、pH計及びpH調整剤(苛性ソーダ、硫酸、塩酸など)の添加装置6aが設けられており、第1凝集槽2内のpHを所定範囲に維持できるよう構成されている。
【0025】
第1凝集槽2からの第1凝集処理水は、隔壁2aの下部に設けられた移流口8を介して第2凝集槽3に導入される。移流口8は隔壁2aの下辺のうち、前記コーナー部2fと対角側に位置している。移流口8は、第2凝集槽3の幅方向の略中央付近に位置している。
【0026】
第2凝集槽3内の底面からは、移流口8に対面する起立板3aが立設されている。起立板3aは隔壁2aと平行方向に延在しており、その延在長さは移流口8と同等かそれよりも若干大きいものとなっている。
【0027】
第2凝集槽3には、高分子凝集剤が第2薬注装置9によって添加される。第2凝集槽3内には、砂などの沈降促進材が添加されており、第2攪拌機10による攪拌により、沈降促進材を取り込んだ、比重の大きい凝集フロックが成長する。第2撹拌機10は、傾斜パドルを備えたパドル型撹拌機であり、その撹拌軸は鉛直方向となっている。撹拌機10は、第2凝集槽3の平面視において中央部に配置されている。
【0028】
沈降促進材としては、砂のほか、各種スラグの破砕物なども用いることができる。沈降促進材の平均粒径は0.01~0.5mm程度が好ましく、真比重は2以上特に2.5以上で4以下が好ましいが、これに限定されない。
【0029】
第2凝集槽3の1対の側壁(第1凝集槽2と沈殿槽4とを結ぶ側壁)には、撹拌機10を挟んで対峙するようにガイド板3bが設けられている。各ガイド板3bは該側壁と直交状であり、第2凝集槽3の底部から水面位付近まで連続する平板よりなる。
【0030】
第2凝集槽3内で成長した凝集フロックを含む第2凝集処理水は、整流板12aと越流堰12との間を上昇し、越流堰12を越流して沈殿槽4に導入される。越流堰12の上端は、第2凝集槽3内の水面位よりも所定高さ(h)だけ低位となっている。第2凝集槽3内の水深をHとした場合、h/Hは0.2~0.5程度が好ましい。
【0031】
沈殿槽4では、第2凝集処理水中の凝集フロックが沈殿する。沈殿槽4内の上部には、複数の傾斜板13よりなるセパレータが設置されており、凝集フロックの沈殿分離が促進される。セパレータを通り抜けた処理水は、流出室15を経て流出配管16から取り出される。
【0032】
沈殿槽4にはレーキ14が設けられている。沈殿槽4の底部には、沈殿した凝集フロックを含むスラリーを抜き出すための引抜ライン17が接続されており、引抜ライン17には、抜き出したスラリーをサイクロン20に送る引抜ポンプ18が設けられている。サイクロン20は、軸心方向を鉛直方向として設置されている。
【0033】
サイクロン20では、送られてきたスラリーを遠心分離により、サイクロン軸心部に集まる汚泥と、サイクロン側周面に集まる沈降促進材とに分離する。分離された沈降促進材は、サイクロン20の底部から、配管19によって再び第2凝集槽3内に戻されて循環使用される。
【0034】
サイクロン20で軸心側に集められた汚泥は、サイクロン20の上面中央部の汚泥出口に接続された配管21(分離汚泥ライン)に流出する。該配管21は、配管22,25に分岐している。
配管22は、バルブ23を介して配管24に接続されている。配管22,24及びバルブ23によって汚泥排出ラインが構成されている。
【0035】
配管25は、バルブ26及び配管27を介して分離汚泥を第1凝集槽2に返送可能となっている。配管25,27及びバルブ26によって汚泥循環ラインが構成されている。
【0036】
図示は省略するが、この配管27,25または21に光学式濁度計などよりなるSS計が設置され、その検出信号が制御器に入力され、制御器によってバルブ23,26が制御されるように構成してもよい。
【0037】
本発明では、車載可能となるように、凝集沈殿装置1の槽体部分(第1,2凝集槽2,3、沈殿槽4および機械室11よりなる。)が全長15m以下、幅3m以下、高さ3.3m以下となるように設計することが好ましい。
【0038】
実際に車載するのは槽体部分のみであってもよく、その場合は、付帯機器や配管、作業用の歩廊などは別手段(別の車両に車載するなど)で移送するようにしてもよい。
【0039】
この実施形態では、凝集沈殿装置1の槽体に、第2凝集槽3の側壁に対して直交するよう隔壁2aを鉛直に配置することにより、上流側の第1凝集槽2と下流側の第2凝集槽3とに区画し、隔壁2aの下端が槽底に到達しており、底部の一部に流入口として移流口8を設け、第1凝集槽2から第2凝集槽3への通水を可能にしている。この流入LVは300~1100m/h、特に300~600m/hとなるよう移流口8の大きさを設定することが好ましい。第1凝集槽2におけるショートパス防止のため移流口8をある程度小さくする必要があり、LVが300m/h以上となる。また、第2凝集槽3におけるショートパス防止のため流入LVが過剰に大きくならないようにする必要があり、LV600m/h以下とすることが好ましい。なお、無機凝集剤のライン混合はしない。
【0040】
第1凝集槽2の槽容量を小さく設定する場合は、ショートパスが懸念されるので、
図2,3のように原水導入ラインと移流口8とを対角線上に配置し、第1凝集槽2では原水流入部から移流口8までの距離が最も大きくなるよう配置してショートパスを防止するようにし、かつ第2凝集槽3から見ると隔壁2aの底部中央に移流口8が配置するようにして槽内の流れが均一になるようにする。これにより、第2凝集槽3におけるショートパスが抑制される。
【0041】
この実施形態では、少なくとも以下の(a)~(h)の1つ以上の構成を採用することにより、第2凝集槽3内のショートパスを抑制することが好ましい。
【0042】
(a) 第2凝集槽3の整流板12aの上端は水位より高くする。また、下端の第2凝集槽3の底面からの高さを、第2凝集槽3の水深の50%以下(例えば20~50%)とし、かつ整流流路の幅(整流板12aと越流堰12との間隔)を500~1500mmかつ上向流LVを100m/h以上とする。
【0043】
この理由は、次の通りである。
【0044】
即ち、第2凝集槽3は、ほぼ均一混合となっているが、高分子凝集剤や沈降促進材を槽上方から添加し、よく凝集が進行した凝集フロック、すなわち沈降促進材を取り込んだ重いフロックは上方より下方の方が若干なりとも濃度が高いので、第2凝集槽3内の下部の第2凝集処理水を沈殿槽4に供給するのが好ましい。また、沈降促進材を含む凝集フロックを沈殿槽4に供給する必要があるので、整流流路の幅を1500mm以下の狭い流路として上向流LVが高くなるようにする。また整流流路の幅が狭いことで凝集槽の流れが上向きの押出し流れに近づきやすくなる。ただし圧損を考慮して500mm以上の幅は必要である。
【0045】
(b) 第2凝集槽3に、移流口8に対向するように起立板3aを設置する。起立板3aは、図示のように平板状でもよいしコの字状や円弧状として移流口8を囲むようにしてもよい。起立板の高さは、200~800mm、特に300~500mmが望ましい。移流口8の下流側200~1800mm(特に300~600mm)程度の位置に起立板3aを設置するのが望ましい。
【0046】
起立板3aの設置により、第2凝集槽3内において上下方向の旋回流の形成が促進される。流入LVが大きいときは特に流入水をまんべんなく槽上方に向け分散させるために移流口8を囲む形状とすることが望ましい。移流口8の高さに関わらず起立板3aの高さが200mm以上であれば上昇流を発生させることができるが、過度に高いと槽内撹拌の阻害となる懸念があるため上限がある。
【0047】
(c) 第2凝集槽3の撹拌パドルの形状を傾斜パドルとする。これにより、第2凝集槽3内に、水平方向の旋回流ではなく上下方向の旋回流の形成を促進する。
【0048】
(d) パドル数を上下1段合計3枚以上または上下2段、合計6枚以上とした上で強く撹拌する(翼径1400~2000mm、周速6600~15450m/h)。これにより、第2凝集槽3内の混合が完全混合に近づく。
【0049】
(e) 第2凝集槽3の側壁(通水方向左右側面の内壁)にそれぞれ設けられた2枚のガイド板3b,3bについては、次の構成とする。
【0050】
上端が最上位の撹拌翼より200mm以上高くなるよう配置し、下端が最下位の撹拌翼より200mm以上深くなるよう配置する。
【0051】
第2凝集槽3の通水方向の中間点を基準に上流方向に200mmの部分と、下流方向に800mmの部分との間の範囲に配置する。
【0052】
ガイド板3bの凝集槽内壁からの幅は200~1000mm(特に300~600mm)とする。
【0053】
ガイド板3bをかかる構成とすることにより、第2凝集槽3内に上下方向の循環流の形成が促進されるようになる。ガイド板3bの下端を第2凝集槽3の底面より上位に配置すると、該底面での汚泥堆積が抑制されるため好ましい。
【0054】
なお、ガイド板3bを第2凝集槽3の上流下流方向の中間位置に配置した場合には、上流側エリアと下流側エリアで同じように十分に撹拌できる。ガイド板3bを該中間位置よりもやや下流方向に配置した場合には、上流側エリアをやや急速撹拌、下流側エリアをやや緩速撹拌のように撹拌強度を調整することができる。
【0055】
ガイド板3bの幅が小さすぎると、上下方向の流れを形成する効果が十分に得られないので、幅200mm以上は必要であり特に300mm以上が好ましいが、撹拌翼の回転の阻害とならないよう幅1000mm以下とすることが望ましく、撹拌流の抵抗増大を避けるため幅600mm以下とすることが特に望ましい。
【0056】
1対のガイド板3b,3bは、第2凝集槽3の流れ方向において同一位置に配置されてもよく、上流方向・下流方向の異なる位置に配置されてもよい。
【0057】
ガイド板3bの上下延在方向は、鉛直方向であってもよく、上側ほど下流方向とし、通水をより上方向に誘導するように角度をつけてもよい。
【0058】
ガイド板3bは、1枚物であってもよく、複数の板を例えば「く」の字に配置して上部の槽内水はより上方向へ、下部の槽内水はより下方向へ誘導するなどしてもよく、特に限定されない。
【0059】
(f) 高分子凝集剤と沈降促進材の添加位置(水面への到達位置)を、第2凝集槽3の移流口8近傍(下流方向に0~1800mm)、かつ両添加位置の水平距離が1800mm以内となるよう配置する。
【0060】
これは、高分子凝集剤が微細フロック同士を凝集して粗大化するのでなく、微細フロックを沈降促進材に吸着させ凝集フロックを生成させることを促進するために、微細フロックと沈降促進材との接触確率を高めるためである。
(なお、従来は、無機凝集剤により凝結して微細フロックを生成させ、次いで高分子凝集剤により原水由来のSSと微細フロックを凝集して粗大化フロックに成長させ、さらに沈降促進材を粗大化フロックと凝集して粗大化フロックの沈降性を高めるというメカニズムとされていた。)
【0061】
(g) 沈降促進材の添加位置(水平面上の位置)は、撹拌軸(シャフト)の軸芯から撹拌翼の半径の50~100%の位置とする。
【0062】
沈降促進材は沈降性が高いため撹拌の強い領域(流速の速い領域)に添加することにより、槽内に均一に分散して混合されやすくなる。
【0063】
(h) 第2凝集槽3のHRT(水理学的滞留時間)が3分以上となるよう原水流量及び又はサイクロン分離汚泥の一部の返送流量を制御する。
【0064】
本発明に係る凝集沈殿装置は、ヤード排水の処理に好適であるが、その他の各種排水の処理にも適用可能である。
【0065】
本発明において使用する無機凝集剤や高分子凝集剤の種類はとくに限定されず、無機凝集剤としては、たとえばポリ塩化アルミニウム(PAC)、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、ポリ硫酸鉄などを使用できる。高分子凝集剤としては、たとえばノニオン性、カチオン性、アニオン性あるいは両性の高分子凝集剤を用いることができる。
【0066】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の態様とされてもよい。
【実施例】
【0067】
図1~3に示す凝集沈殿装置において、槽構造を以下の通りとした。なお、以下の「槽長」とは、各槽の
図1における左右方向(通水方向)の長さであり、「槽幅」とは、それと直交する寸法である。
【0068】
「整流流路幅」とは、整流板12aと越流堰12との間隔(距離)である。「上向流LV」とは、該間隔部分すなわち上向流流路におけるLVである。
【0069】
第1凝集槽2の槽長:2000mm
第2凝集槽3の槽長:3730mm
沈殿槽4の槽長:2770mm
第1凝集槽2の槽幅:1840mm
第2凝集槽及び沈殿槽4の槽幅:2770mm
第1凝集槽2及び第2凝集槽3の水深:2900mm
移流口8の左右幅:800mm
移流口8の高さ:500mm
整流板12aの下端の水面からの深さ:1450mm
起立板3aの幅:800mm
起立板3aの高さ:500mm
第2撹拌機10のパドルの旋回半径:800mm
沈降促進材の添加位置:第2撹拌機10の撹拌軸から上流側へ100mm
【0070】
次の条件で微粉炭含有排水(SS濃度1200mg/L)の凝集処理実験を行った。結果を表1に示す。
【0071】
原水量:8.40m3/h
沈殿槽スラリー引抜量:0.84m3/h
通水LV:70m/h
沈降促進材:平均粒径150μmのケイ砂
沈降促進材使用量:8.5kg
無機凝集剤(PAC)添加濃度:400mg/L
高分子凝集剤:アニオン性高分子凝集剤(栗田工業製 クリファームPA465)
高分子凝集剤添加濃度:6mg/L
通水時間:8時間
第1凝集槽2と第2凝集槽3の合計HRT:5.5分
【0072】
【符号の説明】
【0073】
1 凝集沈殿装置
2 第1凝集槽
2a 隔壁
3 第2凝集槽
3a 起立板
3b ガイド板
4 沈殿槽
6 第1薬注装置
8 移流口
9 第2薬注装置
11 機械室
12 越流堰
12a 整流板
20 サイクロン